説明

フレキシブル管用継手

【課題】フレキシブル管の差込み前における継手の在庫・保管時や搬送時等にシールゴムが半挿入状態にある押輪により押込まれて変形を加えられるのを確実に防止できるフレキシブル管用継手を提供する。
【解決手段】半挿入状態にある押輪7はこれの先端部がフレキシブル管2の差込み前におけるシールゴム6の後側に位置する初期位置に位置決め保持される。この位置決め保持手段は、半挿入状態の押輪7の露出外面から継手本体5の外面にわたって熱収縮性のプラスチックフィルムあるいはそのチューブ32を被せ、加熱収縮して包被してなる。フレキシブル管2の差込み後は、プラスチックフィルムあるいはそのチューブ32を外して押輪7が押込み代分だけ押込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体や液体等の流体を導くためのフレキシブル管を差込み、押輪を押込むだけのワンタッチ操作で、フレキシブル管をシール状に接続できるようにした差込み式のフレキシブル管用継手の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の差込み式のフレキシブル管用継手として、例えば、図5(A)、(B)に示すように、蛇腹状のフレキシブル管40を挿入するための管挿入孔41を有する継手本体42と、該管挿入孔41に配置され、フレキシブル管40の外面の環状凹部43に差し込まれる後方突起44aを有するリテーナ部材44と、リテーナ部材44の後方突起44aをフレキシブル管40の外面の環状凹部43に差し込まれた状態で固定する押輪(ナット部材)45と、フレキシブル管40と継手本体42との間をシールするパッキン部材46と、 を具備する。押輪45は、継手本体42の管挿入孔41内で軸方向にスライドし、リテーナ部材44の後方突起44aがフレキシブル管40の環状凹部43へ嵌まり込まない位置と、リテーナ部材44の後方突起44aがフレキシブル管40の環状凹部43へ嵌まり込んだ状態を保持する位置との間で変位可能である。
【0003】
さらに、押輪45をリテーナ部材44の後方突起44aがフレキシブル管40の環状凹部43へ嵌まり込んだ状態を保持する位置でロックするロック手段が設けられている。このロック手段として、継手本体42に、ストップリング部材47の外周部が係合する第1溝(ストップリング収容凹部)48と第2溝(ストップリング保持段部)49が形成されており、押輪45の基端側の外周面に形成した溝部50にC字状のストップリング部材47の内周部が係合したまま、押輪45のスライドに応じてストップリング部材47の外周部が第1溝48と第2溝49間を変位可能である。ストップリング部材47の外周部が第1溝48に係合しているときは、押輪45は、リテーナ部材44の後方突起44aがフレキシブル管40の環状凹部43へ嵌まり込まない位置に位置して、継手本体42に半挿入状態に仮止めされている。ストップリング部材47の外周部が第2溝49に係合するとき、押輪45は、リテーナ部材44の後方突起44aがフレキシブル管40の環状凹部43へ嵌まり込んだ状態に保持してロックされる(例えば、特許文献1参照。)。因みに、押輪45の押し込み量であるストローク長さS(図6(A)参照)は、上記第1溝48と第2溝49との間の距離とほぼ同じになるように設定されている。
【0004】
このフレキシブル管用継手によれば、押輪45を押込むだけで、良好なシール性を維持した状態でフレキシブル管40の接続を行うことができる、というものである。
【0005】
【特許文献1】特開2003−176888号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記フレキシブル管用継手では、押輪45が継手本体42に仮止めされる半挿入状態はストップリング部材47の外周部が第1溝48に係合することのみで保持される構成であるため、その保持力に欠き、フレキシブル管40の差込み前における継手の在庫・保管時や搬送時等に、不測にも押輪45に強い押し込み力が加えられて押輪45が押し込まれると、押輪45によりリテーナ部材44が押し込まれてパッキン部材46に圧縮変形が加えられる恐れがあるという問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題点を解消するためになされたものであり、その目的とするところは、フレキシブル管を差込み、押輪を押込むだけのワンタッチ操作で、フレキシブル管をシール状に接続できるうえ、フレキシブル管の差込み前における継手の在庫・保管時や搬送時等に不測にシールゴムが半挿入状態にある押輪により押込まれて変形を加えられるのを確実に防止できるフレキシブル管用継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、請求項1に記載のように、その発明の内容を理解しやすくするために図1〜図4に付した符号を参照して説明すると、外周部に円周方向全周に延びる山部8と谷部9とを管軸方向へ交互に並設したフレキシブル管2の先端部が差込まれる受口部3を有する継手本体5と、受口部3内に収容され、受口部3に差込まれたフレキシブル管2の先端部付近の外周と受口部3の内周との間をシールするシールゴム6と、受口部3内に挿入される押輪7とを備え、押輪7は、受口部3に押込み代を残す半挿入状態に挿入され、前記押込み代分だけ完全に押込まれると押輪7の先端部でシールゴム6が受口部3の入口側方向へ戻り移動するのを抑えるようにしてある、フレキシブル管用継手において、半挿入状態にある押輪7はこれの先端部がフレキシブル管差込み前におけるシールゴム6の後側に位置する初期位置に位置決め保持される第1の位置決め保持手段と、完全に押込まれた押輪7はこれの先端部が、先にフレキシブル管2の差込みに伴い押込まれたシールゴム6の後側に位置する押込み位置に位置決め保持される第2の位置決め保持手段を備えており、前記第1の位置決め保持手段は、押輪7の外周に設けたスナップリング収容保持溝21と、このスナップリング収容保持溝21に内周部が嵌め込まれたスナップリング27と、受口部3の内周に設けられてスナップリング27の外周部に係合する第1のスナップリング係合溝22と、第1スナップリング係合溝22内の前側溝壁に前方に向かって漸次窄まり状に形成したテーパ面22aとを備えるとともに、半挿入状態の押輪7の露出外面から継手本体5の外面にわたって熱収縮性のプラスチックフィルムあるいはそのチューブ32を被せ、加熱収縮して包被してなることに特徴を有するものである。
【0009】
上記構成によると、第1の位置決め保持手段は、押輪7のスナップリング収容保持溝21に嵌め込まれたスナップリング27の外周部を受口部3の第1のスナップリング係合溝22に係合させる機構に加えて、更に、半挿入状態の押輪7の露出外面から継手本体5の外面にわたって熱収縮性のプラスチックフィルムあるいはそのチューブ32を被せ、加熱収縮して包被してなり、プラスチックフィルムあるいはそのチューブ32は押輪7の露出外面形状と継手本体5の外面形状にフィットして密着し、これによりフレキシブル管2の差込み前における継手の在庫・保管時や搬送時等に押輪7が不用意に押込まれる外力に十分対抗できて押輪7の押し込みによる移動を確実に防止できる。また押輪7の露出外面から継手本体5の外面にわたって包被したプラスチックフィルムあるいはそのチューブ32は、在庫・保管時や搬送時等に押輪7および継手本体5が他物との触れにより傷付けられるのを防止する保護機能を発揮する。
【0010】
フレキシブル管2の差込み後、押輪7が押込み代だけ完全に押込まれるとその押輪7の先端部でシールゴム6が受口部3の入口側方向へ戻り移動するのを抑えるようにしてあるので、シールゴム6によるフレキシブル管2の先端部付近と受口部3の内周との間のシール機能を確保できる。
【0011】
第2の位置決め保持手段により、フレキシブル管2の差込み及び押輪7の押込み完了後にシールゴム6が入口側方向へ移動するのを阻止するので、シールゴム6によるシール状態および抜止め状態を確保できる。この場合、第2の位置決め手段は、請求項2に記載のように、受口部3の内周に第2のスナップリング係合溝23が第1のスナップリング係合溝22より前方に並べて設けられ、熱収縮性のプラスチックフィルムあるいはそのチューブ32を外して押輪7が前記押込み代分だけ押込まれるに伴いスナップリング27が第1のスナップリング係合溝22のテーパ面22aから滑り出して第2のスナップリング係合溝23に係合するように構成することができる。これによると、押輪7の先端部がフレキシブル管2の差込みに伴い押込まれたシールゴム6の後側に位置する押込み位置に確実に位置決め保持され、シールゴム6によるシール状態および抜止め状態を更に確実に保持できる。
熱収縮性のプラスチックフィルムあるいはそのチューブ32は加熱収縮させてあるだけで接着していないので、フレキシブル管2の差込み及び押輪7の押込み完了後、継手本体5および押輪7から容易に外すことができる。
【0012】
請求項1記載のフレキシブル管用継手は、請求項3に記載のように、受口部3内には入口側から内奥側に向かって順に大径孔11、中径孔12、小径孔13を形成しており、シールゴム6が、フレキシブル管2の山部8の外径と略同一の内径を有する筒状の前側胴部6aと、この前側胴部6aの前端部に内向きに張り出した管端受け部6bと、前側胴部6aの後端部に外向きに張り出した環状のシール作用部6cと、このシール作用部6cから後方へ連設され前側胴部6aの内径より大きい内径の後側胴部6dと、この後側胴部6dの後端部に連設され後側胴部6dの内径より小さく山部8の外径より大きい内径で且つ後側胴部6dの外径より大きい外径の抜止め爪部6eとを有する形に一体形成されており、小径孔13と中径孔12との間に第1テーパ15を小径孔13に向かって窄まり状に形成し、中径孔12と大径孔11との間に第2テーパ16を中径孔12に向かって窄まり状に形成しており、シールゴム6は自由状態において管端受け部6bおよび前側胴部6aが小径孔13内に位置し、かつシール作用部6cが中径孔12内に位置するとともに、抜止め爪部6eが大径孔11内に位置するように収容配置されており、フレキシブル管2の先端部を半挿入状態にある押輪7に差込むに伴い該フレキシブル管2の先端部がシールゴム6の内部に挿入し管端受け部6bに当接してシールゴム6を受口部内奥方向へ押込み、この押込みに伴いシール作用部6cが第1テーパ15の窄まり側に摺接することにより縮径変形してフレキシブル管2の谷部9の少なくとも斜面9aに密着するように構成してあることに特徴を有するものである。
尚、本明細書および特許請求の範囲において、「自由状態」とは、ゴムシール6が拡縮径するように変形されておらず圧縮応力又は引張応力が作用していない状態を言う。
【0013】
このような構成によると、フレキシブル管2の先端部付近の外周面と小径孔13の内周面との間のシールゴム6による密封シール状態は、シールゴム6のシール作用部6cがフレキシブル管2の谷部8の少なくとも斜面8aに密着することで得られるようにしてあるので、フレキシブル管2の受口部3内に挿入される先端部や先端部付近の変形及び施工後の曲げ等に対する影響を受けにくくなり、シール性能を高めることができる。
また、フレキシブル管2を受口部3に差込むに伴いフレキシブル管2の先端部がシールゴム6の内部に挿入し管端受け部6bに当接してシールゴム6を受口部3の内奥方向へ押込み、この押込みに伴いシール作用部6cが第1テーパの窄まり側に摺接することにより内向きに縮径変形してフレキシブル管2の谷部9の少なくとも斜面9aに密着するようにしてあるので、フレキシブル管2を差込むだけで簡単にシール状に接続することができる。
【0014】
さらに、シールゴム6は、当初、即ちフレキシブル管差込み前の段階ではシール作用部6cを外向きに張り出しているので、フレキシブル管2の先端部の差込み時に該先端部がシール作用部6cにつかえて差込み障害になるようなことがなく、フレキシブル管2をシールゴム6にスムーズに差込むことができ、フレキシブル管2の差込み容易性を確保できる。
【0015】
半挿入状態にある押輪7はこれの先端部がフレキシブル管2の差込み前におけるシールゴム6の抜止め爪部6eの後側に位置する初期位置に第1の位置決め保持手段で位置決め保持しておくと、フレキシブル管2の差込み前における継手の在庫・保管時や搬送時等にシールゴム6は、半挿入状態にある押輪7により押込まれるおそれがなく、自由状態でシール作用部6cが中径孔12に保持されるため、シール作用部6cには内部応力が発生せず、シール作用部6cはフレキシブル管2が差込まれたときにはじめて弾性的に縮径してフレキシブル管2の谷部9に密着するので、適切な圧縮代が長期間にわたり維持され、所定の耐用年数を保証することができる。
また、完全に押込まれた押輪7はこれの先端部が、先にフレキシブル管2の差込みに伴い小径孔13内にまで押込まれたシールゴム6の抜止め爪部6eの後側に位置する押込み位置に位置決め保持される第2の位置決め保持手段を備えておくと、フレキシブル管2の差込み及び押輪7の押込み完了後にシールゴム6が入口側方向へ移動するのを阻止することができ、シールゴム6によるシール状態を確保できるとともに、フレキシブル管2の引抜き阻止力を発生させることができる。抜止め爪部6eはシールゴム6と一体に形成してあるので、それだけ部材点数並びに組立工数の減少、コストの削減を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、フレキシブル管を差込み押輪を押込むだけの簡単な操作でシール状に接続でき、しかもフレキシブル管の差込み前における継手の在庫・保管時や搬送時等にシールゴムが半挿入状態にある押輪により押込まれて変形を加えられるのを確実に防止できるとともに、フレキシブル管の差込み及び押輪の押込み完了後にはシールゴムが入口側方向へ移動するのを阻止できてシールゴムによるシール状態を確保することができる。特に、継手本体および押輪に何ら特別な加工を加えることなく、半挿入状態の押輪の露出外面から継手本体の外面にわたって熱収縮性のプラスチックフィルムあるいはそのチューブを被せ、加熱収縮して包被するだけの簡単な手段で、在庫・保管時や搬送時等に押輪が不用意に押込まれるのを確実に防止できる点で有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づき説明する。図1は本発明の一実施例を示すフレキシブル管用継手を、フレキシブル管差込み前の状態で示す半欠截断面図、図2はフレキシブル管差込み途中の状態で示す同フレキシブル管用継手の半欠截断面図、図3はフレキシブル管の差込み完了後の状態で示す同フレキシブル管用継手の半欠截断面図、図4の(a)はシールゴムの半欠截断面図、(b)はシールゴムの背面図、(c)はシールゴムの側面図である。
【0018】
図1に示すように、本発明に係るフレキシブル管用継手1は、一端部に金属製のフレキシブル管2の先端部を受け入れる受口部3を形成し、他端部の外周に接続用雄ねじ4を形成した継手本体5と、この継手本体5の受口部3の内部に収容されるシールゴム6と、当初、受口部3内に押込み代を残す半挿入状態に挿入される押輪7等を備える。
【0019】
フレキシブル管2は、図1に示すように、外周部に円周方向全周に延びる山部8と谷部9とを管軸方向へ交互に並設し、その外周を塩化ビニール等の合成樹脂層10で被覆している。
【0020】
図1に示すように、継手本体5の受口部3内には入口側から内奥側に向かって順に大径孔11、中径孔12、小径孔13を連通状に形成する。小径孔13の内奥端にはストッパー部14を径方向内方へ突設している。小径孔13と中径孔12との間には第1テーパ15を小径孔13に向かって窄まり状に形成し、中径孔12と大径孔11との間には第2テーパ16を中径孔13に向かって窄まり状に形成している。
【0021】
図4の(a)〜(c)に示すように、シールゴム6は、フレキシブル管2の山部8の外径と略同一の内径を有する筒状の前側胴部6aと、この前側胴部6aの前端部に内向きに張り出した管端受け部6bと、前側胴部6aの後端部に外向きに張り出した環状のシール作用部6cと、このシール作用部6cから後方へ連設され前側胴部6aの内径より大きい内径の後側胴部6dと、この後側胴部6dの後端部に連設され後側胴部6dの内径より小さく且つフレキシブル管2の山部8の外径より大きい内径で且つ後側胴部6dの外径より大きい外径の抜止め爪部6eとを有する形に一体形成されている。
前側胴部6a、シール作用部6cおよび後側胴部6dはNBR、SBR、EPDM等で形成される。管端受け部6bは、それら前側胴部6a、シール作用部6cおよび後側胴部6d等と同一材料又は異材料で形成し、黄銅製座金等の補強芯金6fを埋込み成形している。
抜止め爪部6eは、前側胴部6a、シール作用部6cおよび後側胴部6dよりも硬い黄銅等の金属材料または硬質樹脂等で部分円弧状に形成され、この複数個が後側胴部6dの後端部の円周方向に所定間隔置きに並べて一体成形される。抜止め爪部6eの外周と後端面の交わる角部には後方窄まり状のテーパ25を形成している。
【0022】
このシールゴム6は、フレキシブル管2の差込み前(初期状態)において、図1に示すように、管端受け部6bおよび前側胴部6aが小径孔13内に位置し、かつシール作用部6cが中径孔12内に位置するとともに、抜止め爪部6eが大径孔11内に位置するように収容配置される。
【0023】
図1に示すように、継手本体5内のストッパー部14には先端掛止め部材17を装着している。先端掛止め部材17は、拡縮径自在なC形のリング部17aと、このリング部17aの内径部の数箇所から突設する弾性変形自在な逆止爪17bとを有する形に金属や硬質樹脂等で形成されている。そして、先端掛止め部材17は、リング部17aがストッパー部14に重合するとともにリング部17aの外径部がストッパー部14の外径側に設けた円周溝14a内に係合して、逆止爪17bが小径孔13内に向けて突出するようにストッパー部14に装着される。
【0024】
図1に示すように、押輪7は、継手本体5の大径孔11の入口側に軸方向に移動可能に挿入されフレキシブル管2が挿通可能な円筒部7aを有し、この円筒部7aの入口側後端部の外周には大径孔11の孔径より大きい外径の鍔部7bを一体に形成している。押輪7の円筒部7aの入口側後端の内周にはパッキン溝18を円周方向に形成し、このパッキン溝18にEPDM等よりなる断面T形状の防水パッキン19を嵌め込んでいる。円筒部7aの先端部の外周には第2テーパ16と略同一勾配の先細状のテーパ20aを、円筒部7aの先端部の内周には先拡がり状のテーパ20bをそれぞれ形成している。
【0025】
図1に示すように、押輪7の円筒部7aの外周にはスナップリング収容保持溝21を円周方向に形成する一方、継手本体5の大径孔11の内周には入口側から奥側に向かって順に第1のスナップリング係合溝22、第2のスナップリング係合溝23をそれぞれ円周方向に形成している。第1のスナップリング係合溝22内の前側溝壁には前方へ向かって漸次窄まり状のテーパ面22aを形成している。防水パッキン19の円周方向数箇所には気体を透過するが固体や液体は透過しないピン形状の選択透過性部材26を一体に埋設してガス漏れ検査を可能にしている。選択透過性部材26は、例えば、四フッ化エチレン樹脂粉体を成形した連続多孔質膜を含むシート材、あるいはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルアクリレート等の熱可塑性樹脂粉体から成形した連続気孔を有する多孔質体である。
押輪7の円筒部7aのスナップリング収容保持溝21より後側には防水パッキン溝28を設け、この防水パッキン溝28に防水パッキン29を嵌め込んでいる。継手本体5の中径孔12の内周には耐火パッキン溝30を設け、この耐火パッキン溝30に熱膨張性黒鉛入りゴム等からなる耐火パッキン31を嵌め込んでいる。
【0026】
押輪7はこれの先端部が図1のようにフレキシブル管2の差込み前におけるシールゴム6の抜止め爪部6eの後側に位置する半挿入状態(初期位置)に位置決め保持される第1の位置決め保持手段と、前記先端部が図3のようにフレキシブル管2の差込みに伴い小径孔13内にまで押込まれるシールゴム6の抜止め爪部6eの後側に僅かな隙間を置いて位置する完全な押込み位置に位置決め保持される第2の位置決め保持手段を備えている。
【0027】
第1の位置決め保持手段は、図1に示すように、押輪7のスナップリング収容保持溝21に、穴用のC形止め輪等からなる拡縮径自在なスナップリング27の内周部が嵌め込まれて収容されているとともに、スナップリング27の外周部が押輪7の円筒部7aの外周面より突出して継手本体5の第1のスナップリング係合溝22に係脱可能に係合されている。このスナップリング27は、スナップリング収容保持溝21に拡径可能な状態に収容されている。
更に、第1の位置決め保持手段は、半挿入状態の押輪7の継手本体5から露出した外面から継手本体5の少なくとも受口部3の外面にわたって熱収縮性のプラスチックフィルムあるいはそのチューブ32を被せ、加熱収縮して包被してなる。熱収縮性のプラスチックフィルムあるいはそのチューブ32は、ポリスチレン収縮フィルム、ポリオレフィン収縮フィルム、ポリエステル収縮フィルム、ポリプレン収縮フィルムなど環境に配慮した非塩ビ系素材が好ましい。
【0028】
上記第1の位置決め保持手段により、押輪7は、図1のように、フレキシブル管2の差込み前において半挿入状態の押輪7の先端部がシールゴム6の中径孔12内に位置する抜止め爪部6eの後側に位置する初期位置に位置決め保持される。すなわち、半挿入状態の押輪7は、初期位置において、スナップリング27の外周部と第1のスナップリング係合溝22との係合作用と、押輪7の露出外面から継手本体5の外面にわたって密着包被してなるプラスチックフィルムあるいはそのチューブ32による拘束力によって押込まれるのを確実に阻止される。押輪7は、この第1の位置決め保持手段により初期状態の半挿入状態より不用意に押し込まれるのを阻止されることにより、シールゴム6を不用意に押し込んで変形を加えるような不具合を防止できる。
【0029】
上記第2の位置決め保持手段は、受口部3の内周に第2のスナップリング係合溝23を第1のスナップリング係合溝22より前方に並べて設け、熱収縮性のプラスチックフィルムあるいはそのチューブ32を外して半挿入状態の押輪7が押込まれるに伴いスナップリング27が第1のスナップリング係合溝22のテーパ面22aから滑り出して第2のスナップリング係合溝23に係合するように構成している(図3参照)。押輪7の押込み代であるストローク長さS(図2参照)は、第1のスナップリング係合溝22と第2のスナップリング係合溝23との間の距離と略同じになるように設定されている。
【0030】
次に、上記のフレキシブル管用継手1にフレキシブル管2を接続する要領について図1〜図3を参照にして説明する。
【0031】
図1のようにフレキシブル管2の接続前における継手1の在庫・保管時や搬送時等においては、スナップリング27の外周部と第1のスナップリング係合溝22との係合作用と、押輪7の露出外面から継手本体5の外面にわたって密着包被してなるプラスチックフィルムあるいはそのチューブ32による拘束力とによる第1の位置決め保持手段により、半挿入状態の押輪7が、不用意に押込まれてシールゴム6に変形を加える不具合な事態の発生を防止できる。
【0032】
フレキシブル管2の接続に際しては、先ず、熱収縮性のプラスチックフィルムあるいはそのチューブ32を継手本体5および押輪7から外し、合成樹脂層10を剥離して山部8が6個分ほど露出したフレキシブル管2を、押輪7の入口側から継手本体5の受口部3内のシールゴム6の抜止め爪部6e、後側胴部6d、シール作用部6c、および前側胴部6aの順に差込み、そのフレキシブル管2の先端部をシールゴム6の管端受け部6bに当接させる。その際、シールゴム6のシール作用部6cは外向きに張り出す形に形成しているので、フレキシブル管2の差込み時にそのシール作用部6cが障害になるようなことなくフレキシブル管2の先端部をシールゴム6内にスムーズに挿入できる。
【0033】
引き続いて、図2のようにフレキシブル管2を所定深さまで差込むと、シールゴム6がフレキシブル管2と共に受口部内奥方向へ押込まれ、この押込みに伴いシールゴム6のシール作用部6cが第1テーパ15の窄まり側に摺接することにより該第1テーパ15で押圧されて内向きに縮径変形し、第1テーパ面15を通過して小径孔13内に移動するや否やフレキシブル管2の谷部9の斜面9a及び谷底部9bの双方、または少なくとも斜面9aに圧縮状に密着し、これと同時にシールゴム6の抜止め爪部6eが第2テーパ16の窄まり側に摺接することにより該第2テーパ16で縮径方向に押圧されながら中径孔12に移動する。これによりフレキシブル管2の先端部の外周面と継手本体5の小径孔13の内周面との間がシールゴム6により確実に密封シールされ、フレキシブル管2内を流れる流体がフレキシブル管2の先端部からフレキシブル管2の先端部外周と継手本体5の小径孔13内周との間を経て漏れ出るのを防止できる状態が得られる。なお、フレキシブル管2の先端部とシールゴム6の管端受け部6bとの間でもシール機能を期することができる。
【0034】
また、図2のようにフレキシブル管2が所定深さまで差込まれると、シールゴム6の管端受け部6bの内径部及びフレキシブル管2の先端部の内面が先端掛止め部材17の逆止爪17bと小径孔13の内周面との間を該逆止爪17bの弾性縮径変形を介して通過後に該逆止爪17bに係合する。この管端受け部6bが逆止爪17bを通過する時、施工者は手応えを感じ、フレキシブル管2が所定深さまで差込まれたことを実感できる。
また、そのようにフレキシブル管2の先端部が先端掛止め部材17の逆止爪17bに係合するとともに、抜止め爪部6eが谷部9に入り込むことで、フレキシブル管2が振れるのを抑制することができる。
【0035】
フレキシブル管2の差込み完了後には、図3のように押輪7を押込み代分だけ完全に押込む。この押し込みに伴い、スナップリング27は、スナップリング収容保持溝21内に内周部が嵌め込み収容された状態で、継手本体5の第1のスナップリング係合溝22のテーパ面22aを摺接しながらその直径が弾性的に縮径される。そして、押輪7が完全に押し込まれた時点で、この縮径されたスナップリング27の外周部が第2のスナップリング係合溝23に至ってスナップリング27が弾性復元作用で拡径して外周部を第2のスナップリング係合溝23に係合する、という第2の位置決め保持手段が作用する。これにより、押輪7はこれの先端部がシールゴム6の抜止め爪部6eの後側に位置する完全な押込み位置に保持されるため、シールゴム6が受口部3の入口側方向へ戻り移動するのを防止できる。したがって、シールゴム6によるシール状態を確保できる。
【0036】
また、押輪7の完全な押込みに伴い押輪7の先端部のテーパ20bがシールゴム6の抜止め爪部6eのテーパ25に近接対向する。したがって、このときフレキシブル管2を引き抜く方向に外力が加わったとしても、フレキシブル管2と同行する抜止め爪部6eのテーパ25が押輪7のテーパ20bの窄まり側に当接することになり、フレキシブル管2の抜け出しが確実に阻止される。
【0037】
上記実施例では、継手本体5の一端に受口部3を、他端の外周に接続用雄ねじ4を形成した雄ねじフレキシブル管用継手について記述したが、本発明はこれに限られず、他の構造、例えば、両端に受口部を有する左右対称のソケット形のフレキシブル管用継手や、エルボ型のフレキシブル管用継手等にも適用できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施例を示すフレキシブル管用継手を、フレキシブル管差込み前の状態で示す半欠截断面図である。
【図2】フレキシブル管差込み途中の状態で示す同フレキシブル管用継手の半欠截断面図である。
【図3】フレキシブル管の差込み完了後の状態で示す同フレキシブル管用継手の半欠截断面図である。
【図4】(a)はシールゴムの半欠截断面図、(b)はシールゴムの背面図、(c)はシールゴムの側面図である。
【図5】(A)は従来例のフレキシブル管用継手を、フレキシブル管差込み途中の状態で示す断面図、(B)は同フレキシブル管用継手を、フレキシブル管差込み完了後の状態で示す断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 フレキシブル管用継手
2 フレキシブル管
3 受口部
5 継手本体
6 シールゴム
6a 前側胴部
6b 管端受け部
6c シール作用部
6d 後側胴部
6e 抜止め爪部
7 押輪
8 山部
9 谷部
9a 斜面
11 大径孔
12 中径孔
13 小径孔
15 第1テーパ
16 第2テーパ
21 スナップリング収容保持溝
22 第1のスナップリング係合溝
22a テーパ面
23 第2のスナップリング係合溝
27 スナップリング
32 熱収縮性のプラスチックフィルムあるいはそのチューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周部に円周方向全周に延びる山部と谷部とを管軸方向へ交互に並設したフレキシブル管の先端部が差込まれる受口部を有する継手本体と、前記受口部内に収容され、前記受口部に差込まれた前記フレキシブル管の先端部付近の外周と前記受口部の内周との間をシールするシールゴムと、受口部内に挿入される押輪とを備え、前記押輪は、前記受口部に押込み代を残す半挿入状態に挿入され、前記押込み代分だけ完全に押込まれると前記押輪の先端部で前記シールゴムが前記受口部の入口側方向へ戻り移動するのを抑えるようにしてある、フレキシブル管用継手において、
半挿入状態にある前記押輪はこれの先端部がフレキシブル管差込み前における前記シールゴムの後側に位置する初期位置に位置決め保持される第1の位置決め保持手段と、完全に押込まれた前記押輪はこれの先端部が、先にフレキシブル管の差込みに伴い押込まれた前記シールゴムの後側に位置する押込み位置に位置決め保持される第2の位置決め保持手段を備えており、
前記第1の位置決め保持手段は、前記押輪の外周に設けたスナップリング収容保持溝と、このスナップリング収容保持溝に内周部が嵌め込まれたスナップリングと、前記受口部の内周に設けられて前記スナップリングの外周部に係合する第1のスナップリング係合溝と、第1スナップリング係合溝内の前側溝壁に前方に向かって漸次窄まり状に形成したテーパ面とを備えるとともに、前記半挿入状態の押輪の露出外面から前記継手本体の外面にわたって熱収縮性のプラスチックフィルムあるいはそのチューブを被せ、加熱収縮して包被してなることを特徴とする、フレキシブル管用継手。
【請求項2】
前記第2の位置決め手段は、前記受口部の内周に第2のスナップリング係合溝が前記第1のスナップリング係合溝より前方に並べて設けられ、前記プラスチックフィルムあるいはそのチューブを外して前記押輪が前記押込み代分だけ押込まれるに伴い前記スナップリングが前記第1のスナップリング係合溝のテーパ面から滑り出して前記第2のスナップリング係合溝に係合するように構成している、請求項1記載のフレキシブル管用継手。
【請求項3】
請求項1記載のフレキシブル管用継手において、
前記受口部内には入口側から内奥側に向かって順に大径孔、中径孔、小径孔を形成しており、
前記シールゴムが、前記フレキシブル管の山部外径と略同一の内径を有する筒状の前側胴部と、この前側胴部の前端部に内向きに張り出した管端受け部と、前記前側胴部の後端部に外向きに張り出した環状のシール作用部と、このシール作用部から後方へ連設され前記前側胴部の内径より大きい内径の後側胴部と、この後側胴部の後端部に連設され前記後側胴部の内径より小さく前記山部の外径より大きい内径で且つ前記後側胴部の外径より大きい外径の抜止め爪部とを有する形に一体形成されており、
前記小径孔と中径孔との間に第1テーパを小径孔に向かって窄まり状に形成し、前記中径孔と大径孔との間に第2テーパを中径孔に向かって窄まり状に形成しており、
前記シールゴムは自由状態において前記管端受け部および前側胴部が前記小径孔内に位置し、かつ前記シール作用部が前記中径孔内に位置するとともに、前記抜止め爪部が前記大径孔内に位置するように収容配置されており、
前記フレキシブル管の先端部を半挿入状態にある前記押輪に差込むに伴い該フレキシブル管の先端部が前記シールゴムの内部に挿入し前記管端受け部に当接して前記シールゴムを受口部内奥方向へ押込み、この押込みに伴い前記シール作用部が前記第1テーパの窄まり側に摺接することにより縮径変形して前記フレキシブル管の谷部の少なくとも斜面に密着するように構成してあることを特徴とする、フレキシブル管用継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−293720(P2009−293720A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−148869(P2008−148869)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(000231121)JFE継手株式会社 (140)
【Fターム(参考)】