説明

フレキシブルプリント配線板用積層体およびその製造方法

【課題】 ポリイミド樹脂層と銅箔との間の初期接着力を高めると共に、熱負荷後の接着力低下を可及的に低減でき、なおかつ、耐久性に優れ、ファインピッチ配線加工にも対応できるフレキシブルプリント配線板用積層体を提供する。
【解決手段】 少なくとも表面にNi及びZnが付着された銅箔にポリイミド前駆体樹脂溶液を塗工し、酸素濃度1〜10vol%を有する雰囲気下で加熱処理することにより上記ポリイミド前駆体樹脂溶液を乾燥及び硬化させて銅箔上にポリイミド樹脂層を形成するフレキシブルプリント配線板用積層体の製造方法であって、上記で得られた積層板を150℃で168時間保持した後の銅箔の90°方向引き剥がし接着力が1.0kN/m以上を有することを特徴とするフレキシブルプリント配線板用積層体の製造方法、及びこの製造方法によって得たフレキシブルプリント配線板用積層体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い初期接着力を発揮すると共に、熱負荷後であっても高い接着力を維持できるフレキシブルプリント配線板用積層板を得るための製造方法及びこの製造方法を用いて得たフレキシブルプリント配線板用積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ますます電子機器の小型化、高密度化及び高機能化が進み、フレキシブルプリント配線板のファインピッチ微細加工への対応が求められている。そのため、フレキシブルプリント配線板を形成する導体自体の薄膜化とロープロファイル化(銅箔表面の平坦化)が要求されると同時に、導体である銅箔と絶縁体である絶縁性樹脂との接着強度がより強固であることが強く要求される。一方で、絶縁性樹脂と接する導体の表面がより平坦化されると、導体と絶縁性樹脂との界面での接着力の低下が問題となる。この接着力については、フレキシブルプリント配線板の製造直後のみならず、高密度実装の条件やフレキシブルプリント配線板の使用環境の観点から、加熱負荷や湿熱環境で長期間使用された後の接着力についても優れていることが必要であり、耐熱性や耐久性に優れたフレキシブルプリント配線板の開発が求められている。
【0003】
一般に、フレキシブルプリント配線板においては、接着剤層を有さずに、銅箔にポリイミド樹脂を直接コーディングして耐熱性絶縁層を形成する「2層型キャスト」によるものが、耐熱性、寸法変化率、及び絶縁信頼性等の面で優れることが知られている。更には、ファインピッチ配線に対応できるフレキシブルプリント配線板用の材料を提供するために、他の特性を落さず、導体と絶縁樹脂との接着力の向上、特に熱負荷後の接着力低下を防ぐための研究・開発が盛んに行われている。
【0004】
このような状況の下、例えば、ファインピッチ配線への対応を考慮し、ポリイミドフィルム上に真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング又はめっき等の方法で導電性金属層を形成させる2層型プリント配線板が提案されている。しかしながら、これらのフレキシブルプリント配線板では、金属層(導体)とポリイミドフィルム(絶縁層)との接着力が比較的初期においては満足できるものであっても(80μmピッチ配線での銅箔の90℃引き剥がし接着力が0.6kN/m以上)、長期間使用された後であったり、加熱による負荷や湿熱環境に晒された後での接着力については、必ずしも満足できるものではない。
【0005】
また、特許文献1(特開平1−321687号公報)では、フィルム表面に樹脂層を介して金属蒸着層を設け、この上に厚膜の金属層をめっき法で積層した「3層型めっき」にかかる技術が提案されている。しかしながら、樹脂層としてエポキシ系樹脂やアクリル系樹脂等を用いると金属層(導体)とフィルム(絶縁体)との接着力は向上されるものの、この樹脂層自体が耐熱性の点で問題がある。
また、特許文献2(特開平4−282844号公報)によれば、絶縁層としてシロキサン系ジアミンを導入したポリイミド樹脂を用いて接着力の向上がなされ、耐熱性の点においても満足できる配線板を得ているが、85℃85%RH等の湿熱条件にて長時間放置した後に200℃を越える温度のハンダ浴に浸けると金属層がはじける、いわゆるポップコーンと呼ばれる現象が起きてしまい、また、金属層との接着強度も著しく低下する。
また、特許文献3(特開平2−284923号公報)には、絶縁層として末端基に架橋性の不飽和官能基を有する末端基変性イミドオリゴマーを用いる方法が示されており、耐湿熱試験後の接着強度の低下を抑えられ、かつ、ポップコーン現象も起きにくくなるが、常温での接着強度が満足できるものではない。
【0006】
更には、特許文献4(特開平11−92917)では、ポリイミドフィルムをプラズマ処理し、ニッケル、クロム及びチタンから選択した1種類以上の金属の薄膜(中間層)を形成し、さらに銅薄膜を形成することにより得られる金属ポリイミド樹脂積層体について記載している。この方法によれば、銅とポリイミドフィルムとの接着力は向上するが、銅箔膜及び中間層をエッチングする必要があるためエッチング効率が悪く、高精密化が難しいという点で問題がある。また、クロム系合金の製膜コストや廃水処理コストがかかると共に、エッチング廃液処理などが環境に大きな負担をかけるという問題もある。
【特許文献1】特開平1−321687号公報
【特許文献2】特開平4−282844号公報
【特許文献3】特開平2−284923号公報
【特許文献4】特開平11−92917号公報
【0007】
ところで、銅箔の表面にキャスティング法によりポリイミド樹脂層を形成してフレキシブルプリント配線板を作製する場合、銅箔とポリイミド樹脂層との接着力を向上させる手段として、銅箔の表面に付着させる金属の種類とその付着量を調整したり、あるいはシランカップリング剤による処理を施したりされるのが一般的である。しかしながら、接着特性、加工特性、及び電気特性等の全てのバランスを取るためには、金属種類や付着量の調整範囲が限られてしまい、また、これらを調整した場合の効果はポリイミド樹脂層を形成する樹脂の特性によってばらつきがある。そのため、金属種類やその付着量の調整のみで接着力の向上を図ることは現実的には困難である。一方、銅箔の表面をシランカップリング剤によって処理すると、接着力向上には効果があるものの、得られたフレキシブルプリント配線板の耐熱性や耐久性に悪影響を及ぼすおそれもある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、キャスティング法により銅箔の表面にポリイミド樹脂層を形成する場合に、銅箔の表面に塗工したポリイミド前駆体樹脂溶液を硬化させる硬化プロセスでの条件を最適化することによって、ポリイミド樹脂層と銅箔との間の初期接着力を高めると共に、熱負荷後の接着力低下を可及的に低減でき、なおかつ、耐久性に優れ、ファインピッチ配線加工にも対応できるフレキシブルプリント配線板用積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するために、本発明者等が詳細に検討したところ、銅箔の表面に付着されるNi濃度が増加すると加熱負荷後の接着性が改善されるが、エッチング特性に対しては好ましくない影響を及ぼすということを確認した。また、このNiが銅箔とポリイミド樹脂層との間において酸化物を形成して、このニッケル酸化物の存在によって銅箔とポリイミド樹脂層との界面が安定化されると共に、このニッケル酸化物が銅箔側からポリイミド樹脂層側へのCu(I)の拡散を防止するバリアー層として働き、ポリイミド樹脂の劣化を防ぐ役割をするという知見を得た。
そして、本発明者らは、これらの知見に基づき、表面にNi及びZnが付着された銅箔にポリイミド前駆体樹脂溶液を塗工し、所定の濃度の酸素を有する雰囲気下で加熱処理することによって得た積層体が、ポリイミド樹脂層と銅箔との間の初期接着力に優れると共に、熱負荷後の接着力の低下が可及的に低減されることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、少なくとも表面にNi及びZnが付着された銅箔にポリイミド前駆体樹脂溶液を塗工し、酸素濃度1〜10vol%を有する雰囲気下で加熱処理することにより上記ポリイミド前駆体樹脂溶液を乾燥及び硬化させて銅箔上にポリイミド樹脂層を形成するフレキシブルプリント配線板用積層体の製造方法であって、上記で得られた積層板を150℃で168時間保持した後の銅箔の90°方向引き剥がし接着力が1.0kN/m以上を有する、フレキシブルプリント配線板用積層体の製造方法である。
【0011】
本発明において、銅箔については、その表面に少なくともNi及びZnが付着されたものである必要がある。好ましくは銅箔の表面におけるNiの付着量が金属ニッケル換算で2.5〜5.0μg/cm2であるのがよく、また、NiとZnの付着量割合を表すNi/(Ni+Zn)については0.70〜0.90の範囲であるのが好ましい。Niの付着量が2.5μg/cm2より少ないと、銅箔とポリイミド樹脂層との初期ピールが低下し、反対に5.0μg/cm2より多くなると、得られたフレキシブルプリント配線板用積層体に回路加工を行った後の錫めっき工程において、錫が異常析出するという現象が起こり、加工性の低下と電気信頼性不良等の問題を生じるおそれがある。また、Znの付着量については、金属亜鉛換算で0.25〜50μg/cm2、好ましくは1.0〜40μg/cm2であるのがよい。亜鉛の付着量が0.25μg/cm2より少ないと耐熱エージング後の銅箔とポリイミド樹脂層との接着強度が低下し、反対に50μg/cm2より多くなると加工段階で使用される酸などの薬液により、ポリイミド樹脂層と銅箔との界面が侵され、これらの接着強度の低下を引き起こすおそれがある。
【0012】
NiとZnの付着量割合を表すNi/(Ni+Zn)については、0.70より小さい場合、換言すればZnが多い場合、後述するような、銅箔の表面におけるCu(I)の拡散防止に期待できるニッケル酸化物の連続相の形成を妨げ、接着強度におよぼす加熱処理雰囲気中の酸素濃度の効果が発現できなくなり、反対に0.90より大きくなると、適正なZn量が低下し、初期接着強度の発現が期待できなくなる。銅箔の表面に付着されたNiとZnについては、本発明における加熱処理によってそれぞれ酸化されると考えられ、この際、後述するような、銅箔の表面における種々の金属の拡散を抑制して、ポリイミド樹脂層と銅箔との界面を安定化させる働きをするのがNiの酸化物であると推測される。Znの過剰な存在はNiの酸化を妨げ、接合界面を安定化させるニッケル酸化層の形成を阻止し、Cu(I)の拡散を抑制する効果も期待できなくなる。一方、適正なZn量は接着強度を高めるためには不可欠であり、適正なNiとZnの付着量割合を表す際にNi/(Ni+Zn)が重要な指標となる。
【0013】
銅箔の表面にNi及びZnを付着させる手段としては、例えば電気めっき法、無電解めっき法、蒸着法、スパッタ法等を挙げることができ、金属の付着量の制御が比較的容易であることから電気めっき法を用いるのが好ましい。この際に用いるめっき浴については、少なくともNi及びZnを含んだ酸性浴であるのがよい。
【0014】
また、本発明において、銅箔の表面には上記金属以外にB、Al、P、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ag、In、Zr、Sn、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Pb、Ta、W、Ir及びPtから選ばれる少なくとも1種以上の金属或いはこれらの合金が付着されていてもよい。これらの金属はNi及びZnさらに上記金属からなる表面処理金属の粒径制御と接着界面の強化等の働きをすると考えられる。
【0015】
また、本発明において用いられる銅箔については、電解銅箔または圧延銅箔のいずれであってもよく、その厚さについては特に制限されないが、通常は5〜80μmのものが用いられ、好ましくは9〜35μmのものが用いられる。また、銅箔の表面粗さについては、ポリイミド前駆体樹脂溶液を塗工する側の表面のRzが1.0μm以下であれば、本発明の効果をより向上させることができる観点から好ましい。尚、上記Rzは、表面粗さにおける十点平均粗さ(JIS B 0601-1994)を示す。
【0016】
また、本発明においては、Ni及びZnが付着された銅箔の表面に対して、酸化クロム層を設けるのが好ましい。この酸化クロム層の存在によって、ポリイミド樹脂層と銅箔との接着強度をより一層向上させることができ、また、銅箔の錆の発生を抑制させることもできる。この酸化クロム層については、例えば特公昭61-33906号公報に記載されているような、一般的なクロメート処理によって形成することができる。
【0017】
本発明において、上記銅箔の表面(Ni及びZnが付着された側)に塗工するポリイミド前駆体樹脂溶液としては、公知のジアミンと酸無水物とを溶媒の存在下で重合して得ることができる。
例えば、用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、無水ピロメリット酸(PMDA)、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3',4,4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸無水物(DSDA)、3,3',4,4'-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4'-オキシジフタル酸無水物等を挙げることができ、好ましくは無水ピロメリット酸(PMDA)、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3',4,4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸無水物(DSDA)である。また、芳香族ジアミンとしては、2,2'−ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、1,3−ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPR-E)、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(BAPB)、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、2'-メトキシ4,4'-ジアミノベンズアニリド、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジヒドロキシ-4,4'-ジアミノビフェニル、4,4'-ジアミノベンズアニリド等を挙げることができ、好ましくは2,2'−ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、1,3−ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPR-E)、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(BAPB)である。
これらのテトラカルボン酸二無水物や芳香族ジアミンについては、それぞれ、1種のみを使用してもよく2種以上を併用して使用することもできる。
【0018】
溶媒については、ジメチルアセトアミド、n-メチルピロリジノン、2-ブタノン、ジグライム、キシレン等が挙げられ、これらの1種若しくは2種以上を併用して使用することもできる。
重合したポリイミド前駆体樹脂溶液の粘度については、銅箔表面への濡れ性と均一な膜厚の制御および塗工の容易さの観点から、好ましくは500cps〜35,000cpsの範囲となるようにするのがよい。また、銅箔の表面に塗工するポリイミド前駆体樹脂溶液については、得られる配線板用積層体の用途にもよるが、銅箔の表面に12μm〜60μm程度の膜厚のポリイミド樹脂層が形成されるようにするのがよい。
【0019】
また、本発明においては、銅箔の表面にポリイミド前駆体樹脂溶液を塗工して、酸素濃度1〜10vol%、好ましくは2〜5vol%を有する雰囲気下で加熱処理することによって、上記ポリイミド前駆体樹脂溶液を乾燥及び硬化させて銅箔上にポリイミド樹脂層を形成する。加熱処理における雰囲気については、酸素濃度が上記値になるようにして、その他として、例えば窒素(N)、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)等を含むようにするのがよい。また、この加熱処理については、ポリイミド樹脂の種類や銅箔の大きさ等によって異なるが、一般には100〜400℃の温度範囲で、加熱時間の合計が20〜40分程度となるようにするのがよい。
【0020】
銅箔の表面にポリイミド前駆体樹脂溶液を塗工し、次いで加熱処理するこれらの工程は、2回以上繰り返して行ってもよい。すなわち、銅箔の表面にポリイミド前駆体樹脂溶液を塗工し、次いで所定の条件で加熱処理を行ってポリイミド前駆体樹脂溶液を乾燥及び硬化させた後、再びその表面にポリイミド前駆体樹脂溶液を塗工し、所定の加熱処理を行うようにしてもよい。なお、ポリイミド前駆体樹脂溶液を複数回塗工する場合には、同じポリイミド前駆体樹脂溶液を用いてもよく、異なるものを用いてもよい。
【0021】
少なくとも表面にNi及びZnが付着された銅箔を用いてこの金属付着面にポリイミド前駆体樹脂溶液を塗工し、所定の酸素分圧環境下で加熱処理を行うことで、得られる積層体の銅箔とポリイミド樹脂層との接着力が製造初期において優れると共に、長期間使用後や加熱による負荷又は湿熱環境下に晒された後であっても優れた接着力を有することについて、以下のように推測する。
本発明者らは、種々の実験を通じて、銅箔とポリイミド樹脂層との界面に形成されるNi及びZnの酸化物が接着力の向上に関係するという考えに至った。表面にNi及びZnが付着された銅箔にポリイミド前駆体樹脂溶液を塗工してこのポリイミド前駆体樹脂溶液を乾燥及び硬化させる際に、所定の酸素分圧環境下で加熱処理を行うことで、銅箔とポリイミド樹脂層との間に上記金属の酸化物が形成され、この酸化物の厚みを制御することで、銅箔とポリイミド樹脂層との密着性が改善されることを見出した。すなわち、銅箔の表面に付着されたNi及びZnが、上記加熱処理によって銅箔とポリイミド樹脂層との界面に酸化物を形成する。これらの金属の酸化物は、ポリアミック酸(ポリイミド前駆体樹脂溶液)と反応し易く、ポリイミド樹脂層と銅箔との間に強い化学結合を形成し、銅箔とポリイミド樹脂層との接着力の向上に寄与するものと考えられる。また、銅箔とポリイミド樹脂層との界面において形成された上記金属酸化物は、銅箔とポリイミド樹脂層の界面を安定化させ、ポリイミド樹脂層の劣化原因のひとつと考えられる銅箔側からポリイミド樹脂層側へのCu(I)の拡散を防ぐ働きも確認された。
【0022】
ところで、ポリイミド樹脂は酸素の存在下で高温に晒されると劣化すると考えられていることから、通常、銅箔の表面に塗工したポリアミック酸(ポリイミド前駆体樹脂溶液)を乾燥及び硬化させる際には、不活性ガス雰囲気下で行うことが一般的である。また、得られた積層板をパターン形成する際にポリイミド樹脂層と銅箔との間に存在する金属酸化物によって、ラインの表面が荒くなり、パターンの直線性に悪影響を及ぼすと考えられていることからも、上記のように不活性ガス雰囲気下で加熱処理が一般的であるとされる。
【0023】
これに対して本発明者らは、上記知見に基づき、加熱処理の雰囲気には適切な酸素濃度が存在することを見出して本発明を完成した。加熱処理の雰囲気における酸素の存在によって、銅箔とポリイミド樹脂層との界面の安定化をもたらし、銅箔とポリイミド樹脂層との接着力を向上させる。反対に、加熱処理における酸素濃度が所定濃度を超えると、銅箔とポリイミド樹脂層との界面の酸化膜の膜厚が厚くなりすぎて、銅箔とポリイミド樹脂層との密着性が低下すると共に、その酸化膜自体も脆弱であることから、結果として接着力の向上は図れないと考えられる。
【発明の効果】
【0024】
少なくとも表面にNi及びZnが付着された銅箔を用いてこの金属付着面にポリイミド前駆体樹脂溶液を塗工し、所定の酸素分圧環境下で加熱処理を行うことで、得られる積層体の銅箔とポリイミド樹脂層との接着力が製造初期において優れると共に、長期間使用後や加熱による負荷又は湿熱環境下に晒された後であっても優れた接着力を有する。このようにして得られた積層体は、耐熱性及び耐久性に優れ、ファインピッチ配線加工にも対応できることから、フレキシブルプリント配線板に好適に用いることができる。そして、本発明においては、このような積層体を簡便な制御で安価に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、以下の実施例において、特に断りのない限り各種評価については下記によるものである。
【0026】
[接着力の測定]
銅箔と絶縁層との間の接着力は、銅箔上にポリイミド樹脂層を形成した後、線幅0.1mmに回路加工を行い、東洋精機株式会社製引張試験機(ストログラフ−M1)を用いて、銅箔を90°方向に引き剥がし測定した。本明細書で記載する初期接着力とは積層体を製造した後に熱処理せず、そのままの状態で測定した接着力を意味する。また、初期接着力を測定した積層体を大気雰囲気の環境の下で150℃に保持する耐熱試験を行い、この耐熱試験から48時間後、96時間後、及び168時間後の接着力を測定した。
【0027】
次に、下記実施例及び比較例で用いたポリイミド樹脂の前駆体ポリアミック酸溶液の合成ついて詳しく説明する。
【0028】
[合成例1]
熱電対及び攪拌機を備えると共に窒素導入が可能な反応容器にn-メチルピロリジノンを入れ、この反応容器を容器に入った氷水に浸けた後、反応容器に無水ピロメリット酸(以下PMDA)を投入し、その後、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、(以下DAPE)と2'-メトキシ4,4'-ジアミノベンズアニリド(以下MABA)を投入した。モノマーの投入総量が15wt%であって、各ジアミンのモル比率がMABA:DAPE=60:40となり、酸無水物とジアミンのモル比が0.98:1.0となるように投入した。その後、更に攪拌を続け、反応容器内の温度が室温から±5℃の範囲となった時に反応容器を氷水から外した。室温のまま3時間攪拌を続け、得られたポリアミック酸の溶液粘度は15,000cpsであった。
【0029】
[合成例2]
熱電対及び攪拌機を備えると共に窒素導入が可能な反応容器にn-メチルピロリジノンを入れ、この反応容器を容器に入った氷水に浸けた後、反応容器にPMDA/3,4'3,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下BTDA)を投入し、その後、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、(以下DAPE)を投入した。モノマーの投入総量が15wt%であって、各酸無水物のモル比率がBTDA:PMDA=70:30となり、酸無水物とジアミンのモル比が1.03:1.0となるように投入した。その後、更に攪拌を続け、反応容器内の温度が室温から±5℃の範囲となった時に反応容器を氷水から外した。室温のまま3時間攪拌を続け、得られたポリアミック酸の溶液粘度は3,200cpsであった。
【0030】
[合成例3]
熱電対及び攪拌機を備えると共に窒素導入が可能な反応容器にn-メチルピロリジノンを入れ、この反応容器を容器に入った氷水に浸けた後、反応容器に3,3',4,4'-ジフェニルスルフォンテトラカルボン酸二無水物(以下DSDA)とPMDAを投入し、その後、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(以下TPE-R)を投入した。モノマーの投入総量が15wt%であり、各酸無水物のモル比率がDSDA:PMDA=90:10となり、酸無水物とジアミンのモル比が1.03:1.0となるよう投入した。その後、更に攪拌を続け、反応容器内の温度が室温から±5℃の範囲となった時に反応容器を氷水から外した。室温のまま3時間攪拌を続けられたポリアミック酸の溶液粘度は3,200cpsであった。
【0031】
[合成例4]
熱電対及び攪拌機を備えると共に窒素導入が可能な反応容器にN,N-ジメチルアセトアミドを入れ、この反応容器に4,4'-ジアミノ-2,2'-ジメチルビフェニル(DADMB)および1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(DAB)を容器中で撹拌しながら溶解させた。次に3,3' 4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物およびピロメリット酸二無水物を加えた。各ジアミンのモル比率がDADMB:BAB=90:10となり、各酸無水物のモル比率がBPDA:PMDA=20:79となるように投入した。その後、3時間撹拌を続け、無水ピロメリット酸(以下PMDA)を投入し、その後、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、(以下DAPE)と2'-メトキシ4,4'-ジアミノベンズアニリド(以下MABA)を投入した。モノマーの投入総量が15wt%であって、各ジアミンのモル比率がMABA:DAPE=60:40となり、酸無水物とジアミンのモル比が0.98:1.0となるように投入した。その後、更に攪拌を続け、反応容器内の温度が室温から±5℃の範囲となった時に反応容器を氷水から外した。室温のまま3時間攪拌を続け、得られたポリアミック酸の溶液粘度は15,000cpsであった。
【0032】
[合成例5]
熱電対及び攪拌機を備えると共に窒素導入が可能な反応容器にn-メチルピロリジノンを入れ、この反応容器を容器に入った氷水に浸けた後、反応容器に無水ピロメリット酸(以下PMDA)を投入し、その後、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、(以下DAPE)と2'-メトキシ4,4'-ジアミノベンズアニリド(以下MABA)を投入した。モノマーの投入総量が15wt%であって、各ジアミンのモル比率がMABA:DAPE=60:40となり、酸無水物とジアミンのモル比が0.98:1.0となるように投入した。その後、更に攪拌を続け、反応容器内の温度が室温から±5℃の範囲となった時に反応容器を氷水から外した。室温のまま3時間攪拌を続け、得られたポリアミック酸の溶液粘度は15,000cpsであった。
【実施例1】
【0033】
Ni/Zn系表面金属処理が施されてNi及びZnが表面に付着された銅箔A(厚み18μm、Rz=0.71μm、Ni付着量7.4μg/cm2 、Ni/(Ni+Zn)=0.81)の当該表面に合成例1に示したポリアミック酸のジメチルアセトアミド溶液(12〜18%)を塗布して乾燥させた後、さらに合成例4に示したポリアミック酸溶液を用いて、硬化後のポリイミド膜厚が40μmになるようにバーコーターを用いて均一に塗布した。
次いで、ポリアミック酸を塗工した銅箔Aを120℃〜150℃の温度で30分間大気オープンで乾燥させた後、窒素と酸素の混合ガス中の酸素濃度が精密流量計で2%(vol%)になるように雰囲気を制御した小型真空電気炉(株式会社美和製作所製、MT-1100A+G、真空到達度60Pa、以下同様)を用いて160℃×20分、250℃×30分、350℃×10分の加熱処理を行い硬化させて積層体を得た。
【0034】
上記で得られた積層体における銅箔に1mm幅のパターンを加工し、この銅箔を90°方向に引き剥がして90度ピール強度を測定したところ、初期接着力が2.30kN/mであった。また、この積層体について耐熱試験を行い、各時間経過後の接着力を測定したところ、168時間経過後が1.62kN/mであった。初期接着力と耐熱試験による接着力とをまとめたグラフを図1に示す。
【0035】
また、得られた積層体について、レーザー顕微鏡を用いて銅箔の裏面の酸化スケールを色調で確認した。銅箔のレジスト面に相当する面の酸化度合が回路加工時のライン直線性に影響を与えると考えられることから、加熱処理して得た積層体の銅箔のレジスト面について色調観察を行って酸化スケールを確認したところ、熱処理前との色調の変化は認められなかった。更には、回路加工時のラインの直線性を確認するため、レーザー顕微鏡(倍率2000倍)を用いて評価したところ、良好な直線性を示すことが分かった(図2)。なお、図2に示したレーザー顕微鏡写真において、比較的太く写った色の濃い2本が回路部分の銅箔であり、この2本の回路に挟まれた中央およびそれぞれの回路の端に写った比較的細い色の薄い部分がポリイミド樹脂の露出部分である。
【実施例2】
【0036】
窒素と酸素の混合ガス中の酸素濃度を5vol%にして加熱処理を行う以外は実施例1と同様にして積層体を製造した。
得られた積層体における銅箔に1mm幅のパターンを加工して90度ピール強度を測定したところ、初期接着力が1.97kN/mであった。また、この積層体について耐熱試験を行い、各時間経過後の接着力を測定したところ、168時間経過後が1.64kN/mであった。初期接着力と耐熱試験による接着力とをまとめたグラフを図1に示す。
【実施例3】
【0037】
窒素と酸素の混合ガス中の酸素濃度を10vol%にして加熱処理を行う以外は実施例1と同様にして積層体を製造した。
得られた積層体における銅箔に1mm幅のパターンを加工して90度ピール強度を測定したところ、初期接着力が1.84kN/mであった。また、この積層体について耐熱試験を行い、各時間経過後の接着力を測定したところ、168時間経過後が1.62kN/mであった。初期接着力と耐熱試験による接着力とをまとめたグラフを図1に示す。
【実施例4】
【0038】
Ni/Zn系表面金属処理が施されてNi及びZnが表面に付着された銅箔B(厚み18μm、Rz=1.1μm、Ni付着量15μg/cm2、Ni/(Ni+Zn)=0.40)の当該表面に合成例2に示したポリアミック酸のジメチルアセトアミド溶液(12〜18%)を塗布して乾燥させた後、さらに合成例5に示したポリアミック酸溶液を用いて、硬化後のポリイミド膜厚が40μmになるようにバーコーターを用いて均一に塗布した。
次いで、120℃〜150℃まで30分間大気オープンで乾燥させた後、窒素と酸素の混合ガス中の酸素濃度が精密流量計で2%(vol%)になるように雰囲気を制御した小型真空電気炉を用いて、160℃×20分、250℃×30分、350℃×10分の加熱処理を行い硬化させて積層体を得た。
得られた積層体における銅箔に1mm幅のパターンを加工して90度ピール強度を測定したところ、初期接着力が1.46kN/mであった。また、この積層体について耐熱試験を行い、各時間経過後の接着力を測定したところ、168時間経過後が1.38kN/mであった。初期接着力と耐熱試験による接着力とをまとめたグラフを図3に示す。
【実施例5】
【0039】
Ni/Zn系表面金属処理が施されてNi及びZnが表面に付着された銅箔C(厚み18μm、Rz=0.6μm、Ni付着量14μg/cm2、Ni/(Ni+Zn)=0.79)の当該表面に合成例3に示したポリアミック酸のジメチルアセトアミド溶液(12〜18%)を塗布して乾燥させた後、さらに合成例4に示したポリアミック酸溶液を用いて、硬化後のポリイミド膜厚が40μmになるようにバーコーターを用いて均一に塗布した。
次いで、120℃〜150℃まで30分間大気オープンで乾燥させた後、窒素と酸素の混合ガス中の酸素濃度が精密流量計で2%(vol%)になるように雰囲気を制御した小型真空電気炉を用いて160℃×20分、250℃×30分、350℃×10分の加熱処理を行い硬化させて積層体を得た。
得られた積層体における銅箔に1mm幅のパターンを加工して90度ピール強度を測定したところ、初期接着力が1.14kN/mであった。また、この積層体について耐熱試験を行い、各時間経過後の接着力を測定したところ、168時間経過後が0.88kN/mであった。初期接着力と耐熱試験による接着力とをまとめたグラフを図4に示す。
【0040】
[比較例1]
実施例1と同様にして、銅箔Aの表面に、合成例1及び4に示したポリアミック酸溶液を用いて硬化後のポリイミド膜厚が40μmになるようにバーコーターを用いて均一に塗布した。
次に120℃〜150℃まで30分間大気オープンで乾燥させた後、窒素雰囲気下において小型真空電気炉を用いて160℃×20分、250℃×30分、350℃×10分の加熱処理を行い硬化させて積層体を得た。
得られた積層体における銅箔に1mm幅のパターンを加工して、初期の90度ピール強度(初期接着力)、及び耐熱試験による接着力を測定したところ、いずれも急激な低下が確認された。結果を図1に示す。
【0041】
[比較例2]
窒素と酸素の混合ガス中の酸素濃度を1vol%にした雰囲気下で小型真空電気炉を用いて160℃×20分、250℃×30分、350℃×10分の加熱処理を行う以外は比較例1と同様にして積層体を得た。
得られた積層体における銅箔に1mm幅のパターンを加工して、初期の90度ピール強度(初期接着力)、及び耐熱試験による接着力を測定したところ、いずれも急激な低下が確認された。結果を図1に示す。
【0042】
[比較例3]
窒素と酸素の混合ガス中の酸素濃度を20vol%にした雰囲気下で小型真空電気炉を用いて160℃×20分、160℃×30分、350℃×10分の加熱処理を行う以外は比較例1と同様にして積層体を得た。
上記で得られた積層体における銅箔に1mm幅のパターンを加工し、この銅箔を90°方向に引き剥がして90度ピール強度を測定したところ、初期接着力が1.7kN/mであった。また、この積層体について耐熱試験を行い、各時間経過後の接着力を測定したところ、168時間経過後が1.2kN/mであった。図1に初期接着力と耐熱試験による接着力とをまとめたグラフが示されているが、耐熱試験96時間経過後の接着力の低下が確認され、また、銅箔裏側の酸化も激しく、図5に示したように、レーザー顕微鏡(倍率2000倍)を用いて回路加工時のラインの直線性を評価したが、優れた直線性は得られなかいことが分かった。なお、図5に示したレーザー顕微鏡写真において、比較的太く写った色の濃い2本が回路部分の銅箔であり、この2本の回路に挟まれた中央及びそれぞれの回路の端に写った比較的細い色の薄い部分がポリイミド樹脂の露出部分である。
【0043】
[比較例4]
実施例4と同様にして、銅箔Bの表面に、合成例2及び5に示したポリアミック酸溶液を使用して硬化後のポリイミド膜厚が40μmになるようにバーコーターを用いて均一に塗布した。
次に120℃〜150℃まで30分間大気オープンで乾燥させた後、窒素雰囲気下で小型真空電気炉を用いて160℃×20分、250℃×30分、350℃×10分の加熱処理を行い硬化させて積層体を得た。
得られた積層体における銅箔に1mm幅のパターンを加工して、初期の90度ピール強度(初期接着力)、及び耐熱試験による接着力を測定したところ、いずれも急激な低下が確認された。結果を図3に示す。
【0044】
[比較例5]
実施例4と同様にして、銅箔Bの表面に、合成例2及び5に示したポリアミック酸溶液を使用して硬化後のポリイミド膜厚が40μmになるようにバーコーターを用いて均一に塗布した。
次に120℃〜150℃まで30分間大気オープンで乾燥させた後、窒素と酸素の混合ガス中の酸素濃度が精密流量計で20%(vol%)になるように雰囲気を制御した小型真空電気炉を用いて160℃×20分、250℃×30分、350℃×10分の加熱処理を行い硬化させて積層体を得た。
得られた積層体における銅箔に1mm幅のパターンを加工して、初期の90度ピール強度(初期接着力)、及び耐熱試験による接着力を測定したところ、いずれも急激な低下が確認された。結果を図3に示す。
【0045】
[比較例6]
実施例5と同様にして、銅箔Cの表面に、合成例3及び5に示したポリアミック酸溶液を使用して硬化後のポリイミド膜厚が40μmになるようにバーコーターを用いて均一に塗布した。
次に120℃〜150℃まで30分間大気オープンで乾燥させた後、窒素雰囲気下で小型真空電気炉を用いて160℃×20分、250℃×30分、350℃×10分の加熱処理を行い硬化させて積層体を得た。
得られた積層体における銅箔に1mm幅のパターンを加工して、初期の90度ピール強度(初期接着力)、及び耐熱試験による接着力を測定したところ、耐熱ピールの急激な低下は見られなかったが初期接着力及び耐熱試験後の接着力はいずれも低いものであった。結果を図4に示す。
【0046】
[比較例7]
実施例5と同様にして、銅箔Cの表面に、合成例3及び5に示したポリアミック酸溶液を使用して硬化後のポリイミド膜厚が40μmになるようにバーコーターを用いて均一に塗布した。
次に120℃〜150℃まで30分間大気オープンで乾燥させた後、窒素と酸素の混合ガス中の酸素濃度が精密流量計で20%(vol%)になるように雰囲気を制御した小型真空電気炉を用いて160℃×20分、250℃×30分、350℃×10分の加熱処理を行い硬化させて積層体を得た。
得られた積層体における銅箔に1mm幅のパターンを加工して、初期の90度ピール強度(初期接着力)、及び耐熱試験による接着力を測定したところ、耐熱ピールの急激な低下は見られなかったが、レーザー顕微鏡(倍率2000倍)を用いて回路加工時のラインの直線性を評価した結果、優れた直線性は得られなかいことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明における積層体の製造方法によれば、上記のような積層体を低コストで、簡便に提供することができ、キャスティング、ラミネート、スパッタリング、スピンコート法等のフレキシブルプリント配線板の各種製造方法への適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、実施例1〜3及び比較例1〜3に係る積層体について、初期接着力及び耐熱試験における接着力を示すグラフである。
【図2】図2は、実施例1における積層体について、回路加工時のラインの直線性を確認するためのレーザー顕微鏡写真である。
【図3】図3は、実施例4及び比較例4〜5に係る積層体について、初期接着力及び耐熱試験における接着力を示すグラフである。
【図4】図4は、実施例5及び比較例6〜7に係る積層体について、初期接着力及び耐熱試験における接着力を示すグラフである。
【図5】図5は、比較例3における積層体について、回路加工時のラインの直線性を確認するためのレーザー顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表面にNi及びZnが付着された銅箔にポリイミド前駆体樹脂溶液を塗工し、酸素濃度1〜10vol%を有する雰囲気下で加熱処理することにより上記ポリイミド前駆体樹脂溶液を乾燥及び硬化させて銅箔上にポリイミド樹脂層を形成するフレキシブルプリント配線板用積層体の製造方法であって、上記で得られた積層板を150℃で168時間保持した後の銅箔の90°方向引き剥がし接着力が1.0kN/m以上を有することを特徴とするフレキシブルプリント配線板用積層体の製造方法。
【請求項2】
銅箔の表面におけるNiの付着量が2.5〜5.0μg/cm2であり、NiとZnの付着量割合を表すNi/(Ni+Zn)が0.70〜0.90である請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板用積層体の製造方法。
【請求項3】
ポリイミド前駆体樹脂溶液を塗工する側の銅箔の表面が、表面粗さRz1.0μm以下である請求項1又は2に記載のフレキシブルプリント配線板用積層体の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3に記載のフレキシブルプリント配線板用積層体の製造方法を用いて得たフレキシブルプリント配線板用積層板であって、150℃で168時間保持した後の銅箔の90°方向引き剥がし接着力が1.0kN/m以上であることと特徴とするフレキシブルプリント配線板用積層体。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【図5】
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