説明

フルオレン骨格を有する新規な複素環含有化合物及びその製造方法

【課題】耐熱性などにおいて優れた樹脂の原料などとして用いることができる新規なフルオレン骨格を有する複素環含有化合物を提供する。
【解決手段】複素環含有化合物は、下記式(1)で表される。


(式中、環Arは芳香族炭化水素環、環Hetは複素環、R1はシアノ等、R2及びR3は、炭化水素基等、A1はアルキレン基、A2は直接結合又は脂肪族炭化水素基、Xは反応性基又はその誘導体もしくは前駆誘導体を示す。kは0〜4の整数、m、p及びqは0以上の整数、nは1以上の整数である)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高耐熱樹脂原料となるフルオレン骨格(詳細には、9,9−ビス(アリール)フルオレン骨格)を有する新規な複素環含有化合物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
9,9−ビスフェニルフルオレン骨格などのフルオレン骨格を有する化合物は、屈折率、耐熱性などにおいて優れた機能を有しており、樹脂原料などとして用いることが知られている。このようなフルオレン骨格の優れた機能を樹脂に発現する方法としては、反応性基(ヒドロキシル基、アミノ基など)を有するフルオレン化合物、例えば、ビスフェノールフルオレン(BPF)、ビスクレゾールフルオレン(BCF)、ビスアミノフェニルフルオレン(BAFL)、ビスフェノキシエタノールフルオレン(BPEF)などを樹脂の構成成分として利用し、樹脂の骨格構造の一部にフルオレン骨格を導入する方法が一般的である。例えば、このようなフルオレン骨格を有するポリエステル樹脂として、特開2002−284864号公報(特許文献1)には、9,9−ビスフェニルフルオレン骨格を有するポリエステル樹脂で構成された成形材料が開示されている。また、特開2004−339499号公報(特許文献2)には、ビスフェノールフルオレン、ビスアミノフェニルフルオレン、ビスフェノキシエタノールフルオレンなどを重合成分とする樹脂(ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール系樹脂、アニリン系樹脂など)と、添加剤とを含有する組成物が開示されている。
【0003】
このようなフルオレン骨格を有する化合物を用いて得られた材料は、高耐熱性や高屈折率性などの特性の付与が期待される。しかし、近年の急速な技術革新に伴い、光学用途やエンジニアリングプラスチックなどの分野において、このような特性のさらなる向上や特性の改良が要求されており、このようなさらなる要求性能を充足するフルオレン骨格を有する化合物の開発が求められている。例えば、フルオレンを有する重合体は高い屈折率を有するが、無機ガラスに比べると十分に高いとは言えない。
【0004】
一方、重合体の光学的特性を向上させる方法として、特開2005−171055号公報(特許文献3)及び特開2006−56828号公報(特許文献4)では、硫黄原子(例えば、チオフェンなどの複素環化合物など)を重合体に導入することにより光学的特性を向上させる作用が提案されている。しかし、フルオレン骨格を有する化合物にチオフェンなどの複素環を導入した化合物は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−284864号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2004−339499号公報(特許請求の範囲、段落番号[0032])
【特許文献3】特開2005−171055号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開2006−56828号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、樹脂の原料などとして用いることができる新規なフルオレン骨格を有する複素環含有化合物を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、樹脂の原料などとして用いると、光学的特性や耐熱性を向上できる新規なフルオレン骨格を有する複素環含有化合物を提供することにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、上記のような新規なフルオレン骨格を有する複素環含有化合物を、簡便にかつ効率よく製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、9,9−ビス(アリール)フルオレン骨格と複素環とを組み合わせた複素環含有化合物は、フルオレン骨格由来の優れた特性(例えば、高屈折率などの光学的特性、高耐熱性など)が向上すること、このような複素環含有化合物は、塩基性化合物の存在下、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類などのフェノール類と、官能基を有するハロ複素環含有化合物とを無溶媒又は溶媒中で反応させるという簡便な方法により、効率よく得られることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明の複素環含有化合物は、下記式(1)で表されるフルオレン骨格を有する複素環含有化合物である。
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、環Arは芳香族炭化水素環を示し、環Hetは複素環を示し、R1はシアノ基、ハロゲン原子又はアルキル基、R2及びR3は、炭化水素基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基又は置換アミノ基を示し、A1はアルキレン基を示し、A2は直接結合又は脂肪族炭化水素基を示し、Xは反応性基又はその誘導体もしくは前駆誘導体を示す。kは0〜4の整数、m、p及びqは0以上の整数、nは1以上の整数である)。
【0013】
前記式(1)において、環Arがベンゼン環であり、RがC1-4アルキル基及びハロゲン原子から選択された基であり、mが0〜2の整数であってもよい。また、環Arはナフタレン環であってもよい。前記式(1)において、A1がC2-4アルキレン基であり、qが0〜2の整数(特に0)であり、A2が直接結合又はC1-10アルキレン基(特に直接結合又はメチレン基)であり、環Hetが窒素原子、硫黄原子及び酸素原子からなる群から選択された少なくとも一種の原子をヘテロ原子とする4〜12員複素環(特に4〜6員環)であり、Xがカルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、エポキシ基、シアノ基、ハロゲン原子(特にカルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基)、又はこれらの基の誘導体又は前駆誘導体であり、かつnが1〜3の整数(特に1)であってもよい。
【0014】
本発明には、前記複素環含有化合物を製造する方法であって、塩基性化合物の存在下、下記式(2)
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、Ar、A1、R1、R2、k、m、n、qは前記に同じ)
で表される化合物と、下記式(3)
【0017】
【化3】

【0018】
(式中、Yはハロゲン原子を示す。Het、R3、A2、X、pは前記に同じ)
で表される化合物とを反応させる工程を含む製造方法も含まれる。さらに、本発明には、前記複素環含有化合物から得られる重合体も含まれる。
【0019】
なお、本明細書において、化合物名などの「類」とは、「置換基を有さない」場合と「置換基を有する」場合とを含み、「置換基を有していてもよい」ことを意味する場合がある。さらに、「反応性基」は、その誘導体又は前駆誘導体を含む意味で用いる場合がある。
【発明の効果】
【0020】
本発明の新規なフルオレン骨格を有する複素環含有化合物は、樹脂の原料などとして用いることができる。特に、本発明の複素環含有化合物は、複素環と芳香環とが組み合わされているため、フルオレン骨格が有する光学的特性や耐熱性をさらに向上できる。さらに、本発明の複素環含有化合物は、塩基性化合物の存在下、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類などのフェノール類と、官能基を有するハロ複素環含有化合物とを無溶媒又は溶媒中で反応させるという簡便な方法により、安価に効率よく得られるため、工業的にも有利であり、実用性が極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、合成例1で得られた生成物の1H−NMRスペクトルチャートである。
【図2】図2は、合成例2で得られた生成物の1H−NMRスペクトルチャートである。
【図3】図3は、合成例3で得られた生成物の1H−NMRスペクトルチャートである。
【図4】図4は、実施例1で得られた生成物の1H−NMRスペクトルチャートである。
【図5】図5は、実施例2で得られた生成物の1H−NMRスペクトルチャートである。
【図6】図6は、実施例3で得られた生成物の1H−NMRスペクトルチャートである。
【図7】図7は、実施例4で得られた生成物の1H−NMRスペクトルチャートである。
【図8】図8は、実施例6で得られた生成物の1H−NMRスペクトルチャートである。
【図9】図9は、実施例7で得られた生成物の1H−NMRスペクトルチャートである。
【図10】図10は、実施例8で得られた生成物の1H−NMRスペクトルチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のフルオレン骨格を有する複素環含有化合物は、下記式(1)で表される。
【0023】
【化4】

【0024】
(式中、環Arは芳香族炭化水素環を示し、環Hetは複素環を示し、R1はシアノ基、ハロゲン原子又はアルキル基、R2及びR3は、炭化水素基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、アシル基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基又は置換アミノ基を示し、A1はアルキレン基を示し、A2は直接結合又は脂肪族炭化水素基を示し、Xは反応性基又はその誘導体もしくは前駆誘導体を示す。kは0〜4の整数、m、p及びqは0以上の整数、nは1以上の整数である)
前記式(1)において、環Arで表される芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、縮合多環式芳香族炭化水素環(詳細には、少なくともベンゼン環を含む縮合多環式炭化水素環)などが挙げられる。縮合多環式芳香族炭化水素環としては、縮合二環式炭化水素環(例えば、インデン環、ナフタレン環などのC8-20縮合二環式炭化水素環、好ましくはC10-16縮合二環式炭化水素環)、縮合三環式炭化水素環(例えば、アントラセン環、フェナントレン環など)などの縮合二乃至四環式炭化水素環などが挙げられる。好ましい縮合多環式芳香族炭化水素環としては、ナフタレン環、アントラセン環などが挙げられ、特にナフタレン環が好ましい。なお、フルオレンの9位に置換する2つの環Arは同一の又は異なる環であってもよく、通常、同一の環であってもよい。
【0025】
好ましい環Arには、ベンゼン環およびナフタレン環が含まれる。なお、環Arが、縮合多環式芳香族炭化水素環である場合、フルオレンの9位に置換する環Arの置換位置は、特に限定されず、例えば、フルオレンの9位に置換するナフチル基は、1−ナフチル基、2−ナフチル基などであってもよい。
【0026】
また、前記式(1)において、基R1で表される置換基としては、例えば、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、炭化水素基[例えば、アルキル基、アリール基(フェニル基などのC6-10アリール基)など]などが挙げられ、特に、シアノ基又はアルキル基(特にアルキル基)である場合が多い。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などのC1-6アルキル基(例えば、C1-4アルキル基、特にメチル基)などが例示できる。なお、kが複数(2以上)である場合、基R1は互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、フルオレン(又はフルオレン骨格)を構成する2つのベンゼン環に置換する基R1は同一であってもよく、異なっていてもよい。また、フルオレンを構成するベンゼン環に対する基Rの結合位置(置換位置)は、特に限定されない。好ましい置換数kは、0〜1、特に0である。なお、フルオレンを構成する2つのベンゼン環において、置換数kは、互いに同一又は異なっていてもよい。
【0027】
また、前記式(1)において、R2で表される置換基としては、非反応性置換基、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などのC1-20アルキル基、好ましくはC1-8アルキル基、さらに好ましくはC1-6アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロへキシル基などのC5-10シクロアルキル基、好ましくはC5-8シクロアルキル基、さらに好ましくはC5-6シクロアルキル基など)、アリール基[例えば、フェニル基、アルキルフェニル基(メチルフェニル基(又はトリル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基など)、ジメチルフェニル基(キシリル基)など)、ナフチル基などのC6-10アリール基、好ましくはC6-8アリール基、特にフェニル基など]、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC6-10アリール−C1-4アルキル基など)などの炭化水素基;アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基などのC1-20アルコキシ基、好ましくはC1-8アルコキシ基、さらに好ましくはC1-6アルコキシ基など)、シクロアルコキシ基(シクロへキシルオキシ基などのC5-10シクロアルキルオキシ基など)、アリールオキシ基(フェノキシ基などのC6-10アリールオキシ基)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基などのC6-10アリール−C1-4アルキルオキシ基)などのエーテル基(置換ヒドロキシル基);アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基などのC1-20アルキルチオ基、好ましくはC1-8アルキルチオ基、さらに好ましくはC1-6アルキルチオ基など)、シクロアルキルチオ基(シクロへキシルチオ基などのC5-10シクロアルキルチオ基など)、アリールチオ基(チオフェノキシ基などのC6-10アリールチオ基)、アラルキルチオ基(例えば、ベンジルチオ基などのC6-10アリール−C1-4アルキルチオ基)などのチオエーテル基(置換メルカプト基);アシル基(アセチル基などのC1-6アシル基など);ヒドロキシル基;ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など);ニトロ基;シアノ基;置換アミノ基(ジアルキルアミノ基など)などが挙げられる。
【0028】
これらのうち、基R2は、炭化水素基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基であるのが好ましく、特に、好ましい基R2は、炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、C1-6アルキル基)など]、アルコキシ基(C1-4アルコキシ基など)、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)などである。特に、環Arがベンゼン環である場合、基R2は、C1-4アルキル基、アリール基及びハロゲン原子から選択された基であってもよい。
【0029】
なお、同一の環Arにおいて、mが複数(2以上)である場合、基R2は互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、2つの環Arにおいて、基R2は同一であってもよく、異なっていてもよい。基Rの置換位置は、特に限定されず、例えば、環Arがベンゼン環である場合、フェニル基の2〜6位の適当な位置(例えば、3位、3,5位など)に置換していてもよい。
【0030】
また、好ましい置換数mは、0〜8、好ましくは0〜6(例えば、1〜5)、さらに好ましくは0〜4、特に0〜2(例えば、0〜1)であってもよい。特に、環Arがベンゼン環である場合、好ましい置換数mは、0〜4、好ましくは0〜3、さらに好ましくは0〜2であってもよい。なお、2つの環Arにおいて、置換数mは、互いに同一又は異なっていてもよい。
【0031】
前記式(1)において、基A1は、アルキレン基である。アルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、プロピリデン基、トリメチレン基、テトラメチレン基などの直鎖状又は分岐鎖状C2-10アルキレン基が挙げられる。これらのうち、エチレン基、プロピレン基などのC2-4アルキレン基が好ましい。
【0032】
オキシアルキレン基の繰り返し数qは、0以上の整数であり、通常、0〜10程度であり、好ましくは0〜5、さらに好ましくは0〜3(特に0〜2)程度である。さらに、オキシアルキレン基の繰り返し数qは、通常1であり、後述する基A2が直接結合でない場合(特に脂肪族炭化水素基である場合)には、オキシアルキレン基の繰り返し数は0であってもよい。
【0033】
前記式(1)において、基A2は、直接結合又は脂肪族炭化水素基である。脂肪族炭化水素基としては、飽和脂肪族炭化水素基[例えば、アルキレン基(アルキリデン基を含む。例えば、メチレン基、エチレン基、エチリデン基、トリメチレン基、プロピレン基、プロピリデン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基などのC1-10アルキレン基、好ましくはC1-6アルキレン基、さらに好ましくはC1-4アルキレン基)などの鎖状飽和脂肪族炭化水素基;シクロアルキレン基(例えば、シクロヘキシレン基などのC5-10シクロアルキレン基)などの脂環族飽和炭化水素基など]、不飽和脂肪族炭化水素基[例えば、アルケニレン基(例えば、ビニレン基、プロペン−1,3−ジイル基などのC2-6アルケニレン基など)などの鎖状不飽和脂肪族炭化水素基;シクロアルケニレン基(例えば、シクロヘキセン−1,4−ジイル基などのC5-10シクロアルケニレン基)などの脂環族不飽和炭化水素基など]などが含まれる。
【0034】
なお、基A2で表される脂肪族炭化水素基は、置換基(例えば、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基など)を有していてもよく、脂肪族炭化水素基には、このような置換基を有する基も含まれる。
【0035】
好ましい基A2は、直接結合又はアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基などの低級アルキレン基(例えば、C1-4アルキレン基)など)であり、特に直接結合又はメチレン基が好ましい。
【0036】
前記式(1)において、環Hetで表される複素環としては、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子からなる群から選択された少なくとも一種の原子をヘテロ原子とする4〜12員複素環が挙げられる。複素環は、芳香族性であってもよく、非芳香族性であってもよい。複素環は、芳香族又は非芳香族炭化水素との縮合複素環であってもよい。なお、複数(通常、2個)の環Hetは、それぞれ同一の又は異なる環であってもよく、通常、同一の環であってもよい。
【0037】
窒素原子をヘテロ原子として含有する複素環としては、例えば、1個の窒素原子を含有する複素環(ピロール環、ピリジン環など)、2個の窒素原子を含有する複素環(イミダゾール環、ピラゾール環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピペラジン環など)、3個の窒素原子を含有する複素環(トリアジン環など)、1個の窒素原子を含有する縮合複素環(インドーリジン環、インドール環、キノリン環、キノリジン環、ピリドコリン環など)、2個の窒素原子を含有する縮合複素環(ピリミダゾール環、フタリジン環、ナフタリジン環、キノオキサリン環、キナゾリン環など)、3個以上の窒素原子を含有する縮合複素環(プリン環など)などが挙げられる。
【0038】
硫黄原子をヘテロ原子として含有する複素環としては、例えば、1個の硫黄原子を含有する複素環(チオフェン環、チオピラン環など)、2個の硫黄原子を含有する複素環(ジチオラン環など)、1個の硫黄原子を含有する縮合複素環(チオナフテン環など)、2個の硫黄原子を含有する縮合複素環(チオフテン環など)などが挙げられる。
【0039】
酸素原子をヘテロ原子として含有する複素環としては、例えば、1個の酸素原子を含有する複素環(フラン環、ピラン環など)、2個の酸素原子を含有する複素環(ジオキソラン環、ジオキソール環、ジオキサン環、ジオキシン環など)、3個以上の酸素原子を含有する複素環(テトラオキサン環など)、1個の酸素原子を含有する縮合複素環(イソベンゾフラン環、クロメン環など)などが挙げられる。
【0040】
ヘテロ原子を2種以上含有する複素環としては、例えば、窒素原子及び硫黄原子を含有する複素環(チアゾール環、イソチアゾール環、チアゾリン環、チアジン環、チアジアジン環、チアジゾール環、チアジゾール環など)、窒素原子及び酸素原子を含有する複素環(モルホリン環、イソオキサゾール環など)、硫黄原子及び酸素原子を含有する複素環(オキサチオラン環など)などが挙げられる。
【0041】
これらの複素環のうち、窒素原子を含有する4〜6員複素環(例えば、ピリジンなどの5〜6員複素環など)、硫黄原子を含有する4〜6員複素環(例えば、チオフェンなどの5〜6員複素環など)、酸素原子を含有する4〜6員複素環(例えば、フランなどの5〜6員複素環など)などが汎用される。
【0042】
なお、環Hetで表される複素環には、置換基R3が置換していてもよく、置換基R3としては、前記置換基Rの項で例示された置換基などが挙げられる。置換基R3も、通常、C1-4アルキル基、ハロゲン原子(例えば、臭素原子、塩素原子など)などである。好ましい置換数pは、環Hetの員数に応じて選択され、例えば、0〜8(特に0〜6)程度の範囲から選択でき、通常、0〜2(好ましくは0〜1)程度である。
【0043】
基Xは、反応性基又はその誘導体もしくは前駆誘導体であり、樹脂の原料などとして利用された場合には、通常、重合性基として作用する。反応性基としては、例えば、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、エポキシ基(例えば、グリシジル基など)、シアノ基、ハロゲン原子(例えば、臭素原子、塩素原子など)などが挙げられる。これらの反応性基のうち、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基などが汎用される。さらに、反応性基は、その誘導体(特に反応性誘導体)であってもよく、前駆誘導体であってもよい。
【0044】
誘導体としては、反応性基の種類に応じて、例えば、エステル、エーテル、アルキル置換、塩などの形態が挙げられる。具体的には、カルボキシル基の場合には、エステル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチルなどのC1-10アルキルエステル基、シクロヘキシルエステルなどのC5-10シクロアルキルエステル基、フェニルエステルなどのC6-10アリールエステル基など、特にメチル、エチルなどのC1-4アルキルエステル基)、カルボキシル基の塩(例えば、ナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属塩、カルシウムなどのアルカリ土類金属塩、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどのアミン類との塩、アンモニウム塩など、特にナトリウムなどのアルカリ金属塩、カルシウムなどのアルカリ土類金属塩)などが含まれる。アミノ基の場合には、置換アミノ基(例えば、ジメチルアミノ、ジエチルアミノなどのジC1-4アルキルアミノ基など)などが含まれる。ヒドロキシル基の場合には、エーテル基(又はアルコキシド基)(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチルなどのC1-10アルキルエーテル基など、特にメチル、エチルなどのC1-4アルキルエーテル基)などが挙げられる。チオール基の場合には、チオエーテル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチルなどのC1-10アルキルチオエーテル基など、特にメチル、エチルなどのC1-4アルキルチオエーテル基)などが挙げられる。前駆誘導体としては、例えば、アミノ基の前駆誘導体(前駆体)であるニトロ基などが挙げられる。
【0045】
また、前記式(1)において、基A2、環Het及び反応性基Xを含む基の置換数nは、1以上であればよく、例えば、1〜4、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2、特に1であってもよい。なお、置換数nは、それぞれの環Arにおいて、同一又は異なっていてもよく、通常、同一である場合が多い。なお、反応性基を含む基の置換位置は、特に限定されず、環Arの適当な置換位置に置換していればよい。例えば、反応性基を含む基は、環Arがベンゼン環である場合、フェニル基の2〜6位、(例えば、フェニル基の3位、4位など)に置換していればよく、好ましくは少なくとも4位に置換していてもよい(nが1のとき4位;nが2のとき、3位および4位、2位および4位など)。
【0046】
また、反応性基を含む基は、環Arが縮合多環式炭化水素環である場合、縮合多環式炭化水素環において、フルオレンの9位に結合した炭化水素環とは別の炭化水素環(例えば、ナフタレン環の5位、6位など)に少なくとも置換している場合が多い。
【0047】
具体的な前記式(1)で表される複素環含有化合物には、(i)式(1)において環Arがベンゼン環であるカルボン酸、(ii)式(1)において環Arがナフタレン環であるカルボン酸が挙げられる。
【0048】
式(1)において、Xがカルボキシル基である化合物について、環Hetが窒素原子を含有する複素環である化合物としては、例えば、9,9−ビス(カルボキシピリジルオキシアリール)フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(5−カルボキシ−2−ピリジルオキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(5−カルボキシ−2−ピリジルオキシ)−2−ナフチル]フルオレンなど}、9,9−ビス(カルボキシピリジルC1-10アルコキシ−アリール)フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(5−カルボキシ−2−ピリジルメトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス{4−[2−(5−カルボキシピリジル)エトキシ]フェニル}フルオレン、9,9−ビス[4−(5−カルボキシ−2−ピリジルメトキシ)−2−ナフチル]フルオレンなど}などが挙げられる。環Hetが硫黄原子を含有する複素環である化合物としては、例えば、9,9−ビス(カルボキシチエニルオキシアリール)フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(5−カルボキシ−2−チエニルオキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(5−カルボキシ−2−チエニルオキシ)−2−ナフチル]フルオレンなど}、9,9−ビス(カルボキシチエニルC1-10アルコキシ−アリール)フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(5−カルボキシ−2−チエニルメトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス{4−[2−(5−カルボキシチエニル)エトキシ]フェニル}フルオレン、9,9−ビス[4−(5−カルボキシ−2−チエニルメトキシ)−2−ナフチル]フルオレンなど}などが挙げられる。環Hetが酸素原子を含有する複素環である化合物としては、例えば、9,9−ビス(カルボキシフリルオキシアリール)フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(5−カルボキシ−2−フリルオキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(5−カルボキシ−2−フリルオキシ)−2−ナフチル]フルオレンなど}、9,9−ビス(カルボキシフリルC1-10アルコキシ−アリール)フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(5−カルボキシ−2−フリルメトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス{4−[2−(5−カルボキシフリル)エトキシ]フェニル}フルオレン、9,9−ビス[4−(5−カルボキシ−2−フリルメトキシ)−2−ナフチル]フルオレンなど}などが挙げられる。
【0049】
さらに、式(1)において、Xがカルボキシル基以外の基を有する化合物としては、これらの化合物に対応する化合物、すなわち、前述の化合物において、カルボキシル基の代わりに、カルボキシル基のアルキルエステル基(例えば、エトキシカルボニル基など)、アミノ基、アミノ基の前駆誘導体(例えば、ニトロ基など)、チオール基、ヒドロキシル基などを有する複素環含有化合物などが例示できる。
【0050】
[式(1)で表される複素環含有化合物の製造方法]
前記式(1)で表される複素環含有化合物は、特に制限されないが、例えば、塩基性化合物の存在下、下記式(2)
【0051】
【化5】

【0052】
(式中、Ar、A1、R1、R2、k、m、n、qは前記に同じ)
で表される化合物と、下記式(3)
【0053】
【化6】

【0054】
(式中、Yはハロゲン原子を示す。Het、R3、A2、X、pは前記に同じ)
で表される化合物とを反応させる工程を含む製造方法により製造できる。反応は、これらの成分を同一の反応系で反応させてもよいが、効率よく複素環含有化合物(1)を得ることができる点から、多段階(二段階)で反応させるのが好ましい。具体的には、前記式(2)で表される化合物(ヒドロキシル基含有成分)と塩基性化合物とを反応させた後、式(3)で表される化合物(複素環含有ハロゲン化合物)を反応させるのが好ましい。
【0055】
(式(2)で表される化合物)
前記式(2)において、環Ar、A1、R1、R2、k、m、n、qは前記と同じであり、好ましい態様なども前記と同じである。
【0056】
代表的な式(2)で表される化合物には、9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類、9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類などが含まれる。
【0057】
9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類としては、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン[9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(アルキル−ヒドロキシフェニル)フルオレン[9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−2,6−ジメチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC1-4アルキル−ヒドロキシフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(アリール−ヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C6-8アリール−ヒドロキシフェニル)フルオレンなど]などの9,9−ビス(モノヒドロキシフェニル)フルオレン類;9,9−ビス(ジヒドロキシフェニル)フルオレン[9,9−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,5−ジヒドロキシフェニル)フルオレンなど]などの9,9−ビス(ジヒドロキシフェニル)フルオレン類;9,9−ビス(トリヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)フルオレンなど]などの9,9−ビス(トリヒドロキシフェニル)フルオレン類などが例示できる。
【0058】
9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類としては、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレン、9,9−ビス(5−ヒドロキシ−1−ナフチル)フルオレンなど]などの9,9−ビス(モノヒドロキシナフチル)フルオレン類;9,9−ビス(ポリヒドロキシナフチル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(ジ又はトリヒドロキシナフチル)フルオレンなど]などの9,9−ビス(ポリヒドロキシナフチル)フルオレン類などが挙げられる。
【0059】
なお、式(2)で表される化合物は、市販品を使用してもよく、合成したものを使用してもよい。例えば、ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類は、(a)塩化水素ガス及びメルカプトカルボン酸の存在下、フルオレノン類とフェノール類とを反応させる方法(文献[J. Appl. Polym. Sci., 27(9), 3289, 1982]、特開平6−145087号公報、特開平8−217713号公報)、(b)酸触媒(及びアルキルメルカプタン)の存在下、9−フルオレノンとアルキルフェノール類とを反応させる方法(特開2000−26349号公報)、(c)塩酸及びチオール類(メルカプトカルボン酸など)の存在下、フルオレノン類とフェノール類とを反応させる方法(特開2002−47227号公報)、(d)硫酸及びチオール類(メルカプトカルボン酸など)の存在下、フルオレノン類とフェノール類とを反応させ、炭化水素類と極性溶媒とで構成された晶析溶媒で晶析させてビスフェノールフルオレンを製造する方法(特開2003−221352号公報)などを利用して製造したものを使用してもよい。また、式(2)において環Arがナフタレン環である化合物は、前記9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類の製造方法において、フェノール類の代わりに、ナフトール類を用いる方法(例えば、特開2007−99741号公報に記載の方法)などにより合成して使用してもよい。
【0060】
さらに、これらの9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類において、ヒドロキシル基は、慣用の方法により、アルキレンオキサイド(例えば、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドなどのC2-4アルキレン、特にエチレンオキサイド)で付加されていてもよい。9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類の平均付加モル数としては、例えば、1〜10モル程度の範囲から選択でき、例えば、1〜5モル、好ましくは1〜3モル、さらに好ましくは1〜2モル(特に1モル)程度である。なお、アルキレンオキサイドの代わりに、対応するハロアルカノールを使用してもよく、例えば、アルカリ条件下でクロロプロパノールなどのクロロC2-4アルカノールを付加させてもよい。
【0061】
(式(3)で表される化合物)
前記式(3)において、Yで表されるハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。これらのハロゲン原子のうち、塩素原子、臭素原子が好ましい。
【0062】
なお、前記式(3)において、環Het、R3、A2、X、pは前記と同じであり、好ましい態様なども前記と同じである。
【0063】
代表的な式(3)で表される化合物には、Xがカルボキシル基である化合物について、環Hetが窒素原子を含有する複素環である化合物[例えば、6−クロロニコチン酸、6−ブロモニコチン酸などのハロニコチン酸、6−クロロメチルニコチン酸、6−ブロモメチルニコチン酸、6−(2−クロロエチル)ニコチン酸などのハロC1-10アルキルニコチン酸など]、環Hetが硫黄原子を含有する複素環である化合物[例えば、5−クロロチオフェン−2−カルボン酸、5−ブロモチオフェン−2−カルボン酸などのハロチオフェンカルボン酸、5−クロロメチルチオフェン−2−カルボン酸、5−ブロモメチルチオフェン−2−カルボン酸、5−(2−クロロエチル)チオフェン−2−カルボン酸などのハロC1-10アルキルチオフェンカルボン酸など]、環Hetが酸素原子を含有する複素環である化合物[例えば、5−クロロフラン−2−カルボン酸、5−ブロモフラン−2−カルボン酸などのハロフランカルボン酸、5−クロロメチルフラン−2−カルボン酸、5−ブロモメチルフラン−2−カルボン酸、5−(2−クロロエチル)フラン−2−カルボン酸などのハロC1-10アルキルフランカルボン酸など]などが挙げられる。
【0064】
さらに、式(3)において、Xがカルボキシル基以外の反応性基を有する化合物としては、これらの化合物に対応する化合物、すなわち、前述の化合物において、カルボキシル基の代わりに、アミノ基、チオール基、ヒドロキシル基、エポキシ基(例えば、グリシジル基など)、シアノ基、ハロゲン原子などを有する化合物が例示できる。
【0065】
式(3)で表される化合物は、前記反応性基を有する化合物であってもよく、式(2)で表される化合物との反応(脱ハロゲン化水素反応)をより効率よく進行させるため、誘導体化されていてもよく、また前駆誘導体であってもよい。反応性基を有する化合物の誘導体(反応性誘導体)としては、前記反応性基を保護(キャップ)し、式(2)で表される化合物との反応を阻害しない化合物であれば特に限定されず、前述の誘導体基を有する化合物が例示でき、例えば、カルボキシル基の場合、前述の誘導体(エチルなどのC1-4アルキルエステルなど)であってもよい。前駆誘導体としては、反応性基よりも反応性の低い前駆誘導体、例えば、アミノ基の場合、ニトロ基であってもよい。
【0066】
反応において、式(2)で表される化合物と、式(3)で表される化合物との割合(使用割合)は、例えば、式(2)で表される化合物のヒドロキシル基1モルに対して、式(3)で表される化合物1モル以上(例えば、1〜10モル)、好ましくは1〜8モル(例えば、1.01〜7モル)、さらに好ましくは1.05〜5モル(例えば、1.1〜3モル)程度であってもよい。特に、本発明では、理論量付近の割合、例えば、式(2)で表される化合物のヒドロキシル基1モルに対して、式(3)で表される化合物1〜2モル(例えば、1〜1.5モル、好ましくは1〜1.3モル、さらに好ましくは1〜1.2モル)程度であっても、効率よく目的生成物を得ることができる。
【0067】
(塩基性化合物)
反応は、通常、塩基性化合物(塩基性触媒、塩基触媒)の存在下で行ってもよい。塩基性化合物には、無機塩基及び有機塩基が含まれる。無機塩基としては、例えば、金属水酸化物[例えば、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、アルカリ土類金属水酸化物(例えば、水酸化カルシウムなど)など]、金属水素化物(例えば、水素化ナトリウム、水素化カリウムなどのアルカリ又はアルカリ土類金属水素化物)、金属炭酸塩(例えば、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸塩)、金属炭酸水素塩(例えば、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムなど)などが例示できる。有機塩基としては、例えば、脂肪族アミン[第1乃至3級脂肪族アミン、例えば、トリアルキルアミン(トリエチルアミン、ジエチルメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリブチルアミンなど)、トリシクロアルキルアミン(トリシクロヘキシルアミンなど)、メチルジシクロヘキシルアミンなどの脂肪族第3級アミン]、芳香族アミン(第1乃至3級芳香族アミン、例えば、N,N−ジメチルアニリンなどの芳香族第3級アミン)、複素環式アミン(第1乃至3級複素環式アミン、例えば、ピコリン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、1−メチルイミダゾール、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルアミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデ−7−センなどの複素環式第3級アミン、ピペリジンなどの複素環式第2級アミンなど)など]などのアミン類、金属アルコキシド(ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムt−ブトキシド、カリウムt−ブトキシド、カルシウムt−ブトキシドなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属C1-4アルコキシドなど)、カルボン酸金属塩(酢酸ナトリウム、酢酸カルシウムなどの酢酸アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩など)、第4級アンモニウム塩(塩化テトラエチルアンモニウムなどのテトラアルキルアンモニウムハライド、塩化ベンジルトリメチルアンモニウムなどのベンジルトリアルキルアンモニウムハライドなど)、第4級ホスホニウム塩(塩化ベンジルトリフェニルホスホニウムなど)などが例示できる。
【0068】
塩基性化合物は、式(3)で表される化合物の種類などに応じて適宜選択されるが、特に、金属水酸化物[例えば、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、アルカリ土類金属水酸化物(例えば、水酸化カルシウムなど)など]などの無機塩基、金属アルコキシド(例えば、カリウムt−ブトキシドなどのアルカリ金属C1-4アルコキシドなど)などの有機塩基が好ましい。特に、エステル結合の加水分解など、分解反応を抑制でき、かつ効率良く複素環含有化合物を製造できる点から、弱有機塩基である金属アルコキシド(例えば、カリウムt−ブトキシドなどのアルカリ金属C1-4アルコキシドなど)が好ましい。
【0069】
これらの塩基性化合物は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0070】
塩基性化合物の使用量は、その種類などにもよるが、例えば、前記式(2)で表される化合物のヒドロキシル基1モルに対して、例えば、0.1〜10モル当量、好ましくは0.5〜7モル当量、さらに好ましくは1〜6モル当量(例えば、1.2〜5モル当量)、特に1.3〜4モル当量(例えば、1.5〜3モル当量)程度であってもよい。
【0071】
(溶媒)
式(2)で表される化合物と式(3)で表される化合物との反応は、溶媒の非存在下で行ってもよく、溶媒の存在下(又は溶媒中)で行ってもよい。溶媒としては、反応を阻害しない溶媒であれば限定されないが、例えば、アルコール類{例えば、アルカノール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノールなどのC1-6アルカノール、好ましくはC1-4アルカノール、さらに好ましくはC1-3アルカノール)、アルキレングリコールモノアルキルエーテル(2−メトキシエタノールなどのC1-4アルコキシ−C2-4アルカノール)、シクロアルカノール(シクロヘキサノールなど)など]、グリセリンなど}、アミド類(例えば、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどのN−モノ又はジC1-4アルキルホルムアミド;N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのN−モノ又はジC1-4アルキルアセトアミドなど)、ニトリル類(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリルなど)、硫黄化合物[スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシドなど)、スルホン類(例えば、スルホランなどの環状スルホン)など]、エーテル類(例えば、ジエチルエーテルなどのジアルキルエーテル類;ジエチレングリコールジメチルエーテルなどの(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエーテル類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどの環状エーテル類など)、炭化水素類(例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類)などの有機溶媒;水などの無機溶媒などが挙げられる。また、前記アミン類などを溶媒として用いてもよい。これらの溶媒は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0072】
これらの溶媒のうち、極性有機溶媒[例えば、アルコール類(例えば、エタノールやイソプロパノールなどのC1-4アルカノール)、アミド類、スルホキシド類など]が好ましく、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)が特に好ましい。
【0073】
溶媒の割合は、例えば、式(2)で表される化合物と式(3)で表される化合物との総量1重量部に対して、0.3〜100重量部、好ましくは0.5〜50重量部、さらに好ましくは1〜30重量部程度であってもよい。
【0074】
反応温度は、例えば、0〜250℃(例えば、20〜220℃)、好ましくは30〜200℃(例えば、50〜180℃)、さらに好ましくは60〜150℃(特に、70〜130℃)程度であってもよい。また、反応は、溶媒を還流させながら行ってもよい。なお、二段階で反応を行う場合に、式(2)で表される化合物と塩基性化合物との反応温度は、例えば、0〜100℃、好ましくは10〜50℃(例えば、室温)程度である。
【0075】
反応時間は、特に限定されず、反応温度などに応じて適宜選択できるが、通常、1〜72時間、好ましくは2〜48時間、さらに好ましくは5〜36時間程度であってもよい。また、反応は、攪拌しながら行ってもよく、空気中又は不活性雰囲気(窒素、希ガスなど)中で行ってもよく、減圧下、常圧下又は加圧下で行ってもよい。なお、二段階で反応を行う場合に、式(2)で表される化合物と塩基性化合物との反応時間は、例えば、1分〜10時間、好ましくは10分〜5時間、さらに好ましくは20分〜3時間程度である。
【0076】
なお、生成した化合物は、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製してもよい。
【0077】
上記のようにして、式(1)で表される複素環含有化合物が得られる。なお、式(2)で表される化合物と、式(3)で表される化合物とを反応させると、対応する式(2)で表される化合物の誘導体が得られる。前述の如く、式(3)で表される化合物は、式(2)で表される化合物との反応を阻害しないように、慣用の方法によって、反応の前に予め誘導体化しておいてもよく、例えば、反応性基としてカルボキシル基を有する化合物の場合、対応するカルボン酸を酸性条件下でアルカノールと反応させることにより、カルボン酸のアルキルエステルを調製してもよい。さらに、誘導体化された化合物を用いて、目的生成物を得た後、加水分解処理や、中和処理などを行うことにより、対応する複素環含有化合物(例えば、カルボン酸など)を得ることができる。一方、式(2)で表される化合物として、前駆誘導体が使用されている場合には、反応終了後に、反応性基を有する複素環含有化合物に変換する場合にも、慣用の方法を利用できる。例えば、ニトロ体を使用して、目的生成物を得た場合には、慣用の水添触媒(例えば、パラジウム炭素などのパラジウム触媒、ニッケル触媒、コバルト触媒、銅クロム酸化物触媒、白金触媒など)を用いて水素添加することにより、反応性基としてアミノ基を有する複素環含有化合物を得るこができる。
【実施例】
【0078】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、文中、「%」は重量基準である。
【0079】
合成例1(5−クロロチオフェンー2−カルボン酸エチルエステル)
500mLのフラスコに蒸留ヘッドを取り付け、5−クロロチオフェン−2−カルボン酸(東京化成工業(株)製)12.5g(76.9mmol)、脱水エタノール(ナカライテスク(株)製)250ml、及び濃硫酸0.5mlを入れ24時間加熱還流した。エタノールの大部分を蒸留後、新たに脱水エタノール250mlを加え、さらに24時間加熱還流した。エタノールを蒸留により除去後、ヘキサンで抽出した。ヘキサン層を炭酸水素ナトリウム水、水で洗浄後ヘキサンを除去することにより、5−クロロチオフェン−2−カルボン酸エチルエステル12.4gを収率88%でを得た。生成物の1H−NMRスペクトルチャートを図1に示す。
【0080】
1H−NMR(270MHz、CDCl3):
δ1.36(t、3H、−CH3)、δ4.34(2H、−CH2−)、δ6.93(d、1H、thiophene−H)、δ7.58(d、1H、thiophene−H)。
【0081】
合成例2(6-クロロニコチン酸エチルエステル)
500mLのフラスコに蒸留ヘッドを取り付け、6−クロロニコチン酸(アルドリッチ社製)12.5g(79.4mmol)、脱水エタノール(ナカライテスク(株)製)250ml、及び濃硫酸0.5mlを入れ24時間加熱還流した。エタノールの大部分を蒸留後、新たに脱水エタノール250mlを加え、さらに24時間加熱還流した。エタノールを蒸留により除去後、ヘキサンで抽出した。ヘキサン層を炭酸水素ナトリウム水、水で洗浄後ヘキサンを除去することにより、6−クロロニコチン酸エチルエステル10.5gを収率71%で得た。生成物の1H−NMRスペクトルチャートを図2に示す。
【0082】
1H−NMR(270MHz、CDCl3):
δ1.41(t、3H、−CH3)、δ4.42(2H、−CH2−)、δ7.42(dd、1H、pyridine−H)、δ8.25(dd、1H、pyridine−H)、δ9.00(d、1H、pyridine−H)。
【0083】
合成例3(5−ブロモ−フラン−2−カルボン酸エチルエステル)
500mLのフラスコに蒸留ヘッドを取り付け、5−ブロモ−2−フランカルボン酸(和光純薬(株)製)12.5g(65.4mmol)、脱水エタノール(ナカライテスク(株)製)250ml、及び濃硫酸0.5mlを入れ24時間加熱還流した。エタノールの大部分を蒸留後、新たに脱水エタノール250mlを加え、さらに24時間加熱還流した。エタノールを蒸留により除去後、ヘキサンで抽出した。ヘキサン層を炭酸水素ナトリウム水、水で洗浄後ヘキサンを除去することにより、5−ブロモ−フラン−2−カルボン酸エチルエステル12.9gを収率90%で得た。生成物の1H−NMRスペクトルチャートを図3に示す。
【0084】
1H−NMR(270MHz、CDCl3):
δ1.38(t、3H、−CH3)、δ4.36(2H、−CH2−)、δ6.45(d、1H,furan−H)、δ7.12(d,1H、furan−H)。
【0085】
実施例1(9,9−ビス−[4−(5−エトキシカルボニル−2−チエニルオキシ)フェニル]フルオレン)
100mLの三口フラスコに冷却管を取り付け、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(BPF、大阪ガスケミカル(株)製)4.0g(11.4mmol)、ジメチルスルホキシド(DMSO)(ナカライテスク(株)製)50ml、及びカリウムt−ブトキシド(t−BuOK、ナカライテスク(株)製)2.68g(23.9mmol)を加え室温で1時間攪拌した。次に、合成例1で得られた5−クロロチオフェン−2−カルボン酸エチルエステル(4.80g、25.2mmol)を入れ、100℃で24時間加熱撹拌した。反応終了後、氷水の中へ投入し塩酸で酸性にして生じた沈殿をろ過、乾燥した。ヘキサンで再結晶を行うことにより、目的生成物0.4gを、収率5.3%で得た。生成物の1H−NMRスペクトルチャートを図4に示す。
【0086】
1H−NMR(270MHz、CDCl3):
δ1.34(t、6H、−CH3)、δ4.30(4H、−CH2−)、δ6.44(d、2H,thiophene−H)、δ6.98−7.38(m,14H、Ar−H)、7.54(d、2H,thiophene−H)、7.77(d、2H,Ar−H)。
【0087】
実施例2(9,9−ビス−[4−(5−カルボキシ−2−チエニルオキシ)フェニル]フルオレン)
100mLのビーカーに、実施例1で得られたエチルエステル体0.2g、水酸化カリウム(ナカライテスク(株)製)0.4g、エタノール(ナカライテスク(株)製)80ml、水20mlを加えて加熱し、エタノールを除去しながら水を加えた。冷却後、塩酸により酸性にして生じた沈殿をろ過乾燥することにより目的生成物0.1gを得た。生成物の1H−NMRスペクトルチャートを図5に示す。
【0088】
1H−NMR(270MHz、DMSO−d6)
δ6.62(d、2H、thiophene−H)、δ7.10−7.19(8H、Ar−H)、δ7.30−7.45(m、8H,thiophene−H,Ar−H)、δ7.94(d,2H、fluorene−H)。
【0089】
実施例3(9,9−ビス−[4−(5−エトキシカルボニル−2−ピリジルオキシ)フェニル]フルオレン)
100mLの三口フラスコに冷却管を取り付け、BPF(大阪ガスケミカル(株)製)4.0g(11.4mmol)、DMSO(ナカライテスク(株)製)50ml、及びt−BuOK(ナカライテスク(株)製)2.68g(23.9mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。次に、合成例2で得られた6−クロロニコチン酸エチルエステル4.67g(25.2mmol)を入れ、100℃で24時間加熱撹拌した。反応終了後、氷水の中へ投入し生じた沈殿をろ過、乾燥した。ヘキサンで再結晶を行うことにより、目的生成物0.4gを収率5.4%で得た。生成物の1H−NMRスペクトルチャートを図6に示す。
【0090】
1H−NMR(270MHz、CDCl3):
δ1.37(t、6H、−CH3)、δ4.37(4H、−CH2−)、δ6.99(d、2H,pyridine−H)、δ7.02(d,4H、Ar−H)、7.26−7.46(m、10H,Ar−H)、7.78(d、2H,fluorene−H)、8.25(d、2H,pyridine−H),8.88(d,2H,pyridine−H)。
【0091】
実施例4(9,9−ビス−[4−(5−カルボキシ−2−ピリジルオキシ)フェニル]フルオレン)
100mLのビーカーに、実施例3で得られたエチルエステル体0.4g、水酸化カリウム(ナカライテスク(株)製)0.8g、エタノール(ナカライテスク(株)製)80ml、水20mlを加え、加熱しエタノールを除去しながら水を加えた。冷却後、塩酸により酸性(pH=約4)にして生じた沈殿をろ過乾燥することにより目的生成物0.2gを得た。生成物の1H−NMRスペクトルチャートを図7に示す。
【0092】
1H−NMR(270MHz、DMSO−d6)
δ7.06−7.21(m,10H、Ar−H,pyridine−H)、7.33−7.54(m、6H,Ar−H)、7.96(d、2H,fluorene−H)、8.24(m、2H,pyridine−H),8.63(d,2H,pyridine−H)。
【0093】
実施例5(9,9−ビス−[4−(5−エトキシカルボニル−2−フリルオキシ)フェニル]フルオレン)
100mLの三口フラスコに冷却管を取り付け、BPF(大阪ガスケミカル(株)製)4.0g(11.4mmol)、DMSO(ナカライテスク(株)製)50ml、及びt−BuOK(ナカライテスク(株)製)2.68g(23.9mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。次に、合成例3で得られた5−ブロモ−2−フランカルボン酸エチルエステル5.52g(25.2mmol)を入れ、100℃で24時間加熱撹拌した。反応終了後、氷水の中へ投入し生じた沈殿をろ過、乾燥した。ヘキサンで再結晶を行うことにより、目的生成物0.8gを収率11.2%で得た。
【0094】
実施例6(9,9−ビス−[4−(5−カルボキシ−2−フリルオキシ)フェニル]フルオレン)
100mLのビーカーにエチルエステル体0.4g、水酸化カリウム(ナカライテスク(株)製)0.4g、エタノール(ナカライテスク(株)製)80ml、水20mlを加え、加熱しエタノールを除去しながら水を加えた。冷却後、塩酸により酸性にして生じた沈殿をろ過乾燥することにより目的生成物0.2gを得た。生成物の1H−NMRスペクトルチャートを図8に示す。
【0095】
1H−NMR(270MHz、DMSO−d6)
δ6.62(d,2H、furan−H)、7.10−7.19(m、8H,Ar−H)、7.30−7.50(m、8H,furan−H 、Ar−H)、7.95(d,2H,fluorene−H)。
【0096】
実施例7(9,9−ビス−[4−(5−ニトロ−2−ピリジルオキシ)フェニル]フルオレン)
100mLの三口フラスコに冷却管を取り付け、BPF(大阪ガスケミカル(株)製)4.0g(11.4mmol)、DMSO(ナカライテスク(株)製)50ml、及びt−BuOK(ナカライテスク(株)製)2.68g(23.9mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。次に、2−クロロ−5−ニトロピリジン3.99g(25.2mmol)を入れ、100℃で24時間加熱撹拌した。反応終了後、氷水の中へ投入し生じた沈殿をろ過、エタノール洗浄後乾燥することにより、目的生成物のニトロ体6.6gを収率97%で得た。生成物の1H−NMRスペクトルチャートを図9に示す。
【0097】
1H−NMR(270MHz、DMSO−d6)
δ7.13−7.25(m,10H、Ar−H,pyridine−H)、7.34−7.55(m、6H,Ar−H)、8.59(m、2H,pyridine−H)、9.00(d、2H,fluorene−H)。
【0098】
実施例8(9,9−ビス−[4−(5−アミノ−2−ピリジルオキシ)フェニル]フルオレン)
200mLのフラスコに冷却管を取り付け、実施例8で得られたニトロ体6.6g(11.1mmol)、エタノール(ナカライテスク(株)製)100ml、及び10%パラジウム炭素触媒(Pd/C、エヌイーケミキャット社製)0.3gを加え、常圧の水素雰囲気下、60℃で1週間激しく撹拌した。反応終了後、ろ過により触媒を除去後、溶媒を除去することにより目的生成物2.2gを収率37.1%で得た。生成物の1H−NMRスペクトルチャートを図10に示す。
【0099】
1H−NMR(270MHz、DMSO−d6)
δ6.72(d、2H,pyridine−H),6.82(d,4H、Ar−H)、7.01−7.07(m、6H,Ar−H,pyridine−H)、7.29−7.50(m、8H,Ar−H,pyridine−H)、9.32(d、2H,fluorene−H)
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明のフルオレン骨格を有する複素環含有化合物は、従来のフルオレン骨格を有する化合物よりも高い屈折率を有し、耐熱性、光透過性、硬度、耐候性、可撓性、機械強度、寸法安定性、加工性などにおいても優れており、種々の要求性を満たすプラスチック材料(接着剤、塗料など)として有用である。
【0101】
そのため、本発明の複素環含有化合物は、例えば、樹脂原料{例えば、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリアルキレンアリレートにおいて、アリレート骨格の一部又は全部を前記ポリカルボン酸由来の骨格に置換した芳香族ポリエステル系樹脂など)、液晶性ポリマー、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリベンズイミダゾール、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂などのポリカルボン酸又はその誘導体(低級アルキルエステルなど)を重合成分とする樹脂のポリカルボン酸原料}、機能性材料[例えば、添加剤(レジスト用添加剤など)、試薬(医薬、農薬など)の原料又は中間体など]などとして有用である。
【0102】
前記複素環含有化合物を用いて得られた重合体は、耐熱性が高く、屈折率及び硬度も高いため、さまざまな用途に使用できるが、特に光学材料(フィルム状、シート状、板状、レンズ状、管状など)として適している。
【0103】
代表的には、レジストなどの感光性樹脂、プリント配線基板、液晶配向膜、インク材料、発光材料(例えば、有機EL用発光材料など)、有機半導体、黒鉛化前駆誘導体、ガス分離膜(例えば、COガス分離膜など)、コート剤(例えば、LED(発光ダイオード)用素子のコート剤などの光学用オーバーコート剤又はハードコート剤など)、レンズ[ピックアップレンズ(例えば、DVD(デジタル・バーサタイル・ディスク)用ピックアップレンズなど)、マイクロレンズ(例えば、液晶プロジェクター用マイクロレンズなど)、眼鏡レンズなど]、偏光膜(例えば、液晶ディスプレイ用偏光膜など)、光学フィルム又は光学シート{例えば、タッチパネル用フィルム、有機EL用フィルム、フレキシブル基板用フィルム、ディスプレイ用フィルム[例えば、PDP(プラズマディスプレイ)、LCD(液晶ディスプレイ)、VFD(真空蛍光ディスプレイ)、SED(表面伝導型電子放出素子ディスプレイ)、FED(電界放出ディスプレイ)、NED(ナノ・エミッシブ・ディスプレイ)、ブラウン管、電子ペーパーなどのディスプレイ(特に薄型ディスプレイ)用フィルムなど]など}、反射防止フィルム(又は反射防止膜、例えば、表示デバイス用反射防止フィルムなど)、燃料電池用膜、光ファイバー、光導波路、ホログラムなどの材料として好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるフルオレン骨格を有する複素環含有化合物。
【化1】

(式中、環Arは芳香族炭化水素環を示し、環Hetは複素環を示し、R1はシアノ基、ハロゲン原子又はアルキル基、R2及びR3は、炭化水素基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基又は置換アミノ基を示し、A1はアルキレン基を示し、A2は直接結合又は脂肪族炭化水素基を示し、Xは反応性基又はその誘導体もしくは前駆誘導体を示す。kは0〜4の整数、m、p及びqは0以上の整数、nは1以上の整数である)
【請求項2】
式(1)において、環Arがベンゼン環であり、RがC1-4アルキル基及びハロゲン原子から選択された基であり、mが0〜2である請求項1記載の複素環含有化合物。
【請求項3】
式(1)において、環Arがナフタレン環である請求項1記載の複素環含有化合物。
【請求項4】
式(1)において、A1がC2-4アルキレン基であり、qが0〜2の整数であり、A2が直接結合又はC1-10アルキレン基であり、環Hetが窒素原子、硫黄原子及び酸素原子からなる群から選択された少なくとも一種の原子をヘテロ原子とする4〜12員複素環であり、Xがカルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、エポキシ基、シアノ基、ハロゲン原子又はこれらの反応性基の誘導体又は前駆誘導体であり、かつnが1〜3の整数である請求項1記載の複素環含有化合物。
【請求項5】
式(1)において、qが0であり、A2が直接結合又はメチレン基であり、環Hetが窒素原子、硫黄原子及び酸素原子からなる群から選択された少なくとも一種の原子をヘテロ原子とする4〜6員複素環であり、Xがカルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基又はこれらの基の誘導体又は前駆誘導体であり、かつnが1である請求項1〜4のいずれかに記載の複素環含有化合物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の複素環含有化合物を製造する方法であって、塩基性化合物の存在下、下記式(2)
【化2】

(式中、Ar、A1、R1、R2、k、m、n、qは前記に同じ)
で表される化合物と、下記式(3)
【化3】

(式中、Yはハロゲン原子を示す。Het、R3、A2、X、pは前記に同じ)
で表される化合物とを反応させる工程を含む製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の複素環含有化合物から得られる重合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−42596(P2011−42596A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190444(P2009−190444)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】