説明

フリーラジカル後架橋された吸着剤および製造方法

【課題】従来の吸着剤の欠点を克服すること、並びに高度に架橋した吸着剤の吸着および脱着性能の双方を向上させる。
【解決手段】後架橋された吸着剤が(a)少なくとも55重量%の少なくとも1種のポリビニル芳香族モノマーおよび(b)45重量%までの少なくとも1種のモノビニル芳香族モノマーのモノマー単位;並びに0.5〜2.5mmol/gのペンダントビニル基;を含み;乾燥した吸着剤が約650〜1000m/gの範囲のBET比表面積、7.2〜10nmのBET平均細孔直径、1.29〜2.45mL/gのBET多孔度を有し、BJH吸着マイクロ細孔容積が全BJH吸着細孔容積の20%未満であり、およびHKマイクロ細孔容積が全BJH吸着細孔容積の21%未満である。本発明は、当該ポリマー系吸着剤の製造方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して後架橋された(post−crosslinked)ポリマー系吸着剤、および高い多孔度および高い表面積を有する後架橋されたポリマー系吸着剤を製造するワンポット方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔性の架橋した芳香族コポリマーは、有機化合物の分離および精製のための吸着剤として広く使用されている。ポリマー系吸着剤の吸着容量は、概して、表面積および多孔度の増加と共に増加する。多孔性で架橋した芳香族コポリマーの表面積および多孔度を増加させる一つの有効な方法は、C.Zhou et al.,Journal of Applied Polymer Science,John Wiley&Sons,Inc.,Vol.83,1668−1677(2002)およびQ.Yao et al.,Lizi Jiaohuan yu Xifu, Vol.19,98−103(2003)に記載されるように、架橋剤の含有量を増大させることにより、または米国特許第4,543,365号、第5,218,004号、第5,885,638号、第6,147,127号、第6,235,802号、第6,541,527号、A.K.Nyhus,et al.,Journal of Polymer Science,Part A:Polymer Chemistry,John Wiley&Sons,Inc.,Vol.38,1366−1378(2000)、およびK.Aleksieva,et al.,Polymer,Elsevier Science Publishers,Vol.47,6544−6550(2006)に記載されるように、コポリマー中に残留するビニル基を反応させることにより架橋を高架橋度まで増大させることである。高度に架橋したコポリマーは高い多孔度および高い表面積を有しており、よって表面積の増大と共に、良好な吸着性能、特に低分子の吸着性能を示す。しかし、ポロゲンの蒸留除去および元のコポリマーの乾燥は結果として増大したマイクロ細孔含量をもたらし、これは全細孔容積の30%を超える場合がある。この高いマイクロ細孔含量の吸着剤が有機化合物の回収に使用される場合には、高い吸着容量にもかかわらず、吸着された化合物は多くの場合、その吸着剤中のマイクロ細孔から素早くかつ完全に脱着させられるのが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4,543,365号明細書
【特許文献2】米国特許第5,218,004号明細書
【特許文献3】米国特許第5,885,638号明細書
【特許文献4】米国特許第6,147,127号明細書
【特許文献5】米国特許第6,235,802号明細書
【特許文献6】米国特許第6,541,527号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】C.Zhou et al.,Journal of Applied Polymer Science,John Wiley&Sons,Inc.,Vol.83,1668−1677(2002)
【非特許文献2】Q.Yao et al.,Lizi Jiaohuan yu Xifu, Vol.19,98−103(2003)
【非特許文献3】A.K.Nyhus,et al.,Journal of Polymer Science,Part A:Polymer Chemistry,John Wiley&Sons,Inc.,Vol.38,1366−1378(2000)
【非特許文献4】K.Aleksieva,et al.,Polymer,Elsevier Science Publishers,Vol.47,6544−6550(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明により取り組まれる課題は、吸着剤における多量のマイクロ細孔含量によりもたらされる遅い脱着速度のような従来の吸着剤の欠点を克服すること、および高度に架橋した吸着剤の吸着および脱着性能の双方を向上させることである。よって、本発明は、後架橋された吸着剤においてマイクロ細孔含量を低減させるように、ポロゲンを除去することなく、共重合の直後にフリーラジカル開始剤の存在下、多孔性で架橋した芳香族コポリマーを製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は後架橋された吸着剤であって、
(a)少なくとも55重量%の少なくとも1種のポリビニル芳香族モノマーおよび(b)45重量%までの少なくとも1種のモノビニル芳香族モノマーのモノマー単位;並びに
0.5〜2.5mmol/gのペンダントビニル基;
を含み;
乾燥した吸着剤が約650〜1000m/gの範囲のBET比表面積、7.2〜10nmのBET平均細孔直径、1.29〜2.45mL/gのBET多孔度を有し、BJH吸着マイクロ細孔容積が全BJH吸着細孔容積の20%未満であり、およびHKマイクロ細孔容積が全BJH吸着細孔容積の21%未満である;
後架橋された吸着剤に関する。
本発明は、
(i)ポロゲンとしての水不溶性有機化合物の存在下、少なくとも1種のポリビニル芳香族モノマーおよび少なくとも1種のモノビニル芳香族モノマーを含むモノマーを懸濁共重合する工程;
(ii)フリーラジカル開始剤およびポロゲン/水補助溶媒(co−solvent)の存在下、ポロゲンを用いて、コポリマーを後架橋する工程;並びに
(iii)後架橋された吸着剤を単離する工程;
を含む、ポリマー系吸着剤を製造するワンポット(one−pot)方法にも関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、高い容量で有機化合物を吸着する高い比表面積の樹脂を提供することにより、最新のポリマー系吸着剤の欠点を克服する。高い多孔度および低いマイクロ細孔含量の吸着剤は吸着された化合物が容易に樹脂から脱着されるのを可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の第1の態様は、後架橋された吸着剤であって、
(a)少なくとも55重量%の少なくとも1種のポリビニル芳香族モノマーおよび(b)45重量%までの少なくとも1種のモノビニル芳香族モノマーのモノマー単位;並びに
0.5〜2.5mmol/gのペンダントビニル基;
を含み;
乾燥した吸着剤が約650〜1000m/gの範囲のBET比表面積、7.2〜10nmのBET平均細孔直径、1.29〜2.45mL/gのBET多孔度を有し、BJH吸着マイクロ細孔容積が全BJH吸着細孔容積の20%未満であり、およびHKマイクロ細孔容積が全BJH吸着細孔容積の21%未満である;後架橋された吸着剤に関する。
【0009】
本発明において使用される場合、「BET」はBrunauer−Emmett−Teller理論を意味し、これは多層吸着に基づく吸着モデルである。BET平均細孔直径は、D=4V/Aの式を用いて計算される(D−平均細孔直径;V−細孔容積;A−比表面積)。
ここで使用される場合、「BJH」は、窒素吸着データから細孔サイズ分布を計算するためのBarret−Joyner−Halendaスキームを意味する。
ここで使用される場合、「HK」は、低圧吸着等温線からマイクロ細孔(micropore)サイズ分布を評価するためのHorvath−Kawazoe法を意味する。
【0010】
懸濁共重合に使用されるモノマーは少なくとも1種のポリビニル芳香族モノマーを含む。ポリビニル芳香族モノマーは、ジビニルベンゼン、メタ−ジビニルベンゼンおよびパラ−ジビニルベンゼンの混合物、トリビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、ジビニルナフタレン、並びにその誘導体、例えば、クロロジビニルベンゼンのようなハロゲン化置換体からなる群を含む。これらの化合物は単独でまたはその2種以上の混合物として使用されうる。特に好ましいポリビニル芳香族モノマー混合物はメタ−およびパラ−ジビニルベンゼンからなる。
【0011】
本発明の第1の態様において使用されるポリビニル芳香族モノマー(a)の量は、コポリマーの乾燥重量を基準にした重量パーセンテージで、少なくとも55%である。好ましいのは、63%〜80%である。
本発明において、パーセンテージの範囲における、用語「少なくとも」は、その範囲の出発点以上で、100%未満の全ての量を意味する。
【0012】
懸濁共重合に使用されるモノマーは少なくとも1種のモノビニル芳香族モノマーを含む。モノビニル芳香族モノマーの例としては、スチレン、および(C−C)アルキル−置換スチレン、例えば、エチルビニルベンゼン、メタ−エチルビニルベンゼンおよびパラ−エチルビニルベンゼンの混合物、ビニルトルエン、ビニルピリジン、並びにその誘導体、例えば、ビニルベンジルクロライドおよびエチルビニルベンジルクロライドのようなハロゲン化置換体が挙げられるがこれらに限定されない。これらの化合物は単独でまたはその2種以上の混合物として使用されうる。好ましいのは、メタ−およびパラ−エチルビニルベンゼンの混合物、並びにスチレン、メタ−およびパラ−エチルビニルベンゼンの混合物のような混合物から選択される。
【0013】
本発明の第1の態様において使用されるモノビニル芳香族モノマー(b)の量は、コポリマーの乾燥重量を基準にした重量パーセンテージで、45%までである。好ましいのは、37%までで、特に20%〜37%である。
【0014】
範囲における用語「まで」は0より大きく、その範囲の終点以下の全ての量を意味する。
【0015】
極端な実施形態においては、コポリマーは、コポリマーの乾燥重量を基準とした重量パーセンテージで、(a)ほぼ100%のメタ−およびパラ−ジビニルベンゼンの混合物、並びに(b)ほぼ0%のメタ−およびパラ−エチルビニルベンゼンの混合物のモノマー単位を含む。
【0016】
任意選択的に、モノマー単位は、コポリマーの乾燥重量を基準にして10重量%まで、好ましくは5重量%までの共重合される(c)極性ビニルモノマー、例えば、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチルを含むことができる。ここで言及されたモノマーについては、カテゴリー(c)に入るどのモノマーもカテゴリー(a)または(b)に入らない。
【0017】
本発明のある実施形態においては、コポリマーは、コポリマーの乾燥重量を基準にした重量パーセンテージで、(a)55%〜63%のメタ−ジビニルベンゼン、パラ−ジビニルベンゼン、並びにメタ−およびパラ−ジビニルベンゼンの混合物から選択される少なくとも1種のポリビニル芳香族モノマーと、(b)37%〜45%のメタ−エチルビニルベンゼン;パラ−エチルビニルベンゼン;スチレン;メタ−およびパラ−エチルビニルベンゼンの混合物;並びに、スチレン、メタ−およびパラ−エチルビニルベンゼンの混合物から選択される少なくとも1種のモノ不飽和ビニル芳香族モノマーとのモノマーを含む。
【0018】
本発明の別のより好ましい実施形態においては、コポリマーは、コポリマーの乾燥重量を基準とした重量パーセンテージで、(a)約63%のメタ−およびパラ−ジビニルベンゼンの混合物と、(b)約37%のメタ−およびパラ−エチルビニルベンゼンの混合物とのモノマーを含む。
【0019】
後架橋された吸着剤中のペンダントビニル基の含量は0.5〜2.5mmol/gの範囲であり、これは、後架橋する前の従来の共重合された多孔性芳香族コポリマーにおける含量よりも約1/3低い。
【0020】
本発明の第1の態様の吸着剤は、好ましくは、
(i)ポロゲンとしての水不溶性有機化合物の存在下、少なくとも1種のポリビニル芳香族モノマーおよび少なくとも1種のモノビニル芳香族モノマーを含むモノマーを懸濁共重合する工程;
(ii)フリーラジカル開始剤およびポロゲン/水補助溶媒の存在下、ポロゲンを用いて、コポリマーを後架橋する工程;並びに
(iii)後架橋された吸着剤を単離する工程;
を含む方法により製造される。
【0021】
本発明の第2の態様は、
(i)ポロゲンとしての水不溶性有機化合物の存在下、少なくとも1種のポリビニル芳香族モノマーおよび少なくとも1種のモノビニル芳香族モノマーを含むモノマーを懸濁共重合する工程;
(ii)フリーラジカル開始剤およびポロゲン/水補助溶媒の存在下、ポロゲンを用いて、コポリマーを後架橋する工程;並びに
(iii)後架橋された吸着剤を単離する工程;
を含む、ポリマー系吸着剤を製造する方法にさらに関する。
【0022】
ポリマー系吸着剤の製造方法は、モノマーの共重合およびコポリマーの後架橋の2つの反応を含み、この双方の反応においてポロゲンが存在する。本発明におけるポリマー系吸着剤の製造方法は、単一の反応容器内で行われることができ、すなわち、共重合反応後にポロゲンを除去せずに、かつ当該技術分野において通常説明されるように、後架橋する前に元のコポリマーを単離せずに、共重合および後架橋反応が完了する。
【0023】
本発明の第2の態様の懸濁共重合に使用されるモノマー単位は、その量を別にして、第1の態様のと同じである。本発明のポリマー系吸着剤の製造方法は、技術的に許容できるモノマー単位含量のいずれについても好適である。好ましくは、本発明の第2の態様のモノマー単位は少なくとも55重量%の少なくとも1種のポリビニル芳香族モノマーおよび45重量%までの少なくとも1種のモノビニル芳香族モノマーである。より好ましいのは、63〜80重量%の少なくとも1種のポリビニル芳香族モノマーおよび20〜37重量%の少なくとも1種のモノビニル芳香族モノマーである。
【0024】
懸濁共重合において使用されるポロゲンは、当該技術分野で開示されるように、有機塩素化合物、例えば、メチレンジクロライド、エチレンジクロライド、プロピレンジクロライド、クロロベンゼン、クロロトルエンなど;炭化水素、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなど;およびアルコール、例えば、メチルイソ−ブチルカルビノールおよびジ−イソ−ブチルカルビノールなどから選択される。ポロゲンのモノマーに対する容積比は1:2〜3:1であり、好ましくは1:1〜2.5:1である。
【0025】
共重合反応は従来の方法に従って、好ましくは懸濁助剤(例えば、分散剤、保護コロイドおよび緩衝剤)を含む連続水性相溶液を、次いで、モノマー、ポロゲンおよび開始剤を含む有機相溶液と混合して行われる。モノマーは高温で共重合され、コポリマーはビーズ形態である。
【0026】
上記懸濁共重合で得られるコポリマービーズは、次いで、フリーラジカル開始剤およびポロゲン/水補助溶媒の存在下で後架橋されて、増大した表面積および細孔容積を有する後架橋されたコポリマービーズを製造し、これはポリマー系吸着剤、イオン交換樹脂、溶媒含浸樹脂またはキレート樹脂としてのその使用を可能にする。
【0027】
コポリマーの後架橋に使用されるフリーラジカル開始剤には、過酸化物、例えば、過酸化ジベンゾイル、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート(tert−butyl peroxy−2−ethylhexanoate)、ジラウロイルペルオキシドなど;アゾ化合物、例えば、アゾビス(イソ−ブチロニトリル)および2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)などが挙げられる。フリーラジカル開始剤の好適な量は、コポリマーの乾燥重量の約0.5%〜約2%である。
【0028】
後架橋に使用されるポロゲン/水補助溶媒として作用する好適な有機物質には、ジ(エチレングリコール)モノ−メチルエーテル、ジ(エチレングリコール)モノ−エチルエーテル、ジ(エチレングリコール)モノ−ブチルエーテル、ジ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、ジ(エチレングリコール)ジエチルエーテル、ジ(エチレングリコール)エチルエーテルアセタート、ジ(プロピレングリコール)、ジ(プロピレングリコール)モノ−メチルエーテル、トリ(エチレングリコール)、トリ(エチレングリコール)モノ−メチルエーテル、トリ(エチレングリコール)モノ−エチルエーテル、トリ(プロピレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)モノ−メチルエーテル、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテルおよびポリ(エチレングリコール)−コ−(プロピレングリコール)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0029】
フリーラジカル開始剤およびポロゲン/水補助溶媒で処理する前に、コポリマーの外側へ水性相溶液を除去するのが好ましい。その水性相除去工程は、水性相溶液を反応容器からサイホンで吸い出し(siphoning)または排出すること、並びにフリーラジカル開始剤およびポロゲン/水補助溶媒の混合物を添加することを含むことができる。これは、続けて、留出物が透明になるまで高温で共沸蒸留するのが好ましい。
【0030】
フリーラジカル後架橋するのに好ましい条件は、高温、すなわち、約25℃から、好ましくは30℃から、大気圧でのポロゲンおよび水の共沸温度までを含む。加熱は、ポロゲンの95%超が除去されるまで、ポロゲンおよび水の共沸蒸留を維持するのが好ましい。
【0031】
後架橋されたコポリマーの後処理は、補助溶媒をサイホンで吸い出し(または排出し)、コポリマーを水で洗浄して残留するポロゲンおよび補助溶媒を除去することを含みうる。
【0032】
特に、共重合および後架橋条件はコポリマービーズの表面積および細孔容積に影響を有し、共重合条件には、例えば、スチレンのエチルビニルベンゼンに対するモル比、架橋性モノマーとしてのジビニルベンゼンの量、架橋の程度並びにポロゲンの存在および種類が挙げられ、後架橋条件には、例えば、触媒の量、反応時間並びに補助溶媒の種類が挙げられる。
【実施例】
【0033】
次の実施例は本発明を例示することを意図しており、請求項に限定されることを除いて限定されない。他に示されない限りは、全ての比率、部およびパーセンテージは重量基準であり、かつ使用された全ての薬剤は、他に特定されない限りは、良好な商業品質のものである。略語は次の意味を有する:
DVB:ジビニルベンゼン
EVB:エチルビニルベンゼン
TBP:tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート
【0034】
本発明の後架橋されたポリマー系吸着剤のBET比表面積およびBET多孔度はMicromeritics TriStar 3000装置を用いて試験され分析される。BET比表面積のパーセンテージ誤差は±5%である。BET平均細孔直径のパーセンテージ誤差は±1%である。BJH吸着細孔容積およびHKマイクロ細孔容積はQuantachrome Nova Instrumentを用いて試験され分析される。
【0035】
K.L.Hubbard,et al.,Reactive and Functional Polymers,Elsevier Science Publishers,vol.36,pp17−30(1998)に記載されるように、IRおよびラマンスペクトルはペンダントビニル基の含量を決定するために使用された。
【0036】
実施例1
メカニカルスターラー、還流凝縮器、温度計、窒素入口、マントルヒーターおよびサーモウォッチ(thermowatch)アセンブリを備えた2リットルの4つ口フラスコに、800gの脱イオン水、0.63gの分散剤、2.1gのホウ酸、および0.61gの水酸化ナトリウムからなるあらかじめ混合された水性相を入れた。撹拌速度は158rpmにあらかじめ設定し、ゆっくりとした窒素流れを開始した。攪拌機を止めて、188.6gの63%DVB/37%EVB、440.5gのトルエンおよび2.00gのTBPのあらかじめ混合した有機相を添加した。撹拌が開始され、混合物は60〜80℃に加熱され、6時間その温度に保たれた。
【0037】
次いで、反応混合物は50℃に冷却された。コポリマー−トルエン混合物から水性相がサイホンで除かれた。800gのポロゲン/水補助溶媒および2.00gのTBPの混合物が添加されて、コポリマー−トルエン−水−TBP−補助溶媒混合物がさらに加熱されて、補助溶媒および水の混合物の添加により流体分散物を維持しながら共沸蒸留でコポリマーを後架橋しかつトルエンを除去した。
【0038】
冷却するとすぐに、液相はサイホンにより除去され、コポリマーが水で洗浄された。後架橋されたコポリマーは、白色で半透明のビーズとして回収された。コポリマーの細孔構造を特徴づけると、次の特性を有している:1.2mmol/gのペンダントビニル基、1.74mL/gのBET多孔度、825m/gのBET表面積、8.43nmのBET平均細孔直径、1.83mL/gのBJH吸着細孔容積、0.303mL/gのBJH吸着マイクロ細孔容積(全BJH吸着細孔容積の16.6%)、および0.325mL/gのHKマイクロ細孔容積(全BJH吸着細孔容積の17.8%)。
実施例2〜6は実施例1に記載されたのと同様の方式で行われた。様々なあらかじめ混合された有機相が使用された。
【0039】
実施例2
209gの63%DVB/37%EVB、418gのトルエン、および2.1gのTBPのあらかじめ混合された有機相;1.1mmol/gのペンダントビニル基、1.53mL/gのBET多孔度、831m/gのBET表面積、7.36nmのBET平均細孔直径、1.71mL/gのBJH吸着細孔容積、0.306mL/gのBJH吸着マイクロ細孔容積(全BJH吸着細孔容積の17.9%)、および0.334mL/gのHKマイクロ細孔容積(全BJH吸着細孔容積の19.5%)。
【0040】
実施例3
209gの55%DVB/45%EVB、418gのトルエン、および2.1gのTBPのあらかじめ混合された有機相;0.5mmol/gのペンダントビニル基、1.29mL/gのBET多孔度、656m/gのBET表面積、1.36mL/gのBJH吸着細孔容積、7.87nmのBET平均細孔直径、0.270mL/gのBJH吸着マイクロ細孔容積(全BJH吸着細孔容積の19.9%)、および0.285mL/gのHKマイクロ細孔容積(全BJH吸着細孔容積の20.9%)。
【0041】
実施例4
220gの80%DVB/20%EVB、409gのトルエン、および2.2gのTBPのあらかじめ混合された有機相;2.5mmol/gのペンダントビニル基、1.68mL/gのBET多孔度、856m/gのBET表面積、7.85nmのBET平均細孔直径、1.85mL/gのBJH吸着細孔容積、0.330mL/gのBJH吸着マイクロ細孔容積(全BJH吸着細孔容積の17.8%)、および0.368mL/gのHKマイクロ細孔容積(全BJH吸着細孔容積の19.9%)。
【0042】
実施例5
189gの80%DVB/20%EVB、440gのトルエン、および2.2gのTBPのあらかじめ混合された有機相;2.4mmol/gのペンダントビニル基、2.45mL/gのBET多孔度、986m/gのBET表面積、9.94nmのBET平均細孔直径、2.85mL/gのBJH吸着細孔容積、0.430mL/gのBJH吸着マイクロ細孔容積(全BJH吸着細孔容積の15.1%)、および0.468mL/gのHKマイクロ細孔容積(全BJH吸着細孔容積の16.4%)。
【0043】
実施例6
165gの80%DVB/20%EVB、44gのスチレン、418gのトルエン、および2.1gのTBPのあらかじめ混合された有機相;1.1mmol/gのペンダントビニル基、1.52mL/gのBET多孔度、838m/gのBET表面積、7.26nmのBET平均細孔直径、1.70mL/gのBJH吸着細孔容積、0.303mL/gのBJH吸着マイクロ細孔容積(全BJH吸着細孔容積の17.8%)、および0.331mL/gのHKマイクロ細孔容積(全BJH吸着細孔容積の19.5%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後架橋された吸着剤であって、
(a)少なくとも55重量%の少なくとも1種のポリビニル芳香族モノマーおよび(b)45重量%までの少なくとも1種のモノビニル芳香族モノマーのモノマー単位;並びに
0.5〜2.5mmol/gのペンダントビニル基;
を含み;
乾燥した吸着剤が約650〜1000m/gの範囲のBET比表面積、7.2〜10nmのBET平均細孔直径、1.29〜2.45mL/gのBET多孔度を有し、BJH吸着マイクロ細孔容積が全BJH吸着細孔容積の20%未満であり、およびHKマイクロ細孔容積が全BJH吸着細孔容積の21%未満である;
後架橋された吸着剤。
【請求項2】
(i)ポロゲンとしての水不溶性有機化合物の存在下、少なくとも1種のポリビニル芳香族モノマーおよび少なくとも1種のモノビニル芳香族モノマーを含むモノマーを懸濁共重合する工程;
(ii)フリーラジカル開始剤およびポロゲン/水補助溶媒の存在下、ポロゲンを用いて、コポリマーを後架橋する工程;並びに
(iii)後架橋された吸着剤を単離する工程;
を含む方法により吸着剤が製造される、請求項1に記載の吸着剤。
【請求項3】
(i)ポロゲンとしての水不溶性有機化合物の存在下、少なくとも1種のポリビニル芳香族モノマーおよび少なくとも1種のモノビニル芳香族モノマーを含むモノマーを懸濁共重合する工程;
(ii)フリーラジカル開始剤およびポロゲン/水補助溶媒の存在下、ポロゲンを用いて、コポリマーを後架橋する工程;並びに
(iii)後架橋された吸着剤を単離する工程;
を含む、ポリマー系吸着剤を製造する方法。
【請求項4】
ポリビニル芳香族モノマーがメタ−およびパラ−ジビニルベンゼンの混合物である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
モノビニル芳香族モノマーがメタ−およびパラ−エチルビニルベンゼンの混合物、並びにスチレン、メタ−およびパラ−エチルビニルベンゼンの混合物から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
モノマー単位が(a)少なくとも55%の少なくとも1種のポリビニル芳香族モノマーおよび(b)45%までの少なくとも1種のモノ不飽和ビニル芳香族モノマーを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
モノマー単位が、コポリマーの乾燥重量を基準にした重量パーセンテージで、(a)63%〜80%の少なくとも1種のポリビニル芳香族モノマーおよび(b)20%〜37%の少なくとも1種のモノ不飽和ビニル芳香族モノマーを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
フリーラジカル開始剤が過酸化化合物およびアゾ化合物からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
フリーラジカル開始剤がtert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアートである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ポロゲンが、メチレンジクロライド、エチレンジクロライド、プロピレンジクロライド、クロロベンゼン、クロロトルエン;炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メチルイソブチルカルビノールおよびジ−イソ−ブチルカルビノールから選択される、請求項3に記載の方法。

【公開番号】特開2010−7069(P2010−7069A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−130332(P2009−130332)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】