説明

フレキシブル管用継手

【課題】継手本体にフレキシブル管が挿入される時、フレキシブル管の先端部分によって強く摺動されることがないパッキン部材を設けたフレキシブル管用継手を提供する。
【解決手段】継手本体3の軸方向における第2パッキン8の両側が、テーパー面と環状凹部84とにより形成されるようにした。そして、環状凹部84が、断面略横V字状となってスペーサ9に向かって開口しているようにした。更に、スペーサ9の第2パッキン8に対向する側を、環状凹部84と対称形状の断面略横V字状の環状凸部91となるように形成した。このため、第2パッキン8は、押止部材4とスペーサ9との間で挟圧されて変形するので、内周面がフレキシブル管2の外周部に密着し、外周面が継手本体3の内壁面に密着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル管用継手に関し、特には継手本体に挿入されたフレキシブル管が2ヶ所に配置されたパッキン部材によりシールされるフレキシブル管用継手に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス等の流体を流すフレキシブル管を接続するためのフレキシブル管用継手には、ワンプッシュ型と称されるものがある。この継手にフレキシブル管を挿入するだけで、フレキシブル管は継手から離脱しないようになると共に、シールが行われるようになっている。
【0003】
特許文献1に開示されている「差込式管継手」においては、継手本体に挿入されたフレキシブル管の先端部外周をシールするように、パッキン部材が配置されている。また、そのパッキン部材の基端部側に設けられたストッパ部材の先端が、挿入されたフレキシブル管の谷部に入り込んで、フレキシブル管の抜けを防止している。
【0004】
特許文献2に開示されている「フレキシブル管用継手」においては、内周側の2ヶ所に環状の凸部が形成されたパッキン部材が、継手本体内に配置されている。そして、継手本体にフレキシブル管が挿入された時、パッキン部材の凸部は、フレキシブル管の山を乗り越えて谷部へかみ合うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−176888号公報
【特許文献2】特開2010−43704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1、2においては、フレキシブル管は、その先端部分が、パッキン部材の内周側部分に摺動しながら継手本体に挿入される。このため、フレキシブル管の先端部分により、パッキン部材の内周側部分を傷つける虞がある。即ち、パッキン部材のシール面が傷つくことは、その傷が微細なものであっても、シール性にとっては好ましくない。
【0007】
一般に、フレキシブル管の被覆材を剥がしたり、被覆材が剥がされた先端部分を定寸にカットしたりすることは、現場施工により行われる。このため、作業によりフレキシブル管の先端部分に傷が付けられたり、また、作業後の取り扱いにおいて傷が付けられたりすることを皆無とすることは難しい。
【0008】
本発明は、このような問題に着目してなされたものであり、その目的とするところは、継手本体にフレキシブル管が挿入される時、フレキシブル管の先端部分によって強く摺動されることがないパッキン部材を設けたフレキシブル管用継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題を解決するために請求項1に記載のフレキシブル管用継手の発明は、波山状の凹凸部が軸方向に沿って外周部に形成されたフレキシブル管を接続するためのフレキシブル管用継手において、継手本体の内壁面には、第2パッキン部材と第1パッキン部材とが、スペーサを介して前記フレキシブル管の挿入方向に沿ってこの順に配置され、前記第1パッキン部材が圧入された前記フレキシブル管の先端部をシールすると共に、前記第2パッキン部材とスペーサとが対向するそれぞれの側には、環状凹部と、その環状凹部と対称形状の環状凸部とが形成されて、前記継手本体の内壁面に嵌合された押止部材の押圧により圧縮変形した前記第2パッキン部材が、前記継手本体の内壁面と前記フレキシブル管の外周部とに密着してシールすることを特徴とするものである。
【0010】
上記構成によれば、第2パッキン部材のスペーサに対向する側に環状凹部を設けた。このため、押止部材の押圧により、第2パッキン部材は、スペーサの環状凸部からの反力を受ける。従って、第2パッキン部材は、半径方向の内方及び外方へ膨出するように変形して、フレキシブル管の外周部に密着すると共に、継手本体の内壁面に密着するので、第1パッキン部材と共に、良好なシール性を発揮することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のフレキシブル管用継手において、前記第2パッキン部材の環状凹部は、互いに異なる方向に拡径する二つのテーパー面により断面横向きV字状に形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のフレキシブル管用継手において、前記第2パッキン部材には円弧状金属片よりなる止部材が埋設されると共に、その止部材の一部が前記第2パッキン部材の内周面から露出しており、前記第2パッキン部材が圧縮変形した時、前記止部材の一部が前記フレキシブル管の外周部の谷部において、山部の頂部と頂部とを結ぶ線よりも半径方向内側に位置するようになっていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、継手本体の内壁面の2ヶ所にパッキン部材を配置し、その内の一つのパッキン部材は、フレキシブル管が挿入された後の圧縮変形により、フレキシブル管の外周部と継手本体の内壁面とに密着するようになっている。従って、このパッキン部材と、圧入型のシールを行う他のパッキン部材との二重シールにより良好なシール性が得られるフレキシブル管用継手を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態のフレキシブル管用継手にフレキシブル管が挿入される途中の態様を示す断面図。
【図2】同継手にフレキシブル管が挿入された態様を示す断面図。
【図3】第1実施形態の継手本体を示す断面図。
【図4】第1実施形態の第2パッキン部材を示し、(a)は断面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図。
【図5】第1実施形態のスペーサを示す断面図。
【図6】第1実施形態のクリップリングを示す正面図。
【図7】第2実施形態の第2パッキン部材を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を図1〜図6を用いて説明する。
図1及び図3に示すように、本実施形態の継手本体3は、大直径の内壁面31、中直径の内壁面32、小直径の内壁面33及びガス流路としての流通孔34を有する。内壁面33には、半径方向内方に向かって拡幅する環状溝37が形成されて、この環状溝37にクリップリング12が装着されている。内壁面32には、流通孔34側から順に第1パッキン11、耐火パッキン10及びスペーサ9が配置されている。内壁面31には、第2パッキン8と押止部材4とが配置されている。
【0016】
押止部材4には、内周面のパッキン用凹部41に水密パッキン5が装着されると共に、外周面の環状溝42にはシールリング6が装着され、また、環状溝43にはストップリング7が装着されている。
【0017】
このように構成されたフレキシブル管用継手1に対して、外周部に波山状の凹凸部が形成されたフレキシブル管2が挿入される途中の態様が図1に示されている。このフレキシブル管2は、その先端部から所定の長さにおいて被覆材21が剥離されている。
【0018】
図2に示すように、フレキシブル管2のフレキシブル管用継手1内への挿入は、フレキシブル管2の谷部23にクリップリング12の円弧部14が嵌まり込んだことが確認されるまで行われる。このクリップリング12は、図6に示すように、二つの小径の円弧部14と大径のリング部13の両端とが連結部15において連結した形状をしており、円弧部14がフレキシブル管2の山部22から谷部23へと落ち込む時にクリック感を得ることができる。このため、前記確認はクリック感によって行われる。また、連結部15が環状溝37内において変形可能であるため、円弧部14は、フレキシブル管2の挿入方向における前後方向において、連結部15の変形に伴う範囲において移動可能である。従って、フレキシブル管2の先端位置に多少の誤差があっても、その誤差は吸収されることができる。
【0019】
更に、押止部材4が継手本体3内方へ押し込まれることにより、テーパー状の端面44が第2パッキン8のテーパー面83を押圧する。この時、ストップリング7が継手本体3の環状凸部36を乗り越えて位置決めされるので、押止部材4は第2パッキン8を押圧した状態で維持される。
【0020】
図4に示すように、ゴム製の前記第2パッキン8は、同心円状の内周面81及び外周面82と、フレキシブル管2の挿入方向に沿って拡径するテーパー面83と、環状凹部84とを備えている。内周面81の内径は、フレキシブル管2の外周部の外径以上である。このため、内周面81とフレキシブル管2の外周部とは、殆ど摺動しない。そして、環状凹部84は、内側テーパー面84aと外側テーパー面84bとにより、断面略横V字状となってスペーサ9に向かって開口している。また、図5に示すように、金属製のスペーサ9は、第2パッキン8に対向する側が、内側テーパー面91aと外側テーパー面91bとにより、環状凹部84と対称形状の断面略横V字状の環状凸部91に形成されている。
【0021】
前記押止部材4の端面44から押圧力を受けた第2パッキン8は、環状凹部84において環状凸部91から反力を受けるので、押止部材4とスペーサ9との間で圧縮されて変形する。この時、第2パッキン8の一部は、端面44と内側テーパー面91aとの間で挟圧されるので、内周面81がフレキシブル管2の外周部に押し付けられるように変形する。また、第2パッキン8の他の部分は、外側テーパー面91bから受ける反力により変形して、外周面82が内壁面31に押し付けられる。従って、フレキシブル管用継手1は、第1パッキン11と共に、第2パッキン8により良好なシールが得られる。なお、環状凹部84をスペーサ9に向かって開口する断面凹曲線に形成し、環状凸部91をその断面凹曲線と対称形状の断面凸曲線とするようにしても、上記と同様に、第2パッキン8の圧縮変形により良好なシールが得られる。
【0022】
また、第2パッキン8の内周面81側の変形に伴い、止部材85がフレキシブル管2の谷部23において、山部22の頂部を結ぶ線よりも半径方向内側に位置するようになる。このため、フレキシブル管2は、前記円弧部14と共に止部材85により抜け止めされる。止部材85は、図4に示すように、一部が内周面81から露出するように第2パッキン8内に埋設された4個の断面円形の円弧状金属片よりなる。このため、止部材85は、内周面81部分の変形と共に、内方へ移動することができる。なお、止部材85は、環状の金属片の一部が切りかかれたものであっても良いし、4個以外の複数の円弧状金属片であっても良い。
【0023】
なお、押止部材4のテーパー状の端面44は、押止部材4の厚さの略半分の厚さであるが、押止部材4の全厚さに相当するように形成されても良い。また、押止部材4と継手本体3とを螺合するようにして、押止部材4を継手本体3内方へ押し込むことを、押止部材4の回転により行うようにしても良い。
【0024】
従って、上記第1実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、第2パッキン8が、テーパー面83と環状凹部84とを有するようにした。そして、環状凹部84を断面略横V字状とすると共に、スペーサ9に、断面略横V字状の環状凸部91を形成した。このため、第2パッキン8は、押止部材4とスペーサ9との間で挟圧変形して、内周面81がフレキシブル管2の外周部に密着し、外周面82が継手本体3の内壁面31に密着する。従って、第1パッキン11と共に、第2パッキン8が良好なシール性を発揮することができるので、フレキシブル管用継手1外へのガスの漏洩を防止することができる。
【0025】
(2)上記実施形態では、継手本体3の内壁面33に半径方向内方に向かって拡幅する環状溝37を形成して、クリップリング12を装着した。このため、フレキシブル管2の谷部23に嵌まり込んで、フレキシブル管2を抜け止めするための円弧部14の位置は、連結部15の変形に伴ってずれることが可能となる。従って、フレキシブル管2の先端位置の誤差を吸収することが可能なフレキシブル管用継手を提供することができる。
【0026】
(第2の実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態を、第1実施形態と異なる部分を中心に図7を用いて説明する。
【0027】
本実施形態の第2パッキン80においては、テーパー面83が硬質ゴム層86により形成されている。この硬質ゴム層86は、圧縮性を考慮して設定された第2パッキン80のその他の部分の硬度よりも比較的硬い材質のゴムで形成されている。このため、押止部材4の端面44により、テーパー面83の一部が押圧された場合であっても、その押圧力はテーパー面83の全面に作用しやすくなり、第2パッキン80の圧縮変形を、より効果的に行うことができる。なお、テーパー面83を硬質ゴム層86により形成することに変えて、硬質樹脂板や金属板を貼着するようにしても良い。
【0028】
そして、この第2実施形態においては、第1実施形態における効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(3)上記実施形態では、第2パッキン80のテーパー面83を硬質ゴム層86で形成した。このため、押止部材4の端面44による押圧力を受けて、第2パッキン80は効果的に圧縮変形するので、良好なシール性を得ることができる。
【0029】
(変更例)
なお、上記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 止部材85を断面円形の円弧状金属片としたが、断面を方形、長円形又は異形とすること。
【0030】
さらに、上記実施形態より把握できる技術的思想について、それらの効果と共に以下に記載する。
(イ)前記継手本体3において、前記第1パッキンの配置位置よりも内方の内壁面には、半径方向内方に向かって拡幅する環状溝が形成されて、その環状溝に装着されたクリップリングにより、フレキシブル管が抜け止めされることを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか一項に記載のフレキシブル管用継手。このように構成した場合、クリップリングにより抜け止めされるフレキシブル管の谷部の位置がずれても、クリップリングは、前記拡幅分に関る範囲において、そのずれに対応することができる。
【符号の説明】
【0031】
1…フレキシブル管用継手、2…フレキシブル管、3…継手本体、4…押止部材、9…スペーサ、22…山部、23…谷部、31,32,33…内壁面、36,91…環状凸部、81…内周面、82…外周面、83…テーパー面、84…環状凹部、85…止部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波山状の凹凸部が軸方向に沿って外周部に形成されたフレキシブル管を接続するためのフレキシブル管用継手において、継手本体の内壁面には、第2パッキン部材と第1パッキン部材とが、スペーサを介して前記フレキシブル管の挿入方向に沿ってこの順に配置され、前記第1パッキン部材が圧入された前記フレキシブル管の先端部をシールすると共に、前記第2パッキン部材とスペーサとが対向するそれぞれの側には、環状凹部と、その環状凹部と対称形状の環状凸部とが形成されて、前記継手本体の内壁面に嵌合された押止部材の押圧により圧縮変形した前記第2パッキン部材が、前記継手本体の内壁面と前記フレキシブル管の外周部とに密着してシールすることを特徴とするフレキシブル管用継手。
【請求項2】
前記第2パッキン部材の環状凹部は、互いに異なる方向に拡径する二つのテーパー面により断面横向きV字状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブル管用継手。
【請求項3】
前記第2パッキン部材には円弧状金属片よりなる止部材が埋設されると共に、その止部材の一部が前記第2パッキン部材の内周面から露出しており、前記第2パッキン部材が圧縮変形した時、前記止部材の一部が前記フレキシブル管の外周部の谷部において、山部の頂部と頂部とを結ぶ線よりも半径方向内側に位置するようになっていることを特徴とする請求項1又は2に記載のフレキシブル管用継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−36943(P2012−36943A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176265(P2010−176265)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(597014420)マツイ機器工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】