説明

フルフェイス型ヘルメット

【課題】
フルフェイス型ヘルメット1の内部の換気が顎領域から流入する外気によって良好に行われるとともに、衝撃吸収ライナ21、23のほぼ厚さ方向に貫通している通気用貫通孔を上記顎領域から流入する外気のために衝撃吸収ライナ21、23の側頭領域付近に特に設ける必要がないオフロード走行用などのフルフェイス型ヘルメット1を提供する。
【解決手段】
顎領域に第1の通気用開口43、44を有する外側シェル11の内側に配されている衝撃吸収ライナ21、23の顎部用衝撃吸収部分が、ライナ本体部分25と、このライナ本体部分25の内側面に設けられているシート状裏当て板、27、28、33とを備え、上記ライナ本体部分25が、上記第1の通気用開口43、44にほぼ対向する第2の通気用開口47と、このライナ本体部分25の内側面に形成されかつ上記第2の通気用開口47に連通している通気用条溝51とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車のライダなどのヘルメット装着者(以下、「装着者」という。)の顎部にほぼ対向する顎領域に通気用開口を有する外側シェルと、この外側シェルの内側に配されている衝撃吸収ライナとを備えているフルフェイス型ヘルメットに関している。また、本発明は、装着者の顎部にほぼ対向する顎領域に通気用開口を有する外側シェルと、この外側シェルの内側に配されている顎・頬部用衝撃吸収ライナと、上記顎・頬部用衝撃吸収ライナの内側面に取り付けられている頬部用ブロック状内装パッドとを備えているフルフェイス型ヘルメットにも関している。そして、本発明は、モトクロス用などのオフロード走行用のフルフェイス型ヘルメットに適用するのに最適なものである。
【背景技術】
【0002】
モトクロスなどのオフロード走行においては、不整地を走破する際に、ライダが、自動二輪車を通して大きな振動を受けたり、自動二輪車のバランスを保つために大きなアクションを取ったりするので、ライダの運動量が多い。このために、ライダがヘルメットを選択する条件としては、軽量であること、呼吸し易いこと、視野が広いこと、涼しいことなどが挙げられている。
【0003】
上述のような条件を満足するヘルメットとしては、以前は、ライダの顔面が大きく開放されている、いわゆる、ジェット型ヘルメットが用いられていた。しかし、このようなジェット型ヘルメットでは、ライダの顎部を効果的に保護するのは困難である。このために、その後、ヘルメットの製造技術の向上にともなって、軽量で呼吸し易くかつ視野が広くてモトクロス用などのオフロード走行用に適したフルフェイス型ヘルメットが出現した。このようなオフロード走行用のフルフェイス型ヘルメットは、例えば米国特許第4,555,816号明細書に開示されている。
【特許文献1】米国特許第4,555,816号明細書
【0004】
この特許文献1に開示されているオフロード走行用のフルフェイス型ヘルメットは、装着者の口元付近に外気を供給するための大きな開口を顎覆い部の中央部分に備えている。また、この特許文献1のヘルメットにおいては、装着者の頭部にも外気を導入するために、頭覆い部の内部への外気導入用の小さな開口が上記大きな開口の左側および右側にそれぞれ設けられている。
【特許文献1】米国特許第4,555,816号明細書
【0005】
さらに、上記特許文献1のフルフェイス型ヘルメットにおいては、顎覆い部の上記小さな開口から頭覆い部の内部まで外気を相対的に移動させるための空気通路は、顎覆い部と頭覆い部とが一体に成形された外側シェルと、顎覆い部用の顎部衝撃吸収ライナおよび頭覆い用の頭部衝撃吸収ライナとの間に形成されている。具体的には、顎部衝撃吸収ライナおよび頭部衝撃吸収ライナのそれぞれの外側面に互いにほぼ連通するように通気用条溝をそれぞれ形成することによって、上記通気用条溝とその外側に配されている外側シェルとから成る上記空気通路を形成するようにしている。
【特許文献1】米国特許第4,555,816号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように構成された特許文献1のフルフェイス型ヘルメットにおいては、上記空気通路の終端部から頭部用衝撃吸収ライナの内部(すなわち、ヘルメットの頭部収容空間)に外気を導入するために、頭部用衝撃吸収ライナを厚さ方向に貫通している外気導入用の貫通孔が頭部用衝撃吸収ライナの側頭領域付近に設けられる必要がある。また、顎覆い部に設けた小さな開口から頭覆い部の内部に外気を導入するために、上述のような空気通路が設けられている。そして、このような空気通路においては、顎部用衝撃吸収ライナおよび頭部用衝撃吸収ライナのそれぞれの外側面にそれぞれ形成された通気用条溝に沿って比較的長い距離を流れてきた外気が、上記貫通孔においてほぼ直角に屈曲する必要がある。このために、このような外気の流れに対する抵抗が大きいので、上記外気は、顎覆い部に設けた小さな開口から頭覆い部の内部まで、良好には流れにくい。
【特許文献1】米国特許第4,555,816号明細書
【0007】
したがって、特許文献1のフルフェイス型ヘルメットにおいては、自動二輪車の走行速度を或る程度維持しないと、フルフェイス型ヘルメットの内部の換気が良好には行われない。このために、ライダが自動二輪車で不整地などを走破する際などのように、走行速度が比較的低くかつライダの運動量が比較的多い走行状況では、フルフェイス型ヘルメットの内部の換気が十分には行われない。この結果、ライダの頭部からの発汗による蒸気がフルフェイス型ヘルメットの内部にこもるので、装着者であるライダの不快感が増大する。
【特許文献1】米国特許第4,555,816号明細書
【0008】
また、特許文献1のヘルメットにおいては、頭部用衝撃吸収ライナは、ヘルメットが受ける衝撃を変形しながら吸収して緩和する必要があるので、頭部用衝撃吸収ライナを厚さ方向に貫通している貫通孔を頭部用衝撃吸収ライナの側頭領域付近に設けると、このような貫通孔を設けた頭部用衝撃吸収ライナの側頭領域付近では上記衝撃を緩和する性能が低下する恐れがある。このために、頭部用衝撃吸収ライナを厚さ方向に貫通している貫通孔は、その大きさや形成位置についての制約が大きい。
【特許文献1】米国特許第4,555,816号明細書
【0009】
本発明は、従来のオフロード走行用などのフルフェイス型ヘルメットの上述のような欠点を比較的簡単な構成でもって効果的に是正し得るようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、その第1の観点によれば、装着者の顎部にほぼ対向する顎領域に第1の通気用開口を有する外側シェルと、この外側シェルの内側に配されている衝撃吸収ライナとを備え、上記衝撃吸収ライナの顎部用衝撃吸収部分が、ライナ本体部分と、このライナ本体部分の内側面に設けられているシート状裏当て板とを備え、上記ライナ本体部分が、上記第1の通気用開口にほぼ対向する第2の通気用開口と、このライナ本体部分の内側面に形成されかつ上記第2の通気用開口に連通している通気用条溝とを備えている。
【0011】
また、本発明は、その第2の観点によれば、装着者の顎部にほぼ対向する顎領域に第1の通気用開口を有する外側シェルと、この外側シェルの内側に配されている顎・頬部用衝撃吸収ライナと、上記顎・頬部用衝撃吸収ライナの内側面に取り付けられている頬部用ブロック状内装パッドとを備え、上記顎・頬部用衝撃吸収ライナが、ライナ本体部分と、このライナ本体部分の内側面に設けられかつ上記頬部用ブロック状内装パッドが取り付けられているシート状裏当て板(換言すれば、パッド取付け板)とを備え、上記ライナ本体部分が、上記第1の通気用開口にほぼ対向する第2の通気用開口と、このライナ本体部分の内側面に形成されかつ上記第2の通気用開口に連通している通気用条溝とを備えている。
【0012】
さらに、本発明は、上記第1および第2の観点のいずれにおいても、上記シート状裏当て板が、上記第2の通気用開口にほぼ対向する第3の通気用開口を備え、上記シート状裏当て板が、上記第3の通気用開口の外周囲の少なくとも一部分(好ましくは、ほぼ全外周囲)から成りかつ上記第2の通気用開口に臨んでいる突出部(好ましくは、ほぼリング状の突出部)を備えているのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来のオフロード走行用などのフルフェイス型ヘルメットのように外気が顎部用衝撃吸収ライナおよび頭部用衝撃吸収ライナのそれぞれの外側面にそれぞれ形成された通気用条溝に沿って比較的長い距離を流れた後に貫通孔においてほぼ直角に屈曲する必要がなく、外気は、外側シェルの顎領域に設けられた第1の通気用開口から外側シェルの内部に導入されてからすぐに屈曲して、衝撃吸収ライナのライナ本体部分の内側面に設けられた通気用条溝の始端部に流入することができる。したがって、外気の通気用条溝の始端部への流入や通気用条溝の終端部からの流出が比較的良好に行われるので、フルフェイス型ヘルメットの内部の換気が顎領域から流入する外気によって良好に行われる。
【0014】
また、従来のオフロード走行用などのフルフェイス型ヘルメットのように頭部用衝撃吸収ライナの側頭領域付近にこの頭部用衝撃吸収ライナのほぼ厚さ方向に貫通している通気用の貫通孔を設ける必要がないので、このような通気用貫通孔を設ける場合のように通気用貫通孔の大きさや形成位置についての制約を受けることがない。
【0015】
また、請求項2に係る発明によれば、頬部用ブロック状内装パッドが取り付けられているシート状裏当て板によってライナ本体部分の内側面に形成されている通気用条溝を覆うことができる。したがって、その内部の換気を良好に行うことができるとともに衝撃吸収ライナの側頭部付近に通気用貫通孔を特に設ける必要がないフルフェイス型ヘルメットを比較的簡単な構成でもって提供することができる。
【0016】
さらに、請求項3に係る発明によれば、フルフェイス型ヘルメットの顎領域において第1および第2の通気用開口を通過した外気の一部が第3の通気用開口を通って装着者の口元付近に流入するとともに、上記外気の別の一部がシート状裏当て板の突出部によって流動方向を変えられて通気用条溝へ向かって移動する。したがって、上記突出部が外気の流れに対してそらせ板またはじゃま板として機能するので、フルフェイス型ヘルメットの内部の換気を比較的簡単な構成でもってさらに良好に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
つぎに、本発明をオフロード走行用フルフェイス型ヘルメットに適用した一実施例を、「(1)ヘルメット全体の概略的説明」および「(2)ベンチレーションシステムの具体的説明」に項分けして、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
(1)ヘルメット全体の概略的説明
モトクロス用などのオフロード走行用のフルフェイス型ヘルメット1は、図1〜図3に示すように、装着者の頭部に装着されるフルフェイス型のキャップ状頭部保護体2と、装着者の額部と顎部との間(すなわち、顔面)に対向するように頭部保護体2の前面に形成した窓孔3を開閉し得るシールド板4と、窓孔3の上方において頭部保護体2から前方に突出しているバイザ5と、頭部保護体2の内側にそれぞれ取り付けた左右一対の顎掛け用バンド6とから成っている。なお、シールド板4は、従来から周知のように、ポリカーボネート、その他の硬質合成樹脂などの透明または半透明の硬質材料から成り、また、左右一対の取付けねじ7により頭部保護体2に回動自在に取り付けられている。そして、バイザ5は、従来から周知のように、ポリエチレン、その他の軟質合成樹脂などの不透明、半透明または透明の軟質材料から成り、また、シールド板4を取り付けている左右一対のねじ7により頭部保護体2に取付け固定されている。なお、符号20は、バイザ5と頭部保護体2との間に形成されている左右一対の通気用開口である。
【0019】
シールド板4は、図1〜図3に示す復回動位置において窓孔3を閉塞し、この復回動位置から上方へ往回動した往回動位置においては窓孔3を開放し、これら両者の中間位置においては窓孔3を部分的に開放し得るように構成されている。また、図1において、符号8は、装着者がシールド板4を上方および下方に往復回動させる際に指で摘むために、シールド板4に設けた摘み部である。そして、符号9は、顎掛け用バンド6を頭部保護体2に取り付け固定するためのリベットである。さらに、符号10は、外側シェル11内の空気を外部に排気するための通気孔である。
【0020】
頭部保護体2は、図1〜図3に示すように、この頭部保護体2の外周壁を構成するフルフェイス型の外側シェル11と、この外側シェル11の下端のほぼ全周囲にわたって接着剤、両面接着テープなどによる接着などにより取り付けた断面ほぼU字状の下端用縁部材12と、頭部保護体2の窓孔3を形成するために外側シェル11に形成した窓孔13のほぼ全周囲にわたって接着剤、両面接着テープなどによる接着などにより取り付けた断面ほぼE字状の窓孔用縁部材14と、装着者の前頭部、頭頂部、左右両側頭部および後頭部にそれぞれほぼ対向する前頭領域、頭頂領域、左右両側頭領域および後頭領域において外側シェル11の内周面に当接させて接着剤、両面接着テープなどによる接着などにより取り付けた頭部用裏当て部材15と、装着者の顎部および頬部にそれぞれほぼ対向する顎領域および頬領域において外側シェル11の内周面に当接させて接着剤、両面接着テープなどによる接着などにより取り付けた顎・頬部用裏当て部材16とから成っている。なお、図1においては、窓孔用縁部材14は、外部から透明なシールド板4を介して透けて見えている。
【0021】
図1に示す外側シェル11は、従来から周知のように、FRP、その他の硬質合成樹脂などの硬質材料から成る強度の大きいシェル本体の内周面に多孔性不織布などの柔軟性シートを裏張りした複合材料から成っていてよい。また、下端用縁部材12は、従来から周知のように、発泡塩化ビニール、合成ゴム、その他の軟質合成樹脂などの軟質材料から成っていてよい。さらに、窓孔用縁部材14は、従来から周知のように、合成ゴム、その他の可撓性に富んだ弾性材料から成っていてよい。
【0022】
頭部用裏当て部材15は、図2および図3に示すように、頭部用衝撃吸収ライナ21と、この頭部用衝撃吸収ライナ21の内側面全体をほぼ覆うように、この頭部用衝撃吸収ライナ21に取り付けた通気性の頭部用裏当てカバー22とから成っている。また、顎・頬部用裏当て部材16は、平面的に見てほぼ弧状の顎・頬部用衝撃吸収ライナ23と、装着者の左右両頬部にそれぞれ対向する左右両頬領域において顎・頬部用衝撃吸収ライナ23の内側面にそれぞれ当接させて取り付けた左右一対の頬部用ブロック状内装パッド24とから成っている。そして、顎・頬部用衝撃吸収ライナ23は、外側シェル11の前面のほぼ中央部分の内側面においてほぼ突き合わされてほぼ突き合わせ状態になっている左右一対のライナ本体部分25と、これら左右一対のライナ本体部分の内側面のほぼ全面にわたって接着剤、両面接着テープなどによる接着などにより取り付けた平面的に見てほぼ弧状のシート状裏当て板27とを備えている。
【0023】
この平面的に見てほぼ弧状のシート状裏当て板27は、左右一対のシート状裏当て板33と、これら左右一対のシート状裏当て板33の間に介在しているほぼ中央のシート状裏当て板28との3ピースから成っている。そして、左側のシート状裏当て板33、ほぼ中央のシート状裏当て板28および右側のシート状裏当て板33は、左右一対のライナ本体部分25の内側面において順次ほぼ突き合わされてほぼ突き合わせ状態になっているので、左右一対のライナ本体部分25の内側面のほぼ全面を平面的に見てほぼ弧状に覆っている。
【0024】
図2および図3に示す頭部用衝撃吸収ライナ21のライナ本体部分および顎・頬部用衝撃吸収ライナ23のライナ本体部分25(図4〜図6参照)は、従来から周知のように、発泡ポリスチレン、その他の発泡合成樹脂などの適度な剛性と適度な塑性とをそれぞれ備えた材料からそれぞれ成っていてよい。また、頭部用裏当てカバー22は、従来から周知のように、頭部用衝撃吸収ライナ21に対向する側の面(すなわち、外側面)または両側面にウレタンフォーム、その他の合成樹脂などの柔軟性に富んだ弾性材料から成る適当な形状の層をラミネートした織布や多孔性不織布などのシート材料を組み合わせたものから成っていてよい。
【0025】
図2および図3に示す頭部用裏当てカバー22は、接着剤、両面接着テープなどによる接着などにより頭部用衝撃吸収ライナ21の内側面に部分的に取り付けられることができる。また、頭部用裏当てカバー22の下端部は、必要に応じて、図2および図3に示すように、断面ほぼU字状の係止部材26を用いて外側シェル11および頭部用衝撃吸収ライナ21に取り付けることができる。具体的には、断面ほぼU字状の係止部材26の一端部(すなわち、一方の立上り部)が頭部用裏当てカバー22の下端部に縫い付け、接着剤、両面接着テープなどによる接着などにより取り付けられる。また、断面ほぼU字状の係止部材26の他端部(すなわち、他方の立上り部)は、外側シェル11と頭部用衝撃吸収ライナ21との間に差し込まれる。また、この差し込みに際して、係止部材26の上記一端部は、外側ライナ11の内側面および/または頭部用衝撃吸収ライナ21の外側面に背着剤、両面接着テープなどによる接着などにより取り付けられることができる。また、係止部材26の中間部分は、必要に応じて、頭部用衝撃吸収ライナ21の下側面に接着剤、両面接着テープなどによる接着などにより取り付けられることができる。
【0026】
図2に示す左右一対の頬部用ブロック状内装パッド24は、互いに左右対称的な形状であるから、以下において、右側の頬部用ブロック状内装パッド24について図2を参照して具体的に説明し、左側の頬部用ブロック状内装パッド24についての具体的な説明は省略する。すなわち、右側頬部用ブロック状内装パッド24には、図2に示すように、装着者の右耳部に対応する耳領域が欠除されるように切り込み部31が形成されている。したがって、この内装パッド24は、装着者の右頬部およびその近傍(ただし、右耳部を除く。)に対応した形状を有している。そして、切り込み部31には、右側の顎掛け用バンド6が挿通されている。また、内装パッド24は、従来から周知のように、ウレタンフォーム、その他の合成樹脂などの柔軟性に富んだ1個または複数個の弾性材料から構成した厚板状のクッション部材(図示せず)と、このクッション部材のほぼ全体を袋状に覆っている袋状部材32とから成っていてよい。
【0027】
図2および図3に示す顎・頬部用衝撃吸収ライナ23の左右一対のライナ本体部分25は、互いに左右対称的な形状である。そして、図2および図6に示す左右一対のシート状裏当て板33は、左右一対のライナ本体部分25のうちでも、装着者の頬部にほぼ対向する頬領域のみに裏当てされる形状を有している。また、ほぼ中央のシート状裏当て板28は、装着者の顎部にほぼ対向する左右一対のライナ本体部分25の顎領域を裏当てしている。そして、左右一対のシート状裏当て板33およびほぼ中央のシート状裏当て板28の材質および厚みは、従来のフルフェイス型ヘルメットにおいて頬部用ブロック状内装パッド24を支持するために用いられている左右一対のシート状裏当て板とそれぞれ実質的に同一であってよい。
【0028】
具体的には、左右一対のシート状裏当て板33およびほぼ中央のシート状裏当て板28は、ポリエチレン、その他の軟質合成樹脂などから成る弾性を有しかつ好ましくは非通気性の薄い軟質シート材料を適当な形状に成型することによってそれぞれ構成されていてよい。また、図4〜図6に示す左右一対のシート状裏当て板33およびほぼ中央のシート状裏当て板28の平均的な厚みは、図示の実施例においては、それぞれ約1mmである。そして、本発明においては、実用性の観点から言って一般的に、左右一対のシート状裏当て板33およびほぼ中央のシート状裏当て板28のそれぞれの平均的な厚みは、0.25〜4mmの範囲であるのが好ましく、0.5〜2mmの範囲であるのがさらに好ましく、0.75〜1.4mmの範囲であるのが特に好ましい。また、このような材質および厚みを有するシート状裏当て板33、28は、柔軟性に富んではおらずに、それ自体で所定の形状を保持し得る形状自立性を有する弾性シートとしてそれぞれ構成されている。
【0029】
装着者の頬部にほぼ対向する左右一対のシート状裏当て板33の頬領域のほぼ中央部分には、図2および図6に示すように、顎掛け用バンド6を挿通させるための開口34が形成されている。また、左右一対のシート状裏当て板33の上記頬領域には、係合穴を構成する丸型ホックの雌型部分(すなわち、雌型ホック)35が適当な個数だけ設けられている。なお、雌型ホック35は、複数個(図示の実施例では3個)であるのが好ましく、これら複数個の雌型ホック35は、上記開口34をほぼ取り囲むように、互いに適当な角度で離間して設けられているのが好ましい。また、顎・頬部用衝撃吸収ライナ23の左右一対のライナ本体部分25にも、顎掛け用バンド6を挿通させるための開口36が左右一対のシート状裏当て板33の開口34にほぼ対応して図3に示すようにそれぞれ形成されている。なお、図6において、符号40は、頭部用衝撃吸収ライナ21の下端部に形成されている段部と係合するように、顎・頬部用衝撃吸収ライナ23の上端部に形成されている段部である。
【0030】
左右一対の頬部用ブロック状内装パッド24の外側面には、図2に示すように、係合突起を構成する丸型ホックの雄型部分(すなわち、雄型ホック)37が適当個数設けられている。なお、上記雄型ホック37は、複数個であるのが好ましく、左右一対のシート状裏当て板33の雌型ホック35にほぼ対応してそれぞれ設けられている。したがって、雄型ホック37は、図示の実施例においては、開口34をほぼ取り囲むように互いに適当な角度で離間して3個設けられている。そして、雄型ホック37を雌型ホック35にそれぞれ圧入により凹凸係合させること(換言すれば、雌型ホック35および雄型ホック37から成る丸型ホック)によって、左右一対の頬部用ブロック状内装パッド24は顎・頬部用衝撃吸収ライナ23(換言すれば、シート状裏当て板27、さらに換言すれば、左右一対のシート状裏当て板33)にそれぞれ着脱自在に取り付けられている。なお、左右一対の頬部用ブロック状内装パッド24には、従来から周知のように、これらの内装パッド24の下端部に沿ってシート状の差し込み部(図示せず)を設けることができる。そして、これらの差し込み部を外側シェル11と顎・頬部用衝撃吸収ライナ23との間に差し込むことによって、左右一対の頬部用ブロック状内装パッド24の下端部を頭部保護体2に着脱自在に止着することができる。
【0031】
頭部保護体2には、図1〜図3に示すように、顎・頬部用裏当て部材16の顎領域にほぼ対応して顎部ベンチレータ機構41が設けられている。また、頭部保護体2には、必要に応じて、頭部用裏当て部材15の頭頂領域付近にほぼ対応する頭頂部ベンチレータ機構(図示せず)、頭部用裏当て部材15の後頭領域付近および/または頭頂領域の後部付近にほぼ対応する頭部後側ベンチレータ機構(図示せず)、その他のベンチレータ機構(図示せず)が設けられていてもよい。なお、顎部ベンチレータ機構41については、つぎの「(2)ベンチレーションシステムの具体的説明」の項で具体的に説明する。
【0032】
(2)ベンチレーションシステムの具体的説明
顎部ベンチレータ機構41は、図1〜図3に示すように、通気口形成部材42を備え、また、必要に応じて、シャッタ部材(図示せず)を備えている。これら2種類の頭部ベンチレータ構成部材は、ポリカーボネート、ポリアセタール、ABS、ナイロン、その他の合成樹脂などの適度な弾性と適度な剛性とをそれぞれ備えた材料からそれぞれ成っていてよい。そして、通気口形成部材42には、ほぼ円形状、スリット形状、その他の形状であってよい適当個数の通気口(図示の実施例においては、上下左右で計4個のほぼ円形状の通気口)43が形成されている。
【0033】
外側シェル11の前面のほぼ中央部分には、図2および図3に示すように、第1の通気用開口44が形成されている。そして、通気口形成部材42が、この第1の通気用開口44を外側シェル11の外側面から覆うように、外側シェル11の外側面に接着剤、両面接着テープなどによる接着などにより取り付けられている。なお、前記シャッタ部材は、従来から周知のように、通気口形成部材42の内側面において通気口43を開閉し得るように通気口形成部材42および/または外側シェル11に直線往復動自在、往復回動自在などの往復動自在に取り付けることができる。また、上記シャッタ部材を往復動させるために装着者などが手で摘む摘み部(図示せず)を上記シャッタ部材に直接または間接的に設けることができる。
【0034】
図2および図3に示す顎・頬部用衝撃吸収ライナ23の左右一対のライナ本体部分25のそれぞれの前端部は、外側シェル11の前面のほぼ中央部分の内側面において互いにほぼ突き合わされてほぼ突き合わせ状態になっている。そして、これらの前端部には、図4に示すように、上記突き合わせの面から後端側に向かって延在しかつほぼ厚み方向に貫通している欠如部(換言すれば、面方向に凹んだ凹み部)47が形成されている。したがって、左右一対のライナ本体部分25のそれぞれの前端部が互いにほぼ突き合わされている突き合わせ部には、左右一対の欠如部47から成る第2の通気用開口(すなわち、貫通孔)が形成されている。また、ほぼ中央のシート状裏当て板28のほぼ中央部分には、図4に示すように、上記第2の通気用開口47にほぼ対向する第3の通気用開口(すなわち、貫通孔)46が形成されている。なお、この第3の通気用開口46は、シート状裏当て板28の開口のほぼ全周囲にわたって取り付けた断面ほぼU字状の通気孔用縁部材29の中央開口によって構成されていてよい。また、この通気孔用縁部材29は、合成ゴム、その他の可撓性に富んだ弾性材料から成っていてよい。
【0035】
図4および図5に示す第3の通気用開口46は、左右一対の欠如部47から成る第2の通気用開口よりも一回り小さくなっている。そして、第3の通気用開口46は、左右一対のライナ本体部分25によって部分的にも閉塞されることのない形状になっている。なお、左右一対のライナ本体部分25のそれぞれの前端部は、相互の間に多少とも隙間を有していてもよい。したがって、上記第2の通気用開口47は、必ずしも閉ループ形状である必要はなく、開ループ形状であってもよい。また、上記第3の通気用開口46および/または上記第2の通気用開口47は、必ずしも1個である必要はなく、ほぼ中央のシート状裏当て板28に複数個の通気用開口46を設けたり、左右一対のライナ本体部分25のそれぞれに複数個の欠如部47を設けたりすることなどによって、複数個にしてもよい。
【0036】
顎・頬部用衝撃吸収ライナ23の左右一対のライナ本体部分25のそれぞれの内側面には、図2〜図6に示すように、断面がほぼ開ループ状の通気用条溝51が形成されている。そして、これらの通気用条溝51の始端は、左右一対のライナ本体部分25の前端部にそれぞれ形成されている欠如部(換言すれば、第2の通気用開口)47にそれぞれ連なっている。したがって、通気用条溝(換言すれば、空気通路)51は、第2の通気用開口47に直接に連通している。そして、これらの通気用条溝51は、上記始端からほぼ後方に延びてから上方に向かってほぼ円弧状に屈曲して左右一対のライナ本体部分25の上端部付近で終端となっている。したがって、左右一対のライナ本体部分25と、これら左右一対のライナ本体部分25の内側面にそれぞれ取り付けられているほぼ中央のシート状裏当て板28および左右一対のシート状裏当て板33との間には、上記通気用条溝51から成る断面がほぼ閉ループ状の空気通路が形成されている。
【0037】
通気用条溝(換言すれば、空気通路)51は、図2および図3に示すように、装着者の顎部にほぼ対向する頭部保護体2の顎領域付近から装着者の頬部にほぼ対向する頭部保護体2の頬領域を通って装着者の左右両側頭部にそれぞれほぼ対向する頭部保護体2の左右両側頭領域付近まで延びている。また、通気用条溝(換言すれば、空気通路)51の始端部52(および場合によっては終端部53)は、終端側から始端(および場合によっては始端側から終端)まで、ほぼラッパ形状に末広がりに形成されることができる。通気用条溝(換言すれば、空気通路)51のうちのほぼラッパ形状の始端部52(および場合によってはほぼラッパ形状の終端部53)を除く部分(すなわち、主要部分)の幅、深さ、断面積などは、衝撃吸収ライナ21、23に通常設けられる通気用条溝や空気通路と実質的に同一であってよい。
【0038】
具体的には、図示の実施例においては、図2〜図6に示す通気用条溝(換言すれば、空気通路)51の主要部分の平均的な幅、平均的な深さおよび平均的な断面積は、それぞれ、約8mm、約4mmおよび約25mmである。そして、この点については、本発明においては、実用性の観点から言って一般的に、つぎの(a)項〜(c)項に記載する数値範囲を満足しているのが好ましい。なお、つぎの(a)項〜(c)項に記載するカッコ内の数値範囲は、本発明において満足しているのがさらに好ましい数値範囲である。
(a)通気用条溝(換言すれば、空気通路)51の主要部分の平均的な幅は、4〜16mm(6〜11mm)の範囲、
(b)通気用条溝(換言すれば、空気通路)51の主要部分の平均的な深さは、2〜8mm(3〜5.5mm)の範囲、および
(c)通気用条溝(換言すれば、空気通路)51の主要部分の平均的な断面積は、8〜80mm(12〜40mm)の範囲。
【0039】
また、図4に示すほぼラッパ形状の始端部52の始端の幅および断面積については、上記(a)項および(c)項などに記載した上記数値をそれぞれ4倍した数値が、図示の実施例における数値、好ましい数値範囲およびさらに好ましい数値範囲である。また、上記始端の深さについては、上記(b)項などに記載した数値が、図示の実施例における数値、好ましい数値範囲およびさらに好ましい数値範囲である。そして、図6に示すほぼラッパ形状の終端部53の終端の幅および断面積については、上記(a)項および(c)項などに記載した上記数値をそれぞれ2倍した数値が、図示の実施例における数値、好ましい数値範囲およびさらに好ましい数値範囲である。また、上記終端の深さについては、上記(b)項などに記載した数値が、図示の実施例における数値、好ましい数値範囲およびさらに好ましい数値範囲である。
【0040】
図4に示す第3の通気用開口46(換言すれば、通気孔用縁部材29の中央開口)の大きさ(面積)は、図示の実施例の場合には、約11cmである。また、顎・頬部用衝撃吸収ライナ23のライナ本体部分25の外側面における上記第2の通気用開口47の大きさ(面積)は、図示の実施例の場合には、約26cmである。換言すれば、左右一対のライナ本体部分25の外側面(すなわち、外側シェル11側の面)におけるそれぞれの欠如部47の面積は、約13cmである。さらに、ライナ本体部分25の内側面(すなわち、シート状裏当て板27側の面)における上記第2の通気用開口47の大きさ(面積)は、図示の実施例の場合には、約22cmである。換言すれば、左右一対のライナ本体部分25の内側面におけるそれぞれの欠如部47の面積は、約11cmである。
【0041】
図4に示す第2の通気用開口47は、ライナ本体部分25の外側面から内側面側(換言すれば、前面から後面側)に向かって湾曲しているので、これら第2の通気用開口47は単なる貫通孔ではあるが、ライナ本体部分25の外側面における面積の方がライナ本体部分25の内側面における面積に比べて約4cm大きくなっている。換言すれば、左右一対のライナ本体部分25の外側面におけるそれぞれの欠如部47の面積から、左右一対のライナ本体部分25の内側面におけるそれぞれの欠如部47の面積を差し引いた値は、約2cmとなっている。また、ライナ本体部分25の内側面における上記第2の通気用開口47の大きさ(面積)は、上記第1の通気用開口46の大きさ(面積)よりも約11cm大きくなっている。換言すれば、ほぼ中央のシート状裏当て板28(換言すれば、3ピースのシート状裏当て板27)が左右一対のライナ本体部分25の内側面における上記第2の通気用開口47(すなわち、ヘルメット1の前面の中央部分側)にほぼ等幅でそれぞれ突出しているほぼリング状(換言すれば、ほぼ閉ループ状)の突出部48(図4参照)の面積は、約5.5cmである。したがって、この突出部48は、図4に示すように、第2の通気用開口47から張り出してこの開口47に臨んでおり、その平均的な突出幅は、約6mmである。
【0042】
上述の点については、本発明においては、実用性の観点から言って一般的に、つぎの(d)項〜(j)項に記載する数値範囲を満足しているのが好ましい。なお、つぎの(d)〜(j)項に記載するカッコ内の数値範囲は、本発明において満足しているのがさらに好ましい数値範囲である。
(d)第3の通気用開口46の面積(開口46が複数個ある場合には、合計の面積)は、3〜40cm(6〜20cm)の範囲、
(e)ライナ本体部分25の外側面における第2の通気用開口47の面積(開口46が複数個ある場合には、合計の面積)は、8〜100cm(16〜46cm)の範囲、そして、左右一対のライナ本体部分25の外側面におけるそれぞれの欠如部47の面積(欠如部47が複数個ある場合には、合計の面積)は、4〜50cm(8〜23cm)の範囲、
(f)ライナ本体部分25の内側面における第2の通気用開口47の面積(開口46が複数個ある場合には、合計の面積)は、6〜80cm(12〜38cm)の範囲、したがって、左右一対のライナ本体部分25の内側面におけるそれぞれの欠如部47の面積(欠如部47が複数個ある場合には、合計の面積)は、3〜40cm(6〜19cm)の範囲、
(g)ライナ本体部分25の外側面における第2の通気用開口47の前記(e)項に記載の面積から、ライナ本体部分25の内側面における第2の通気用開口47の前記(f)項に記載の面積を差し引いた値は、2〜20cm(4〜8cm)の範囲、そして、左右一対のライナ本体部分25の外側面におけるそれぞれの欠如部47の前記(d)項に記載の面積から、左右一対のライナ本体部分25の内側面におけるそれぞれの欠如部47の前記(f)項に記載の面積を差し引いた値は、1〜10cm(2〜4cm)の範囲、
(h)ライナ本体部分25の内側面における上記第2の通気用開口47の面積から、第3の通気用開口46の面積を差し引いた値は、3〜40cm(6〜18cm)の範囲、
(i)ほぼ中央のシート状裏当て板28が左右一対のライナ本体部分25の内側面における第2の通気用開口47にほぼ等幅などで突出している突出部の面積は、1.5〜20cm(3〜9cm)の範囲、および
(j)ほぼ中央のシート状裏当て板28が左右一対のライナ本体部分25の内側面における第2の通気用開口47に突出している突出部48の平均的な突出幅は、3〜12mm(4.5〜8mm)の範囲。
【0043】
なお、上記(d)項〜(j)項などに記載の面積および突出幅は、それぞれ、図4に示す第3および第2の通気用開口46、47(欠如部47を含む。)および突出部48に正対してこれらをそれぞれ平面的に見たときの値である。また、上記(d)項〜(j)項などに記載の面積および突出幅は、それぞれ、図4に示す第3および第2の通気用開口46、47(欠如部47を含む。)に通気用条溝51を含ませないでそれぞれ算出した値である。
【0044】
前述のように、図2〜図6に示す顎・頬部用衝撃吸収ライナ23の左右一対のライナ本体部分25のそれぞれの前端部は、外側シェル11の前面のほぼ中央部分の内側面において互いにほぼ突き合わされてほぼ突き合わせ状態になっている。そして、ライナ本体部分25は、図2〜図4に示すように、ほぼ平坦な上下一対の前端面54、55をそれぞれ備えることができる。したがって、左右一対のライナ本体部分25のそれぞれの上下一対の前端面54、55は、上記突き合わせの際に、必要に応じて、接着剤、両面接着テープなどによる接着などにより互いに結合されることができる。
【0045】
図2〜図6に示す顎・頬部用衝撃吸収ライナ23のほぼ中央のシート状裏当て板28付近は、柔軟性を備えかつ好ましくは非通気性である人工皮革などのシート材料で被覆することもができる。このような被覆用シート材料(図示せず)は、左右一対の内装パッド24の間のほぼ全体にわたって、ライナ23の内側面を被覆することもできる。また、上記被覆用シート材料の上端部および下端部をライナ23の上端および下端においてそれぞれライナ23の外側面に折り返すことによって、ライナ23の上端部付近および下端部付近も同時に被覆することができる。なお、上記被覆用シート材料には、ほぼ中央のシート状裏当て板28に形成されている第3の通気用開口46にほぼ対応した通気用開口が形成されていてこの第3の通気用開口46がこの被覆用シート材料によって部分的にも閉塞されないのが好ましい。このような被覆用シート材料による左右一対のライナ23の被覆は、具体的には、被覆用シート材料の左右両端部を左右一対のシート状裏当て板33のそれぞれの前端部に、縫い付け、接着剤、両面接着テープなどによる接着などにより取り付けてから行うことができる。そして、この場合には、ほぼ中央のシート状裏当て板28の内側面のほぼ全面を被覆用シート材料によって被覆することができる。
【0046】
図1〜図3に示す給気口形成部材42の内側面(具体的には、この内側面と、ほぼ中央のシート状裏当て板28の外側面との間)には、通気性に富みかつ防塵性を備えたウレタンフォームなどのメッシュ状の防塵性材料から成る防塵シートを配置することができる。また、このような防塵シートは、左右一対の空気通路51の始端の手前にも、必要に応じて、それぞれ配置することができる。また、頭部用裏当てカバー22の内周面(すなわち、装着者の頭部が収容される空間60側の面)には、図2および図3に示すように、空気通路をそれぞれ形成するための幾つかの通気用条溝56、57がカバー22に対してほぼ左右対称的にそれぞれ形成されることができる。そして、これらの通気用条溝のうちの左右一対の通気用条溝(換言すれば、空気通路)57のそれぞれの一端部(すなわち、下端部)58は、顎・頬部用衝撃吸収ライナ23にそれぞれ形成されている左右一対の通気用条溝51の終端部53にそれぞれほぼ対向している。また、左右一対の通気用条溝57のそれぞれの下端部58には、頭部用衝撃吸収ライナ21のこれらと対応する部分を面取りすることによって、面取り部61が形成されている。したがって、左右一対の通気用条溝51をそれらの後端部53まで流動してきた左右1組の空気流は、これらの面取り部61の存在によって、左右一対の通気用条溝57のそれぞれの下端部58にそれぞれ良好に流入することができ、また、場合によっては、頭部用衝撃吸収ライナ21と頭部用裏当てカバー22との間に良好に流入することができる。
【0047】
上述のように構成された図1〜図6に示すフルフェイス型ヘルメット1のベンチレーションシステムは、以下に記述するように動作することができる。
【0048】
すなわち、装着者がフルフェイス型ヘルメット1を装着して自動二輪車に乗ってオフロードなどを走行すれば、外気(すなわち、外部空気)が顎部ベンチレータ機構41の給気口形成部材42の給気口としての通気口(すなわち、第1の通気用開口)43にほぼ正面から相対的に流入する。そして、この通気口43を通過した外気の一部は、左右一対のライナ本体部分25のそれぞれの前端部の間に形成されている給気口としての第2の通気用開口47と、ほぼ中央のシート状裏当て板28に形成されている給気口としての第3の通気用開口46とをそれぞれ相対的に通過して、装着者の顎部付近(換言すれば、口元付近)に相対的に流れ込む。
【0049】
また、通気口43を通過した外気の別の一部は、上記第2の通気用開口47に相対的に流入するとともに、顎・頬部用衝撃吸収ライナ23にそれぞれ設けられている左右一対の空気通路51のそれぞれの始端部52に相対的に流入する。なお、ほぼ中央のシート状裏当て板28(換言すれば、シート状裏当て板27)には、図4に示すように、上記第2の通気用開口47の外周囲に臨んでいるそらせ板またはじゃま板としてのほぼリング状の突出部48が形成されている。したがって、上記通気用開口47に相対的に流入する外気の一部はこのほぼリング状の突出部48に遮られて上記通気用開口47への相対的流入を阻止されるので、外気が左右一対の空気通路51のそれぞれの始端部52に相対的に流入し易くなる。
【0050】
左右一対の空気通路51のそれぞれの始端部52にそれぞれ相対的に流入した左右1組の外気(すなわち、空気流)は、図2〜図4に示す左右一対の空気通路51内をこれら左右一対の空気通路51の終端部53まで後方に向かってそれぞれ相対的に流動する。そして、上記左右1組の空気流は、これら左右一対の空気通路51のそれぞれの終端から左右一対の通気用条溝(換言すれば、空気通路)57のそれぞれの下端部58に向かってそれぞれ相対的に流入する。さらに、上記左右1組の空気流は、左右一対の通気用条溝57と装着者の頭部とのそれぞれの間を左右一対の通気用条溝57にそれぞれ沿ってさらに相対的に流動する。
【0051】
左右一対の通気用条溝57のそれぞれの上端部59は、別の左右一対の通気用条溝(換言すれば、空気通路)56に連なっている。したがって、左右一対の通気用条溝57にそれぞれ沿って下端部58から上端部59に向かってそれぞれ相対的に流動する上記左右1組の空気流は、左右一対の通気用条溝57内を前方から後方に向かってそれぞれ相対的に流動している別の左右1組の空気流とそれぞれ混じり合ってから、左右一対の通気用条溝57内を後方に向かってそれぞれ相対的に流動する。そして、上記左右1組の空気流、上記別の左右1組の空気流および上記混じり合った左右1組の空気流のそれぞれの一部または全部は、通気用条溝56、57内を流動する際に、頭部収容空間60内に拡散されてから、前記頭部後側ベンチレータ機構(図示せず)の排気孔、頭部収容空間60の下端、通気孔10などから外部に排出される。なお、ベンチレーションシステムについての上述の動作説明においては、顎部ベンチレータ機構41以外の図示を省略したベンチレータ機構(すなわち、前記頭頂部ベンチレータ機構、前記頭部後側ベンチレータ機構など)や、このようなベンチレータ機構に関連した図示を省略の空気通路の動作説明は、省略している。
【0052】
以上において、本発明の一実施例について詳細に説明したが、本発明は、この実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に基づいて各種の変更および修正が可能である。
【0053】
例えば、上述の実施例においては、本発明を顎覆い部が上昇不能なフルフェイス型ヘルメット1に適用したが、顎覆い部が上昇可能なジェット型兼用のフルフェイス型ヘルメットにも、本発明を適用することができる。
【0054】
また、上述の実施例においては、顎・頬部用衝撃吸収ライナ23のライナ本体部分を左側のライナ本体部分25と右側のライナ本体部分25とから構成した。しかし、左側のライナ本体部分25と右側のライナ本体部分25とを一体成形したライナ本体部分を用いるようにしてもよい。
【0055】
また、上述の実施例においては、平面的に見てほぼ弧状のシート状裏当て板27を左右一対のシート状裏当て板33とほぼ中央のシート状裏当て板28との3ピースから構成した。しかし、これら3枚のシート状裏当て板33、28を順次連続した状態に一体成形することによって、1ピースのものにしてもよい。また、左右一対のシート状裏当て板33のうちのいずれか一方とほぼ中央のシート状裏当て板28とを一体成形することによって、2ピースのものにしてもよい。さらに、左右一対のライナ本体部分25の場合と同様に、左右一対のシート状裏当て板のみから全体として平面的に見てほぼ弧状のシート状裏当て板27を構成してもよい。この場合、左右一対のシート状裏当て板の突き合わせ部にそれぞれ欠如部を形成して、これら左右一対の欠如部によって第3の通気用開口46を形成すればよい。
【0056】
また、上述の実施例においては、左右一対のライナ本体部分25にそれぞれ形成した左右一対の欠如部47によってライナ本体部分25に第2の通気用開口47を形成した。しかし、左右一対のライナ本体部分25のうちのいずれか一方を長くして他方を短くするとともに、この長くしたライナ本体部分25のみにこの第2の通気用開口47と同様の閉ループ状の通気用開口を形成してもよい。
【0057】
また、上述の実施例においては、シート状裏当て板27に第3の通気用開口46を設けた。しかし、この第3の通気用開口46を通して装着者の顎部に向かって外気を流入させる必要がない場合には、上記第3の通気用開口46を無くしてこの部分を閉塞面とすることができる。さらに、上記第3の通気用開口46を開閉するシャッタ(図示せず)を設ければ、上記第3の通気用開口46を開閉したり開口割合を変更したりすることができる。
【0058】
また、上述の実施例においては、顎・頬部用衝撃吸収ライナ23にそれぞれ形成される左右一対の空気通路をそれぞれ構成するチャンネル空間は、左右一対のライナ本体部分25にそれぞれ形成された左右一対の通気用条溝51のみによって構成した。しかし、シート状裏当て板27にも左右一対の通気用条溝51にそれぞれ対向する左右一対の第2の通気用条溝を設けることによって、左右一対の通気用条溝51と、左右一対の第2の通気用条溝とから左右一対の空気通路を形成することもできる。また、このような第2の通気用条溝に変えて、通気用条溝51側に突出する突出部を空気通路51の一部または全部に沿ってシート状裏当て板27に設けることもできる。さらに、これらいずれの場合においても、空気通路51を流れる空気流の一部がシート状裏当て板27の内側面に流入するための1個または複数個の小孔を、シート状裏当て板27に設けることができる。
【0059】
さらに、上述の実施例においては、左右一対の内装パッド24のそれぞれの外側面に雄型ホック37をそれぞれ設けるとともに、シート状裏当て板27に雌ホック35をそれぞれ設けた。しかし、上記雌ホック35のうちの1個または複数個または全部を雄ホック37に変えるとともに、このようなに変えた上記雌ホック35に対応していた雄ホック37を雌ホック35に変えることもできる。また、左右一対の内装パッド24をシート状裏当て板27に取り付けるための取り付け具は、雌ホック35と雄ホック37とから成る丸型ホックである必要は必ずしもなく、面ファスナなどであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明をオフロード走行用フルフェイス型ヘルメットに適用した一実施例における向かって右側から見たヘルメット全体の概略的な側面図である。(実施例1)
【図2】図1に示すヘルメットの中央縦断面図である。(実施例1)
【図3】右側頬部用ブロック状内装パッドおよびシート状裏当て板をそれぞれ省略した状態における図2に示すヘルメットと同様の中央縦断面図である。(実施例1)
【図4】図2に示す顎・頬部用衝撃吸収ライナの前側部分の、左側ライナ本体部分を省略しかつ向かって右側の斜め前方の上方から見た状態における斜視図である。(実施例1)
【図5】通気孔用縁部材を省略した状態における図4のV−V線に沿った断面図である。(実施例1)
【図6】図2に示す顎・頬部用衝撃吸収ライナの後側部分の、向かって右側の斜め後方の上方から見た状態における斜視図である。(実施例1)
【符号の説明】
【0061】
1 オフロード走行用フルフェイス型ヘルメット
11 フルフェイス型外側シェル
21 頭部用衝撃吸収ライナ
23 顎・頬部用衝撃吸収ライナ
24 頬部用ブロック状内装パッド
25 ライナ本体部分
27 シート状裏当て板
28 ほぼ中央のシート状裏当て板
33 左側または右側のシート状裏当て板
43 通気口(第1の通気用開口)
44 通気用開口(第1の通気用開口)
46 第3の通気用開口
47 欠如部(第2の通気用開口)
48 突出部
51 通気用条溝(空気通路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘルメット装着者の顎部にほぼ対向する顎領域に第1の通気用開口を有する外側シェルと、この外側シェルの内側に配されている衝撃吸収ライナとを備え、
上記衝撃吸収ライナの顎部用衝撃吸収部分が、ライナ本体部分と、このライナ本体部分の内側面に設けられているシート状裏当て板とを備え、
上記ライナ本体部分が、上記第1の通気用開口にほぼ対向する第2の通気用開口と、このライナ本体部分の内側面に形成されかつ上記第2の通気用開口に連通している通気用条溝とを備えていることを特徴とするフルフェイス型ヘルメット。
【請求項2】
ヘルメット装着者の顎部にほぼ対向する顎領域に第1の通気用開口を有する外側シェルと、この外側シェルの内側に配されている顎・頬部用衝撃吸収ライナと、上記顎・頬部用衝撃吸収ライナの内側面に取り付けられている頬部用ブロック状内装パッドとを備え、
上記顎・頬部用衝撃吸収ライナが、ライナ本体部分と、このライナ本体部分の内側面に設けられかつ上記頬部用ブロック状内装パッドが取り付けられているシート状裏当て板とを備え、
上記ライナ本体部分が、上記第1の通気用開口にほぼ対向する第2の通気用開口と、このライナ本体部分の内側面に形成されかつ上記第2の通気用開口に連通している通気用条溝とを備えていることを特徴とするフルフェイス型ヘルメット。
【請求項3】
上記シート状裏当て板が、上記第2の通気用開口にほぼ対向する第3の通気用開口を備え、
上記シート状裏当て板が、上記第3の通気用開口の外周囲の少なくとも一部分から成りかつ上記第2の通気用開口に臨んでいる突出部を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載のヘルメット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−23418(P2007−23418A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−206859(P2005−206859)
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【出願人】(390005429)株式会社SHOEI (14)
【Fターム(参考)】