説明

フルオレン誘導体の製造方法

【課題】
フルオレン誘導体の新規な製造方法を提供する。
【解決手段】
ヘテロポリ酸触媒の存在下、式(1)で表されるフルオレノン類と式(2)で表される化合物を反応させることを特徴とする、フルオレン誘導体の製造方法。
【化1】


(式(1)中、R1aおよびR1bは置換基を示す。k1およびk2は0又は1〜4の整数を示し、同一もしくは異なっていてもよい。)
(式(2)中、Rはアルキレン基、Rは置換基を示す。nは0又は1以上の整数を示し、mは0又は1〜4の整数を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、変性アクリル樹脂等の原料として有用なフルオレン誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンなどのフルオレン誘導体は、耐熱性、透明性に優れ、高屈折率を備えたポリマー原料として有望であり、光学レンズ、フィルム、プラスチック光ファイバー、光ディスク基盤、耐熱性樹脂やエンジニヤリングプラスチックなどの原料として期待されている。
【0003】
9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの製造方法としては、硫酸とチオールを触媒としてフルオレノンとフェノキシエタノールを脱水縮合させる方法が開示されている(特許文献1)。しかし、この方法では大量の硫酸を用いるため、反応後の精製に煩雑な操作が必要であり、多量の中和排水が出る。また製品中に触媒由来のイオウ分が混入することにより、製品の着色や安定性低下、純度低下などの問題が生じる。更に光学樹脂原料など、高純度の製品を得るためにはイオウ分を除くために精製を繰り返す必要があり、工業的に有利な方法とは言えない。
【0004】
硫酸を使用しない方法として、金属交換型モンモリロナイトを使用する方法が開示されている(特許文献2)。しかし、この方法では、市販のモンモリロナイトと金属塩化物等を反応させて金属置換モンモリロナイト触媒を製造する必要がある。また反応収率を上げるためには、助触媒としてβ−メルカプトプロピオン酸などのチオール類が使用されており、製品中にイオウ分が混入することから、高純度の製品を得るためには精製操作が必要であり、工業的に有利な方法とは言えない。
【0005】
【特許文献1】特開平7−165657
【0006】
【特許文献2】特開2000−191577
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、フルオレノン類とフェノキシアルコール類の反応によるフルオレン誘導体の製造において、煩雑な触媒除去操作や精製操作を行なうことなく、イオウ分を含まない高品質な製品を工業的有利に製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、フルオレノン類とフェノキシアルコール類をヘテロポリ酸触媒存在下に反応させることにより、高収率で高品質なフルオレン誘導体を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、ヘテロポリ酸触媒の存在下、式(1)
【化1】

(式中、R1aおよびR1bは置換基を示す。k1およびk2は0又は1〜4の整数を示し、同一もしくは異なっていてもよい。)
で表されるフルオレノン類と式(2)
【化2】

(式中、Rはアルキレン基、Rは置換基を示す。nは0又は1以上の整数を示し、mは0又は1〜4の整数を示す。)
で表される化合物を反応させることを特徴とする、式(3)
【化3】

(式中、R3aおよびR3bはアルキレン基を示し、R1a1b、R2aおよびR2bは置換基を示す。k1およびk2は0又は1〜4の整数を示し、同一もしくは異なっていてもよい。n1およびn2は0又は1以上の整数を示し、同一もしくは異なっていてもよい。m1およびm2は0又は1〜4の整数を示し、同一もしくは異なっていてもよい。)
で表されるフルオレン誘導体の製造方法に関する。
【0010】
本発明に用いられるヘテロポリ酸とは、一般的には異なる2種以上の酸化物複合体からなる複合酸化物酸、およびこれらのプロトンの一部もしくはすべてを他のカチオンで置き換えたものである。ヘテロポリ酸は、例えば、リン、ヒ素、スズ、ケイ素、チタン、ジルコニウムなどの元素の酸素酸イオン(例えば、リン酸、ケイ酸)とモリブデン、タングステン、バナジウム、ニオブ、タンタルなどの元素の酸素酸イオン(バナジン酸、モリブデン酸、タングステン酸)とで構成されており、その組み合わせにより種々のヘテロポリ酸が可能である。
【0011】
ヘテロポリ酸を構成する酸素酸の元素は特に限定されるものではないが、例えば、銅、ベリリウム、ホウ素、アルミニウム、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、チタン、ジルコニウム、セリウム、トリウム、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、ウラン、セレン、テルル、マンガン、ヨウ素、鉄、コバルト、ニッケル、ロジウム、オスミウム、イルジウム、白金などが挙げられる。好ましいヘテロポリ酸は、リン、ケイ素、バナジウム、モリブデン、タングステンから選ばれたの少なくとも1種の元素を含有しており、さらに好ましくはリン又はケイ素と、バナジウム、モリブデンおよびタングステンから選ばれた少なくとも1種の元素とを含有している。
【0012】
ヘテロポリ酸骨格を構成するヘテロポリ酸アニオンとしては種々の組成のものを使用できる。例えば、XM1240、XM1242、XM1862、XM24などが挙げられる。好ましいヘテロポリ酸アニオンの組成は、XM1240である。各式中、Xはケイ素、リンなどの元素であり、Mはバナジウム、モリブデン、タングステンなどの元素である。これらの組成を有するヘテロポリ酸として、具体的には、リンモリブデン酸、リンタングステン酸、ケイモリブデン酸、ケイタングステン酸、リンバナドモリブデン酸などが例示される。
【0013】
ヘテロポリ酸は、遊離のヘテロポリ酸であってもよく、プロトンの一部もしくはすべてを他のカチオンで置き換えて、ヘテロポリ酸の塩として使用することもできる。従って、本発明で言うヘテロポリ酸とはこれらのヘテロポリ酸の塩も含まれる。プロトンと置換可能なカチオンとしては、例えば、アンモニウム、アルカリ金属、アルカリ土類金属などが挙げられる。
【0014】
ヘテロポリ酸は無水物であってもよく、結晶水含有物であってもよいが、無水物の方がより反応が早く、また副生成物の生成が抑制され好ましい。結晶水含有物の場合、予め減圧乾燥や溶媒との共沸脱水等の脱水処理を行なうことにより無水物と同様の効果を得ることができる。ヘテロポリ酸は活性炭、アルミナ、シリカ−アルミナ、ケイソウ土などの担体に担持した形態で用いてもよい。これらのヘテロポリ酸は単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用することもできる。また、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲でヘテロポリ酸以外の他の触媒を併用してもよい。
【0015】
ヘテロポリ酸の使用量は特に限定されるものではないが、充分な反応速度を得るには、原料であるフルオレノン類に対して、0.0001重量倍以上、好ましくは0.001〜30重量倍、更に好ましくは0.01〜5重量倍である。
【0016】
前記式(1)で表されるフルオレノン類は、前記式(3)で表されるフルオレン誘導体のフルオレン骨格に対応している。式中、R1aおよびR1bで表される置換基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、t−ブチル基などの炭素数1〜20のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの炭素数5〜16のシクロアルキル基、フェニル基、アルキルフェニル基などの炭素数6〜16のアリール基、ベンジル基、フェネチル基などの炭素数7〜16のアラルキル基、メトキシ基、エトキシ基などの炭素数1〜12のアルコキシ基、アセチル基などの炭素数1〜12のアシル基、メトキシカルボニル基などの炭素数1〜12のアルコキシカルボニル基、フッ素原子、塩素原子などのハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基などが挙げられる。好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリ−ル基であり、更に好ましくはアルキル基である。アルキル基の中でも特にメチル基が好ましい。R1aおよびR1bは互いに同一もしくは異なっていてもよい。またR1a(又はR1b)は、同一のベンゼン環において同一もしくは異なっていてもよい。なお、R1a(又はR1b)の置換位置は特に限定されるものではない。置換基数k1およびk2は0又は1〜4であり、好ましくは0又は1、さらに好ましくは0である。k1およびk2は同一もしくは異なっていてもよいが、通常、同一である。代表的なフルオレノン類としては9−フルオレノンが挙げられる。
【0017】
前記式(2)で表される化合物(フェノキシアルコール類)は、前記式(3)で表されるフルオレン誘導体において、9位に置換したフェノキシアルコール基に対応しており、RはR2a又はR2bに、RはR3a又はR3bに、mはm1又はm2に、nはn1又はn2にそれぞれ対応している。
【0018】
2aおよびR2bで表される置換基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、t−ブチル基などの炭素数1〜20のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの炭素数5〜16のシクロアルキル基、フェニル基、アルキルフェニル基などの炭素数6〜16のアリール基、ベンジル基、フェネチル基などの炭素数7〜16のアラルキル基、メトキシ基、エトキシ基などの炭素数1〜12のアルコキシ基、アセチル基などの炭素数1〜12のアシル基メトキシカルボニル基などの炭素数1〜12のアルコキシカルボニル基、フッ素原子、塩素原子などのハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基などが挙げられる。好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリ−ル基である。R2aおよびR2bは互いに同一もしくは異なっていてもよいが、通常、同一である。またR2a(又はR2b)は、同一のベンゼン環において同一もしくは異なっていてもよい。なお、R2a(又はR2b)の置換位置は特に限定されるものではない。置換基数m1およびm2は0又は1〜4であり、好ましくは0〜2、さらに好ましくは0である。m1およびm2は同一もしくは異なっていてもよいが、通常、同一である。
【0019】
3aおよびR3bで表されるアルキレン基としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基などが挙げられる。好ましくは炭素数1〜6のアルキレン基、さらに好ましくは炭素数2〜3のアルキレン基である。R3aおよびR3bは互いに同一もしくは異なっていてもよいが、通常、同一である。R3a(又はR3b)の置換位置は特に限定されるものではない。置換基数n1およびn2は0又は1以上であり、同一もしくは異なっていてもよい。好ましくは0〜15、さらに好ましくは0〜5である。なお、 n1(又はn2)が2以上の場合、ポリアルコキシ基は、同一のアルコキシ基で構成されていてもよく、異種のアルコキシ基(例えばエトキシ基とプロピレンオキシ基)が混在して構成されていてもよいが、通常、同一のアルコキシ基で構成されている。
【0020】
前記式(2)で表される化合物の具体例としては、例えば、n=0の化合物として、フェノール、2−メチルフェノール、3−メチルフェノール、などのアルキルフェノール、2,3−キシレノール、2,6−キシレノール、3,5−キシレノールなどのジアルキルフェノール、2−メトキシフェノール、2−エトキシフェノールなどのアルコキシフェノール、2−フェニルフェノール、3−フェニルフェノールなどのフェニルフェノールなどが挙げられる。n=1の化合物として、フェノキシエタノール、フェノキシプロパノール、フェノキシブタノールなどのフェノキシアルキルアルコール、(2−メチル−フェノキシ)エタノール、(3−メチル−フェノキシ)エタノール、(3−エチル−フェノキシ)エタノール、(3−ブチル−フェノキシ)エタノール、(2−メチル−フェノキシ)プロパノール、(3−メチル−フェノキシ)プロパノールなどのアルキルフェノキシアルキルアルコール、(2,3−ジメチルフェノキシ)エタノール、(2,5−ジメチルフェノキシ)エタノール、(2,6−ジメチルフェノキシ)エタノール、(2,6−ジブチルフェノキシ)エタノールなどのジアルキルフェノキシアルキルアルコール、(2−メトキシフェノキシ)エタノールなどのアルコキシフェノキシアルキルアルコール、(2−シクロヘキシルフェノキシ)エタノールなどのシクロアルキルフェノキシアルキルアルコール、ビフェニリルオキシエタノールなどのアリールフェノキシアルキルアルコールなどが挙げられる。また、nが2以上の化合物としては、これらフェノキシアルキルアルコールに対応するポリオキシアルキレンフェニルエーテルなどが挙げられる。好ましくはフェノキシC2−6アルキルアルコール又はC1−4アルキルフェノキシC2−6アルキルアルコールであり、特に好ましくはフェノキシエタノールである。
【0021】
前記式(2)で表される化合物の使用量は、特に限定されるものではないが、副反応抑制及び経済性の点から、通常、フルオレノン類1モルに対して、2〜50モル、好ましくは2.5〜20モル、さらに好ましくは3〜10モルである。また、これらの化合物を反応溶媒として用いることもできる。
【0022】
本発明におけるフルオレン誘導体の合成方法は、特に限定されるものではないが、通常、原料のフルオレノン類とフェノキシアルコール類、およびヘテロポリ酸触媒を反応装置に仕込み、空気中又は窒素、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気下、トルエン、キシレンなどの不活性溶媒存在下又は非存在下で加熱攪拌することにより行うことができる。
この際、触媒含有水や反応生成水など、反応系内の水分を除去する、脱水条件下で反応を行うことにより、脱水しない場合より反応が早く進行し、副生成物の生成が抑制され、より高収率で目的物を得ることができる。脱水方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、脱水剤の添加による脱水、減圧による脱水、常圧又は減圧下、溶媒との共沸による脱水などが挙げられる。
【0023】
反応に用いられる脱水剤としては、特に限定されるものではないが、モレキュラーシーブ、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウムなどが挙げられる。脱水剤の使用量は特に限定されるものではないが、脱水効果および経済性の点から、通常フルオレノンに対して、0.0001重量倍以上、好ましくは0.001〜100重量倍、更に好ましくは0.01〜50重量倍である。
【0024】
反応に用いられる共沸脱水溶媒としては、特に限定されるものではないが、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、ジ−iso−プロピルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの脂肪族および環状エーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類、N,N−ジメチルホルムアルデヒド、N,N−ジメチルアセトアルデヒド、1−メチル−2−ピロリジノンなどのアミン類などが挙げられる。好ましくは芳香族炭化水素類、ハロゲン化芳香族炭化水素類であり、さらに好ましくはトルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンである。その使用量は特に限定されるものではないが経済性の点から、通常フルオレノン類に対して0.1重量倍以上、好ましくは0.5〜100重量倍、さらに好ましくは1〜20重量倍である。
反応温度は使用する原料、溶媒の種類により異なるが、通常、50〜300℃、好ましくは80〜250℃、更に好ましくは120〜180℃である。反応は液体クロマトグラフィーなどの分析手段で追跡することができる。
【0025】
反応後、反応液に溶媒を加え、冷却晶析することにより結晶としてフルオレン誘導体を得ることができ、析出した結晶は濾過等により回収される。また必要に応じて洗浄、吸着、水蒸気蒸留、再晶析などの精製操作を行うことができる。晶析および精製に用いられる溶媒は、反応溶媒をそのまま使用してもよいし、別の溶媒を使用することもできる。晶析溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノールなどの脂肪族低級アルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどの脂肪族低級ケトン類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、酢酸エチルなどのエステル類、水などが特に好ましい。
【0026】
本発明において生成する、前記式(3)で表されるフルオレン誘導体としては、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ−アルキルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ−ジアルキルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ−アルコキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ−シクロアルキルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ−アリールフェニル)フルオレンなどが挙げられる。本発明は、これらのフルオレン誘導体の中でも9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレンの製造において、特に9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの製造において有効である。
【発明の効果】
【0027】
フルオレノン類とフェノキシアルコール類からフルオレン誘導体を製造するに際し、イオウ分を含まない高品質なフルオレン誘導体を煩雑な触媒除去操作や精製操作を行なうことなく工業的有利に製造する方法を提供することができる。
【0028】
(実施例)
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0029】
攪拌機、窒素吹込管、温度計および冷却管を備えたガラス製反応器にフルオレノン54.0g(0.300モル)、フェノキシエタノール330.0g(2.388モル)および触媒としてリンタングステン酸[(HPW1240)・nHO]5.4gを加え、温度を170℃に保ちながら、窒素雰囲気下で約2時間攪拌した。得られた反応液を高速液体クロマトグラフィ−で分析した結果、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンが112.5g(0.257モル)生成していた。
【実施例2】
【0030】
攪拌機、窒素吹込管、温度計および冷却管を備えたガラス製反応器にフルオレノン18.0g(0.100モル)、フェノキシエタノール550.0g(3.980モル)および触媒としてケイタングステン酸[(HSiW1240)・nHO]15.0gを加え、温度を140℃に保ちながら、窒素雰囲気下で約16時間攪拌した。得られた反応液を高速液体クロマトグラフィ−で分析した結果、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンが37.0g(0.084モル)生成していた。
【実施例3】
【0031】
攪拌機、窒素吹込管、温度計および冷却管を備えたガラス製反応器にフルオレノン18.0g(0.100モル)、フェノキシエタノール220.0g(1.592モル)および触媒としてリンモリブデン酸[(HPMo1240)・nHO]7.5gを加え、温度を170℃に保ちながら、窒素雰囲気下で約4時間攪拌した。得られた反応液を高速液体クロマトグラフィ−で分析した結果、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンが34.4g(0.078モル)生成していた。
【実施例4】
【0032】
攪拌機、窒素吹込管、温度計および冷却管を備えたガラス製反応器にフルオレノン54.0g(0.300モル)、フェノキシエタノール330.0g(2.388モル)および触媒としてリンバナドモリブデン酸[(HPVMo40)・nHO]5.0gを加え、温度を170℃に保ちながら、窒素雰囲気下で約4時間攪拌した。得られた反応液を高速液体クロマトグラフィ−で分析した結果、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンが109.0g(0.249モル)生成していた。
【実施例5】
【0033】
攪拌機、窒素吹込管、温度計および冷却管を備えたガラス製反応器にフルオレノン18.0g(0.100モル)、フェノキシエタノール550.0g(3.980モル)および触媒としてリンタングステン酸ナトリウム[(NaPW1240)・nHO]15.0gを加え、温度を170℃に保ちながら、窒素雰囲気下で約4時間攪拌した。得られた反応液を高速液体クロマトグラフィ−で分析した結果、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンが9.9g(0.023モル)生成していた。
【実施例6】
【0034】
攪拌機、窒素吹込管、温度計および冷却管を備えたガラス製反応器にフルオレノン0.90g(0.005モル)、1−(2−メチル−フェノキシ)−2−プロパノール4.99g(0.030モル)、キシレン4gおよび触媒としてリンタングステン酸[(HPW1240)・nHO]0.7gを加え、温度を160℃に保ちながら、窒素雰囲気下で約4時間攪拌した。得られた反応液を高速液体クロマトグラフィ−で分析した結果、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシプロポキシ)−3−メチル−フェニル)フルオレンが1.85g(0.0037モル)生成していた。
【実施例7】
【0035】
攪拌機、窒素吹込管、温度計および冷却管を備えたガラス製反応器にフルオレノン10.0g(0.056モル)、フェノール30.0g(0.319モル)および触媒としてリンタングステン酸[(HPW1240)・nHO]2.0gを加え、温度を140℃に保ちながら、窒素雰囲気下で約10時間攪拌した。得られた反応液を高速液体クロマトグラフィ−で分析した結果、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンが17.2g(0.049モル)生成していた。
【実施例8】
【0036】
攪拌機、窒素吹込管、温度計および冷却管を備えたガラス製反応器にフルオレノン10.0g(0.056モル)、o−クレゾール36.7g(0.339モル)および触媒としてリンタングステン酸[(HPW1240)・nHO]2.0gを加え、温度を160℃に保ちながら、窒素雰囲気下で約5時間攪拌した。得られた反応液を高速液体クロマトグラフィ−で分析した結果、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチル−フェニル)フルオレンが18.5g(0.049モル)生成していた。
【実施例9】
【0037】
攪拌機、窒素吹込管、温度計および冷却管を付けた水分離器を備えたガラス製反応器にフルオレノン86.4g(0.48モル)、フェノキシエタノール397.9g(2.88モル)、トルエン350gおよび100℃で減圧乾燥し結晶水を除いたリンタングステン酸[(HPW1240)]4.3gを加え、トルエン還流下、生成水を反応系外に除去しながら12時間攪拌した。得られた反応液を高速液体クロマトグラフィ−で分析した結果、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンが197.3g(0.45モル)生成していた。この反応液にトルエン300gを加え、水100gを用いて80℃で水洗をおこなった。次いでこの液を室温まで徐々に冷却し、析出した結晶をろ過、乾燥することにより白色結晶[9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン]158.0g(収率75.1%、LC純度99.0%)を得た。得られた結晶中のイオウ分は0.2ppm以下であった。
【実施例10】
【0038】
攪拌機、窒素吹込管、温度計および冷却管を付けた水分離器を備えたガラス製反応器にフルオレノン86.4g(0.48モル)、フェノキシエタノール663.2g(4.80モル)、トルエン350gおよび100℃で減圧乾燥し結晶水を除いたケイタングステン酸[(HSiW1240)]4.3gを加え、トルエン還流下、生成水を反応系外に除去しながら8時間攪拌した。得られた反応液を高速液体クロマトグラフィ−で分析した結果、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンが201.5g(0.46モル)生成していた。この反応液にトルエン300gを加え、水100gを用いて80℃で水洗をおこなった。次いで加熱下、減圧濃縮によりトルエンおよび過剰のフェノキシエタノールを除去した。この濃縮液にトルエン600gを加え、80℃で約1時間加熱攪拌した後、室温まで徐々に冷却し、析出した結晶をろ過、乾燥することにより白色結晶[9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン]、162.1g(収率92.0%、LC純度96.2%)を得た。得られた結晶中のイオウ分は0.2ppm以下であった。
【0039】
(比較例1)
攪拌機、窒素吹込管、温度計および冷却管を備えたガラス製反応器にフルオレノン45.0g(0.25モル)、フェノキシエタノール138.0g(1.00モル)、α−メルカプトプロピオン酸0.2mlを加え、均一に溶解。この液に95%硫酸45mlを約30分かけたて滴下した後、65℃で4時間攪拌した。得られた反応液にトルエン360gを加え、水90gを用いて80℃で水洗を3回繰り返した。次いでこの液を室温まで徐々に冷却し、析出した結晶をろ過、乾燥することにより淡黄色結晶[9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン]81.8g(収率74.8%)を得た。この結晶中のイオウ分は600ppmであった。さらにこの結晶をトルエン523gに溶解後活性炭1.6gおよび陰イオン交換樹脂(住友化学社製デュオライトA−378)4.1gを加えて80℃で約1時間加熱攪拌した後、熱ろ過により活性炭およびイオン交換樹脂を除去した。得られたろ液を室温まで徐々に冷却し、析出した結晶をろ過、乾燥することにより白色結晶71.6g(収率65.2%)を得た。この結晶中のイオウ分は55ppmであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘテロポリ酸触媒の存在下、式(1)
【化1】

(式中、R1aおよびR1bは置換基を示す。k1およびk2は0又は1〜4の整数を示し、同一もしくは異なっていてもよい。)
で表されるフルオレノン類と式(2)
【化2】


(式中、Rはアルキレン基、Rは置換基を示す。nは0又は1以上の整数を示し、mは0又は1〜4の整数を示す。)
で表される化合物を反応させることを特徴とする、式(3)
【化3】

(式中、R3aおよびR3bはアルキレン基を示し、R1a1b、R2aおよびR2bは置換基を示す。k1およびk2は0又は1〜4の整数を示し、同一もしくは異なっていてもよい。n1およびn2は0又は1以上の整数を示し、同一もしくは異なっていてもよい。m1およびm2は0又は1〜4の整数を示し、同一もしくは異なっていてもよい。)
で表されるフルオレン誘導体の製造方法。
【請求項2】
ヘテロポリ酸触媒の存在下、式(1)で表されるフルオレノン類と式(2)で表される化合物を脱水条件下反応を行うことを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
式(1)において、R1aおよびR1bがアルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基又はアリール基、k1およびk2が0又は1であり、式(2)において、Rがアルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基又はアリール基、mが0〜2の整数である請求項1〜2記載の製造方法。
【請求項4】
式(2)において、Rが炭素数1〜6のアルキル基、Rが炭素数2〜6のアルキレン基、nが0〜5の整数である請求項1〜3記載の製造方法。
【請求項5】
式(1)がフルオレノンであり、式(2)がフェノキシエタノールである請求項1〜4記載の9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの製造方法。
【請求項6】
ヘテロポリ酸が、構成元素としてリン又はケイ素と、バナジウム、モリブデンおよびタングステンとから選ばれた少なくとも1種の元素を含むことを特徴とする請求項1〜5記載の製造方法。
【請求項7】
ヘテロポリ酸触媒が、ヘテロポリ酸無水物、又は、予め脱水処理されたヘテロポリ酸であることを特徴とする請求項1〜6記載の製造方法。

【公開番号】特開2007−23016(P2007−23016A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−364996(P2005−364996)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(000216243)田岡化学工業株式会社 (115)
【Fターム(参考)】