説明

フレキシブル配線板

【課題】 高温使用でも、十分な屈曲寿命を有すると共に、燃焼時に有毒ガスである臭化水素などが発生することがなく、かつ良好な難燃性を示すハロゲンフリーの難燃性接着剤組成物を用いてなるフレキシブル配線板を提供すること。
【解決手段】 (A)下記一般式で表されるビフェニル骨格及びフェノール骨格を有する多官能樹脂のグリシジル化合物であるエポキシ樹脂、(B)エポキシ用硬化剤、(C)エポキシ用硬化促進剤、(D)エラストマー、(E)少なくとも一種のシクロホスファゼン化合物及び(F)無機充填材を含み、かつ(D)成分の含有量が、組成物の固形分量に基づき、5〜50質量%であるハロゲンフリーの難燃性接着剤組成物を用いて得られたフレキシブル配線板である。
【化1】


(式中、nは1〜10の整数を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な難燃性を示すハロゲンフリーの難燃性接着剤組成物を用いてなる、電気・電子機器などの配線のために使用されるフレキシブル配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、フレキシブル配線板は、高屈曲性を有することから、電気機器や電子機器などの配線のために用いられており、特に近年では、HDD、CD−ROMなどのコンピューター周辺機器などの可動部材の配線のために多用されてきている。
このようなフレキシブル配線板は、例えば、プラスチックフィルムなどの絶縁層に、必要により合成樹脂などの接着剤層を介して、金属箔などの導体層を積層し、この導体層にエッチングなどの処理によって所定の回路パターンを形成した後、さらに、その導体層の上から、必要により接着剤層を介して、絶縁層を積層するようにして製造されている。
また、近年、環境問題、特に人体に対する安全性についての世界的な関心の高まりに伴って、電気・電子機器についても、従来からの難燃性に加えて、より少ない有害性、より高い安全性という要求が増大している。すなわち、電気・電子機器は、単に燃えにくいだけでなく、有害ガスや有害煙塵などの発生が少ないことが要望されている。従来、電気・電子機器の配線に使用するフレキシブルプリント配線板は、フレキシブル銅張積層板、カバーレイ及び接着フィルムにより構成されるが、そこに使用されている接着剤には、難燃剤として作用する臭素が含まれる臭素化エポキシ樹脂、特にテトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂が一般に使用されている(例えば特許文献1及び2参照)。
このような臭素化エポキシ樹脂は、良好な難燃性を有するものの、燃焼時に有害なハロゲン化ガス(臭化水素)などを発生することや、ブロム化ダイオキシン類、ブロム化フラン類を発生する可能性が懸念されているため、その使用が抑制されつつある。また、最近においては鉛フリーはんだ実装の普及、また、配線板の配線密度や実装密度の著しい進展によって、基材自体の耐熱性や接着性の信頼性向上が益々要求されている。
この要求を満たすために種々の提案がなされているが(例えば、特許文献3〜5参照)、コスト面を含め、十分に満足し得る結果が得られていないのが現状である。
【0003】
【特許文献1】特開平4−197746号公報
【特許文献2】特開平3−028285号公報
【特許文献3】特開平7−048555号公報
【特許文献4】特開2000−345635号公報
【特許文献5】特開2004−346256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、高温使用でも、十分な屈曲寿命を有すると共に、燃焼時に有毒ガスである臭化水素などが発生することがなく、かつ良好な難燃性を示すハロゲンフリーの難燃性接着剤組成物を用いてなる、電気・電子機器などの配線のために使用されるフレキシブル配線板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、特定の各種成分を含む難燃性接着剤組成物を用いることにより、所望の性能を有するフレキシブル配線板が得られることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち本発明は、以下のフレキシブル配線板を提供するものである。
1. (A)下記一般式(I)で表されるビフェニル骨格及びフェノール骨格を有する多官能樹脂のグリシジル化合物であるエポキシ樹脂、
【0006】
【化1】

【0007】
(式中、nは1〜10の整数を示す。)
(B)エポキシ用硬化剤、(C)エポキシ用硬化促進剤、(D)エラストマー、(E)少なくとも一種のシクロホスファゼン化合物及び(F)無機充填材を含み、かつ(D)成分の含有量が、組成物の固形分量に基づき、5〜50質量%であるハロゲンフリーの難燃性接着剤組成物を用いて得られたことを特徴とするフレキシブル配線板。
2. ベースフィルムの少なくとも片面に、接着剤層I、回路パターンが形成された導体層、接着剤層II及びカバーレイフィルムが順に積層された構造を有し、上記接着剤層I及び接着剤層IIのいずれか一方もしくは両方が、ハロゲンフリーの難燃性接着剤組成物を用いて形成され、かつその弾性率が、20及び80℃において、それぞれ200〜4000MPaである上記1に記載のフレキシブル配線板。
3. 接着剤層I及びIIの厚さが、それぞれ5〜50μmである上記2に記載のフレキシブル配線板。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高温使用でも、十分な屈曲寿命を有すると共に、燃焼時に有毒ガスである臭化水素などが発生することがなく、かつ良好な難燃性を示すハロゲンフリーの難燃性接着剤組成物を用いてなる、電気・電子機器などの配線のために使用されるフレキシブル配線板を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のフレキシブル配線板で用いるハロゲンフリーの難燃性接着剤組成物は、(A)下記一般式(I)で表されるビフェニル骨格及びフェノール骨格を有する多官能樹脂のグリシジル化合物であるエポキシ樹脂、
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、nは1〜10の整数を示す。)
(B)エポキシ用硬化剤、(C)エポキシ用硬化促進剤、(D)エラストマー、(E)少なくとも1種のシクロホスファゼン化合物及び(F)無機充填材を含む組成物である。
(A)成分のエポキシ樹脂は、必要に応じて、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する他のエポキシ樹脂、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂と混合して使用することができる。これらのエポキシ樹脂は、通常、溶剤に溶解して使用することができる。その溶剤は、エポキシ樹脂、エポキシ用硬化剤、エポキシ用硬化促進剤、エラストマー及びホスファゼン化合物を溶解するものであればよいが、接着剤の塗布乾燥工程において溶剤が残留しないように沸点160℃以下の溶剤であることが望ましい。具体的な溶剤としてはメチルエチルケトン、トルエン、アセトン、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ及びシクロヘキサノンなどが挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記一般式(I)で表されるエポキシ樹脂と他のエポキシ樹脂との混合樹脂中、上記一般式(I)で表されるエポキシ樹脂の含有量は、60質量%以上が好ましく、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。上記一般式(I)で表されるエポキシ樹脂の含有量が60質量%以上であると、充分な難燃性を有する接着剤組成物を得ることができる。
【0012】
本発明で用いる(B)成分のエポキシ用硬化剤としては、特に制限はなく、従来エポキシ樹脂の硬化剤として使用されているものの中から、任意のものを適宣選択して用いることができる。例えばアミン系、酸無水物系、フェノール系などが挙げられるが、これらの中でアミン系及びフェノール系が好ましい。アミン系硬化剤としては、ジシアンジアミドや、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、m−キシリレンジアミンなどの芳香族ジアミン等が好ましく挙げられ、フェノール系硬化剤としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂、トリアジン変性フェノールノボラック樹脂などが好ましく挙げられる。これらの硬化剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。このエポキシ用硬化剤の使用量は、硬化性及び硬化樹脂物性のバランスなどの点から、上記一般式(I)で表されるエポキシ樹脂又は上記混合樹脂(以下、「樹脂成分」と称することがある。)に対する当量比で、通常0.5〜1.5当量比程度、好ましくは0.7〜1.3当量比の範囲で選定される。
【0013】
本発明で用いる(C)成分のエポキシ用硬化促進剤としては、特に制限はなく、従来エポキシ樹脂の硬化促進剤として使用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。例えば2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール化合物、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、三フッ化ホウ素アミン錯体、トリフェニルホスフィンなどを例示することができる。これらの硬化促進剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。このエポキシ用硬化促進剤の使用量は、硬化促進性及び硬化樹脂物性のバランスなどの点から、上記樹脂成分100質量部に対し、通常0.1〜10質量部程度、好ましくは0.4〜5質量部の範囲で選定される。
【0014】
本発明で用いる(D)成分のエラストマーは、硬化接着剤層に柔軟性を付与し、屈曲特性を向上させるために用いられる。このエラストマーとしては、例えばアクリルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム及びカルボキシル基含有アクリロニトリルブタジエンゴムなどの各種合成ゴム、ゴム変性の高分子量化合物、高分子エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、変性ポリイミド及び変性ポリアミドイミドなどが挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のフレキシブル配線板においては、接着剤層の20及び80℃における弾性率は、それぞれ200〜4000MPaの範囲にあることが好ましい。接着剤層の弾性率が上記範囲にあれば、フレキシブル配線板は良好な柔軟性を有し、屈曲寿命も長い。より好ましい弾性率は、300〜3000MPaの範囲であり、特に500〜2000MPaの範囲が好ましい。なお、上記弾性率は、JIS−C−2318に準拠して測定した値である。
(D)成分のエラストマーの含有量は、組成物の固形分量に基づき、5〜50質量%の範囲で選定される。このエラストマーの含有量が5質量%以上であると、接着剤層の弾性率を20及び80℃で、それぞれ4000MPa以下に制御することができるので、フレキシブル配線板としての柔軟性が損なわれることがなく、良好な耐折性を得ることができる。また、50質量%以下であると長い屈曲寿命を得ることができる。このエラストマーの好ましい含有量は5〜40質量%であり、特に10〜30質量%が好ましい。
【0015】
本発明で用いる(E)成分のシクロホスファゼン化合物としては、実質的にハロゲンを含まないものであって、耐熱性、耐湿性、難燃性、耐薬品性などの点から、融点が80℃以上であるシクロホスファゼン化合物が好ましく用いられる。具体的な例としては、下記一般式(II)
【0016】
【化3】

【0017】
(式中、X1及びX2は、それぞれ独立に水素原子又はハロゲンを含まない有機基を示し、mは3〜10の整数を示す。)
で表されるシクロホスファゼンオリゴマーを挙げることができる。上記一般式(II)において、X1及びX2のうちのハロゲンを含まない有機基としては、例えば炭素数1〜10のアルコキシル基、フェノキシ基、アミノ基及びアリル基などが挙げられる。このシクロホスファゼン化合物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
このシクロホスファゼン化合物は、組成物の固形分量に基づき、5〜50質量%の割合で含まれていることが、難燃性及び他の物性のバランスの面から好ましい。より好ましい含有量は9〜40質量%であり、特に9〜30質量%が好ましい。
【0018】
本発明において、(F)成分の無機充填材としては特に制限はなく、タルク、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、溶融シリカ及び合成シリカなどが挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、この無機充填材の粒径については特に制限はないが、平均粒径で、通常0.1〜10μm程度であり、好ましくは0.5〜5μmである。
この無機充填材の含有量は、組成物の固形分量に基づき、通常5〜60質量%程度、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは5〜30質量%の範囲である。
本発明で用いる難燃性接着剤組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で各種添加剤、例えば有機質充填材、顔料、劣化防止剤などを配合することができる。
【0019】
本発明で用いる難燃性接着剤組成物は、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶媒、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサンなどのエーテル系溶媒、あるいはN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミドなどの溶媒に、上記(A)〜(F)成分及び必要に応じて用いられる各種添加剤を加え、ポットミル、ボールミル、ビーズミル、ロールミル、ホモジナイザー、スーパーミルなどを用い、均一に混合することにより、調製することができる。固形分濃度としては、塗工性及び経済性などの点から、10〜45質量%程度が好ましく、より好ましくは20〜35質量%である。
このようにして得られた難燃性接着剤組成物は、高温使用でも、十分な屈曲寿命を有すると共に、燃焼時に有毒ガスである臭化水素などが発生することがなく、かつ良好な難燃性を有し、本発明のフレキシブル配線板用として用いられる。
【0020】
次に、本発明のフレキシブル配線板は、上述の難燃性接着剤組成物を用いて得られたものであって、ベースフィルムの少なくとも片面に、接着剤層I、回路パターンが形成された導体層、接着剤層II及びカバーレイフィルムが順に積層された構造を有し、上記接着剤I及び接着剤層IIのいずれか一方もしくは両方が、上記難燃性接着剤組成物を用いて形成され、かつその弾性率が20及び80℃において、それぞれ200〜4000MPaであることが好ましい。
本発明のフレキシブル配線板を作製するには、以下に示す方法を好ましく用いることができる。
まず、フレキシブル配線板用カバーレイを作製する。このカバーレイは、例えばポリイミド系フィルムやアラミド系フィルムなどのキャリアフィルムの一方の面に、上記難燃性接着剤組成物を、公知の方法、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法などで、乾燥後の厚さが5〜50μm程度になるように塗工して乾燥処理し、半硬化状態の接着剤層を形成することにより、フレキシブル配線板用カバーレイを作製する。
上記接着剤層の厚さが5〜50μmの範囲にあれば、フレキシブル配線板は、はんだ耐熱性などの良好な耐熱特性を有すると共に、耐屈曲特性も良好となる。接着剤層の好ましい厚さは5〜20μmである。
【0021】
このカバーレイにおいては、必要に応じ、上記接着剤層に離型シートを設けることができる。この離型シートとしては、例えばグラシン紙、コート紙、キャストコート紙などの紙基材、これらの紙基材にポリエチレンなどの熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙、あるいはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィンフィルムなどのプラスチックフィルムに、シリコーン樹脂などの剥離剤を塗布したものなどが挙げられる。この離型シートの厚さについては特に制限はないが、通常20〜150μm程度である。
【0022】
このようにして得られたカバーレイを、その接着剤層を介してフレキシブル回路板と貼り合わせ、一体化させることにより、本発明のフレキシブル配線板が得られる。
本発明のフレキシブル配線板に用いられるフレキシブル回路板は、電気絶縁性フィルム(ベースフィルム)上に積層された金属箔のエッチングにより回路パターンを形成したものである。
上記ベースフィルムである電気絶縁性フィルムとしては、フレキシブル配線板の電気絶縁性フィルムとして使用し得るものであればよく、特に制限はない。このような電気絶縁性フィルムとしては、例えば、ポリイミドフィルム、ポリエーテルニトリルフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルムなどのプラスチックフィルムが挙げられる。これらのうち、耐熱性、寸法安定性、電気特性、機械的特性、耐薬品性およびコストなどを考慮すると、好ましくは、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリイミドフィルムが挙げられる。特に好ましくは、ポリイミドフィルムが挙げられる。これらプラスチックフィルムは、その厚みが、通常、約0.01〜0.3mmである。
【0023】
上記金属箔としては、銅箔、アルミニウム箔などが挙げられるが、これらの中で銅箔が好ましい。この金属箔の厚さは通常3〜50μm程度である。この金属箔を上記の電気絶縁性フィルム上に積層、一体化する方法については特に制限はなく、従来公知の方法、例えば接着剤を用いる方法などを採用することができる。この接着剤には、上述の本発明の難燃性接着剤組成物を用いることができる。この場合、接着剤層の厚さは、5〜50μm程度である。上記接着剤層の厚さが5〜50μmの範囲にあれば、フレキシブル配線板は、はんだ耐熱性などの良好な耐熱特性を有すると共に、耐屈曲特性も良好となる。この接着剤層の好ましい厚さは、5〜20μmである。
このようにして得られたフレキシブル印刷配線用基板の金属箔に、公知の方法によりエッチング処理を施し、回路パターンを形成することにより、フレキシブル回路板が得られる。このフレキシブル回路板に、上述のカバーレイを、その半硬化状態の接着剤層を介して貼り合わせ、通常100〜250℃程度で加熱処理して、該半硬化状態の接着剤層を完全硬化させることにより、本発明のフレキシブル配線板を作製することができる。
このようにして得られた本発明のフレキシブル配線板は、特に高温使用においても十分な屈曲寿命を有している。
【実施例】
【0024】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。以下の実施例及び比較例において、「部」とは「質量部」を意味する。なお、各例における諸特性は、以下に示す方法により評価した。
(1)接着剤層の弾性率特性
JIS−C−2318に準拠し、20℃及び80℃におけるそれぞれの弾性率を測定した。
(2)カバーレイ付きフレキシブル基板の評価
(a)耐燃性
銅張積層板の銅箔をエッチング処理により全て除去した試験片について、UL規格に準拠し、耐燃性を求めた。
(b)はんだ耐熱性
300℃のはんだ浴に1分間フロートさせて、フクレの有無を目視観察し、下記の基準で評価した。
○:フクレなし。
×:フクレあり。
(c)耐屈曲性
JIS−C−5016に準拠し、銅張積層板とカバーレイの組み合わせで作製したフレキシブル基板について、R=2mmにて20℃及び80℃におけるそれぞれの耐屈曲強さ(縦方向)を測定した。
【0025】
実施例1
カルボキシ含有アクリロニトリルブタジエンゴム「ニポール 1072」(日本ゼオン社製、商品名)20部、ビフェニル骨格含有多官能型エポキシ樹脂「NC−3000−H」(日本化薬社製、商品名、エポキシ当量290)56部、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン8.7部、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.5部、水酸化アルミニウム10部、シクロフェノキシホスファゼンオリゴマー(融点100℃)10部及び老化防止剤のN,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン1部を、メチルエチルケトン/トルエン質量比=6/4の混合溶剤に溶解、希釈させ、固形分30質量%のFPC基板用の接着剤組成物を製造した。
【0026】
比較例1
カルボキシ含有アクリロニトリルブタジエンゴム「ニポール 1072」(日本ゼオン社製、商品名)4部、ビフェニル骨格含有多官能型エポキシ樹脂「NC−3000−H」(日本化薬社製、商品名、エポキシ当量290)56部、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン8.7部、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.5部、水酸化アルミニウム10部、シクロフェノキシホスファゼンオリゴマー(融点100℃)10部及び老化防止剤のN,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン1部を、メチルエチルケトン/トルエン質量比=6/4の混合溶剤に溶解、希釈させ、固形分30質量%のFPC基板用の接着剤組成物を製造した。
【0027】
比較例2
カルボキシ含有アクリロニトリルブタジエンゴム「ニポール 1072」(日本ゼオン社製、商品名)90部、ビフェニル骨格含有多官能型エポキシ樹脂「NC−3000−H」(日本化薬社製、商品名、エポキシ当量290)56部、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン8.7部、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.5部、水酸化アルミニウム10部、シクロフェノキシホスファゼンオリゴマー(融点100℃)10部及び老化防止剤のN,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン1部を、メチルエチルケトン/トルエン質量比=6/4の混合溶剤に溶解、希釈させ、固形分30質量%のFPC基板用の接着剤組成物を製造した。
【0028】
試験例1
実施例1及び比較例1〜2で製造したFPC基板用の接着剤組成物を、厚さ25μmのポリイミドフィルム「カプトン」(東レデュポン社製、商品名)に、乾燥後の厚さがそれぞれ3、15、60μmとなるようにロールコーターで塗布乾燥し、その接着剤面と銅箔(18μm)の処理面とを重ね合わせて、170℃のラミネートロールで圧着した後、オーブンで130℃、3時間、180℃、3時間処理し、接着剤を硬化させて3種類のフレキシブル銅張積層板を得た。
実施例1及び比較例1〜2で製造したFPC基板用の接着剤組成物を、厚さ25μmのポリイミドフィルム「カプトン」(前出)に、乾燥後の厚さがそれぞれ3、15、60μmとなるようにロールコーターで塗布乾燥し、半硬化させて3種類のカバーレイを作製した。このカバーレイを、実施例1及び比較例1〜2で製造したそれぞれの接着剤組成物を用いて作製したフレキシブル銅張積層板に重ね合わせ、熱プレスで160℃、4MPa、1時間加熱加圧接着し、それぞれの評価用のカバーレイ付きフレキシブル基板を作製した。
これらのカバーレイ付きフレキシブル基板について、耐燃性、はんだ耐熱性及び耐屈曲性を評価した。その結果を、接着剤層の弾性率特性と共に表1に示す。なお、フレキシブル銅張積層板とカバーレイの接合は、それぞれ接着剤層の厚さが同じもの同士を用いて行った。
【0029】
【表1】

【0030】
表1から明らかなように、本発明のフレキシブル配線板は、ハロゲンを実質的に含有しないで、優れた難燃性を示し、しかも、屈曲性、耐熱性に優れるものである。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明のフレキシブル配線板は、良好な難燃性を示すハロゲンフリーの組成物を用いたことにより、高温使用でも、十分な屈曲寿命を有すると共に、燃焼時に有毒ガスである臭化水素などが発生することがない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(I)で表されるビフェニル骨格及びフェノール骨格を有する多官能樹脂のグリシジル化合物であるエポキシ樹脂、
【化1】

(式中、nは1〜10の整数を示す。)
(B)エポキシ用硬化剤、(C)エポキシ用硬化促進剤、(D)エラストマー、(E)少なくとも一種のシクロホスファゼン化合物及び(F)無機充填材を含み、かつ(D)成分の含有量が、組成物の固形分量に基づき、5〜50質量%であるハロゲンフリーの難燃性接着剤組成物を用いて得られたことを特徴とするフレキシブル配線板。
【請求項2】
ベースフィルムの少なくとも片面に、接着剤層I、回路パターンが形成された導体層、接着剤層II及びカバーレイフィルムが順に積層された構造を有し、上記接着剤層I及び接着剤層IIのいずれか一方もしくは両方が、ハロゲンフリーの難燃性接着剤組成物を用いて形成され、かつその弾性率が、20及び80℃において、それぞれ200〜4000MPaである請求項1に記載のフレキシブル配線板。
【請求項3】
接着剤層I及びIIの厚さが、それぞれ5〜50μmである請求項2に記載のフレキシブル配線板。