説明

フルオレン系樹脂重合体およびこれを含む感光性樹脂組成物

【課題】本発明は、フルオレン系樹脂重合体およびこれを含む感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明に係るフルオレン系樹脂重合体は、分子量が高いのに酸価が低く、現像性、接着性、および安全性に優れているという特徴がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオレン系樹脂重合体、フルオレン系樹脂重合体を含む感光性樹脂組成物、およびこれを利用して製造された感光材に関する。
【背景技術】
【0002】
感光性樹脂組成物は基板上に塗布されて導膜を形成し、この導膜の特定部分にフォトマスクなどを利用して光照射による露光を実施した後、非露光部を現像処理して除去することによってパターンを形成するのに用いられる。このような感光性樹脂組成物は、光を照射して重合して硬化させることが可能であるため、光硬化性インク、感光性プリント板、各種フォトレジスト、LCD用カラーフィルタフォトレジスト、樹脂ブラックマトリクス用フォトレジスト、または透明感光材などに利用されている。
【0003】
感光性樹脂組成物は、通常、バインダ樹脂、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物、光重合開始剤、および溶媒を含む。
【0004】
感光性樹脂組成物において、バインダ樹脂は、基板との接着力を有するようにしてコーティングを可能にし、アルカリ現像液に溶けて微細パターンの形成を可能にし、さらには得られたパターンに強度を有するようにすることにより、後処理工程時にパターンが割れることを防ぐ役割をする。また、耐熱性および耐薬品性にも大きな影響を及ぼす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国特許出願第10−2011−0008330号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、基板との接着性に優れ、現像性が良いフルオレン系樹脂重合体、およびこれを含む感光性樹脂組成物に対する研究を繰り返し実行した結果、本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、下記化学式1で表される反復単位を含むフルオレン系樹脂重合体を提供する。
【0008】
【化1】

【0009】
前記化学式1において、
、X、X、X、Z、Z、Z、およびZは互いに同じであるか相違しており、それぞれ独立に炭素数1〜3のアルキレン基、エチレンオキシド基、およびプロピレンオキシド基からなる群より選択され、
およびYは互いに同じであるか相違しており、それぞれ独立に炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数3〜10のシクロアルキレン基、炭素数3〜10のシクロアルケニレン基、および炭素数6〜10のアリーレン基からなる群より選択され、
、R、R、R、R、R、R、およびRは互いに同じであるか相違しており、それぞれ独立に水素または炭素数1〜3のアルキル基であり、
nは1〜5,000の整数である。
【0010】
また、本発明は、前記化学式1で表される反復単位を含むフルオレン系樹脂重合体、エチレン性不飽和結合を含む重合性化合物、光開始剤、および溶媒を含む感光性樹脂組成物を提供する。
【0011】
また、本発明は、前記感光性樹脂組成物を利用して製造された感光材を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一実施状態に係るフルオレン系樹脂重合体は、分子量が高いのに酸価が低い。
【0013】
本発明の一実施状態に係るフルオレン系樹脂重合体は、現像性に優れている。
【0014】
本発明の一実施状態に係るフルオレン系樹脂重合体は、接着性に優れている。
【0015】
本発明の一実施状態に係るフルオレン系樹脂重合体は、安全性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明に係るフルオレン系樹脂重合体は、前記化学式1で表される反復単位を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明に係るフルオレン系樹脂重合体において、前記化学式1の置換基をより具体的に説明すれば、下記のとおりである。
【0018】
前記アルキレン基は直鎖または分枝鎖であることができ、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基などを挙げることができるが、これにのみ限定されることはない。
【0019】
前記シクロアルキレン基は単環または縮合環であることができ、例えば、シクロヘキシレン基などを挙げることができるが、これにのみ限定されることはない。
【0020】
前記シクロアルケニレン基は単環または縮合環であることができ、例えば、シクロヘキセニレン基などを挙げることができるが、これにのみ限定されることはない。
【0021】
前記アリーレン基は単環または縮合環であることができ、例えば、フェニレン基、ナフタレン基などを挙げることができるが、これにのみ限定されることはない。
【0022】
前記アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、またはイソプロピル基である。
【0023】
前記化学式1は、より具体的には化学式2で表されることができる。
【0024】
【化2】

【0025】
前記化学式2において、nは1〜5,000の整数である。
【0026】
本発明に係るフルオレン系樹脂重合体の製造方法は、
下記反応式1のように、エチレン性不飽和基を含むフルオレン系化合物を合成する1段階;
前記1段階の生成物と酸素を含む化合物を反応させてフルオレン系ジアシッド化合物を合成する2段階;および
前記2段階の生成物とエポキシ基を含むフルオレン系化合物を反応させてフルオレン系樹脂重合体を合成する3段階;を含むことができる。
【0027】
具体的に、前記フルオレン系樹脂重合体の製造方法は、下記反応式1のように、1段階および2段階の合成段階を経て生成された中間生成物である下記化学式3で表される化合物を製造することができる。
【0028】
【化3】

【0029】
また、前記3段階において、前記化学式3で表される化合物は、下記化学式4で表される化合物と反応して本発明のフルオレン系樹脂重合体を製造することができるが、これに限定されることはない。
【0030】
【化4】

【0031】
前記化学式4において、XおよびXは互いに同じであるか相違しており、それぞれ独立に炭素数1〜3のアルキレン基、エチレンオキシド基、またはプロピレンオキシド基であり、
oおよびpは1〜3の整数である。
【0032】
このとき、前記2段階において、前記1段階によって生成された生成物と反応する化合物に応じて、化学式1のYおよびYが決定されることができる。
【0033】
前記フルオレン系樹脂重合体の製造方法の一具体例のように、前記2段階において、前記1段階を通じて生成された生成物と反応する化合物が無水フタル酸(phthalic anhydride)である場合には、化学式1のYおよびYはそれぞれシクロヘキセニル基として決定される。
【0034】
また、前記3段階において、前記化学式4で表される化合物のうち、XおよびXにそれぞれ結合された下記化学式5および化学式6のoおよびpに応じて、化学式1のXおよびXが決定されることができる。
【0035】
【化5】

【0036】
【化6】

【0037】
例えば、前記化学式5および6において、前記oおよびpがそれぞれ1である場合には、化学式1のXおよびXはそれぞれメチレン基として決定され、前記化学式4は下記化学式7で表されることができる。
【0038】
【化7】

【0039】
感光性樹脂組成物に用いられることができるバインダ樹脂のうち、フルオレングループを含むカルド系バインダ樹脂に対する使用が考慮されている。これは、フルオレングループを含むカルド系バインダ樹脂は、感度が良く、耐熱性や耐化学性などに優れているという長所があるためである。
【0040】
フルオレン系樹脂重合体をジオール化合物と酸二無水物を反応させて製造する場合には、前記フルオレン系樹脂重合体は分子量が高く、ネガティブ型感光性樹脂組成物としての使用に適合する。
【0041】
しかし、フルオレン系樹脂重合体を上述したような方法で製造すれば、ジオール基と酸二無水物基が互いに出会って反応をするほど、酸素が生じるようになる。
【0042】
これにより、フルオレン系樹脂重合体の分子量を増加させる場合には、フルオレン系樹脂重合体の酸価が極めて高く、ネガティブ型感光性樹脂組成物内の他の化合物との相溶性や現像性などの問題が生じる。
【0043】
したがって、本発明者はこのような問題点を改善するために、前記3段階のように、前記化学式4で表されるフルオレン基を含むエポキシ化合物と前記化学式3で表される化合物を反応させてフルオレン系樹脂重合体を製造した。
【0044】
このような方法によって製造されたフルオレン系樹脂重合体は、前記3段階の反応によって酸素が生成されない。
【0045】
これにより、本発明に係るフルオレン系樹脂重合体の製造方法により、分子量は高いが酸価は高くない新規フルオレン系樹脂重合体を製造することができる。
【0046】
縮合重合反応によって製造される高分子の場合、分子量を高めるために反応に参与する2つのモノマーの比率を約1:1で用いることができる。また、触媒や温度などの最適条件を探し、2つのモノマーが互いに100%反応するようにする条件を提供することによって分子量を高めることができる。
【0047】
しかし、フルオレン系樹脂重合体は、ジオール化合物に対比して酸二無水物の比率を1:0.8程度までしか用いなかった。その理由は、反応が極めて多く進行されれば、分子量だけではなく酸価も共に大きく増加し、これによって酸価が120以上に大きくなれば、感光性組成物として好ましくないためである。また、酸二無水物は、反応溶媒、例えばPGMEAに対する溶解度が優れておらず、0.8以上を用いればこれ以上は反応せず、白い固体でそのまま残るようになる。
【0048】
一方、本発明に係るフルオレン系樹脂重合体は、分子量が増加しても酸価の増加する幅が狭いため、分子量を所望するとおりに高めることができる。前記化学式3および4で表される化合物は、溶媒に対する溶解度も優れているため、2つの化合物の反応比率を高め、分子量が高いバインダ樹脂を得ることができる。
【0049】
フルオレン系樹脂重合体は、反応に用いられた酸二無水物の一部の反応が終わった後にも微量が残るようになり、これを含んだネガティブ型感光性樹脂組成物の安全性を大きく低下させることがある。
【0050】
一方、本発明に係るフルオレン系樹脂重合体は、反応に無水物基をまったく用いないため、反応後に得たフルオレン系樹脂重合体自体も安定しており、これを含むネガティブ型感光性樹脂組成物の安全性も優れる。
【0051】
また、フルオレン系樹脂重合体がネガティブ型感光性樹脂組成物に用いられるとき、前記フルオレン系樹脂重合体は、低い分子量に対比して高い酸価、例えば4,000〜7,000g/mol程度の分子量に対比して120程度の酸価であるときに現像性を調節し難く、現像時にパターン下部が削られるという短所を有している。
【0052】
一方、本発明に係る前記フルオレン系樹脂重合体がネガティブ型感光性樹脂組成物に用いられるとき、本発明に係るフルオレン系樹脂重合体は、酸価が低いのに既存のフルオレン系樹脂に比べて分子量が高いため、適切な水準で現像性を確保することができる。
【0053】
また、本発明のフルオレン系樹脂重合体は、露光後の現像工程段階で発生することがあるパターン下部が削られる現象を改善することができる。前記パターン下部が削られる現象は、現像溶液によってパターン下部が削られながら、ポスト−ベイク(post−bake)段階を経た後にパターン上部が落ち、最終的にパターン形状が階段形態になる現象を意味する。
【0054】
また、本発明に係るフルオレン系樹脂重合体は、フルオレン系化合物が有する長所である基板との接着性をそのまま維持しながら現像性を改善させるため、現像接着性に優れる。ここで、現像接着性とは、パターンが現像工程を経る間に基板上に付着している性質を意味する。フルオレン系化合物は、他の化合物に比べて現像工程時に基板上に適切に付着しているものと知られている。しかし、フルオレン系化合物で生成した高分子は、基板上に適切に付着している方ではあるが、酸価が高いためにパターン下部が多く削られるようになるという短所がある。
【0055】
上述したように、本発明に係るフルオレン系樹脂重合体は、優れた基板接着性を維持しながらも分子量が高く、酸価が低く、現像性および安全性が改善された重合体である。
【0056】
本発明に係るフルオレン系樹脂重合体の重量平均分子量は具体的に1,000〜50,000であることができるが、これにのみ限定されることはない。
【0057】
本発明に係るフルオレン系樹脂重合体の酸価は具体的に30〜150KOH mg/gであることができるが、これにのみ限定されることはない。
【0058】
また、本発明に係る感光性樹脂組成物は、前記化学式1で表される反復単位を含むフルオレン系樹脂重合体、エチレン性不飽和結合を含む重合性化合物、光開始剤、および溶媒を含む。
【0059】
本発明に係る感光性樹脂組成物において、前記化学式1で表される反復単位を含むフルオレン系樹脂重合体の含量は、具体的に感光性樹脂組成物の総重量を基準として1〜20重量%であるが/であることができるが、これにのみ限定されることはない。
【0060】
本発明に係る感光性樹脂組成物において、前記エチレン性不飽和結合を含む重合性化合物は、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどから選択される1種以上の化合物が用いられることができるが、これにのみ限定されることはない。
【0061】
前記エチレン性不飽和結合を含む重合性化合物の含量は、具体的に感光性樹脂組成物の総重量を基準として1〜30重量%であることができるが、これにのみ限定されることはない。
【0062】
本発明に係る感光性樹脂組成物において、前記光開始剤は、2,4−トリクロロメチル−(4’−メトキシフェニル)−6−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(4’−メトキシスチリル)−6−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(フィプルロニル)−6−トリアジンなどのトリアジン系化合物;1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ)プロピルケトンなどのアセトフェノン系化合物;ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物などから選択される1種以上の化合物が用いられることができるが、これにのみ限定されることはない。
【0063】
前記光開始剤の含量は、具体的に感光性樹脂組成物の総重量を基準として0.1〜5重量%であることができるが、これにのみ限定されることはない。
【0064】
本発明に係る感光性樹脂組成物において、前記溶媒は、メチルエチルケトン、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどから選択される1種以上の化合物が用いられることができるが、これにのみ限定されることはない。
【0065】
前記溶媒の含量は、具体的に感光性樹脂組成物の総重量を基準として45〜95重量%であることができるが、これにのみ限定されることはない。
【0066】
また、本発明に係る感光性樹脂組成物は、用途に応じて着色剤、硬化促進剤、熱重合抑制剤、界面活性剤、光増感剤、可塑剤、接着促進剤、充填剤、および接着調剤からなる群より選択される1種以上を追加で含むことができる。
【0067】
前記着色剤としては、1種以上の顔料、染料、またはこれらの混合物を用いることができる。具体的に例示すれば、黒色顔料としては、カーボンブラック、黒鉛、チタンブラックなどのような金属酸化物などを用いることができる。
【0068】
カーボンブラックの例としては、シースト5HIISAF−HS、シーストKH、シースト3HHAF−HS、シーストNH、シースト3M、シースト300HAF−LS、シースト116HMMAF−HS、シースト116MAF、シーストFMFEF−HS、シーストSOFEF、シーストVGPF、シーストSVHSRF−HS、およびシーストSSRF(東海カーボン(株));ダイヤグラムブラックII、ダイヤグラムブラックN339、ダイヤグラムブラックSH、ダイヤグラムブラックH、ダイヤグラムLH、ダイヤグラムHA、ダイヤグラムSF、ダイヤグラムN550M、ダイヤグラムM、ダイヤグラムE、ダイヤグラムG、ダイヤグラムR、ダイヤグラムN760M、ダイヤグラムLR、#2700、#2600、#2400、#2350、#2300、#2200、#1000、#980、#900、MCF88、#52、#50、#47、#45、#45L、#25、#CF9、#95、#3030、#3050、MA7、MA77、MA8、MA11、MA100、MA40、OIL7B、OIL9B、OIL11B、OIL30B、およびOIL31B(三菱化学(株));PRINTEX−U、PRINTEX−V、PRINTEX−140U、PRINTEX−140V、PRINTEX−95、PRINTEX−85、PRINTEX−75、PRINTEX−55、PRINTEX−45、PRINTEX−300、PRINTEX−35、PRINTEX−25、PRINTEX−200、PRINTEX−40、PRINTEX−30、PRINTEX−3、PRINTEX−A、SPECIAL BLACK−550、SPECIAL BLACK−350、SPECIAL BLACK−250、SPECIAL BLACK−100、およびLAMP BLACK−101(デグ社(株));RAVEN−1100ULTRA、RAVEN−1080ULTRA、RAVEN−1060ULTRA、RAVEN−1040、RAVEN−1035、RAVEN−1020、RAVEN−1000、RAVEN−890H、RAVEN−890、RAVEN−880ULTRA、RAVEN−860ULTRA、RAVEN−850、RAVEN−820、RAVEN−790ULTRA、RAVEN−780ULTRA、RAVEN−760ULTRA、RAVEN−520、RAVEN−500、RAVEN−460、RAVEN−450、RAVEN−430ULTRA、RAVEN−420、RAVEN−410、RAVEN−2500ULTRA、RAVEN−2000、RAVEN−1500、RAVEN−1255、RAVEN−1250、RAVEN−1200、RAVEN−1190ULTRA、RAVEN−1170(コロンビアカーボン(株))、またはこれらの混合物などがある。
【0069】
また、色を帯びる着色剤の例としては、カーマイン6B(C.I.12490)、フタロシアニングリーン(C.I.74260)、フタロシアニンブルー(C.I.74160)、ペリレンブラック(BASF K0084.K0086)、シアニンブラック、リノールイエロー(C.I.21090)、リノールイエローGRO(C.I.21090)、ベンジジンイエロー4T−564D、ビクトリアピュアブルー(C.I.42595)、C.I.PIGMENT RED3、23、97、108、122、139、140、141、142、143、144、149、166、168、175、177、180、185、189、190、192、202、214、215、220、221、224、230、235、242、254、255、260、262、264、272;C.I.PIGMENT GREEN7、36;C.I.PIGMENT blue15:1、15:3、15:4、15:6、16、22、28、36、60、64;C.I.PIGMENT yellow13、14、35、53、83、93、95、110、120、138、139、150、151、154、175、180、181、185、194、213;C.I.PIGMENT VIOLET15、19、23、29、32、37などがあり、この他に白色顔料や蛍光顔料なども利用することができる。顔料として用いられるフタロシアニン系錯化合物としては、銅の他に亜鉛を中心金属とする物質も使用可能である。
【0070】
前記硬化促進剤としては、例えば、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−4,6−ジメチルアミノピリジン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールトリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールトリス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(2−メルカプトアセテート)、およびトリメチロールエタントリス(3−メルカプトプロピオネート)からなる群より選択された1種以上を含むことができるが、これらにのみ限定されることはなく、当技術分野において一般的に周知であるものを含むことができる。
【0071】
前記熱重合抑制剤としては、例えば、p−アニソール、ヒドロキノン、ピロカテコール(pyrocatechol)、t−ブチルカテコール(t−butylcatechol)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミンアンモニウム塩、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミンアンモニウム塩、およびフェノチアジン(phenothiazine)からなる群より選択された1種以上を含むことができるが、これらにのみ限定されることはなく、当技術分野において一般的に周知のものを含むことができる。
【0072】
前記界面活性剤、光増感剤、可塑剤、接着促進剤、充填剤なども、感光性樹脂組成物に含まれることができるすべての化合物が用いられることができる。
【0073】
前記着色剤の含量は、具体的に感光性樹脂組成物の総重量を基準として1〜20重量%であり、その他の残りの添加剤の含量は、それぞれ独立に感光性樹脂組成物の総重量を基準として0.01〜5重量であることができるが、これにのみ限定されることはない。
【0074】
一方、本発明に係る感光性樹脂組成物は、ロールコータ(roll coater)、カーテンコータ(curtain coater)、スピンコータ(spin coater)、スロットダイコータ、各種印刷、沈積などに用いられ、金属、紙、ガラスプラスチック基板などの支持体上に適用されることができる。また、フィルムなどの支持体上に塗布した後にその他の支持体上に転写したり、第1の支持体に塗布した後にブランケットなどに転写、再び第2の支持体に転写することも可能であり、その適用方法は特に限定されない。
【0075】
本発明の感光性樹脂組成物を硬化させるための光源としては、例えば、波長が250〜450nmの光を発散する水銀蒸気アーク(arc)、炭素アーク、Xeアークなどがあるが、必ずしもこれに限定されることはない。
【0076】
また、本発明は、前記感光性樹脂組成物を利用して製造された感光材を提供する。
【0077】
本発明に係る感光性樹脂組成物は、具体的にTFT LCDカラーフィルター製造用顔料分散型感光材、TFT LCDあるいは有機発光ダイオードのブラックマトリクス形成用感光材、オーバーコート層形成用感光材、カラムスペーサ感光材に用いられることができるが、光硬化性塗料、光硬化性インク、光硬化性接着剤、印刷板、プリント配線板用感光材、その他の透明感光材、およびPDP製造などにも用いることができ、その用途に特に制限されない。
【0078】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかし、下記実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、これによって本発明の範囲が限定されることはない。
【実施例】
【0079】
<合成例1>フルオレン系化合物の合成
9,9−ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル305gとアクリル酸95g、テトラブチルアンモニウムブロミド3.2g、熱重合禁止剤MEHQ0.22gを400gのプロピレングリコールメチルエーテルアセテート溶媒と共に撹拌し、反応器内部に空気(air)を流して反応器を110℃に加熱した。24時間後に反応を終了してフルオレン系化合物を得た(固形分50.10%、分子量606g/mol)。
【0080】
<合成例2>フルオレン系ジアシッド化合物の合成
前記合成例1で製造したフルオレン系化合物133gと1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸33gを130gのプロピリレングリコールメチルエーテルアセテート溶媒と共に撹拌し、反応器内部に空気(air)を流して反応器を110℃に加熱した。12時間後に反応を終了してフルオレン系ジアシッド化合物を得た(固形分38.85%、酸価130KOH mg/g、分子量910g/mol)。
【0081】
<合成例3>フルオレン系樹脂重合体の合成
前記合成例2で合成したフルオレン系ジアシッド化合物153gと9,9−ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル14gを65gのプロピリレングリコールメチルエーテルアセテート溶媒と共に撹拌し、反応器内部に空気(air)を流して反応器を120℃に加熱した。16時間後に反応を終了してフルオレン系樹脂重合体を得た(固形分30.03%、酸価60KOH mg/g、分子量4,200g/mol)。
【0082】
<合成例4>フルオレン系ジアシッド化合物の合成
前記合成例1で合成したフルオレン系化合物133gとコハク酸無水物22gを120gのプロピリレングリコールメチルエーテルアセテート溶媒と共に撹拌し、反応器内部に空気(air)を流して反応器を110℃に加熱した。12時間後に反応を終了してフルオレン系ジアシッド化合物を得た(固形分39.50%、酸価135KOH mg/g、分子量807g/mol)。
【0083】
<合成例5>フルオレン系樹脂重合体の合成
前記合成例4で合成したフルオレン系ジアシッド化合物136gと9,9−ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル14gを50gのプロピリレングリコールメチルエーテルアセテート溶媒と共に撹拌し、反応器内部に空気(air)を流して反応器を120℃に加熱した。16時間後に反応を終了してフルオレン系樹脂重合体を得た(固形分30.54%、酸価67KOH mg/g、分子量4,000g/mol)。
【0084】
<比較合成例1>フルオレン系樹脂重合体の合成
前記合成例1で合成したフルオレン系化合物180gとビフェニルテトラカルボン酸22g、1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸11g、およびテトラブチルアンモニウムブロミド0.28gを33gのプロピリレングリコールメチルエーテルアセテート溶媒と共に撹拌し、反応器内部に空気(air)を流して反応器を115℃に加熱した。5時間後に反応を終了してフルオレン系樹脂重合体を得た(固形分49.30%、酸価100KOH mg/g、分子量3,800g/mol)。
【0085】
<実施例1>
前記合成例3で合成したフルオレン系樹脂重合体25重量部をカーボンブラック分散液100重量部、光開始剤であるCGI−242 5重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート35重量部、溶媒であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート80重量部を混合して約3時間撹拌した後、感光性樹脂組成物を準備した。
【0086】
<実施例2>
前記合成例5で合成したフルオレン系樹脂重合体25重量部を前記実施例1で用いられたものと同じ組成で混合して約3時間撹拌した後、感光性樹脂組成物を準備した。
【0087】
<比較例1>
前記比較合成例1で合成したフルオレン系樹脂重合体25重量部を前記実施例1で用いられたものと同じ組成で混合して約3時間撹拌した後、感光性樹脂組成物を準備した。
【0088】
<実験例1>
前記実施例1〜2および比較例1で製造したそれぞれの感光性樹脂組成物溶液をガラス基板上にスピンコーティングし、100℃で140秒間伝熱処理して1.2μm厚さの導膜を形成した後、この導膜上にフォトマスクを覆って40mJ/cmのエネルギーで露光した。前記露光された基板を25℃の0.043%KOH水溶液を利用してスプレー方式によって80秒間現像した後、純水で洗浄して乾燥させ、230℃コンベクションオーブンで20分間の乾燥過程を経てブラックマトリクスパターンを形成した。
【0089】
前記実験例で得られたそれぞれのパターン状態を光学顕微鏡で観察して直進性と感度を確認することができ、その結果を下記表1に示した。
【0090】
【表1】

【0091】
前記表1において、直進性は光学顕微鏡で観察した結果に基づいて表記し、直進性が良好であるもの(○)、普通であるもの(△)、直進性が不良であるもの(×)に区分した。
【0092】
また、表1において、露光および現像工程を終えた後に残っている最小パターンのサイズを表記し、感度および現像接着性を確認した。
【0093】
<実験例2>
前記実施例1〜2および比較例1で製造されたそれぞれの感光性樹脂組成物溶液を45℃のオーブンで3日間保管した後に粘度を測定し、変化率が5%以内であれば安定性が良好であるもの(○)、5〜10%の間であれば安定性が普通であるもの(△)、10%を超過すれば安定性が不良であるもの(×)に区分し、下記表2に記載した。
【0094】
【表2】

【0095】
前記表1および表2の結果から確認できるように、本発明に係るフルオレン系樹脂重合体は感度が優れており、同じ現像時間でパターンが削られる現象が少なく、現像接着性、直進性、および安定性も優れ、ネガティブ型感光性樹脂組成物に効果的である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される反復単位を含む、フルオレン系樹脂重合体。
【化1】

前記化学式1において、
、X、X、X、Z、Z、Z、およびZは互いに同じであるか相違しており、それぞれ独立に炭素数1〜3のアルキレン基、エチレンオキシド基、およびプロピレンオキシド基からなる群より選択され、
およびYは互いに同じであるか相違しており、それぞれ独立に炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数3〜10のシクロアルキレン基、炭素数3〜10のシクロアルケニレン基、および炭素数6〜10のアリーレン基からなる群より選択され、
、R、R、R、R、R、R、およびRは互いに同じであるか相違しており、それぞれ独立に水素または炭素数1〜3のアルキル基であり、
nは1〜5,000の整数である。
【請求項2】
前記化学式1は下記化学式2で表されることを特徴とする、請求項1に記載のフルオレン系樹脂重合体。
【化2】

前記化学式2において、nは1〜5,000の整数である。
【請求項3】
前記フルオレン系樹脂重合体の重量平均分子量は1,000〜50,000であることを特徴とする、請求項1に記載のフルオレン系樹脂重合体。
【請求項4】
前記フルオレン系樹脂重合体の酸価は30〜150KOH mg/gであることを特徴とする、請求項1に記載のフルオレン系樹脂重合体。
【請求項5】
請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載のフルオレン系樹脂重合体、エチレン性不飽和結合を含む重合性化合物、光開始剤、および溶媒を含む、感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記フルオレン系樹脂重合体の含量は、感光性樹脂組成物の総重量を基準として1〜20重量%であることを特徴とする、請求項5に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記エチレン性不飽和結合を含む重合性化合物は、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、およびポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートからなる群より選択される1種以上を含むことを特徴とする、請求項5に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
前記エチレン性不飽和結合を含む重合性化合物の含量は、感光性樹脂組成物の総重量を基準として1〜30重量%であることを特徴とする、請求項5に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
前記光開始剤は、トリアジン系化合物、アセトフェノン系化合物、およびベンゾフェノン系化合物からなる群より選択される1種以上を含むことを特徴とする、請求項5に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項10】
前記光開始剤の含量は、感光性樹脂組成物の総重量を基準として0.1〜5重量%であることを特徴とする、請求項5に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項11】
前記溶媒は、メチルエチルケトン、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、およびジプロピレングリコールモノメチルエーテルからなる群より選択される1種以上を含むことを特徴とする、請求項5に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項12】
前記溶媒の含量は、感光性樹脂組成物の総重量を基準として45〜95重量%であることを特徴とする、請求項5に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項13】
前記感光性樹脂組成物は、着色剤、硬化促進剤、熱重合抑制剤、界面活性剤、光増感剤、可塑剤、接着促進剤、充填剤、および接着調剤からなる群より選択される1種以上を追加で含むことを特徴とする、請求項5に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項14】
請求項5に記載の感光性樹脂組成物を利用して製造された感光材。
【請求項15】
前記感光材は、カラーフィルター製造用顔料分散型感光材、ブラックマトリクス形成用感光材、オーバーコート層形成用感光材、カラムスペーサ感光材、およびプリント配線板用感光材からなる群より選択されることを特徴とする、請求項14に記載の感光材。

【公開番号】特開2012−153888(P2012−153888A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−15242(P2012−15242)
【出願日】平成24年1月27日(2012.1.27)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】