説明

フレーク状ガラスを含むゴム物品の製造方法及びフレーク状ガラスを含むゴム物品

フレーク状ガラスを含んでいる、タイヤ、ホース及び裏打ちシートのようなゴム物品は、改善された流体不透過性を示す。そのようなゴム物品の製造方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム物品に関し、特に、シール材、タイヤ、ホース及びライナーのような流体密封用の応用品への使用に適したゴム物品に関する。
【背景技術】
【0002】
流体を密封するために柔軟でさらに比較的不透過性のバリアが必要とされる場合、ゴムは、流体密封用の応用品によく用いられる。例えば、ゴムを、車両用タイヤ内に空気を保持するために用いてもよく、ガソリンを車両用の燃料供給ホースに保持するために用いてもよく、あるいは、腐食性薬品によるスチール製パイプラインの腐食を抑制するためのパイプラインライナーとして用いてもよい。
【0003】
そのような応用品において、ゴムの柔軟性は、ゴム物品が収容する流体に対する当該ゴムの不透過性と同じように、非常に望まれる特徴である。
【0004】
欧州特許出願公開第1500678号明細書には、−55℃以下のガラス転移温度を有する、ジエン系合成ゴム及び天然ゴムから選ばれた1種のゴムと、有機化層状粘度鉱物とを含む、タイヤ用インナーライナーのためのゴム組成物が開示されている。このゴム組成物は、耐空気透過性と共に、低温時の耐久性も備えている。
【0005】
米国特許第4,911,218号明細書及び米国特許第5,049,609号明細書は、それぞれ、ポリビニルアルコールコーティングと、少なくとも1種の、板状構造を有する水に不溶な粒子状の有機又は無機材料とからなる組成物を開示している。好ましい粒子状の材料は、フレーク状マイカ及びフレーク状ガラスである。また、表面の一部が前記組成物で被覆されたゴムタイヤも開示されている。
【0006】
米国特許第6,034,164号明細書は、充分に低い透過性を有するポリマーナノ複合材料組成物を開示している。この組成物は、平均分子量が50000g/モルよりも大きい、金属加工可能な非イオン性第1ポリマーと、平均分子量が第1ポリマーの平均分子量よりも小さく、第1ポリマーと適合し得る非イオン性第2ポリマーとからなる層状材料と混合されることによって作製されたタイヤ用インナーライナーとして利用されている。層状材料は、粘土鉱物のような膨潤性の層状構造として開示されている。
【0007】
日本国特開2000−080207号公報には、ゴム中に粘土鉱物が均一に分散されている粘土−ゴム複合材料が開示されている。
【0008】
日本国特開昭61−120868号公報には、シリコーンゴムに5〜20%のフレーク状ガラスを添加することによって得られるガス不透過性を備えた、鉄筋コンクリートを修理するための塗料が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
先行技術において、密封に用いられるゴム物品の透過性を改善するためには、ゴム物品に別個のコーティング層を設けること、あるいは、層状粘土を膨潤させることを含む処理を、当該層状粘土をゴム物品に添加するよりも前に行うこと、が必要である。
【0010】
したがって、密封された流体に対する不透過性が改善された流体密封用の応用品に用いられるゴム物品を製造するための、簡略化された方法が求められているといえる。また、そのようなゴム物品を、柔軟性を大幅に損なわせることなく提供することも必要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
最終物品を得るための押出又は成形工程よりも前にフレーク状ガラスをゴム物品に添加することによって、高い柔軟性と低い透過性とを有するゴム物品が得られることがわかった。フレーク状ガラスを固形ゴム及び他の添加物と混ぜ合わせ、その後、得られた混合物に対して、フレーク状ガラスを配向させるためのせん断加工工程を行い、続いて、切断、押出又は成形して最終物品を形成する。追加の処理工程を行う必要性はない。
【0012】
理論に拘束されることなく、ゴム物品を形成する処理によってフレーク状ガラスの実質的な配向を得ることができるため、フレーク状ガラスがゴムマトリックス中で迷路状又は迷宮状の配置を形成して、フレーク状ガラスを通過できないためフレーク状ガラスを迂回してゴムマトリックスを通過しなければならない透過物質(any permeating species)の移動が妨げられると考えられる。
【0013】
それゆえ、第1の側面において、本発明は、フレーク状ガラスを含むゴム物品を形成する方法を提供する。当該方法は、
a) ゴム及びフレーク状ガラスを含む混合物を作製する工程と、
b) 配向したフレーク状ガラスを含む予備成形体を形成するために、前記混合物をせん断加工する工程と、
c) 切断、押出又は成形によって、前記予備成形体から前記ゴム物品を形成する工程と、
を順番に含んでいる。
【0014】
第2の側面において、本発明は、本発明の第1の側面における方法によって得られた、又は得ることができるゴム物品を提供する。
【0015】
第3の側面において、本発明は、フレーク状ガラスを含有するゴムマトリックスを含むゴム物品を提供する。当該ゴム物品は、本質的に、フレーク状ガラスを含有するゴムマトリックスからなることが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に説明するような本発明の好ましい形態は、本発明の第1、第2及び第3の側面の何れにも適用される。
【0017】
ゴム物品とは、ゴムシート、ゴムチューブ及びゴムライナー等のような製品を意味する。塗料及び塗料によって形成されたコーティング層は、ここで用いられているゴム物品という用語には含まれない。樹脂又は他の非ゴムポリマーによって形成された塗膜も、ゴム物品には含まれない。
【0018】
ゴム物品とは、また、実質的に又は本質的にゴムマトリックスからなるゴム物品をも意味する。ここで、ゴムマトリックスという用語が以下のように用いられる場合は、ここでいうゴム物品とは、そのようなゴムマトリックスを含むゴム物品、又は、本質的にそのようなゴムマトリックスからなるゴム物品にもあてはまる。本発明の種々の形態は、充填材が含まれていない、又は、充填材が低充填されているゴムマトリックスと共に用いられるだけでなく、ゴム以外の添加物を300phrまで含む、充填材が高充填されたゴムマトリックスと共に用いられてもよい。phrとは、ゴムマトリックスにおいて、ゴムの重量部を100とした場合の、ゴムマトリックス中の充填材の重量部である。通常、添加物は、ゴムマトリックス中に実質的に均一に分散されている。さらに、ゴムマトリックスは、ゴム自体に加えて、そのゴムを硬化させて成形又は押出後により高い耐久性を備えた弾性体を得るために、加硫剤又は架橋剤を添加物として含むこともできる。
【0019】
本発明の種々の形態に特に適したゴム物品は、シート状あるいはチューブ状の形状を有する物品である。
【0020】
本発明に従って好適に作製される物品の他の例には、タイヤ、ホース、タンクライナー(すなわち、金属製のタンクを腐食させないように保護するための裏打ちシート)、パイプライナー(すなわち、腐食を抑制するために金属製のパイプやパイプラインに挿入するためのチューブ状ライナー)、又は、シーリングストリップ(ガラス窓を建物や車両の窓枠にはめ込んで封をする際に用いられるようなもの)が挙げられる。
【0021】
本発明の種々の形態において用いられる好適なゴムとしては、天然ゴム及び合成ジエンゴムが挙げられる。好ましいゴムとしては、NR(天然ゴム)、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンモノマーから作製されたゴム)、IIR(イソブテンイソプレンゴム(「ブチルゴム」としても知られている))、BIIR(臭素化イソブテンイソプレンゴム(「臭素化ブチルゴム」としても知られている))、CIIR(塩素化イソブテンイソプレンゴム(「塩化ブチルゴム」としても知られている))、CR(クロロプレンゴム)、CSM(クロロスルホン化ポリエチレンゴム)、HNBR(水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)、SBR(スチレンブタジエンゴム)、FKM(フッ素ゴム及びフッ素化シリコーンゴム)及びQ(シリコーンゴム)が挙げられる。上記ゴムの混合物を用いてもよい。本発明に用いられるゴムとして特に好ましいのは、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、クロロプレンゴム及び二トリルゴムである。
【0022】
ゴムに対して従来用いられている一般的な添加物としては、カーボンブラック等の充填材、溶剤(oils)、粘土、方解石等の炭酸カルシウム、加硫促進剤、架橋促進剤、酸化防止剤、スコーチ防止剤、ステアリン酸のような脂肪酸、及び、酸化亜鉛のような金属酸化物が挙げられる。本発明の目的に反して作用しない限り、他の通常の添加物を用いてもよい。
【0023】
本発明の種々の形態において用いられるフレーク状ガラスは、ゴムマトリックスの5重量%以上が適しており、6重量%以上が好ましく、7重量%以上がより好ましく、8重量%以上がさらに好ましい。ゴムマトリックス中にフレーク状ガラスが30重量%未満存在することが適しており、25重量%未満存在することが好ましく、20重量%未満存在することがより好ましい。これは、ゴムマトリックスの柔軟性が損なわれないようにするためである。
【0024】
フレーク状ガラスの厚さは、10μm以下が適しており、8μm以下が好ましく、7μm以下がより好ましい。混合及びカレンダー加工によってゴムマトリックス中に入れ込まれる最中にフレーク状ガラスが破損しないように、フレーク状ガラスの厚さは0.1μm以上が適しており、0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、3μm以上がさらに好ましい。フレーク状ガラスの厚さは、光学顕微鏡法(optical microscopy)によって、適切に測定できる。
【0025】
フレーク状ガラスの平均径は、15μm以上が適しており、40μm以上が好ましく、140μm以上がより好ましい。平均径400μm以上、さらには平均径500μm以上のような、さらにより大きなフレークも好適である。また、フレーク状ガラスは、1700μm以下の平均径を有することが好ましく、900μm以下の平均径を有することがより好ましい。そうでなければ、ゴムマトリックスの柔軟性が損なわれる可能性があるからである。フレークの平均径は、標準実験用試験ふるい(standard laboratory test sieves)を用いて、適切に測定できる。
【0026】
好適には50重量%以上、好ましくは65重量%以上のフレーク状ガラスが、45〜1700μmの直径を有している。
【0027】
フレーク状ガラスにおける平均径と厚さとの比(平均径:厚さ)は、「100:1以下」が好ましく、「80:1以下」がより好ましく、「60:1以下」がさらに好ましい。また、平均径と厚さとの比(平均径:厚さ)は、「3を超える:1」が好ましく、「5を超える:1」がより好ましく、「20を超える:1」がさらに好ましい。
【0028】
予備成形体において、フレーク状ガラスは配向している。フレーク状ガラスは、隣接しているフレークの大きい面が実質的に互いに平行となるように、すなわち、互いに20°未満、好ましくは10°未満、より好ましくは5°未満の角度を形成するように、互いに配向されていることが適している。フレーク状ガラスは、ゴム及びフレーク状ガラスを含む混合物をせん断加工することによって形成された予備成形体の表面に対して、実質的に平行に配向している大きい面を有していることが好ましい。通常、この予備成形体は、圧延及びカレンダー加工によって形成されたシート状物であるが、チューブ状であってもよい。
【0029】
「予備成形体の表面に対して平行に、実質的に配向された」とは、実質的に例えば50重量%以上、好ましくは70重量%以上のフレーク状ガラスについて、フレークの大きい面に含まれる軸が予備成形体の表面(好ましくは、予備成形体の最も近接している表面)に対して実質的に平行になるように、フレーク状ガラスが予備成形体内に配置されていることを意味している。さらにより好ましくは、実質的に例えば50重量%以上、好ましくは70重量%以上のフレーク状ガラスについて、フレークの最大面が予備成形体の最も近接している表面に対して実質的に平行となるように位置していることである。「実質的に平行」とは、20°の範囲内で平行させること、好ましくは10°の範囲内で平行させること、を意味している。これは、物品から切り出された薄片について、可視光立体顕微鏡法(visible light stereo microscopy)を用いて評価できる。
【0030】
フレーク状ガラスに用いられるガラスには、適切なシリカ系ガラスを用いることができる。例えば、本発明の種々の形態において、フレークとしての使用に適したガラスは、Cガラス、Eガラス、R(K)ガラス、S2(U)ガラス及びARガラスである。
【0031】
本発明の種々の形態において、用いることが好ましいガラスは、Cガラス及びEガラスである。通常、Cガラスは、SiO2を65〜72重量%、Al23を1〜7重量%、CaOを4〜11重量%、MgOを0〜5重量%、B23を0〜8重量%、Na2O及び/又はK2Oを9〜13重量%、及び、ZnOを0〜6重量%含んでいる。Eガラスは、SiO2を52〜56重量%、Al23を12〜16重量%、CaOを16〜25重量%、MgOを0〜6重量%、B23を5〜13重量%、及び、Na2O及び/又はK2Oを0〜0.8重量%含んでいる。
【0032】
フレーク状ガラスは、そのまま用いられてもよいし、ゴムとの適合性及び結合性を改善するために表面処理剤を用いて表面処理が施されてもよい。フレーク状ガラスに対して好適な表面処理剤の材料としては、エポキシシラン、アミノシラン、ビニルシラン及びアクリルシランが挙げられる。ポリマーマトリックスに対するフレーク状ガラス表面の結合性を高めるために、上記材料を単独で用いてもよいし、互いに組み合わせて用いてもよく、これによりゴム物品の不透過性を改善できる。
【0033】
本発明の種々の側面において好適なフレーク状ガラスとしては、NGF Europe(英国、セント ヘレンズ)によって提供されている「Microglas(登録商標)」及び「Glasflake(登録商標)」が利用できる。
【0034】
本発明の方法には、ゴムをフレーク状ガラス及び他の添加物と混合して実質的に均質な混合物を作製するための混合工程が含まれる。この混合段階では、液体が添加物として存在しているが、その混合は本質的に乾式混合である。この乾式混合とは、ゴムが固体粒子状又は固体顆粒状であり、ゴムが実質的に溶融状態又は流体状態ではないことを意味している。その結果、作製された混合物は乾燥状態又はパン状(a dry or crumb state)となり、当該混合物には空気が含まれている。
【0035】
この後、前記混合物にせん断加工を施して予備成形体、通常はシート状物を形成する、せん断加工工程が行われる。このせん断加工工程において、フレーク状ガラスは、予備成形体の表面に対して実質的に平行に配向されている大きい面を有する。通常、このせん断加工工程は、カレンダー加工工程とできる。このカレンダー加工工程では、ゴム混合物は、カレンダー装置(すなわち、マルチギャップ円筒型ローラーミル)を通過することによって加熱される。この処理によって、ゴムマトリックスは高せん断状態にさらされることになり、ゴム混合物から作製されてカレンダー加工された混合物は、当該混合物全体において全ての含有物が実質的に均一に分散された状態となる。その結果得られる、カレンダー加工された混合物には、取り込まれた気体が実質的に含まれない。
【0036】
上記の結果得られるカレンダー加工された混合物は、シート状の予備成形体として、カレンダー加工装置から現れることになる。シートの厚さは、カレンダー加工装置におけるシリンダー間のギャップによって決定されることになる。得られるシートは、その後、そのまま用いられてもよいし、さらなる押出又は成形プロセスのための出発材料として用いられてもよい。
【0037】
せん断加工工程は、圧延工程であってもよい。この圧延工程では、ゴムが二つのロール間で圧搾されて、予備成形体としての粗シートが作製される。もし、フレークをシートの表面に配向させるためのせん断加工を、圧延工程によって行うのであれば、必要な配向を与えるための適切なせん断加工を行うために、圧延ギャップを充分に小さくすることが望ましい。
【0038】
例えばチューブ状の予備成形体を作製するために、せん断加工工程を、高せん断射出成形又は金型を通した押出によって行ってもよい。理論に拘束されることなく、処理のうち、圧延加工、カレンダー加工、射出成形又は押出のような高せん断加工が行われる間にフレーク状ガラスが受けるせん断力によって、予備成形体の表面に対して平行なフレーク状ガラスの少なくとも部分的な配向が得られるので、得られるゴムマトリックスの不透過性が結果的に改善されると考えられる。
【0039】
得られたゴムが加硫剤又は架橋剤を添加物として含んでいる場合には、当該ゴムがいったん最終形状に形成された後、当該ゴムを流体ではなくより固体に変化させるために、得られたゴムに対する硬化工程又は加硫工程が行われてもよい。
【0040】
ゴム物品の最終形状は、単に予備成形体から当該ゴム物品を切り出すことによって形成されてもよいし、低せん断成形工程、圧縮工程、圧縮成形工程又は押出工程によって形成されてもよい。
【0041】
以下の、本発明を限定しない実施例を参照することにより、本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0042】
薬品タンク裏打ちシートの実施例を作製するために、クロロプレン混合物を用いた。裏打ちシートは、反応性の化学薬品をスチールタンクに接触させないように機能する。後述する実験の調合では、裏打ちシート作製用のゴムマトリックスに含まれるカーボンブラックを徐々にフレーク状ガラスに置き換えた。調合は、重量部によって表す。
【0043】
【表1】

【0044】
ゴムマトリックスにフレーク状ガラスを添加するために、特別な技術は用いられなかった。ゴムは固形厚板状であった。他の成分は、細かい粉末状であった。フレーク状ガラスは、カーボンブラックと一緒に混合機に加えられた。高せん断力が加えられることによる過度な温度上昇によって、加硫剤が分解しないように、カーボンブラック及びガラスが最初に加えられた。ゴム混合物が混合機から取り出された際、当該ゴム混合物に混合されなかったフレーク状ガラスの粉末は混合機に残っていなかった。
【0045】
次に、2ロール圧延機を用いて。前記混合物からシート状物を形成した。フレークを配向させるためにゴム中に高せん断力を生じさせる目的で、非常に狭いニップギャップを用いた。複数の薄いシートは、互いに積層され、圧縮成形されて加硫処理が施された厚さ約2mmのシートを形成するために用いられた。
【0046】
得られたゴムシートの水に対する透過性を、ISO 2528(1995)及びASTM D1653の一般原則に従って、シールドカップ法を用いて評価した。厚さ2mmの硬化されたシートが、それぞれのゴムサンプルとして準備された。当該シートから75mm径のディスクを型抜きし、試験セルの上に設置した(試験セルは中空状の開口アルミニウム缶で、当該缶の開口が前記シートで覆われていた)。ゴムシート上に設置された環状蓋をきつくシールしたことにより、当該シートは缶に対してシールされているものの、当該シートの中心が環境に応じて自由に移動できる状態となった。50mLの水を、別に設けられた注入部を通じて前記セルに注入した。この注入部は、後でシールされた。このセルの重量を測定した後、セル内の水が水平なゴムシートの内側面上で当該内側面に接するように、当該シートが下側を向く向きで当該セルを60℃のオーブンに入れた。セルは、オーブン内の暖かい空気がゴムシートのそばを循環するように、環状蓋上に保持されていた。サンプルを毎日オーブンから取り出し、冷却し、そしてその重量を測定した。水蒸気透過速度(W.V.T.R.)の評価には、5日間における一日毎の定期的な重量損失を用いた。各混合物についてそれぞれ用意された3つのサンプルの平均結果を示す。
【0047】
【表2】

【0048】
これらの結果からは、フレーク状ガラスが3重量%よりも多く含まれている場合は、W.V.T.R.がかなり減少するという結果が見受けられる。また、ゴムの化学的耐久性、耐摩耗性、柔軟性及び粘着能力は、維持されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーク状ガラスを含むゴム物品を形成する方法であって、当該方法は、
a) ゴム及びフレーク状ガラスを含む混合物を作製する工程と、
b) 配向したフレーク状ガラスを含む予備成形体を形成するために、前記混合物をせん断加工する工程と、
c) 切断、押出又は成形によって、前記予備成形体から前記ゴム物品を形成する工程と、
を順番に含む、ゴム物品の製造方法。
【請求項2】
前記混合物は、前記フレーク状ガラスを5〜30重量%含む、請求項1に記載のゴム物品の製造方法。
【請求項3】
前記フレーク状ガラスは、平均厚さが0.1〜10μmである、請求項1又は2に記載のゴム物品の製造方法。
【請求項4】
前記フレーク状ガラスは、平均径が15〜1700μmである、請求項1〜3の何れか1項に記載のゴム物品の製造方法。
【請求項5】
前記ゴムは、天然ゴム、エチレン−プロピレン−ジエンモノマーゴム、イソブテンイソプレンゴム、臭素化イソブテンイソプレンゴム、塩素化イソブテンイソプレンゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、フッ素シリコーンゴム、シリコーンゴム及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1〜4の何れか1項に記載のゴム物品の製造方法。
【請求項6】
前記混合物は、加硫剤又は架橋剤を含んでおり、
前記方法は、さらに順に続く、前記ゴム物品を硬化させる工程(d)を含む、請求項1〜5の何れか1項に記載のゴム物品の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の方法によって得られるゴム物品。
【請求項8】
フレーク状ガラスを含有するゴムマトリックスを含む、又は、本質的に、フレーク状ガラスを含有するゴムマトリックスからなる、ゴム物品。
【請求項9】
前記ゴム物品は、前記フレーク状ガラスを5〜30重量%含む、請求項8に記載のゴム物品。
【請求項10】
前記フレーク状ガラスは、平均厚さが0.1〜10μmである、請求項8又は9に記載のゴム物品。
【請求項11】
前記フレーク状ガラスは、平均径が15〜1700μmである、請求項8〜10の何れか1項に記載のゴム物品。
【請求項12】
前記ゴムは、天然ゴム、エチレン−プロピレン−ジエンモノマーゴム、イソブテンイソプレンゴム、臭素化イソブテンイソプレンゴム、塩素化イソブテンイソプレンゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、フッ素化シリコーンゴム、シリコーンゴム及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項8〜11の何れか1項に記載のゴム物品。
【請求項13】
シート状又はチューブ状である、請求項8〜12の何れか1項に記載のゴム物品。
【請求項14】
タイヤ、ホース、タンクライナー、パイプライナー又はシーリングストリップである、請求項8〜12の何れか1項に記載のゴム物品。

【公表番号】特表2010−509406(P2010−509406A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530929(P2009−530929)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【国際出願番号】PCT/GB2007/003689
【国際公開番号】WO2008/040942
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(508247545)エヌ・ジー・エフ ヨーロッパ リミテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】NGF EUROPE LIMITED
【Fターム(参考)】