説明

フリーデルクラフツ後架橋された吸着剤および製造方法

【課題】従来の吸着剤の欠点を克服し、かつ後架橋吸着剤の吸着および脱着性能の双方を向上させる。
【解決手段】後架橋吸着剤が(a)少なくとも47重量%の少なくとも1種のポリビニル芳香族モノマー、および(b)53重量%までの少なくとも1種のモノビニル芳香族モノマーのモノマー単位;並びに0〜0.2mmol/gのペンダントビニル基を含み、乾燥した吸着剤が約700〜1500m/gの範囲のBET比表面積、6.0〜11.8nmのBET平均細孔直径、1.2〜3.5mL/gのBET多孔度、全BJH吸着細孔容積の20%未満のBJH吸着マイクロ細孔容積、全BJH吸着細孔容積の24%未満のHKマイクロ細孔容積を有する。本発明は、当該ポリマー系吸着剤の製造方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して後架橋された(post−crosslinked)吸着剤、並びにポリビニル芳香族モノマーとモノビニル芳香族モノマーとを共重合し、続いてポロゲンを除去することなく、単一の反応容器内で、コポリマーのペンダントビニル基のフリーデルクラフツ(Friedel−Crafts)反応後架橋による、高い多孔度および高い表面積を有する後架橋された吸着剤樹脂を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔性で高度に架橋した芳香族コポリマーは、有機化合物の分離および精製のための吸着剤として広く使用されている。ポリマー系吸着剤の吸着容量は、概して、表面積および多孔度の増加と共に増加する。多孔性で高度に架橋した芳香族コポリマーの表面積および多孔度を増加させる一方法は、米国特許第4,543,365号、第5,218,004号、第5,885,638号、第6,147,127号、第6,235,802号、第6,541,527号、A.K.Nyhus,et al.,Journal of Polymer Science,Part A:Polymer Chemistry,John Wiley&Sons,Inc.,Vol.38,1366−1378(2000)、C.Zhou et al.,Journal of Applied Polymer Science,John Wiley&Sons,Inc.,Vol.83,1668−1677(2002)、およびK.Aleksieva,et al.,Polymer,Elsevier Science Publishers,Vol.47,6544−6550(2006)に記載されるように、そのコポリマーからポロゲンを除去し、熱で乾燥させた後で、コポリマー中に残留するビニル基を、ルイス酸触媒の存在下、高温で反応させることである。後架橋されたコポリマーは元のポリマーと比較してより高い多孔度、より高い表面積を有し、よって表面積の増大と共に、向上された吸着容量、特に低分子の吸着容量を示す。しかし、ポロゲンの蒸留除去および元のコポリマーの乾燥は結果として増大したマイクロ細孔含量をもたらし、これは全細孔容積の30%を超える場合がある。この高いマイクロ細孔含量の吸着剤が有機化合物の回収に使用される場合には、高い吸着容量にもかかわらず、吸着された化合物は多くの場合、素早くかつ完全に脱着させられるのが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4,543,365号明細書
【特許文献2】米国特許第5,218,004号明細書
【特許文献3】米国特許第5,885,638号明細書
【特許文献4】米国特許第6,147,127号明細書
【特許文献5】米国特許第6,235,802号明細書
【特許文献6】米国特許第6,541,527号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】A.K.Nyhus,et al.,Journal of Polymer Science,Part A:Polymer Chemistry,John Wiley&Sons,Inc.,Vol.38,1366−1378(2000)
【非特許文献2】C.Zhou et al.,Journal of Applied Polymer Science,John Wiley&Sons,Inc.,Vol.83,1668−1677(2002)
【非特許文献3】K.Aleksieva,et al.,Polymer,Elsevier Science Publishers,Vol.47,6544−6550(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明により取り組まれる課題は、吸着剤におけるマイクロ細孔の多さによりもたらされる遅い脱着速度のような従来の吸着剤の欠点を克服すること、および後架橋された吸着剤の吸着および脱着性能の双方を向上させることである。よって、本発明は、後架橋された吸着剤においてマイクロ細孔含量を低減させるように、フリーデルクラフツ触媒の存在下、ポロゲンを除去することなく、高度に架橋した芳香族コポリマーを製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は後架橋された吸着剤であって、
(a)少なくとも47重量%の少なくとも1種のポリビニル芳香族モノマーおよび(b)53重量%までの少なくとも1種のモノビニル芳香族モノマーのモノマー単位;並びに
0〜0.2mmol/gのペンダントビニル基;
を含み;
乾燥した吸着剤が約700〜1500m/gの範囲のBET比表面積、6.0〜11.8nmのBET平均細孔直径、1.2〜3.5mL/gのBET多孔度、全BJH吸着細孔容積の20%未満のBJH吸着マイクロ細孔容積、および全BJH吸着細孔容積の24%未満のHKマイクロ細孔容積を有する;
後架橋された吸着剤に関する。
本発明は、
(i)共重合ポロゲンの存在下、少なくとも1種のポリビニル芳香族モノマーおよび少なくとも1種のモノビニル芳香族モノマーを含むモノマーを懸濁共重合する工程;
(ii)フリーデルクラフツ触媒の存在下、補助溶媒(co−solvent)としての後架橋ポロゲンを用いて、コポリマーを後架橋する工程;並びに
(iii)後架橋された吸着剤を単離する工程;
を含む、ポリマー系吸着剤を製造する方法にさらに関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、本発明の主要部として、高い容量で有機化合物を吸着する高い多孔度および高い比表面積の樹脂を製造する方法を提供することにより、最新のポリマー系吸着剤の欠点を克服する。高い多孔度および低いマイクロ細孔含量の吸着剤は吸着された化合物が容易に樹脂から脱着されるのを可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明において使用される場合、「BET」はBrunauer−Emmett−Teller理論を意味し、これは多層吸着に基づく吸着モデルである。BET平均細孔直径は、D=4V/Aの式を用いて計算される(D−平均細孔直径;V−細孔容積;A−比表面積)。
ここで使用される場合、「BJH」は、窒素吸着データから細孔サイズ分布を計算するためのBarret−Joyner−Halendaスキームを意味する。
ここで使用される場合、「HK」は、低圧吸着等温線からマイクロ細孔(micropore)サイズ分布を評価するためのHorvath−Kawazoe法を意味する。
【0009】
懸濁共重合に使用されるモノマーは少なくとも1種のポリビニル芳香族モノマーを含む。ポリビニル芳香族モノマーには、メタ−ジビニルベンゼンおよびパラ−ジビニルベンゼンのようなジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、ジビニルナフタレン、並びにその誘導体、例えば、ジビニルクロロベンゼンのようなハロゲン化置換体からなる群が挙げられる。これらの化合物は単独でまたはその2種以上の混合物として使用されうる。特に好ましいポリビニル芳香族モノマー混合物はメタ−およびパラ−ジビニルベンゼンからなる。
【0010】
本発明の第1の態様において使用されるポリビニル芳香族モノマーの量は、コポリマーの乾燥重量を基準にした重量パーセンテージで、少なくとも47%である。好ましいのは、少なくとも55%で、特に63%〜80%である。
【0011】
本発明において、パーセンテージの範囲における、用語「少なくとも」は、その範囲の出発点以上で100%未満の全ての量を意味する。
【0012】
懸濁共重合に使用されるモノマーは少なくとも1種のモノビニル芳香族モノマーを含む。モノビニル芳香族モノマーの例としては、スチレン、および(C−C)アルキル−置換スチレン、例えば、エチルビニルベンゼン(メタ−エチルビニルベンゼンおよびパラ−エチルビニルベンゼンを含む)、ビニルトルエン、並びにその誘導体、例えば、ビニルベンジルクロライドおよびエチルビニルベンジルクロライドのようなハロゲン化置換体が挙げられるがこれらに限定されない。これらの化合物は単独でまたはその2種以上の混合物として使用されうる。好ましいのは、メタ−およびパラ−エチルビニルベンゼンの混合物、並びにスチレン、メタ−およびパラ−エチルビニルベンゼンの混合物のような混合物から選択される。
【0013】
本発明の第1の態様において使用されるモノビニル芳香族モノマーの量は、コポリマーの乾燥重量を基準にした重量パーセンテージで、53%までである。好ましいのは、45%までで、特に20%〜37%である。
【0014】
範囲における用語「まで」は0より大きく、その範囲の終点以下の全ての量を意味する。
【0015】
極端な実施形態においては、コポリマーは、コポリマーの乾燥重量を基準とした重量パーセンテージで、(a)ほぼ100%のメタ−およびパラ−ジビニルベンゼンの混合物、並びに(b)ほぼ0%のメタ−およびパラ−エチルビニルベンゼンの混合物のモノマー単位を含む。
【0016】
任意選択的に、コポリマーは、コポリマーの乾燥重量を基準にして10重量%まで、好ましくは5重量%までの共重合された極性ビニルモノマー、例えば、アクリロニトリル、メタクリル酸メチルおよびアクリル酸メチルを含むことができる。このモノマー群は上記のいずれの他のモノマーも含まない。
【0017】
本発明のある実施形態においては、コポリマーは、コポリマーの乾燥重量を基準にした重量パーセンテージで、55%〜80%のメタ−ジビニルベンゼン、パラ−ジビニルベンゼン、並びにメタ−およびパラ−ジビニルベンゼンの混合物から選択される少なくとも1種のポリビニル芳香族モノマーと、20%〜45%のメタ−エチルビニルベンゼン;パラ−エチルビニルベンゼン;スチレン;メタ−およびパラ−エチルビニルベンゼンの混合物;並びに、スチレン、メタ−およびパラ−エチルビニルベンゼンの混合物から選択される少なくとも1種のモノ不飽和ビニル芳香族モノマーとのモノマーを含む。
【0018】
本発明の別の実施形態においては、コポリマーは、コポリマーの乾燥重量を基準とした重量パーセンテージで、(a)約55%のメタ−およびパラ−ジビニルベンゼンの混合物と、(b)約45%のメタ−およびパラ−エチルビニルベンゼンの混合物とのモノマーを含む。
【0019】
後架橋された吸着剤中のペンダントビニル基の含量は0〜0.2mmol/gの範囲であり、これは、後架橋する前の従来の共重合された多孔性芳香族ポリマーにおける含量よりもかなり少ない。
【0020】
本発明の第1の態様の吸着剤は、好ましくは、
(i)共重合ポロゲンの存在下、少なくとも1種のポリビニル芳香族モノマーおよび少なくとも1種のモノビニル芳香族モノマーを含むモノマーを懸濁共重合する工程;
(ii)フリーデルクラフツ触媒の存在下、補助溶媒としての後架橋ポロゲンを用いて、コポリマーを後架橋する工程;並びに
(iii)後架橋された吸着剤を単離する工程;
を含む方法により製造される。
【0021】
本発明の第2の態様は、
(i)共重合ポロゲンの存在下、少なくとも1種のポリビニル芳香族モノマーおよび少なくとも1種のモノビニル芳香族モノマーを含むモノマーを懸濁共重合する工程;
(ii)フリーデルクラフツ触媒の存在下、補助溶媒としての後架橋ポロゲンを用いて、コポリマーを後架橋する工程;並びに
(iii)後架橋された吸着剤を単離する工程;
を含む、ポリマー系吸着剤を製造する方法にさらに関する。
【0022】
ポリマー系吸着剤の製造方法は、モノマーの共重合およびコポリマーの後架橋の2つのプロセスを含み、この双方のプロセスにおいてポロゲンが存在する。本発明において、用語「単一の反応容器内で行われる」とは、共重合反応後にポロゲンを除去せず、かつ当該技術分野において通常説明されるように、後架橋する前に元のコポリマーを単離せずに、共重合および後架橋する反応が完了することを意味する。
【0023】
本発明の第2の態様の懸濁共重合に使用されるモノマー単位は、その量を別にして、第1の態様のと同じである。本発明のポリマー系吸着剤の製造方法は、技術的に許容できるモノマー単位含量のいずれについても好適である。好ましくは、本発明の第2の態様のモノマー単位は少なくとも47重量%の少なくとも1種のポリビニル芳香族モノマーおよび53重量%までの少なくとも1種のモノビニル芳香族モノマーである。より好ましいのは、55〜80重量%の少なくとも1種のポリビニル芳香族モノマーおよび20〜45重量%の少なくとも1種のモノビニル芳香族モノマーである。
【0024】
懸濁共重合において使用されるポロゲンは、塩化アルキル、例えば、メチレンジクロライド、エチレンジクロライドおよびプロピレンジクロライド;芳香族クロライド、例えば、クロロベンゼンおよびクロロトルエンなどのカテゴリーから選択される。ポロゲンのモノマーに対する容積比は1:2〜3:1であり、好ましくは1:1〜2:1である。
【0025】
共重合反応は従来の方法に従って、好ましくは懸濁助剤(例えば、分散剤、保護コロイドおよび緩衝剤)を含む連続水性相溶液を、続いて、モノマー、ポロゲンおよび開始剤を含む有機相溶液と混合して行われる。モノマーは高温で共重合され、コポリマーはビーズ形態である。
【0026】
上記懸濁共重合で得られるコポリマービーズは、次いで、フリーデルクラフツ触媒の存在下で後架橋されて、増大した表面積および細孔容積を有する後架橋されたポリマービーズを製造し、これはポリマー系吸着剤、イオン交換樹脂、溶媒含浸樹脂またはキレート樹脂としてのその使用を可能にする。
【0027】
コポリマーの後架橋に使用されるフリーデルクラフツ触媒には、金属ハロゲン化物、例えば、鉄ハロゲン化物(ferric halides)、亜鉛ハロゲン化物、アルミニウムハロゲン化物、スズハロゲン化物、ホウ素ハロゲン化物、好ましくは、FeCl、ZnCl、AlCl、SnClおよびBFなど、特にその無水物化合物が挙げられる。フリーデルクラフツ触媒の好適な量は、コポリマーの乾燥重量の約5%〜約20%である。
【0028】
後架橋に使用される好適なポロゲンには、ジ(エチレングリコール)モノ−メチルエーテル、ジ(エチレングリコール)モノ−エチルエーテル、ジ(エチレングリコール)モノ−ブチルエーテル、ジ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、ジ(エチレングリコール)ジエチルエーテル、ジ(エチレングリコール)エチルエーテルアセタート、ジ(プロピレングリコール)、ジ(プロピレングリコール)モノ−メチルエーテル、トリ(エチレングリコール)、トリ(エチレングリコール)モノ−メチルエーテル、トリ(エチレングリコール)モノ−エチルエーテル、トリ(プロピレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)モノ−メチルエーテル、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテルおよびポリ(エチレングリコール)−コ−(プロピレングリコール)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0029】
フリーデルクラフツ触媒で処理する前に、ポロゲンを含むコポリマーの外側へ水性相溶液を除去するのが好ましい。その水性相除去工程は、水性相溶液を反応容器からサイホンで吸い出し(siphon)または排出すること、および後架橋のための溶媒としてポロゲンまたはポロゲン混和性溶媒を添加することを含むことができる。これは、続けて、留出物が透明になるまで高温で共沸蒸留するのが好ましい。
【0030】
典型的な架橋工程は、フリーデルクラフツ触媒を、コポリマー/フリーデルクラフツ触媒重量比20:1〜20:3で、コポリマーとポロゲン溶媒との混合物に添加し、コポリマー−溶媒−フリーデルクラフツ触媒混合物を形成し;当該技術分野で公知の条件でその混合物の温度を維持することを含む。
【0031】
フリーデルクラフツ後架橋に好ましい条件は、高温、すなわち、約25℃から、好ましくは30℃から、大気圧でポロゲン溶媒の沸点よりも約5〜40℃低い温度までを含む。後架橋反応のための時間は選択される温度に依存し、より高い温度ではより短い時間が好ましくは使用される。一般的には、その時間は少なくとも約1時間、好ましくは4時間から16時間である。
【0032】
後架橋されたコポリマーの後処理は、酸性水溶液をコポリマー−溶媒−触媒の混合物に添加し、共沸蒸留によってポロゲン溶媒を除去するために温度を上げ、コポリマーを水混和性有機溶媒および水で洗浄して触媒を除去し、単離された吸着剤ビーズを最終的に集めることを含みうる。
【0033】
特に、共重合および後架橋条件はポリマービーズの表面積および細孔容積に影響を有し、共重合条件には、例えば、スチレンのエチルビニルベンゼンに対するモル比、架橋性モノマーとしてのジビニルベンゼンの量、架橋の程度並びにポロゲンの存在および種類が挙げられ、後架橋条件には、触媒の量、反応時間並びに溶媒の種類が挙げられる。
【実施例】
【0034】
次の実施例は本発明を例示することを意図しており、請求項に限定されることを除いて限定されない。他に示されない限りは、全ての比率、部およびパーセンテージは重量基準であり、かつ使用された全ての試薬は、他に特定されない限りは、良好な商業品質のものである。略語は次の意味を有する:
DVB:ジビニルベンゼン
EVB:エチルビニルベンゼン
EDC:エチレンジクロリド
TBP:tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート
【0035】
本発明の後架橋されたポリマー系吸着剤のBET比表面積、BET多孔度はMicromeritics TriStar 3000装置を用いて試験され分析される。BET比表面積のパーセンテージ誤差は±5%である。BET平均細孔直径のパーセンテージ誤差は±1%である。BJH吸着細孔容積およびHKマイクロ細孔容積はQuantachrome Nova Instrumentを用いて試験され分析される。
【0036】
K.L.Hubbard,et al.,Reactive and Functional Polymers,Elsevier Science Publishers,vol.36,pp17−30(1998)に記載されるように、IRおよびラマンスペクトルはペンダントビニル基の含量を決定するために使用された。
【0037】
実施例1
メカニカルスターラー、還流凝縮器、温度計、窒素入口、マントルヒーターおよびサーモウォッチ(thermowatch)アセンブリを備えた2リットルの4つ口フラスコに、820gの脱イオン水、0.82gの分散剤、2.5gのホウ酸、および0.74gの水酸化ナトリウムからなるあらかじめ混合された水性相を入れた。撹拌速度は124rpmにあらかじめ設定し、ゆっくりとした窒素流れを開始した。攪拌機を止めて、200gの55%DVB/45%EVB、500gのEDCおよび2.0gのTBPのあらかじめ混合した有機相を添加した。撹拌が開始され、混合物は60〜80℃に加熱され、15時間その温度に保たれた。
次いで、反応混合物は50℃に冷却された。コポリマー−EDC混合物から水性相がサイホンで除かれた。800gのEDCが添加され、コポリマー−EDC混合物はさらに加熱されて、EDCの添加により流体分散物を維持しながら共沸蒸留でコポリマーの外側の水を除去した。
冷却するとすぐに、30.0gの無水塩化第二鉄が添加され、コポリマー−EDC−塩化第二鉄混合物が撹拌されつつ60〜80℃に加熱され、8時間その温度に保たれた。
【0038】
コポリマー−EDC−塩化第二鉄混合物は次いで50℃に冷却された。300gの5%HCl水溶液が添加され、次いで、加熱されて、5%HCl水溶液の添加により流体分散物を維持しながら共沸蒸留でその混合物からEDCを除去した。
冷却するとすぐに、液相はサイホンにより除去され、コポリマーがメタノールおよび水で洗浄された。後架橋されたコポリマーは、琥珀色で半透明のビーズとして回収された。コポリマーの細孔構造を特徴づけると、次の特性を有している:ペンダントビニル基は検出されず、1.62mL/gのBET多孔度、880m/gのBET表面積、7.36nmのBET平均細孔直径、1.62mL/gのBJH吸着細孔容積、0.265mL/gのBJH吸着マイクロ細孔容積(全BJH吸着細孔容積の16.4%)、および0.316mL/gのHKマイクロ細孔容積(全BJH吸着細孔容積の19.5%)。
実施例2〜9は実施例1に記載されたのと同様の方式であった。様々なあらかじめ混合された有機相が使用された。
【0039】
実施例2
188gの55%DVB/45%EVB、519gのEDC、および2.0gのTBPのあらかじめ混合された有機相;ペンダントビニル基は検出されず、1.66mL/gのBET多孔度、830m/gのBET表面積、8.00nmのBET平均細孔直径、1.71mL/gのBJH吸着細孔容積、0.283mL/gのBJH吸着マイクロ細孔容積(全BJH吸着細孔容積の16.5%)、および0.323mL/gのHKマイクロ細孔容積(全BJH吸着細孔容積の18.9%)。
【0040】
実施例3
187gの63%DVB/37%EVB、518gのEDC、および2.0gのTBPのあらかじめ混合された有機相;0.1mmol/gのペンダントビニル基、2.10mL/gのBET多孔度、1062m/gのBET表面積、7.91nmのBET平均細孔直径、2.28mL/gのBJH吸着細孔容積、0.360mL/gのBJH吸着マイクロ細孔容積(全BJH吸着細孔容積の15.8%)、および0.453mL/gのHKマイクロ細孔容積(全BJH吸着細孔容積の19.9%)。
【0041】
実施例4
225gの55%DVB/45%EVB、463gのEDC、および2.4gのTBPのあらかじめ混合された有機相;ペンダントビニル基は検出されず、1.39mL/gのBET多孔度、841m/gのBET表面積、6.61nmのBET平均細孔直径、1.40mL/gのBJH吸着細孔容積、0.271mL/gのBJH吸着マイクロ細孔容積(全BJH吸着細孔容積の19.4%)、および0.311mL/gのHKマイクロ細孔容積(全BJH吸着細孔容積の22.2%)。
【0042】
実施例5
237gの55%DVB/45%EVB、443gのEDC、および2.4gのTBPのあらかじめ混合された有機相;ペンダントビニル基は検出されず、1.26mL/gのBET多孔度、840m/gのBET表面積、6.00nmのBET平均細孔直径、1.28mL/gのBJH吸着細孔容積、0.255mL/gのBJH吸着マイクロ細孔容積(全BJH吸着細孔容積の19.9%)、および0.301mL/gのHKマイクロ細孔容積(全BJH吸着細孔容積の23.6%)。
【0043】
実施例6
164gの63%DVB/37%EVB、24gのスチレン、519gのEDC、および2.0gのTBPのあらかじめ混合された有機相;ペンダントビニル基は検出されず、1.65mL/gのBET多孔度、838m/gのBET表面積、7.88nmのBET平均細孔直径、1.70mL/gのBJH吸着細孔容積、0.281mL/gのBJH吸着マイクロ細孔容積(全BJH吸着細孔容積の16.5%)、および0.321mL/gのHKマイクロ細孔容積(全BJH吸着細孔容積の18.9%)。
【0044】
実施例7
188gの47%DVB/53%EVB、519gのEDC、および2.0gのTBPのあらかじめ混合された有機相;ペンダントビニル基は検出されず、1.25mL/gのBET多孔度、721m/gのBET表面積、6.94nmのBET平均細孔直径、1.41mL/gのBJH吸着細孔容積、0.208mL/gのBJH吸着マイクロ細孔容積(全BJH吸着細孔容積の14.8%)、および0.253mL/gのHKマイクロ細孔容積(全BJH吸着細孔容積の17.9%)。
【0045】
実施例8
187gの80%DVB/20%EVB、518gのEDC、および2.0gのTBPのあらかじめ混合された有機相;0.2mmol/gのペンダントビニル基、2.98mL/gのBET多孔度、1462m/gのBET表面積、8.15nmのBET平均細孔直径、3.08mL/gのBJH吸着細孔容積、0.475mL/gのBJH吸着マイクロ細孔容積(全BJH吸着細孔容積の15.4%)、および0.583mL/gのHKマイクロ細孔容積(全BJH吸着細孔容積の18.9%)。
【0046】
実施例9
175gの80%DVB/20%EVB、537gのEDC、および2.0gのTBPのあらかじめ混合された有機相;0.2mmol/gのペンダントビニル基、3.50mL/gのBET多孔度、1195m/gのBET表面積、11.7nmのBET平均細孔直径、3.68mL/gのBJH吸着細孔容積、0.480mL/gのBJH吸着マイクロ細孔容積(全BJH吸着細孔容積の13.0%)、および0.588mL/gのHKマイクロ細孔容積(全BJH吸着細孔容積の16.0%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後架橋された吸着剤であって、
(a)少なくとも47重量%の少なくとも1種のポリビニル芳香族モノマーおよび(b)53重量%までの少なくとも1種のモノビニル芳香族モノマーのモノマー単位;並びに
0〜0.2mmol/gのペンダントビニル基;
を含み;
乾燥した吸着剤が約700〜1500m/gの範囲のBET比表面積、6.0〜11.8nmのBET平均細孔直径、1.2〜3.5mL/gのBET多孔度を有し、BJH吸着マイクロ細孔容積が全BJH吸着細孔容積の20%未満であり、HKマイクロ細孔容積が全BJH吸着細孔容積の24%未満である;
後架橋された吸着剤。
【請求項2】
吸着剤が、
(i)共重合ポロゲンの存在下、少なくとも1種のポリビニル芳香族モノマーおよび少なくとも1種のモノビニル芳香族モノマーを含むモノマーを懸濁共重合する工程;
(ii)フリーデルクラフツ触媒の存在下、補助溶媒としての後架橋ポロゲンを用いて、コポリマーを後架橋する工程;および
(iii)後架橋された吸着剤を単離する工程;
を含む方法により製造される、請求項1に記載の吸着剤。
【請求項3】
(i)共重合ポロゲンの存在下、少なくとも1種のポリビニル芳香族モノマーおよび少なくとも1種のモノビニル芳香族モノマーを含むモノマーを懸濁共重合する工程;
(ii)フリーデルクラフツ触媒の存在下、補助溶媒としての後架橋ポロゲンを用いて、コポリマーを後架橋する工程;および
(iii)後架橋された吸着剤を単離する工程;
を含むポリマー系吸着剤を製造する方法。
【請求項4】
ポリビニル芳香族モノマーがメタ−およびパラ−ジビニルベンゼンの混合物である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
モノビニル芳香族モノマーがメタ−およびパラ−エチルビニルベンゼンの混合物、並びにスチレン、メタ−およびパラ−エチルビニルベンゼンの混合物から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
共重合されるモノマーが、コポリマーの乾燥重量を基準にした重量パーセンテージで、(a)少なくとも47%の少なくとも1種のポリビニル芳香族モノマーおよび(b)53%までの少なくとも1種のモノビニル芳香族モノマーを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
共重合されるモノマーが、コポリマーの乾燥重量を基準にした重量パーセンテージで、(a)55%〜80%の少なくとも1種のポリビニル芳香族モノマーおよび(b)20%〜45%の少なくとも1種のモノビニル芳香族モノマーを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
フリーデルクラフツ触媒が金属ハロゲン化物から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
フリーデルクラフツ触媒が塩化第二鉄である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
共重合ポロゲンがメチレンジクロライド、エチレンジクロライド、プロピレンジクロライド、クロロベンゼンおよびクロロトルエンからなる群から選択される、請求項3に記載の方法。

【公開番号】特開2010−7068(P2010−7068A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−130279(P2009−130279)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】