説明

フルオロエラストマー組成物

本発明は、− 少なくとも1種のフルオロエラストマー[フルオロエラストマー(A)];− (フルオロエラストマー(A)に対して)0.1〜25phrの、高くとも250℃の融点を有する少なくとも1種の溶融加工可能なペル(ハロ)フルオロポリマー[ポリマー(F)];および− 場合によっては、少なくとも1種の(ペル)フルオロポリエーテル[(ペル)フルオロポリエーテル(E)]を含むフルオロエラストマー組成物を提供する。驚くべきことには、上述のようなポリマー(F)をフルオロエラストマー組成物の中に組み込むことによって、射出成形技術および押出成形技術の両方におけるフルオロエラストマー組成物の加工が容易となり、離型挙動、金型の汚れおよび成形部品の表面状態が改良されることを、本出願人は見出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の加工助剤添加物を含むフルオロエラストマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロエラストマー粗原料およびそれをコンパウンディングしたゴム素材を加工して所望の性質を有する最終的なエラストマー商品または物品に変換するためには、そのようなフルオロエラストマーゴムに各種の化学物質およびコンパウンディング配合剤を組み込んだり混合したりすることが通常行われるが、それらはそれぞれ、そのようなフルオロエラストマーベース材料の加工および加硫ならびにその最終用途のいずれにおいても、特定の機能を有するものである。
【0003】
そのような配合剤の一つのタイプが加工助剤であり、それらは通常、粗原料または非加硫フルオロエラストマーの粘性および靱性を改変するために使用されたり、および/またはたとえばそれらの加工、たとえば、ゴムまたはゴム素材の混合、微粉砕、混練、成形、または加硫の間に、特定の役割を果たすように使用される。具体的には、加工助剤は流動性に役立つように使用され、一般的には、離型を容易にしたり、型の汚れを最小限にしたり、特に型材やシートの仕上がり表面を滑らかにしたりするためには、不可欠なものである。
【0004】
現在まで、加工助剤としては各種の物質が調製され、使用されてきたが、そのようなものとしてはたとえば、各種のワックスおよびオイルが挙げられる。たとえば、特に加工することが困難な、フルオロエラストマーたとえばフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンのコポリマーを加工する場合には、オレイン酸と低分子量ポリエチレンとの混合物((特許文献1)(RAYBESTOS MANHATTAN INC、1982年5月4日、参照)、脂肪酸エステル(たとえば、カルナウバワックスおよびモンタンワックス)((特許文献2)(MINNESOTA MINING & MFG)参照)、およびジオルガノ硫黄酸化物化合物((特許文献3)(MINNESOTA MINING & MFG)、1981年9月1日、参照)などが提案されている。
【0005】
フッ素化オイルもまたフルオロエラストマー組成物における加工助剤として提案されており、それらは以下の特許に教示されている:(特許文献4)(MONTEDISON S.P.A.、1981年7月14日)および(特許文献5)(MONTEDISON S.P.A.、1984年1月25日)。
【0006】
慣用されてきた加工助剤は、先に述べたように、フルオロエラストマーの加工において多くの有用な利点を与えてはいるが、それらの物質の加工においては、フルオロエラストマーの化学的な性質、およびそれが通常の加工助剤とは相溶性が乏しいこと、およびそれらが多くの場合過酷な条件で使用されることなどが原因で、多くの問題が生じる。
【0007】
酸素含有添加剤(たとえば、エステル)は、一般的にはフルオロエラストマーと相溶性があるが、たとえば潤滑油や作動油によって抽出可能である。そのために、得られる硬化物品が、硬化および使用している間に収縮や変形を起こす。
【0008】
相溶性に乏しい添加剤(たとえば、ポリエチレンまたはフッ素化オイル)を使用した場合、表面潤滑性が極端に高く、成形および硬化の際に過度のブリードが起きるために、金型流れの先端で浸出が起きて、ニッティング(knitting)の問題を起こす可能性がある。さらに、ある種の加工助剤では、硬化速度に悪影響を与え、スコーチ安全性にも影響する可能性がある。一言で言えば、従来からの加工助剤は望む程の性能を発揮せず、それらのいくつかはゴムの硬化を妨害し、そして別のものは硬化させたフルオロエラストマーまたは仕上がり商品の最終的な物理的および機械的性質、形状ならびに外観に悪影響を与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4328140号明細書
【特許文献2】米国特許第3753937号明細書
【特許文献3】米国特許第4287320号明細書
【特許文献4】米国特許第4278776号明細書
【特許文献5】欧州特許出願第0099079A号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、組み込むことが容易であり、射出成形/押出成形の際に金型の汚れを実質的に伴わずに傑出した離型性を可能とするか、および/またはダイブリードが実質的に無く傑出した表面状態を有しながらも押出成形が容易であり、しかもフルオロエラストマーの硬化性またはフルオロエラストマー組成物もしくはそれからの仕上がり商品の他の所望の性質に悪影響を与えないようなフルオロエラストマー組成物のための加工助剤が、当業界では現在のところ依然として求められていると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明の目的は、以下のものを含むフルオロエラストマー組成物である:
− 少なくとも1種のフルオロエラストマー[フルオロエラストマー(A)];
− (フルオロエラストマー(A)に対して)0.1〜25phrの、高くとも250℃の融点を有する少なくとも1種の溶融加工可能なペル(ハロ)フルオロポリマー[ポリマー(F)];
− 場合によっては、少なくとも1種の(ペル)フルオロポリエーテル[(ペル)フルオロポリエーテル(E)]。
【0012】
驚くべきことには、上述のようなポリマー(F)をフルオロエラストマー組成物の中に組み込むことによって、射出成形技術および押出成形技術の両方におけるフルオロエラストマー組成物の加工が容易となり、離型挙動、金型の汚れおよび成形部品の表面状態が改良されることを、本出願人は見出した。
【0013】
本発明の目的においては、「フルオロエラストマー」という用語[フルオロエラストマー(A)]は、真のエラストマーを得るための基本構成要素として機能するフルオロポリマー樹脂を指すものであり、前記フルオロポリマー樹脂は、10重量%を超える、好ましくは30重量%を超える、少なくとも1個のフッ素原子を含む少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー(以後、フッ素化モノマーと呼ぶ)から誘導される繰り返し単位を含む。
【0014】
真のエラストマーは、ASTM、Special Technical Bulletin No.184標準により、室温で、それらの元の長さの2倍にまで伸ばすことが可能であり、張力下に5分間保持した後に放すとすぐに、それらの元の長さの10%以内に戻ることが可能な物質として定義されている。
【0015】
さらに、好適なフッ素化モノマーの非限定的な例としては、主として以下のものが挙げられる:
− C〜Cフルオロオレフィンおよび/またはペルフルオロオレフィン、たとえば、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、ペンタフルオロプロピレン、およびヘキサフルオロイソブチレン;
− C〜C水素化モノフルオロオレフィン、たとえば、フッ化ビニル;
− 1,2−ジフルオロエチレン、フッ化ビニリデン(VDF)、およびトリフルオロエチレン(TrFE);
− 式CH=CH−Rf0に従う(ペル)フルオロアルキルエチレン[式中、Rf0は、C〜C(ペル)フルオロアルキルまたは1個もしくは複数のエーテル基を有するC〜C(ペル)フルオロオキシアルキルである];
− クロロ−および/またはブロモ−および/またはヨード−C〜Cフルオロオレフィン、たとえば、クロロトリフルオロエチレン(CTFE);
− 式CF=CFORf1に従うフルオロアルキルビニルエーテル[式中、Rf1は、C〜Cフルオロ−またはペルフルオロアルキル、たとえば、−CF、−C、−Cである];
− 式CH=CFORf1に従うヒドロフルオロアルキルビニルエーテル[式中、Rf1は、C〜Cフルオロ−またはペルフルオロアルキル、たとえば、−CF、−C、−Cである];
− 式CF=CFOXに従うフルオロ−オキシアルキルビニルエーテル[式中、Xは、1個または複数のエーテル基を有する、C〜C12オキシアルキル、またはC〜C12(ペル)フルオロオキシアルキル、たとえばペルフルオロ−2−プロポキシ−プロピルである];
− 式CF=CFOCFORf2に従うフルオロアルキル−メトキシ−ビニルエーテル[式中、Rf2は、C〜Cフルオロ−もしくはペルフルオロアルキル、たとえば、−CF、−C、−C、または1個もしくは複数のエーテル基を有するC〜C(ペル)フルオロオキシアルキル、たとえば−C−O−CFである];
− 式CF=CFOYに従う官能性フルオロ−アルキルビニルエーテル[式中、Yは、C〜C12アルキルもしくは(ペル)フルオロアルキル、またはC〜C12オキシアルキルもしくはC〜C12(ペル)フルオロオキシアルキルであり、前記Y基は、カルボキシリック基またはスルホン酸基をその酸、酸ハライドまたは塩の形で含む];
− 次式のフルオロジオキソール:
【化1】

[式中、Rf3、Rf4、Rf5、Rf6は、互いに同じであっても異なっていてもよく、独立して、フッ素原子、場合によっては1個もしくは複数の酸素原子を含む、C〜Cフルオロ−もしくはペル(ハロ)フルオロアルキル、たとえば、−CF、−C、−C、−OCF、−OCFCFOCFである]。
【0016】
フルオロエラストマー(A)は一般的に言って、非晶質の生成物であるか、または低い結晶化度(結晶相が20容積%未満)および室温より低いガラス転移温度(T)を有する生成物である。ほとんどの場合において、フルオロエラストマー(A)のTは有利には10℃未満、好ましくは5℃未満、より好ましくは0℃である。
【0017】
フルオロエラストマー(A)は、以下のものから選択するのが好ましい:
(1)VDFをベースとするコポリマー[ここでVDFは、以下の種類から選択される少なくとも1種のコモノマーと共重合されている]:
(a)C〜Cペルフルオロオレフィン、たとえば、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ヘキサフルオロイソブチレン;
(b)水素含有C〜Cオレフィン、たとえば、フッ化ビニル(VF)、トリフルオロエチレン(TrFE)、式CH=CH−Rのペルフルオロアルキルエチレン[式中、RはC〜Cペルフルオロアルキル基である];
(c)C〜Cクロロ−および/またはブロモ−および/またはヨード−フルオロオレフィン、たとえば、クロロトリフルオロエチレン(CTFE);
(d)式CF=CFORの(ペル)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)[式中、Rは、C〜C(ペル)フルオロアルキル基、たとえば、CF、C、Cである];
(e)式CF=CFOXの(ペル)フルオロ−オキシ−アルキルビニルエーテル[式中、Xは、カテナリー酸素原子を含むC〜C12((ペル)フルオロ)−オキシアルキル、たとえば、ペルフルオロ−2−プロポキシプロピル基である];
(f)次式の(ペル)フルオロジオキソール:
【化2】

[式中、Rf3、Rf4、Rf5、Rf6は、互いに同じであっても異なっていてもよく、独立して、フッ素原子、および場合によっては1個または2個以上の酸素原子を含むC〜C(ペル)フルオロアルキル基、たとえばとりわけ、−CF、−C、−C、−OCF、−OCFCFOCFの中から選択される];好ましくは、ペルフルオロジオキソール;
(g)次式を有する、(ペル)フルオロ−メトキシ−ビニルエーテル(以後、MOVEと呼ぶ):
CFX=CXOCFOR”
[式中、R”は、直鎖状もしくは分岐状のC〜C(ペル)フルオロアルキル;C〜C環状(ペル)フルオロアルキル;および1〜3個のカテナリー酸素原子を含む、直鎖状もしくは分岐状のC〜C(ペル)フルオロオキシアルキルから選択され、ならびにX=F、Hであるが;好ましくはXがFであって、R”が、−CFCF(MOVE1);−CFCFOCF(MOVE2);または−CF(MOVE3)である];
(h)C〜C非フッ素化オレフィン(Ol)、たとえば、エチレンおよびプロピレン;ならびに
(2)TFEをベースとするコポリマー[ここで、TFEは、上述の種類(c)、(d)、(e)、(g)、(h)および以下のものから選択される少なくとも1種のコモノマーと共重合されている]:
(i)シアニド基を含むペルフルオロビニルエーテル、特に以下の特許に記載されているようなもの、米国特許第4 281 092号明細書、米国特許第5 447 993号明細書、および米国特許第5 789 489号明細書。
【0018】
最も好ましいフルオロエラストマー(A)は以下の組成(モル%)を有するものである:
(i)フッ化ビニリデン(VDF)35〜85%、ヘキサフルオロプロペン(HFP)10〜45%、テトラフルオロエチレン(TFE)0〜30%、ペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)0〜15%;
(ii)フッ化ビニリデン(VDF)50〜80%、ペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)5〜50%、テトラフルオロエチレン(TFE)0〜20%;
(iii)フッ化ビニリデン(VDF)20〜30%、C〜C非フッ素化オレフィン(Ol)10〜30%、ヘキサフルオロプロペン(HFP)および/またはペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)18〜27%、テトラフルオロエチレン(TFE)10〜30%;
(iv)テトラフルオロエチレン(TFE)50〜80%、ペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)20〜50%;
(v)テトラフルオロエチレン(TFE)45〜65%、C〜C非フッ素化オレフィン(Ol)20〜55%、フッ化ビニリデン0〜30%;
(vi)テトラフルオロエチレン(TFE)32〜60%、C〜C非フッ素化オレフィン(Ol)10〜40%、ペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)20〜40%、フルオロビニルエーテル(MOVE)0〜30%;
(vii)テトラフルオロエチレン(TFE)33〜75%、ペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)15〜45%、フッ化ビニリデン(VDF)5〜30%、ヘキサフルオロプロペン(HFP)0〜30%;
(viii)フッ化ビニリデン(VDF)35〜85%、フルオロビニルエーテル(MOVE)5〜40%、ペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)0〜30%、テトラフルオロエチレン(TFE)0〜40%、ヘキサフルオロプロペン(HFP)0〜30%;
(ix)テトラフルオロエチレン(TFE)20〜70%、フルオロビニルエーテル(MOVE)30〜80%、ペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)0〜50%。
【0019】
場合によっては、本発明のフルオロエラストマー(A)にはさらに、次の一般式を有するビス−オレフィンから誘導される繰り返し単位も含まれる:
【化3】

[式中、R、R、R、R、R、およびRは、互いに同じであっても異なっていてもよく、HまたはC〜Cアルキルであり;Zは、場合によっては酸素原子を含み、好ましくは少なくとも部分的にフッ素化された直鎖状もしくは分岐状のC〜C18アルキレンまたはシクロアルキレン基、またはたとえば本出願人の名前で出願された欧州特許第661 304号明細書に記載されているような(ペル)フルオロポリオキシアルキレン基である]
【0020】
フルオロエラストマー(A)は、各種公知の方法、たとえば、エマルション重合もしくはマイクロエマルション重合、サスペンション重合もしくはマイクロサスペンション重合、バルク重合、および溶液重合によって調製することができる。
【0021】
重合は通常、25〜150℃の間の温度、10MPaまでの圧力下で実施される。
【0022】
フルオロエラストマー(A)は、ラジカル発生剤の存在下のエマルション重合によって調製するのが好ましい。好適なラジカル発生剤は、とりわけ、アルカリ性過硫酸塩、過ホウ酸塩、および過炭酸塩である。ペルオキシ発生剤と、還元剤たとえば、アルカリ金属またはアンモニウムの亜硫酸塩、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩、チオ硫酸塩、亜リン酸塩もしくは次亜硫酸塩、または銅(I)塩、Fe(II)塩、銀塩およびその他の容易に酸化可能な金属塩との組合せを採用するのも可能である。有機ラジカル発生剤、たとえば、有機ペルオキシドを使用することもまた可能である。
【0023】
ラジカル発生剤として有用な好適な有機ペルオキシドは、特に以下のものから選択することができる:
(a)ジアルキルペルオキシド(ここで、アルキルは1〜12個の炭素原子を含む)、たとえばジテルブチルペルオキシド(DTBP);
(b)ジアルキルペルオキシジカーボネート(ここで、そのアルキルは1〜12個の炭素原子を含む)、たとえばジイソプロピルペルオキシジカーボネート:
(c)ジアシルペルオキシド(ここで、アシルは2〜12個の炭素原子を含む)、たとえばジアセチルペルオキシド;
(d)3〜20個の炭素原子を含むペルオキシエステル、たとえばテルブチルペルオキシイソブチレート。
【0024】
本発明の目的のためには、「ペル(ハロ)フルオロポリマー」という用語は、実質的に水素原子を含まないフルオロポリマーを指すものとする。
【0025】
「実質的に水素原子を含まない」という用語は、そのペル(ハロ)フルオロポリマーが、少なくとも1個のフッ素原子を含み水素原子を含まないエチレン性不飽和モノマー[ペル(ハロ)フルオロモノマー)(PFM)]から誘導される繰り返し単位から基本的になっている、ということを意味するものと理解されたい。
【0026】
そのペル(ハロ)フルオロポリマーは溶融加工可能である。
【0027】
本発明の目的のためには、「溶融加工可能な(melt−processable)」という用語は、そのペル(ハロ)フルオロポリマーが、溶融押出、射出またはキャスティングの手段によって、加工可能である(すなわち、成形物品たとえば、フィルム、繊維、チューブ、ワイヤコーティングなどに加工できない)ということを意味している。
【0028】
ポリマー(F)の融点が高くとも250℃であるということが肝要である。
【0029】
本出願人の見出したところでは、ポリマー(F)の融点が250℃を超えると、本発明の組成物の中にポリマー(F)を添加しても、射出成形の場合、押出成形の場合のいずれにおいても、加工挙動が改良されることはない。
【0030】
本発明の範囲を限定するものではないが、本出願人の考えるところでは、ポリマー(F)が上に定義した融点を有している場合には、このポリマー(F)の軟化および/または初期の溶融が、フルオロエラストマーマトリックスの内部でその加工中に起きる可能性があり、そのために離型性が改良され、金型の汚れが実質的に避けられる。
【0031】
ポリマー(F)の融点(Tm2)は、ASTM D3418標準に従い、示差走査熱量測定(DSC)により10℃/分の加熱速度で測定する。
【0032】
ポリマー(F)は、好ましくは高くとも240℃、より好ましくは高くとも230℃、さらにより好ましくは高くとも225℃の融点を有する。
【0033】
本発明のポリマー(F)は、1 rad×sec−1の剪断速度のときの動的粘度が、温度280℃で、有利には2000Pa×sec未満、好ましくは700Pa×sec未満、より好ましくは500Pa×sec未満、最も好ましくは50Pa×sec未満である。
【0034】
動的粘度は、有利には、ASTM D4440標準に従い、プラクティスASTM D4065に記載の1 rad×sec−1での「複素粘性率、η」を求める式に従って、求められる。
【0035】
動的粘度は、典型的には、調整した歪みレオメーターを用いて測定されるが、それには、平行板固定具(parallel plate fixture)を使用し、サンプルに変形歪みを与えるためのアクチュエータと、その結果サンプルの中に生じる応力を測定するための独立した変換器とを用いる。
【0036】
本発明のペル(ハロ)フルオロポリマーがテトラフルオロエチレン(TFE)コポリマーであるのが好ましい。
【0037】
「テトラフルオロエチレン(TFE)コポリマー」という用語には、TFEから誘導される繰返し単位、ならびに上述のような、TFEとは異なる少なくとも1種のペル(ハロ)フルオロモノマー(PFM)から誘導される繰返し単位を含むペル(ハロ)フルオロポリマーを包含するものとする。
【0038】
本発明のポリマー(F)は、繰返し単位を合計したモル数を基準にして、有利には少なくとも0.5モル%、好ましくは少なくとも5モル%、より好ましくは少なくとも7モル%の、TFEとは異なるペル(ハロ)フルオロモノマー(PFM)から誘導される繰返し単位を含む、TFEコポリマーであるのがより好ましい。
【0039】
本発明のポリマー(F)は、繰返し単位を合計したモル数を基準にして、有利には多くとも30モル%、好ましくは多くとも25モル%、より好ましくは多くとも23モル%の、TFEとは異なるペル(ハロ)フルオロモノマー(PFM)から誘導される繰返し単位を含む、TFEコポリマーであるのがより好ましい。
【0040】
TFEとは異なるペル(ハロ)フルオロモノマー(PFM)は、とりわけ、以下のものから選択される。
− C〜Cペルフルオロオレフィン、たとえばヘキサフルオロプロペン(HFP);
− クロロ−および/またはブロモ−および/またはヨード−C〜Cペル(ハロ)フルオロオレフィンたとえば、クロロトリフルオロエチレン(CTFE);
− 一般式CF=CFORf3に従うペル(ハロ)フルオロアルキルビニルエーテル[式中、Rf3は、C〜Cペル(ハロ)フルオロアルキル、たとえば−CF、−C、−Cである];
− 一般式CF=CFOX01に従うペル(ハロ)フルオロ−オキシアルキルビニルエーテル[式中、X01は1個または複数のエーテル基を有するC〜C12ペル(ハロ)フルオロオキシアルキル、たとえばペルフルオロ−2−プロポキシ−プロピル基である];
− 一般式CF=CFOCFORf4に従うペル(ハロ)フルオロ−メトキシ−アルキルビニルエーテル[式中、Rf4はC〜Cペル(ハロ)フルオロアルキル、たとえば−CF、−C、−Cまたは、1個または複数のエーテル基を有するC〜Cペル(ハロ)フルオロオキシアルキル、たとえば−C−O−CFである];
− 次式のペル(ハロ)フルオロジオキソール:
【化4】

[式中、Rf3A、Rf4A、Rf5A、Rf6Aのそれぞれは、互いに同じであっても異なっていてもよく、独立して、フッ素原子、場合によっては1個または複数の酸素原子を含むC〜Cペルフルオロアルキル基、たとえば−CF、−C、−C、−OCF、−OCFCFOCFである]、からなる基から選択される少なくとも1種のペル(ハロ)フルオロモノマー(PFM)から誘導される繰り返し単位を含むTFEコポリマー、から選択される。
【0041】
さらにより好適なポリマー(F)は、以下のものからなる群より選択される少なくとも1種のペル(ハロ)フルオロモノマー(PFM)から誘導される繰返し単位を含むTFEコポリマーである。
1.式CF=CFORf1’に従うペルフルオロアルキルビニルエーテル[式中、Rf1’は、C〜Cペルフルオロアルキル、たとえば、−CF、−C、−Cである];および/または
2.式CF=CFOXに従うペルフルオロ−オキシアルキルビニルエーテル[式中、Xは、1個または複数のエーテル基を有するC〜C12ペルフルオロオキシアルキル、たとえばペルフルオロ−2−プロポキシ−プロピルである];および/または
3.C〜Cペルフルオロオレフィン、たとえばヘキサフルオロプロピレン;
4.次式のペル(ハロ)フルオロジオキソール:
【化5】

[式中、Rf3A、Rf4A、Rf5A、Rf6Aのそれぞれは、互いに同じであっても異なっていてもよく、独立して、フッ素原子、場合によっては1個もしくは複数の酸素原子を含むC〜Cペルフルオロアルキル基、たとえば、−CF、−C、−C、−OCF、−OCFCFOCFである]、好ましくはRf3AおよびRf4Aがフッ素原子であり、Rf5AおよびRf6Aがペルフルオロメチル基(−CF)である、上述のようなペル(ハロ)フルオロジオキソール[ペルフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール(PDD)]または、Rf3、Rf5およびRf6がフッ素原子で、Rf4がペルフルオロメトキシ基(−OCF)であるもの[2,2,4−トリフルオロ−5−トリフルオロメトキシ−1,3−ジオキソール、またはペルフルオロメトキシジオキソール(MDO)]である。
【0042】
さらにより好ましいポリマー(F)は、式CF=CFORf1’[式中、Rf1’は、C〜Cペルフルオロアルキルである]に従う少なくとも1種のペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)から誘導される繰り返し単位を含むTFEコポリマー(以下に示す、TFE/PAVEコポリマー)である。
【0043】
「少なくとも1種のペルフルオロアルキルビニルエーテル」という表現は、そのTFE/PAVEコポリマーが、1種または2種以上の上述のようなペルフルオロアルキルビニルエーテルから誘導される繰返し単位を含むことができるということを意味していると理解されたい。
【0044】
本明細書で使用するとき、「ペルフルオロアルキルビニルエーテル」という用語は、本発明の目的においては、単数形、複数形の両方を意味すると理解されたい。
【0045】
少なくとも1種の式CF=CFORf7’[式中、Rf7’は、−CF、−C、−Cの中から選択された基である]に従うペルフルオロアルキルビニルエーテルから誘導される繰返し単位を含むTFE/PAVEコポリマーを用いると、良好な結果が得られた。
【0046】
(式CF=CFOCFの)ペルフルオロメチルビニルエーテル(以後、MVEと呼ぶ)から誘導された繰返し単位を含むTFE/PAVEコポリマーを用いると、優れた結果が得られた。
【0047】
TFE/PAVEコポリマーには、TFEとは異なった少なくとも1種のペル(ハロ)フルオロモノマー、および上述のようなペルフルオロアルキルビニルエーテルから誘導される繰返し単位をさらに含んでいてもよい。具体的には、TFE/PAVEコポリマーには、上述のようなペルフルオロ−オキシアルキルビニルエーテル、および/または上述のようなC〜Cペルフルオロオレフィン(たとえば、ヘキサフルオロプロピレン)、および/または上述のようなペル(ハロ)フルオロジオキソールから誘導される繰返し単位を含んでいてもよい。
【0048】
本発明の最も好ましい実施態様に従えば、ポリマー(F)は、TFEと前述の少なくとも1種のペルフルオロアルキルビニルエーテルとから誘導される繰り返し単位から実質的になるTFE/PAVEコポリマーから選択するのが有利である。
【0049】
この最も好ましい実施態様のTFE/PAVEコポリマーが、前記物質の性質に実質的に影響を及ぼさないような、その他の残基たとえば末端基、欠陥などを含んでいてもよいということは理解されたい。
【0050】
本発明のこの最も好ましい実施態様においては、ポリマー(F)が、実質的にTFEおよびMVEから誘導される繰返し単位を含んでなるコポリマーであるのが好ましい。
【0051】
この実施態様におけるポリマー(F)が、実質的に以下のものからなるTFE/MVEコポリマーであればより好ましい。
− 3〜25モル%、好ましくは5〜20モル%、より好ましくは8〜18モル%、さらにより好ましくは10〜15モル%のMVEから誘導される繰返し単位;および
− 97〜75モル%、好ましくは95〜80モル%、より好ましくは92〜82モル%、さらにより好ましくは90〜85モル%TFEのから誘導される繰返し単位。
【0052】
本発明の組成物には、ポリマー(F)を、(フルオロエラストマー(A)に対して)少なくとも0.1phr、好ましくは少なくとも0.2phr、より好ましくは少なくとも0.3phr、最も好ましくは少なくとも0.5phrの量で含む。
【0053】
本発明の組成物には、ポリマー(F)を、(フルオロエラストマー(A)に対して)多くとも25phr、好ましくは多くとも20phr、より好ましくは多くとも15phrの量で含む。
【0054】
0.3〜15phrのポリマー(F)を含むフルオロエラストマー組成物の場合に、良好な結果が得られた。1〜15phrのポリマー(F)を含むフルオロエラストマー組成物の場合に、最善の結果が得られた。
【0055】
本発明の好ましい実施態様においては、その組成物にはさらに、少なくとも1種の(ペル)フルオロポリエーテル[(ペル)フルオロポリエーテル(E)]を含む。
【0056】
驚くべきことには、上述のようなポリマー(F)を(ペル)フルオロポリエーテル(E)と組み合わせることによって、相乗的な協力作用が生じて、フルオロエラストマー(A)の加工性が改良され、優れた離型性を示し、金型の汚れおよびダイブリードが実質的になくなることを、本出願人は見出した。
【0057】
さらに、ポリマー(F)は、(ペル)フルオロポリエーテル(E)をフルオロエラストマー(A)マトリックスの中に担持(vehiculating)させるのに有利に使用することができ、その結果、(ペル)フルオロポリエーテル(E)の良好な効率を得ることができる。
【0058】
本発明の文脈においては、「(ペル)フルオロポリエーテル(E)」という用語は、繰り返し単位(R1)を含むポリマーを表すことを意図しているが、前記繰り返し単位には、主鎖中に少なくとも1個のエーテル結合と、少なくとも1個のフッ素原子とを含む(フルオロポリオキシアルケン鎖)。
【0059】
(ペル)フルオロポリエーテル(E)の繰り返し単位R1が以下のものからなる群より選択されるのが好ましい:
(I)−CFX−O−[式中、Xは−Fまたは−CFである];および
(II)−CF−CFX−O−[式中、Xは−Fまたは−CFである];および
(III)−CF−CF−CF−O−;および
(IV)−CF−CF−CF−CF−O−;および
(V)−(CF−CFZ−O−[式中、jは、0および1から選択される整数であり、Zは、ここで挙げた種類(I)〜(IV)から選択される繰り返し単位1〜10個を含むフルオロポリオキシアルケン鎖である];
ならびにそれらの混合物。
【0060】
その(ペル)フルオロポリエーテル(E)が異なったタイプの繰り返し単位R1を含むならば、前記繰り返し単位が、フルオロポリオキシアルケン鎖の中で一般的にランダムに分散されているのが有利である。
【0061】
その(ペル)フルオロポリエーテルが、以下の式(I)に従う化合物であるのが好ましい:
−(CFX)−O−R−(CFX)p’−T (I)
[式中、
− それぞれのXは、独立して、FまたはCFであり;
− pおよびp’は、互いに等しくても異なっていてもよく、0〜3の整数であり;
− Rは、繰り返し単位R゜を含むフルオロポリオキシアルケン鎖であり、前記繰り返し単位は、以下のものからなる群より選択され:
(i)−CFXO−[式中、XはFまたはCFである]、
(ii)−CFCFXO−[式中、XはFまたはCFである]、
(iii)−CFCFCFO−、
(iv)−CFCFCFCFO−、
(v)−(CF−CFZ−O−[式中、jは、0および1から選択される整数であり、Zは、一般式−OR’Tの基であるが、ここでR’は、0〜10の数の繰り返し単位を含むフルオロポリオキシアルケン鎖であるが、前記繰り返し単位は、以下のものから選択され:−CFXO−、−CFCFXO−、−CFCFCFO−、−CFCFCFCFO−(Xのそれぞれは、独立してFまたはCFである);そしてTは、C〜Cペルフルオロアルキル基である]
およびそれらの混合物;
− TおよびTは、互いに等しくても異なっていてもよく、H、ハロゲン原子、場合によってはO、S、Nおよび/またはハロゲン原子から選択されるヘテロ原子を含むC〜C30末端基である]
【0062】
(ペル)フルオロポリエーテル(E)の数平均分子量は一般的に、400〜100 000の間、好ましくは600〜20 000の間に含まれる。
【0063】
(ペル)フルオロポリエーテル(E)が以下のものからなる群より選択されるのがより好ましい。:
(a)HO−CHCFO(CFO)n’(CFCFO)m’CFCH−OH[式中、m’およびn’は整数であるが、m’/n’の比は一般的に0.1〜10の間、好ましくは0.2〜5の間の範囲である];
(b)HO(CHCHO)CHCFO(CFO)n’(CFCFO)m’CFCH(OCHCHOH[式中、m’およびn’は整数であるが、m’/n’の比は一般的に0.1〜10の間、好ましくは0.2〜5の間であり、nは1〜3の範囲である];
(c)HCFO(CFO)n’(CFCFO)m’CFH[式中、m’およびn’は整数であるが、m’/n’の比は一般的に0.1〜10の間、好ましくは0.2〜5の間の範囲である];
(d)FCFO(CFO)n’(CFCFO)m’CFF[式中、m’およびn’は整数であるが、m’/n’の比は一般的に0.1〜10の間、好ましくは0.2〜5の間の範囲である]。
【0064】
上述のタイプ(a)および(b)から選択された(ペル)フルオロポリエーテル(E)を含むフルオロエラストマー組成物を用いると、優れた結果が得られた。
【0065】
上述のタイプ(a)、(b)、(c)、および(d)の(ペル)フルオロポリエーテル(E)は、とりわけ、Solvay Solexis S.p.A.から、FOMBLIN(登録商標)Z−DOL、FOMBLIN(登録商標)Z−DOL TX、H−GALDEN(登録商標)、およびFOMBLIN(登録商標)ZまたはFOMBLIN(登録商標)Mとして市販されている。
【0066】
本発明の組成物が(ペル)フルオロポリエーテル(E)を含むならば、その量は、(フルオロエラストマー(A)に対して)、好ましくは少なくとも0.02phr、より好ましくは少なくとも0.05phr、そして好ましくは多くとも15phr、より好ましくは多くとも10phr、さらにより好ましくは多くとも5phrである。
【0067】
具体的には、上述のようなある程度の量であれば、ペル(ハロ)フルオロポリマー(F)と組み合わせたときに相乗効果を生むことができるものの、上に詳述した限界を超える量になると、圧縮永久歪みが悪化する可能性があって、好ましくない。そうは言うものの、圧縮永久歪みが問題とならないような用途では、さらに多くの量でも好適となりうる。
【0068】
0.02〜7phrの(ペル)フルオロポリエーテル(E)を含む組成物を用いると、良好な結果が得られた。
0.05〜1phrの(ペル)フルオロポリエーテル(E)を含む組成物を用いると、優れた結果が得られた。
【0069】
場合によっては、本発明のフルオロエラストマー組成物には、慣用される他の添加剤、たとえば充填剤、増粘剤、顔料、抗酸化剤、安定剤などが含まれていてもよい。
【0070】
具体的には、本発明のフルオロエラストマー組成物にはさらに、ポリマー(F)とは異なるさらなる半晶質の(ペル)フルオロポリマー[ポリマー(T)]を、フルオロエラストマー(A)に対して一般的には0〜70phr、好ましくは2〜40phrの量で含むこともできる。
【0071】
ポリマー(T)は以下のものから選択するのが好ましい:
− テトラフルオロエチレン(TFE)ホモポリマー、および0.01mole%〜10mole%、好ましくは0.05mole%〜7mole%の量のエチレンタイプの少なくとも1個の不飽和を含む1種または複数のモノマーとのTFEコポリマー(前記TFEホモポリマーおよびコポリマーは250℃を超える融点を有する);
− フッ化ビニリデン(VDF)ホモポリマー、および0.01mole%〜30mole%の量のエチレンタイプの少なくとも1個の不飽和を含む1種または複数のモノマーとのVDFコポリマー。
【0072】
エチレン不飽和を有する前記コモノマーは、水素化およびフッ素化タイプのものである。水素化されたものとしては、エチレン、プロピレン、アクリルモノマー、たとえばメタクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヒドロキシエチルヘキシル、スチレンモノマーなどを挙げることができる。フッ素化コモノマーとしては、たとえば、フルオロエラストマー(A)のためのコモノマーとして本明細書で先に挙げた、タイプ(a)〜(g)のフッ素化モノマーなどを挙げることができる。
【0073】
本発明はさらに、上述のようなフルオロエラストマー組成物を製造するための方法にも関する。
【0074】
本発明の方法は、有利なことには、フルオロエラストマー(A)の中に、必要量のポリマー(F)、ならびに場合によっては(ペル)フルオロポリエーテル(E)を組み込むことを含む。
【0075】
そのような助剤、さらにはその他の化学薬品またはコンパウンディング配合剤は通常、ミルまたはインターナルミキサ(たとえばバンバリーミキサ)を用いてフルオロエラストマー(A)の中に組み込まれる。
【0076】
次いでそのコンパウンディングされたフルオロエラストマー組成物を、成形(射出成形、押出成形)、カレンダリング、または押出しによって所望の成形物品に加工することが可能であり、有利にはそれを加工そのものの間および/またはそれに続く工程で加硫(硬化)させて(後処理または後硬化)、有利にはその比較的柔らかで弱いフルオロエラストマー組成物を、非粘着性で、強く、不溶性で、化学的および熱的抵抗性を有する硬化フルオロエラストマー組成物からなる仕上がり物品に変換させる。
【0077】
本発明の組成物がさらに(ペル)フルオロポリエーテル(E)を含む場合には、まずポリマー(F)と(ペル)フルオロエーテル(E)とを混合して、加工助剤混合物[混合物(M)]としてから、前記混合物(M)をフルオロエラストマー(A)の中に組み込むのが一般的に好ましい。
【0078】
ポリマー(F)と(ペル)フルオロポリエーテル(E)は、当業者に周知の標準的な方法によって混合することができる。
【0079】
混合効率を上げるために、通常ポリマー(F)は粉体の形態で使用する。
【0080】
ポリマー(F)は(ペル)フルオロポリエーテル(E)と固体混合するか、またはそれと溶融コンパウンディングすることができる。
【0081】
固体混合は、主として、タンブラーミキサ、スクリューミキサ、パドルミキサ、ニューマチックミキサなどの中で実施することができる。
【0082】
ポリマー(F)と(ペル)フルオロポリエーテル(E)とを溶融コンパウンディングすることによって混合して、溶融混合物(M)を得るのが好ましい。典型的なメルトブレンド装置を使用することができるが、そのようなものとしてはたとえば、主として、ニーダー、バンバリータイプミキサ、スタティックミキサ、単軸スクリューおよび2軸スクリュー押出機、Braebender(登録商標)ミキサ、その他の強力ミキサなどが挙げられる。
【0083】
有利には、溶融混合物(M)を冷却して一般的にはペレットまたはスラブ形態の固体混合物(M)を得る。
【0084】
有利には、固体混合物(M)を微粉砕または摩砕(milled or ground)して、ポリマー(F)および(ペル)フルオロポリエーテル(E)を含む粉体状混合物(M)を得る。
【0085】
標準的な微粉砕装置、たとえば主として、ボールミル、ディスクパルベライザー、ローターミル、カッティングミル、クロスビーターミルなどを使用することができる。特に有用であることが見出された装置は、変速ローターミル、たとえば、Fritsch Pulverisette14として市販されているものである。
【0086】
「粉体状混合物(M)」という用語は、その混合物(M)が、微細に分散された固体粒子の形態をとっていて、有利な自由流動性を有していることを意味しているものと理解されたい。
【0087】
粉体状混合物(M)の粒子では、少なくとも50重量%が1000μm未満の粒径を有しているのが有利である。
粉体状混合物(M)の粒子では、少なくとも好ましくは80重量%、より好ましくは90重量%が1000μm未満の粒径を有している。
【0088】
その粉体状混合物(M)は、フルオロエラストマー(A)のための加工助剤としては特に有利であるが、その理由は、それが非粘着性の物質として提供されるためであって、それにより取扱いが容易となって、前記フルオロエラストマー(A)の中に組み込むことができるからである。具体的には、ポリマー(F)と(ペル)フルオロポリエーテル(E)とを予備混合することによって、この後者の成分の取扱いを顕著に改良することができるが、その理由は、(ペル)フルオロポリエーテル(E)は一般的には、粘稠な液状または低融点のワックスの形態で入手可能であり、その形態は典型的には標準的なゴム混合装置の中での取扱い、計量、およびフルオロエラストマー(A)の中への取り込みが困難であるからである。
【0089】
さらに、フルオロエラストマー(A)の中に粉体状混合物(M)を組み入れることによって、その2種の成分を別途に添加することに比して、離型挙動がさらに改良されることが判明した。
【0090】
典型的には、その粉体状混合物(M)には(ペル)フルオロポリエーテル(E)を、有利には1〜70重量%、好ましくは3〜50重量%、より好ましくは5〜25重量%の量で含む。
【0091】
上述のような組成限界とすることで、改良された自由流動性を有する粉体状混合物(M)を得ることが可能となる。
【0092】
粉体状混合物(M)は、有利には0.1g/cc〜1.3g/cc、好ましくは0.4g/cc〜1.0g/ccの間の見かけ密度を有する。
【0093】
粉体状混合物(M)が、本発明のもう1つの目的である。
【0094】
フルオロエラストマー組成物がポリマー(T)をさらに含む場合、前記ポリマー(T)は一般的に、ラテックスの形態のもとにフルオロエラストマー(A)のラテックスと所望の重量比で混合され、次いで、その混合物を、米国特許第6,395,834号明細書および米国特許第6,310,142号明細書に記載されているようにして共凝集化させ、さらにポリマー(F)と、そして場合によっては(ペル)フルオロポリエーテル(E)と共に混合する。
【0095】
別な方法として、ポリマー(T)のラテックスの存在下にシード重合によってフルオロエラストマー(A)を製造して、ポリマー(T)のコアとフルオロエラストマー(A)のシェルとを含むコア−シェル構造とし、次いでそれを、ポリマー(F)および場合によっては(ペル)フルオロポリエーテル(E)と共にさらに混合することができる。
【0096】
最後に、本発明は、本発明のフルオロエラストマー組成物から得られる硬化物品にも関する。物品は、とりわけ、イオン硬化、ペルオキシド硬化および/または混合硬化の手段により、本発明のフルオロエラストマー組成物から得ることができる。
【0097】
本発明のフルオロエラストマー組成物をペルオキシド経路で硬化させる場合には、フルオロエラストマー(A)には、高分子鎖中および/またはその末端に、ヨウ素および/または臭素原子を含んでいるのが好ましい。以下のようにしてそれらのヨウ素および/または臭素原子を導入するのがよい:
− フルオロエラストマー(A)の製造の際に、重合媒体に対して、臭素化および/またはヨウ素化硬化サイトコモノマー、たとえば2〜10個の炭素原子を含むブロモオレフィンおよび/またはヨードオレフィン(たとえば、米国特許第4 035 565号明細書および米国特許第4 694 045号明細書に記載されているようなもの)、またはヨードおよび/またはブロモフルオロアルキルビニルエーテル(たとえば、米国特許第4 745 165号明細書、米国特許第4 564 662号明細書、および欧州特許第199 138号明細書に記載されているようなもの)を、フルオロエラストマー(A)中の硬化サイトコモノマーの濃度が一般的に、その他のベースモノマー単位100molあたり0.05mol〜2molとなるような量で添加する方法;または、
− フルオロエラストマー(A)の製造の際に、ヨウ素化および/または臭素化連鎖移動剤、たとえば、式R(I)(Br)の化合物[式中、Rは、1〜8個の炭素原子を含む(ペル)フルオロアルキルまたは(ペル)フルオロクロロアルキルであるのに対して、xおよびyは、0〜2の間の整数であって、1≦x+y≦2である](たとえば、米国特許第4 243 770号明細書および米国特許第4 943 622号明細書参照)、またはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のヨウ素化物および/または臭素化物(たとえば、米国特許第5 173 553号明細書に記載されているようなもの)を重合媒体に添加する方法。
【0098】
ペルオキシド硬化は、熱分解によってラジカルを発生させることが可能な適切なペルオキシドを添加することによる、公知の技術に従って実施する。一般的に最もよく使用される反応剤の中から、次のものを挙げることができる:ジアルキルペルオキシド、たとえばジ−tert−ブチルペルオキシドおよび2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン;ジクミルペルオキシド;ジベンゾイルペルオキシド;ジ−tert−ブチルペルベンゾエート;ビス[1,3−ジメチル−3−(tert−ブチルペルオキシ)ブチル]カーボネート。その他の適切なペルオキシド系としては、とりわけ、以下の特許出願に記載のものが挙げられる:欧州特許第136 596号明細書および欧州特許第410 351号明細書。
【0099】
ペルオキシド経由で硬化させる場合に本発明の組成物を含む硬化可能な化合物に一般的に添加されるその他の成分としては、以下のものが挙げられる:
(a)ポリマーに対して、一般的には0.5重量%〜10重量%の間、好ましくは1重量%〜7重量%の間の量の、共硬化剤であって、一般的には以下のものが使用される:トリアリルシアヌレート;トリアリルイソシアヌレート(TAIC);トリス(ジアリルアミン)−s−トリアジン;トリアリルホスファイト;N,N−ジアリルアクリルアミド;N,N,N’,N’−テトラアリルマロンアミド;トリビニルイソシアヌレート;2,4,6−トリビニルメチルトリシロキサン;とりわけ欧州特許出願第769 520号明細書に記載のビス−オレフィン類;欧州特許出願第860 436号明細書および国際公開第97/05122号パンフレットに記載のトリアジン類;TAICが特に好ましい;
(b)場合によっては、ポリマーの重量に対して1重量%〜15重量%の間、好ましくは2重量%〜10重量%の間の量の、2価の金属たとえば、Mg、Zn、CaまたはPbの酸化物または水酸化物、場合によっては、弱酸の塩と組み合わせた、たとえば、Ba、Na、K、Pb、Caのステアリン酸塩、安息香酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩または亜リン酸塩から選択される金属化合物;
(c)場合によっては、金属非酸化物タイプの酸受容体、たとえば欧州特許第708 797号明細書に記載されているような1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン、オクタデシルアミンなど;
(d)その他の慣用される添加剤、たとえば充填剤、増粘剤、顔料、抗酸化剤、安定剤など。
【0100】
そのフルオロエラストマー(A)が、シアニド基を含む繰り返し単位を含んでいるような場合には、それらの組成物の硬化では、架橋剤として、とりわけ米国特許第4 394 489号明細書、米国特許第5 767 204号明細書、および米国特許第5 789 509号明細書の特許に記載されているような、有機スズ化合物またはビ芳香族アミン化合物を好適に使用することもできる。フルオロエラストマー(A)がさらにヨウ素原子または臭素原子を、好ましくは末端位に含んでいるような場合には、米国特許第5 447 993号明細書に記載されているように、このタイプの硬化系をペルオキシドタイプの硬化系と組み合わせてもよい。
【0101】
当業者には周知であるが、硬化剤および加硫促進剤を添加することによって、イオン硬化を実施することもできる。加硫促進剤の量は、0.05〜5phrの間、そして硬化剤は、0.5〜15phr、好ましくは1〜6phrの間である。
【0102】
たとえば欧州特許第335 705号明細書および米国特許第4 233 427号明細書に記載されているように、芳香族もしくは脂肪族の多価アルコール化化合物またはそれらの誘導体を、硬化剤として使用してもよい。それらの中でも、特に以下のものが挙げられる:ジヒドロキシ、トリヒドロキシおよびテトラヒドロキシ化されたベンゼン、ナフタレンもしくはアントラセン;2個の芳香環が、脂肪族、脂環族もしくは芳香族2価ラジカルを介するか、または酸素原子もしくは硫黄原子を介するか、もしくはカルボニル基を介して相互に結合されているビスフェノール。それらの芳香環は、1個または複数の塩素原子、フッ素原子もしくは臭素原子を用いるか、またはカルボニル基、アルキル基もしくはアシル基を用いて置換されていてもよい。ビスフェノールAFが特に好ましい。
【0103】
使用することが可能な加硫促進剤の例としては以下のものが挙げられる:四級アンモニウム塩もしくはホスホニウム塩(たとえば、欧州特許第335 705号明細書および米国特許第3 876 654号明細書を参照);アミノホスホニウム塩(たとえば、米国特許第4 259 463号明細書を参照);ホスホラン(たとえば、米国特許第3 752 787号明細書を参照);欧州特許第182 299号明細書および欧州特許第120 462号明細書などに記載のイミン化合物。四級ホスホニウム塩およびアミノホスホニウム塩が好ましい。
【0104】
加硫促進剤と硬化剤とを別個に使用する代わりに、(1:2)から(1:5)まで、好ましくは(1:3)から(1:5)までのモル比の加硫促進剤と硬化剤で作ったアダクトを使用することも可能であるが、その加硫促進剤は、先に定義されたような、陽電荷を有する有機オニウム化合物の一つであり、その硬化剤は、先に示した化合物、特にジヒドロキシもしくはポリヒドロキシ化合物またはジチオールもしくはポリチオール化合物から選択され;そのアダクトは、所定のモル比での加硫促進剤と硬化剤との反応生成物を溶融させるか、または(1:1)アダクトに所定の量の硬化剤を追加した混合物を溶融させることによって得られる。場合によっては、そのアダクトに含まれているものに対して過剰の加硫促進剤を存在させてもよい。
【0105】
アダクトを調製するためのカチオンとしては以下のものが特に好ましい:1,1−ジフェニル−1−ベンジル−N−ジエチルホスホランアミンおよびテトラブチルホスホニウム;特に好ましいアニオンは、その中で2個の芳香環が3〜7個の炭素原子のペルフルオロアルキル基から選択される2価の基を介して結合され、OH基がパラ位に存在しているビスフェノール化合物である。
【0106】
アダクトの調製法については、本出願人の名前による欧州特許出願第684 277号明細書の中に記載されている(ここに引用することにより、その特許のすべてを本明細書にも取り入れたものとする)。
【0107】
イオン経由で硬化させる場合に本発明の組成物を含む硬化可能な化合物に一般的に添加されるその他の成分としては、以下のものが挙げられる:
i)フルオロエラストマーコポリマー100部あたり1〜40部の量の、フッ化ビニリデンコポリマーのイオン硬化において公知のものから選択される1種または複数の鉱酸の加硫促進剤;
ii)フルオロエラストマーコポリマー100部あたり0.5〜10部の量の、フッ化ビニリデンコポリマーのイオン硬化において公知のものから選択される1種または複数の塩基化合物。
【0108】
ii)のところに記載した塩基性化合物は、一般的には、Ca(OH)、Sr(OH)、Ba(OH)、弱酸の金属塩たとえばCa、Sr、Ba、NaおよびKの炭酸塩、安息香酸塩、シュウ酸塩および亜リン酸塩、ならびに上述の水酸化物と上述の金属塩との混合物からなる群より選択される;タイプi)の中では、MgOを挙げることができる。
【0109】
上述の混合物の量は、100phrのフルオロエラストマー(A)に対するものである。
【0110】
次いで、その他の慣用される添加剤、たとえば充填剤、増粘剤、顔料、抗酸化剤、安定剤などを、その硬化混合物にさらに添加してもよい。
【0111】
本発明のフルオロエラストマー組成物はさらに、2種のタイプの硬化を組み合わせた複合経路を介して硬化させてもよい。
【0112】
ここで、以下の実施例を参照しながら本発明をさらに詳しく説明するが、その目的は単に説明のためであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【0113】
〔粗原料〕
【0114】
TECNOFLON(登録商標)FOR X8000 ZPC(以下においては、A−1と記す)は、硬化剤入りのVDF/HFPコポリマー(VDF/HFP=78.5/21.5(mol/mol))で、ビスフェノールAFおよび1,1−ジフェニル−1−ベンジル−N−ジエチルホスホランアミン塩化物を含み、Solvay Solexis S.p.A.から入手可能である。
【0115】
TECNOFLON(登録商標)FOR 4391(以下においては、A−2と記す)は、70重量%のフッ素含量を有する硬化剤入りのVF/HFP/TFEフルオロエラストマーであって、ビスフェノールAFおよび1,1−ジフェニル−1−ベンジル−N−ジエチルホスホランアミン塩化物を含み、Solvay Solexis S.p.A.から市販されている。
【0116】
MAGLITE(登録商標)DE MgOは、酸化マグネシウムであって、CPH Solutions Corpから市販されている。
【0117】
RHENOFIT(登録商標)CFは、市販のCa(OH)である。
【0118】
BLANC FIXE(登録商標)BaSOは、Solvay Bario e Derivati S.p.A.からの市販品である。
【0119】
TREMIN(登録商標)283 600 ESTは、市販のエポキシシラン変性ウォラストナイトである。
【0120】
FOMBLIN(登録商標)Z−DOL PFPE(以下においては、PFPE−1と記す)は、次式に従うペルフルオロポリエーテルであり、
HO−CHCFO−(CFO)(CFCFO)−CFCH−OH
[式中、p/qは約1であり、pとqで、数平均分子量が2000になるようになっている]、Solvay Solexis S.p.A.から市販されている。
【0121】
FLUOROLINK(登録商標)A−10 PFPE(以下においては、PFPE−2と記す)は、次式に従うペルフルオロポリエーテルであり、
【化6】

[式中、PFPEは、−CFO−(CFO)(CFCFO)−CF−鎖を表し、ここで、p/qは約1であり、pとqで、数平均分子量が約1800になるようになっている]、Solvay Solexis S.p.A.から市販されている。
【0122】
HYFLON(登録商標)MFA 982(以下においては、MFAと記す)は、305〜309℃の融点を有するMVE/TFEコポリマー(2/98(mol/mol))であり、Solvay Solexis S.p.A.から市販されている。
【0123】
〔硬化サンプルについての、機械的性能およびシーリング性能の測定〕
【0124】
13×13×2mmのプラックおよびOリング(サイズ:クラス214)を加圧モールド中で硬化させてから、空気循環オーブン中、実施例に記載の条件(時間、温度)で後処理した。
【0125】
引張性能は、プラックから切り抜いた試験片について、ASTM D412法の試験法Cに従って試験した。
M100%は、伸び100%における引張強さ(単位、MPa)であり、
T.S.は、引張強さ(単位、MPa)であり、
E.B.は、破断時伸び(単位、%)である。
ショアーA硬度(3”)は、ASTM D2240法に従って積重ねた3枚のプラックについて求めた。
【0126】
圧縮永久歪みは、ASTM D329法に従ってOリング(クラス214)について求めた。
【実施例】
【0127】
実施例1
実施例1a)
ペル(ハロ)フルオロポリマーの調製(ポリマーF1)
500rpmで使用される撹拌機を備えた22LのAISI316オートクレーブを排気し、14.5Lの脱イオン水および127gの、以下のものから形成されるマイクロエマルションを前記オートクレーブの中に導入した。
20重量%の、次式を有するGALDEN(登録商標)D02:
CFO−(CFCF(CF)O)(CFO)−CF
[式中、m/n=20、平均分子量、450];
30重量%の、次式を有する界面活性剤:
Cl−(CO)−(CFCF(CF)O)m1−(CF(CF)O)−(CFO)n1−CFCOO−NH
[式中、n1=1.0%m1、q=9.1%m1、平均分子量、550];その残りはHO。そのオートクレーブを排気してから、加熱して反応温度75℃とした。次いで、連鎖移動剤としてのエタンを2.0バールの差圧で仕込み、ペルフルオロメチルビニルエーテル(MVE)を6.3バールの差圧で仕込み、その後で、13モル%のMVEを含むテトラフルオロエチレン(TFE)/MVE混合物を供給して、反応圧力の設定値、21絶対バールに達するようにした。315mLの過硫酸アンモニウム(APS)溶液を導入することによって重合を開始させたが、その溶液は、1リットルの脱イオン水中に14.5gのAPSを溶解させることによって得た。上述の13モル%のMVEを含むモノマー混合物TFE/MVEを供給することによって、その反応圧力を一定に保った。290分間反応させてから、重合を停止させ、反応器を冷却して室温とし、残っている圧力を抜いた。329(gポリマー)/(kgラテックス)を含むラテックスを抜き出し、HNOを用いて凝集させ、次いでそのポリマーを分離し、脱イオン水を用いて洗浄し、オーブン中120℃で約16時間かけて乾燥させた。そのようにして得られた粉末は、280℃、剪断速度1 rad×sec−1で5Pa×sの動的粘度と、205.9℃のTm2と、ΔH2f=6.279J/gと、40.6℃のTを有し、13モル%のMVEと87モル%のTFEからなっていることが見出された。
【0128】
実施例1b)フルオロエラストマーのペル(ハロ)フルオロポリマーとのブレンド
TECNOFLON(登録商標)FOR X8000 ZPCを、3phrの上で説明したようにして得られた粉体(ポリマーF−1)、ならびに以下の表2に示すその他の成分と共にコンパウンディングした。
そのようにして得られた組成物について、そのムーニー粘度、ならびに200℃で4分間の硬化と250℃で2時間の後硬化とを行った後の、機械的性能およびシーリング性能についての試験を行った。結果を表2にまとめた。
【0129】
実施例1c)射出成形試験
実施例1b)からの硬化可能な組成物を、OリングAS568A−014モールドを使用し、中央射出点を有し、6個のランナーと54個のダイのためのクラスター構成を備えた、RUTIL TECHNOSTAR(登録商標)90/12垂直射出成形機の中で加工した。
【0130】
加工条件における離型性および金型汚れ性を、先の説明に従って評価した。結果を表2にまとめた。
【0131】
実施例2
実施例2a)
実施例1a)の説明に従って得られたポリマー(ポリマーF−1)を、FOMBLIN(登録商標)Z−DOL(PFPE−1)と共に強力ブレンダーの中でドライミキシングし、最終直径が18mmで、180〜200℃の温度プロファイルを有するBraebender(登録商標)コニカル2軸スクリューHastelloy C−276押出機の中で溶融押出しを行った。得られたストランドを切断してペレットとし、前記のものを、FRITCH pulverisette14ローターミルの中で摩砕して、下記の表1に略記される篩別粒径分布を有し、見かけ密度が0.844g/ccの自由流動性の粉体状混合物(F−1/PFPE−1、88/12(wt/wt))を得た。
【0132】
【表1】

【0133】
実施例2b)および2c)
実施例1b)および1c)に説明したのと同じ手順を繰り返したが、ただし実施例1a)のポリマーF−1の粉体に代えて、実施例2a)の粉体状混合物を使用した。結果を表2にまとめた。
【0134】
例3(比較例)
実施例1b)および1c)に説明したのと同じ手順を繰り返したが、ただしペル(ハロ)フルオロポリマーは一切使用せず、そのため、ペル(ハロ)フルオロポリマーを含まないフルオロエラストマー組成物が得られ、硬化させ、加工した。結果を表2で説明する。
【0135】
例4(比較例)
実施例1b)および1c)に説明したのと同じ手順を繰り返したが、ただし実施例1a)からのポリマーF−1に代えて、HYFLON(登録商標)MFA 982を使用した。結果を表2で説明する。
【0136】
例5(比較例)
実施例1b)および1c)に説明したのと同じ手順を繰り返したが、ただしペル(ハロ)フルオロポリマーは添加せずに、PFPE−2およびカルナウバワックスを含む従来からの加工助剤の組合せを用いて、フルオロエラストマーをコンパウンディングした。結果を表3で説明する。
【0137】
実施例6
実施例2と同様の手順を繰り返したが、ただしフルオロエラストマーA−1を、予め形成しておいたF−1とPFPE−1との粉体状混合物ではなく、2.55phrの実施例1a)からのポリマーF−1および0.45phrのPFPE−1とコンパウンディングした。結果を表3で説明する。
【0138】
実施例7
実施例1と同様の手順を繰り返したが、ただし13phrの実施例1a)からのポリマーF−1を使用した。結果を表3で説明する。
【0139】
実施例8
実施例2と同じ手順を繰り返し、実施例2a)と同様ではあるが、ただし以下の組成:F−1/PFPE−1、80/20(wt/wt)を有する粉体状混合物を調製した。結果を表3で説明する。
【0140】
【表2】

【0141】
【表3】

【0142】
驚くべきことには、とりわけ表2および3のデータからは、ポリマー(F)および(ペル)フルオロポリエーテル(E)の混合物を粉体状混合物(M)の形態で添加することが、離型性がさらに改良され(実施例2および8を実施例6と比較されたい)、シーリング性(C−セット)には実質的に変化がないために、特に有利であるということが判明したが、ここで、離型性の3(良好)から4(極めて良好)への改良が、それに対応する加工処理量における改良が極めて価値が高いために、顕著に重要であるということは理解されたい。
【0143】
実施例9
実施例1b)の手順を繰り返したが、ただしフルオロエラストマーA−1に代えてフルオロエラストマーA−2を使用した。
【0144】
100部のフルオロエラストマーA−2を、3.0phrのMAGLITE(登録商標)MgO、6.0phrのCa(OH)、40phrのTREMIN(登録商標)283 600 EST、20phrのBLANC FIXE(登録商標)および2phrのCr、ならびに3phrのポリマーF−1とコンパウンディングした。
【0145】
そのようにして得られた組成物について、そのムーニー粘度、ならびに170℃で5分間の硬化と250℃で(8+16)時間の後硬化とを行った後の、機械的性能およびシーリング性能についての試験を行った。
【0146】
結果を次の表4にまとめた。
【0147】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロエラストマー組成物であって、
− 少なくとも1種のフルオロエラストマー[フルオロエラストマー(A)];
− (フルオロエラストマー(A)に対して)0.1〜25phrの、高くとも250℃の融点を有する少なくとも1種の溶融加工可能なペル(ハロ)フルオロポリマー[ポリマー(F)];
− 場合によっては、少なくとも1種の(ペル)フルオロポリエーテル[(ペル)フルオロポリエーテル(E)]、
を含むフルオロエラストマー組成物。
【請求項2】
前記フルオロエラストマー(A)が、
(1)フッ化ビニリデン(VDF)をベースとするコポリマー[ここでVDFは、以下の種類から選択される少なくとも1種のコモノマーと共重合されている]:
(a)C〜Cペルフルオロオレフィン、たとえば、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ヘキサフルオロイソブチレン;
(b)水素含有C〜Cオレフィン、たとえば、フッ化ビニル(VF)、トリフルオロエチレン(TrFE)、式CH=CH−Rのペルフルオロアルキルエチレン[式中、RはC〜Cペルフルオロアルキル基である];
(c)C〜Cクロロ−および/またはブロモ−および/またはヨード−フルオロオレフィン、たとえば、クロロトリフルオロエチレン(CTFE);
(d)式CF=CFORの(ペル)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)[式中、Rは、C〜C(ペル)フルオロアルキル基、たとえば、CF、C、Cである];
(e)式CF=CFOXの(ペル)フルオロ−オキシ−アルキルビニルエーテル[式中、Xは、カテナリー酸素原子を含むC〜C12((ペル)フルオロ)−オキシアルキル、たとえば、ペルフルオロ−2−プロポキシプロピル基である];
(f)次式の(ペル)フルオロジオキソール:
【化1】

[式中、Rf3、Rf4、Rf5、Rf6は、互いに同じであっても異なっていてもよく、独立して、フッ素原子、および場合によっては1個または2個以上の酸素原子を含むC〜C(ペル)フルオロアルキル基、たとえばとりわけ、−CF、−C、−C、−OCF、−OCFCFOCFの中から選択される];好ましくは、ペルフルオロジオキソール;
(g)次式を有する、(ペル)フルオロ−メトキシ−ビニルエーテル(以後、MOVEと呼ぶ):
CFX=CXOCFOR”
[式中、R”は、直鎖状もしくは分岐状のC〜C(ペル)フルオロアルキル;C〜C環状(ペル)フルオロアルキル;および1〜3個のカテナリー酸素原子を含む、直鎖状もしくは分岐状のC〜C(ペル)フルオロオキシアルキルから選択され、ならびにX=F、Hであるが;好ましくはXがFであり、R”が、−CFCF(MOVE1);−CFCFOCF(MOVE2);または−CF(MOVE3)である];
(h)C〜C非フッ素化オレフィン(Ol)、たとえば、エチレンおよびプロピレン;ならびに
(2)TFEをベースとするコポリマー[ここで、TFEは、上述の種類(c)、(d)、(e)、(g)、(h)、および以下のものから選択される少なくとも1種のコモノマーと共重合されている]:
(i)シアニド基を含むペルフルオロビニルエーテル、
から選択される請求項1に記載のフルオロエラストマー組成物。
【請求項3】
前記フルオロエラストマー(A)が、以下の組成物:
(i)フッ化ビニリデン(VDF)35〜85%、ヘキサフルオロプロペン(HFP)10〜45%、テトラフルオロエチレン(TFE)0〜30%、ペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)0〜15%;
(ii)フッ化ビニリデン(VDF)50〜80%、ペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)5〜50%、テトラフルオロエチレン(TFE)0〜20%;
(iii)フッ化ビニリデン(VDF)20〜30%、C〜C非フッ素化オレフィン(Ol)10〜30%、ヘキサフルオロプロペン(HFP)および/またはペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)18〜27%、テトラフルオロエチレン(TFE)10〜30%;
(iv)テトラフルオロエチレン(TFE)50〜80%、ペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)20〜50%;
(v)テトラフルオロエチレン(TFE)45〜65%、C〜C非フッ素化オレフィン(Ol)20〜55%、フッ化ビニリデン0〜30%;
(vi)テトラフルオロエチレン(TFE)32〜60%、C〜C非フッ素化オレフィン(Ol)10〜40%、ペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)20〜40%、フルオロビニルエーテル(MOVE)0〜30%;
(vii)テトラフルオロエチレン(TFE)33〜75%、ペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)15〜45%、フッ化ビニリデン(VDF)5〜30%、ヘキサフルオロプロペン(HFP)0〜30%;
(viii)フッ化ビニリデン(VDF)35〜85%、フルオロビニルエーテル(MOVE)5〜40%、ペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)0〜30%、テトラフルオロエチレン(TFE)0〜40%、ヘキサフルオロプロペン(HFP)0〜30%;
(ix)テトラフルオロエチレン(TFE)20〜70%、フルオロビニルエーテル(MOVE)30〜80%、ペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)0〜50%、
のうちの一つである(単位、モル%)、請求項2に記載のフルオロエラストマー組成物。
【請求項4】
前記ポリマー(F)が、少なくとも1種の、式CF=CFORf1’[式中、Rf1’は、C〜Cペルフルオロアルキルである]に従うペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)から誘導される繰返し単位を含むTFEコポリマーから選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載のフルオロエラストマー組成物。
【請求項5】
前記ポリマー(F)が、
− 3〜25モル%、好ましくは5〜20モル%、より好ましくは8〜18モル%、さらにより好ましくは10〜15モル%のペルフルオロメチルビニルエーテル(MVE)から誘導される繰返し単位;および
− 97〜75モル%、好ましくは95〜80モル%、より好ましくは92〜82モル%、さらにより好ましくは90〜85モル%のTFEから誘導される繰返し単位、
から実質的になるTFE/MVEコポリマーである、請求項4に記載のフルオロエラストマー組成物。
【請求項6】
前記組成物が、0.02〜7phrの(ペル)フルオロポリエーテル(E)を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のフルオロエラストマー組成物。
【請求項7】
前記(ペル)フルオロポリエーテル(E)が、
(a)HO−CHCFO(CFO)n’(CFCFO)m’CFCH−OH[式中、m’およびn’は整数であるが、m’/n’の比は一般的に0.1〜10の間、好ましくは0.2〜5の間の範囲である];
(b)HO(CHCHO)CHCFO(CFO)n’(CFCFO)m’CFCH(OCHCHOH[式中、m’およびn’は整数であるが、m’/n’の比は一般的に0.1〜10の間、好ましくは0.2〜5の間であり、nは1〜3の範囲である];
(c)HCFO(CFO)n’(CFCFO)m’CFH[式中、m’およびn’は整数であるが、m’/n’の比は一般的に0.1〜10の間、好ましくは0.2〜5の間の範囲である];
(d)FCFO(CFO)n’(CFCFO)m’CFF[式中、m’およびn’は整数であるが、m’/n’の比は一般的に0.1〜10の間、好ましくは0.2〜5の間の範囲である]、
からなる群から選択される、請求項6に記載のフルオロエラストマー組成物。
【請求項8】
ポリマー(F)とは異なるさらなる半晶質の(ペル)フルオロポリマー[ポリマー(T)]を、前記フルオロエラストマー(A)に対して、一般的には0〜70phr、好ましくは2〜40phrの量でさらに含み、前記ポリマー(T)が、
− テトラフルオロエチレン(TFE)ホモポリマー、および0.01mole%〜10mole%、好ましくは0.05mole%〜7mole%の量の、エチレンタイプの少なくとも1個の不飽和を含む1種または複数のモノマーとのTFEコポリマー(前記TFEホモポリマーおよびコポリマーは250℃を超える融点を有する);
− フッ化ビニリデン(VDF)ホモポリマー、および0.01mole%〜30mole%の量の、エチレンタイプの少なくとも1個の不飽和を含む1種または複数のモノマーとのVDFコポリマー、
から選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載のフルオロエラストマー組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のフルオロエラストマー組成物を製造するための方法であって、
前記フルオロエラストマー(A)の中に、所望量のポリマー(F)、および場合によっては(ペル)フルオロポリエーテル(E)を組み込むことを含む、方法。
【請求項10】
前記(ペル)フルオロポリエーテル(E)を含むフルオロエラストマー組成物を製造するための、請求項9に記載の方法であって、
前記ポリマー(F)と前記(ペル)フルオロエーテル(E)とを最初に混合して加工助剤混合物[混合物(M)]を得てから、次いで前記混合物(M)を前記フルオロエラストマー(A)の中に組み込むことを含む、方法。
【請求項11】
前記ポリマー(F)および前記(ペル)フルオロポリエーテル(E)を溶融コンパウンディングすることによって混合して溶融混合物(M)とし、前記溶融混合物(M)を冷却してペレットまたはスラブの形態の固体混合物(M)とし、そして前記固体混合物(M)を微粉砕または摩砕して、ポリマー(F)および(ペル)フルオロポリエーテル(E)を含む粉体状混合物(M)を得る、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
溶融コンパウンディングによってポリマー(F)と(ペル)フルオロポリエーテル(E)とを混合して溶融混合物(M)とし、前記溶融混合物(M)を冷却してペレットまたはスラブの形態の固体混合物(M)とし、そして前記固体混合物(M)を微粉砕または摩砕することにより得られる、ポリマー(F)および(ペル)フルオロポリエーテル(E)を含む粉体状混合物(M)。
【請求項13】
前記粉体状混合物(M)が、0.1g/cc〜1.3g/cc、好ましくは0.4g/cc〜1.0g/ccの間の見かけ密度を有する、請求項12に記載の粉体状混合物(M)。
【請求項14】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のフルオロエラストマー組成物から得られる、硬化物品。

【公表番号】特表2011−504955(P2011−504955A)
【公表日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−535389(P2010−535389)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【国際出願番号】PCT/EP2008/066393
【国際公開番号】WO2009/068635
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(508305960)ソルヴェイ・ソレクシス・エッセ・ピ・ア (53)
【Fターム(参考)】