説明

フレキシブル配線板用カバーレイフィルム

【課題】カールの発生が抑制され、フレキシブル配線板を製造する際の作業性に優れると共に、フレキシブル配線板の生産性を向上させることができ、また離型紙の廃棄量が少ないフレキシブル配線板用カバーレイフィルムを提供すること。
【解決手段】離型紙2と、耐熱性絶縁フィルム31と前記耐熱性絶縁フィルム31に積層された接着剤層32とを有し、前記接着剤層32を内側にして前記離型紙2の両主面に剥離可能に貼着された一対のカバーレイフィルム片3とを有するフレキシブル配線板用カバーレイフィルム1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフレキシブル配線板の製造に用いられるフレキシブル配線板用カバーレイフィルムに係り、特にフレキシブル配線板を製造する際の作業性に優れ、フレキシブル配線板の生産性を向上させることのできるフレキシブル配線板用カバーレイフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フレキシブル配線板における導体回路パターンの保護、あるいは屈曲特性の向上を目的としてカバーレイフィルムが用いられている。カバーレイフィルムは耐熱性絶縁フィルム等からなるベースフィルムの表面に接着剤層、離型紙を順に積層したものであり、フレキシブル配線板を製造する際に離型紙を剥がして使用する。
【0003】
具体的には、例えばフレキシブル配線板の導体回路パターンに合わせて打ち抜いた後、離型紙を剥がしてフレキシブル配線板に熱圧着する。このとき、カバーレイフィルムから剥がした離型紙は、通常、再使用することなく廃棄する。
【0004】
ところで、このような離型紙を有するカバーレイフィルムについては、最終的にカバーレイフィルムとして使用されるベースフィルムや接着剤層からなる積層体と離型紙との温湿度変化に対する寸法変化率の違いから、温湿度の低い冬季あるいは温湿度の高い梅雨時にカールと呼ばれる反りが発生することがある。このようなカールが発生すると、例えばフレキシブル配線板を製造する際の孔加工等における取り扱いが困難となり、フレキシブル配線板を製造する際の作業性や、フレキシブル配線板の生産性を低下させる。
【0005】
このようなカールの問題について、例えば離型紙となる紙基材の両主面にプラスチックフィルムを積層し、紙基材の吸放湿を抑制することによりカールの発生を抑制する方法が知られている。さらに、より一層カールの発生を抑制する方法として、離型紙となる紙基材の両主面に積層する各プラスチックフィルムの厚さを特定範囲内とすると共に、一方のプラスチックフィルムに対する他方のプラスチックフィルムの厚さを特定範囲内とすることによりカールの発生を抑制する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−235537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したように、離型紙となる紙基材の両主面にプラスチックフィルムを設けることにより、またこのようなプラスチックフィルムの厚さを特定範囲内とすると共に、一方のプラスチックフィルムに対する他方のプラスチックフィルムの厚さを特定範囲内とすることにより、カールの発生をある程度抑制できるようになっている。
【0008】
しかしながら、離型紙を有するカバーレイフィルムについては、依然として最終的にカバーレイフィルムとして使用されるベースフィルムや接着剤層からなる積層体と離型紙とで温湿度変化に対する寸法変化率が異なり、温湿度条件によってはこのような寸法変化率の違いが大きくなるために、必ずしも上記した方法だけではカールの発生を十分に抑制することができない。また、離型紙を有するカバーレイフィルムについては、カバーレイフィルムから剥がした離型紙を再使用することなく廃棄するために、その廃棄量を減らすことが求められている。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、カールの発生が抑制され、フレキシブル配線板を製造する際の作業性に優れると共に、フレキシブル配線板の生産性を向上させることのできるフレキシブル配線板用カバーレイフィルムを提供することを目的としている。また、本発明は、離型紙の廃棄量が少ないフレキシブル配線板用カバーレイフィルムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のフレキシブル配線板用カバーレイフィルムは、離型紙と、耐熱性絶縁フィルムと前記耐熱性絶縁フィルムに積層された接着剤層とを有し、前記接着剤層を内側にして前記離型紙の両主面に剥離可能に貼着された一対のカバーレイフィルム片とを有することを特徴とする。
【0011】
前記離型紙は、少なくとも一方の主面側にその両主面を目視により識別可能とする着色層を有することが好ましい。また、前記離型紙は、CIE1976 L表色系(JlS−Z−8729)に基づく両主面間の色差ΔEabが6以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、カールの発生が抑制され、これによりフレキシブル配線板を製造する際の作業性に優れ、フレキシブル配線板の生産性を向上させることのできるフレキシブル配線板用カバーレイフィルムを提供することができる。また、本発明によれば、離型紙の廃棄量が少ないフレキシブル配線板用カバーレイフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のフレキシブル配線板用カバーレイフィルムの一例を示す断面図。
【図2】図1に示すフレキシブル配線板用カバーレイフィルムにおける離型紙の一方の主面側のプラスチック層を着色層とした例を示す断面図。
【図3】図1に示すフレキシブル配線板用カバーレイフィルムにおける離型紙の両主面側のプラスチック層を着色層とした例を示す断面図。
【図4】図1に示すフレキシブル配線板用カバーレイフィルムにおける離型紙の一方の主面側に新たな着色層を設けた例を示す断面図。
【図5】図1に示すフレキシブル配線板用カバーレイフィルムにおける離型紙の両主面側に新たな着色層を設けた例を示す断面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
図1は、本発明のフレキシブル配線板用カバーレイフィルム1の一例を示す断面図である。本発明のフレキシブル配線板用カバーレイフィルム1は、離型紙2と、この離型紙2の両主面に剥離可能に貼着された一対のカバーレイフィルム片3とを有している。なお、以下ではカバーレイフィルム片3と、これらを有するフレキシブル配線板用カバーレイフィルム1とを区別するために、フレキシブル配線板用カバーレイフィルム1のことを両面型カバーレイフィルム1と呼んで説明する。
【0015】
離型紙2は、例えば紙基材21と、この紙基材21の両主面に積層された一対のプラスチック層22とを有するものであり、これらが一体化されたものである。また、図示しないが、一対のプラスチック層22の外面には必要に応じてシリコーン樹脂等の剥離剤を塗布することにより剥離層が形成されていてもよい。
【0016】
一方、一対のカバーレイフィルム片3は、それぞれ耐熱性絶縁フィルム31と、この耐熱性絶縁フィルム31に積層される接着剤層32とを有するものであり、接着剤層32が内側(離型紙2側)となるようにして離型紙2に剥離可能に貼り合わされている。
【0017】
このような両面型カバーレイフィルム1は、従来のカバーレイフィルムと同様、フレキシブル配線板の導体回路パターンに合わせて打ち抜いた後、離型紙2からそれぞれのカバーレイフィルム片3を剥がしてフレキシブル配線板に熱圧着するようにしてフレキシブル配線板の製造に用いることができる。すなわち、離型紙2の両主面側に配置される個々のカバーレイフィルム片3が従来のカバーレイフィルムに相当する。
【0018】
このように離型紙2の両主面にカバーレイフィルム片3を配置することで、離型紙2の両主面側における温湿度変化に対する寸法変化率を略同一とし、例えば温湿度の低い冬季あるいは温湿度の高い梅雨時においてもカールの発生を有効に抑制することができる。これによりフレキシブル配線板を製造する際の作業性を向上させることができ、またフレキシブル配線板の生産性も向上させることができる。
【0019】
また、フレキシブル配線板を製造する際の打ち抜き加工等において2枚のカバーレイフィルム片3を同時に打ち抜くことができるようになり、これによりフレキシブル配線板の生産性をより一層向上させることができる。
【0020】
さらに、2枚のカバーレイフィルム片3に対して1枚の離型紙2のみで済むため、従来のカバーレイフィルムに対して離型紙2の使用量を半減させることができ、これにより離型紙2の廃棄量も半減させることができる。
【0021】
離型紙2を構成する紙基材21は、例えばグラシン紙、コート紙、キャストコート紙等からなるものとすることができる。また、一対のプラスチック層22は、例えば熱可塑性プラスチックフィルム、具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等からなるポリエステルフィルム、ポリプロピレン、ポリエチレン等からなるポリオレフィンフィルム等からなるものとすることができる。各プラスチック層22の両主面のうちカバーレイフィルム片3に接触する主面については、例えばコロナ放電、無機ガス低温プラズマ等の表面処理を行うことによりカバーレイフィルム片3(接着剤層32)の保持力を高めるようにしてもよい。
【0022】
離型紙2の厚さは50μm以上200μm以下とすることが好ましい。離型紙2の厚さが50μm未満となると、一般的に紙基材21の厚さが薄くなり、紙基材21によるクッション性が十分に得られないおそれがある。また、離型紙2の厚さが200μmを超えると、過度に厚いために、かえってその両主面間の応力差によりカールが発生するおそれがある。
【0023】
また、一対のプラスチック層22のそれぞれの厚さは5μm以上50μm以下とすることが好ましい。プラスチック層22の厚さが5μm未満であると、例えばプラスチック層22の硬さ特性が離型紙2に反映されず、フレキシブル配線板を製造する際の孔加工等において離型紙2が過度なクッション性を示すために加工性が十分でなくなるおそれがある。また、プラスチック層22の厚さが50μmを超えると、例えば離型紙2が過度に硬くなり、フレキシブル配線板を製造する際の孔加工等に用いる金型が摩耗しやすく、その打ち抜き回数が少なくなるおそれがある。
【0024】
なお、一対のプラスチック層22の厚さは必ずしも同一である必要はないが、厚さの差が大きくなるとカールが発生しやすくなることから、通常、一対のプラスチック層22の厚さの比(一方のプラスチック層22に対する他方のプラスチック層22の厚さの比)は0.5以上2.0以下とすることが好ましく、より好ましくは0.75以上1.3以下であり、さらに好ましくは0.9以上1.1以下である。
【0025】
このような離型紙2は、公知のラミネート法により製造することができ、例えば紙基材21の両主面に直接あるいは公知の接着剤を介して一対のプラスチック層22となるプラスチックフィルム22を重ね合わせた後、これらを加熱加圧して一体化することで製造することができる。また、図示しないが、このようにして製造された離型紙2の両主面には必要に応じてシリコーン樹脂等の剥離剤を塗布することにより剥離層を形成してもよい。
【0026】
このような離型紙2には、少なくとも一方の主面側にその両主面を目視により識別可能とする着色層を設けることが好ましい。すなわち、離型紙2の両主面にカバーレイフィルム片3を配置する場合、使用者がいずれの主面側に配置されたカバーレイフィルム片3であるかを識別しにくく、これらを誤使用するおそれがある。
【0027】
離型紙2の少なくとも一方の主面側にその両主面を目視により識別可能とする着色層を設けることで、両主面にカバーレイフィルム片3を配置した場合であっても、使用者がこのカバーレイフィルム片3を通して着色層を目視することにより、このカバーレイフィルム片3がいずれの主面側に配置されたものであるかを識別しやすくなり、誤使用しにくくなる。
【0028】
特に、両面フレキシブル配線板やフレックスリジット配線板のように主面毎に異なる形状に打ち抜かれたカバーレイフィルムが必要とされる場合、従来のカバーレイフィルムでは打ち抜かれたものがいずれの主面用であるかを識別しにくく、誤使用するおそれがある。上記したような離型紙2を用い、その特定の主面側のカバーレイフィルム片3を両面フレキシブル配線板等の特定の主面用として打ち抜くことで、いずれの主面用であるかを識別しやすくなり、誤使用しにくくなる。
【0029】
図2〜5は、離型紙2に着色層23を設けた例を示したものである。着色層23は、例えば図2、3に示すように離型紙2のプラスチック層22を利用したもの、すなわちプラスチック層22自体を着色層23としたものであってもよいし、また例えば図4、5に示すように紙基材21とプラスチック層22との間に新たに設けられたものであってもよい。また、着色層23は、図2、4に示すように離型紙2の一方の主面側にのみ設けられていてもよいし、図3、5に示すように離型紙2の両主面側に設けられていてもよい。
【0030】
なお、図4、5からも分かるように、着色層23は必ずしも離型紙2の表面に露出している必要はなく、離型紙2の両主面を目視により識別可能とするものであれば離型紙2の内部に配置されていても構わない。また、図示しないが、離型紙2の一方の主面側のプラスチック層22を着色層23としつつ、他方の主面側のプラスチック層22と紙基材21との間に新たに着色層23を設けるようにしてもよい。
【0031】
このような着色層23は、CIE(国際照明委員会)1976 L表色系(JlS−Z−8729)に基づく離型紙2の両主面間の色差ΔEabが6以上となるように着色されていることが好ましい。
【0032】
着色層23を設けたとしても、離型紙2の両主面間の色差ΔEabが6未満の場合、その両主面にカバーレイフィルム片3を配置した場合に、必ずしも使用者がいずれの主面側に配置されたものであるかを識別できないおそれがある。離型紙2の両主面の色差ΔEabが6以上となるように着色層23を着色することで、その両主面にカバーレイフィルム片3を配置したとしても、使用者がいずれの主面側に配置されたものであるかを確実に識別し、誤使用しにくくなる。
【0033】
ここで、色差ΔEabは、((ΔL+(Δa+(Δb1/2により求められるものである。具体的には、公知の色差計、例えばCR−300(ミノルタ株式会杜製、商品名)を用いて離型紙2の両主面のL、a、bを測定し、これから上記式に基づいて色差ΔEabを算出することができる。また、離型紙2の両主面間の色差ΔEabは離型紙2を単独で測定して得られるものである。従って、その両主面にカバーレイフィルム片3を配置したもの、すなわち両面型カバーレイフィルム1については、必ずしも両主面間の色差ΔEabは上記した色差値となっている必要はない。
【0034】
着色層23の形成方法は必ずしも限定されるものではないが、例えばプラスチック層22自体を着色層23とする場合、プラスチック層22となるプラスチックフィルム2bとして予め着色されたものを用いる方法が挙げられ、また例えばプラスチック層22とは別に新たに着色層23を設ける場合、プラスチック層22となるプラスチックフィルム2bに予め着色性インクを塗布して着色層23を形成しておく方法が挙げられる。
【0035】
一方、カバーレイフィルム片3における耐熱性絶縁フィルム31としては、例えばポリイミドフィルム、ポリパラフェニレンテレフタルアミドフィルム、ポリエーテルニトリルフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム等の各種のプラスチックフィルムを用いることができる。これらの中でも、耐熱性、寸法安定性、電気特性、機械的特性、耐薬品性、およびコスト等の観点から、ポリイミドフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムを好適に用いることができ、特にポリイミドフィルムが好適に用いられる。
【0036】
耐熱性絶縁フィルム31の厚さは5μm以上50μm以下とすることが好ましい。耐熱性絶縁フィルム31の厚さが5μm未満であると、ピンホール、強度等に対する信頼性を確保することができないおそれがある。また、耐熱性絶縁フィルム31の厚さが50μmを超えると、摺動屈曲特性が十分なものとならず、信頼性を確保できないおそれがある。
【0037】
また、接着剤層32は、この種のカバーレイフィルムに用いられる公知の接着剤組成物、例えばエポキシ樹脂組成物からなるものとすることができる。また、このようなエポキシ樹脂組成物は、例えば(A)エポキシ樹脂、(B)エポキシ樹脂用硬化剤、(C)硬化促進剤、(D)合成ゴム、および(E)無機充填材からなるものとすることができる。以下、各成分について説明する。
【0038】
(A)成分のエポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキ
シ樹脂、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル系の変性エポキシ樹脂、およびその臭素化物等が挙げられ、これらは単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
【0039】
(B)成分のエポキシ樹脂用硬化剤としては、通常エポキシ樹脂の硬化剤として使用されている化合物であれば特に制限なく使用することができ、例えばアミン系硬化剤として、ジシアンジアミド、芳香族ジアミン等が挙げられ、フェノール系硬化剤として、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、トリアジン変性ノボラック樹脂、イミド変性ノボラック樹脂、さらにビフェニル骨格含有ノボラック樹脂やナフトール系多官能型硬化剤等が挙げられ、これらは単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
【0040】
(B)成分のエポキシ樹脂硬化剤の含有量は、(A)成分のエポキシ樹脂のエポキシ基数に対する、この(A)成分のエポキシ樹脂のエポキシ基と反応し得る(B)成分のエポキシ樹脂硬化剤の反応性基数の比((B)成分のエポキシ樹脂硬化剤の反応性基数/(A)成分のエポキシ樹脂のエポキシ基数)が0.7以上1.3以下となるように調整することが好ましい。(B)成分のエポキシ樹脂硬化剤の含有量をこのような基数の比を満たすものとすることで、(A)戌分のエポキシ樹脂および(B)成分のエポキシ樹脂硬化剤のそれぞれの未反応分を少なくすることができる。
【0041】
(C)成分の硬化促進剤としては、通常エポキシ樹脂の硬化促進剤として使用されている化合物であれば特に制限なく使用できる。例えば、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾ−ル、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール類、三フッ化ホウ素モノメチルアミン錯体、三フッ化ホウ素ピペリジン錯体、三フッ化ホウ素トリエタノールアミン錯体、三フッ化ホウ素ベンジルアミン錯体、三フッ化ホウ素イミダゾール錯体等の三フッ化ホウ素錯化合物、トリフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等の有機ホスフィン類、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェニル等の三級アミン類、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレー卜等のテトラフェニルボロン塩等が挙げられ、これらは単独で、または2種以上を混合して使用することができる。(C)成分の硬化促進剤の含有量は、(A)成分のエポキシ樹脂100質量部に対して0.01質量部以上5質量部以下とすることが好ましい。
【0042】
(D)成分の合成ゴムとしては、例えばアクリルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンメチルアクリレートアクリロニトリルゴム、タジエンゴム、カルボキシル基含有アクリロニトリルブタジエンゴム、ビニル基含有アクリロニトリルブタジエンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、ポリビニルブチラール等が挙げられ、これらは単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
【0043】
(D)成分の合成ゴムの含有量は、(A)成分のエポキシ樹脂100質量部に対して10質量部以上900質量部以下とすることが好ましく、20以上150質量部以下とすることがより好ましい。10質量部未満であると引き剥がし強度が十分でなくなるおそれがあり、900質量部を超えると耐熱性が十分でなくなるおそれがある。
【0044】
(E)成分の無機充填剤は難燃性の向上等を目的とする補助添加剤として使用されるものであって、接着剤としての諸特性を阻害しない範囲において使用することができる、このような無機充填剤としては、例えば水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水和物、タルク、シリカ、アルミナ等が挙げられ、これらは単独で、または2種以上を混合して使用することができる。無機充填剤を含有させる場合、接着剤組成物中、1質量%以上30質量%以下とすることが好ましい、1質量%未満では難燃性の改善等に十分な効果がなく、30重量%を超えると、接着剤組成物が硬く脆くなり、接着力の低下等が発生するおそれがあるために好ましくない。
【0045】
接着剤組成物には、上記した(A)〜(E)成分の他、必要に応じて、かつ本発明の趣旨に反しない限度において、その他の無機充填剤、トリアジンチオール誘導体、ゴム老化防止剤、顔料、難燃剤等を含有させることができる。例えば臭素等のハロゲンを有するエポキシ樹脂や添加型ブロム化合物で変性することにより難燃性を付与することができる。
【0046】
このような接着剤組成物は公知の方法を適用して調製することができる。例えば、上記した(A)〜(E)成分に加え、必要に応じて加えられるその他の成分を配合した後、ポットミル、ボールミル、ビーズミル、ロールミル、ホモジナイザー、スーパーミル、またはライカイ機等の公知の混練機を用いて、室温あるいは加熱下において混練することで接着剤組成物を調製することができる。
【0047】
接着剤組成物には、加工法に適した粘度とするために溶剤を添加することができる。溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒、あるいはN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド等が挙げられ、これらは単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
【0048】
このような接着剤組成物は、耐熱性絶縁フィルム31上に公知の方法により塗布し、乾燥させることで接着剤層32とすることができる。具体的には、耐熱性絶縁フィルム31上に、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、またはグラビアコート法等の公知の塗布方法により塗布し、乾燥処理し、半硬化状態とすることで接着剤層32とすることができる。
【0049】
接着剤組成物の塗布厚さ(接着剤層32の厚さ)は5μm以上20μm以下とすることが好ましい。塗布厚さを5μm以上20μm以下とすることで、ハンダ耐熱性などの耐熱特性を良好にすることができると共に、摺動屈曲特性等も良好なものとすることができる。
【0050】
なお、接着剤組成物の塗布厚さ(接着剤層32の厚さ)は離型紙2の両主面側で異なるものとしてもよい。このような離型紙2の両主面側で接着剤層32の厚さが異なる両面型カバーレイフィルム1は、例えばフレックス−リジッド配線基板に用いられる片側にシールド層が形成されたフレキシブル配線板に好適に使用することができる。
【0051】
通常、フレキシブル配線板のシールド層側は回路としての銅箔残存率が高いために、このシールド層側に用いられるカバーレイフィルムは接着剤層が比較的薄くされ、一方、フレキシブル配線板の信号回路側は回路としての銅箔残存率が低いために、この信号回路側に用いられるカバーレイフィルムは接着剤層が比較的厚くされる。従って、上記したような離型紙2の両主面側で接着剤層32の厚さを異なるものとすることで、このような用途に好適に用いられるものとすることができる。
【0052】
なお、一対の耐熱性絶縁フィルム31、接着剤層32の種類については必ずしも同一でなくてもよいが、カールの発生を抑制する観点からは同一種類とすることが好ましい。また、一対の耐熱性絶縁フィルム31、接着剤層32のそれぞれの厚さについても必ずしも同一でなくてもよいが、カールの発生を抑制する観点からは大きく異ならないことが好ましく、それぞれの厚さの比(一方の耐熱性絶縁フィルム31に対する他方の耐熱性絶縁フィルム31の厚さの比、一方の接着剤層32に対する他方の接着剤層32の厚さの比)は0.5以上2.0以下とすることが好ましく、より好ましくは0.75以上1.3以下であり、さらに好ましくは0.9以上1.1以下である。
【0053】
このような両面型カバーレイフィルム1は、ラミネート法等の公知の方法を適用して製造することができ、例えば離型紙2の両主面にそれぞれカバーレイフィルム片3を重ね合わせ、この状態で加熱加圧することにより製造することができる。この際、温度を30℃以上130℃以下、圧力を0.1MPa以上2.0MPa以下とすることで、離型紙2と一対のカバーレイフィルム片3とを良好に貼り合わせることができる。
【0054】
また、離型紙2と一対のカバーレイフィルム片3とを加熱加圧ロールを用いて貼り合わせることにより両面型カバーレイフィルム1としてもよい。この場合、離型紙2の両主面に同時にカバーレイフィルム片3を貼り合わせるようにしてもよいし、一方の主面にカバーレイフィルム片3を貼り合わせた後、他方の主面にカバーレイフィルム片3を貼り合わせるようにしてもよい。
【0055】
加熱加圧ロールを用いる場合、上記したような温度、圧力で通過速度を0.1〜2.0m/分とすることで離型紙2と一対のカバーレイフィルム片3とを良好に貼り合わせることができる。また、このようにして得られるカバーレイフィルム片3はロール状に巻き取って保存、保管することができる。
【0056】
このようにして製造された両面型カバーレイフィルム1は、上記したように従来のカバーレイフィルムと略同様にしてフレキシブル配線板の製造に用いることができる。例えば、フレキシブル配線板の導体回路パターンに合わせて両主面のカバーレイフィルム片3を打ち抜いた後、離型紙2からそれぞれのカバーレイフィルム片3を剥がし、フレキシブル配線板に熱圧着するようにすることでフレキシブル配線板を製造することができる。
【0057】
この際、カールの発生が抑制されているために作業性に優れ、併せて両主面のカバーレイフィルム片3を同時に打ち抜くことができるために、フレキシブル配線板の生産性を向上させることができる。また、離型紙2の使用量が半減されているために、その廃棄量も半減させることができる。
【実施例】
【0058】
次に、本発明について実施例を参照して具体的に説明する。
なお、以下の質量部あるいは質量%は全て固形分を基準とするものである。
【0059】
〔離型紙の製造〕
(離型紙A)
まず、着色層を形成するための着色剤を用意した。すなわち、青色顔料としての銅およびその化合物、バインダーとしての合成樹脂、有機溶剤としてのトルエン、メチルエチルケトン(MEK)、およびイソプロピルアルコールを配合し、青色顔料の含有量が13質量%または5質量%である2種類の着色剤を調製した。
【0060】
また、プラスチック層となるものとして、厚さが25μmの2枚の2軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)を用意した。そして、一方のOPPフィルムの片面に上記した青色顔料を13質量%含有する着色剤を塗布し、乾燥させて着色層を形成し、他方のOPPフィルムについては青色顔料を5質量%含有する着色剤を用いて同様にして着色層を形成した。
【0061】
次に、紙基材となる厚さ60μmの上質紙の両主面に接着剤を介して上記した一対のOPPフィルムを重ね合わせ、全体を加熱加圧することにより厚さ110μmの離型紙Aを作製した。なお、一対のOPPフィルムはいずれも着色層が内側となるようにした。
【0062】
この離型紙Aについて両主面間の色差ΔEabを求めたところ、ΔEabは6.5となることが認められた。なお、両主面間の色差ΔEabは、ミノルタ社製CR−300により両主面のL、a、bを測定し、これから((ΔL+(Δa+(Δb1/2により求めた。
【0063】
(離型紙B)
着色層を形成するための着色剤として、青色顔料の含有量が13質量%または12質量%である2種類の着色剤を用いた以外は離型紙Aと同様にして離型紙Bを作製した。この離型紙Bについて離型紙Aと同様にしてΔEab求めたところ、ΔEabは2.0となることが認められた。
【0064】
(離型紙C)
OPPフィルムに着色層を形成しなかったこと以外は離型紙Aと同様にして離型紙Cを作製した。この離型紙Cについて離型紙Aと同様にしてΔEab求めたところ、ΔEabは0.3となることが認められた。
【0065】
〔エポキシ樹脂組成物の調製〕
カバーレイフィルム片の接着剤層となるエポキシ樹脂組成物を調製した。すなわち、カルボキシル基含有アクリロニトリルブタジエンゴムとしてニポール1072(日本ゼオン社製、商品名、ニトリル含量27)200質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂としてエピコート1001(油化シェル社製、商品名、エポキシ当量470)320質量部、クレゾールノボラックエポキシ樹脂としてYDCN−703P(東都化成社製、商品名、エポキシ当量210)147質量部、フェノールノボラック樹脂としてBRG558(昭和高分子社製、商品名、水酸基価106)160質量部、ビス−p−アミノベンゾアートであるエラスマー−1000(イハラケミカル社製、商品名、アミン当量309.5、n×m=13.6、Mw1238)90質量部、フェノキシホスファゼンオリゴマー(大塚化学社製、融点100℃)110質量部、トリアジンジチオール誘導体として6−ジブチルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオールであるZISNET−DB(三協化成社製、商品名)4質量部、重金属不活性剤として3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾールであるMARKCDA−1(アデカアーガス化学社製、商品名)2質量部、水酸化アルミニウム粉末としてH−42I(昭和電工社製、商品名)220質量部、および三フッ素化ホウ素モノメチルアミン5質量部からなる混合物に溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)およびメチルエチルケトンを加えて固形分40質量%のエポキシ樹脂組成物を調製した。
【0066】
(実施例1)
耐熱性絶縁フィルムであるカプトン100EN(東レデュポン社製、商品名)の片面に上記したエポキシ樹脂組成物を乾燥後の厚さが15μmとなるようにロールコーターで塗布し、80℃×2分、120℃×5分の加熱乾燥を行うことにより溶剤を除去すると共に半硬化させて接着剤層を形成し、一対のカバーレイフィルム片を作製した。
【0067】
その後、離型紙Aの両主面に上記した一対のカバーレイフィルム片を重ね合わせ、これらを加熱加圧ロールにより貼り合わせることにより両面型カバーレイフィルムとした。なお、一対のカバーレイフィルム片は接着剤層が内側となるようにして貼り合わせた。また、加熱加圧ロールは、圧力を1.0MPa、ロール温度を100℃、速度を1.0m/分とする条件で行った。
【0068】
(実施例2)
離型紙Aの代わりに離型紙Bを用いた以外は実施例1と同様にして両面型カバーレイフィルムを作製した。
【0069】
(実施例3)
離型紙Aの代わりに離型紙Cを用いた以外は実施例1と同様にして両面型カバーレイフィルムを作製した。
【0070】
(比較例1)
離型紙としてのWH52−P52白(サンエー化研社製、商品名)を用い、その一方の主面に実施例1で用いたものと同様のカバーレイフィルム片を実施例1と同条件で貼り合わせることにより片面型カバーレイフィルムを作製した。
【0071】
次に、実施例および比較例の両面型あるいは片面型カバーレイフィルムについて、以下のようにしてカール性、および誤認率の評価を行った。結果を表1に示す。
【0072】
(カール性)
実施例および比較例の両面型あるいは片面型カバーレイフィルムを200mm×200mmの大きさに切断し、40℃、95%RHの恒温恒湿槽中で48時間保持した後、カール(反り)の大きさを測定した。なお、表中、カールの大きさは、カバーレイフィルムを定盤上においたときの四隅の高さの平均値で示した。
【0073】
(誤認率)
実施例の両面型カバーレイフィルムを50mm×50mmの大きさに切断し、その表裏を10人の一般作業者が目視にて確認した。結果は作業者の人数に対する表裏を誤認した人数の割合(誤認した人数/作業者の人数×100[%])を求めた。なお、比較例1の片面型カバーレイフィルムについては、片面のみにカバーレイフィルムが貼り合わされているために誤認率の評価は行わなかった。
【0074】
【表1】

【0075】
表1から明らかなように、離型紙の両主面にカバーレイフィルム片を配置した実施例の両面型カバーレイフィルムについては、いずれもカールの大きさが1mm未満となり、カールの発生が有効に抑制されていることが認められた。また、離型紙の両主面間の色差ΔEabを大きくするほど両主面の誤認率を小さくすることができ、特に色差ΔEabを6以上とすることでほぼ誤認率をゼロにできることが認められた。
【符号の説明】
【0076】
1…フレキシブル配線板用カバーレイフィルム(両面型カバーレイフィルム)、2…離型紙、21…紙基材、22…プラスチック層、23…着色層、3…カバーレイフィルム片、31…耐熱性絶縁フィルム、32…接着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
離型紙と、
耐熱性絶縁フィルムと前記耐熱性絶縁フィルムに積層された接着剤層とを有し、前記接着剤層を内側にして前記離型紙の両主面に剥離可能に貼着された一対のカバーレイフィルム片と
を有することを特徴とするフレキシブル配線板用カバーレイフィルム。
【請求項2】
前記離型紙は、少なくとも一方の主面側にその両主面を目視により識別可能とする着色層を有することを特徴とする請求項1記載のフレキシブル配線板用カバーレイフィルム。
【請求項3】
前記離型紙は、CIE1976 L表色系(JlS−Z−8729)に基づく両主面間の色差ΔEabが6以上であることを特徴とする請求項2記載のフレキシブル配線板用カバーレイフィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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