説明

フルオロエチレンカーボネートの蒸留精製方法

エチレンカーボネートとフッ素元素とのフッ素化によって得られる、5重量%以下のHFを含有する粗フルオロエチレンカーボネートを、少なくとも2つの後続蒸留工程によって精製する蒸留精製方法。HFの大部分は、所望される場合には、蒸留を実施する前に、例えばストリッピングによる予備HF除去工程において除去することができる。さらに、所望される場合には第2のHF除去工程を、第1の蒸留工程後に得られた粗混合物または留出物をHF用吸着剤、例えば、シリカゲルと接触させることによって行うことができる。蒸留はバッチ式で行うことができる。蒸留は連続的に行うことが好ましい。この蒸留によって、HF含量が30ppm以下の精製フルオロエチレンカーボネートが得られる。精製されたフルオロエチレンカーボネートはリチウムイオン電池用の溶媒添加物として利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年8月20日出願の欧州特許出願公開第09168329.2号明細書の優先権を主張するものであり、この出願の全内容はあらゆる目的で参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本願は、蒸留によりフルオロエチレンカーボネートを精製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
フルオロエチレンカーボネート(「F1EC」)は、モノフルオロエチレンカーボネートまたは4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンとしても知られ、リチウムイオン電池用の溶媒または溶媒添加物として好適である。フルオロエチレンカーボネートは、H.Ishiiらによって非特許文献1に記載されているように、電解フッ素化によりそれぞれの非置換エチレンカーボネートから調製することができる。好ましい方法はフッ素元素と反応させる方法である。これは、例えば、(特許文献1)に記載されており、この公報ではその反応は無水フッ化物中の1,3−ジオキソラン−2−オン(エチレンカーボネート;「EC」)の溶解物、すなわち、その溶液を用いて行われる。所望により、ペルフルオロヘキサンのような不活性溶媒が存在してもよく、この場合には、1,3−ジオキソラン−2−オン(1,3−dixolane−2−one)の懸濁液が生成される。所望の生成物は、HFを除去するための第1の蒸留によって、アルカリ水での処理、乾燥、別の蒸留(これによって純度が90%以上の生成物が得られる)および数回の再結晶化によって単離される。(特許文献2)によれば、エチレンカーボネートはF1ECに溶解させた後にフッ素と接触される。この反応混合物にアセトンおよび炭酸カリウムが加えられ、次いで、固体が除去され、その後、得られた溶液が数回真空下で蒸留された。(特許文献3)によれば、エチレンカーボネートとフッ素との反応の未精製生成物がまず、HF除去用の蒸留塔で2回処理された後、それをさらに精製するために2回蒸留された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−309583号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2006−0036102号明細書
【特許文献3】米国特許第A7268238号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J.Chem.Soc.,Chem.Comm.(2000),1617頁および1618頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、再結晶化を行う必要なく、高純度のフルオロエチレンカーボネートを生産する、簡単で省エネの方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、フルオロエチレンカーボネート、エチレンカーボネート、高フッ素化エチレンカーボネートまたはカーボネート群およびフッ化水素と、任意選択的に、微量の不純物(例えば、トリフルオロエチレンカーボネート)を含む混合物を、少なくとも2つの蒸留工程で蒸留し、第1の蒸留工程に供給される反応混合物は5重量%以下のHFを含有する。好ましくは、第1の蒸留塔に供給される反応混合物は1重量%以下のHFを含有する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
「少なくとも2つの蒸留工程」とは、混合物を少なくとも2回蒸留塔に通すことを意味する。一実施形態によれば、これは1つの蒸留塔であり、その蒸留塔に、分離しようとする混合物が少なくとも2回通される。この実施形態はバッチ式蒸留で行うことができる。
【0009】
別の実施形態によれば、少なくとも2つの蒸留工程は少なくとも2つの蒸留塔で行われる。この実施形態は、連続蒸留プロセスの実施に特に好適である。
【0010】
電解フッ素化によって未精製反応混合物を得る場合には、それぞれの処理により、例えば濾過により、固体を除去することが望ましい。
【0011】
本発明の方法によって得られる精製フルオロエチレンカーボネートは、特にHF含量の点で極めて純粋であるため、再結晶化は不要である。この方法では、エチレンカーボネート、4,5−cisジフルオロエチレンカーボネート、4,5−transジフルオロエチレンカーボネートおよび4,4−ジフルオロエチレンカーボネートならびにHFを含有する未精製生成物から出発し、trans−4,5−ジフルオロエチレンカーボネートおよび4,4−ジフルオロエチレンカーボネートが存在したとしても微量にしか含まず、cis−4,5−ジフルオロエチレンカーボネートが存在したとしても微量にしか含まない精製フルオロエチレンカーボネートを得ることができる。一般に、trans−4,5−ジフルオロエチレンカーボネート、cis−4,5−ジフルオロエチレンカーボネートおよび4,4−ジフルオロエチレンカーボネートの各含量は20ppm未満である。
【0012】
フッ素化反応器から出る未精製生成物中の初期HF含量は様々である。フッ素原子での水素原子の置換では、交換される1水素原子当たり1分子のHFの形成を伴う。また、フッ化水素はそのような反応において溶媒として使用することができることも知られている。そのため、反応器から出る反応混合物は、最大10重量%、さらには最大20重量%、HFを溶媒として使用した場合には、さらにずっと多いHFを含む場合がある。
【0013】
フッ素化反応器またはフッ素化反応器群から出る反応混合物が5重量%を超えるHFを含有する場合には、HF含量を予備HF除去工程において反応混合物中5重量%以下の量まで低減する。HFは、例えば、未精製生成物を水で洗浄することによって、または未精製生成物を、例えば、不活性ガス、特に窒素または二酸化炭素でストリッピングすることによりHFを除去することによって、除去することができる。予備HF除去工程は蒸留ではない。一実施形態によれば、フッ素化反応器またはフッ素化反応器群から出る反応混合物のHF含量が反応混合物中5重量%以下である場合には、予備HF除去工程におけるHF含量の低減は行わない。この実施形態では、原材料は2つの工程において直接蒸留する。
【0014】
別の実施形態によれば、予備HF除去工程において未精製生成物混合物中のHFの少なくとも一部が除去された後にその含量が5重量%以下となるように蒸留が行われる。好ましくは、予備HF除去工程において、HF含量は反応混合物の2重量%以下に、より好ましくは1重量%以下に、さらにより好ましくは0.5重量%以下に低減される。
【0015】
特に、上記のように、第1の予備HF除去工程においてHFの大部分を除去した後に、第2のHF除去工程において残りのHFを除去することが可能である。この第2のHF除去工程は、好ましくは、固体吸着剤または液体吸収剤を用いて行われる。好ましい吸収剤はSiOを含み、シリカゲル(例えば、ビーズ状のもの)が特に好ましい。所望される場合には、原材料を連続的に通すことができる、シリカゲル粒子を含有するフィルターを適用してもよい。この吸着剤は、水およびSiFの形成下でHFと反応する。水は、特定のフッ素化有機カーボネートと副反応を引き起こすことが分かった。そのため、ストリッピングにより大部分のHFを最初に除去し、続いて、シリカを用いてHFを除去し、さらに蒸留することは申し分のない組合せであり、ストリッピングの実施により水が生成されず、シリカでの追加の処理の間に生成する水の量が非常に少ないため副反応は起こらず、さらなる蒸留工程と前HF除去工程によって高純度の生成物が得られ、しかも所望の生成物の収率が極めて高いことがその理由である。
【0016】
一実施形態では、この方法は、2つの蒸留工程の前に第2のHF除去工程を行う段階を含む。別の実施形態では、この方法は、蒸留工程と蒸留工程の間に第2のHF除去工程が行われる段階を含む。
【0017】
第1の予備HF除去工程も第2のHF除去工程も蒸留によって行われないが、上記のように、ストリッピング、吸着、水もしくはアルカリ水溶液での洗浄または他の手段によって行われる。
【0018】
本発明による方法は、バッチ式または連続的に行うことができる。
【0019】
バッチ蒸留を行う場合には、蒸留工程での圧力は、好ましくは100ミリバール以下(絶対圧)である。その圧力は、好ましくは15ミリバール(絶対圧)以下、特に好ましくは5ミリバール(絶対圧)以下である。多くの場合、二重バッチ蒸留では、第1のバッチ蒸留は、有利には、第2の蒸留よりも高圧で行われる。好ましくは、第1のバッチ蒸留における塔頂圧は10ミリバール(絶対圧)以下であり、第2のバッチ蒸留では、その蒸留は第1の蒸留よりも低い5ミリバール(絶対圧)以下の圧力で行われる。その圧力は、好ましくは0.5ミリバール(絶対圧)以上である。
【0020】
特に好ましいのは、フルオロエチレンカーボネート、エチレンカーボネート、高フッ素化カーボネートおよびHFを含む、HFが5重量%を超えるHF含量の反応混合物を、HF含量を低減するためのストリッピングプロセスに付して、フルオロエチレンカーボネート、エチレンカーボネート、高フッ素化カーボネートおよびHFを含有する、HFが5重量%以下のHF含量の反応混合物を得、得られた反応混合物を少なくとも2つの蒸留工程で蒸留する方法である。この方法の好ましい実施形態は、上記および下記に詳細に説明しているものである。例えば、蒸留工程を連続的に行うことが好ましい。また、蒸留を少なくとも2つの塔で行うことも好ましく、蒸留を2つの塔で行うことがより好ましい。
【0021】
以下、本発明を、連続法を提供する好ましい実施形態について詳細に記載する。
【0022】
蒸留は、少なくとも2つの工程で行われる。上述のとおり、連続蒸留は、好ましくは、少なくとも2つの連続蒸留塔で行われる。
【0023】
第1の蒸留工程では、低沸点の物質の混合物(例えば、HFおよび二フッ素化エチレンカーボネート)が塔頂から抜き出され、高沸点成分(主としてエチレンカーボネートおよびモノフルオロエチレンカーボネート)が塔底から抜き出され、第2の蒸留工程に供給される。多くの場合、第1の蒸留工程の塔頂圧は100ミリバール以下(絶対圧)である。好ましくは、第1の蒸留工程の塔頂圧は75ミリバール(絶対圧)以下である。好ましくは、その圧力は10ミリバール(絶対圧)以上である。第1の蒸留工程の塔頂圧は10〜50ミリバール(絶対圧)の間の範囲であることが特に好ましい。
【0024】
第1の蒸留工程の塔頂から抜き出される低沸点の物質の混合物、主としてHFおよびジフルオロエチレンカーボネートは、所望される場合には分離することができる。例えば、HFは、混合物を水で洗浄することによって除去することができ、あるいは極めて好ましいが、混合物を不活性ガスでストリッピングことによっても除去することができる。残りのジフルオロエチレンカーボネートは、蒸留によって分離することができる。あるいは、第1の蒸留工程の塔頂からの混合物は、洗浄またはストリッピングのような他の処理を行わずに単に蒸留することによって異なる化合物に分離することができる。二フッ素化エチレンカーボネートは、リチウムイオン電池の溶媒の添加物として利用することができることから、有用な副生成物である。所望される場合には、二フッ素化エチレンカーボネートは処分または焼却することができる。回収されたフッ化水素もまた、それ自体が有用な生成物である。
【0025】
第2の塔では、第1の塔の塔底生成物が蒸留される。好ましくは、第2の蒸留工程の塔頂圧は50ミリバール(絶対圧)以下である。より好ましくは、第2の塔の塔頂圧は30ミリバール(絶対圧)以下である。好ましくは、第2の蒸留工程の塔頂圧は5ミリバール(絶対圧)以上である。塔での条件は、塔底でエチレンカーボネートおよびモノフルオロエチレンカーボネートの混合物が生成されるように選択され、それにより、塔頂から抜き出されるモノフルオロエチレンカーボネートの純度が高められる。
【0026】
第2の蒸留工程の塔頂では、高純度のフルオロエチレンカーボネートが得られる。塔頂生成物の純度は非常に高いため、任意の所望の目的に、とりわけ、リチウムイオン電池用の溶媒または溶媒添加物としてそれをそのまま利用することができる。精製フルオロエチレンカーボネート中のHF含量は30重量ppm以下、好ましくは20重量ppm以下である。実施例では、さらに低いHF含量、例えば、10ppm以下を達成することができることが示されている。cis−ジフルオロエチレンカーボネートの含量は20ppm未満である。通常、trans−ジフルオロエチレンカーボネートおよび4,4−ジフルオロエチレンカーボネートの各量は20ppm未満である。
【0027】
多くの場合、第1の蒸留工程は、理論段数10〜50の塔で行われる。多くの場合、第2の蒸留工程は、理論段数10〜30の塔で行われる。精製後に、所望の純度を有していない、例えば、HF含量が30ppmより高いF1ECが得られる場合には、一方または両方の蒸留を、所望の純度、好ましくは30ppm以下が達成されるように、理論段数がより多い蒸留塔または蒸留塔群で行うことができる。
【0028】
所望される場合には、第2の蒸留工程で得られたフルオロエチレンカーボネートをさらに精製するために、第3の蒸留工程を行うことができる。第3の蒸留工程および任意のさらなる蒸留工程での好ましい圧力範囲は、第2の蒸留工程での好ましい圧力範囲と一致する。
【0029】
蒸留残渣は、F1ECおよびECを含有しており、ECとフッ素の間でのフッ素化反応が行われる反応槽に戻すことができ、あるいは第1の蒸留の前に原材料に加えることもできる。
【0030】
上述のように、未精製反応混合物(任意選択的にHF、フルオロエチレンカーボネートまたは両者の溶媒としての存在下で、エチレンカーボネートおよびフッ素から出発する反応によって得られる)は、HF含量を2重量%以下に低減するために、ストリッピングプロセスによって処理することができる。HFを除去するための第2の処理はその混合物をシリカゲルと接触させることを含む。この第2のHF除去工程は蒸留工程の前に行うことができ、あるいは第1の蒸留の後、第2の蒸留工程の前に行うこともできる。吸収剤での処理を行う場合には、第1の蒸留工程の前にそれを行うことが好ましい。
【0031】
第2の塔の塔底からのモノフルオロエチレンカーボネートおよびエチレンカーボネートの混合物は、フッ素化反応器へ再循環させることができる。米国特許出願公開第2006−0036102号明細書によれば、フルオロエチレンカーボネートを、エチレンカーボネートの溶媒として利用することができることはすでに上述した。
【0032】
蒸留工程に適用される塔は当技術分野で公知である。通常、真空蒸留では、バルク充填物または規則充填物を用いた塔が適用される。
【0033】
本発明による方法は、追加の再結晶化工程によるまたは大規模蒸留工程による精製を必要とせずに精製フルオロエチレンカーボネートを提供する。材料の損失を伴う水性の後処理は回避される。
【0034】
参照により本明細書に組み入れられる特許、特許出願および刊行物の開示が、用語を不明確にする可能性がある程度まで本願の記載と矛盾する場合には、本記載を優先するものとする。
【0035】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するものであり本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0036】
実施例1:連続蒸留によるフルオロエチレンカーボネートの精製
略語:
EC:エチレンカーボネート
F1EC:モノフルオロエチレンカーボネート
CIS−F2EC:cis−4,5−ジフルオロエチレンカーボネート
4,4−F2EC:4,4−ジフルオロエチレンカーボネート
TR−F2EC:TRANS−4,4−ジフルオロエチレンカーボネート
E−Nは10−Nを意味する(例えば:E−4は10−4である)
【0037】
装置:装置は2つの塔K1およびK2を含む。K1は理論段数が20〜30であり、供給材料(供給ラインF−K1で送られる)は下から3分の1より上の段でその塔に入る。K2は理論段数が12〜20であり、K1の塔底生成物である供給材料はラインB1を介して送られ、塔K2にその塔の中ほどより上の段で入る。
【0038】
K1塔頂からの留出物はラインD1で抜き出される。その留出物の一部はラインREF−1を介してK1に戻される。
【0039】
K2塔頂からの留出物はラインD2で抜き脱され、その留出物の一部はラインREF−2を介してK2に戻される。K2の塔底生成物はラインB2で抜き出される。
【0040】
供給材料:供給材料は、エチレンカーボネートとF2/N2混合物の間のエチレンカーボネート50モル%変換までの反応からの粗反応混合物であり、そこから含まれるHFの大部分がストリッピングにより除去され、シリカゲルと接触させることによってさらなるHFが除去される。供給材料中のHF含量は300ppm未満であり、以下では無視する。供給ラインF−K1内の供給材料の温度は106.8℃であり、全質量流量は77.8kg/時間である。
【0041】
塔K1塔頂での温度は40℃を少し上回り、圧力は約25ミリバール(絶対圧)である。塔K2塔頂での温度は約80℃であり、圧力は約8ミリバール(絶対圧)である。両塔の塔底での温度は130℃を少し上回る。
【0042】
表1では、ラインF−K1(供給ライン)およびD2(最終的なF1ECが抜き出される際に通るライン)を通る流体中に含まれる化合物の質量分率(重量%)をまとめている。
【0043】
【表1】

【0044】
表1は、ラインD2を通じて、高度に精製されたフルオロエチレンカーボネートが回収されることを示している。不純物はより低いppm範囲にある。
【0045】
実施例2:モノフルオロエチレンカーボネートのバッチ蒸留
使用装置:
機械攪拌装置を備えた蒸気加熱ボイラーと、容器と連結された4セクションからなる塔を使用して蒸留を行った。塔は4mの長さであり、不規則ガラス充填物が充填され、塔頂に直接配置された冷却器と連結される。
【0046】
出発材料(850l)は、エチレンカーボネート(F1ECに溶解したもの)と、窒素で希釈したフッ素元素との反応から得た。生成したHFの大部分はストリッピングによって除去した。蒸留前の出発材料の組成は次の通りであった。
(示した数字は重量%):
EC: 34%
F1EC: 58%
F2EC: 8%(TR−F2EC 3%、4,4−F2EC 1%、CIS−F2EC 4%)
HF: <0.2%
【0047】
蒸留開始前に、ボイラー中の出発材料に10kgのシリカゲルを加えてHFを中和した。蒸留開始前に、圧力を約1ミリバール(絶対圧)に下げることによって脱気を行う。これによって、溶存ガスおよび生成水(シリカゲルとHFの間の反応からのもの)を出発材料から除去する。この工程で得られるガス流の凝縮成分を除去して真空ポンプを保護した。
【0048】
ボイラー中の出発材料を約125℃に加熱した。塔頂圧は3.5ミリバール(絶対圧)であり、塔頂温度は約73℃であった。
【0049】
蒸留開始時に、F2EC異性体は塔頂に高濃度で到着する。それらは廃棄することができる。
【0050】
F2EC異性体の含量が2重量%未満の場合には、留出物を別の貯蔵タンクに回収した。留出物中のEC含量が2重量%に達したらすぐに留出物の回収を終了した。貯蔵タンク中の液体の組成は、2重量%を少し下回るF2EC異性体、97.5重量%のF1ECおよび0.5重量%のECであった。ボイラー中に残留する液体は、約10重量%のF1ECおよび約90重量%のECの組成を有し、その液体をボイラーから取り出し、ECおよびフッ素からF1ECを生産するために別のバッチの出発材料に加えた。シリカゲルは処分した。
【0051】
貯蔵タンクには約500リットルの留出物が入っていた。それをボイラーに戻し、5kgの新たなシリカゲルを加えた。この際、脱気は行わなかった。ボイラー中の液体を125℃に加熱し、塔頂圧は1.5ミリバール(絶対圧)であった。開始時に回収された留出物は多量のCIS−F2ECを含有し、再蒸留のために新たなフッ素化の原材料に戻した。
【0052】
留出物が>99.1重量%のF1ECを含有していたらすぐに留出物を精製生成物の貯蔵タンクに回収した。蒸留終了時にボイラー中に残留する液体(この液体は後にECの新たなフッ素化反応の出発材料に加えた)は、約80重量%のF1ECおよび約20重量%のECを含有した。
【0053】
2つの蒸留工程後、単離された精製生成物の総収率は約36重量%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
精製されたフルオロエチレンカーボネートを調製するための方法であって、フルオロエチレンカーボネート、エチレンカーボネート、高フッ素化カーボネートおよびHFを含む反応混合物を、少なくとも2つの蒸留工程で蒸留する工程を含み、第1の蒸留工程に供給される反応混合物が5重量%以下のHFを含有する、方法。
【請求項2】
第1の蒸留工程に供給される前記反応混合物が1重量%以下のHFを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
蒸留が連続的に行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記反応混合物が第1の蒸留工程に連続的に供給され、その工程でHF、二フッ素化有機カーボネートおよび高フッ素化有機カーボネートを含む低沸点化合物が塔頂から抜き出され、エチレンカーボネートおよびフルオロエチレンカーボネートを含む高沸点化合物が塔底から抜き出され、かつ高沸点化合物が第2の蒸留工程に供給され、その工程で純粋なモノフルオロエチレンカーボネートが塔頂から抜き出される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
第1の蒸留工程が100ミリバール以下(絶対圧)の塔頂圧で行われる、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
第2の蒸留工程が50ミリバール以下(絶対圧)の塔頂圧で行われる、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記精製されたフルオロエチレンカーボネートが30ppm以下のHFを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
反応がバッチ式で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
第1塔の塔頂圧が第2塔の塔頂圧より高く、第1塔では10ミリバール以下(絶対圧)であり、第2塔では5ミリバール(絶対圧)以下である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも2つの蒸留塔で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
2つの蒸留塔で行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
フルオロエチレンカーボネート、エチレンカーボネート、高フッ素化カーボネートおよびHFを含む、HFが5重量%を超えるHF含量の反応混合物を、HF含量を低減するためのストリッピングプロセスに付して、5重量%以下を含有する反応混合物を得、得られた反応混合物を少なくとも2つの蒸留工程で蒸留する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2013−502394(P2013−502394A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525159(P2012−525159)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【国際出願番号】PCT/EP2010/061973
【国際公開番号】WO2011/020830
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(592165314)ゾルファイ フルーオル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (55)
【氏名又は名称原語表記】Solvay Fluor GmbH
【住所又は居所原語表記】Hans−Boeckler−Allee 20,D−30173 Hannover,Germany