フレネルレンズおよび照明装置
【課題】中心部分の急激な照度変化が無く、しかも中心部の周囲にリング状のパターンが発生しないようにすること。
【解決手段】凸部12の頂上部または凹部13の最深部のいずれか一方または双方に弧状部Rを有すると共に、入射した光を散乱させる散乱部としてのブラスト面11(表面散乱部)および/または光散乱導光体で形成されるレンズ本体10(体積散乱部)を有するフレネルレンズ1を構成する。
【解決手段】凸部12の頂上部または凹部13の最深部のいずれか一方または双方に弧状部Rを有すると共に、入射した光を散乱させる散乱部としてのブラスト面11(表面散乱部)および/または光散乱導光体で形成されるレンズ本体10(体積散乱部)を有するフレネルレンズ1を構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレネルレンズおよび照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダウンライトまたはスポットライトのような比較的狭い光の照射範囲に集中的に強い照度を必要とする照明では、狭い光の照射範囲に光を集中させるために、光源の出射側にフレネルレンズを用いるものが知られている(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に示されているようなフレネルレンズを平板化した一般的な従来のフレネルレンズについて、図12〜図17を参照しながら説明する。図12は、たとえばLED(Light Emitting Diode)である光源100と、光源100に対向する側にフレネルレンズ面が形成されているフレネルレンズ101と、フレネルレンズ101への入射光102と、フレネルレンズ101からの出射光のうちで本来の出射光となる中心光103および周辺に屈折して集光されない光となる損失光104とを示す図である。図13は、図12のフレネルレンズ101を光が入射する側の正面から見た状態を示す図で光源100を二点鎖線(仮想線)で示す図である。図14は、図12におけるフレネルレンズ101を拡大して示す図で併せて入射光102、中心光103、および損失光104の状態を示す図である。なお、図12に示す光源100の半円形は、光源100の照射範囲を模式的に示すものである。
【0004】
図14に示すように、フレネルレンズ101は、フレネルレンズ面がのこぎり状となっており、通常のレンズ面として働く緩斜面105と損失光を発生させる急斜面106とが繰り返し交互に配置されている。図13の右上にも緩斜面105と急斜面106の状態を拡大して図示してある。この結果、凸部107と凹部108が交互に形成される。光源100からの入射光102は、フレネルレンズ101の緩斜面105および急斜面106によって屈折または反射し、フレネルレンズを通過していく。なお、図12、図14では、反射光については図示を省略してある。
【0005】
図15は、図12および図14に示す中心光103および損失光104の投影パターンであり、フレネルレンズ101と平行かつ所定の距離離れた投影面に投影されたパターンを示している。図15の上段の四角の範囲は光源100の中心から垂直に出射した光を中心にして左右および上下に各50mm(ミリメートル)の範囲を表し、図15の下段の四角の範囲は光源100の中心から垂直に出射した光を中心にして左右および上下に各250mmの範囲を表している。なお、図15において、上下のスケール表示は省略してある。図15の上段の図は、中心光103の投影パターンであり、下段の図は、中心光103と損失光104の投影パターンである。図15の上段の図において、領域110は、最も照度が高い部分である。次いで、領域111〜114と順次照度が低くなっている。また、図15の下段の図において、領域115は、図15の上段の図の中心光103の投影部分である。また、図15の下段の図において、領域116、117、118、119、120のうち、領域117、119は照度が比較的に高い部分である。
【0006】
図15の上段の図における中心光103の照度分布を図16の下段の図に示す。図16に示すように、領域110の部分が中心光103の投影面積の大部分を占めていることがわかる。図15の下段の図における中心光103と損失光104の照度分布を図17の下段の図に示す。図16の下段の縦軸は、照度の単位であるLuxである。図17に示すように、領域116、118、120の部分の照度がきわめて低く、特に領域118,120の部分の照度が低く、一方、領域117、119の照度が高いために、損失光104は、中心光103の周囲にリング状のパターンを形成することがわかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−262187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、中心光103の投影パターンは、照度が最も高い領域110の面積が大部分を占め、その周囲の狭い領域111〜113で急激に照度が低下し、領域114では領域110と比較したらほとんどゼロになる。このような照度変化は、急激であるため人間の眼には不自然であり不快である。また、中心光103の周囲に生じる損失光104によるリング状のパターン、すなわち領域117、119は、リング斑のように見えてしまうという問題がある。
【0009】
本発明は、このような背景の下に行われたものであって、中心光に相当する部分の急激な照度変化が無く、しかも照度が高い中心部分の周囲にリング状のパターンの発生がないようにできるフレネルレンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のひとつの観点は、フレネルレンズとしての観点である。本発明のフレネルレンズは、光を透過させるレンズ本体のいずれか片面に凹部と凸部とが繰り返し交互に配置されるフレネルレンズにおいて、凸部の頂上部または凹部の最深部のいずれか一方または双方に弧状部を有すると共に、入射した光を散乱させる散乱部を有するものである。
【0011】
たとえばフレネルレンズの散乱部は、表面散乱部と体積散乱部のいずれか一方または両方を有することができる。たとえば、表面散乱部は、レンズ本体の凸部と凹部とを有さない側の面、またはレンズ本体の凸部と凹部とを有する側の面、もしくはレンズ本体の凸部と凹部とを有さない側の面およびレンズ本体の凸部と凹部とを有する側の面の両面にブラスト加工されることで形成される。また、たとえば、体積散乱部は、レンズ本体が透明樹脂に光散乱粒子が含有される光散乱導光体で形成されるようにする。
【0012】
本発明の他の観点は、照明装置としての観点である。本発明の照明装置は、本発明のフレネルレンズと、フレネルレンズの片面側に対向して配置された光源と、を有するものである。
【0013】
たとえば本発明の照明装置は、凸部と凹部とが繰り返し交互に配置されるフレネル面と対向する側に前記光源が設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、中心光の急激な照度変化が無く、しかも損失光によるリング状のパターンが発生しないようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態のフレネルレンズを光源、入射光、中心光、および損失光と共に示す図である。
【図2】図1のフレネルレンズを光が入射する側の正面から見た状態を示す図で光源を仮想線(二点鎖線)で示す図である。
【図3】図1のフレネルレンズを部分的に拡大して示すと共に併せて、入射光の一部から生ずる中心光、および損失光の光路を示す図である。
【図4】図2のフレネルレンズを通過した光の投影パターンを示す図で上段が従来の中心光に相当する部分とその近傍を示し下段が従来の中心光と損失光に相当する部分とその周囲を示す図である。
【図5】図4の上段に示す投影パターンと、その照度分布を示す図である。
【図6】図4の下段に示す投影パターンと、その照度分布を示す図である。
【図7】比較例その1の投影パターンを示す図で上段が従来の中心光に相当する部分とその近傍を示し下段が従来の中心光と損失光に相当する部分とその周囲を示す図である。
【図8】図7の下段に示す投影パターンと、その照度分布を示す図である。
【図9】比較例その2の投影パターンを示す図で上段が従来の中心光に相当する部分とその近傍を示し下段が従来の中心光と損失光に相当する部分とその周囲を示す図である。
【図10】下段に示す投影パターンと、その照度分布を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態、比較例1、比較例2、および従来例のフレネルレンズの配光分布を示す図である。
【図12】従来例のフレネルレンズを光源、入射光、中心光、および損失光と共に示す図である。
【図13】図12のフレネルレンズを光が入射する側の正面から見た状態を示す図で光源を仮想線(二点鎖線)で示す図である。
【図14】図12のフレネルレンズの一部を拡大して示すと共に、併せて入射光の一部から生ずる中心光、および損失光の光路を拡大して示す図である。
【図15】図12のフレネルレンズを透過した光の投影パターンを示す図で上段が中心光とその近傍を示し、下段が中心光と損失光とその周囲を示す図である。
【図16】図15の上段に示す投影パターンと、その照度分布を示す図である。
【図17】図15の下段に示す投影パターンと、その照度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態のフレネルレンズ1を図1〜図11を参照しながら説明する。図1に示すように、フレネルレンズ1は、距離L離れた位置の光源2とそのフレネルレンズ面が対向するように配置されている。この照明装置において、距離Lは、約20mm(ミリメートル)となっている。光源2は、LED7でありその照射範囲を模式的に示すと半円形8のようになる。この照明装置では、光源2から出射された光の一部である入射光3はフレネルレンズ1で屈折された中心光4、およびフレネルレンズ1で屈折された損失光5ならびに後述する出射光18,19となりフレネルレンズ1から出射する。図2に示すように、フレネルレンズ1を光が入射する側の正面から見ると、複数の大小の同心円6が形成された状態となっている。この同心円6は、後述する凸部12による同心円6aと、凹部13による同心円6bとが形成されている。フレネルレンズ1と光源2とは、図1、図2に示すように、フレネルレンズ1のフレネルレンズ面に対して垂直方向に、かつフレネルレンズ面の中心から距離Lだけ離れた位置に光源2がくるように配置されている。
【0017】
図1、図3に示すように、フレネルレンズ1は、レンズ本体10、表面を粗したブラスト面11、凸部12、凹部13、通常のレンズ面として働く緩斜面14、および損失光を発生させる急斜面15を有している。フレネルレンズ1を形成するレンズ本体10は、たとえば透明樹脂製である。レンズ本体10の光源2に対向する側には、凸部12と凹部13とがフレネルレンズ面の中央を中心として交互に繰り返し配置されている。また、凸部12と凹部13でつながれる緩斜面14と急斜面15も同様に交互に繰り返すように配置されている。また、レンズ本体10の光源2と反対側の面は、表面が粗いブラスト面11になっている。また、凸部12の頂上部と凹部13の最深部とは、それぞれ弧状を呈している。以下では、これを弧状部Rと称することとする。
【0018】
フレネルレンズ1のフレネルレンズ面は、図3に示すように、凸部12の最上部(すなわち頂上部)から緩やかに下がっていき凹部13の最下部(すなわち最深部)に至る緩斜面14と、凸部12の最上部(頂上部)から急速に下がっていき凹部13の最下部(最深部)に至る急斜面15とに区分けされる。また、緩斜面14から弧状部Rを除いた直線状の直線緩斜面16を有し、急斜面15は弧状部Rを除いた直線状の直線急斜面17を有している。たとえば入射光3が直線緩斜面16に入射すると中心光4として出射され、入射光3が直線急斜面17に入射すると損失光5として出射される。一方、凸部12と凹部13とが有する弧状部Rに入射すると、入射光3は、従来より広い方向に拡散させられる。さらにブラスト面11から出射する中心光4、損失光5、および弧状部Rからの光は、ブラスト面11によってさらに散乱させられる。
【0019】
すなわち、図3に示すように、入射光3のうち、直線緩斜面16に入る光の束3aはブラスト面11によって散乱させられ中心光4aとなって出射する。また、直線急斜面17に入る光の束3bもブラスト面11によって散乱させられ損失光5aとなって出射する。さらに凸部12の弧状部Rに入射する光の束3cは、従来に比べ、より広い角度範囲にわたって屈折し、同様に、凹部13の弧状部Rに入射する光の束3dは、従来に比べ、より広い角度範囲にわたって屈折する。広い角度範囲にわたって屈折した光は、フレネルレンズ1のブラスト面11によって散乱させられ、より分散化し、光の束3cは、出射光18となって出射し、光の束3dは出射光19となって出射する。このように、このフレネルレンズ1は、弧状部Rでの拡散と、ブラスト面11による散乱とによって、フレネルレンズ1からの出射光が中心光4と損失光5とに分離されることはない。
【0020】
上述した凸部12と凹部13との弧状部Rの形状は、図3に示すように、凸部12と凸部12、または凹部13と凹部13との間隔をP(mm:ミリメートル)とし、弧状部Rの半径をr(mm)とすると、たとえば
0.01<r/P≦0.3
である。この実施の形態のフレネルレンズ1では、
r/P=0.17
とした。ブラスト面11を形成せずに、鏡面としたものでr/Pの値を様々に変更してみたが、r/Pの値が0.01以下であると、直線緩斜面16からの出射光である中心光4と、直線急斜面17からの出射光である損失光5との間に入る光がほとんどなく、一方、r/Pの値が0.3よりも大きいと照度が高い領域が広がり過ぎてしまうことがわかった。
【0021】
また、ブラスト面11の表面粗さRa(μm:マイクロメートル)は、
0.3≦Ra≦40
である。この実施の形態のフレネルレンズ1では、
Ra=25(μm)
とした。弧状部Rを形成しない従来と同様なものでRaの値を様々に変更してみたが、Raの値が0.3μmより小さいと表面散乱がほとんど確認されず、従来の鏡面と同じような配光状態となり、Raの値が40μmより大きいと中心光4の照度が低下し、配光が広がり過ぎることがわかった。
【0022】
図4は、図2のフレネルレンズ1を通過した光の投影パターンを示す図である。この投影パターンは、光源2のLED7から出射する光がフレネルレンズ面全体に入射し、ブラスト面11の全体から出射する場合を示している。図4の上段の四角の範囲は光源2を中心にして左右および上下に各50mm(ミリメートル)の範囲を表し、図4の下段の四角の範囲は光源2を中心にして左右および上下に各250mmの範囲を表している。なお、図4において、上下のスケール表示は省略してある。図4は、フレネルレンズ1から出射された光が、フレネルレンズ1と平行かつ所定の距離離れた投影面に投影されたパターンを示している。図4の上段の図は、従来の中心光103とその近傍に相当する範囲の投影パターンであり、下段の図は、従来の中心光103と従来の損失光104とその周囲に相当する範囲の投影パターンである。
【0023】
図4の上段の図において、領域20は、最も照度が高い部分である。領域20の外周の狭い領域21は、領域21の外周の領域22よりも若干照度が低い。次いで、領域22〜26と順次照度が低くなっている。また、図4の下段の図において、領域30は、図4の上段の図の領域20〜25の部分である。また、図4の下段の図において、領域31は従来の損失光104に相当する範囲の投影パターンである。
【0024】
図4の上段の図における投影パターンの照度分布を図5の下段の図に示す。図5の下段の縦軸は照度の単位であるLuxを示している。図5に示すように、領域21が少しくぼんでいるが全体的には領域20から領域26まで段階的になだらかに照度が下がっていることがわかる。これは従来例の図16との比較によっても明らかである。図16における領域110の照度が図5における領域20の照度に対応しているが、領域20の面積は、領域110の面積よりも小さい。これにより領域20の周囲の領域21〜26の照度低下変化は、領域110の周囲の領域111〜114の照度低下変化よりもなだらかになっている。
【0025】
図4の下段の図における投影パターンの照度分布を図6の下段の図に示す。図6の下段の縦軸は照度の単位であるLuxを示している。図6に示すように、領域30の外周には、従来の損失光104に相当する領域31が存在し、しかも照度低下変化はなだらかである。領域32には出射光はほとんど照射されていない。図6の照度分布を図17の従来例の照度分布と比較すると、図17で生じている照度が隣接する部分よりも高くなる領域117、119は、図6の照度分布では存在しない。したがって、図6の照度分布では、リング状のパターンは存在しない。
【0026】
(比較例1)
次に、比較例1として、図3に示したフレネルレンズ1の凸部12および凹部13における弧状部Rを無くして弧状部Rによる散乱を無くし、ブラスト面11のみにより散乱が生じるようにしたフレネルレンズ1Aの投影パターンを図7に示す。図7の上段の四角の範囲は光源2を中心にして左右および上下に各50mmの範囲を表し、図7の下段の四角の範囲は光源2を中心にして左右および上下に各250mmの範囲を表している。なお、図7において、上下のスケール表示は省略してある。また、比較例1では、従来の中心光103に相当する領域を中心光4Aとし、従来の損失光104に相当する領域を損失光5Aと標記する。
【0027】
図7に示すように、中心光4Aの投影パターンは、図5に示した投影パターンとほぼ同じであり、領域20〜26を有する。一方、損失光5Aの投影パターンは、図6に示した本発明の実施の形態に係る投影パターンとは異なり、明るい領域30,41の間に暗い領域40を有する。図8の下段に、図7の下段に示した損失光5Aの投影パターンの照度分布を示す。図8に示すように、比較例1によれば、損失光5Aの投影パターンは、領域40の照度が領域41の照度よりも低いため、領域41が僅かではあるが薄いリング状のパターンを呈する。
【0028】
比較例1と本発明実施の形態とを比較すれば、フレネルレンズ1の凸部12および凹部13における弧状部Rは、主に、従来の損失光104に相当する領域にリング状のパターンを発生させないようにする作用が認められる。一方、ブラスト面11は、中心光4Aの照度低下を緩やかにする作用が認められる。この比較例1は、従来のものに比べればより良いものであり、用途によっては比較例1を採用してもよい。
【0029】
(比較例2)
次に、比較例2として、図3に示したフレネルレンズ1の凸部12および凹部13における弧状部Rを有するが、ブラスト面11を無くしたフレネルレンズ1Bの投影パターンを図9に示す。図9の上段の四角の範囲は光源2を中心にして左右および上下に各50mmの範囲を表し、図9の下段の四角の範囲は光源2を中心にして左右および上下に各250mmの範囲を表している。なお、図9において、上下のスケール表示は省略してある。また、比較例2では、従来の中心光103に相当する領域を中心光4Bとし、従来の損失光104に相当する領域を損失光5Bと標記する。
【0030】
図9に示すように、中心光4Bの投影パターンは、従来例として図16に示した中心光103とほぼ同じであり、領域50〜54を有し、急激な照度低下が発生している。また、損失光5Bの投影パターンは、領域60〜63を有し、リング班となるリング状のパターンは薄くなっている。図10の下段に、図9の下段に示した損失光5Bの投影パターンの照度分布を示す。図10に示すように、比較例2によれば、損失光5Bの投影パターンについては、領域61に周囲より僅かに暗い部分が生じているが全体的には領域60〜63の順で照度が段階的に低くなっている。これにより領域60〜62の範囲にはリング状のパターンはほとんど発生しない。
【0031】
比較例2と本実施の形態とを比較すれば、フレネルレンズ1のブラスト面11は、主に、従来の中心光103に相当する領域の照度変化をなだらかにする作用が認められる。すなわち比較例2では、ブラスト面11が無いため中心部分で急激な照度低下が生じている。なお、この比較例2も従来例よりは改善されているため、用途によっては、この比較例2を採用してもよい。
【0032】
(配光分布について)
フレネルレンズ1、1A、1B、および従来のフレネルレンズ101の配光分布について、図11を参照しながら説明する。図11は、フレネルレンズ1、1A、1B、および従来のフレネルレンズ101の配光分布を示す図である。図11は、横軸に光源2から見た角度をとり、縦軸に光度比率をとる。図11では、実線でフレネルレンズ1の配光分布を示し、破線でフレネルレンズ1Aの配光分布を示し、二点鎖線でフレネルレンズ1Bの配光分布を示し、一点鎖線で従来のフレネルレンズ101の配光分布を示している。
【0033】
図11に示すように、フレネルレンズ1、1A、1Bの光度比率の半値(0.5)での角度は、従来例のフレネルレンズ101とほぼ同じであり、中心付近でも充分な光を得ることができている。
【0034】
(効果)
以上説明したように、この実施の形態に係るフレネルレンズ1は、凸部12の頂上部および凹部13の最深部が弧状部Rを有すると共に、入射した光を表面散乱させるブラスト面11を有する。これによれば図5に示すように、中心部分の照度変化が、たとえば図16に示す従来例に比べてなだらかである。また、図6に示すように、従来の損失光104に相当する領域、すなわち中心部分を囲む領域の照度変化についてもなだらかであり、たとえば図17に示す従来例のようなリング状のパターンを呈することがない。これにより、従来の課題を解決し、中心部分の急激な照度変化が無く、照度が高い中心部分の周囲にリング状のパターンが発生しないようにできる。
【0035】
すなわち、従来のフレネルレンズ101では、緩斜面105および急斜面106のつながり部である凸部107と凹部108が共に鋭角であるため、入射光102が緩斜面105に入射したものと急斜面106に入射したものに二分される。言い換えると、従来のフレネルレンズ101では、中心光103と損失光104の間に領域116、117、118のような照度が低い部分が生じ、リング状のパターンとなる。本実施の形態のフレネルレンズ1では、凸部12の頂上部および凹部13の最深部が弧状部Rを有するため、凸部12の頂上部および凹部13の最深部を通過する光が広い角度範囲にわたって屈折しているため、中心光103と損失光104の間がその光によって埋まるので、損失光104に相当する領域にはリング状のパターンは生じない。さらに、本実施の形態のフレネルレンズ1は、ブラスト面11を有するので、フレネルレンズ1から出射される中心部分が散乱され、なだらかな照度変化を呈する。
【0036】
また、フレネルレンズ1では、凸部12と凹部13とが、レンズ本体10の光源2に対向する側に設けられている。これによれば凸部12と凹部13とが外気に晒されることがなく、凹部13に塵が溜まるなどの不具合が発生しないようにできる。
【0037】
また、フレネルレンズ1では、凸部12の頂上部および凹部13の最深部が鋭角ではなく丸い弧状部Rを有するため、フレネルレンズ1を金型で成形する際に、凸部12の頂上部および凹部13の最深部を金型から抜け易くできる。これによれば、フレネルレンズ1を製造する工程における歩留まり率を向上させることができる。また、金型の低コスト化、長寿命化にも有利となる。
【0038】
(その他の実施の形態)
本発明の実施の形態は、その要旨を逸脱しない限り様々に変更が可能である。
【0039】
たとえば上述の実施の形態では、凸部12と凹部13との双方に弧状部Rを設けたが、凸部12または凹部13のいずれか一方に弧状部Rを設けるようにしてもよい。
【0040】
また、上述の実施の形態では、表面散乱部としてブラスト加工が施されたブラスト面11を有したが、ブラスト面11に替えて、ヤスリかけなどで表面を細かく粗らした面としてもよい。あるいは、ブラスト面11に替えて、光を散乱させるシートをレンズの表面に貼り付けてもよい。もしくは、ブラスト面11などの表面散乱部を設けずに、またはブラスト面11などの表面散乱部を設けた上でさらに、レンズ本体10を形成する透明樹脂体を、光散乱粒子が含有される光散乱導光体(たとえば特開2011−49233号公報参照)で形成した体積散乱部を設けてもよい。
【0041】
また、ブラスト面11は、レンズ本体10の凸部12と凹部13とを有さない側の面に有するとして説明したが、その他にもレンズ本体10の凸部12と凹部13とを有する側の面、もしくはレンズ本体10の凸部12と凹部13とを有さない側の面およびレンズ本体10の凸部12と凹部13とを有する側の面の両面に有してもよい。特に、ブラスト面11を、レンズ本体10の凸部12と凹部13とを有さない側の面およびレンズ本体10の凸部12と凹部13とを有する側の面の両面に有すれば、表面散乱部の面積が増えるので、表面散乱光を増やすことができる。これによれば、ブラスト面11の従来の中心光103に相当する領域の照度変化をなだらかにする作用がさらに増強される。
【0042】
また、上述の実施の形態では、レンズ本体10の光源2に対向する側に凸部12と凹部13とを設け、レンズ本体10の光源2とは反対側にブラスト面11を設けたが、凸部12と凹部13を出射面側に設けブラスト面11を光源2と対向する側に設けるようにしてもよい。
【0043】
また、上述の実施の形態では、レンズ本体10の面を平面としてフレネルレンズ1を構成したが、レンズ本体10を円弧状等とし、フレネルレンズ面を曲面としてもよい。その場合、フレネルレンズ面のみを曲面とし、反対側を平面としたり、フレネルレンズ面とその反対側の両面を曲面としたりしてもよい。また、ブラスト面11の表面粗さRaを、0.3≦Ra≦40の範囲のいずれかとし、弧状部Rの半径rとフレネルレンズ面のピッチPとの関係であるr/Pを0.17としたり0.01<r/P≦0.3の範囲のいずれかとしてもよい。また、r/Pを0.01<r/P≦0.3の範囲のいずれかとしRaを25μmとしてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1…フレネルレンズ、2…光源、10…レンズ本体(体積散乱部)、11…ブラスト面(表面散乱部)、12…凸部、13…凹部、R…弧状部
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレネルレンズおよび照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダウンライトまたはスポットライトのような比較的狭い光の照射範囲に集中的に強い照度を必要とする照明では、狭い光の照射範囲に光を集中させるために、光源の出射側にフレネルレンズを用いるものが知られている(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に示されているようなフレネルレンズを平板化した一般的な従来のフレネルレンズについて、図12〜図17を参照しながら説明する。図12は、たとえばLED(Light Emitting Diode)である光源100と、光源100に対向する側にフレネルレンズ面が形成されているフレネルレンズ101と、フレネルレンズ101への入射光102と、フレネルレンズ101からの出射光のうちで本来の出射光となる中心光103および周辺に屈折して集光されない光となる損失光104とを示す図である。図13は、図12のフレネルレンズ101を光が入射する側の正面から見た状態を示す図で光源100を二点鎖線(仮想線)で示す図である。図14は、図12におけるフレネルレンズ101を拡大して示す図で併せて入射光102、中心光103、および損失光104の状態を示す図である。なお、図12に示す光源100の半円形は、光源100の照射範囲を模式的に示すものである。
【0004】
図14に示すように、フレネルレンズ101は、フレネルレンズ面がのこぎり状となっており、通常のレンズ面として働く緩斜面105と損失光を発生させる急斜面106とが繰り返し交互に配置されている。図13の右上にも緩斜面105と急斜面106の状態を拡大して図示してある。この結果、凸部107と凹部108が交互に形成される。光源100からの入射光102は、フレネルレンズ101の緩斜面105および急斜面106によって屈折または反射し、フレネルレンズを通過していく。なお、図12、図14では、反射光については図示を省略してある。
【0005】
図15は、図12および図14に示す中心光103および損失光104の投影パターンであり、フレネルレンズ101と平行かつ所定の距離離れた投影面に投影されたパターンを示している。図15の上段の四角の範囲は光源100の中心から垂直に出射した光を中心にして左右および上下に各50mm(ミリメートル)の範囲を表し、図15の下段の四角の範囲は光源100の中心から垂直に出射した光を中心にして左右および上下に各250mmの範囲を表している。なお、図15において、上下のスケール表示は省略してある。図15の上段の図は、中心光103の投影パターンであり、下段の図は、中心光103と損失光104の投影パターンである。図15の上段の図において、領域110は、最も照度が高い部分である。次いで、領域111〜114と順次照度が低くなっている。また、図15の下段の図において、領域115は、図15の上段の図の中心光103の投影部分である。また、図15の下段の図において、領域116、117、118、119、120のうち、領域117、119は照度が比較的に高い部分である。
【0006】
図15の上段の図における中心光103の照度分布を図16の下段の図に示す。図16に示すように、領域110の部分が中心光103の投影面積の大部分を占めていることがわかる。図15の下段の図における中心光103と損失光104の照度分布を図17の下段の図に示す。図16の下段の縦軸は、照度の単位であるLuxである。図17に示すように、領域116、118、120の部分の照度がきわめて低く、特に領域118,120の部分の照度が低く、一方、領域117、119の照度が高いために、損失光104は、中心光103の周囲にリング状のパターンを形成することがわかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−262187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、中心光103の投影パターンは、照度が最も高い領域110の面積が大部分を占め、その周囲の狭い領域111〜113で急激に照度が低下し、領域114では領域110と比較したらほとんどゼロになる。このような照度変化は、急激であるため人間の眼には不自然であり不快である。また、中心光103の周囲に生じる損失光104によるリング状のパターン、すなわち領域117、119は、リング斑のように見えてしまうという問題がある。
【0009】
本発明は、このような背景の下に行われたものであって、中心光に相当する部分の急激な照度変化が無く、しかも照度が高い中心部分の周囲にリング状のパターンの発生がないようにできるフレネルレンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のひとつの観点は、フレネルレンズとしての観点である。本発明のフレネルレンズは、光を透過させるレンズ本体のいずれか片面に凹部と凸部とが繰り返し交互に配置されるフレネルレンズにおいて、凸部の頂上部または凹部の最深部のいずれか一方または双方に弧状部を有すると共に、入射した光を散乱させる散乱部を有するものである。
【0011】
たとえばフレネルレンズの散乱部は、表面散乱部と体積散乱部のいずれか一方または両方を有することができる。たとえば、表面散乱部は、レンズ本体の凸部と凹部とを有さない側の面、またはレンズ本体の凸部と凹部とを有する側の面、もしくはレンズ本体の凸部と凹部とを有さない側の面およびレンズ本体の凸部と凹部とを有する側の面の両面にブラスト加工されることで形成される。また、たとえば、体積散乱部は、レンズ本体が透明樹脂に光散乱粒子が含有される光散乱導光体で形成されるようにする。
【0012】
本発明の他の観点は、照明装置としての観点である。本発明の照明装置は、本発明のフレネルレンズと、フレネルレンズの片面側に対向して配置された光源と、を有するものである。
【0013】
たとえば本発明の照明装置は、凸部と凹部とが繰り返し交互に配置されるフレネル面と対向する側に前記光源が設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、中心光の急激な照度変化が無く、しかも損失光によるリング状のパターンが発生しないようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態のフレネルレンズを光源、入射光、中心光、および損失光と共に示す図である。
【図2】図1のフレネルレンズを光が入射する側の正面から見た状態を示す図で光源を仮想線(二点鎖線)で示す図である。
【図3】図1のフレネルレンズを部分的に拡大して示すと共に併せて、入射光の一部から生ずる中心光、および損失光の光路を示す図である。
【図4】図2のフレネルレンズを通過した光の投影パターンを示す図で上段が従来の中心光に相当する部分とその近傍を示し下段が従来の中心光と損失光に相当する部分とその周囲を示す図である。
【図5】図4の上段に示す投影パターンと、その照度分布を示す図である。
【図6】図4の下段に示す投影パターンと、その照度分布を示す図である。
【図7】比較例その1の投影パターンを示す図で上段が従来の中心光に相当する部分とその近傍を示し下段が従来の中心光と損失光に相当する部分とその周囲を示す図である。
【図8】図7の下段に示す投影パターンと、その照度分布を示す図である。
【図9】比較例その2の投影パターンを示す図で上段が従来の中心光に相当する部分とその近傍を示し下段が従来の中心光と損失光に相当する部分とその周囲を示す図である。
【図10】下段に示す投影パターンと、その照度分布を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態、比較例1、比較例2、および従来例のフレネルレンズの配光分布を示す図である。
【図12】従来例のフレネルレンズを光源、入射光、中心光、および損失光と共に示す図である。
【図13】図12のフレネルレンズを光が入射する側の正面から見た状態を示す図で光源を仮想線(二点鎖線)で示す図である。
【図14】図12のフレネルレンズの一部を拡大して示すと共に、併せて入射光の一部から生ずる中心光、および損失光の光路を拡大して示す図である。
【図15】図12のフレネルレンズを透過した光の投影パターンを示す図で上段が中心光とその近傍を示し、下段が中心光と損失光とその周囲を示す図である。
【図16】図15の上段に示す投影パターンと、その照度分布を示す図である。
【図17】図15の下段に示す投影パターンと、その照度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態のフレネルレンズ1を図1〜図11を参照しながら説明する。図1に示すように、フレネルレンズ1は、距離L離れた位置の光源2とそのフレネルレンズ面が対向するように配置されている。この照明装置において、距離Lは、約20mm(ミリメートル)となっている。光源2は、LED7でありその照射範囲を模式的に示すと半円形8のようになる。この照明装置では、光源2から出射された光の一部である入射光3はフレネルレンズ1で屈折された中心光4、およびフレネルレンズ1で屈折された損失光5ならびに後述する出射光18,19となりフレネルレンズ1から出射する。図2に示すように、フレネルレンズ1を光が入射する側の正面から見ると、複数の大小の同心円6が形成された状態となっている。この同心円6は、後述する凸部12による同心円6aと、凹部13による同心円6bとが形成されている。フレネルレンズ1と光源2とは、図1、図2に示すように、フレネルレンズ1のフレネルレンズ面に対して垂直方向に、かつフレネルレンズ面の中心から距離Lだけ離れた位置に光源2がくるように配置されている。
【0017】
図1、図3に示すように、フレネルレンズ1は、レンズ本体10、表面を粗したブラスト面11、凸部12、凹部13、通常のレンズ面として働く緩斜面14、および損失光を発生させる急斜面15を有している。フレネルレンズ1を形成するレンズ本体10は、たとえば透明樹脂製である。レンズ本体10の光源2に対向する側には、凸部12と凹部13とがフレネルレンズ面の中央を中心として交互に繰り返し配置されている。また、凸部12と凹部13でつながれる緩斜面14と急斜面15も同様に交互に繰り返すように配置されている。また、レンズ本体10の光源2と反対側の面は、表面が粗いブラスト面11になっている。また、凸部12の頂上部と凹部13の最深部とは、それぞれ弧状を呈している。以下では、これを弧状部Rと称することとする。
【0018】
フレネルレンズ1のフレネルレンズ面は、図3に示すように、凸部12の最上部(すなわち頂上部)から緩やかに下がっていき凹部13の最下部(すなわち最深部)に至る緩斜面14と、凸部12の最上部(頂上部)から急速に下がっていき凹部13の最下部(最深部)に至る急斜面15とに区分けされる。また、緩斜面14から弧状部Rを除いた直線状の直線緩斜面16を有し、急斜面15は弧状部Rを除いた直線状の直線急斜面17を有している。たとえば入射光3が直線緩斜面16に入射すると中心光4として出射され、入射光3が直線急斜面17に入射すると損失光5として出射される。一方、凸部12と凹部13とが有する弧状部Rに入射すると、入射光3は、従来より広い方向に拡散させられる。さらにブラスト面11から出射する中心光4、損失光5、および弧状部Rからの光は、ブラスト面11によってさらに散乱させられる。
【0019】
すなわち、図3に示すように、入射光3のうち、直線緩斜面16に入る光の束3aはブラスト面11によって散乱させられ中心光4aとなって出射する。また、直線急斜面17に入る光の束3bもブラスト面11によって散乱させられ損失光5aとなって出射する。さらに凸部12の弧状部Rに入射する光の束3cは、従来に比べ、より広い角度範囲にわたって屈折し、同様に、凹部13の弧状部Rに入射する光の束3dは、従来に比べ、より広い角度範囲にわたって屈折する。広い角度範囲にわたって屈折した光は、フレネルレンズ1のブラスト面11によって散乱させられ、より分散化し、光の束3cは、出射光18となって出射し、光の束3dは出射光19となって出射する。このように、このフレネルレンズ1は、弧状部Rでの拡散と、ブラスト面11による散乱とによって、フレネルレンズ1からの出射光が中心光4と損失光5とに分離されることはない。
【0020】
上述した凸部12と凹部13との弧状部Rの形状は、図3に示すように、凸部12と凸部12、または凹部13と凹部13との間隔をP(mm:ミリメートル)とし、弧状部Rの半径をr(mm)とすると、たとえば
0.01<r/P≦0.3
である。この実施の形態のフレネルレンズ1では、
r/P=0.17
とした。ブラスト面11を形成せずに、鏡面としたものでr/Pの値を様々に変更してみたが、r/Pの値が0.01以下であると、直線緩斜面16からの出射光である中心光4と、直線急斜面17からの出射光である損失光5との間に入る光がほとんどなく、一方、r/Pの値が0.3よりも大きいと照度が高い領域が広がり過ぎてしまうことがわかった。
【0021】
また、ブラスト面11の表面粗さRa(μm:マイクロメートル)は、
0.3≦Ra≦40
である。この実施の形態のフレネルレンズ1では、
Ra=25(μm)
とした。弧状部Rを形成しない従来と同様なものでRaの値を様々に変更してみたが、Raの値が0.3μmより小さいと表面散乱がほとんど確認されず、従来の鏡面と同じような配光状態となり、Raの値が40μmより大きいと中心光4の照度が低下し、配光が広がり過ぎることがわかった。
【0022】
図4は、図2のフレネルレンズ1を通過した光の投影パターンを示す図である。この投影パターンは、光源2のLED7から出射する光がフレネルレンズ面全体に入射し、ブラスト面11の全体から出射する場合を示している。図4の上段の四角の範囲は光源2を中心にして左右および上下に各50mm(ミリメートル)の範囲を表し、図4の下段の四角の範囲は光源2を中心にして左右および上下に各250mmの範囲を表している。なお、図4において、上下のスケール表示は省略してある。図4は、フレネルレンズ1から出射された光が、フレネルレンズ1と平行かつ所定の距離離れた投影面に投影されたパターンを示している。図4の上段の図は、従来の中心光103とその近傍に相当する範囲の投影パターンであり、下段の図は、従来の中心光103と従来の損失光104とその周囲に相当する範囲の投影パターンである。
【0023】
図4の上段の図において、領域20は、最も照度が高い部分である。領域20の外周の狭い領域21は、領域21の外周の領域22よりも若干照度が低い。次いで、領域22〜26と順次照度が低くなっている。また、図4の下段の図において、領域30は、図4の上段の図の領域20〜25の部分である。また、図4の下段の図において、領域31は従来の損失光104に相当する範囲の投影パターンである。
【0024】
図4の上段の図における投影パターンの照度分布を図5の下段の図に示す。図5の下段の縦軸は照度の単位であるLuxを示している。図5に示すように、領域21が少しくぼんでいるが全体的には領域20から領域26まで段階的になだらかに照度が下がっていることがわかる。これは従来例の図16との比較によっても明らかである。図16における領域110の照度が図5における領域20の照度に対応しているが、領域20の面積は、領域110の面積よりも小さい。これにより領域20の周囲の領域21〜26の照度低下変化は、領域110の周囲の領域111〜114の照度低下変化よりもなだらかになっている。
【0025】
図4の下段の図における投影パターンの照度分布を図6の下段の図に示す。図6の下段の縦軸は照度の単位であるLuxを示している。図6に示すように、領域30の外周には、従来の損失光104に相当する領域31が存在し、しかも照度低下変化はなだらかである。領域32には出射光はほとんど照射されていない。図6の照度分布を図17の従来例の照度分布と比較すると、図17で生じている照度が隣接する部分よりも高くなる領域117、119は、図6の照度分布では存在しない。したがって、図6の照度分布では、リング状のパターンは存在しない。
【0026】
(比較例1)
次に、比較例1として、図3に示したフレネルレンズ1の凸部12および凹部13における弧状部Rを無くして弧状部Rによる散乱を無くし、ブラスト面11のみにより散乱が生じるようにしたフレネルレンズ1Aの投影パターンを図7に示す。図7の上段の四角の範囲は光源2を中心にして左右および上下に各50mmの範囲を表し、図7の下段の四角の範囲は光源2を中心にして左右および上下に各250mmの範囲を表している。なお、図7において、上下のスケール表示は省略してある。また、比較例1では、従来の中心光103に相当する領域を中心光4Aとし、従来の損失光104に相当する領域を損失光5Aと標記する。
【0027】
図7に示すように、中心光4Aの投影パターンは、図5に示した投影パターンとほぼ同じであり、領域20〜26を有する。一方、損失光5Aの投影パターンは、図6に示した本発明の実施の形態に係る投影パターンとは異なり、明るい領域30,41の間に暗い領域40を有する。図8の下段に、図7の下段に示した損失光5Aの投影パターンの照度分布を示す。図8に示すように、比較例1によれば、損失光5Aの投影パターンは、領域40の照度が領域41の照度よりも低いため、領域41が僅かではあるが薄いリング状のパターンを呈する。
【0028】
比較例1と本発明実施の形態とを比較すれば、フレネルレンズ1の凸部12および凹部13における弧状部Rは、主に、従来の損失光104に相当する領域にリング状のパターンを発生させないようにする作用が認められる。一方、ブラスト面11は、中心光4Aの照度低下を緩やかにする作用が認められる。この比較例1は、従来のものに比べればより良いものであり、用途によっては比較例1を採用してもよい。
【0029】
(比較例2)
次に、比較例2として、図3に示したフレネルレンズ1の凸部12および凹部13における弧状部Rを有するが、ブラスト面11を無くしたフレネルレンズ1Bの投影パターンを図9に示す。図9の上段の四角の範囲は光源2を中心にして左右および上下に各50mmの範囲を表し、図9の下段の四角の範囲は光源2を中心にして左右および上下に各250mmの範囲を表している。なお、図9において、上下のスケール表示は省略してある。また、比較例2では、従来の中心光103に相当する領域を中心光4Bとし、従来の損失光104に相当する領域を損失光5Bと標記する。
【0030】
図9に示すように、中心光4Bの投影パターンは、従来例として図16に示した中心光103とほぼ同じであり、領域50〜54を有し、急激な照度低下が発生している。また、損失光5Bの投影パターンは、領域60〜63を有し、リング班となるリング状のパターンは薄くなっている。図10の下段に、図9の下段に示した損失光5Bの投影パターンの照度分布を示す。図10に示すように、比較例2によれば、損失光5Bの投影パターンについては、領域61に周囲より僅かに暗い部分が生じているが全体的には領域60〜63の順で照度が段階的に低くなっている。これにより領域60〜62の範囲にはリング状のパターンはほとんど発生しない。
【0031】
比較例2と本実施の形態とを比較すれば、フレネルレンズ1のブラスト面11は、主に、従来の中心光103に相当する領域の照度変化をなだらかにする作用が認められる。すなわち比較例2では、ブラスト面11が無いため中心部分で急激な照度低下が生じている。なお、この比較例2も従来例よりは改善されているため、用途によっては、この比較例2を採用してもよい。
【0032】
(配光分布について)
フレネルレンズ1、1A、1B、および従来のフレネルレンズ101の配光分布について、図11を参照しながら説明する。図11は、フレネルレンズ1、1A、1B、および従来のフレネルレンズ101の配光分布を示す図である。図11は、横軸に光源2から見た角度をとり、縦軸に光度比率をとる。図11では、実線でフレネルレンズ1の配光分布を示し、破線でフレネルレンズ1Aの配光分布を示し、二点鎖線でフレネルレンズ1Bの配光分布を示し、一点鎖線で従来のフレネルレンズ101の配光分布を示している。
【0033】
図11に示すように、フレネルレンズ1、1A、1Bの光度比率の半値(0.5)での角度は、従来例のフレネルレンズ101とほぼ同じであり、中心付近でも充分な光を得ることができている。
【0034】
(効果)
以上説明したように、この実施の形態に係るフレネルレンズ1は、凸部12の頂上部および凹部13の最深部が弧状部Rを有すると共に、入射した光を表面散乱させるブラスト面11を有する。これによれば図5に示すように、中心部分の照度変化が、たとえば図16に示す従来例に比べてなだらかである。また、図6に示すように、従来の損失光104に相当する領域、すなわち中心部分を囲む領域の照度変化についてもなだらかであり、たとえば図17に示す従来例のようなリング状のパターンを呈することがない。これにより、従来の課題を解決し、中心部分の急激な照度変化が無く、照度が高い中心部分の周囲にリング状のパターンが発生しないようにできる。
【0035】
すなわち、従来のフレネルレンズ101では、緩斜面105および急斜面106のつながり部である凸部107と凹部108が共に鋭角であるため、入射光102が緩斜面105に入射したものと急斜面106に入射したものに二分される。言い換えると、従来のフレネルレンズ101では、中心光103と損失光104の間に領域116、117、118のような照度が低い部分が生じ、リング状のパターンとなる。本実施の形態のフレネルレンズ1では、凸部12の頂上部および凹部13の最深部が弧状部Rを有するため、凸部12の頂上部および凹部13の最深部を通過する光が広い角度範囲にわたって屈折しているため、中心光103と損失光104の間がその光によって埋まるので、損失光104に相当する領域にはリング状のパターンは生じない。さらに、本実施の形態のフレネルレンズ1は、ブラスト面11を有するので、フレネルレンズ1から出射される中心部分が散乱され、なだらかな照度変化を呈する。
【0036】
また、フレネルレンズ1では、凸部12と凹部13とが、レンズ本体10の光源2に対向する側に設けられている。これによれば凸部12と凹部13とが外気に晒されることがなく、凹部13に塵が溜まるなどの不具合が発生しないようにできる。
【0037】
また、フレネルレンズ1では、凸部12の頂上部および凹部13の最深部が鋭角ではなく丸い弧状部Rを有するため、フレネルレンズ1を金型で成形する際に、凸部12の頂上部および凹部13の最深部を金型から抜け易くできる。これによれば、フレネルレンズ1を製造する工程における歩留まり率を向上させることができる。また、金型の低コスト化、長寿命化にも有利となる。
【0038】
(その他の実施の形態)
本発明の実施の形態は、その要旨を逸脱しない限り様々に変更が可能である。
【0039】
たとえば上述の実施の形態では、凸部12と凹部13との双方に弧状部Rを設けたが、凸部12または凹部13のいずれか一方に弧状部Rを設けるようにしてもよい。
【0040】
また、上述の実施の形態では、表面散乱部としてブラスト加工が施されたブラスト面11を有したが、ブラスト面11に替えて、ヤスリかけなどで表面を細かく粗らした面としてもよい。あるいは、ブラスト面11に替えて、光を散乱させるシートをレンズの表面に貼り付けてもよい。もしくは、ブラスト面11などの表面散乱部を設けずに、またはブラスト面11などの表面散乱部を設けた上でさらに、レンズ本体10を形成する透明樹脂体を、光散乱粒子が含有される光散乱導光体(たとえば特開2011−49233号公報参照)で形成した体積散乱部を設けてもよい。
【0041】
また、ブラスト面11は、レンズ本体10の凸部12と凹部13とを有さない側の面に有するとして説明したが、その他にもレンズ本体10の凸部12と凹部13とを有する側の面、もしくはレンズ本体10の凸部12と凹部13とを有さない側の面およびレンズ本体10の凸部12と凹部13とを有する側の面の両面に有してもよい。特に、ブラスト面11を、レンズ本体10の凸部12と凹部13とを有さない側の面およびレンズ本体10の凸部12と凹部13とを有する側の面の両面に有すれば、表面散乱部の面積が増えるので、表面散乱光を増やすことができる。これによれば、ブラスト面11の従来の中心光103に相当する領域の照度変化をなだらかにする作用がさらに増強される。
【0042】
また、上述の実施の形態では、レンズ本体10の光源2に対向する側に凸部12と凹部13とを設け、レンズ本体10の光源2とは反対側にブラスト面11を設けたが、凸部12と凹部13を出射面側に設けブラスト面11を光源2と対向する側に設けるようにしてもよい。
【0043】
また、上述の実施の形態では、レンズ本体10の面を平面としてフレネルレンズ1を構成したが、レンズ本体10を円弧状等とし、フレネルレンズ面を曲面としてもよい。その場合、フレネルレンズ面のみを曲面とし、反対側を平面としたり、フレネルレンズ面とその反対側の両面を曲面としたりしてもよい。また、ブラスト面11の表面粗さRaを、0.3≦Ra≦40の範囲のいずれかとし、弧状部Rの半径rとフレネルレンズ面のピッチPとの関係であるr/Pを0.17としたり0.01<r/P≦0.3の範囲のいずれかとしてもよい。また、r/Pを0.01<r/P≦0.3の範囲のいずれかとしRaを25μmとしてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1…フレネルレンズ、2…光源、10…レンズ本体(体積散乱部)、11…ブラスト面(表面散乱部)、12…凸部、13…凹部、R…弧状部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を透過させるレンズ本体のいずれか片面に凸部と凹部とが繰り返し交互に配置されるフレネルレンズにおいて、
前記凸部の頂上部または前記凹部の最深部のいずれか一方または双方に弧状部を有すると共に、入射した光を散乱させる散乱部を有する、
ことを特徴とするフレネルレンズ。
【請求項2】
請求項1記載のフレネルレンズにおいて、
前記散乱部は、表面散乱部と体積散乱部のいずれか一方または両方を有する、
ことを特徴とするフレネルレンズ。
【請求項3】
請求項2記載のフレネルレンズにおいて、
前記表面散乱部は、前記レンズ本体の前記凸部と前記凹部とを有さない側の面、または前記レンズ本体の前記凸部と前記凹部とを有する側の面、もしくは前記レンズ本体の前記凸部と前記凹部とを有さない側の面および前記レンズ本体の前記凸部と前記凹部とを有する側の面の両面にブラスト加工されることで形成される、
ことを特徴とするフレネルレンズ。
【請求項4】
請求項2または3記載のフレネルレンズにおいて、
前記体積散乱部は、前記レンズ本体が透明樹脂に光散乱粒子が含有される光散乱導光体で形成される、
ことを特徴とするフレネルレンズ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項記載のフレネルレンズと、
前記フレネルレンズの片面側に対向して配置された光源と、
を有する、
ことを特徴とする照明装置。
【請求項6】
請求項5記載の照明装置において、
凸部と凹部とが繰り返し交互に配置されるフレネル面と対向する側に前記光源が設けられる、
ことを特徴とする照明装置。
【請求項1】
光を透過させるレンズ本体のいずれか片面に凸部と凹部とが繰り返し交互に配置されるフレネルレンズにおいて、
前記凸部の頂上部または前記凹部の最深部のいずれか一方または双方に弧状部を有すると共に、入射した光を散乱させる散乱部を有する、
ことを特徴とするフレネルレンズ。
【請求項2】
請求項1記載のフレネルレンズにおいて、
前記散乱部は、表面散乱部と体積散乱部のいずれか一方または両方を有する、
ことを特徴とするフレネルレンズ。
【請求項3】
請求項2記載のフレネルレンズにおいて、
前記表面散乱部は、前記レンズ本体の前記凸部と前記凹部とを有さない側の面、または前記レンズ本体の前記凸部と前記凹部とを有する側の面、もしくは前記レンズ本体の前記凸部と前記凹部とを有さない側の面および前記レンズ本体の前記凸部と前記凹部とを有する側の面の両面にブラスト加工されることで形成される、
ことを特徴とするフレネルレンズ。
【請求項4】
請求項2または3記載のフレネルレンズにおいて、
前記体積散乱部は、前記レンズ本体が透明樹脂に光散乱粒子が含有される光散乱導光体で形成される、
ことを特徴とするフレネルレンズ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項記載のフレネルレンズと、
前記フレネルレンズの片面側に対向して配置された光源と、
を有する、
ことを特徴とする照明装置。
【請求項6】
請求項5記載の照明装置において、
凸部と凹部とが繰り返し交互に配置されるフレネル面と対向する側に前記光源が設けられる、
ことを特徴とする照明装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−92717(P2013−92717A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235939(P2011−235939)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000227364)日東光学株式会社 (151)
【出願人】(591061046)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000227364)日東光学株式会社 (151)
【出願人】(591061046)
【Fターム(参考)】
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