説明

フレームレス太陽電池モジュール

【課題】長期間にわたって、所定の性能を発揮し、安定して用いることのできる軽量で安価なフレームレス太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】フレームレス太陽電池モジュールは、接着充填材で封止された太陽電池サブモジュールの表面側に表面保護層が設けられ、太陽電池サブモジュールの裏面側に裏面保護層が設けられ、裏面保護層と接着充填材との間にバックシートが設けられている。吸着剤を含有するシール材からなる周縁シールが表面保護層および裏面保護層の内側、かつ接着充填材の外側に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外枠のないフレームレスタイプのフレームレス太陽電池モジュールに関し、特に、軽量かつ信頼性が高いフレームレス太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、光吸収により電流を発生する半導体の光吸収層を下部電極(裏面電極)と上部電極(透明電極)とで挟んだ積層構造の太陽電池セルを多数直列に接続して半導体回路を構成し、これを基板の上に形成したものである。このような構成を有する太陽電池は、クリーンなエネルギーとして注目されている。そのため、太陽電池の研究が盛んに行われるようになり、種々の観点から改良が試みられている。
【0003】
一例として、太陽電池セルは、水分に弱く、水分が進入すると、変換効率等の特性が劣化してしまう。特に、Ib族、IIIb族、VIb元素からなるカルコパイライト構造を有するCIS(CuInSe)や、CISに、さらにGaを固溶させたCIGS(Cu(In,Ga)Se)等を、光吸収層として用いるカルコパイライト型の太陽電池セルは、透明電極としてZnO膜等が用いられるため、水分の進入によって透明電極が変質してしまう。これにより、透明電極の抵抗値が上昇し、変換効率が大幅に低下してしまう。
しかしながら、周知のように、太陽電池は、屋外に設置された架台、屋根または屋上など、屋外に設置される場合が多い。そのため、太陽電池モジュールの防水性を向上するための種々のことがなされている。更に低コスト化のためフレームレス化した太陽電池モジュールの提案がされている。従来、フレーム内にシリコーン樹脂、ブチルゴム等のシール材を充填することで周縁シールが行われていたが、フレームレス構造では外環境に直接、周縁シールが晒されるので高信頼性、特に水分のシール性については充分配慮した構造、材料の選択が必要とされ、種々のものが提案されている(特許文献1〜7等)。
【0004】
フレームレス太陽電池モジュールの周縁シールに関して、例えば、特許文献1では、結晶Siセルを複数並べた太陽電池モジュールが開示されており、裏面材周縁が表面保護板の内側になり、耐候性フィルムおよび封止樹脂(シリコーン樹脂)で表面保護材の内側に充填した周縁シール構造のフレームレス太陽電池モジュールが開示されている。
【0005】
特許文献2には、片面に薄膜太陽電池層が形成されるとともに薄膜太陽電池層上の全面に絶縁体層を設けた第一の透光性基板の絶縁体層側面と、第一の透光性基板と少なくとも同一寸法の第二の透光性基板とが合成樹脂層によって接着されており、合成樹脂層で周縁を終端させた構造、または周縁の外側を覆うような構造をしたフレームレス太陽電池モジュールが開示されている。
特許文献3には、表面保護層ガラスに対して裏面保護層ガラスを大きくして外側に配し、周縁を封止材(EVA)で充填したフレームレス太陽電池モジュールが開示されている。
【0006】
特許文献4には、太陽電池サブモジュールと、太陽電池サブモジュールの受光面を覆うカバーガラスと、太陽電池サブモジュールとカバーガラスの間に充填されると共に、太陽電池サブモジュールとカバーガラスとを接着保持する充填材と、吸湿性を備える吸着剤とを有し、太陽電池サブモジュールの周端部上面とカバーガラスの間に吸着剤が設置されている太陽電池モジュールが開示されている。
特許文献5には、フレームレス太陽電池モジュールの端部のシール構造で、シール材がポリイソブチレン/ブチルゴム、金属水酸化物を含有するものが開示されている。
【0007】
特許文献6には、太陽電池パネルを備え、同一サイズの表面保護層、裏面保護層で周縁端の外側をホットメルト接着剤で被覆したフレームレス太陽電池モジュールが開示されている。
特許文献6の太陽電池パネルは、太陽電池素子と、太陽電池素子の表面側に配置され太陽電池素子を保護する表面保護部と、太陽電池素子の裏面側に配置され太陽電池素子を保護する裏面保護部とを備えており、表面保護部の端面および裏面保護部の端面が構成する周縁端に接着された周縁端被覆部を備える。周縁端被覆部は、ホットメルト接着剤で構成されている。
【0008】
特許文献7には、耐候性保護フィルムと、紫外線カットフィルムと、ガスバリアフィルムと、ゲッター材フィルムと、封止材と、太陽電池素子と、封止材と、ゲッター材フィルムと、ガスバリアフィルムと、バックシートとをこの順に備え、更に、耐候性保護フィルム1とバックシートの縁部をシールするシール材を備えている薄膜太陽電池が開示されている。特許文献7の薄膜太陽電池では、耐候性保護フィルムが形成された側(図中下方)から光が照射されて、太陽電池素子が発電するようになっている。
特許文献7において、ゲッター材フィルムは水分および/または酸素を吸収するフィルムである。太陽電池素子の構成部品のなかには前記のように水分で劣化するものがあり、また、酸素によって劣化するものもある。そこで、ゲッター材フィルムで太陽電池素子を覆うことにより、太陽電池素子等を水分および/または酸素から保護し、発電能力を高く維持するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3785263号公報
【特許文献2】特開平9−331079号公報
【特許文献3】特開2008−288547号公報
【特許文献4】特開2009−188357号公報
【特許文献5】特開2010−171400公報
【特許文献6】特開2010−192748号公報
【特許文献7】特開2010−21498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1においては、周縁部の裏面保護層、バックシートをシリコーン樹脂で覆っているがシール性が低く(WVTR10〜50)、CISまたはCIGS系太陽電池モジュールでは不充分である。
特許文献2においては、シール性が低く、CISまたはCIGS系太陽電池モジュールでは不充分である。特許文献3においては、接着層を直接周縁シールに使った場合、透湿性が高い(WVTR>1)ので水分をシールすることができない。
また、特許文献4では、表面保護層として3.2mm厚の強化ガラスを使用した場合、7.5kg/mとなり、太陽電池モジュールの重量が重くなってしまう。
特許文献5においては、表裏保護層共にガラスの構造であり、特許文献4と同様に軽量化が図れない。特許文献6では、表裏保護層の外側に周縁シールがあることにより、フレームレス太陽電池モジュールの機械的強度、外環境の影響を受けやすい等、信頼性に関わる不具合が発生しやすい。
さらには、特許文献7においても、耐候性保護フィルムとバックシートの縁部をシールするシール材を備えるものの、このシール材では、十分な水分のシール効果を得ることができない。
【0011】
ここで、20〜30年の長期信頼性を有する太陽電池モジュールに必要とされる特性としては、太陽電池自体の光電変換効率が高いことは勿論であるが、耐候性、耐熱性、難燃性、耐水性、耐湿性、耐風圧性、耐降雹性、その他の諸特性に優れていることである。また太陽電池モジュール、パネル自体の低価格化とともに設置するための工事費の低減も必要である。従来の強化ガラスを表面保護層に使った重量の重い太陽電池パネル、モジュールでは、一般住宅やスレート屋根等に固定するためには補強工事等のコストもかかり、全体コストを低減するためには軽量化され、アルミフレームを使わない、高信頼性のフレームレス太陽電池モジュールの実現が望まれている。
【0012】
本発明の目的は、前記従来技術に基づく問題点を解消し、長期間にわたって、所定の性能を発揮し、安定して用いることのできる軽量で安価なフレームレス太陽電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、接着充填材で封止された太陽電池サブモジュールの表面側に表面保護層が設けられ、前記太陽電池サブモジュールの裏面側に裏面保護層が設けられたフレームレス太陽電池モジュールであって、前記裏面保護層と前記接着充填材との間にバックシートが設けられており、吸着剤を含有するシール材からなる周縁シールが前記表面保護層および前記裏面保護層の内側、かつ前記接着充填材および前記バックシートの外側に設けられていることを特徴とするフレームレス太陽電池モジュールを提供するものである。
例えば、前記表面保護層と前記接着充填材との間に水蒸気バリアフィルムが設けられており、前記周縁シールは、前記接着充填材、前記水蒸気バリアフィルムおよび前記バックシートの外側に設けられている。
【0014】
本発明の第2の態様は、接着充填材で封止された太陽電池サブモジュールの表面側にプラスチックシートからなる表面保護層が設けられ、前記太陽電池サブモジュールの裏面側に裏面保護層が設けられたフレームレス太陽電池モジュールであって、前記表面保護層と前記接着充填材との間に水蒸気バリアフィルムが設けられ、前記裏面保護層と前記接着充填材との間にバックシートが設けられており、吸着剤を含有するシール材からなる周縁シールは、前記表面保護層と前記水蒸気バリアフィルムの積層体および前記裏面保護層の内側、かつ前記接着充填材および前記バックシートの外側に設けられていることを特徴とするフレームレス太陽電池モジュールを提供するものである。
【0015】
また、前記表面保護層は、プラスチックシート、または厚さが0.8〜2.0mmの青板ガラスもしくは白板ガラスで構成されることが好ましい。
さらに、前記裏面保護層は、金属シートで構成されることが好ましい。
さらにまた、前記太陽電池サブモジュールは、光吸収層がCIS膜またはCIGS膜で構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、軽量、かつ低コスト、特に水分シール性に配慮した高信頼性のフレームレス太陽電池モジュールを実現することができる。これにより、フレームレス太陽電池モジュールを長期間にわたって、所定の性能を発揮し、安定して用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)は、本発明の第1の実施形態のフレームレス太陽電池モジュールを示す模式的断面図であり、(b)は、図1(a)のフレームレス太陽電池モジュールの真空ラミネート前の各部材の配置状態を示す模式的断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態のフレームレス太陽電池モジュールに用いられる太陽電池サブモジュールの一例を示す模式的断面図である。
【図3】(a)は、本発明の第2の実施形態のフレームレス太陽電池モジュールを示す模式的断面図であり、(b)は、図3(a)のフレームレス太陽電池モジュールの真空ラミネート前の各部材の配置状態を示す模式的断面図である。
【図4】(a)は、本発明の第3の実施形態のフレームレス太陽電池モジュールを示す模式的断面図であり、(b)は、図4(a)のフレームレス太陽電池モジュールの真空ラミネート前の各部材の配置状態を示す模式的断面図である。
【図5】比較例1のフレームレス太陽電池モジュールを示す模式的断面図である。
【図6】従来の第1のフレームレス太陽電池モジュールを示す模式的断面図である。
【図7】従来の第2のフレームレス太陽電池モジュールを示す模式的断面図である。
【図8】従来の第3のフレームレス太陽電池モジュールを示す模式的断面図である。
【図9】従来の第4のフレームレス太陽電池モジュールを示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明のフレームレス太陽電池モジュールを詳細に説明する。
図1(a)は、本発明の第1の実施形態のフレームレス太陽電池モジュールを示す模式的断面図であり、図1(b)は、図1(a)のフレームレス太陽電池モジュールの真空ラミネート前の各部材の配置状態を示す模式的断面図である。
【0019】
図1(a)に示すように、フレームレス太陽電池モジュール10は、アルミニウム製等の外枠が設けられていない、いわゆるフレームレスタイプのものである。
このフレームレス太陽電池モジュール10(以下、単に太陽電池モジュール10という)においては、太陽電池サブモジュール12の裏面12bに、太陽電池サブモジュール12を覆うようにして第2の接着充填材14が設けられている。この第2の接着充填材14下にバックシート16が設けられ、このバックシート16の下に第2の接着剤層18が設けられている。この第2の接着剤層18の下に裏面保護層20が設けられている。このように、第2の接着充填層14を介して裏面保護層20が設けられている。
なお、太陽電池サブモジュール12の裏面12bとは、太陽電池サブモジュール12において光吸収層が形成されていない側の面のことである。太陽電池サブモジュール12の表面12aとは、太陽電池サブモジュール12において光吸収層が形成されている側の面のことである。
【0020】
太陽電池サブモジュール12の表面12aに、太陽電池サブモジュール12を覆うようにして第1の接着充填材22が設けられている。この第1の接着充填材22上に水蒸気バリアフィルム24が設けられている。
水蒸気バリアフィルム24上に第1の接着充填層26が設けられており、この第1の接着充填層26上に表面保護層28が設けられている。このように、第1の接着充填層26を介して表面保護層28が設けられている。
太陽電池サブモジュール12は、第1の接着充填材22および第2の接着充填材14により封止されている。
【0021】
表面保護層28の裏面28bと裏面保護層20の表面20aと接するように、かつ表面保護層28と裏面保護層20からはみ出すことなく、更には第1の接着充填層26、水蒸気バリアフィルム24、第1の接着充填材22、第2の接着充填材14、バックシート16および第2の接着充填層18の外側に、これらの周囲を囲むようにして周縁シール30が設けられている。
【0022】
本実施形態の太陽電池モジュール10は、図1(b)に示すように各部材を積層して配置した状態で、例えば、昇降手段、緩衝板、および加熱手段を有する真空ラミネーターを用いて、例えば、温度130〜150℃で、真空/プレス/保持のトータル15〜30分の条件で真空ラミネートをすることにより、図1(a)に示す太陽電電池モジュール10を作製することができる。
【0023】
具体的には、表面保護層28を下にして、表面保護層28の裏面28bの周縁の4辺に周縁シール30を貼る。次に、周縁シール30よりも内側に第1の接着充填層26、水蒸気バリアフィルム24、第1の接着充填材22、太陽電池サブモジュール12、第2の接着充填材14、バックシート16、第2の接着充填層18を積層させ、最後に周縁が周縁シール30外側にくるように裏面保護層20を積層する。すなわち、最後に周縁シール30の外側と裏面保護層20の周縁を一致させ、かつ重なるように裏面保護層20を積層する。なお、水蒸気バリア層24bが太陽電池サブモジュール12側になるように水蒸気バリアフィルム24が配置されている。このようにして、図1(b)に示す積層状態とする。そして、真空ラミネーターでラミネートする。
次に、例えば、裏面保護層20の裏面に取り出した配線(図示せず)を接続箱(図示せず)の電極に半田付けする。これにより、図1(a)に示す太陽電電池モジュール10を作製することができる。
【0024】
なお、本実施形態においては、表面保護層28の表面28a上に、後述するフッ素系透明樹脂フィルムを積層して配置し、この状態で真空ラミネートをして、太陽電電池モジュールを作製することもできる。
【0025】
図1(a)に示す太陽電池モジュール10において、太陽電池サブモジュール12は、図3に示すように、光電変換素子である太陽電池セル40の集積構造体のことである。なお、太陽電池セル40が1つのものも太陽電池サブモジュールに含まれる。太陽電池サブモジュール12の具体例は、後に詳細に説明する。
【0026】
第1の接着充填材22および第2の接着充填材14は、太陽電池サブモジュール12を封止するものである。第1の接着充填材22および第2の接着充填材14には、例えば、アイオノマー樹脂、EVA(エチレンビニルアセテート)、PVB(ポリビニルブチラール)、PE(ポリエチレン)、オレフィン系接着材、ポリウレタン系接着材等を用いることができる。これ以外にも、公知の太陽電池モジュールにおいて封止材として用いられるものが各種利用可能である。なお、熱可塑性オレフィン系重合体樹脂および熱可塑性ポリウレタン系樹脂は接着性に優れているため第1の接着充填材22および第2の接着充填材14として好ましい。
接着性向上のため、被接着体にプライマーを塗布しておくか、またはコロナ処理を施すことにより、第1の接着充填材22および第2の接着充填材14との接着性を強化することができる。
【0027】
バックシート16は、太陽電池モジュール10を裏側から、水分浸入阻止、絶縁性保持、機械的衝撃等保護するものである。
バックシート16には、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PVF(ポリフッ化ビニル)等の樹脂フィルムでアルミニウム箔を挟んだ積層構造のものが用いられるが、その構成については、特に限定されるものではない。
バックシート16としては、上述の樹脂フィルムでアルミニウム箔を挟んだ積層構造のフィルムに限定されるものではなく、これ以外にも、公知の太陽電池モジュールにおいて、バックシート16として用いられているものが各種利用可能である。
【0028】
第2の接着充填層18は、バックシート16と裏面保護層20との接着するためのものである。この第2の接着充填層18は、例えば、第1の接着充填材22および第2の接着充填材14と同じものを用いることができる。このため、詳細な説明は省略する。
なお、第2の接着充填層18においても、熱可塑性オレフィン系重合体樹脂および熱可塑性ポリウレタン系樹脂は接着性に優れているため最適である。
【0029】
裏面保護層20は、太陽電池モジュール10を裏側から保護するものである。
裏面保護層20は、例えば、ガルバリウム鋼板、アルミニウム板、アルミニウム合金板、ステンレス鋼板、アルミニウムとステンレス鋼のクラッド鋼板等の金属板等を用いることができる。裏面保護層20の厚さは、0.3〜1.0mmである。
裏面保護層20としては、上記以外にも、公知の太陽電池モジュールにおいて用いられているものが各種利用可能である。裏面保護層20としては、特に、軽量化のために鋼板ではなく、ゴム系シート、またはプラスチック樹脂ハニカム構造体、またはガラス繊維材もしくはカーボン繊維材を含有したプラスチック樹脂(GFRP(ガラス繊維複合材)、CFRP(カーボン繊維複合材))等を使うことも可能である。
【0030】
水蒸気バリアフィルム24は、太陽電池サブモジュール12を水分から保護するためのものである。
水蒸気バリアフィルム24としては、特に、水蒸気透過率が1×10−2(g/(m・day))以下の水蒸気バリアフィルムが好ましく利用される。このような水蒸気バリアフィルム24を用いることにより、より確実に長期にわたって太陽電池モジュール10の水分による劣化を防止できる。
【0031】
水蒸気バリアフィルム24は、例えば、基材24aに水蒸気バリア層24bが形成されたものである。この水蒸気バリアフィルム24は、水蒸気バリア層24bを太陽電池サブモジュール12に向けた配置される。
基材24bには、例えば、厚さが50〜100μm程度のPETフィルム、PENフィルム等の各種の樹脂フィルム(プラスチックフィルム)が用いられる。
水蒸気バリア層24bは、例えば、水蒸気バリア性(ガスバリア性)を発現する無機化合物の層(以下、無機層ともいう)により構成される。
なお、水蒸気バリアフィルム24において、必要な透明性を確保することができれば、水蒸気バリアフィルム24の表面および裏面の少なくとも一方に、密着層、平坦化層、反射防止層等の各種の機能を発現する層が1層以上、形成されていてもよい。
【0032】
水蒸気バリアフィルム24において、水蒸気バリア性を発現する無機化合物は、例えば、ダイヤモンド様化合物、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属酸化窒化物または金属酸化炭化物である。また、上記無機化合物は、例えば、ダイヤモンド様炭素(DLC)、ケイ素を含むダイヤモンド様炭素、Si、Al、In、Sn、Zn、Ti、Cu、CeもしくはTaから選ばれる1種以上の金属を含む酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、または酸化炭化物等が例示される。
これらの中でも、Si、Al、In、Sn、Zn、およびTiから選ばれる金属の酸化物、窒化物または酸化窒化物が好ましく、特に、SiもしくはAlの金属酸化物、窒化物または酸化窒化物が好ましい。
これらの無機層は、例えば、プラズマCVD法、スパッタリング法等によって成膜される。
【0033】
また、水蒸気バリアフィルム24としては、例えば、PETフィルム、PENフィルム等の各種の樹脂フィルムの基材24a上に下地層としての有機化合物の層(以下、有機層ともいう)を形成され、この有機層上に、上述の無機層が形成された構成でもよい。このような構成の水蒸気バリアフィルム24によれば、より高い水蒸気バリア性を得ることができる。
【0034】
なお、下地層となる有機化合物としては、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル、メタクリル酸―マレイン酸共重合体、ポリスチレン、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、セルロースアシレート、ポリウレタン、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、フルオレン環変性ポリカーボネート、脂環変性ポリカーボネート、またはフルオレン環変性ポリエステル等が例示される。これらのうち、特に、アクリル樹脂およびメタクリル樹脂が好ましい。
このような有機層は、例えば、ロールコート法、スプレーコート法などの公知の塗布手段を用いる塗布法、フラッシュ蒸着法等によって成膜される。
【0035】
第1の接着充填層26は、水蒸気バリアフィルム24と表面保護層28とを接着するためのものである。この第1の接着充填層26は、例えば、第1の接着充填材22および第2の接着充填材14と同じものを用いることができる。このため、詳細な説明は省略する。なお、第1の接着充填層26においては、熱可塑性ポリウレタン樹脂等が好ましい。
【0036】
表面保護層28は、太陽電池モジュール10を屋外に設置した場合、雨、雹、あられ、雪、石等がぶつかることがあるが、これらによって外部から加わる外力、衝撃等から太陽電池サブモジュール12を保護するものである。また、表面保護層28は、汚れ等から太陽電池モジュール10を保護するとともに、汚れ等による太陽電池サブモジュール12への入射光量の低下を抑制するものである。
【0037】
表面保護層28は、例えば、プラスチックシートにより構成されるものであり、上述のことから、透明性、耐候性、耐熱性、難燃性、耐水性、耐湿性、耐風圧性、耐降雹性、耐薬品性その他の諸特性に優れていることが必要である。この表面保護層28は、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂もしくはメタクリル樹脂、またはこれらの積層体により構成されるものである。表面保護層28においては、耐候性としてUV光による構造劣化、黄変があるがUV吸収剤をこれらの樹脂に混ぜることで改善することができる。さらに、耐擦傷性を保有させるために、表面保護層28の表面にハードコート層として無機コート層を設けてもよい。
なお、表面保護層28の厚さ(プラスチックシートの厚さ)は、例えば、0.5〜2.5mmであり、好ましくは1.0〜2.0mmである。
表面保護層28の厚さが0.5mm未満では、外部から加わる外力、衝撃等から太陽電池サブモジュール12を十分に保護することができない。一方、表面保護層28の厚さが2.5mmを超えると、真空ラミネート時に上下方向で温度分布が大きくなり、表面保護層28が反ってしまうことがある。また、材料コストからも薄いほうが望ましい。
【0038】
また、太陽電池モジュール10の耐熱性、難燃性を強化するために、表面保護層28の表面28aに、難燃性のETFE(テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン),PTFE(ポリテトラフルオロエチレン),FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)等のフッ素系透明樹脂フィルムを接着させた複合フィルムとしてもよい。この場合、例えば、フッ素系透明樹脂フィルムは接着充填層を介して設ける。また、表面保護層28を構成するプラスチックシート上に共押出法等によりフッ素系透明樹脂フィルムを一体シートにしてもよい。なお、フッ素系樹脂フィルムは、例えば、厚さが20〜500μmである。
【0039】
周縁シール30は、太陽電池モジュール10の周縁からの水分浸入を抑制し、太陽電池モジュール10の性能低下を防止するものである。特に、CISまたはCIGS等を光吸収層に用いた太陽電池サブモジュール12では、水分により性能劣化しやすいが、これを抑制することができる。
周縁シール30は、吸着剤を含有するものである。この周縁シール30は、粘着材、吸着剤、軟化材、加硫材、劣化防止剤、可塑剤等からなる。
粘着材としては、例えば、ポリイソブチレン、ブチルゴム等のブチル系ゴム、ポリオレフィン等が用いられる。
【0040】
吸着剤としては、例えば、水分吸着能と共に、吸着後も固体状態を維持するものが好適であり、高吸水性ポリマー、無機多孔質材料、アルカリ土類金属酸化物、硫酸塩等を用いることができる。
高吸水性ポリマーとしては、例えば、ビニルアルコール(CHCHOH)、アクリル酸(CHCHOOH)、アクリル酸ナトリウム(CHCOO−Na)、アクリル酸カリウム(CHCOO−K)、メタクリル酸(CHC(CH)COOH)、メタクリル酸ナトリウム(CHC(CH)COO−Na)をモノマーとするポリマー、コポリマー、ターポリマー等が用いられる。
無機多孔質材料としては、例えば、ゼオライト、シリカゲル、カオリン等がある。アルカリ土類金属酸化物としては酸化カルシウム(CaO)、酸化バリウム(BaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ストロンチウム(SrO)、タルク等が用いられる。
硫酸塩としては、例えば、硫酸リチウム(LiSO)、硫酸ナトリウム(NaSO)、硫酸カルシウム(CaSO)、硫酸マグネシウム(MgSO)、硫酸コバルト(CoSO)等が用いられる。
【0041】
これらの吸着剤を含有する周縁シール30においては、水蒸気透過率(WVTR)としては、0.01(g/(m・day))以下であることが望ましい。また、ガラス、金属層、プラスチックシートとの接着性が大きいことが高信頼性太陽電池モジュールとして必要であり、周縁シール30は、90°剥離法による接着力が0.5N/mm以上であることが望ましい。
【0042】
次に、本実施形態の太陽電池サブモジュール12について、図2を参照して詳細に説明する。
図2に示すように、太陽電池サブモジュール12は、基板50の上に、下部電極32、光吸収層34、バッファ層36、および上部電極38からなる太陽電池セル40を、複数、直列接合してなるものである。この太陽電池セル(光電変換素子)40は、光吸収層34としてCIGSの半導体化合物を用いるものである。太陽電池サブモジュール12は、第1の導電部材42と、第2の導電部材44とを有する。
【0043】
太陽電池サブモジュール12において、基板50は、基材52と、Al(アルミニウム)層54と、絶縁層56とから構成されるフレキシブル基板である。
基材52とAl層54とは、一体的に形成されている。さらに、絶縁層56は、Al層54の表面を陽極酸化してなる、Alのポーラス構造の陽極酸化膜である。なお、基材52とAl層54とが積層されて一体化されたクラッド基板を金属基板55という。
【0044】
本発明の太陽電池サブモジュール12においては、基板50を構成する(金属)基材52として、軟鋼、耐熱鋼、またはステンレス鋼が用いられる。
また、基材52の厚さにも、特に限定はないが、可撓性と強度(剛性)とのバランス、ハンドリング性等を考慮すると、10〜1000μmであるのが好ましい。
【0045】
Al層54は、Alを主成分とする層で、AlやAl合金が、各種、利用可能である。特に、不純物の少ない、99質量%以上の純度のAlであることが好ましい。純度としては、例えば、99.99質量%Al、99.96質量%Al、99.9質量%Al、99.85質量%Al、99.7質量%Al、99.5質量%Al等が好ましい。
また、高純度Alではなくても、工業用Alも利用可能である。工業用Alを用いることにより、コストの点で有利である。ただし、絶縁層56の絶縁性の点で、Al中にSiが析出していないことが重要である。
【0046】
Al層54の厚さは、特に限定はなく、適宜、選択できるが、太陽電池サブモジュール12となった状態において、0.1μm以上であり、かつ基材52の厚さ以下であるのが好ましい。
なお、Al層54は、Al表面の前処理、陽極酸化による絶縁層56の形成、光吸収層34の成膜時のAl層54と基材52との面における金属間化合物の生成等によって、厚さが、減少する。従って、後述するAl層54の形成時における厚さは、これらに起因する厚さ減少を加味して、太陽電池サブモジュール12となった状態で、基材52と絶縁層56との間にAl層54が残存している厚さとすることが、重要である。このため、Al層54の厚さとしては、陽極酸化による絶縁層を形成するため10〜50μm必要とされる。
【0047】
Al層54の上(基材52と反対側面)には、絶縁層56が形成される。絶縁層56は、Al層54の表面を陽極酸化してなる、Alの陽極酸化膜である。
ここで、絶縁層56は、Alを陽極酸化してなる各種の陽極酸化膜が利用可能であるが、ポーラス型の陽極酸化膜であることが好ましい。この陽極酸化膜は、数10nmの細孔を有する酸化アルミナ被膜であり、被膜ヤング率が低いことにより、曲げ耐性や高温時の熱膨張差により生じるクラック耐性が高いものとなる。
【0048】
絶縁層56の厚さは2μm以上が好ましく、5μm以上が更に好ましい。絶縁層56の厚さが過度に厚い場合、可撓性が低下すること、および絶縁層56の形成に要するコスト、時間がかかるため好ましくない。現実的には、絶縁層56の厚さは、最大50μm以下、好ましくは30μm以下である。このため、絶縁層56の好ましい厚さは、2〜50μmである。
【0049】
本実施形態の太陽電池モジュール10はリジッド型であるが、太陽電池サブモジュール12にフレキシブル基板を用い、例えば、厚さ50〜200μmの金属基板55上に、陽極酸化により複数の細孔を有する絶縁層56(絶縁性酸化膜)が形成されたものであり、高い絶縁性が確保されている。
本実施形態の太陽電池サブモジュール12に用いられる基板50は、Al層54を陽極酸化して絶縁層56を形成した後、特定の封孔処理をしてもよい。その製造工程には、必須の工程以外の各種の工程が含まれていてもよい。例えば、付着している圧延油を除く脱脂工程、Al層54の表面のスマットを溶解するデスマット処理工程、Al層54の表面を粗面化する粗面化処理工程、Al層54の表面に陽極酸化皮膜を形成させる陽極酸化処理工程および陽極酸化皮膜のマイクロポアを封孔する封孔処理を経て基板50とすることが好ましい。
【0050】
なお、基板50は、基材52、Al層54および絶縁層56の全てを、可撓性を有するもの、すなわち、フレキシブルなものとすることにより、基板50全体として、フレキシブルなものになる。これにより、例えば、ロールツーロール方式で、基板50の絶縁層56側に、後述するアルカリ供給層、下部電極、光吸収層、上部電極等を形成することができる。
本発明においては、1回のロール巻出から巻取までの間に、複数の層を連続して製膜することにより太陽電池構造を作製してもよいし、ロール巻出、製膜、巻取の工程を複数回行うことによって太陽電池構造を形成してもよい。また、後述するように各製膜工程の合間に素子を分離、集積させるためのスクライブ工程をロールツーロール方式での製造に加えることで複数の太陽電池セル40を電気的に直列接続させた太陽電池サブモジュールを作製することができる。
【0051】
本発明においては、基材52の一面のみにAl層54および絶縁層56を形成するのに限定はされず、基材52の両面に、Al層54および絶縁層56を形成したものを基板としてもよく、Al層が単層、すなわち、Al基板に上述の陽極酸化膜により構成される絶縁層が設けられたものであってもよい。
なお、金属基板としては、陽極酸化により金属基板表面上に生成する金属酸化膜が絶縁体である材料を利用することができる。このため、アルミニウム(Al)以外にも、具体的には、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、マグネシウム(Mg)、銅(Cu)、ニオブ(Nb)およびタンタル(Ta)等、並びにそれらの合金を用いることができる。コストや太陽電池モジュールに要求される特性の観点から、アルミニウムが最も好ましい。
また、耐熱性向上のために軟鋼、ステンレス鋼等の鉄鋼板上に上記金属の層を圧延または溶融メッキにより形成した所謂、クラッド材であっても良い。
【0052】
ここで、絶縁層56(基板50)と下部電極32との間、すなわち、絶縁層56の表面56aにアルカリ供給層58(光吸収層34へのアルカリ金属の供給源)が形成されている。
アルカリ金属(特にNa)が、CIGSからなる光吸収層34に拡散されると光電変換効率が高くなることが知られている。
このアルカリ供給層58は、光吸収層34にアルカリ金属を供給するための層であり、アルカリ金属を含む化合物の層である。本発明においては、絶縁層56と下部電極32との間に、このようなアルカリ供給層58を有することにより、光吸収層34の成膜時に、下部電極32を通してアルカリ金属が光吸収層34に拡散し、光吸収層34の変換効率を向上することができる。
【0053】
アルカリ供給層58には、限定はなく、NaO2、Na2S、Na2Se、NaCl、NaF、モリブデン酸ナトリウム塩など、アルカリ金属を含む化合物(アルカリ金属化合物を含む組成物)を主成分とするものが、各種、利用可能である。特に、SiO2(酸化ケイ素)を主成分としてNaO2(酸化ナトリウム)を含む化合物であるのが好ましい。
なお、SiOとNaOの化合物は、耐湿性に乏しく、Na成分が分離して炭酸塩になり易いので、Caを添加した金属成分はSi−Na−Caの3成分とした酸化物がより好ましい。
【0054】
なお、本発明においては、光吸収層34へのアルカリ金属供給源は、アルカリ供給層58のみに限定はされない。
例えば、絶縁層56が、前述のポーラス型の陽極酸化膜である場合には、アルカリ供給層58に加え、絶縁層56のポーラスの中にもアルカリ金属を含む化合物を導入して、光吸収層34へのアルカリ金属供給源としてもよい。あるいは、特にアルカリ供給層58を有さず、絶縁層56のポーラスの中のみにアルカリ金属を含む化合物を導入して、光吸収層34へのアルカリ金属供給源としてもよい。
一例として、スパッタリングによってアルカリ供給層58を成膜した場合には、絶縁層56中にはアルカリ金属を含む化合物が存在しない、アルカリ供給層58のみを成膜することができる。また、絶縁層56はポーラス型陽極酸化膜であり、かつ、アルカリ供給層58をゾルゲル反応や珪酸Na水溶液の脱水乾燥によって成膜した場合には、アルカリ供給層58のみならず、絶縁層56のポーラス層中にもアルカリ金属を含む化合物を導入して、絶縁層56およびアルカリ供給層58の両者を、光吸収層34へのアルカリ金属供給源とすることができる。
【0055】
太陽電池サブモジュール12において、下部電極32は、隣り合う下部電極32と所定の間隙33を設けて配列されて、アルカリ供給層58の上に形成されている。また、各下部電極32の間隙33を埋めつつ、光吸収層34が下部電極32の上に形成されている。この光吸収層34の表面にバッファ層36が形成されている。
光吸収層34とバッファ層36とは、下部電極32の上で、所定の間隙37を設けて配列される。なお、下部電極32の間隙33と、光吸収層34(バッファ層36)との間隙37は、太陽電池セル40の配列方向の異なる位置に形成される。
【0056】
さらに、光吸収層34(バッファ層36)の間隙37を埋めるように、バッファ層36の表面に上部電極38が形成されている。
上部電極38、バッファ層36および光吸収層34は、所定の間隙39を設けて、配列される。また、この間隔39は、前記下部電極32の間隙と、光吸収層34(バッファ層36)との間隙とは異なる位置に設けられる。
太陽電池サブモジュール12において、各太陽電池セル40は、下部電極32と上部電極38により、基板50の長手方向(矢印L方向)に、電気的に直列に接続されている。
【0057】
下部電極32は、例えば、Mo電極で構成される。光吸収層34は、光電変換機能を有する半導体化合物、例えば、CIS膜、CIGS膜で構成される。さらに、バッファ層36は、例えば、CdSで構成され、上部電極38は、例えば、ZnOで構成される。
なお、太陽電池セル40は、基板50の長手方向Lと直交する幅方向に長く伸びて形成されている。このため、下部電極32等も基板50の幅方向に長く伸びている。
【0058】
図2に示すように、右端の下部電極32上に第1の導電部材42が接続されている。この第1の導電部材42は、後述する負極からの出力を外部に取り出すためのものである。
第1の導電部材42は、例えば、細長い帯状の部材であり、基板50の幅方向に略直線状に伸びて、右端の下部電極32上に接続されている。また、図2に示すように、第1の導電部材42は、例えば、銅リボン42aがインジウム銅合金の被覆材42bで被覆されたものである。この第1の導電部材42は、例えば、超音波半田により下部電極32に接続される。あるいは第1の導電部材42は、銅箔にIn−Snを溶融メッキし、エンボス構造を有する導電テープであってもよく、この導電テープはローラーによる圧着により下部電極32に貼り合せることにより接続される。
【0059】
他方、左端の下部電極32上には、第2の導電部材44が形成される。
第2の導電部材44は、後述する正極からの出力を外部に取り出すためのもので、第1の導電部材42と同様に細長い帯状の部材であり、基板50の幅方向に略直線状に伸びて、左端の下部電極32に接続されている。
第2の導電部材44は、第1の導電部材42と同様の構成のものであり、例えば、銅リボン44aがインジウム銅合金の被覆材44bで被覆されたものであるが、第1の導電部材42と同様に導電テープにより接続してもよい。
【0060】
なお、本実施形態の太陽電池セル40の光吸収層34は、CIGSで構成されており、公知のCIGS系の太陽電池の製造方法により製造することができる。
【0061】
太陽電池サブモジュール12では、太陽電池セル40に、上部電極38側から光が入射されると、この光が上部電極38およびバッファ層36を通過し、光吸収層34で起電力が発生し、例えば、上部電極38から下部電極32に向かう電流が発生する。なお、図2に示す矢印は、電流の向きを示すものであり、電子の移動方向は、電流の向きとは逆になる。このため、光電変換部48では、図2中、左端の下部電極32が正極(プラス極)になり、右端の下部電極32が負極(マイナス極)になる。
【0062】
本実施形態において、太陽電池サブモジュール12で発生した電力を、第1の導電部材42と第2の導電部材44から、太陽電池サブモジュール12の外部に取り出すことができる。
なお、本実施形態において、第1の導電部材42が負極であり、第2の導電部材44が正極である。また、第1の導電部材42と第2の導電部材44とは極性が逆であってもよく、太陽電池セル40の構成、太陽電池サブモジュール12構成等に応じて、適宜変わるものである。
また、本実施形態においては、各太陽電池セル40を、下部電極32と上部電極38により基板50の長手方向Lに直列接続されるように形成したが、これに限定されるものではない。例えば、各太陽電池セル40が、下部電極32と上部電極38により幅方向に直列接続されるように、各太陽電池セル40を形成してもよい。
【0063】
太陽電池セル40において、下部電極32および上部電極38は、いずれも光吸収層34で発生した電流を取り出すためのものである。下部電極32および上部電極38は、いずれも導電性材料からなる。光入射側の上部電極38は透光性を有する必要がある。
【0064】
下部電極(裏面電極)32は、例えば、Mo、Cr、またはW、およびこれらを組合わせたものにより構成される。この下部電極32は、単層構造でもよいし、2層構造等の積層構造でもよい。下部電極32は、Moで構成することが好ましい。
下部電極32は、厚さが100nm以上であることが好ましく、0.45〜1.0μmであることがより好ましい。
また、下部電極32の形成方法は、特に制限されるものではなく、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法等の気相成膜法により形成することができる。
【0065】
上部電極(透明電極)38は、例えば、Al、B、Ga、In、Sb等が添加されたZnO、ITO(インジウム錫酸化物)やSnO、および、これらを組合わせたものにより構成される。この上部電極38は、単層構造でもよいし、2層構造等の積層構造でもよい。また、上部電極38の厚さは、特に制限されるものではなく、0.3〜1μmが好ましい。
また、上部電極38の形成方法は、特に制限されるものではなく、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、CVD法等の気相成膜法または塗布法により形成することができる。
【0066】
バッファ層36は、上部電極38の形成時の光吸収層34を保護すること、上部電極38に入射した光を光吸収層34まで透過させるために形成されている。
このバッファ層36は、例えば、CdS、ZnS、ZnO、ZnMgO、またはZnS(O、OH)およびこれらの組合わせたものにより構成される。
バッファ層36は、厚さが、0.03〜0.1μmが好ましい。また、このバッファ層36は、例えば、CBD(ケミカルバス)法により形成される。
【0067】
光吸収層34は、上部電極38およびバッファ層36を通過して到達した光を吸収して電流が発生する層であり、光電変換機能を有する。光吸収層34は、CIGS膜で構成されており、CIGS膜はカルコパイライト結晶構造を有する半導体からなる。CIGS膜の組成は、例えば、Cu(In1-xGax)Se2(CIGS)である。
【0068】
CIGS膜の形成方法としては、1)多源蒸着法、2)セレン化法、3)スパッタ法、4)ハイブリッドスパッタ法、および5)メカノケミカルプロセス法等が知られている。
その他のCIGSの成膜法としては、スクリーン印刷法、近接昇華法、MOCVD法、およびスプレー法(ウェット成膜法)などが挙げられる。例えば、スクリーン印刷法(ウェット成膜法)またはスプレー法(ウェット成膜法)等で、Ib族元素、IIIb族元素、およびVIb族元素を含む微粒子膜を基板上に形成し、熱分解処理(この際、VIb族元素雰囲気での熱分解処理でもよい)を実施するなどにより、所望の組成の結晶を得ることができる(特開平9−74065号公報、特開平9−74213号公報等)。
このような成膜方法は、基板上でCIGSを形成する際にいずれも500℃以上であれば、良好な光電変換効率を示すが、ロールツーロール方式での製造を考慮すると、プロセス時間が短い多源蒸着法が好ましい。とりわけ、バイレイヤー法が好適である。
【0069】
前述のように、本発明の太陽電池サブモジュール12は、前述の基板50の上に、太陽電池セル40を直列接合して作製して、製造するが、その製造方法は、公知の各種の太陽電池と同様に行えばよい。
以下、図2に示す太陽電池サブモジュール12の製造方法の一例を説明する。
【0070】
まず、上述のようにして形成された基板50を用意する。次に、基板50の絶縁層56の表面に、例えば、ソーダ石灰ガラスをターゲットとして用いるスパッタリングや、SiおよびNaを含むアルコキシドからを用いたゾルゲル法によって、アルカリ供給層58を成膜する。
次に、アルカリ供給層58の表面に下部電極32となるMo膜を、例えば、成膜装置を用いて、スパッタ法により形成する。
次に、例えばレーザースクライブ法を用いて、Mo膜の所定位置をスクライブして、基板50の幅方向に伸びた間隙33を形成する。これにより、間隙33により互いに分離された下部電極32が形成される。
【0071】
次に、下部電極32を覆い、かつ間隙33を埋めるように、光吸収層34(p型半導体層)として、CIGS膜を形成する。このCIGS膜は、前述の何れか成膜方法により、形成される。
次に、光吸収層34(CIGS膜)上にバッファ層36となるCdS層(n型半導体層)を、例えば、CBD(ケミカルバス)法により形成する。これにより、pn接合半導体層が構成される。
次に、間隙33とは太陽電池セル40の配列方向に異なる所定位置を、例えばレーザースクライブ法を用いてスクライブして、基板50の幅方向に伸びた、下部電極32にまで達する間隙37を形成する。
【0072】
次に、バッファ層36上に、間隙37を埋めるように、上部電極38となる、例えば、ITO層、Al、B、Ga、Sb等が添加されたZnO層を、スパッタ法や塗布法により形成する。
次に、間隙33および37とは、太陽電池セル40の配列方向に異なる所定位置を、例えばレーザースクライブ法を用いてスクライブして、基板50の幅方向に伸びた、下部電極32にまで達する間隙39を形成する。これにより、太陽電池セル40が形成される。
【0073】
次に、基板50の長手方向Lにおける左右側の端の下部電極32上に形成された各太陽電池セル40を、例えば、レーザースクライブまたはメカニカルスクラブにより取り除いて、下部電極32を表出させる。次に、右側の端の下部電極32上に第1の導電部材42を、左側の端の下部電極32上に第2の導電部材44を、例えば、超音波半田を用いて接続する。
これにより、図2に示すように、複数の太陽電池セル40が電気的に直列に接続された太陽電池サブモジュール12を製造することができる。
【0074】
ここで、従来のフレームレス太陽電池サブモジュールの模式的断面図を図6〜図9に示す。
図6〜図9に示すように、従来のフレームレス太陽電池モジュール100〜100cは、太陽電池サブモジュール110が第1の接着充填材102および第2の接着充填材104で封止されており、同一のサイズまたは裏面保護層108を表面保護層106に対して少し小さくした形状で、表面保護層106および裏面保護層108の内側または外側に周縁シール112を設けたものである。
表面保護層106および裏面保護層108は、基本的に強化ガラス、または青板ガラスもしくは白板ガラスにより構成される。また、周縁シール112としては、吸着材を含有するゴム系ポリマー、または接着充填層と同一材を使用している場合もあるが、アルミフレームおよび充填シール材を使わないフレームレス構造では直接、外部環境に晒されており、太陽電池サブモジュール110が、CISまたはCIGS系薄膜太陽電池サブモジュールのような水分により性能劣化し易く、20年以上の長期信頼性を保持するためには吸着材を含有する周縁シールとすることが必要である。
【0075】
図7および図8のフレームレス太陽電池モジュール100a、100bにおいて、裏面保護層108を表面保護層106よりも小さいサイズとしてあるのは、周縁角部の機械的強度を保つためである。図9の太陽電池モジュール100cにおいて、表面保護層106および裏面保護層108の外側に周縁シール112を配置したものでは、機械的強度も弱く、長期的に外環境に晒されると、剥離、耐候性劣化、汚れ等による変質し易い構造になる。更に、内部の接着充填層と同じ封止シート、合成樹脂では透湿率WVTR>1.0と大きく、内部への水分拡散が顕著である。
【0076】
これに対して、図1(a)に示す太陽電池モジュール10においては、太陽電池サブモジュール12への防湿対策としてガラスを表面保護層28に用いておらず、水蒸気バリアフィルム24と、ガラス・ガラスサンドイッチ型のフレームレス太陽電池以外の裏面保護にバックシート16を使用している。水蒸気バリアフィルム24、バックシート16、これらの基材、ベースフィルムとして20〜200μm厚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂フィルム等が用いられ、これらの有機層フィルムの透湿度WVTRは1〜60と高く、これらのフィルムの周縁部が外環境に露出している場合、周縁部よりその基材断面に沿って内部への水分拡散が起こり、太陽電池サブモジュールに対して、水蒸気バリアフィルムでは水蒸気バリア層がまたバックシートではアルミニウム金属箔層がない場合にはこれらの基材断面を通じて拡散してきた水分を阻止できないために、太陽電池性能の劣化を招くこととなる。このため、高信頼性の太陽電池モジュールの構造としては有機層フィルムまたは基材の周縁もシール材でシールすることが重要である。
【0077】
上述の水分拡散に対する対策として、図1(a)に示す本実施形態の太陽電池モジュール10の軽量化のため、表面保護層28としてプラスチックシートを用いた場合には、第1の接着充填層26、水蒸気バリアフィルム24、第1の接着充填材22、第2の接着充填材14、バックシート16および第2の接着充填層18の外側に、これらの周囲を囲むようにして周縁シール30を設け、かつ周縁シール30により表面保護層28と金属層からなる裏面保護層20の間の周縁部を充填する。この周縁シール30により、有機フィルム周縁および有機フィルム断面部への水分拡散が阻止される。
このように、本実施形態においては、上述の有機層を通じた水分の内部拡散を抑制することが可能となり、高信頼性を保持することができる。これにより、特に水分シール性に配慮した高信頼性のフレームレス太陽電池モジュール10を実現することができる。
さらには、表面保護層28としてプラスチックシートを用いており、軽量化でき、さらには、外枠を設けていないためコストを低くすることができる。
【0078】
次に、第2の実施形態について説明する。
図3(a)は、本発明の第2の実施形態のフレームレス太陽電池モジュールを示す模式的断面図であり、(b)は、図3(a)のフレームレス太陽電池モジュールの真空ラミネート前の各部材の配置状態を示す模式的断面図である。
なお、本実施形態において、図1(a)および(b)に示す第1の実施形態のフレームレス太陽電池モジュール10と同一構成物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0079】
図3(a)に示す本実施形態のフレームレス太陽電池モジュール10a(以下、単に太陽電池モジュール10aという)においては、図1(a)に示す太陽電池モジュール10に比して、表面保護層28がガラスで構成されている点、および水蒸気バリアフィルム24が設けられておらず、第1の接着充填材22に直接表面保護層28が設けられている点が異なり、それ以外の構成は、第1の実施形態の太陽電池モジュール10と同様の構成であるため、その詳細な説明は省略する。
【0080】
本実施形態の太陽電池モジュール10aにおいて、表面保護層28が青板ガラス、白板ガラスまたはガラス表面を化学処理することにより機械的に強化されたガラスで構成されている。表面保護層28を構成する青板ガラスまたは白板ガラスの厚さは、例えば、軽量化のため、0.8〜2.0mmである。ガラス製の表面保護層28の厚さが0.8mm未満では、十分な表面保護の効果が得られにくい。また、ガラス製の表面保護層28が2.0mmを超えると、軽量化の効果が得られにくい。
【0081】
また、本実施形態においては、第1の接着充填材22は、アイオノマー樹脂からなる封止材料からなり、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体との混合物で構成される。具体的には、三井・デユポンケミカル社の製品名ハイミラン−ESが好適な材料である。第1の接着充填材22は、厚さが100〜1500μmであり、望ましくは、厚さが400〜1000μmである。
第1の接着充填材22以外の第2の接着充填材14および第2の接着充填層18は、第1の接着充填材22と同様に、アイオノマー樹脂からなる封止材料であっても良いが、EVA(エチレンビニルアセテート)、PVB(ポリビニルブチラール)、PE(ポリエチレン)、オレフィン系接着材またはポリウレタン系接着材等の封止材も使用できる。
【0082】
太陽電池モジュール10aにおいては、表面保護層28の裏面28bと裏面保護層20の表面20aと接するように、かつ表面保護層28と裏面保護層20の外縁から、はみ出すことなく、更には第1の接着充填材22、第2の接着充填材14、バックシート16および第2の接着充填層18の外側に、これらの周囲を囲むようにして周縁シール30が設けられている。
このように、本実施形態においては、第1の接着充填材22、第2の接着充填材14、太陽電池サブモジュール12、バックシート16および第2の接着充填層18の周縁の外側に周縁シール30が設けられており、この周縁シール30は、表面保護層28と裏面保護層20の間の周縁部を充填している。これにより、各層の周縁および断面部への水分拡散が阻止される。
【0083】
本実施形態においては、表面保護層28をガラスで構成することにより、プラスチックシートとしたものに比して、水蒸気バリアフィルム24を不要とすることができ、構成を簡素化することができる。なお、本実施形態においては、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。本実施例においても、軽量、低コスト、かつ特に水分シール性に配慮した高信頼性のフレームレス太陽電池モジュール10aを実現することができる。
【0084】
本実施形態の太陽電池モジュール10aは、例えば、図3(b)に示すように各部材を積層して配置した状態で、例えば、昇降手段、緩衝板、および加熱手段を有する真空ラミネーターを用いて、例えば、温度130〜150℃で、真空/プレス/保持のトータル15〜30分の条件で真空ラミネートをすることにより、図3(a)に示す太陽電電池モジュール10aを作製することができる。
具体的には、先ず、ガラス製の表面保護層28を下にして、表面保護層28の裏面28bの周縁の4辺に周縁シール30を貼る。次に、周縁シール30よりも内側に第1の接着充填材22、太陽電池サブモジュール12、第2の接着充填材14、バックシート16、第2の接着充填層18を順次積層し、最後に周縁が周縁シール30の外側にくるように裏面保護層20を積層する。すなわち、最後に周縁シール30の外側と裏面保護層20の周縁を一致させ、かつ重なるように裏面保護層20を積層する。このようにして、図3(b)に示す積層状態とする。そして、真空ラミネーターでラミネートする。
次に、例えば、裏面保護層20の裏面に取り出した配線(図示せず)を接続箱(図示せず)の電極に半田付けする。これにより、図3(a)に示す太陽電電池モジュール10aを作製することができる。
【0085】
次に、第3の実施形態について説明する。
図4(a)は、本発明の第3の実施形態のフレームレス太陽電池モジュールを示す模式的断面図であり、(b)は、図4(a)のフレームレス太陽電池モジュールの真空ラミネート前の各部材の配置状態を示す模式的断面図である。
なお、本実施形態において、図1(a)および(b)に示す第1の実施形態のフレームレス太陽電池モジュール10と同一構成物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0086】
図4(a)に示す本実施形態のフレームレス太陽電池モジュール10b(以下、単に太陽電池モジュール10bという)においては、図1(a)に示す太陽電池モジュール10に比して、周縁シール30が、水蒸気バリアフィルム24の水蒸気バリア層24bの下面25と、裏面保護層20の表面20aとの間の周縁部に設けられている点が異なり、それ以外の構成は、第1の実施形態の太陽電池モジュール10と同様の構成であるため、その詳細な説明は省略する。
【0087】
本実施形態の太陽電池モジュール10bは、表面保護層28がプラスチックシートにより構成されるものであり、表面および周縁からの水分拡散が周縁シール30によって阻止され、表面保護層28側の周縁からの水分拡散は水蒸気バリア層24によって阻止される。本実施形態においても、第1の実施形態の太陽電池モジュール10と同様の効果を得ることができる。
【0088】
本実施形態の太陽電池モジュール10bは、例えば、図4(b)に示すように各部材を積層して配置した状態で、例えば、昇降手段、緩衝板、および加熱手段を有する真空ラミネーターを用いて、例えば、温度130〜150℃で、真空/プレス/保持のトータル15〜30分の条件で真空ラミネートをすることにより、図4(a)に示す太陽電電池モジュール10bを作製することができる。
【0089】
具体的には、表面保護層28を下にして、第1の接着充填層26、水蒸気バリアフィルム24を積層する。このとき、水蒸気バリアフィルム24は、表面保護層28側を基材24aとする。
次に、水蒸気バリアフィルム24の水蒸気バリア層24b、周縁の4辺に周縁シール30を貼る。次に、周縁シール30よりも内側に、第1の接着充填材22、太陽電池サブモジュール12、第2の接着充填材14、バックシート16、第2の接着充填層18を積層させ、最後に周縁シール30の外側と裏面保護層20の周縁が一致し、かつ重なるように裏面保護層20を積層する。このようにして、図4(b)に示す積層状態とする。そして、真空ラミネーターでラミネートする。
次に、例えば、裏面保護層20の裏面に取り出した配線(図示せず)を接続箱(図示せず)の電極に半田付けする。これにより、図4(a)に示す太陽電電池モジュール10bを作製することができる。
【0090】
本実施形態においては、水蒸気バリアフィルム24および第1の接着充填層26および表面保護層28の積層体αとすることができる。このため、太陽電池モジュール10bを形成する際に、積層体αを形成しておいて、各部材を積層することにより、各部材の積層を容易にでき、ラミネート工程を簡略化できる。
【0091】
また、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に表面保護層28の表面28a上に、上述のフッ素系透明樹脂フィルムを積層して配置し、この状態で真空ラミネートをして、太陽電電池モジュールを作製することもできる。
【0092】
本発明は、基本的に以上のように構成されるものである。以上、本発明のフレームレス太陽電池モジュールについて詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良または変更をしてもよいのはもちろんである。
【実施例1】
【0093】
以下、本発明のフレームレス太陽電池モジュールについて、より具体的に説明する。
本実施例においては、以下に示す実施例1〜3および比較例1のフレームレス太陽電池モジュールを作製し、その性能を評価した。
【0094】
(実施例1)
サブストレート構造を有する、CIGS膜を光吸収層に用いた太陽電池サブモジュール12を備える図1(a)に示す太陽電池モジュール10を作製した。
実施例1においては、表面保護層28に、FEP(厚さ100μm)、EVA、ポリカーボネート(三菱ガス化学製、UV吸収層付き、サンガードシート 製品名L55、厚さ1.0mm)の3層複合プラスチックシートを用いた。
水蒸気バリアフィルム24には、厚さ100μmPETフィルム(基材24a)に水蒸気バリア層24bとして有機膜およびAl無機膜が積層された、水蒸気透湿率(WVTR)が10−4〜10−5g/(m・day)の性能のものを用いた。
太陽電池サブモジュール12は、SUS−AL基板(アルミニウム−ステンレス鋼のクラッド基板)を陽極酸化させたものを用いたフレキシブルCIGS集積型薄膜太陽電池サブモジュールとした。
バックシート16には、三菱アルミニウムパッケージ社製のPVF/AL箔/PVFシートを用いた。裏面保護層20には、厚さが0.4mmのガルバリウム鋼板を用いた。
また、第1の接着充填材22、第2の接着充填材14および第2の接着充填層18には、厚さ400μmのEVA接着シートを用いた。第1の接着充填層26には、厚さ300μmの熱可塑性ポリウレタン接着シート(Lubrizol社のEstane PV1000)を用いた。
周縁シール30には、吸湿剤を含有したホットメルト型のシール材を用い、この周縁シール30は、厚さが1.0mm、幅10mmである。上記シール材は、ADCO社のHelio Seal PVS101(製品名)である。
【0095】
実施例1の作製手順としては、予め表面保護層28の3層複合プラスチックシートを熱圧着法で作製しておき、積層部材のレイアップを行う。
先ず、表面保護層28を下にして、先に、表面保護層28の裏面28bの周縁の4辺に周縁シール30を貼る。次に、周縁シール30よりも内側に第1の接着充填層26(300μm厚の熱可塑性ポリウレタン接着シート)、水蒸気バリアフィルム24、第1の接着充填材22(400μm厚のEVA接着シート)、太陽電池サブモジュール12、第2の接着充填材14(400μm厚のEVA接着シート)、バックシート16、第2の接着充填層18(400μm厚のEVA接着シート)を積層させ、最後に周縁が周縁シール30外側にくるように裏面保護層20(ガルバリウム鋼板)を積層した。すなわち、最後に周縁シール30の外側と裏面保護層20の周縁を一致させ、かつ重なるように裏面保護層20を積層する。ここで、積層枚数が多いので、各層間でズレが起きないようにカプトンテープで仮止めした。
なお、水蒸気バリア層24bが太陽電池サブモジュール12側になるように水蒸気バリアフィルム24を配置した。
そして、真空ラミネーターで140℃の温度で、真空5分、プレス10分、保持5分の合計20分のラミネート条件でラミネートし、裏面保護層20の裏面に取り出した配線を接続箱の電極に半田付けして太陽電池モジュール10を作製した。
【0096】
(実施例2)
サブストレート構造を有する、CIGS膜を光吸収層に用いた太陽電池サブモジュール12を備える図3(a)に示す太陽電池モジュール10aを作製した。
表面保護層28には、厚さが1.0mmの青板ガラスを使いた。
第1の接着充填材22および第2の接着充填材14には、アイオノマー樹脂である、三井・デユポンケミカル社のハイミラン−ES−7046(製品名)を用いた。第1の接着充填材22および第2の接着充填材14の厚さは400μmとした。
第2の接着充填層18には、厚さ400μmのEVA接着シートを使用した。
バックシート16には、三菱アルミニウムパッケージ社製のPVF/AL箔/PVFシートを用いた。裏面保護層には、片面アルマイト処理した1.0mm厚のアルミニウム板を用いた。
周縁シール30には、吸湿剤を含有したホットメルト型のシール材を用い、この周縁シール30は、厚さが1.0mm、幅10mmである。上記シール材は、ADCO社のHelio Seal PVS101(製品名)である。
【0097】
実施例2の作製手順としては、先ず、表面保護層28を下にして、先に、表面保護層28の裏面28bの周縁の4辺に周縁シール30を貼る。
次に、周縁シールよりも内側に第1の接着充填材22(厚さが400μmのハイミラン−ES−7046(製品名))、太陽電池サブモジュール12、第2の接着充填材14(厚さが400μmのハイミラン−ES−7046(製品名))、バックシート16、第2の接着充填層18(厚さが400μmのEVA接着シート)を順次積層し、最後に周縁が周縁シール30の外側にくるように裏面保護層20(片面アルマイト処理したアルミニウム板)を積層した。すなわち、最後に周縁シール30の外側と裏面保護層20の周縁を一致させ、かつ重なるように裏面保護層20を積層する。そして、真空ラミネーターで150℃の温度で、真空5分、プレス10分、保持5分の合計20分のラミネート条件でラミネートし、裏面保護層20の裏面に取り出した配線を接続箱の電極に半田付けして太陽電池モジュール10aを作製した。
【0098】
(実施例3)
サブストレート構造を有する、CIGS膜を光吸収層に用いた太陽電池サブモジュール12を備える図4(a)に示す太陽電池モジュール10bを作製した。
実施例3においては、上述の実施例1に比して、表面保護層28、第1の接着充填層26、水蒸気バリアフィルム24のサイズが同じで、周縁が外環境に晒される構造となっている。しかしながら、水蒸気バリアフィルム24の片面に形成された水蒸気バリア層24bが太陽電池サブモジュール12側にあるため、外からの水分浸入は阻止される。それ以外の構成は、上述の実施例1と同じであるため、その詳細な説明は省略する。
【0099】
実施例3において、作製手順としては、表面保護層28を下にして、順次積層させるが、周縁シール30を水蒸気バリアフィルム24の水蒸気バリア層24bに貼る点が異なるだけであり、それ以外は、実施例1と同様な手順で太陽電池モジュール10bを作製した。
【0100】
(比較例1)
サブストレート構造を有する、CIGS膜を光吸収層に用いた太陽電池サブモジュール12を備える図5に示す太陽電池モジュール120を作製した。
比較例1(図5に示す太陽電池モジュール120)は、上述の実施例1(図1(a)に示す太陽電池モジュール10)に比して、バックシート16、第2の接着充填層18および裏面保護層20の周縁が外環境に晒される構造となっている点以外は、上述の実施例1と同様の構成である。
周縁シール30が表面保護層28の裏面28bとバックシート16の表面16aとの間、かつ第1の接着充填層26、水蒸気バリアフィルム24、第1の接着充填材22、太陽電池サブモジュール12および第2の接着充填材14の周縁に配置されている。
バックシート18にPVF/AL箔/PVFシート(三菱アルミニウムパッケージ社製)を用いている。このため、バックシート18の構造から太陽電池モジュール12側にPVF層(有機層)があり、周縁から水分がこのPVF層を通じて内部に浸入してくる。
比較例1において、使用部材は、上述の説明した以外のものは実施例1と同様である。このため、その詳細な説明は省略する。
【0101】
比較例1において、作製手順としては、予め表面保護層28の3層複合プラスチックシートを熱圧着法で作製しておき、積層部材のレイアップを行う。
先ず、表面保護層28を下にして、先に周縁の4辺に周縁シール30を貼る。次に、周縁シール30よりも内側に第1の接着充填層26(400μm厚のEVA接着シート)、水蒸気バリアフィルム24、第1の接着充填材22(400μm厚のEVA接着シート)、太陽電池サブモジュール12、第2の接着充填材14(400μm厚のEVA接着シート)を積層させる。なお、水蒸気バリア層24bが太陽電池サブモジュール12側になるように水蒸気バリアフィルム24を配置した。
次に、周縁が周縁シール30外側にくるように、バックシート16、第2の接着充填層18(400μm厚のEVA接着シート)および裏面保護層20(ガルバリウム鋼板)を積層した。ここで、積層枚数が多いので、各層間でズレが起きないようにカプトンテープで仮止めした。
この積層状態で、実施例1と同様のラミネート条件でラミネートし、裏面保護層20の裏面に取り出した配線を接続箱の電極に半田付けして太陽電池モジュール120を作製した。
【0102】
以上のようにして作製した太陽電池モジュールの実施例1〜3、比較例1の計4例の水分浸入による性能劣化を評価するため、温度85℃、湿度85%RHの条件で高温高湿試験を2000時間行い、その後、光照射下でのI−V測定により光電変換効率測定を行った。その結果を下記表1に示す。
ここで、光電変換効率は、AM1.5ソーラーシュミレーターで100mW/cmの光を実施例1〜3および比較例1の各太陽電池モジュールに照射してI−V測定を行い、算出したものである。
【0103】
【表1】

【0104】
上記表1に示すように、周縁シールがバックシートの周縁を覆っていない比較例1に対して実施例1〜3の周縁シールによる封止構造により、初期値に対する変換効率の低下は2〜6%と10%以内を維持した。一方、比較例1においては低下率が10%となった。
変換効率の劣化は直列抵抗Rsが高くなり、フィルファクターF.F.が低下したもので、水分浸入により、CIGS集積型太陽電池サブモジュールの透明電極層のシート抵抗が高くなったためと考えられる。以上の結果より、本発明の効果は明らかである。
【符号の説明】
【0105】
10、10a、10b 太陽電池モジュール
12 太陽電池サブモジュール
14 第2の接着充填材
16 バックシート
18 第2の接着充填層
20 裏面保護層
22 第1の接着充填材
24 水蒸気バリアフィルム
24a 基材
24b 水蒸気バリア層
26 第1の接着充填層
28 表面保護層
30 周縁シール
40 太陽電池セル
50 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着充填材で封止された太陽電池サブモジュールの表面側に表面保護層が設けられ、前記太陽電池サブモジュールの裏面側に裏面保護層が設けられたフレームレス太陽電池モジュールであって、
前記裏面保護層と前記接着充填材との間にバックシートが設けられており、
吸着剤を含有するシール材からなる周縁シールが前記表面保護層および前記裏面保護層の内側、かつ前記接着充填材および前記バックシートの外側に設けられていることを特徴とするフレームレス太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記表面保護層と前記接着充填材との間に水蒸気バリアフィルムが設けられており、
前記周縁シールは、前記接着充填材、前記水蒸気バリアフィルムおよび前記バックシートの外側に設けられている請求項1に記載のフレームレス太陽電池モジュール。
【請求項3】
接着充填材で封止された太陽電池サブモジュールの表面側にプラスチックシートからなる表面保護層が設けられ、前記太陽電池サブモジュールの裏面側に裏面保護層が設けられたフレームレス太陽電池モジュールであって、
前記表面保護層と前記接着充填材との間に水蒸気バリアフィルムが設けられ、前記裏面保護層と前記接着充填材との間にバックシートが設けられており、
吸着剤を含有するシール材からなる周縁シールは、前記表面保護層と前記水蒸気バリアフィルムの積層体および前記裏面保護層の内側、かつ前記接着充填材および前記バックシートの外側に設けられていることを特徴とするフレームレス太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記表面保護層は、プラスチックシート、または厚さが0.8〜2.0mmの青板ガラスもしくは白板ガラスで構成される請求項1または2に記載のフレームレス太陽電池モジュール。
【請求項5】
前記裏面保護層は、金属シートで構成される請求項1〜4のいずれか1項に記載のフレームレス太陽電池モジュール。
【請求項6】
前記太陽電池サブモジュールは、光吸収層がCIS膜またはCIGS膜で構成される請求項1〜5のいずれか1項に記載のフレームレス太陽電池モジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−89749(P2013−89749A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228616(P2011−228616)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】