説明

フルオレンコポリマーを含むフィルム

【課題】ホール輸送性と電子輸送性の両方を示す物質を提供する。
【解決手段】(a)少なくとも10%のモノマー単位が、9−置換フルオレン部分、9,9−二置換フルオレン部分またはそれらの組合せから選択されるフルオレン部分であるモノマー単位;及び(b)互いに異なるがともに非局在化π電子を含んでなる2種の他の部分を含んでなる、少なくとも1%のモノマー単位を含んでなるコポリマーを少なくとも0.1重量%含んでなるフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、Naval Air Walfare Center #N00421−98C−1187との政府契約のもとに行われる。
【0002】
本発明は、フルオレンコポリマー、そのようなコポリマーを含んでなるポリマーブレンドおよびこれらのコポリマーに由来する1つまたは複数のフィルムを含む電子素子(ポリマー発光ダイオードなど)に関する。
【背景技術】
【0003】
共役ポリマーは、非局在化したp電子の存在により、無機半導体の持つ光学的および電子的特性を示す。ポリ(9,9−二置換−フルオレン−2,7−ジイル)類は、有利な特性を持つ半導体ポリマーの一群を構成している。その芳香族骨格は、化学的および光化学的劣化に強い。各フルオレンモノマーのビフェニレン単位はC9原子により平面状配置に固定されている。C9上の置換基は、pシステムの非局在化を破壊しかねない、隣接フルオレン単位間のねじれ歪みを導入せずに物理的および化学的特性を修飾するように選択できる。実際、米国特許第5,708,130号のポリ(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン−2,7−ジイル)は、青色発光ダイオード(LED)用の有効な発光体であり(Grice,et al.,Applied Physics Letters,Vol.73,1998,p.629−631)、電子素子の非常に望ましい特徴である高いキャリアー移動度を示すことが示されている(Redecker,et al.,Applied Physics Letters,Vol.73,1998,p.1565−1567)。
【0004】
電子素子におけるこれらのフルオレンポリマーの応用範囲を広げるため、その光学的および電子的特性をさらに修飾する手段が望まれている。この点で、ポリマーの光学的特性にはその吸光および光ルミネッセンススペクトルがあり、電子的特性にはイオン化ポテンシャル、電子親和性、バンドギャップおよびキャリアー輸送および移動性がある。1997年5月21日に出願された米国特許出願番号第08/861,469号は、それぞれ9,9−二置換フルオレンおよび他のコモノマーを含むフルオレンコポリマーにより特性を修飾する方法を教示している。例えば、フルオレンおよび芳香族アミンを含んでなるコポリマーは、より低い(真空レベルにより近い)イオン化ポテンシャルおよび優先的なホール輸送性を有し、シアノ含有部分を有するコポリマーは、フルオレンホモポリマーに比較してより高い電子親和性および優先的な電子輸送性を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子的応用分野の多くでは、活性物質がホール輸送性と電子輸送性の両方を示すことが必要とされる。例えば、LEDの効率を最大にするには、ポリマーは、理想的には同程度に良好にホールおよび電子を輸送しなくてはならない(Bradley et al.,in Springer Series in Solid State Sciences,Vol.107,Springer−Verlag Berlin Heidelberg,1992,p.304−309)。1997年5月21日に出願された米国特許出願番号第08/861,469号の、フルオレン部分および他の1種のコモノマーを含んでなるコポリマーは、この要求に応えることができない。したがって、さらなる改良の必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、9−置換および/または9,9−二置換フルオレン部分と非局在化p電子を含む少なくとも2種の他のコモノマーとのコポリマーに関する。好ましくは、これらのコポリマーの全モノマー単位の少なくとも10%は、9−置換および/または9,9−二置換フルオレンから選択される。より好ましくは、これらのコポリマーのモノマー単位の少なくとも15%は、9−置換および/または9,9−二置換フルオレンから選択される。最も好ましくは、これらのコポリマーのモノマー単位の少なくとも20%は、9−置換および/または9,9−二置換フルオレンから選択される。各コポリマーは、任意の比率で2種以上の非フルオレンコモノマーを含む。これらのコポリマーは、一般的な有機溶媒に対する優れた溶解度(1g/Lを超える)、ピンホールのないフィルムを形成する能力およびポリスチレンを標準として少なくとも3000g/モル、好ましくは少なくとも10,000g/モル、最も好ましくは少なくとも20,000g/モルの重量平均分子量という特徴がある。それらは、さらに、10未満、好ましくは5未満、最も好ましくは3未満の多分散性という特徴も有する。これらのコポリマーは、350nmから1,000nmの範囲に光ルミネッセンス発光を示し、200nmから600nmで吸光を示す。本発明のコポリマーは、発光ダイオード、光電池、光伝導体および電界効果トランジスターを含む電子素子中の活性成分として有用である。
【0007】
本発明は、フルオレンコポリマーおよびそのようなコポリマーのフィルムを含んでなる電子素子に関する。主題コポリマーは、それぞれ構造IおよびIIで示される9−置換および/または9,9−二置換フルオレン部分を、残存モノマー単位(RMU)を基準にして、少なくとも10%含んでなる。残存モノマー単位とは、ポリマー骨格中に取り込まれたモノマー部分である。例えば、1,4−フェニレンは、官能基の化学的性質に関わらず、1,4−二官能性ベンゼンモノマーの残存モノマー単位である。
【0008】
【化1】

【0009】
構造IおよびIIにおいて、R1およびR2は、それぞれの存在において独立に、水素、C1-20ヒドロカルビル、C1-20ヒドロカルビルオキシ、C1-20チオヒドロカルビルオキシまたはシアノである。R1およびR2は、好ましくは、それぞれの存在において独立に、水素、C1-20アルキル、C6-10アリールまたはアルキル置換アリール、C6-10アリールオキシまたはアルキル置換アリールオキシ、C1-12アルコキシ/チオアルコキシおよびシアノである。さらに好ましくは、R1およびR2は、それぞれの存在において独立に、水素、C1-10アルキル、フェニルおよびシアノである。R3およびR4は、それぞれの存在において独立に、水素、場合によりC1-20アルコキシ/アリールオキシ、チオアルコキシ/チオアリールオキシ、第二/第三アミン、ヒドロキシ、カルボン酸/スルホン酸、シアノおよびエステルで置換されていてよいC1-20ヒドロカルビル;場合によりC1-20アルコキシ/アリールオキシ、チオアルコキシ/チオアリールオキシ、第二/第三アミン、ヒドロキシ、カルボン酸/スルホン酸、シアノおよびエステルで置換されていてよいC6-20アリールである。R3およびR4は、それらが結合しているオレフィン炭素(構造I)とともにC3-12環状構造を形成していてもよく、前記環状構造はさらにリン、イオウ、酸素および窒素などのヘテロ原子を1つまたは複数含んでいてもよい。好ましくは、R3およびR4は、それぞれの存在において独立に、水素、場合によりC1-12アルコキシ/アリールオキシ、チオアルコキシ/チオアリールオキシ、第二/第三アミン、ヒドロキシ、カルボン酸/スルホン酸、シアノおよびエステルで置換されていてよいC1-12アルキル;場合によりC1-12アルコキシ/アリールオキシ、チオアルコキシ/チオアリールオキシ、第二/第三アミン、ヒドロキシ、カルボン酸/スルホン酸、シアノおよびエステルで置換されていてよいC6-20アリールである。最も好ましくは、R3およびR4は、それぞれの存在において独立に、水素、場合によりC1-10アルコキシ/アリールオキシ、チオアルコキシ/チオアリールオキシ、第二/第三アミン、ヒドロキシ、カルボン酸/スルホン酸、シアノおよびエステルで置換されていてよいC1-8アルキル;場合によりC1-10アルコキシ/アリールオキシ、チオアルコキシ/チオアリールオキシ、第二/第三アミン、ヒドロキシ、カルボン酸/スルホン酸、シアノおよびエステルで置換されていてよいC6-12アリールである。R5およびR6は、それぞれの存在において独立に、水素、場合によりC1-20アルコキシ/アリールオキシ、チオアルコキシ/チオアリールオキシ、第二/第三アミン、ヒドロキシ、カルボン酸/スルホン酸、シアノおよびエステルで置換されていてよいC1-20ヒドロカルビル;場合によりC1-20アルコキシ/アリールオキシ、チオアルコキシ/チオアリールオキシ、第二/第三アミン、ヒドロキシ、カルボン酸/スルホン酸、シアノおよびエステルで置換されていてよいC6-20アリールである。R5およびR6は、フルオレンのC9炭素(構造II)とともにC3-12環状構造を形成していてもよく、前記環状構造はさらにリン、イオウ、酸素および窒素などのヘテロ原子を1つまたは複数含んでいてもよい。好ましくは、R5およびR6は、それぞれの存在において独立に、水素、場合によりC1-12アルコキシ/アリールオキシ、チオアルコキシ/チオアリールオキシ、第二/第三アミン、ヒドロキシ、カルボン酸/スルホン酸、シアノおよびエステルで置換されていてよいC1-12アルキル;場合によりC1-12アルコキシ/アリールオキシ、チオアルコキシ/チオアリールオキシ、第二/第三アミン、ヒドロキシ、カルボン酸/スルホン酸、シアノおよびエステルで置換されていてよいC6-20アリールである。最も好ましくは、R5およびR6は、それぞれの存在において独立に、水素、場合によりC1-10アルコキシ/アリールオキシ、チオアルコキシ/チオアリールオキシ、第二/第三アミン、ヒドロキシ、カルボン酸/スルホン酸、シアノおよびエステルで置換されていてよいC1-8アルキル;場合によりC1-10アルコキシ/アリールオキシ、チオアルコキシ/チオアリールオキシ、第二/第三アミン、ヒドロキシ、カルボン酸/スルホン酸、シアノおよびエステルで置換されていてよいC6-12アリールである。これらのコポリマーは、一般的な有機溶媒に対する優れた溶解度(1g/Lを超える)、ピンホールのないフィルムを形成する能力およびポリスチレンを標準として少なくとも3000g/モル、好ましくは少なくとも10,000g/モル、最も好ましくは少なくとも20,000g/モルの重量平均分子量という特徴がある。それらは、さらに、10未満、好ましくは5未満、最も好ましくは3未満の多分散性という特徴も有する。これらのコポリマーは、350nmから1,000nmの範囲に光ルミネッセンス発光を示し、200nmから600nmで吸光を示す。本発明のコポリマーは、発光ダイオード、光電池、光伝導体および電界効果トランジスターを含む電子素子中の活性成分として有用である。
【0010】
第1の実施態様において、本発明のコポリマーは、少なくとも10%RMUの構造Iおよび/またはIIならびに少なくとも1%の2種以上のホール輸送性を有するRMUを含んでなる。ホール輸送性は、電子豊富なRMUによりポリマーに付与される。例としては、電子吸引性置換基を持たないスチルベン類または1,4−ジエン類、第三アミン類、N,N,N’,N’−テトラアリール−1,4−ジアミノベンゼン、N,N,N’,N’−テトラアリールベンジジン、N−置換カルバゾール類、ジアリールシラン類および電子吸引性置換基を持たないチオフェン/フラン/ピロ−ル類から誘導されるものがある。これらのホール輸送性RMUは、ホール輸送性に著しく悪影響を与えない限り、種々の置換基を持っていてよい。好ましい置換基は、場合によりC1-6アルコキシおよびC6-12アリールオキシで置換されていてよいC1-20アルキル、C6-20アリールおよびアルキルアリールである。第三芳香族アミン類、N,N,N’,N’−テトラアリール−1,4−ジアミノベンゼン、N,N,N’,N’−テトラアリールベンジジン、チオフェンおよびビチオフェンから誘導されたRMUが特に有効である。コポリマーが、少なくとも15%の構造Iおよび/またはIIのRMUならびに少なくとも10%の2種以上のホール輸送性RMUを含んでなるのが好ましい。コポリマーが、少なくとも20%の構造Iおよび/またはIIのRMUならびに少なくとも20%の2種以上のホール輸送性を有するRMUを含んでなるのが最も好ましい。IとIIの比は際限なく変化してよく、同様に種々のホール輸送性RMUの比も、コポリマー中のその合わせたパーセンテージが特定の範囲内にある限り際限なく変化してよい。本発明のコポリマー中のホール輸送性RMUに関して、それらが全て同じ化学的種類に属さなくてはならないという制限はない。本発明のコポリマーは、例えば、シラニルタイプのRMU、チオフェンタイプのRMUおよび第三アミンタイプのRMUを含んでもよい。
【0011】
第2の実施態様において、本発明のコポリマーは、少なくとも10%の構造IおよびIIのRMUならびに少なくとも1%の電子輸送性を有する2種以上のRMUを含んでなる。電子輸送性は、電子不足RMUによりポリマーに付与される。例としては、F、シアノ、スルホニル、カルボニル、ニトロ、カルボキシなどの電子吸引基;イミン結合を含む部分および縮合多環芳香族を含むRMUがある。縮合多環芳香族には、アセナフテン、フェナントレン、アントラセン、フルオランテン、ピレン、ペリレン、ルブレン、クリセンおよびコレンがある。イミン結合を含む五員へテロ環には、オキサゾール/イソキサゾール類、N−置換イミダゾール/ピラゾール類、チアゾール/イソチアゾール、オキサジアゾール類およびN−置換トリアゾール類がある。イミン結合を含む六員ヘテロ環には、ピリジン類、ピリダジン類、ピリミジン類、ピラジン類、トリアジン類およびテトラゼン類がある。イミン結合を含むベンゾ縮合ヘテロ環には、ベンゾオキサゾール類、ベンゾチアゾール、ベンズイミダゾール類、キノリン、イソキノリン類、シンノリン類、キナゾリン類、キノキサリン類、フタラジン類、ベンゾチアジアゾール類、ベンゾトリアジン類、フェナジン類、フェナントリジン類およびアクリジン類がある。より複雑なRMUには、1,4−テトラフルオロフェニレン、1,4’−オクタフルオロビフェニレン、1,4−シアノフェニレン、1,4−ジシアノフェニレンおよび
【0012】
【化2】

【0013】
がある。
【0014】
これらの電子輸送性RMUは、電子輸送性に著しく悪影響を与えない限り、種々の置換基を持っていてよい。好ましい置換基は、場合によりC1-6アルコキシおよびC6-12アリールオキシにより置換されていてよいC1-20アルキル、C6-20アリールおよびアルキルアリールである。パーフルオロビフェニル、キノキサリン類、シアノ置換オレフィン類、オキサジアゾールおよびベンゾチアジアゾール類から誘導されたRMUが特に有効である。コポリマーが、少なくとも15%の構造Iおよび/またはIIのRMUならびに少なくとも10%の2種以上の例示された電子輸送性RMUを含んでなることが好ましい。コポリマーが、少なくとも20%の構造Iおよび/またはIIのRMUならびに少なくとも20%の2種以上の例示された電子輸送性RMUを含んでなることが最も好ましい。IとIIの比は際限なく変化してよく、同様に種々の電子輸送性RMUの比も、コポリマー中のその合わせたパーセンテージが特定の範囲内にある限り際限なく変化してよい。本発明のコポリマー中の電子輸送性RMUに関して、それらが全て同じ化学的種類に属さなくてはならないという制限はない。本発明のコポリマーは、例えば、シアノオレフィンタイプのRMU、オキサジアゾールタイプのRMUおよび縮合多核芳香族タイプのRMUを含んでもよい。
【0015】
第3の実施態様において、本発明のコポリマーは、少なくとも10%の構造Iおよび/またはIIのRMU、少なくとも1%の1種または複数のホール輸送性RMUならびに少なくとも1%の1種または複数の電子輸送性RMUを含んでなる。ホール輸送性RMUおよび電子輸送性RMUは、既に上記で定義したものの中から選択される。本実施態様のコポリマーが、少なくとも15%の構造Iおよび/またはIIのRMU、少なくとも5%の1種または複数のホール輸送性RMUならびに少なくとも5%の1種または複数の電子輸送性RMUを含んでなるのがより好ましい。本実施態様のコポリマーが、少なくとも20%の構造Iおよび/またはIIのRMU、少なくとも10%の1種または複数のホール輸送性RMUならびに少なくとも10%の1種または複数の電子輸送性RMUを含んでなるのが最も好ましい。IとIIの比は際限なく変化してよく、同様に種々のホール輸送性RMUの比も、コポリマー中のその合わせたパーセンテージが特定の範囲内にある限り際限なく変化してよい。本発明のコポリマー中のホール輸送性RMUに関して、それらが全て同じ化学的種類に属さなくてはならないという制限はない。本発明のコポリマーは、例えば、シラニルタイプのRMU、チオフェンタイプのRMUおよび第三アミンタイプのRMUを含んでもよい。同様に、本発明のコポリマー中の電子輸送性RMUに関して、それらが全て同じ化学的種類に属さなくてはならないという制限はない。本発明のコポリマーは、例えば、シアノオレフィンタイプのRMU、オキサジアゾールタイプのRMUおよび縮合多核芳香族タイプのRMUを含んでもよい。
【0016】
第4の実施態様において、本発明のコポリマーは、少なくとも10%の構造Iおよび/またはIIのRMU、場合によりC1-12アルキル/アルコキシおよびC6-10アリール/アリールオキシにより置換されていてよいベンゼン、ナフタレンおよびビフェニレンからそれぞれの存在において独立に誘導された、少なくとも1%の1種または複数のRMU(以下アリーレンRMUと称する)ならびに上記で定義されたホール輸送性および電子輸送性RMUから選択された1種または複数のRMUを少なくとも1%含んでなる。本実施態様のコポリマーが、少なくとも15%の構造Iおよび/またはIIのRMU、少なくとも5%の1種または複数のアリーレンRMUならびに上記で定義されたホール輸送性および電子輸送性RMUから選択された1種または複数のRMUを少なくとも1%含んでなることが好ましい。本実施態様のコポリマーが、少なくとも20%の構造Iおよび/またはIIのRMU、少なくとも10%の1種または複数のアリーレンRMUならびに上記で定義されたホール輸送性および電子輸送性RMUから選択された1種または複数のRMUを少なくとも5%含んでなることが最も好ましい。IとIIの比は際限なく変化してよく、同様に種々のアリーレンRMUの比も、コポリマー中のその合わせたパーセンテージが特定の範囲内にある限り際限なく変化してよい。アリーレンRMUを取り入れると、コポリマーの熱的、光学的および電子的特性を修飾することができる。
【0017】
第5の実施態様は、各成分の相対比率に制限のない本発明の2種以上のコポリマーのブレンドに関する。そのようなブレンドは、溶液ブレンドまたは溶融状態でのブレンドにより調製できる。
【0018】
第6の実施態様は、少なくとも0.1重量%の少なくとも1種の本発明のコポリマーを、米国特許第5,708,130号、米国特許第5,777,070号および米国特許出願番号第08/861,469号に開示されたフルオレンホモポリマーまたはコポリマーの少なくとも1種とともに含むブレンドに関する。そのようなブレンドは、溶液ブレンドまたは溶融状態でのブレンドにより調製できる。
【0019】
第7の実施態様は、少なくとも0.1重量%の少なくとも1種の本発明のコポリマーを、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリスルホン、ポリカーボネートおよびポリウレタンなどの少なくとも1種の他の非フルオレンポリマーとともに含むブレンドに関する。そのようなブレンドは、溶液ブレンドまたは溶融状態でのブレンドにより調製できる。
【0020】
第8の実施態様は、少なくとも0.1重量の少なくとも1種の本発明のコポリマーを含むフィルムに関する。
【0021】
本発明の第9の実施態様は、1種または複数の本発明のコポリマーを含んでなる発光ダイオードであって、前記コポリマーが単層フィルムまたは多層フィルムとして存在し、その厚さの合計が10nmから1000nmの範囲、好ましくは25nmから500nmの範囲、最も好ましくは50nmから300nmの範囲である発光ダイオードに関する。コポリマーフィルムは、スピンコーティング、ローラーコーティング、浸漬コーティング、スプレーコーティングおよびドクターブレーディングなどの溶液系処理技術により形成できる。2種以上のコポリマーが使用されるとき、それらを異なる層として別々に付着させてもよいし、所望のコポリマーのブレンドを含む溶液から1つの層として付着させてもよい。有機発光ダイオードは、正のバイアスが素子にかけられるとアノードから有機フィルムにホールが注入され、カソードから有機フィルムに電子が注入されるように、アノードとカソードに挟まれた有機フィルムからなるのが典型的である。ホールと電子の組合せにより励起が生じ、フォトンを放出することにより励起は基底状態へ放射減衰する。アノードおよびカソードは、当業界に公知のいかなる材料でも、いかなる構造でできていてもよい。アノードは透明であるのは好ましい。スズおよびインジウムの混合酸化物(ITO)は、その導電性および透明性のためアノードとして有用である。有機フィルムが発する光が見えるように、ITOはガラスまたはプラスティックなどの透明な基板上に付着される。有機フィルムは、いくつかの個別な層の複合物でもよいし、それぞれ特定の機能のために設計されたいくつかの物質のブレンドでもよい。カソードは一般に、蒸着またはスパッタリングにより有機フィルムの表面に付着された金属フィルムである。
【0022】
本発明の第10の実施態様は、1種または複数の本発明のコポリマーを含んでなる光電池であって、前記コポリマーが単層フィルムまたは多層フィルムとして存在し、その厚さの合計が10nmから1000nmの範囲、好ましくは25nmから500nmの範囲、最も好ましくは50nmから300nmの範囲である光電池に関する。コポリマーフィルムは、スピンコーティング、ローラーコーティング、浸漬コーティング、スプレーコーティングおよびドクターブレーディングなどの溶液系処理技術により形成できる。2種以上のコポリマーが使用されるとき、それらを異なる層として別々に付着させてもよいし、所望のコポリマーのブレンドを含む溶液から1つの層として付着させてもよい。光電池とは、入射光のエネルギーを電気エネルギーに変換できる1種の光電素子を意味する。光電池の例は、光起電性素子、太陽電池、フォトダイオードおよび光検出器である。光電池は通常、透明基板上に置かれた透明または半透明な第1の電極を含んでなる。次いで、ポリマーフィルムが第1の電極上に形成され、それが次に第2の電極に覆われる。基板および第1の電極を透過した入射光は、ポリマーフィルムにより励起子に変換され、励起子は適当な状況下で電子およびホールに分離し、それにより電流を生じる。
【0023】
本発明の第11の実施態様は、絶縁体上に置かれた1種または複数の本発明のコポリマー(半導体ポリマーとして作用する)を含んでなる金属−絶縁体−半導体電界効果トランジスターであって、前記コポリマーが単層フィルムまたは多層フィルムとして存在し、その厚さの合計が10nmから1000nmの範囲、好ましくは25nmから500nmの範囲、最も好ましくは50nmから300nmの範囲である金属−絶縁体−半導体電界効果トランジスターに関する。コポリマーフィルムは、スピンコーティング、ローラーコーティング、浸漬コーティング、スプレーコーティングおよびドクターブレーディングなどの溶液系処理技術により形成できる。2種以上のコポリマーが使用されるとき、それらを異なる層として別々に付着させてもよいし、所望のコポリマーのブレンドを含む溶液から1つの層として付着させてもよい。2つの電極(ソースおよびドレイン)は半導体ポリマーに結合しており、第3の電極(ゲート)は絶縁体の反対側の表面にある。半導体ポリマーがホール輸送性(すなわち大多数のキャリアーが正孔)である場合、ゲート電極に負の直流電圧を印加すると、ポリマー−絶縁体界面付近にホールが蓄積され、伝導チャネルができ、その中を通って電流がソースとドレイン間を流れることができる。トランジスターは「オン」状態である。ゲート電圧を逆転させると、蓄積ゾーンのホールが消耗し電流が停止する。トランジスターは「オフ」状態である。半導体ポリマーが電子輸送性(すなわち大多数のキャリアーが電子)である場合、ゲート電極に正の直流電圧を印加すると、ポリマー−絶縁体界面付近にホールの欠乏が起こり(電子の蓄積)、伝導チャネルができ、その中を通って電流がソースとドレイン間を流れることができる。
【0024】
本発明のコポリマーは、種々の重縮合プロセスにより調製することができる。ニッケルおよびパラジウムなどの遷移金属により触媒される、芳香族/ビニル/アセチレンモノマーのカップリングを含むプロセスが特に効果的である。
【0025】
零価ニッケルを用いたアリールハライドとビニルハライドとのカップリングは、Semmelhackら(J.Am.Chem.Soc.,Vol.103,1981,p.6460−6471)により報告された。零価ニッケルを用いたアリールハライドと他のヘテロアロマティックハライドとのカップリングは、Yamamotoら(Macromolecules,Vol.25,1992,p.1214−1223)により議論された。これらの方法は、空気と湿気に敏感な零価ニッケルを大過剰に必要とする。真に触媒量のニッケルおよび還元剤として大過剰の亜鉛を必要とする変形版の方法は、Colonら(J.Polym.Sci.,Polym.Chem.,Vol.28,1990,p.367−383)により最初に報告され、その後Uedaら(Macromolecules,Vol.24,1991,p.2694−2697)により完全共役ポリマーにうまく応用され、実験取扱いに関する改良を示している。これらの方法では、それぞれ2つのハロゲン置換基(好ましくは臭素および塩素)を持つモノマーの混合物は、各モノマーの反応性がほとんど同じである場合、重合して基本的にランダムな性質を持つコポリマーとなる。反応性が著しく異なる場合、より反応性の高いモノマーが、反応性の低いモノマーよりも優先的に重合されるだろう。その結果として、構造と秩序が不確かな幾分「ブロッキー(blocky)」コポリマーになるだろう。これらの方法の別な欠点とは大量の金属試薬の存在であり、それらは電子素子の性能に与えうる悪影響を避けるため、得られたコポリマーから徹底的に除去しなければならないことが多い。
【0026】
パラジウムにより触媒されるカップリング反応は通常より好ましいが、その理由は必要とするパラジウムの量が真に触媒量であり、得られるコポリマーの構造および秩序がより予測可能であるからである。Chenら(Macromolecules,Vol.26,1993,p.3462−3463)は、パラジウムにより触媒される2−ブロモ−5−(ブロモジンク)アルキルチオフェン類のカップリングにより位置特異的なポリチオフェンを製造した。しかし、得られた分子量は非常に低かった。パラジウムにより触媒されるアリールハライドとアセチレンとのカップリングは、Yamamotoら(Macromolecules,Vol.27,1994,p.6620−6626)によりコポリマーを製造するのにうまく利用され、アリールハライドとオレフィンとのカップリングはGreinerら(Macromol.Chem.Phys.,Vol.197,1996,p.113−134)により同様に重合に利用された。
【0027】
好ましい縮合反応は、MiyauraおよびSuzuki(Chemical Reviews,Vol.95,1995,p.2457−2483)により教示されたとおり、有機ホウ素化合物と有機ハライドとのカップリングをするものである。米国特許第5,777,070号に報告されているとおりInbasekaranらにより、この反応は改良されて高分子量ポリマーの製造に適応されてきた。重合は、芳香族/ビニルジボロン酸/エステル(以下Aタイプモノマーと称す)と芳香族/ビニルジブロマイド(以下Bタイプモノマーと称す)のほぼ等モルの混合物を反応させることにより行われる。Aモノマーの合計モル量がBモノマーの合計モル量にほぼ等しい限り、2種以上のAタイプモノマーおよび2種以上のBタイプモノマーを用いてもよい。この方法でできるコポリマーの独特な特徴は、各AタイプモノマーはBタイプモノマーとのみ反応するので専らA−B二連子の形成によって鎖成長が起こるといる事実から生じる秩序である。さらに高い程度の構造的秩序を持つコポリマーを得るには、より複雑な構造のモノマーを有利に用いることができる。例えば、適当に官能基のついた電子輸送性RMUを、ホール輸送性部分を持つ2つの分子と反応させると、Br−HTRMU−ETRMU−HTRMU−Brという構造の新規モノマーを得ることができるが、ここでHTRMUおよびETRMUはそれぞれホール輸送性RMUおよび電子輸送性RMUを表す。
【0028】
以下の詳細な実施例は本発明を説明するために与えられ、いかなる方法においても限定的であると理解されるべきではない。
【0029】
内部粘度測定は全て、25℃のTHF溶液(0.5g/dL)で行われ、dL/グラムの単位で表される。使用されたモノマーの式は以下のとおりである。
【0030】
【化3】

【0031】
【化4】

【0032】
【化5】

【0033】
モノマー2〜5および11は公知の化合物であり(WO 97/33193および米国特許第5,777,070号参照)、モノマー20は市販されている。以下の実施例に使用された他のモノマーの調製手順を以下に示す。全ての化合物は、その構造と一致するスペクトルデータを示している。
【0034】
9,9−二置換−2,7−フルオレンジボロネート(1)の調製の一般的手順
窒素中で−78℃において攪拌している9,9−二置換−2,7−ジブロモフルオレン(10mmol)と50mLのテトラヒドロフラン(THF)の混合物に、ヘキサン中の2.5M n−ブチルリチウム溶液(8mL、20mmol)を10分かけて滴下した。ジリチオ中間体が数分で沈殿し、得られた無色の懸濁液を−78℃で1時間攪拌した。トリイソプロピルボレート(7.5g、40mmol)を一度に加え、得られたスラリー(攪拌を容易にするため追加のTHF20〜30mLを加えた場合もある)を−78℃で1時間、室温で16時間攪拌し、25mLの濃塩酸を含む300mLの氷水に注いだ。30分間攪拌の後、生成物を2×150mLのジエチルエーテルで抽出した。エーテル抽出物を飽和塩化ナトリウム水溶液(200mL)で洗浄し、乾燥し(MgSO4)、ロータリーエバポレーターにかけて溶媒を除くと半固体のジボロン酸が得られた。粗ジボロン酸の純度をHPLC分析により、基質によって85〜95%と評価し、以下に述べるとおりさらなる精製なしにジボロネートに転化した。
【0035】
粗ジボロン酸を、50mLのトルエンおよび30mmol(1.86g)のエチレングリコール中で懸濁し、混合物を攪拌してDean−Starkトラップ下で2〜3時間還流した。この時間の間、反応中に生じた少量の水とともに共沸混合物として約25mLのトルエンをオーバーヘッドとして回収した。反応混合物を冷却し溶媒を除いた。残留物(半固体)を基質によりヘキサンまたはトルエン−へキサン混合物から再結晶し、全体収率70〜85%で無色のアモルファスパウダーとしてジボロネートを得た。HPLCにより判断した純度は約95〜99%であった。さらに再結晶すると99%を超える純度の物質が得られた。
【0036】
4,4’−ジブロモ−1,4−ジスチリルベンゼン(6)
エタノール(100mL)中でp−キシリレンビス−(トリフェニルホスフォニウムブロマイド)(8.05g、10mmol)および4−ブロモベンズアルデヒド(3.75g、20mmol)を窒素雰囲気下で攪拌している混合物に、リチウムエトキシド(エタノール中1.0M、21.5mL、21.5mmol)の溶液を滴下した。反応を室温で6時間攪拌した。沈殿を濾過し、エタノールで洗浄して乾燥した。粗生成物をトルエンに再溶解し、塩酸(5%)と水で引き続いて洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を真空下で蒸発させ、残留物をトルエン/メタノールから再結晶すると、3.6g(82%)の白色固体が得られた。NMRによりトランス−トランス構造が示され、純度はHPLCにより100%であると分かった。
【0037】
4,4’−ジブロモ−b,b’−ジフェニル−1,4−ジスチリルベンゼン(7)
トルエン中のテトラエチル−o−キシリレンジホスフォネート(9.4g、25.0mmol)および4−ブロモベンゾフェノン(13.1g、50.0mmol)の攪拌している混合物に、カリウムtert−ブトキシド(6.2g、55.0mmol)を加えた。反応を室温で6時間攪拌した。溶液をセライトの層に通して濾過した。溶媒を真空下で蒸発させ、残留物をトルエン/ヘキサンから再結晶すると、5.8g(39%)の明るい黄色固体物質が得られ、HPLCによりシス−トランス異性体とトランス−トランス異性体の1:4混合物であると分かった。
【0038】
1,2−ビス(4−ブロモフェニル)−1−フェニルエチレン(8)
窒素雰囲気下で攪拌中の1,2−ジメトキシエタン(60mL)に溶かした4−ブロモベンゾフェノン(5.22g、20mmol)およびジエチル−4−ブロモフェニルホスフォネート(6.8g、22mmol)の溶液に、水素化ナトリウム(0.52g、22mmol)を加え、混合物を3時間攪拌還流した。冷却後、混合物を150gの氷水に注ぎ、生成物をエーテルで抽出しシリカゲルのクロマトグラフィーで精製した。ヘキサンで溶出させると、6グラム(収率64%)の標記化合物が無色の油として得られ、シス異性体およびトランス異性体の1:1混合物であると分かった。
【0039】
3,3’−ジブロモ−1,4−ジスチリルベンゼン(9)
窒素雰囲気下で攪拌中のエタノール(150mL)に溶かしたp−キシリレンビス−(トリフェニルホスフォニウムブロマイド)(15.8g、20mmol)および3−ブロモベンズアルデヒド(7.4g、40.0mmol)の混合物に、リチウムエトキシド溶液(エタノール中1.0M、41.0mL、41.0mmol)を滴下した。反応を室温で8時間攪拌した。沈殿を濾過し、エタノールで洗浄し乾燥した。粗生成物をトルエンに再溶解し、塩酸(5%)および水で引き続き洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を真空下で蒸発させ、残留物をトルエン/エタノールから再結晶すると、4.9g(56%)のオフホワイト固体が得られた。純度は、HPLCにより99%を超えると分かった。
【0040】
4,4’−ジブロモ−1,3−ジスチリルベンゼン(10)
窒素雰囲気下で攪拌中のエタノール(200mL)に溶かしたm−キシリレンビス−(トリフェニルホスフォニウムブロマイド)(15.8g、20mmol)および4−ブロモベンズアルデヒド(7.4g、40.0mmol)の混合物に、リチウムエトキシド溶液(エタノール中1.0M、41.0mL、41.0mmol)を滴下した。反応を室温で8時間攪拌した。沈殿を濾過し、エタノールで洗浄し乾燥した。粗生成物をトルエンに溶かし、塩酸(5%)および水で引き続き洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を真空下で蒸発させ、残留物をトルエン/エタノールから再結晶すると、3.8g(43%)の黄色薄片が得られ、その純度はHPLCにより99%を超えると分かった。
【0041】
2,5−ジ(4−ブロモフェニル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾール(12)
フェニルボロン酸(17.6g、144.0mmol)、4,7−ジブロモ−2,1,3−ベンゾチアジアゾール(21.0g、71.4mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(180mg、0.156mmol)、Aliquat 336(1.5g)、炭酸ナトリウム水溶液(2M、100mL)、トルエン(350mL)の混合物を窒素雰囲気下で14時間攪拌還流した。冷却後、水層を分離し、有機層を水で洗浄し乾燥した。溶媒を除き、残留物をトルエン−エタノールから結晶化すると、11.4g(55%)の結晶性物質が得られた。
【0042】
酢酸(50mL)中に溶かした上記の2,5−ジフェニル−2,1,3−ベンゾチアジアゾール(7.0g、30.6mmol)の攪拌中の溶液に、臭素(13.7g、77.5mmol)を滴下した。反応を8時間攪拌還流した。冷却後、水(100mL)を加え、反応を室温で2時間静置した。生成物を濾過し、水で洗浄して乾燥した。トルエン/エタノールからの再結晶により、9.3g(68%)の黄色パウダーが得られた。NMRおよびHPLCにより純度が98%を超えると分かった。
【0043】
2,5−ジ(4−ブロモナフチル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾール(13)
1,4−ジオキサン(80mL)に溶かした2,5−ジナフタレニル−2,1,3−ベンゾチアジアゾール[2,5−ジフェニル−2,1,3−ベンゾチアジアゾールの調製に(12)で記載された手順によりナフチルボロン酸および4,7−ジブロモ−2,1,3−ベンゾチアジアゾールから調製](9.9g、25.5mmol)の攪拌中の溶液に、臭素(12.4g、77.5mmol)を滴下した。反応を6時間攪拌還流した。冷却後、エタノール(100mL)を加え、反応を10時間室温で静置した。生成物を濾過し、エタノールで洗浄した。トルエン/エタノールから再結晶すると、9.2g(66%)の黄色薄片が得られた。NMRおよびHPLCにより純度が95%を超えると分かった。
【0044】
4,7−ビス(5−ブロモ−2−チエニル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾール(14)
4,7−ジチエン−2−イル−2,1,3−ベンゾチアジアゾール[以下の出版済み手順(Kitamura et al.,Chem.Mater.,Vol.8,1996,p.570−578)により4,7−ジブロモ−2,1,3−ベンゾチアジアゾールをトリブチル(チエン−2−イル)スタナンと反応させて調製](7.7g、25.7mmol)を、クロロホルム(200mL)と酢酸(200mL)の混合物に窒素雰囲気下で溶解し、N−ブロモスクシンイミド(9.61g、54mmol)を一度に加えた。反応混合物を室温で終夜攪拌した後、濃い赤色沈殿を濾過して除き、DMFから2回再結晶すると、光沢のある赤色結晶(6.85g、58.2%)として標記化合物が得られ、HPLC分析によりその純度は100%であった。
【0045】
2,5−ジ(5’−ブロモフラニル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾール(15)
1,4−ジオキサン(40mL)に溶かした2,5−ジフラニル−2,1,3−ベンゾチアジアゾール[以下の出版済み手順(Kitamura et al.,Chem.Mater.,Vol.8,1996,p.570−578)により4,7−ジブロモ−2,1,3−ベンゾチアジアゾールを2−(トリブチルスタニル)フランと反応させて調製](2.9g、10.1mmol)の攪拌中の溶液に、臭素(3.6g、22.3mmol)を滴下した。反応を5分間室温で攪拌した。反応を水で希釈し、沈殿を濾過し、水で洗浄し乾燥した。粗生成物をトルエンに再溶解し、短いアルミナカラムでクロマトグラフィーにかけた。溶媒を真空下で蒸発させ、残留物をトルエン/エタノールから再結晶すると、3.0g(70%)の赤色薄片が得られ、HPLCによりその純度が99%を超えると分かった。
【0046】
5,8−ジブロモ−2,3−ジフェニルキノキサリン(16)
3,6−ジブロモ−1,2−フェニレンジアミン(Neaf and Belli(Helv.Chim.Acta.,1978,61,2959)により報告されたとおり亜鉛および酢酸を用いた4,7−ジブロモ−2,1,3−ベンゾチアジアゾールの還元により調製)(2g、8mmol)およびベンジル(1.9g、9mmol)を、2−プロパノール(40mL)に溶解し、5滴のトリフルオロ酢酸を加えた。混合物を2時間攪拌しながら還流下で加熱した。冷却と同時に、薄黄色の固体を濾過しエタノールから再結晶すると、融点が221〜223℃の標記化合物が無色固体として2.7g(75%)得られた。
【0047】
4−ブロモ−1−(4−ブロモフェニル)−3,5−ジフェニルピラゾール(17)
DMF中65℃で1時間、N−ブロモスクシンイミドにより1−(4−ブロモフェニル)−3,5−ジフェニルピラゾール(ジベンゾイルメタンおよび4−ブロモフェニルヒドラジンを酢酸中で反応させて得られた)を臭素化することにより標記化合物が得られた。粗生成物をエタノールから再結晶すると、収率72%で無色のパウダーとして標記化合物が得られ、純度はHPLCより100%であった。
【0048】
1,3−ビス(4−ブロモフェニル)−4−メチル−1H−ピラゾロ[3.4−b]キノリン(18)
30mLのエチレングリコールに溶かした1,3−ビス(4−ブロモフェニル)−ピラゾリン−5−オン(7.9g、20mmol)とo−アミノアセトフェノン(2.7g、20mmol)の混合物を、窒素雰囲気下で22時間180℃で加熱攪拌した。濃い赤色溶液を冷却し、40mLのエタノールを加え、1時間還流して冷却した。黄色固体を濾過し、トルエン−ヘキサンから再結晶すると、2.3g(収率26%)の標記化合物が黄色結晶として得られた。純度はHPLCより100%であると分かった。
【0049】
a,a−ビス(4−ブロモフェニルメチレン)−1,4−ベンゼンジアセトニトリル(19)
4−ブロモベンズアルデヒド(24.0g、0.13モル)、フェニレン−1,4−ジアセトニトリル(10.0g、0.064モル)、ピペリジン(5mL)およびエタノール(150mL)の混合物を3時間還流し、混合物を室温で終夜静置した。オレンジ色の結晶性固体を濾過し、エタノール(200mL)で3回洗浄し乾燥すると、15.3g(50%)の所望の生成物が得られた。1H NMRスペクトルは、所望の生成物の構造と一致していた。DMFから再結晶をすると、重合用に非常に純度の高い生成物が得られた。
【0050】
本発明のコポリマーは、THFを共溶媒として必要とするモノマー14を含むものを除いて、米国特許第5,777,070号の手順により調製した。例示されたコポリマーの構造およびモノマー反応物質を表1に示す。コポリマーの特性を表2に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
【表3】

【0054】
【表4】

【0055】
発光ダイオード(LED)
シート抵抗が約15オーム/スクエアであるITOコートガラスを、ダイオード製造の基板として使用した。基板のITO側を、等部または2部のポリ(スチレンスルホン酸)で希釈したBaytron PTM(Bayer A.G.から市販の導電性ポリマー)の100nmコーティングで処理した。導電性ポリマーフィルムを空気中で約5分間200℃で乾燥し、次いでポリマーのキシレン溶液を用いてスピンコーティングにより発光性ポリマーフィルムを塗布した。次いで、発光性ポリマーフィルムを、窒素雰囲気中90℃で少なくとも2時間乾燥した。発光性ポリマーフィルムの上に、カルシウムカソード(約75〜100nm)を付着させた。仕上がった素子を、不活性雰囲気中で、ITOを正極にして電源に結合した。発した光の輝度およびダイオード中を流れる電流の密度を、印加した電圧の関数としてモニターした。輝度は、Cd/m2の単位で表され、効率はルーメンス/ワット(L/W)として表される。L/W=p(Cd/A)/Vであり、AおよびVは、ある輝度に対する電流および電圧である。
【0056】
緑色LED
表3は、3種の緑色LEDの組成および4000Cd/m2での電圧および効率を列記しており、そのうち2つは本発明のコポリマーを含んでいる。性能がほぼ同じである緑色1および緑色2は、本発明のコポリマーを含まない比較LEDより低い電圧および高い効率で4000Cd/m2の輝度に達している。比較例のコポリマーは、ホール輸送性RMUがないという点でコポリマー4および5とは異なり、ホール輸送性と電子輸送性のバランスを達成することの利点を表している。本発明のコポリマーを含むブレンド(緑色2)において同じ利益が実現されていることに留意されたい。
【0057】
【表5】

【0058】
赤色LED
表4は赤色光を発する2種のLEDを列記している。赤色1は単一のコポリマーに基づいており、赤色2は本発明の2種のコポリマーのブレンドに基づいている。赤色1に対する赤色2に見られた素子性能の顕著な改善が、ポリマーブレンドを用いる利点を示している。
【0059】
【表6】

【0060】
白色LED
本発明のものではないフルオレンコポリマーとの混合物(以下比較混合物と称す)中に本発明のコポリマー22を含むブレンドの100nmフィルムにそれぞれ基づく2種の白色LED。比較混合物は、
15重量%のフルオレンコポリマー−[1c−4a]−
7重量%のフルオレンコポリマー−[1c−3a]−
78重量%のフルオレンホモポリマー−[1c]−
のブレンドである。
【0061】
コポリマー22の量およびLEDの性能を表5に示す。コポリマー22を含まない比較混合物は青色発光体であり、本発明のコポリマー22を1重量%以下加えると、そのブレンドは白色発光体に変換する。この例は、非常に少量の本発明のコポリマーがLEDに与えうる影響を表している。
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマー単位を含んでなり、さらに、
(a)少なくとも10%のモノマー単位が、9−置換フルオレン部分、9,9−二置換フルオレン部分またはそれらの組合せから選択されるフルオレン部分であり;
フルオレン部分が、
【化1】

(上式において、R1およびR2が、それぞれの存在において独立に、水素、C1-20ヒドロカルビル、C1-20ヒドロカルビルオキシ、C1-20チオヒドロカルビルオキシまたはシアノであり、
3およびR4が、それぞれの存在において独立に、水素、場合によりC1-20アルコキシ/アリールオキシ、チオアルコキシ/チオアリールオキシ、第二/第三アミン、ヒドロキシ、カルボン酸/スルホン酸、シアノおよびエステルで置換されていてよいC1-20ヒドロカルビル;場合によりC1-20アルコキシ/アリールオキシ、チオアルコキシ/チオアリールオキシ、第二/第三アミン、ヒドロキシ、カルボン酸/スルホン酸、シアノおよびエステルで置換されていてよいC6-20アリールであり;またはR3およびR4が、それらが結合しているオレフィン炭素とともにC3-12環状構造を形成しており、前記環状構造がさらにリン、イオウ、酸素および窒素などのヘテロ原子を1つまたは複数含んでよく、
5およびR6が、それぞれの存在において独立に、水素、場合によりC1-12アルコキシ/アリールオキシ、チオアルコキシ/チオアリールオキシ、第二/第三アミン、ヒドロキシ、カルボン酸/スルホン酸、シアノおよびエステルで置換されていてよいC1-12アルキル;場合によりC1-12アルコキシ/アリールオキシ、チオアルコキシ/チオアリールオキシ、第二/第三アミン、ヒドロキシ、カルボン酸/スルホン酸、シアノおよびエステルで置換されていてよいC6-20アリールである)上記式から選択される基であり;
(b)互いに異なるがともに非局在化π電子を含んでなる2種の他の部分を含んでなる、少なくとも1%のモノマー単位であって;前記の他の部分がホール輸送性を有する部分および電子輸送性を有する部分からなる群から独立に選択され;前記の2種の他の部分が両方ともホール輸送性を有する場合、少なくとも1種の前記部分が、電子吸引性置換基を持たないスチルベン類または1,4−ジエン類、N,N,N’,N’−テトラアリールベンジジン類、N−置換カルバゾール類、ジアリールシラン類および電子吸引性置換基を持たないチオフェン/フラン/ピロ−ル類から誘導される、2種の他の部分を含んでなる少なくとも1%のモノマー単位を有することを特徴とするコポリマーであって、
ただし、下式(A)で表されるモノマー単位、式(B)で表されるモノマー単位、及び式(C)で表されるモノマー単位からなるコポリマーであって、式(B)で表されるモノマー単位に対する式(A)で表されるモノマー単位のモル比が15.54/0.51であり、式(B)で表されるモノマー単位に対する式(C)で表されるモノマー単位のモル比が1.945/0.51であるコポリマーを除く、コポリマーを少なくとも0.1重量%含んでなるフィルム。
【化2】

【請求項2】
モノマー単位を含んでなり、さらに、
(a)少なくとも10%のモノマー単位が、9−置換フルオレン部分、9,9−二置換フルオレン部分またはそれらの組合せから選択されるフルオレン部分であり;
このフルオレン部分が
【化3】

(上式において、R1およびR2が、それぞれの存在において独立に、水素、C1-20ヒドロカルビル、C1-20ヒドロカルビルオキシ、C1-20チオヒドロカルビルオキシまたはシアノであり、
3およびR4が、それぞれの存在において独立に、水素、場合によりC1-20アルコキシ/アリールオキシ、チオアルコキシ/チオアリールオキシ、第二/第三アミン、ヒドロキシ、カルボン酸/スルホン酸、シアノおよびエステルで置換されていてよいC1-20ヒドロカルビル;場合によりC1-20アルコキシ/アリールオキシ、チオアルコキシ/チオアリールオキシ、第二/第三アミン、ヒドロキシ、カルボン酸/スルホン酸、シアノおよびエステルで置換されていてよいC6-20アリールであり;またはR3およびR4が、それらが結合しているオレフィン炭素とともにC3-12環状構造を形成しており、前記環状構造がさらにリン、イオウ、酸素および窒素などのヘテロ原子を1つまたは複数含んでよく、
5およびR6が、それぞれの存在において独立に、水素、場合によりC1-12アルコキシ/アリールオキシ、チオアルコキシ/チオアリールオキシ、第二/第三アミン、ヒドロキシ、カルボン酸/スルホン酸、シアノおよびエステルで置換されていてよいC1-12アルキル;場合によりC1-12アルコキシ/アリールオキシ、チオアルコキシ/チオアリールオキシ、第二/第三アミン、ヒドロキシ、カルボン酸/スルホン酸、シアノおよびエステルで置換されていてよいC6-20アリールである)上記式から選択される基であり;
(b)少なくとも1%のモノマー単位が、それぞれの存在において独立に、ホール輸送性を有する部分および電子輸送性を有する部分からなる群から選択され;
(c)少なくとも1%のモノマー単位が、置換または未置換のベンゼン、ナフタレンおよびビフェニレンから誘導され、置換された化合物が使用される場合、置換基が炭素数1〜12のアルキルまたはアルコキシ基および炭素数6〜10のアリールまたはアリールオキシ基から選択されることを特徴とするコポリマーを少なくとも0.1重量%含んでなるフィルム。

【公開番号】特開2011−252173(P2011−252173A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202270(P2011−202270)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【分割の表示】特願2009−97411(P2009−97411)の分割
【原出願日】平成11年4月9日(1999.4.9)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】