説明

フレキシブル集約配線コネクタ

【課題】外観検査などの検査工程を経ることなくフレキシブル集約配線の端末接続具への誤組み付けを抑制する。
【解決手段】スライダー20はフレキシブル集約配線40の端末部が設置される載置面の両端部に連なる側面に形成された突起23を有している。カバー30はフレキシブル集約配線の端末部の幅方向に延在する長手部材31の両端からスライダーの側面に沿って垂設されるロックアーム32を有している。ロックアームには、突起23に係止可能な係止部36を形成する開口33がその上端を長手部材の端部まで伸ばして形成されている。そして、フレキシブル集約配線は開口33に対応する位置に開口33の幅より狭くカバーを組み付ける際にロックアームに干渉する長さの突出部45が形成されており、係止部36には、突出部45が開口内に位置するときに突出部と干渉しないように凹部39が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル集約配線コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
各種の電子機器や電気機器の相互接続には、配線スペースを低減し、又は配線経路の自由度を向上させるなどのために、フレキシブルフラットケーブル(FFC)、フレキシブル配線基板(FPC)等のフレキシブル集約配線が用いられている。FFCは配列された箔状の複数本の導体を絶縁フィルムで挟んで、両端に他の電気回路と接続するための端末を有して形成されている。また、FPCはフレキシブル基板上に形成された電気回路を外部の電気回路と接続するために、基板縁に箔状の複数本の導体からなる端末が形成されている。このようなフレキシブル集約配線の端末は、通常、着脱式のコネクタを介して他の電気回路に接続される。
【0003】
また、フレキシブル集約配線の端末は剛性が低いので、接続相手のコネクタに挿入する際の挿入抵抗によって、変形したり、挿入不足が生じたりする問題がある。そこで、一般に、フレキシブル集約配線の端末部に剛性を有する端末接続具を装着し、端末接続具を介してコネクタに挿入して接続することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
例えば、同文献に記載のフレキシブル集約配線の端末接続具は、フレキシブル集約配線の端末部が設置される載置面と該載置面の両端部に連なる側面に突起が形成されてなるスライダーと、このスライダーに組み付けてフレキシブル集約配線の端末部をスライダーの載置面に押圧するカバーとを備えて構成されている。また、カバーは、フレキシブル集約配線の端末部の幅方向に延在する長手部材と、その長手部材の両端からスライダーの側面に沿って垂設され、側面の突起に係止可能な係止部を形成する開口が形成された係合部材とを有して構成されている。
【0005】
この端末接続具をフレキシブル集約配線の端末に組み付ける場合、フレキシブル集約配線の端末部をスライダーの載置面に設置し、フレキシブル集約配線の端末部にカバーの長手部材を位置合せし、カバーの係合部材をスライダーの側面に沿って押し下げて係合部材の係止部をスライダー側面の突起に係合させることにより行う。
【0006】
ところで、同文献に記載されているように、フレキシブル集約配線の組み付け時の位置合わせは、フレキシブル集約配線の端末の両端に形成された位置決め穴にスライダーの載置面に起立して形成された位置決めボスを挿入することにより行なうことが知られている。
【0007】
【特許文献1】特開2006−85989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されたフレキシブル集約配線及び端末接続具は、フレキシブル集約配線の誤組み付けの発生を抑制することについて考慮されていない。
【0009】
すなわち、フレキシブル集約配線を組み付ける際に、位置決め用の2つのボスのうち一方のボスにのみ位置決め穴に挿入された状態(位置合わせが正常になされていない状態)でもカバーを組み付けることが可能であるため、誤組み付けが発生するおそれがある。
【0010】
このような誤組み付けは例えば外観検査などの検査工程を経れば検知可能であるが、これは製造工程削減の観点から好ましくない。
【0011】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、外観検査などの検査工程を経ることなくフレキシブル集約配線の端末接続具への誤組み付けを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のフレキシブル集約配線コネクタは、フレキシブル集約配線の端末を接続相手のコネクタに挿入接続するときに用いるものであり、フレキシブル集約配線と、フレキシブル集約配線の端末部が設置される載置面とこの載置面の両端部に連なる側面に形成された突起とを有してなる第1部材と、第1部材に組み付けてフレキシブル集約配線の端末部を第1部材の載置面に押圧する第2部材とを備えて構成される。
【0013】
第2部材はフレキシブル集約配線の端末部の幅方向に延在する長手部材と、この長手部材の両端から第1部材の側面に沿って垂設されるとともに突起に係止可能な係止部を形成する開口がその上端を長手部材の端部まで伸ばして形成された係合部材とを有している。また、第1部材の載置面の両端部にはそれぞれ位置決めボスが起立して設けられるとともに、フレキシブル集約配線の端末部の幅方向両端部には位置決めボスが挿入される位置決め穴がそれぞれ形成されている。
【0014】
上記課題を解決するため、フレキシブル集約配線の端末部の幅方向両端部の第2部材の開口に対応する位置に、第2部材の開口幅より狭く、かつ第2部材を組み付ける際に第2部材の係合部材に干渉する長さの突出部が形成され、第2部材の係合部材の係止部には、フレキシブル集約配線の突出部が第2部材の開口内に位置するときに突出部と干渉しないように凹部が形成されてなることを特徴とする。
【0015】
このように構成することにより、フレキシブル集約配線の突出部が第2部材の開口内に位置するとき、言い換えれば双方の位置決めボスがフレキシブル集約配線の位置決め穴に挿入されて正常位置に設置されているときは突出部が係合部材の係止部に干渉しないので第2部材を組み付けることができる。これに対して、フレキシブル集約配線の突出部が第2部材の開口内に位置しないとき、例えば一方の位置決めボスのみがフレキシブル集約配線の位置決め穴に挿入されており、フレキシブル集約配線が斜めに設置されているときは、突出部が第2部材の係合部材に干渉するので第2部材を組み付けることができない。これによれば、組み付け工程においてフレキシブル集約配線誤組み付けが発生するのを抑制することができるので、外観検査などの特段の検査工程を必要とせず、フレキシブル集約配線の端末接続具への誤組み付けを抑制することができる。
【0016】
また、上記課題を解決するため、フレキシブル集約配線の端末部の幅方向両端部の第2部材の開口に対応する位置に、開口幅より狭く形成されるとともに第1部材の側面より外側かつ突起の先端部より内側に突出する突出部が形成されており、第2部材の係止部には、第1部材の2つの位置決めボスがフレキシブル集約配線の2つの位置決め穴にそれぞれ挿入された状態で第2部材を組み付けるとき、フレキシブル集約配線の突出部と干渉しないように凹部が形成されてなることを特徴とする。
【0017】
つまり、第2部材の係合部材は第1部材の側面に沿って垂設されるところ、フレキシブル集約配線の突出部は第1部材の側面より外側に突出しているので、そのままでは突出部と係合部材が干渉して組み付けができない。ここで、第2部材の係止部には、第1部材の2つの位置決めボスがフレキシブル集約配線の2つの位置決め穴にそれぞれ挿入された状態、言い換えれば正常にフレキシブル集約配線が設置された状態で第2部材を組み付けるときに突出部と干渉しないように凹部が形成されている。
【0018】
したがって、正常にフレキシブル集約配線が設置された状態で第2部材を組み付けるときには組み付けができ、例えば一方の位置決めボスのみがフレキシブル集約配線の位置決め穴に挿入されておりフレキシブル集約配線が斜めに設置されている異常な状態で第2部材を組み付けるときは、突出部が第2部材の係合部材に干渉するので組み付けができない。これにより、組み付け工程においてフレキシブル集約配線誤組み付けが発生するのを抑制することができるので、外観検査などの特段の検査工程を必要とせず、フレキシブル集約配線の端末接続具への誤組み付けを抑制することができる。
【0019】
また、上述のフレキシブル集約配線コネクタにおいて、第1部材の突起は、フレキシブル集約配線の突出部の突出に対応して、それぞれ幅方向外側へ突出して形成するのが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、外観検査などの検査工程を経ることなくフレキシブル集約配線の端末接続具への誤組み付けを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明のフレキシブル集約配線コネクタを実施の形態に基づいて説明する。図1は本実施形態のフレキシブル集約配線コネクタの全体構成の概略を示す図である。図2は本実施形態のフレキシブル集約配線コネクタを接続相手のコネクタに挿入接続する直前の状態を示す図である。図3はフレキシブル集約配線の誤組み付けの例を示す図である。図4,5,6は、それぞれ本実施形態のフレキシブル集約配線コネクタを構成するフレキシブル集約配線、スライダー、カバーの構成図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態のフレキシブル集約配線コネクタ10は、フレキシブル集約配線40と、第1部材であるスライダー20と、第2部材であるカバー30から構成されている。なお、図1は本実施形態のフレキシブル集約配線コネクタの全体構成の概略を示すものであり、説明の便宜上特徴構成は図示されていない。特徴構成については後述する。
【0023】
スライダー20の一面(図示例では、上面)の長手方向に沿って、フレキシブル集約配線40の端末部41が設置される載置面21が形成され、載置面21の両端部に連なる側面22にビーク状の突起23が形成されている。また、載置面21の両端部には、フレキシブル集約配線40の端末部41に形成された2つの位置決め穴43、44に挿入される位置決めボス27,28が起立して設けられている。位置決めボス27は例えば長円形の位置決め穴43に対応させて長円形に形成され、位置決めボス28は例えば円形の位置決め穴44に対応させて円形に形成されている。これは、フレキシブル集約配線40の端末部41の導体露出面を下に向けて載置することを防止するためである。
【0024】
カバー30は、フレキシブル集約配線40の端末部41をスライダー20の載置面21に押圧する部材であり、フレキシブル集約配線40の端末部41の幅方向に延在する長手部材31と、長手部材31の両端からスライダー20の側面22に沿って垂設された係合部材であるロックアーム32を有して形成されている。ロックアーム32には、スライダー20の側面22の突起23に係止可能な係止部36を形成する開口33が形成され、開口33の図において上端は長手部材31の端部まで伸びて形成されている。また、長手部材31の両端部には、スライダー20の位置決めボス27,28が挿入される位置決め穴37、38が形成されている。
【0025】
フレキシブル集約配線コネクタ10は、スライダー20の載置面21にフレキシブル集約配線40の端末部41を載置し、カバー30の長手部材31を載置面21に載置されたフレキシブル集約配線40の端末部41に位置合せし、カバー30のロックアーム32をスライダー20の側面22に沿って押し下げ、ロックアーム32の係止部36を側面22の突起23に係止させて組み付けられるようになっている。
【0026】
なお、本実施形態では、フレキシブル集約配線40として、箔状の複数本の導体42を配列し、両面を絶縁フィルムで挟んで形成され、両端に他の電気回路と接続するために、一方の面(図示例では、上面)の絶縁フィルムを切り欠いて各導体の端末を露出させて形成されたフレキシブルフラットケーブルの場合を例に示している。また、フレキシブル集約配線40は、一般に適宜の長さに形成されているが、それらの図では図示を簡単化するため短く表している。
【0027】
このようにしてスライダー20及びカバー30が組み付けられたフレキシブル集約配線40は、図2に示すように、例えば、図示していないプリント配線基板(PCB)に取り付けられたコネクタ50の挿入口51にフレキシブル集約配線40の端末部41の導体露出面を図において下にして挿入され、コネクタ50の内部に設けられた接続端子にフレキシブル集約配線40の端末が接続される。
【0028】
これにより、可撓性を有するフレキシブル集約配線40の端末であっても、スライダー20及びカバー30からなる端末接続具により固定されているから、コネクタ50側の挿入抵抗に抗してフレキシブル集約配線40を安定して挿入接続できる。また、フレキシブル集約配線40をコネクタ50に挿入接続した状態で、スライダー20の載置面21の反対側の面に形成された係止部材25がコネクタ50の突起52に係合して挿入状態を保持するようになっている。
【0029】
ところで、上述のように、フレキシブル集約配線40を組み付ける際には、まずフレキシブル集約配線40をスライダー20の載置面21に設置するが、このときのフレキシブル集約配線40の位置合わせは、スライダー20に形成された位置決めボス27,28と、フレキシブル集約配線40に形成された位置決め穴43,44を利用する。つまり、両位置決め穴43,44に両位置決めボス27,28がそれぞれ挿入された状態において正常な位置合わせができ、正常な組み付けを行なうことが可能となる。
【0030】
ところが、このような位置合わせ機構を設けているにも関わらず、誤組み付けが発生する場合がある。例えば、図3(A)に示すように、フレキシブル集約配線40の位置決め穴43にスライダー20の位置決めボス27が挿入されてはいるものの、位置決め穴44には位置決めボス28が挿入されておらず、フレキシブル集約配線40が右斜め下に傾いた状態になったとする。この状態は正常な位置合わせができていない状態である。しかし、正常な位置合わせができていない状態にも関わらず、カバー30を組み付けることができてしまう。これにより、誤組み付けが発生する。
【0031】
図3(B)は、図3(A)の場合とは反対に、フレキシブル集約配線40の位置決め穴44にスライダー20の位置決めボス28が挿入されてはいるものの、位置決め穴43には位置決めボス27が挿入されておらず、フレキシブル集約配線40が左斜め下に傾いて正常な位置合わせができていない状態を示している。
【0032】
この場合も同様に、正常な位置合わせができていない状態にも関わらず、カバー30を組み付けることができてしまい、誤組み付けが発生する。
【0033】
このような誤組み付けは例えば外観検査などの検査工程を経れば検知可能であるが、これは製造工程削減の観点から好ましくない。
【0034】
このような点に鑑みてなされた本実施形態のフレキシブル集約配線コネクタ10の特徴構成について図4〜6を参照して説明する。図4は、フレキシブル集約配線40の構成図である。フレキシブル集約配線40の端末部41の幅方向両端部には、幅方向外側に突出する突出部45が形成されている。この突出部45は、フレキシブル集約配線40が正常に位置合わせされた状態でカバー30の開口33に対応する位置に設けられている。また、カバー30の開口33の幅より狭く、かつカバー30を組み付ける際にカバー30のロックアーム32に干渉する長さに形成されている。
【0035】
また、言い換えれば、突出部45は、フレキシブル集約配線40が正常に位置合わせされた状態でスライダー20の側面22より外側かつ突起23の先端部より内側に突出するよう形成されている。
【0036】
図5はスライダー20の構成図である。(A)はスライダー20の平面図であり、(B)は(A)の線B−Bにおける矢視図である。(C)はスライダー20の位置決めボス27の周辺部位を拡大した斜視図であり、(D)はスライダー20の位置決めボス27の周辺部位を拡大した平面図である。
【0037】
スライダー20は、図5(A)、(B)に示すように、フレキシブル集約配線40の端末部41の幅に対応した長さを有する平板状に形成され、一方の面(図に表れている面)に端末部41の載置面21が形成されている。載置面21には、フレキシブル集約配線40の端末部41の前縁及び側縁に当接して位置を規制する突部26が形成されている。突部26の高さはフレキシブル集約配線40の厚みにあわせて形成されている。
【0038】
また、載置面21の両端部に連なる側面22には、それぞれ突起23が形成されている。突起23は、(B)に示すように、図において上部から下部に向って緩やかな傾斜で高さが高くなり、下端において側面22に鉛直な縁部を有する断面が台形のビーク状に形成されている。また、載置面21の反対側の面には、係止部材25が設けられている。
【0039】
また、図5(C)、(D)に示すように、突起23は、フレキシブル集約配線40の突出部45の突出に対応して、それぞれ幅方向外側へ突出して形成されている。言い換えれば、突起23が形成されている部分は、形成されていない部分に対して1段盛り上げて形成されている。なお、本実施形態では、突起23は、フレキシブル集約配線40の突出部45の突出に対応して、それぞれ幅方向外側へ突出して形成されているが、幅方向外側へ突出させなくても要はカバー30の係止部36が係止できるように形成されていればよい。
【0040】
図6はカバー30の構成図である。(A)はカバー30を裏面から見た平面図であり、(B)は(A)の線B−Bにおける矢視図である。(C)はカバー30のロックアーム32の周辺部位を拡大した斜視図であり、(D)はカバー30のロックアーム32の周辺部位を拡大した平面図である。
【0041】
カバー30は、弾性変形可能な材料により薄板の帯状に形成され、フレキシブル集約配線40の幅に対応する長さの長手部材31と、長手部材31の両端からスライダー20の側面22に沿うように垂下させて設けられたロックアーム32を有して形成されている。
【0042】
また、長手部材31の両端部に隣接する中央部側の厚肉部34の肉厚よりも薄い肉厚の薄肉部35が形成されている。長手部材31の厚肉部34を除く中央部側の肉厚は、格子状の部位を除いて減肉して形成されている。また、ロックアーム32には、開口33が形成されており、開口33の下端の開口縁の位置は、フレキシブル集約配線40の端末部41が載置面21に載置された状態で、スライダー20の側面22の突起23の下端縁よりも図において若干上方に位置するように形成されている。
【0043】
つまり、薄肉部35の内面(下面)から開口33の下端の開口縁までの寸法h1を、載置面21から突起23の下縁までの寸法h2とフレキシブル集約配線40の端末部41の厚みdの合計(h2+d)よりも小さく、かつ、その合計寸法(h2+d)から薄肉部35と厚肉部34との差を引いた値よりも大きく設定されている。また、長手部材31の両端部には、スライダー20の位置決めボス27,28が挿入される位置決め穴37、38が形成されている。
【0044】
また、カバー30の係止部36には、フレキシブル集約配線40の突出部45がカバー30の開口33内に位置するときに突出部45と干渉しないように凹部39が形成されている。つまり、(D)において、便宜上、ロックアーム32のスライダー20側の内面位置を破線で示しているが、係止部36の内面位置は、ロックアーム32の内面位置を基準として凹に形成されており、これにより凹部39が形成されている。
【0045】
言い換えると、係止部36には、スライダー20の2つの位置決めボス27,28がフレキシブル集約配線40の2つの位置決め穴43,44にそれぞれ挿入された状態でカバー30を組み付けるとき、フレキシブル集約配線40の突出部45と干渉しないように凹部39が形成されている。
【0046】
このように構成される本実施形態のフレキシブル集約配線コネクタ10の組み付け動作を説明する。まず、スライダー20の載置面21にフレキシブル集約配線40の端末部41を載置し、フレキシブル集約配線40の位置決め穴43、44を位置決めボス27、28に挿入する。このとき、フレキシブル集約配線40の端末部41の前縁と側縁は、スライダー20の突部26に当接した状態になる。
【0047】
次に、スライダー20の載置面21に載置されたフレキシブル集約配線40の端末部41に対し、カバー30のロックアーム32をスライダー20の側面22に沿って押し下げる。これにより、係止部36がスライダー20の突起23に当たり、突起23の傾斜面に沿って外側に押し広げられ、カバー30の長手部材31の厚肉部34がフレキシブル集約配線40の上面に当接する。
【0048】
この状態のとき、長手部材31の薄肉部35とフレキシブル集約配線40の端末部41の上面との間に空間が形成されている。次いで、長手部材31の薄肉部35の部分に押し下げ荷重を加えると、厚肉部34を支点として空間内で薄肉部35が撓んでロックアーム32がさらに押し下げられ、係止部36が突起23の下縁を超えて、突起23が開口33内に挿入される。
【0049】
その状態で、薄肉部35の部分に加えた押し下げ荷重を解除すると、薄肉部35の撓み変形が元に戻ろうとする。このとき、その戻り力によって係止部36が突起23の下縁に押し付けられるから、ロックアーム32の開口33と突起23との間に隙間が発生しない、いわゆるゼロタッチ状態になる。
【0050】
その結果、薄肉部35の撓み変形による押し付け力が厚肉部34を介してフレキシブル集約配線40をスライダー20の載置面21に押し付ける方向に作用する。これにより、フレキシブル集約配線40の端末部41とスライダー20の載置面21との密着性が向上する。
【0051】
このように、フレキシブル集約配線40の突出部45がカバー30の開口33内に位置するとき、言い換えれば双方の位置決めボス27,28がフレキシブル集約配線40の位置決め穴43,44に挿入されて正常位置に設置されているときは、カバー30組み付けの過程で、係止部36に凹部39が形成されているので突出部45が係止部36に干渉せずカバー30を組み付けることができる。
【0052】
図7は、フレキシブル集約配線40の位置合わせが正常に行なわれた上でカバー30が組みつけられた状態のフレキシブル集約配線コネクタ10を示す図である。(A)はフレキシブル集約配線コネクタ10の平面図、(B)、(C)はそれぞれ(A)のカバー30の係止部36とスライダー20の突起23との嵌合部の周辺を拡大した斜視図、平面図である。
【0053】
図7(A)に示すように、フレキシブル集約配線40が正常に位置合わせされていた場合、フレキシブル集約配線40は斜めに傾くことなく正常に組み付けられる。また、フレキシブル集約配線40が正常に位置合わせされた状態で組み付けられた場合、図7(B)に示すように、ロックアーム32の開口33にフレキシブル集約配線40の突出部45が突出して外部から視認できるようになっている。また、図7(C)に示すように、フレキシブル集約配線40の突出部45の外側端面より、カバー30の係止部36の内側(スライダー20側)端面のほうが外側に位置している。
【0054】
一方、図8(A)は、フレキシブル集約配線40の位置合わせが正常に行なわれていない状態のスライダー20及びフレキシブル集約配線40を示す図である。具体的には、フレキシブル集約配線40の位置決め穴43にスライダー20の位置決めボス27が挿入されてはいるものの、位置決め穴44には位置決めボス28が挿入されておらず、フレキシブル集約配線40が右斜め下に傾いている状態を示している。
【0055】
図8(B)、(C)は、それぞれ(A)の状態でカバー30を組み付けようとした場合の、位置決めボス28及び位置決め穴44の周辺部位(円で図示)を拡大した斜視図、平面図である。なお、図8(C)は説明の便宜上、カバー30を透かしてフレキシブル集約配線40(斜線で図示)を図示したものである。
【0056】
図8(B)に示すように、一方の位置決めボスのみがフレキシブル集約配線40の位置決め穴に挿入され、フレキシブル集約配線40が斜めに設置されている、言い換えればフレキシブル集約配線40の突出部45がカバー30の開口33内に位置しないときは、カバー30の組み付け過程において、突出部45がカバー30のロックアーム32に干渉するのでカバー30を組み付けることができない。
【0057】
つまり、図8(C)に示すように、フレキシブル集約配線40の突出部45の外側端面より、カバー30の係止部36の内側(スライダー20側)端面のほうが内側に位置しているので、両者が干渉する。
【0058】
このように、本実施形態によれば、組み付け過程において、仮にフレキシブル集約配線40の位置合わせが正常に行なわれていない場合は組み付けをすることができないので、誤組み付けが発生するのを抑制することができる。
【0059】
よって、目視による外観検査などの特段の検査工程を必要とせず、フレキシブル集約配線の端末接続具への誤組み付けを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本実施形態のフレキシブル集約配線コネクタの全体構成の概略を示す図である。
【図2】本実施形態のフレキシブル集約配線コネクタを接続相手のコネクタに挿入接続する直前の状態を示す図である。
【図3】フレキシブル集約配線の誤組み付けの例を示す図である。
【図4】本実施形態のフレキシブル集約配線コネクタを構成するフレキシブル集約配線の構成図である。
【図5】本実施形態のフレキシブル集約配線コネクタを構成するスライダーの構成図である。
【図6】本実施形態のフレキシブル集約配線コネクタを構成するカバーの構成図である。
【図7】フレキシブル集約配線の位置合わせが正常に行なわれた上でカバーが組みつけられた状態のフレキシブル集約配線コネクタを示す図である。
【図8】フレキシブル集約配線の位置合わせが正常に行なわれていない状態、及びこの状態でカバーを組み付けた場合を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
10 フレキシブル集約配線コネクタ
20 スライダー
21 載置面
22 側面
23 突起
25 係止部材
27,28 位置決めボス
30 カバー
31 長手部材
32 ロックアーム
33 開口
36 係止部
37、38 位置決め穴
39 凹部
40 フレキシブル集約配線
41 端末部
43、44 位置決め穴
45 突出部
50 コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブル集約配線と、該フレキシブル集約配線の端末部が設置される載置面と該載置面の両端部に連なる側面に形成された突起とを有してなる第1部材と、該第1部材に組み付けて前記フレキシブル集約配線の端末部を第1部材の前記載置面に押圧する第2部材とを備え、
第2部材は前記フレキシブル集約配線の端末部の幅方向に延在する長手部材と該長手部材の両端から第1部材の前記側面に沿って垂設されるとともに前記突起に係止可能な係止部を形成する開口がその上端を前記長手部材の端部まで伸ばして形成された係合部材とを有し、
前記第1部材の載置面の両端部にはそれぞれ位置決めボスが起立して設けられるとともに、前記フレキシブル集約配線の端末部の幅方向両端部には前記位置決めボスが挿入される位置決め穴がそれぞれ形成されており、
前記フレキシブル集約配線の端末を接続相手のコネクタに挿入接続するときに用いるフレキシブル集約配線コネクタであって、
前記フレキシブル集約配線の端末部の幅方向両端部の前記第2部材の開口に対応する位置に、前記第2部材の開口幅より狭く、かつ前記第2部材を組み付ける際に第2部材の前記係合部材に干渉する長さの突出部が形成され、
前記第2部材の係合部材の係止部には、前記フレキシブル集約配線の突出部が前記第2部材の開口内に位置するときに該突出部と干渉しないように凹部が形成されてなるフレキシブル集約配線コネクタ。
【請求項2】
フレキシブル集約配線と、該フレキシブル集約配線の端末部が設置される載置面と該載置面の両端部に連なる側面に形成された突起とを有してなる第1部材と、該第1部材に組み付けて前記フレキシブル集約配線の端末部を第1部材の前記載置面に押圧する第2部材とを備え、
第2部材は前記フレキシブル集約配線の端末部の幅方向に延在する長手部材と該長手部材の両端から第1部材の前記側面に沿って垂設されるとともに前記突起に係止可能な係止部を形成する開口がその上端を前記長手部材の端部まで伸ばして形成された係合部材とを有し、
前記第1部材の載置面の両端部にはそれぞれ位置決めボスが起立して設けられるとともに、前記フレキシブル集約配線の端末部の幅方向両端部には前記位置決めボスが挿入される位置決め穴がそれぞれ形成されており、
前記フレキシブル集約配線の端末を接続相手のコネクタに挿入接続するときに用いるフレキシブル集約配線コネクタであって、
前記フレキシブル集約配線の端末部の幅方向両端部の前記第2部材の開口に対応する位置に、前記開口幅より狭く形成されるとともに前記第1部材の側面より外側かつ前記突起の先端部より内側に突出する突出部が形成されており、
前記第2部材の係止部には、前記第1部材の2つの位置決めボスが前記フレキシブル集約配線の2つの位置決め穴にそれぞれ挿入された状態で第2部材を組み付けるとき、前記フレキシブル集約配線の突出部と干渉しないように凹部が形成されてなるフレキシブル集約配線コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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