説明

フルオープン簡易開口式缶容器

【課題】フィルム製蓋により密封されるガス抜き用の細孔を備えたフルオープン簡易開口式缶容器について、フィルム製蓋による密封性を確保することができて、しかも、フィルム製蓋を貼着するための接着剤により細孔が塞がれることのないようにする。
【解決手段】ガス抜き用の細孔4がフィルム製蓋5により密封されている缶蓋2において、フィルム製蓋5を、細孔4とその周辺領域に対応する部分を非貼着部40とした状態で、缶蓋2のパネル部21に対して引き剥がし可能に貼着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオープンタイプの開口容易缶蓋(イージーオープンエンド)を備えた簡易開口式の缶容器に関し、特に、コーヒー豆を焙煎して粉砕したレギュラーコーヒーのような粉粒体を内容物とする陽圧缶詰において、開缶時に缶内のガスと共に内容物の粉粒体が噴出して飛散しないようにした、フルオープン簡易開口式缶容器に関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒー豆を焙煎して粉砕した粉粒状のレギュラーコーヒーについては、時間が経つに連れて炭酸ガスを発生させることから、これを缶詰にする場合、従来一般的には、缶胴に補強用のビードが形成された3ピース缶を使用して、缶内の空気を吸引して充分にガス抜き(エージング)した状態で内容物を缶内に充填・密封しているが、そのようなバキューム缶詰では、コーヒーの香りや風味が炭酸ガスと共に蒸散して失われることで劣化し易いものとなってしまう。そこで、レギュラーコーヒーの缶詰において、上記のようなコーヒーの香りや風味の劣化を防ぐために、缶内の気体を炭酸ガスに置換して缶内を炭酸ガスで陽圧化するということが提案されている。
【0003】
しかしながら、そのようなレギュラーコーヒーの陽圧缶詰では、缶の一端側を全面的に開口するフルオープンタイプの簡易開口式缶容器、即ち、破断可能な環状のスコア(刻線)を有するフルオープンタイプの開口容易缶蓋が缶胴の一端側に巻締め固着されている缶容器を使用した場合に、開缶時に、開口操作用のタブを持ち上げることで、先ずタブを固定するリベット部の周りに形成されたベントスコア(通気用の刻線)が破断された途端に、そこから缶内の炭酸ガスと共に粉粒状のレギュラーコーヒーが噴出して飛散してしまう虞がある。
【0004】
これに対して、粉粒体を内容物とする陽圧缶詰用の缶容器であって、缶胴の一端側にフルオープンタイプの開口容易缶蓋が一体的に巻締め固着されている簡易開口式の缶容器において、缶内圧により粉粒体を噴出させずにガスのみを噴出させるような細孔を、一個又は略同じ直径で複数個、缶蓋のパネル部の適所に直接的又は間接的に設けると共に、該細孔を缶蓋の外面側から覆って密封するように、把手となる部分を備えたフィルム製蓋を、缶蓋のパネル部に対して引き剥がし可能に貼着する、ということが本願出願人の先の出願に係る下記の各特許公報によって従来公知となっている。
【0005】
なお、缶内圧により粉粒体を噴出させずにガスのみを噴出させるような細孔について、下記の特許文献1に記載された発明では、缶蓋のパネル部の適所に穿設することで、缶蓋のパネル部に対して直接的に設けられており、一方、下記の特許文献2に記載された発明では、缶蓋のパネル部の適所に穿設された小孔に対して、この小孔を覆うように缶蓋のパネル部に一体的に固着される薄板材に細孔を穿設することで、缶蓋のパネル部に対して間接的に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−18839号公報
【特許文献2】特開2009−35295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のような従来公知のフルオープン簡易開口式缶容器では、缶蓋の外面側から細孔を覆って密封する把手付きのフィルム製蓋を、缶蓋のパネル部に対して引き剥がし可能に貼着していることから、缶詰を開缶する前に、先ず、把手を摘んでフィルム製蓋を缶蓋から引き剥がすことで細孔を開封することにより、この細孔を通して、缶内の粉粒体を噴出させずにガスのみを噴出させて大気中に散逸させることで、予めガス抜きしておくことができるため、缶詰の開缶時には、缶内のガスと共に内容物の粉粒体が噴出して飛散するようなことはない。
【0008】
しかしながら、細孔上を覆うようにフィルム製蓋を缶蓋のパネル部に貼着して缶容器を密封する際に、フィルムの貼着面に塗布する接着剤の量が不足すると、フィルム製蓋による缶容器の密封性が不確実なものになる虞があり、一方、フィルムの貼着面に充分な量の接着剤を塗布すると、缶容器の密封性は確実に得られるものの、細孔中に接着剤が入り込んで細孔を塞いでしまうような虞がある。
【0009】
すなわち、例えば、カルボキンル化したポリオレフィン樹脂系の接着剤をフィルムの貼着面に塗布したようなフィルム製蓋を使用すると、接着剤の接着力が弱くて缶容器の密封性が不確実になる虞が有ることから、ホットメルト接着剤としてエチレン酢酸ビニル共重合体を20g/m程度の量で塗布したフィルム製蓋を使用した場合、溶けたホットメルト接着剤が細孔内に流入して固化することで細孔を塞いでしまうことがある。
【0010】
本発明は、上記のような問題の解消を課題とするものであり、具体的には、フィルム製蓋により密封されるガス抜き用の細孔を備えたフルオープン簡易開口式缶容器について、フィルム製蓋による密封性を確保することができて、しかも、フィルム製蓋を貼着するための接着剤により細孔が塞がれることのないようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記のような課題を解決するために、粉粒体を内容物とする陽圧缶詰用で、缶胴の一端側にフルオープンタイプの開口容易缶蓋が一体的に巻締め固着されていて、缶内圧により粉粒体を噴出させずにガスのみを噴出させるような細孔が、一個又は略同じ直径で複数個、缶蓋のパネル部の適所に直接的又は間接的に設けられていると共に、この細孔を缶蓋の外面側から覆って密封するように、把手となる部分を備えたフィルム製蓋が、缶蓋のパネル部に対して引き剥がし可能に貼着されている簡易開口式の缶容器において、フィルム製蓋が、ガスを噴出させる細孔とその周辺領域に対応する部分を非貼着部とした状態で、缶蓋のパネル部に対して引き剥がし可能に貼着されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
上記のような本発明のフルオープン簡易開口式缶容器によれば、缶容器の密封性を確実に得られるように接着剤でフィルム製蓋を缶蓋のパネル部に貼着させても、フィルム製蓋には、細孔とその周辺領域に対応するように非貼着部を形成していることから、接着剤により細孔が塞がれるような虞はなく、缶詰を開缶に先だってフィルム製蓋を缶蓋から引き剥がした際に、所定の大きさに形成された細孔を通して缶内のガスを確実に噴出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のフルオープン簡易開口式缶容器の実施例について、缶容器の全体を示す縦断面図である。
【図2】図1に示した缶容器の缶蓋の巻締め固着される前の状態を示す上面図である。
【図3】図2に示した缶蓋のリベット部の付近を示す縦断面図である。
【図4】図2に示した缶蓋による本発明の一実施例(実施例1)について、(A)フィルム製蓋を貼着させるときの状態と、(B)フィルム製蓋により密封された状態と、(C)フィルム製蓋を引き剥がしたときの状態とをそれぞれ示す断面説明図である。
【図5】図2に示した缶蓋による本発明の一実施例(実施例2)について、(A)フィルム製蓋を貼着させるときの状態と、(B)フィルム製蓋により密封された状態と、(C)フィルム製蓋を引き剥がしたときの状態とをそれぞれ示す断面説明図である。
【図6】図2に示した缶蓋による本発明の一実施例(実施例3)について、(A)フィルム製蓋を貼着させるときの状態と、(B)フィルム製蓋により密封された状態と、(C)フィルム製蓋を引き剥がしたときの状態とをそれぞれ示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
フィルム製蓋により密封されるガス抜き用の細孔を備えたフルオープン簡易開口式缶容器について、フィルム製蓋による密封性を確保することができて、しかも、フィルム製蓋を貼着するための接着剤により細孔が塞がれることのないようにするという目的を、以下の各実施例に具体的に示すように、フィルム製蓋を、ガスを噴出させる細孔とその周辺領域に対応する部分を非貼着部とした状態で、缶蓋のパネル部に対して引き剥がし可能に貼着する、ということで実現した。
【0015】
以下に説明するような本発明のフルオープン簡易開口式缶容器の各実施例(実施例1〜3)については、何れも、コーヒー豆を焙煎して粉砕した粉粒状のレギュラーコーヒーを内容物とする缶容器に関するものあって、図1に示すように、缶容器1は、板厚が0.3mm程度のアルミニウム合金板から絞りしごき加工により胴部3aと底部3bが一体成形されて胴部3aの直径が約74mmの有底円筒状に形成されたシームレス缶体3に対して、その胴部3aの上端開口端側に、タブ20の操作により開口可能なフルオープンタイプの開口容易缶蓋2を、二重巻締めにより一体的に巻締め固着したものである。
【0016】
缶体3の胴部3aの上端に巻締め固着される開口容易缶蓋2は、円板状に打ち抜かれた板厚が約0.2mmの錫メッキ鋼板からプレス成形されるものであり、図2および図3に示すように、巻締め固着される前の状態で、パネル部21と環状縁部22とカウンターシンク部23とフランジ部24とが一体成形された本体部分に対して、それとは別体に形成された開口操作用のタブ20が、略円板状のパネル部21の周辺付近に形成されたリベット部25によって固着されており、また、缶蓋2のパネル部21には、その外縁に沿って破断可能な環状スコア26が形成されている。
【0017】
なお、缶蓋2のパネル部21の外縁には、金属板を多重(断面S字状の三重)に折り畳んだ重層部29が形成されており、この重層部29の外側でパネル部21と環状縁部22との境界部分に環状スコア26が形成されていて、この環状スコア26で囲まれた領域(パネル部21)が、開缶時に除去される開口片(缶蓋の除去部)となり、開缶後には開口部として開放されることとなる。
【0018】
缶蓋2の環状スコア26で囲まれた領域(開口片となる缶蓋の除去部)に対して、その外縁に重層部29を形成しておくことで、開缶後に缶容器から除去した開口片の端縁の鋭利な切断端により手指などを傷付けるのが防止できる。なお、環状スコア26よりも外側の環状縁部22に対しても、同様に金属板を折り畳んだ重層部を形成しておけば、開缶後に内容物を取り出す際に、缶口の端縁の鋭利な切断端により手指などを傷付けるのが防止できる。
【0019】
開口操作用のタブ20は、環状スコア26の内側(開口片の外周部分)で上方に突出するリベット部25によって位置決めされ、このリベット部25の頭を押し潰すことでパネル部21に固着されていて、タブ20の固着部(リベット部25)よりも缶蓋半径方向外側の部分は、開缶する際に押し下げ部分となる先端部20aとして形成され、タブ20の固着部(リベット部25)よりも缶蓋半径方向内側の部分は、指を掛けるためのリング部20bとして形成されている。
【0020】
なお、タブ20では、先端部20aからリベット部25までの長さを、リング部20bの後端からリベット部25までの長さよりも大幅に短くしており、そうすることで、タブ20のリング部20bの後端を指で持ち上げたときに、リベット部25を支点としたテコの作用で、タブ20の先端部20aが大きな力で押し下げられることとなる。
【0021】
缶蓋2のパネル部21のリベット部25の近傍には、図2に示すように、リベット部25を挟んでタブ20の先端部20aとは反対側に、破断可能なベントスコア27と破断しない補助スコア28とがそれぞれ形成されている。ベントスコア27に近接して平行に設けられる補助スコア28は、ベントスコア27の近傍を硬化させてベントスコア27を破断し易くするためのものであって、それ自体は破断されないものである。
【0022】
破断可能なベントスコア27は、タブ20を起こすときにパネル部21の一部分を折り曲げ易くするためのものでもあって、開口操作を開始してタブ20のリング部20bを少し持ち上げると、先ずベントスコア27が破断される。それにより、パネル部21の一部分(リベット部25の付近から缶蓋半径方向外側のタブ20の先端部20aの下方に位置する部分)が折り曲げ易い状態となり、この状態からタブ20を更に引き起こすことで、タブ20の先端部20aを環状スコア26に容易に深く食い込ませることができる。
【0023】
ところで、上記のようなタブ20の操作により開口可能なフルオープンタイプの開口容易缶蓋2には、図2に示すように、パネル部21の適所(図示したものでは、タブ20のリング部20bを摘み易くするためにパネル部21に形成された平面形状が略D字形の凹部の底面の部分)に細孔4が設けられていると共に、この細孔4を缶蓋2の外面側から覆って密封するように、把手5aとなる部分を備えたフィルム製蓋5が、缶蓋2のパネル部21に対して引き剥がし可能に貼着されている。
【0024】
缶蓋2のパネル部21に設けられる細孔4について、コーヒー豆を焙煎して中細挽きの状態に粉砕した粉粒状のレギュラーコーヒーを内容物として、缶内が150kPa前後となるような陽圧缶詰を製造するための缶容器の場合には、細孔4の直径を約1.35mm以下(好ましくは0.60〜1.35mmの範囲内)とし、且つ、細孔4の開口平面の総面積を約1.43mm以下(好ましくは1.30〜1.43mmの範囲内)とするのが適当である。
【0025】
なお、粉粒状のレギュラーコーヒーを内容物として陽圧缶詰を製造する方法については、例えば、焙煎して粉砕した直後のレギュラーコーヒーを直ちに缶内へ充填すると共に、液体窒素を充填することで(コーヒーと液体窒素を同時に充填しても良いし、コーヒーを充填してから液体窒素を充填しても良いし、予め液体窒素を充填してからコーヒーを充填しても良い)、缶内の気体を窒素ガスに置換してから、フルオープンタイプの開口容易缶蓋を巻締め固着して缶を密封することにより、缶内が150kPa前後となるような陽圧缶詰とすることができる。
【0026】
細孔4を外側から覆うように缶蓋2のパネル部21に貼着されるフィルム製蓋5は、内面側にホットメルト接着剤としてエチレン酢酸ビニル共重合体が20g/m程度の量で塗布されたアルミニウム箔のような金属箔や、合成紙や、樹脂シート等のような適宜のフィルムからなるもので、ヒートシール法によって缶蓋2のパネル部21の外面側に引き剥がし可能に貼着される。
【0027】
なお、フィルム製蓋5の把手5aとなる部分は、図4〜図6の各図の(A)に示すように、ヒートシールの際に加熱するためのヒートシーラー10のヒーター部分から外れていることで、缶蓋2のパネル部21には貼着されないようになっていて、缶蓋2のパネル部21からフィルム製蓋5を引き剥がす際に手で摘むことができるようになっている。
【0028】
そのようなフィルム製蓋5によりガス抜き用の細孔4を密封している本発明のフルオープン簡易開口式缶容器では、ヒートシールの際に溶融したホットメルト接着剤が細孔4に流入して固化することで細孔4を塞いでしまうようなことがないように、フィルム製蓋5は、ガスを噴出させる細孔4とその周辺領域に対応する部分を非貼着部40とした状態で、缶蓋のパネル部に対して引き剥がし可能に貼着されている。
そのような本発明の各実施例(実施例1〜3)について、既に述べたような共通する構成については説明を省略し、具体的な構成が相違するフィルム製蓋5の非貼着部40について以下に詳しく説明する。
【実施例1】
【0029】
本実施例(実施例1)では、ヒートシールにより缶蓋2のパネル部21にフィルム製蓋5を貼着する際に、図4(A)に示すように、ホットメルト接着剤6の層が下面全体に設けられたフィルム製蓋5に対し、ヒーター部分がリング状に形成されたヒートシーラー10を使用して、ガス抜き用の細孔4とその周辺領域に対応する部分にはヒートシーラー10のヒーター部分を押し付けないようにすると共に、細孔4の周辺領域よりも外側では、把手5aとなる部分を除いて、ヒートシーラー10のヒーター部分を押し付けるようにすることで、細孔4とその周辺領域に対応する部分が非貼着部40となっている。
【0030】
そのように缶蓋2のパネル部21にフィルム製蓋5が貼着された状態、即ち、図4(B)に示す状態において、ヒートシーラー10のヒーター部分を押し付けた箇所では、加熱によりホットメルト接着剤6が充分に溶融して、缶蓋2のパネル部21にフィルム製蓋5が確実に貼着されていると共に、ヒートシーラー10のヒーター部分を押し付けない細孔4とその周辺領域(非貼着部40)では、ヒートシーラー10による加熱は殆どなく、ホットメルト接着剤6は殆ど溶融しないことから、ホットメルト接着剤6が細孔4に流れ込むようなことはない。
【0031】
そして、そのように缶蓋2のパネル部21に貼着されているフィルム製蓋5を、把手5aの部分を持ち上げて引き剥がすと、図4(C)に示すように、把手5aの部分に塗布されていたホットメルト接着剤6は、溶融することなく把手5aに付着したままで、貼着のために溶融したホットメルト接着剤6は、フィルム製蓋5から剥離して缶蓋2のパネル部21に残り、細孔4とその周辺領域(非貼着部40)のホットメルト接着剤6は、溶融することなくフィルム製蓋5に付着したままとなって、細孔4は、ホットメルト接着剤6で塞がれることなく、確実に開口されることとなる。
【実施例2】
【0032】
本実施例(実施例2)では、缶蓋2のパネル部21に設けられるガス抜き用の細孔4とその周辺領域が、パネル部21の上面から缶内方に凹むように形成されており、それによって、フィルム製蓋5を貼着する際には、図5(A)に示すように、ホットメルト接着剤6の層が下面全体に設けられたフィルム製蓋5に対し、把手5aの部分だけを外すようにヒートシーラー10のヒーター部分を押し付けても、下方に凹んだ細孔4とその周辺領域には、ヒートシーラー10のヒーター部分が押し付けられないことで、細孔4とその周辺領域に対応する部分が非貼着部40となっている。
【0033】
そのように缶蓋2のパネル部21にフィルム製蓋5が貼着された状態、即ち、図5(B)に示す状態において、ヒートシーラー10のヒーター部分が押し付けられた箇所では、加熱によりホットメルト接着剤6が充分に溶融して、缶蓋2のパネル部21にフィルム製蓋5が確実に貼着されていると共に、下方に凹んでヒートシーラー10のヒーター部分が押し付けられない細孔4とその周辺領域(非貼着部40)では、ヒートシーラー10による加熱は殆どなく、ホットメルト接着剤6は殆ど溶融しないことから、ホットメルト接着剤6が細孔4に流れ込むようなことはない。
【0034】
そして、そのように缶蓋2のパネル部21に貼着されているフィルム製蓋5を、把手5aの部分を持ち上げて引き剥がすと、図5(C)に示すように、把手5aの部分に塗布されていたホットメルト接着剤6は、溶融することなく把手5aに付着したままで、貼着のために溶融したホットメルト接着剤6は、フィルム製蓋5から剥離して缶蓋2のパネル部21に残り、細孔4とその周辺領域(非貼着部40)のホットメルト接着剤6は、溶融することなくフィルム製蓋5に付着したままとなって、細孔4は、ホットメルト接着剤6で塞がれることなく、確実に開口されることとなる。
【実施例3】
【0035】
本実施例(実施例3)では、缶蓋2のパネル部21に設けられるガス抜き用の細孔4とその周辺領域を覆うように、缶蓋2のパネル部21には貼着しない薄板7(例えば、アルミ箔の薄板等)を設けており、フィルム製蓋5を貼着する際には、図6(A)に示すように、缶蓋2のパネル部21とフィルム製蓋5との間に薄板7を介在させた状態で、ホットメルト接着剤6の層が下面全体に設けられたフィルム製蓋5に対し、把手5aの部分だけを外すようにヒートシーラー10のヒーター部分を押し付けることで、薄板7の部分が非貼着部40となっている。
【0036】
そのように缶蓋2のパネル部21にフィルム製蓋5が貼着された状態、即ち、図6(B)に示す状態において、薄板7に覆われていない箇所では、加熱によりホットメルト接着剤6が充分に溶融して、缶蓋2のパネル部21にフィルム製蓋5が確実に貼着されていると共に、薄板7で覆われた細孔4とその周辺領域(非貼着部40)では、加熱によりホットメルト接着剤6が充分に溶融しても、薄板7に接着するだけで、缶蓋2のパネル部21には接着しないため、フィルム製蓋5が缶蓋2のパネル部21に貼着されることはなく、また、加熱により溶融したホットメルト接着剤6は、薄板7により遮断されることで、細孔4に流れ込むようなことはない。
【0037】
そして、そのように缶蓋2のパネル部21に貼着されているフィルム製蓋5を、把手5aの部分を持ち上げて引き剥がすと、図6(C)に示すように、把手5aの部分に塗布されていたホットメルト接着剤6は、溶融することなく把手5aに付着したままで、貼着のために溶融したホットメルト接着剤6は、フィルム製蓋5から剥離して缶蓋2のパネル部21に残り、薄板7で覆われた細孔4とその周辺領域(非貼着部40)のホットメルト接着剤6は、薄板7を貼着した状態でフィルム製蓋5に付着したままとなって、細孔4は、ホットメルト接着剤6や薄板7で塞がれることなく、確実に開口されることとなる。
【0038】
以上、本発明のフルオープン簡易開口式缶容器の各実施例について説明したが、本発明は、上記の各実施例に示した具体的な構造にのみ限定されるものではなく、例えば、缶蓋のパネル部に設けられる細孔について、上記の各実施例では、缶蓋のパネル部に細孔を穿設することで、缶蓋のパネル部に対して細孔を直接的に設けているが、例えば、直径が3.00mm程度の小孔を缶蓋のパネル部に穿設し、この小孔を覆うように非通気性の材質からなる薄板材を缶蓋のパネル部に一体的に固着(殆ど剥離不能に貼着)して、この薄板材に細孔を穿設することで、缶蓋のパネル部に対して細孔を間接的に設けるようにしても良いものである。
【0039】
また、缶蓋のパネル部に設けられる細孔について、上記の各実施例では、一つ設けているが、細孔の数については、一つに限らず、略同じ直径のものを複数設けるようにしても良いものであり、細孔の位置については、特に限定されるものではなく、また、細孔の具体的な直径や開口平面の総面積については、粉粒体の大きさや缶内圧の大きさによって適宜に変更して良いものである。
【0040】
また、缶容器の全体構造についても、胴部と底部が一体成形された有底円筒状のシームレス缶体に缶蓋を巻締め固着する2ピース缶に限らず、円筒状の缶胴に缶蓋と底蓋をそれぞれ巻締め固着する3ピース缶として実施することも可能であり、缶蓋については、パネル部の外縁に金属板を折り畳んだ重層部を形成したようなものに限らず、そのような重層部のない缶蓋であっても良い等、適宜に設計変更可能なものであることはいうまでもない。
【0041】
さらに、缶容器の用途についても、焙煎して粉砕したコーレギュラーコーヒーの陽圧缶詰に限らず、その他の粉粒体を内容物とする陽圧缶詰にも使用可能なものである。なお、焙煎して粉砕した状態のレギュラーコーヒーに限らず、焙煎して粉砕しないコーヒー豆であっても、時間が経つに連れて炭酸ガスを発生させることとなり、また、缶詰の製造時に粉砕されていなくても、缶詰の流通過程で缶内のコーヒー豆が砕けたり、コーヒー豆の渋皮が粉になって、缶内に粉粒体が存在することがあるため、開缶時にそれら粉粒体が噴出して飛散する虞があるが、そのような焙煎して粉砕しないコーヒー豆の陽圧缶詰に対しても、本発明の缶容器は効果的に使用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 缶容器(フルオープン簡易開口式缶容器)
2 缶蓋(フルオープンタイプの開口容易缶蓋)
3 缶体
4 (ガス抜き用の)細孔
5 フィルム製蓋
5a (フィルム製蓋の)把手
6 ホットメルト接着剤
7 (非貼着部となる)薄板
21 (缶蓋の)パネル部
40 非貼着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒体を内容物とする陽圧缶詰用で、缶胴の一端側にフルオープンタイプの開口容易缶蓋が一体的に巻締め固着されていて、缶内圧により粉粒体を噴出させずにガスのみを噴出させるような細孔が、一個又は略同じ直径で複数個、缶蓋のパネル部の適所に直接的又は間接的に設けられていると共に、この細孔を缶蓋の外面側から覆って密封するように、把手となる部分を備えたフィルム製蓋が、缶蓋のパネル部に対して引き剥がし可能に貼着されている簡易開口式の缶容器において、フィルム製蓋が、ガスを噴出させる細孔とその周辺領域に対応する部分を非貼着部とした状態で、缶蓋のパネル部に対して引き剥がし可能に貼着されていることを特徴とするフルオープン簡易開口式缶容器。
【請求項2】
ヒートシールにより缶蓋のパネル部にフィルム製蓋を貼着する際に、ガスを噴出させる細孔とその周辺領域に対応する部分を部分的にヒートシールしないことで、フィルム製蓋に非貼着部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のフルオープン簡易開口式缶容器。
【請求項3】
缶蓋のパネル部上面に貼着されるフィルム製蓋に対して、ガスを噴出させる細孔とその周辺領域を、缶蓋のパネル部上面から缶内方に凹むように形成しておくことで、フィルム製蓋に非貼着部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のフルオープン簡易開口式缶容器。
【請求項4】
ガスを噴出させる細孔とその周辺領域に対応するように、缶蓋のパネル部に貼着しない薄板を設けて、この薄板を缶蓋のパネル部とフィルム製蓋との間に介在させることで、フィルム製蓋に非貼着部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のフルオープン簡易開口式缶容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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