説明

フルオロポリマー多層物品

部分的にフッ素化された又はペルフルオロ化されたフルオロプラスチック層、グリシジル官能基を有する少なくとも1種のモノマーから誘導されるインターポリマー化単位を含むコポリマーを含む層、及び基材を有する多層物品が提供される。第2層が第1層と基材層との間に配置され、かつ第1層と基材層とを接着結合させる。所望により、ペルフルオロプラスチックを含む第3層が提供され、第1層が、第2層と第3層との間に配置され、かつ第2層を第3層に接着結合させる。多層物品の製造方法及び多層物品の使用方法もまた提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フルオロポリマー組成物を含む多層物品に関する。本開示は、具体的には、グリシジル官能基を有するフルオロポリマー組成物を含む多層物品に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロポリマーを他の材料に結合させることが、困難な場合がある。このような結合は、典型的には、強塩基、アミン又は還元剤の組み合わせを必要とする。フルオロポリマーを他の材料に結合させることは更に、典型的には、追加の配合工程又は原樹脂の物理的性質にマイナスの影響を与える結合剤(若しくは他の化学物質)の使用を必要とする。本開示は、他の材料に対して良好な結合を示すフルオロポリマー組成物を提供するが、これは、高密度ポリエチレン(HDPE)管類、多層フィルム及び良好な層間結合にて作製する必要があるその他物品などの多層物品の形成において有用であり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の記載は、少なくとも200℃以上、210℃以上、あるいは220℃以上の、示差走査熱量計(DSC)によって測定された融点を有する部分的フッ素化フルオロプラスチックを含む第1層、及びグリシジル官能基を有する少なくとも1種のモノマーから誘導されるインターポリマー化単位からなるコポリマーを有する第2層であって、硬化剤を実質的に含まない第2層を有する多層物品に関する。更に、前記多層物品は、1つの基材層を含み、そこで、第2層が第1層と基材層の間に配置され、かつこの第2層が前記第1層と基材層とを接着結合させる。
【0004】
別の態様では、本発明の記載は、部分的フッ素化フルオロプラスチックを有する第1層及びグリシジル官能基を有する少なくとも1種のモノマーから誘導されるインターポリマー化単位からなるコポリマーを有する第2層を含む多層物品に関し、ここで、官能性モノマーは、ポリマーの2重量%未満で存在し、当該第2層が硬化剤を実質的に含まない。更に、前記多層物品は、1つの基材層を含む。ここで、第2層は、第1層と基材層の間に配置され、かつ第2層は前記第1層と基材層とを接着結合させる。
【0005】
更に別の態様では、本発明の記載は、ペルフルオロプラスチックを有する第1層を含む多層物品に関する。多層物品は更に、グリシジル官能基を有する少なくとも1種のモノマーから誘導されるインターポリマー化単位を含むコポリマーを有する第2中間接着層を含む。更に、多層物品は基材層を含み、第2層は第1層と基材との間に配置され、かつこの第2層は第1層及び基材層を接着結合させる。
【0006】
更に別の態様では、本発明の記載は、ペルフルオロプラスチックを有する任意の第3層もまた提供するが、ここで、第1層が第2層と第3層との間に配置されかつ第2層を第3層へと接着結合させる。
【0007】
幾つかの実施形態で、フルオロポリマーを他の材料に結合させる組成物を提供することは、本開示の利点である。本開示の他の特徴及び利点は、以下の「発明を実施するための形態」及び「特許請求の範囲」から明白であろう。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示に従うフルオロプラスチックは、部分的にフッ素化され又はペルフルオロ化されていてよい。このようなフルオロプラスチックは、少なくとも部分的には、1個以上のフッ素原子を含有するモノマーから誘導してよい。特定のモノマーとしては、例えば、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、ペルフルオロ(アルキルビニル)エーテル、ペルフルオロ(アルコキシビニル)エーテル、及びクロロトリフルオロエチレンが挙げられる。フルオロプラスチックは更に、フッ素含有モノマーを、α−オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン)などの非フッ素含有モノマーとインターポリマー化することにより誘導してよい。
【0009】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載されたフルオロプラスチックは、示差走査熱量計(DSC)の測定で、200℃以上、210℃以上、あるいは220℃以上の融点を有し得る。
【0010】
更なる実施形態では、本明細書に記載されたフルオロプラスチックは、エチレン及びテトラフルオロエチレン(ETFE)のコポリマー、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びエチレンのコポリマー(HTE)、テトラフルオロエチレン及びヘキサフルオロプロピレンのコポリマー(FEP)、テトラフルオロエチレン及びペルフルオロ(アルキルビニル)エーテルのコポリマー(PFA)、又は、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、及び所望によりペルフルオロ(アルキルビニル)エーテルのコポリマー(THV)であってよい。用語「コポリマー」を本明細書で使用するとき、例えば、2、3、4、又はそれ以上のモノマーを含む任意の数の各種インターポリマー化モノマー単位を意味する。
【0011】
フルオロプラスチックが、THVフルオロプラスチックである場合、テトラフルオロエチレンの量は変化してよく、例えば、THVフルオロプラスチックの量は、30モル%〜100モル%、40モル%〜100モル%、50モル%〜100モル%、60モル%〜100モル%、あるいは70モル%〜100モル%の範囲であってよい。テトラフルオロエチレンのその他の例示的な量は、85モル%〜0モル%、80モル%〜0モル%、70モル%〜0モル%、60モル%〜0モル%、50モル%〜0モル%、あるいは40モル%〜0モル%の範囲であってもよい。ヘキサフルオロプロピレンの量もまた変化してよく、例えば、ヘキサフルオロプロピレンの量は、3モル%〜100モル%、5モル%〜100モル%、10モル%〜100モル%、あるいは12モル%〜100モル%の範囲であってよい。別の実施例では、ヘキサフルオロプロピレンの量は、20モル%〜0モル%、15モル%〜0モル%、10モル%〜0モル%、あるいは7モル%〜0モル%の範囲であってよい。フッ化ビニリデンの量は、変化し得る。フッ化ビニリデンの例示的な量は、10モル%〜100モル%、15モル%〜100モル%、20モル%〜100モル%、30モル%〜100モル%、あるいは35モル%〜100モル%の範囲であってよい。フッ化ビニリデンのその他の例示的な量は、60モル%〜0モル%、50モル%〜0モル%、35モル%〜0モル%、あるいは20モル%〜0モル%の範囲であってよい。ペルフルオロ(アルキルビニル)エーテルの量は、0モル%〜約5モル%の範囲であってよい。例えば、量は、0モル%〜3モル%、0モル%〜2モル%、あるいは0モル%〜1.5モル%の範囲であってよい。
【0012】
典型的なペルフルオロ熱硬化プラスチックは、主として、テトラフルオロエチレン(TFE)単位、及びペルフルオロ−(n−プロピルビニル)エーテル(PPVE)などのペルフルオロ−(アルキルビニル)エーテル又はヘキサフルオロプロピレン(HFP)などのペルフルオロ化オレフィンにより製造された半結晶性コポリマーである。TFE及びPPVEから製造されたコポリマーは、「PFA」(ダイネオンLLC(Dyneon LLC)(ミネソタ州オークデール))の商標名にて市販されており、TFE及びHFPのコポリマーは、「FEP」(ダイネオンLLC(Dyneon LLC)、(ミネソタ州オークデール))の商標名にて入手可能である。PFAについては、Modern Fluoropolymers,John Wiley & Sons,1997,p.223ff.にて広範囲に記載されており、FEPについては、Kirk−Othmer,Encyclopedia of Chemical Technology,John Wiley & Sons,Fourth Edition,Volume 11(1994),p.644にて広範囲に記載されている。PFA及びFEPなどのコポリマーは、追加のペルフルオロ化コモノマーを含有することもできる。この関連で、用語「ペルフルオロ化熱可塑性プラスチック」は、本発明で使用する場合、樹脂が末端基内を除いて水素を含有しないことを意味する。
【0013】
ラジカル重合が水性又は非水性系内で実施されるかどうかにかかわりなく、PFA及びFEPの両方は、熱的に不安定な末端基を有する。−COOH、−COF、及び−CONHを含む、これらの熱的に不安定な末端基は、赤外線(IR)分析によって検出することができる。不安定末端基は、このような材料の加工に対して、最終製品に気泡形成及び退色などの悪影響を与え得る。
【0014】
フッ素化による不安定末端基の除去は、当該技術分野において公知である。この除去のための特に有用な手段は、米国特許第6,693,164号(ブロング(Blong)ら)に記載されている。末端基の除去は、フルオロポリマーのアグロメレート及びペレット形態にて完了する。フルオロポリマーは、フッ素化中は乾燥させることが好ましい。幾つかの実施形態では、この工程は、基本的に静止したベッドにて生じる。用語「基本的に静止したベッド」を本明細書で使用するとき、アグロメレート及び/又はペレットを保持するための容器並びにアグロメレート及び/又はペレットそれ自体の両方に、フッ素化プロセス中に大きな動きを与えないことを意味する。アグロメレート及び/又はペレットを容器内へ充填し、フッ素含有媒体を容器に加え、接触期間が生じる。フッ素含有ガスなどのフッ素含有媒体を再充填して、新鮮なフッ素含有媒体を使用して、複数サイクルで接触をさせてよい。これは、例えば容器を回転することによって、ポリマーを撹拌又は混転するように容器が設計されている従来のフッ素化法とは対照的である。
【0015】
しかしながら、本開示においては、T型剥離試験を基準にして改良された接着性を得るために、第1層内の不安定末端基が望ましい。本開示の第1層によれば、10個の炭素原子当たり30個超の総不安定末端基(IRによって検出可能)を有するペルフルオロプラスチックが求められており、幾つかの実施形態では、10個の炭素原子当たり60個超、あるいは10個の炭素原子当たり90個超を有するものが求められている。理論に束縛されるものではないが、不安定末端基の数が大きければ、接着性が向上すると考えられている。
【0016】
第1層は、本明細書中に記載されているようなフルオロプラスチックを含んでよい。第1層は、例えば、色素、カーボンブラック、加工助剤などの任意の既知の添加剤を更に含んでよい。第1層は、フルオロプラスチック単体又はフルオロプラスチックブレンドを含んでよい。第1層が部分的フッ素化熱可塑性プラスチックを含む実施形態では、例えば、米国特許公開第2005/0124717号(ジング、ナイヨング(Jing, Naiyong)ら)及び同第2003/0198769号(ジング、ナイヨング(Jing, Naiyong)ら)に記載されているような、部分的フッ素化熱可塑性プラスチック及びペルフルオロプラスチックのブレンドが開示されていると理解されている。
【0017】
本明細書に記載された第2層は、グリシジル官能基を有する少なくとも1種のモノマーから誘導されるインターポリマー化単位を含むコポリマーを含む。幾つかの実施形態では、この第2層は、硬化剤を実質的に含まない場合がある。硬化剤を実質的に含まないとは、グリシジル官能基を有するポリマーを硬化させるには不十分な量を意味する。
【0018】
グリシジル官能基は、様々な方法で架橋することができる。それらは、熱的にホモポリマー化することができ、特にルイス又はブレンステッド酸触媒を使用して行なうことができる。即席触媒に加えて、熱的に又は光化学的に発生可能な酸性潜触媒の多くの例もまた存在する。イミダゾール及び三級アミンは更に、エポキシ樹脂の単独重合を触媒し、これは、求核機構によって行なわれる。
【0019】
グリシジル官能基は、化学量論的硬化剤で硬化することもできる。実施例としては、脂肪族及び芳香族アミン、メルカプタン、フェノール樹脂、カルボン酸、及びそれらの誘導体(特に、無水物)、並びに、グアニジン及びヒドラジンなどの関連材料が挙げられる。アミノシランは、このタイプの硬化剤の一例である。
【0020】
特定の実施形態では、第2層は硬化剤を実質的に含まず、かつ第1層は部分的フッ素化フルオロプラスチックを含む。更なる実施形態では、第1層はペルフルオロ化フルオロプラスチックを含み、かつ第2層は硬化剤を実質的に含んでいなくてもよく又は含んでいてもよい。
【0021】
本明細書に記載されたグリシジル官能基を有する少なくとも1種のモノマーから誘導されるインターポリマー化単位を含むコポリマーは、特に限定されない。このような材料の実施形態としては、グリシジルメタクリレート(GMA)のインターポリマー化単位から誘導されるようなコポリマーが挙げられる。このような実施形態の例としては、例えば、グリシジルメタクリレートとα−オレフィン(エチレン、プロピレンなど)、アルキルアクリレート(アクリル酸メチル、アクリル酸エチルなど)、アルキルメタクリレート(メチルメタクリレート、エチルメタクリレートなど)、及びこれらの組み合わせとのコポリマーが挙げられる。更なる実施形態としては、ポリマー主鎖中に組み込まれた、又は側鎖へグラフト化させたグリシジル官能基(例えば、グリシジルメタクリレートなどのグリシジル含有モノマー)を有するポリマーが挙げられる。
【0022】
本開示は更に、ペルフルオロプラスチックを含む任意の第3層を提供する。本ペルフルオロプラスチックは、10個の炭素原子当たり30個未満の多数の不安定末端基を有し得るが、幾つかの実施形態では、10個の炭素原子当たり5個未満の、そして、幾つかの実施形態では、10個の炭素原子当たり1個未満の不安定末端基を有し得る。この任意の層は、本明細書で開示された第1層とのみ接触し、第1層が第3層と第2層との間にあるようになっている。
【0023】
この任意の第3層が存在し、かつ第1層が部分的フッ素化熱可塑性樹脂である場合、当該第1層と当該第3層との間にボンディング界面がある。この接着層は、米国特許公開第2003/0198770号(フクシ、タツオ(Fukushi, Tatsuo)ら)にて記載されているように、第1層の組成物を有する第1材料及び第3層の組成物を有する第2材料を含む。部分的フッ素化熱可塑性プラスチック及びペルフルオロプラスチックのブレンドが、例えば、米国特許公開第2005/0124717号(ジング、ナイヨング(Jing, Naiyong)ら)及び同第2003/0198769号(ジング、ナイヨング(Jing, Naiyong)ら)に記載されているように、第1層を含んでよく、第3層がペルフルオロプラスチックを含むと更に理解される。この任意の第3層が存在し、かつ第1層もまたペルフルオロプラスチックである場合、第3層(layer third)のペルフルオロプラスチックは、第1層のペルフルオロプラスチックと同一又は異なり得ると理解されている。
【0024】
このように、本発明の記載は、フルオロポリマー、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート及びGMAコモノマーを有するポリスルホン系ポリマー材料へ結合するための機構を提供する。更に、それらの金属及びガラスに対する接着性ゆえに、適切な熱安定性を備えたグリシジル官能性ポリマーを、例えば、調理器具、化学処理装置などに使用する金属又はガラス基材へとフルオロポリマー粉末を結合させるために使用してよい。本発明の記載に従って製造可能な物品としては、フィルム、チューブ、中空成形品、及び添加剤粉末が挙げられる。
【0025】
本明細書に記載された多層物品は、例えば、そこへそれらを使用してよい最終用途に応じて、任意数の構造へと成形することができる。例えば、多層物品としては、シート、ホース、又は任意のその他の成形、吹き付け、若しくは押出加工形状を挙げてもよい。多層物品は、任意の厚みを有する層、及び任意の全厚を有することができる。例えば、全厚は、70マイクロメートル〜5000マイクロメートルであり得る。
【0026】
本明細書に記載された多層物品の各層の厚みに特に制限はない。幾つかの実施形態では、第1層は、例えば約10〜1000マイクロメートル厚であってよく、幾つかの実施形態では、10〜500マイクロメートル厚である。幾つかの実施形態では、第2層は、例えば約10〜1000マイクロメートル厚であってよく、幾つかの実施形態では、10〜200マイクロメートル厚である。基材層は、第1及び/又は第2層よりも厚くてよく、例えば、50〜2000マイクロメートル厚であり、例えば、100〜1500マイクロメートル厚、250〜1000マイクロメートル厚であり、幾つかの実施形態では、500〜1000マイクロメートル厚である。
【0027】
多層物品がホースの形態である場合、第1層は外層であってよく、又は内層であってよい。ホースの形態である多層物品が、任意の第3層を含む場合、この第3層は外層又は内層であってよい。幾つかの実施形態では、例えば、ホースが燃料管理システムなどで使用される場合には、前記第1層が、内層であることが有利であり得る。
【0028】
蒸発基準がますます厳しくなっているため、燃料管理システム構成要素(例えば、ホース、貯蔵容器など)は、フルオロポリマー含有層を有する多層物品を含有してよい。このような層は、浸透及び/又は蒸発による燃料損失への抵抗力を提供し得る。このような実施形態においては、第1層は、それが燃料と接触して使用されるようにして、燃料管理システムの構成要素内に配置されてよい。
【0029】
本明細書に記載された幾つかの実施形態では、フルオロポリマーを他の材料に結合させる本明細書に記載されたプロセスは、追加の配合工程又は基材層の物理的性質にマイナスの影響を与え得る化学物質の使用を必要とする比較技術に対して簡略化されている。例えば、幾つかの技術は、フルオロポリマーの結合性を向上させるためのフルオロポリマーの化学修飾(即ち、加工、エッチングなど)を含む。しかしながら、これらの技術は、これらのフルオロポリマーに由来する完成品の純度に関する問題を引き起こすことがあり、これにより、物品の所望の最終用途に応じて、各種監督官庁からの承認に関して問題を引き起こし得る。不純物の問題は、高純度水、半導体用途などの高純度が所望される産業においても更に問題となり得る。
【0030】
その上更なる実施形態では、追加された接着促進剤又は結合剤は所望により、本明細書に記載された第1層と第2層間との間の界面に存在する。このため、幾つかの実施形態では、第1層と第2層との間の界面は、接着促進剤又は結合剤を実質的に含まない。接着促進剤又は結合剤を使用しないで第1層及び第2層を結合させる能力は、第1層及び/又は第2層中での多層物品の色又は材料のレオロジー性もまた向上させ得る。
【0031】
本明細書に記載された多層物品は、例えば、押出成形、共押出、ラミネーションなどを含む任意の常法により作製してもよい。幾つかの実施形態では、第1層は、フルオロプラスチックの融点を超える温度、例えば、0〜120℃のフルオロプラスチックの融点より高い温度で押し出してよい。第1層は、第2層と共に同時押し出してよく、あるいは第2層上へ押出加工してよい。第2層は、基材上へ押出加工、基材と共に同時押出、基材上へラミネート加工してよく、又は任意のその他の従来から認識されている手段によって多層物品へと形成してよい。更に、第1層、第2層、及び基材の3つ全てを同時押し出してもよく、第1層及び第2層を基材等の上へと同時押し出してもよい。
【0032】
本発明の利点及び実施形態を以下の実施例によって更に説明するが、これら実施例において列挙される特定の材料及びそれらの量、並びにその他の条件及び詳細は、本発明を不当に制限するものと解釈されるべきではない。特に指示しない限り、全て、重量パーセントを用いる。
【実施例】
【0033】
一般的多層構造パラメーター:本明細書に記載された多層物品の一般的構造は、名目上250マイクロメートル厚の第1(フルオロポリマー)層、名目上150マイクロメートル厚の第2層、及び所望により名目上600マイクロメートル厚の第3層(存在する場合)で構成された。チューブに形成する場合、チューブは名目上6mmの内径を有した。高密度ポリエチレン(HDPE)は210℃で押し出し、GMA変性材料は220℃で押し出した。
【0034】
チューブ初期結合測定:半分に分割したチューブの一部の上の2つの層の間のクラックを初期化することにより、初期結合を測定した。十分な長さの材料を剥離したら、引張試験機(インストロン(マサチューセッツ州ノーウッド)から型式5564を入手)の最上部のつめの中に、1つの層を挿入した。最下部のつめの中にチューブ残部を挿入した。引張試験機のクロスヘッド速度は、150mm/分に設定した。剥離したデラミネーション幅は、名目上12mmであった。
【0035】
プラーク初期結合測定:検査する試験体の細片(少なくとも12mm幅かつ少なくとも2.5cm長さ)を作製した。クラック(最小長1.0cm)を層間(その間で剥離強度が測定される)で初期化する。各層は、インストロン引張試験機(型式5564)(インストロン社(マサチューセッツ州カントン(Canton))から入手)の対向クランプ内に置く。剥離強度は、150ミリメートル/分のクロスヘッド速度で、2つの層(to the two layers)を分離するための平均荷重として測定する。報告された剥離強度は一般に、少なくとも3つのサンプルの平均を表す。
【0036】
不安定末端基分析:−COOH、−COF、及び−CONHを含む、不安定末端基は、FTIR分光法(FTIRニコレットマグナ(Nicolet Magna)560スペクトロメーター)により、100マイクロメートルの膜厚で、米国特許第3,085,083号(シュレイヤー(Schreyer))に記載のごとく測定した。測定された不安定末端基は、遊離及び会合したカルボキシル基、−CONH、並びに10個の炭素原子当たりの−COFの合計であった。
【0037】
実施例にて使用される略語は、次の通りである。
【表0】

【0038】
融点データ:下記表1Aは、実施例1〜7で使用したフルオロプラスチックの融点データについてまとめている。
【表1A】

【0039】
実施例1:「THV 500G」の商標名で入手したTFE、HFP、VDF及び所望によりペルフルオロ(アルキルビニル)エーテルのコポリマー(ダイネオン(Dyneon, LLC)(ミネソタ州オークデール))を、245〜250℃にて、「LOTADER」の商標名で入手したGMA変性ポリマー(アルケマ(Arkema)(フランス、ピュトー(Puteaux)))及び「HDPE B53−35H 100」の商標名で入手した高密度ポリエチレン(BP−ソルヴェイ(Solvay)(テキサス州ヒューストン))のサンプル上へと押出加工した。結果は、下表1にまとめられている。
【表1】

【0040】
実施例2:実施例2は、TFE、HFP及びETのコポリマー(「HTE 1705」の商標名で入手)(ダイネオン(Dyneon, LLC)(ミネソタ州オークデール))を、「THV 500G」の商標名で入手したTFE、HFP、VDF及び所望によりペルフルオロ(アルキルビニル)エーテルのコポリマー(ダイネオン(Dyneon, LLC)(ミネソタ州オークデール))に代えて使用し、かつ255〜265℃(そのより高い融点に基づく)の温度で押出加工したことを除いて、実施例1に記載のごとく実施した。下表2は、結合結果についてまとめている。
【表2】

【0041】
実施例3:実施例3は、「THV 815G」の商標名で入手したTFE、HFP、VDF及び所望によりペルフルオロ(アルキルビニル)エーテルのコポリマー(ダイネオン(Dyneon, LLC)(ミネソタ州オークデール))を、「THV 500G」の商標名で入手したTFE、HFP、VDF及び所望によりペルフルオロ(アルキルビニル)エーテルのコポリマー(ダイネオン(Dyneon, LLC)(ミネソタ州オークデール))の代わりに使用し、かつ270〜280℃(そのより高い融点に基づく)の温度で押出加工したことを除いて、実施例1で記載の如く実施した。下表3は、結合結果についてまとめている。
【表3】

結合強度が非常に高く、実験条件下では剥離不可能。
【0042】
実施例4:幾つかのラミネートを、部分的フッ素化フルオロポリマー層を、「LOTADER」(アルケマ(Arkema)(フランス、ピュトー(Puteaux)))の商標名で入手したGMA変性ポリマー、「ATEVA 1240A」(ATプラツチック(AT Plastics)(カナダ、エドモントン(Edmonton)))の商標名で入手したエチレン酢酸ビニル(12%酢酸ビニル)、及び「ACRYFT 303 WK」(米国住友化学(Sumitomo Chemical of America)(ニューヨーク州ニューヨーク))の商標名で入手したエチレンメチルメタクリレート(18%メチルメタクリレート)から選択される第2ポリマーと加圧成形することによって作製した。第2層ポリマーは、160℃で30秒間かつ6900kPa(69バール(1000psi))の圧力にて加圧した。次に、積層物は少なくとも2種の層(典型的には、3層)を共に加圧成形することによって作製したが、典型的には、フルオロポリマー層、第2層、及びフルオロポリマー又は高密度ポリエチレン(HDPE)の第3層である。積層体の各層の間に、層間の分離を開始させる機能を持つ一片のPFAフィルム(テトラフルオロエチレン及びペルフルオロビニルエーテルのコポリマー)を置いた。プレス温度は、下表4に示す。初期結合測定は、プラーク初期結合測定について前述した通り実施した。この結果は、下表4に示す。
【表4】

【0043】
比較実施例5:比較実施例5は、部分的フッ素化フルオロポリマーの代わりに、ペルフルオロ化フルオロポリマー(FEP)、ヘキサフルオロプロピレン及びテトラフルオロエチレンのコポリマー(「FEP 6322」(ダイネオンLLC(Dyneon LLC)(ミネソタ州オークデール))の商標名で入手)を使用したことを除いて、実施例4に記載のごとく実施した。結果は、下表5に示す。
【表5】

【0044】
実施例6:多層物品は、エチレンビニルアセテートによりコーティングされたポリエチレンテレフタレートフィルム(PET、13%のTiOを含有)を、「15420P/UF」(スペシャライズドテクノロジーリソースイズ(Specialized Technology Resources)(コネティカット州エンフィールド(Enfield)))の商標名で入手したエチレンビニルアセテートの第2層を介してガラスへ結合させることによって作製した。次に、GMA変性ポリマーのフィルムをPETフィルムの最上部に置き、かつフルオロポリマーフィルムをGMA変性ポリマー上に置いた。GMA変性ポリマーに隣接した各層間で、比較実施例5に記載の通り各層間での分離が開始された。次に、減圧下180℃にて8分間、500Pa(5mbar)圧力にて、多層物品をラミネート加工した。初期結合試験(上記プラーク初期結合測定に従って測定した)は、下表6にまとめられている。
【表6】

「アメリケム(AMERICHEM)17274−CD2」(アメリケム(Americhem)(オハイオ州カイホーガフォールズ(Cuyahoga Falls)))の商標名で入手した、THV 220G及びTiOの2重量%ブレンドを加えた。
結合強度が非常に高く、サンプルタブは実験条件下で破壊された。
【0045】
実施例7:実施例7は、FEPに代えて、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びペルフルオロプロピルビニルエーテルモノマーからなるペルフルオロ化ポリマー(ポリマーC)を、米国特許第6,653,379号にて記載されているように使用したことを除いて、比較実施例5に記載のごとく実施した。表7の最初の2つの項目において、米国特許第6,693,164号にて記載されているようにして、フィルムが作製される前に、ポリマーに対して、更にフッ素化プロセス(FProc)を実施した。結果を以下の表7に示す。
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)DSCによる測定で少なくとも200℃の融点を有する部分的にフッ素化されたフルオロプラスチックを含む第1層と、
b)グリシジル官能基を有する少なくとも1種のモノマーから誘導されるインターポリマー化単位を含むコポリマーを含む第2層であって、実質的に硬化剤を含まない第2層と、
c)基材層であって、前記第2層が、前記第1層との間に配置され、かつ前記第1層を接着結合させる基材層と、を含む多層物品。
【請求項2】
前記部分的にフッ素化されたフルオロプラスチックが、最低220℃の融点を有する、請求項1に記載の多層物品。
【請求項3】
前記部分的にフッ素化されたフルオロプラスチックが、テトラフルオロエチレン及びエチレンのコポリマーと、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びエチレンのコポリマーと、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、及び0モル%〜20モル%のペルフルオロ(アルキルビニル)エーテルのコポリマーと、のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の多層物品。
【請求項4】
前記部分的にフッ素化されたフルオロプラスチックが、50モル%〜60モル%のテトラフルオロエチレン、5モル%〜15モル%のヘキサフルオロプロピレン、及び25モル%〜35モル%のフッ化ビニリデンを含む、請求項3に記載の多層物品。
【請求項5】
前記部分的にフッ素化されたフルオロプラスチックが、55モル%〜65モル%のテトラフルオロエチレン、5モル%〜15モル%のヘキサフルオロプロピレン、及び20モル%〜30モル%のフッ化ビニリデンを含む、請求項3に記載の多層物品。
【請求項6】
前記部分的にフッ素化されたフルオロプラスチックが、60モル%〜70モル%のテトラフルオロエチレン、5モル%〜15モル%のヘキサフルオロプロピレン、及び20モル%〜30モル%のフッ化ビニリデンを含む、請求項3に記載の多層物品。
【請求項7】
前記部分的にフッ素化されたフルオロプラスチックが、70モル%〜80モル%のテトラフルオロエチレン、5モル%〜15モル%のヘキサフルオロプロピレン、15モル%〜25モル%のフッ化ビニリデン、及び0モル%〜5モル%のペルフルオロ(アルキルビニル)エーテルを含む、請求項3に記載の多層物品。
【請求項8】
前記部分的にフッ素化されたフルオロプラスチックが、75モル%〜85モル%のテトラフルオロエチレン、1モル%〜10モル%のヘキサフルオロプロピレン、及び10モル%〜20モル%のフッ化ビニリデンを含む、請求項3に記載の多層物品。
【請求項9】
前記第2層のコポリマーが、グリシジル官能基を有するモノマーを1重量%〜8重量%含む、請求項1に記載の多層物品。
【請求項10】
前記第2層のコポリマーが、グリシジルメタクリレート及びα−オレフィンのコポリマーを含む、請求項1に記載の多層物品。
【請求項11】
前記α−オレフィンが、エチレン及びプロピレンのうち少なくとも1つを含む、請求項10に記載の多層物品。
【請求項12】
前記第2層が、グリシジルメタクリレート及びアルキルメタクリレートのコポリマーを含む、請求項1に記載の多層物品。
【請求項13】
ペルフルオロプラスチックを含む第3層を更に含み、前記第1層が、前記第2層と前記第3層との間に配置され、かつ前記第3層を前記第2層へ接着結合する、請求項1に記載の多層物品。
【請求項14】
前記ペルフルオロプラスチック中の不安定末端基の数が、10個の炭素原子当たり30未満である、請求項13に記載の多層物品。
【請求項15】
前記第1層が、10〜500マイクロメートルの平均厚さを有する、請求項1に記載の多層物品。
【請求項16】
前記第2層が、10〜200マイクロメートルの平均厚さを有する、請求項1に記載の多層物品。
【請求項17】
前記基材が、50〜2000マイクロメートルの平均厚さを有する、請求項1に記載の多層物品。
【請求項18】
前記第1層と前記第2層との境界面が、接着促進材料を実質的に含まない、請求項1に記載の多層物品。
【請求項19】
a)部分的にフッ素化されたフルオロプラスチックを含む第1層と、
b)2重量%未満のグリシジル官能基を有する少なくとも1種のモノマーから誘導されるインターポリマー化単位を含むコポリマーを含む第2層であって、硬化剤を実質的に含まない第2層と、
c)基材層であって、前記第2層が、前記第1層との間に配置され、かつ前記第1層を接着結合させる基材層と、を含む多層物品。
【請求項20】
前記部分的にフッ素化されたフルオロプラスチックが、35モル%〜45モル%のテトラフルオロエチレン、5モル%〜15モル%のヘキサフルオロプロピレン、及び45モル%〜55モル%のフッ化ビニリデンを含む、請求項17に記載の多層物品。
【請求項21】
前記部分的にフッ素化されたフルオロプラスチックが、40モル%〜50モル%のテトラフルオロエチレン、10モル%〜20モル%のヘキサフルオロプロピレン、30モル%〜40モル%のフッ化ビニリデン、及び1モル%〜5モル%のペルフルオロ(アルキルビニル)エーテルを含む、請求項17に記載の多層物品。
【請求項22】
前記部分的にフッ素化されたフルオロプラスチックが、50モル%〜60モル%のテトラフルオロエチレン、10モル%〜20モル%のヘキサフルオロプロピレン、及び30モル%〜40重量%のフッ化ビニリデンを含む、請求項17に記載の多層物品。
【請求項23】
ペルフルオロプラスチックを含む第3層を更に含み、第1層が、第2層と第3層との間に配置され、かつ第2層を第3層に接着結合している、請求項19に記載の多層物品。
【請求項24】
前記ペルフルオロプラスチック中の不安定末端基の数が、10個の炭素原子当たり30未満である、請求項23に記載の多層物品。
【請求項25】
a)ペルフルオロプラスチックを含む第1層と、
b)グリシジル官能基を有する少なくとも1種のモノマーから誘導されるインターポリマー化単位を含むコポリマーを含む第2中間接着層と、
c)基材層であって、第2層が、前記第1層との間に配置され、かつ前記第1層を接着結合させる基材層と、を含み、
前記第1層が前記第2層に接着結合するように選択された多数の不安定末端基を、前記第1層が含む、多層物品。
【請求項26】
前記ペルフルオロプラスチック中の不安定末端基の数が、10個の炭素原子当たり30超である、請求項25に記載の多層物品。
【請求項27】
前記ペルフルオロプラスチック中の不安定末端基の数が、10個の炭素原子当たり60超である、請求項25に記載の多層物品。
【請求項28】
前記ペルフルオロプラスチック中の不安定末端基の数が、10個の炭素原子当たり90超である、請求項25に記載の多層物品。
【請求項29】
ペルフルオロプラスチックを含む第3層を更に含み、前記第1層が、前記第2層と前記第3層との間に配置され、かつ前記第2層を前記第3層に接着結合させる、請求項25に記載の多層物品。
【請求項30】
前記ペルフルオロプラスチック中の不安定末端基の数が、10個の炭素原子当たり30未満である、請求項29に記載の多層物品。
【請求項31】
前記第1層中のペルフルオロプラスチックが、前記第3層中のペルフルオロプラスチックと異なる組成物を含む、請求項29に記載の多層物品。

【公表番号】特表2011−507734(P2011−507734A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539672(P2010−539672)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2008/086782
【国際公開番号】WO2009/085683
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】