説明

フリーマスト構造

【課題】 フォークリフト等の荷役車両に装備されるフルフリーマスト装置として用いられるフリーマスト構造であって、負荷時に可動マストの下部の撓みを防止できるだけでなく、可動マストの下方からキャリッジを挿入できて組立が容易に行なえる様にする。
【解決手段】 可動マスト2の左右外側にフリーリフトシリンダ4が設けられると共に、キャリッジ3が可動マスト2の下方から挿入されるフリーマスト構造1に於て、可動マスト2の下部が左右内側へ撓むのを防ぐ撓み防止体5を可動マスト2の下部に着脱可能に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばフォークリフト等の荷役車両に装備されるフルフリーマスト装置として用いられるフリーマスト構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のフリーマスト構造としては、例えば特許文献1〜3に記載されて図6及び図7に示したものが知られている。
当該フリーマスト構造50は、基本的には、固定マスト51と、固定マスト51に対して昇降可能な可動マスト52と、可動マスト52に対して昇降可能なキャリッジ53と、キャリッジ53に懸架された左右一対のフォーク54と、固定マスト51に対して可動マスト52を昇降させる左右一対のリフトシリンダ55と、可動マスト52に対してキャリッジ53をチェーンホイール及びリフトチェーンを介して昇降させる左右一対のフリーリフトシリンダ56と、から構成されている。
前記可動マスト52は、左右の枠材57と、両枠材57どうしを連結する適宜(例えば上中下)の連結材58と、両枠材57の外側中位に設けられてフリーリフトシリンダ56を支持する左右のシリンダサポート59とを備えている。
【0003】
而して、この様なものは、可動マスト52の左右外側には、左右一対のフリーリフトシリンダ56が設けられていると共に、前記連結材58のうち上位以外のものは、例えば後側垂直板だけで形成する事に依りキャリッジ53を可動マスト52の下方から挿入するのに支障がない様にされている。
【0004】
ところが、この様なものは、フリーリフトシリンダ56が作動される負荷時には、図6の鎖線で示す如く、可動マスト52の各枠材57の下部(とりわけ下部前側)が内側に撓んで強度上の問題が生じると共に、キャリッジ53の昇降に支障を来たす惧れがあった。
【0005】
ところで、特許文献1には、可動マストの下位連結材を両枠材間とその前側を含む大きさの水平板状にした点が記載されている。
然しながら、この様なものは、下位連結材を水平板状にしたので、可動マストの下部の撓みを防止できるものの、可動マストの下方からキャリッジを挿入する事が叶わず、組立が容易に行なえなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公平7−9910号公報
【特許文献2】特開平10−152300号公報
【特許文献3】特許第3348638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この様に、従来の何れのものも、夫々一長一短があり、負荷時に可動マストの下部の撓みを防止できるだけでなく、可動マストの下方からキャリッジが挿入できて組立が容易に行なえるものではなかった。
【0008】
本発明は、叙上の問題点に鑑み、これを解消する為に創案されたもので、その課題とする処は、負荷時に可動マストの下部の撓みを防止できるだけでなく、可動マストの下方からキャリッジを挿入できて組立が容易に行なえる様にしたフリーマスト構造を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のフリーマスト構造は、基本的には、可動マストの左右外側にフリーリフトシリンダが設けられると共に、キャリッジが可動マストの下方から挿入されるフリーマスト構造に於て、可動マストの下部が左右内側へ撓むのを防ぐ撓み防止体を可動マストの下部に着脱可能に設けた事に特徴が存する。
【0010】
可動マストの下部に撓み防止体を着脱可能に設けたので、撓み防止体を可動マストの下部に取付けたり、或は取外したりする事ができる。
撓み防止体を可動マストの下部に取付けた場合には、撓み防止体に依り可動マストの下部が左右内側へ撓むのを防止する事ができる。
撓み防止体を可動マストの下部から取外した場合には、可動マストの下方からキャリッジを挿入する事ができる。
【0011】
撓み防止体は、可動マストの下部に固定されてキャリッジの挿入を許容する固定板と、固定板に移動可能に設けられて可動マストの枠材内に挿入される左右の可動板と、固定板に対して可動板を着脱可能に締結する締結手段とを備えているのが好ましい。この様にすれば、固定板に対して可動板だけを所謂部分的に着脱可能にしたので、固定板を備えている分だけ可動マストの強度を向上できる。
【0012】
固定板に対して可動板を可動マストの枠材方向に移動させる為の移動手段を備えているのが好ましい。この様にすれば、移動手段に依り可動板を可動マストの枠材に確実に押し付ける事ができる。その結果、より一層、可動マストの枠材の下部が内側方向に撓むのを防止する事ができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に依れば、次の様な優れた効果を奏する事ができる。
(1) 可動マスト、フリーリフトシリンダ、キャリッジ、撓み防止体とで構成し、とりわけ、可動マストの下部に左右内側への撓みを防ぐ撓み防止体を着脱可能に設けたので、負荷時に可動マストの下部の撓みを防止できるだけでなく、可動マストの下方からキャリッジを挿入できて組立を容易に行う事ができる。
(2) 可動マストの下部に左右内側への撓みを防ぐ撓み防止体を着脱可能に設けるだけであるので、構造が極めて簡単であり、既存のものへも容易に適用する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のフリーマスト構造を示す正面図。
【図2】図1の側面図。
【図3】図1の平面図。
【図4】図1の底面図。
【図5】図1の斜視図。
【図6】従来のフリーマスト構造の要部を示す正面図。
【図7】図6の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
図1〜図5に於て、フリーマスト構造1は、可動マスト2、キャリッジ3、フリーリフトシリンダ4、撓み防止体5とからその主要部が構成されて居り、フォークリフト等の荷役車両に装備されるフルフリーマスト装置に適用される。
【0016】
フリーマスト構造1は、基本的には、固定マスト6と、固定マスト6に対して昇降可能な可動マスト2と、可動マスト2に対して昇降可能なキャリッジ3と、キャリッジ3に懸架された左右一対のフォーク(図示せず)と、固定マスト6に対して可動マスト2を昇降させる左右一対のリフトシリンダ7と、可動マスト2に対してキャリッジ3を昇降させる左右一対のフリーリフトシリンダ4と、フリーリフトシリンダ4のロッド側に回転可能に設けられた左右一対のチェーンホイール8と、可動マスト2とキャリッジ3との間に設けられてチェーンホイール8に掛渡された左右一対のリフトチェーン9と、から構成されている。
【0017】
フリーマスト構造1は、荷役車両の車体(図示せず)の前側に設けられて居り、車体に対して前後傾動可能に設けられた固定マスト6と、これに対して昇降可能な可動マスト2とを備えた所謂二段マストにしてあり、車体と固定マスト6との間に設けられたティルトシリンダ(図示せず)に依り前後傾動される。
【0018】
可動マスト2は、左右の枠材10と、両枠材10の上位どうしを連結する上位連結材11と、両枠材10の中位どうしを連結する中位連結材12と、両枠材10の下位どうしを連結する下位連結材13と、両枠材10の外側中位に設けられてフリーリフトシリンダ4とリフトチェーン8の一端を支持する左右のシリンダサポート14とを備えている。
各枠材10は、断面略J型を呈すると共に、上位連結材11は、前側垂直板と上側水平板と後側垂直板とに依り箱型を呈している。中位連結板12と下位連結板13とは、後側垂直板だけで形成されている。
【0019】
可動マスト2の左右外側には、左右一対のフリーリフトシリンダ4が設けられていると共に、上位連結材11を除く中位連結板12と下位連結板13とは、後側垂直板だけで形成されてキャリッジ3を可動マスト2の下方から挿入するのに支障がない様にされている。
【0020】
固定マスト6と可動マスト2との間には、図略しているが、固定マスト6に対して可動マスト2を円滑に昇降させる為のローラ(エンドローラやサイドローラ)が設けられている。
【0021】
キャリッジ3は、可動マスト2に対して昇降可能な左右のリフトブラケット15と、これの前側に付設されたフィンガーバー16と、これに懸架された左右のフォーク(図示せず)とを備えている。
リフトブラケット15には、図略しているが、可動マスト2に対して昇降を円滑にする為のローラ(エンドローラやサイドローラ)が設けられている。
【0022】
撓み防止体5は、可動マスト2の下部に着脱可能に設けられて可動マスト2の下部が左右内側へ撓むのを防ぐもので、この例では、可動マスト2の下部に固定されてキャリッジ3の挿入を許容する固定板17と、固定板17に移動可能に設けられて可動マスト2の枠体10内に挿入される左右の可動板18と、固定板17に対して可動板18を着脱可能に締結する締結手段19と、固定板17に対して可動板18を可動マスト2の枠体10方向に移動させる為の移動手段20とを備えている。
【0023】
固定板17は、水平板状を呈し、可動マスト2の下位連結材13の前側中央に固定されている。固定板17と可動マスト2の両枠材10との間には、キャリッジ3のリフトブラケット15とローラが通過可能な空間Aが形成されて居り、これに依りキャリッジ3を可動マスト2の下方から挿入して組立が行なえる。
【0024】
可動板18は、同じく水平板状を呈し、固定板17の下側に重ねられて左右方向の外端が可動マスト2の枠材10内に挿入されて当合される様になっている。
【0025】
締結手段19は、固定板17に形成されて左右方向に長尺な複数(片側に六つづつ)の長孔21と、可動板18に形成されて長穴21に連通する複数(合計六つ)の貫孔22と、これらに挿通されるボルト23と、これに螺合されるナット(ダブルナット)24とを備えている。
【0026】
移動手段20は、固定板17の中央寄り下面に垂設されて螺孔が形成された螺孔板25と、これに螺合されて可動板18の左右方向の内端に当合し得るボルト26と、これに螺合されるナット(ロックナット)27とを備えている。
【0027】
次に、この様な構成に基づいてその作用を述解する。
撓み防止体5の可動板18は、固定板17に対して着脱可能に設けられているので、固定板17に取付けたり、或は取外したりする事ができる。
【0028】
図1及び図4に示す如く、撓み防止体5の可動板18を固定板17に取付ける場合には、可動板18が固定板17の下側に重ねられて締結手段19のボルト23とナット24に依り締結されると共に、移動手段20の螺孔板25とボルト26に依りその左右方向の外端が可動マスト2の枠体10内に挿入されて押付けられる。移動手段20のボルト26の螺動に依り押付け力を加減できる。
そうすると、フリーリフトシリンダ4が作動される負荷時であっても、可動マスト2の左右の枠体10間には、固定板17と可動板18とから成る撓み防止体5が存在するので、可動マスト2の下部が内側に撓むのが防止される。この為、可動マスト2に案内されるキャリッジ3の昇降に支障を来たす惧れがない。
【0029】
図5に示す如く、撓み防止体5の可動板18を固定板17から取外した場合には、可動マスト2の両枠材10と撓み防止体5の固定板17との間には、空間Aが形成されるので、この空間Aを利用してキャリッジ3のリフトブラケット15やローラを通過させる事ができる。この為、可動マスト2の下方からキャリッジ3を挿入する事ができる。
【0030】
尚、フリーマスト構造1は、先の例では、二段マストであったが、これに限らず、例えば三段以上の多段マストでも良い。
撓み防止体5は、先の例では、固定板17と可動板18との合計三つで構成したが、これに限らず、例えば三つ以外の単数や複数で構成しても良い。
移動手段20は、先の例では、螺孔板25とボルト26等で構成したが、これに限らず、例えば固定板17と可動板18との間に形成されて締結手段19の締付けに依り固定板17に対して可動板18を可動マスト2の枠体10側に移動させる傾斜面(楔面)で構成しても良い。
【符号の説明】
【0031】
1…フリーマスト構造、2…可動マスト、3…キャリッジ、4…フリーリフトシリンダ、5…撓み防止体、6…固定マスト、7…リフトシリンダ、8…チェーンホイール、9…リフトチェン、10…枠材、11…上位連結材、12…中位連結材、13…下位連結材、14…シリンダサポート、15…リフトブラケット、16…フィンガーバー、17…固定板、18…可動板、19…締結手段、20…移動手段、21…長孔、22…貫孔、23…ボルト、24…ナット、25…螺孔板、26…ボルト、27…ナット、50…フリーマスト構造、51…固定マスト、52…可動マスト、53…キャリッジ、54…フォーク、55…リフトシリンダ、56…フリーリフトシリンダ、57…枠材、58…連結材、59…シリンダサポート、A…空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動マストの左右外側にフリーリフトシリンダが設けられると共に、キャリッジが可動マストの下方から挿入されるフリーマスト構造に於て、可動マストの下部が左右内側へ撓むのを防ぐ撓み防止体を可動マストの下部に着脱可能に設けた事を特徴とするフリーマスト構造。
【請求項2】
撓み防止体は、可動マストの下部に固定されてキャリッジの挿入を許容する固定板と、固定板に移動可能に設けられて可動マストの枠体内に挿入される左右の可動板と、固定板に対して可動板を着脱可能に締結する締結手段とを備えている請求項1に記載のフリーマスト構造。
【請求項3】
固定板に対して可動板を可動マストの枠体方向に移動させる為の移動手段を備えている請求項2に記載のフリーマスト構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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