説明

フレームレート変換回路

【課題】補間フレームを生成する際の装置の負荷を軽減しつつ、OSDの情報の表示の有無に応じてフレームを補間する処理を変更することが可能な技術を提供する。
【解決手段】動画像信号に所定の情報と、所定の情報の有無を示す標識と、を重畳して出力する画像生成回路300に接続されたフレームレート変換回路100であって、補間フレーム算出部は、動画像信号の複数のフレームから、補間フレームを生成する処理を実行する。情報領域検出部は、動画像信号に重畳された標識の有無を検出する。この補間フレーム算出部は、情報領域検出部の検出結果に応じて補間フレームの生成処理を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補間フレームを生成するフレームレート変換回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フレーム補間技術を用いて動画像のコマ数を増やし、より滑らかで残像感の少ない動画像を生成する手法が実用化されている。たとえば、毎秒60フレーム(60Hz)の動画像を2倍速または4倍速して、120Hzまたは240Hzの動画像に変換して表示する技術も実用化されている。補間フレームの生成手法として、連続するフレーム間の動きベクトルを用いる手法が注目されている(たとえば、特許文献1、2参照)。
【0003】
日本では2006年4月からワンセグ放送が開始されている。ワンセグ放送は、携帯電話機などの携帯機器を主な受信対象とする狭帯域を利用した放送である。ワンセグ放送では、通常、毎秒15フレーム(15Hz)で映像が送信されるため、そのコマ数を増加させる必要性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−71842号公報
【特許文献2】特開2009−21868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ディスプレイに表示される動画像には、OSD(On Screen Display)の情報が重畳され表示される。たとえば、テレビ映像が表示される画面のOSD領域に、チャンネル情報が重畳され表示される。また、ワンセグ放送により受信した映像を携帯電話機のディスプレイに表示させる場合、その画面上のOSD領域に、電波状況情報、電池残量情報などが重畳され表示される。
【0006】
OSD領域に表示される文字や記号は、比較的変化が少ない情報であるため、上記フレーム補間技術を適用した場合に、テレビ映像とOSD領域とを区別して補間することが好ましい。しかし、OSD領域に表示される情報は、常に表示されるとは限らないため、OSDの情報が表示されているか否か判別する必要がある。このとき、OSDの情報が表示されているか否かの情報を画像とは別に常に通信すると、システム全体の負荷が大きくなる。
【0007】
本発明はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、補間フレームを生成する際の装置の負荷を軽減しつつ、OSDの情報の表示の有無に応じてフレームを補間する処理を変更することが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のフレームレート変換回路は、動画像信号に所定の情報と、所定の情報の有無を示す標識と、を重畳して出力する画像生成回路に接続されたフレームレート変換回路であって、動画像信号の複数のフレームから、補間フレームを生成する処理を実行する補間フレーム算出部と、動画像信号に重畳された標識の有無を検出する情報領域検出部と、を備える。この補間フレーム算出部は、情報領域検出部の検出結果に応じて補間フレームの生成処理を変更する。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、補間フレームを生成する際の装置の負荷を軽減しつつ、OSDの情報の表示の有無に応じてフレームを補間する処理を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の形態に係る表示装置の機能構成を示す図である。
【図2】実施形態に係るフレームレート変換回路の構成を示す図である。
【図3】補間フレームの生成原理(2倍速変換)を示す図である。
【図4】補間フレームの生成原理(4倍速変換)を示す図である。
【図5】画面内に参照無効領域が表示されている場合における、補間フレーム算出部による画素生成処理の4つのケースを模試的に示す図である。
【図6】補間フレーム算出部による画素生成処理の4つのケースをまとめた図表である。
【図7】実施形態に係る画像生成回路が生成したOSD領域を含む画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、実施の形態に係る表示装置500の機能構成を示す図である。表示装置500は、ワンセグ放送などのテレビ放送を受信し、表示再生する機能を搭載した機器である。たとえば、ワンセグ放送の受信再生専用機であってもよいし、その機能を搭載した携帯電話機、PDA、携帯型音楽プレーヤ、電子辞書、カーナビゲーション装置などであってもよい。表示装置500は、テレビ放送を受信するものに限らず、動画像を表示再生する機器であってもよい。
【0013】
表示装置500は、アンテナ200、画像生成回路300、フレームレート変換回路100および表示部400を備える。受信した信号を復号して動画像を出力する画像生成回路300は、受信部310、復号部320、重畳部330および制御部340を含む。受信部310は、アンテナ200を介してワンセグ放送を受信し、選択されたチャンネルの信号を復調して、復号部320へ出力する。
【0014】
復号部320は、受信部310から入力される符号化データを復号する。ワンセグ放送画像の符号化には、AVC/H.264規格が採用されている。復号部320は、復号したフレームを重畳部330に出力する。なお、復号されたフレームが重畳部330に入力される前に、実際は図示しないスケーラによる解像度変換が施されるが、省略している。
【0015】
重畳部330は、復号部320からフレームを受け取り、動画像の画面表示に所定の情報を重畳する。上記所定の情報はOSDの情報であって、文字(数字を含む)、記号などで表現され、たとえば、チャンネル情報、音量情報、日付情報、時刻情報、電波状況情報、電池残量情報などが該当する。なお、重畳部330は、OSD領域を一画面内に複数箇所、設定してもよい。このOSD領域の具体的な設定方法は後述する。上記所定の情報は、受信機側により事後的にOSD領域に付加された情報である。なお、OSDが重畳表示される画面位置は予め定められており、画像生成回路300は所定の情報の種類に応じたOSD領域の位置情報を保持する。
【0016】
実施形態に係る重畳部330は、動画像の画面表示に所定の情報を重畳するとともに、所定の情報を表示する情報領域を特定するための標識を動画像の画面表示に重畳する。すなわち、重畳部330は、所定の情報を動画像に重畳し、かつ、所定の情報の有無を特定可能な標識を画面内の情報領域に同時に重畳する。所定の情報と合わせて標識を付加することで、所定の情報の有無を、標識の有無により検出することができる。
【0017】
制御部340は、OSDと標識とを画面に重畳するために、OSDの情報とOSD領域の標識の情報を重畳部330に設定するとともに、当該標識の情報をフレームレート変換回路100に出力する。標識の情報は例えば位置の情報や色の情報を含む。制御部340は、受信部310および復号部320の動作の制御も行う。
【0018】
フレームレート変換回路100は、重畳部330から受け取った動画像のフレーム数を2倍または4倍に増加させて出力する。これにより、映像の画質を向上させることができる。表示部400は、フレームレート変換回路100により倍速変換された動画像を表示する。ここで、フレームレートの変換方法について具体的に説明する。
【0019】
図2は、実施形態に係るフレームレート変換回路100の構成を示す図である。当該フレームレート変換回路100は、入力部5、補間フレーム生成部10、情報領域検出部20、フレーム記憶部30、および出力部50を備える。これらの構成は、ハードウェア的には、任意のプロセッサ、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウェア的にはメモリにロードされたプログラムによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組み合わせによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0020】
入力部5は、画像生成回路300から出力された動画像を構成するフレームをフレーム記憶部30に書き込むとともに、情報領域検出部20に出力する。フレーム記憶部30は、動画像を構成するフレームを一時記憶するとともに、補間フレーム生成部10が生成する補間フレームを一時記憶する。
【0021】
補間フレーム生成部10は、動画像に含まれる第1フレームと第2フレームとの間の補間フレームを生成する。補間フレーム生成部10は、基本的に、第1フレームと第2フレームの両方を参照して、それらフレーム間の補間フレームを生成し、例外的に、第1フレームと第2フレームの一方を参照して、それらフレーム間の補間フレームを生成する。
【0022】
以下、より具体的に説明する。補間フレーム生成部10は、動きベクトル検出部12および補間フレーム算出部14を含む。動きベクトル検出部12は、第1フレームと第2フレームとの間で、ブロック単位または画素単位の動きベクトルを検出する。たとえば、画素単位の動きベクトルを二段階のブロックマッチングにより検出する。
【0023】
当該二段階のブロックマッチングの第一段階では、第1フレームを複数のブロック(たとえば、8×8または16×16のマクロブロック)に分割して、第2フレーム内において、当該各ブロックと一致または誤差が最小のブロックを探索する。
【0024】
たとえば、第1フレーム内の対象ブロックと第2フレーム内の候補ブロック間で、両者に含まれる、対応する位置の画素値の差分絶対値和または差分二乗和を求め、その値が最も小さい候補ブロックを、第2フレーム内の最適予測ブロックとする。また、第1フレーム内の対象ブロックと第2フレーム内の候補ブロック間で、両者に含まれる、対応する位置の画素値が実質的に一致した数が最も多い候補ブロックを、第2フレーム内の最適予測ブロックとしてもよい。そして、第1フレーム内の各ブロックと、第2フレーム内の各最適予測ブロックとの動きベクトルを算出する。これにより、ブロック単位の動きベクトルを検出することができる。
【0025】
上記二段階のブロックマッチングの第二段階では、第1フレーム内の各ブロックと、第2フレーム内の各最適予測ブロックとの間で、画素値が実質的に一致しなかった画素の動きベクトルを求める。たとえば、上述した手法と同様の手法を用いて、第1フレーム内の各ブロック内の画素値が実質的に一致しなかった画素の領域と一致または誤差が最小の領域を、第2フレーム内において探索する。これにより、第1フレームと第2フレームとの間で、画素単位の動きベクトルを検出することができる。
【0026】
補間フレーム算出部14は、補間フレーム内の各画素を通過する上記動きベクトルをそれぞれ特定し、その動きベクトルの始点および終点に対応する、第1フレーム内の画素および第2フレーム内の画素の少なくとも一方を参照して、補間フレーム内の各画素を生成する。たとえば、両方の画素を合成して生成してもよいし、いずれか一方の画素を複製して生成してもよい。以下、図3、4を参照しながら両方の画素を合成して補間フレーム内の画素を生成する方法について説明する。
【0027】
図3は、補間フレームの生成原理(2倍速変換)を示す図である。2倍速変換では、第1原フレームFo1と第2原フレームFo2との間に、一枚の補間フレームFiを挿入する必要がある。補間フレームFiは、第1原フレームFo1と第2原フレームFo2との時間間隔を二等分した時間位置に挿入される。
【0028】
補間フレームFiの画素Piは、その画素Piを通過する動きベクトルmvの始点および終点に対応する、第1原フレームFo1の画素Po1および第2原フレームFo2の画素Po2を合成することにより生成される。たとえば、両者の画素値を平均して補間フレームFiの画素Piの画素値を算出してもよい。
【0029】
ここで、補間フレームFiの画素Piを通過する動きベクトルmvを常に正確に求めることができれば、その動きベクトルmvの始点に対応する第1原フレームFo1の画素Po1を、そのまま補間フレームFiの画素Piに割り当ててもよい。しかしながら、動きベクトルmvが誤検出された場合、片方の画素Po1しか参照しないため、大きなノイズが発生しやすくなる。そこで、本実施の形態では、第1原フレームFo1の画素Po1および第2原フレームFo2の画素Po2の両方を参照する。
【0030】
なお、補間フレームFiの対象画素を通過する動きベクトルが存在しない場合、たとえば、次のように処理する。すなわち、補間フレームFi内の周辺画素から空間的に補間した画素を当該対象画素に割り当てるか、補間フレームFiの対象画素と同じ位置の、第1原フレームFo1の画素および第2原フレームFo2の画素を合成した画素を当該対象画素に割り当てる。
【0031】
図4は、補間フレームの生成原理(4倍速変換)を示す図である。4倍速変換では、第1原フレームFo1と第2原フレームFo2との間に、三枚の補間フレーム(第1補間フレームFi1、第2補間フレームFi2および第3補間フレームFi3)を挿入する必要がある。第1補間フレームFi1、第2補間フレームFi2および第3補間フレームFi3は、第1原フレームFo1と第2原フレームFo2との時間間隔を四等分した時間位置にそれぞれ挿入される。
【0032】
第1補間フレームFi1の画素Pi1は、その画素Pi1を通過する動きベクトルmvの始点および終点に対応する、第1原フレームFo1の画素Po1および第2原フレームFo2の画素Po2を合成することにより生成される。たとえば、両者の画素値を加重平均して、第1補間フレームFi1の画素Pi1の画素値を算出してもよい。すなわち、前者の画素値を3/4し、後者の画素値を1/4し、両者を加算する。
【0033】
第2補間フレームFi2の画素Pi2は、図3に示した補間フレームFiの画素Piと同様に生成することができる。第3補間フレームFi3の画素Pi3も、第1原フレームFo1の画素Po1および第2原フレームFo2の画素Po2を合成することにより生成される。たとえば、両者の画素値を加重平均して、第3補間フレームFi3の画素Pi3の画素値を算出してもよい。すなわち、前者の画素値を1/4し、後者の画素値を3/4し、両者を加算する。
【0034】
図2に戻り、出力部50はフレーム記憶部30から補間フレームを含む動画像を構成するフレームを表示順に従って読み出し、外部に出力する。
【0035】
次に、上記動画像が表示される画面内に、参照無効領域が設定される場合について説明する。たとえば、当該参照無効領域は、レターボックス形式で表示される画面内の上下の余白領域(たとえば、黒帯領域)や、ピラーボックス形式で表示される画面内の左右の余白領域や、ウインドウボックス形式で表示される画面内の上下左右の余白領域に設定される。これらの余白は、アスペクト比が異なる映像の互換性をとるために、放送局側または受信機側で挿入される。たとえば、4:3の映像を16:9の画面に表示させる場合、ピラーボックス形式が採用され、画面内の左右に黒帯が表示される。また、上記参照無効領域は、設計者によりあらかじめ設定されることも可能である。たとえば、ノイズが発生しやすい、画素または領域に設定される。
【0036】
以下、図5、図6を参照して、画面内に参照無効領域が設定されている場合における、補間フレーム算出部14による画素生成処理について説明する。図5は、画面40内に参照無効領域42a、42bが表示されている場合における、補間フレーム算出部14による画素生成処理の4つのケースを模試的に示す図である。図6は、補間フレーム算出部14による画素生成処理の4つのケースをまとめた図表である。
【0037】
図5に示す画面40はピラーボックス形式の画面であり、当該画面40は、映像が表示される有効領域41と、その左右の余白領域である参照無効領域42a、42bとに分割される。なお、画面40外の領域は、参照無効領域42a、42bと同様に扱う。
【0038】
ケースaは、補間フレームFi内の対象画素Pia、第1原フレームFo1内の参照画素Po1aおよび第2原フレームFo2内の参照画素Po2aのすべてが有効領域41に存在するケースである。すなわち、補間フレーム算出部14は、補間フレームFi内の対象画素Piaを通過する上記動きベクトルの始点および終点に対応する、第1原フレームFo1内の画素Po1aおよび第2原フレームFo2内の画素Po2aの両方が有効領域41に存在する場合、両方の画素Po1a、Po2aを参照して、対象画素Piaを生成する。たとえば、両方の画素Po1a、Po2aを合成(たとえば、平均)した画素を、補間フレームFi内の対象画素Piaに割り当てる。
【0039】
ケースbは、補間フレームFiの対象画素Pibが参照無効領域42a、42bに存在するケースである。すなわち、補間フレーム算出部14は、補間フレームFi内の対象画素Pibが参照無効領域42a、42bに存在する場合、対象画素Pibの位置に対応または一致する、第1原フレームFo1内の画素および第2原フレームFo2内の画素の少なくとも一方を参照して、対象画素Pibを生成する。たとえば、原フレームFo1内の当該画素を、補間フレームFi内の対象画素Pibに複製する。また、第2原フレームFo2内の当該画素を複製してもよい。また、第1原フレームFo1内の当該画素および第2原フレーム内の当該画素を合成(たとえば、平均)した画素を、補間フレームFi内の対象画素Pibに複製してもよい。
【0040】
なお、ケースbでは、補間フレームFi内の対象画素Pibを通過する上記動きベクトルの始点および終点に対応する、第1原フレームFo1内の画素Po1bおよび第2原フレームFo2内の画素Po2bは、有効領域41に存在するか参照無効領域42a、42bに存在するかを問わず、いずれも参照されない。
【0041】
ケースcは、補間フレームFi内の対象画素Picが有効領域41に存在し、第1原フレームFo1内の参照画素Po1cおよび第2原フレームFo2内の参照画素Po2cの一方が有効領域41に存在し、他方が参照無効領域42a、42bに存在するケースである。すなわち、補間フレーム算出部14は、補間フレームFi内の対象画素Picを通過する上記動きベクトルの始点および終点に対応する、第1原フレームFo1内の画素Po1cおよび第2原フレームFo2内の画素Po2cの一方が参照無効領域42a、42bに存在する場合、他方を参照して対象画素Picを生成する。図5では、参照無効領域42a、42bに存在するほうの第1原フレームFo1内の画素Po1cを参照せず、参照無効領域42a、42bに存在しないほうの第2原フレームFo2内の画素Po2cを参照して、対象画素Picを生成する。図5では、参照無効領域42a、42bに存在しないほうの第2原フレームFo2内の画素Po2cを、補間フレームFi内の対象画素Picに複製する。
【0042】
ケースdは、補間フレームFi内の対象画素Pidが有効領域41に存在し、第1原フレームFo1内の参照画素Po1dおよび第2原フレームFo2内の参照画素Po2dの両方が参照無効領域42a、42b(画面40外の領域を含む)に存在するケースである。すなわち、補間フレーム算出部14は、補間フレームFi内の対象画素Pidを通過する上記動きベクトルの始点および終点に対応する、第1原フレームFo1内の画素Po1dおよび第2原フレームFo2内の画素Po2dの両方が参照無効領域42a、42bに存在する場合、対象画素Pidの位置に対応または一致する、第1原フレームFo1内の画素および第2原フレームFo2内の画素の少なくとも一方を参照して、対象画素Pidを生成する。たとえば、両方の画素を合成(たとえば、平均)して生成してもよいし、いずれか一方の画素を複製して生成してもよい。
【0043】
すなわち、ケースdでは上記動きベクトルをゼロと考える。なお、補間フレームFi内の対象画素Pidを通過する上記動きベクトルの始点および終点に対応する、第1原フレームFo1内の画素Po1dおよび第2原フレームFo2内の画素Po2dは、いずれも参照されない。
【0044】
このようにフレームレート変換回路100により倍速変換された動画像を、表示部400が表示する。ここで、倍速変換するために補間する際、OSD領域を有効領域と同様に補間すると、OSD領域の輪郭が動きベクトルに引っ張られて崩れることがある。OSD領域は予め定まった形状をしていることが多く、その輪郭は映像と比べて明確であるため、OSD領域の輪郭が変化すると目立つことがある。そこで、フレームレート変換回路100がフレーム内にあるOSD領域を参照無効領域として補間すれば、補間によってOSD領域の輪郭が崩れることを抑えられ、画質を向上させることができる。
【0045】
情報領域検出部20が標識を検出したとき、補間フレーム算出部14は、補間フレーム内の情報領域を、第1フレーム内または第2フレーム内の情報領域を複製して生成する。情報領域検出部20が標識を検出しないとき、補間フレーム算出部14は、情報領域が存在する場合の位置に対応する画素の色信号を使用して、情報領域外に対する補間フレームの生成処理を実行し、情報領域検出部20が標識を検出したとき、補間フレーム算出部14は、情報領域に含まれる画素の色信号を使用せずに、情報領域外に対する補間フレームの生成処理を実行する。
【0046】
フレームレート変換回路100がOSD領域を参照無効領域として補間処理をする際には、あらかじめフレームレート変換回路100にOSD領域を特定するための情報が設定される。実施形態ではOSD領域を特定するための情報として、OSDとともにOSD領域に重畳された標識を用いる。これにより、OSDの有無を示す情報を動画像に組み込むことができる。
【0047】
図2に戻り、情報領域検出部20は、入力部5から動画像の信号を受け取り、標識の特定情報を予め保持し、標識の特定情報にもとづいてフレーム内にOSD領域があるかどうかを検出する。たとえば、標識を付加する位置および色が標識の特定情報として予め定まっており、その標識の特定情報を重畳部330および情報領域検出部20が予め保持している。情報領域検出部20は、標識の位置情報に応じたフレーム内の対応画素が標識の色情報と同じ色の画素値であるかどうか判定することでOSD領域の有無を検出する。情報領域検出部20はフレーム内に標識があると検出すればOSD領域があると判定し、フレーム内に標識がないと検出すればOSD領域がないと判定する。情報領域検出部20は検出結果を補間フレーム算出部14に送出し、補間フレーム算出部14は、OSD領域を参照無効領域に設定し、補間フレームを生成する。OSD領域を特定するための標識を付加することにより、OSD領域の有無の情報をフレーム内に組み込むことができ、OSD領域の有無の情報を動画像信号とは別に毎回伝達する必要がなくなるため、画像生成回路300の通信処理の負荷が軽減される。なお、OSD領域が複数ある場合、情報領域検出部20はそれぞれのOSD領域の有無を検出する。
【0048】
図7は、実施形態に係る画像生成回路300が生成したOSD領域を含むフレーム60を示す。このフレーム60にはOSD領域62が表示されており、OSD領域62は標識64を含んでいる。標識64の特定情報は位置情報(X,Y)および色情報(R,G,B)を含む。
【0049】
OSD領域62は、種類に応じて、表示される位置および大きさが予め設定されている。たとえば、音量情報は図7に示すようにフレーム60の下部に表示され、チャンネル情報はフレームの左上部に表示される。
【0050】
OSD領域62を特定するための標識64は、OSD領域62の外枠を形成する。OSD領域62の外枠は、OSD領域の最外周に位置する画素の集合であり、1画素の幅で形成されてよく、数画素の幅で形成されてもよい。フレームレート変換回路100はOSD領域62を参照無効領域とするために、OSD領域62の位置情報を有する必要がある。図7に示すように、標識64がOSD領域62の外枠を形成することで、標識64の位置情報をOSD領域62の位置情報として用いることが可能となる。これにより、OSD領域62の位置情報を標識64の情報と別に保持する必要がなくなる。また標識64に応じてOSD領域62を画定することができる。
【0051】
標識64は、図7に示すように、矩形に形成される。標識64の位置を四隅の位置情報で特定できるため、標識64が円形や楕円形などの曲線を含む場合と比べて、標識64の位置情報を少なくすることができる。また、情報領域検出部20が標識64の有無を検出する際に単純な直線形状の有無を検出すればよいため、情報領域検出部20によるOSD領域62の有無の検出が容易となり、誤検出を少なくすることができる。
【0052】
標識64の色情報は、RGB(0〜255、0〜255、0〜255)で表される画素値である。標識64に設定される色は、たとえば複数色のうちいずれか1色が標識64の色として設定される。この設定された標識64の色を設定画素値という。また、情報領域検出部20に設定される標識64の色情報は所定の幅を含む値であってよく、情報領域検出部20は色の一致判定において、標識64と対応する位置の画素値が設定画素値から所定の幅以内のずれに収まっていれば一致すると判定する。すなわち、情報領域検出部20は、標識64の色情報として設定画素値および所定の幅を事前に保持し、標識の対応画素の色の画素値が設定画素値から所定の幅に収まっているかどうかにより色の一致を判定する。
【0053】
次に、情報領域検出部20が標識64の位置情報および標識64の色情報にもとづいてOSD領域62の有無を検出する方法を具体的に説明する。まず、情報領域検出部20は、入力部5から出力される原フレームから、標識64の位置情報に応じた対応画素の画素値を取得し、取得した対応画素の画素値が標識64の色情報に合致するかどうか判定する。この判定が原フレームの対応画素の全てに対してなされる。そして情報領域検出部20は、全ての対応画素の画素値が標識64の色情報と合致した場合に、原フレームにOSD領域62があると判定し、標識64の位置情報を補間フレーム算出部14に出力する。図7の例によれば、情報領域検出部20は、標識64の位置情報にもとづいてOSD領域を囲む枠に含まれる対応画素の画素値を検出し、対応画素の画素値が情報領域検出部20に予め設定された色情報と合致した場合に、標識64がある、つまりOSD領域52があると判定する。一方、情報領域検出部20は、いずれかの対応画素の画素値が標識64の色情報と合致しなかった場合に、原フレームにOSD領域62がないと判定する。このようにして情報領域検出部20はOSD領域62の有無を検出することができる。
【0054】
実施形態では、情報領域検出部20により検出されたOSD領域は、上記参照無効領域に設定される。第1フレーム内および第2フレーム内にOSD領域がある場合、補間フレーム算出部14は、OSD領域の位置情報に応じた補間フレーム内の対象画素を、第1フレーム内または第2フレーム内のOSD領域の画素値を複製して生成する。このように補間フレームの対象画素に原フレームのOSD領域をそのまま複製して生成することで、補間フレームのOSD領域の輪郭が乱れることを防ぐことができる。OSDの情報の表示の有無(情報領域検出部20の検出結果)に応じてフレームを補間する処理を変更することができる。
【0055】
また、第1フレーム内および第2フレーム内のどちらか一方のみにOSD領域がある場合、図5に示すケースbまたはケースcに相当する方法で補間する。すなわち、補間フレーム算出部14は、OSD領域の位置情報に応じた補間フレーム内の対象画素に対して、一方の原フレームにあるOSD領域の画素値を複製するか、または、他方の原フレームにある、OSD領域に位置情報に応じた有効領域の画素値を複製する。これらの処理のどちらか一方が、OSD領域の位置情報に応じた補間フレーム内の対象画素の全てに対して実行される。
【0056】
フレーム記憶部30は、外部から入力される動画像に含まれる原フレーム、および補間フレーム生成部10により生成される補間フレームを一時記憶し、それらフレームを表示順にしたがい外部(たとえば、表示パネル)に出力する。
【0057】
以上説明したように本実施の形態によれば、上述した補間フレームを生成する際に、OSD領域を参照無効領域とする場合、画面内にOSD領域を特定するための標識を重畳することで、OSD領域に関する情報を動画像信号に組み込むことができ、OSD領域に関する情報の伝達量を減らすことができる。
【0058】
以上、本発明をいくつかの実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0059】
たとえば、上記実施形態では、二段階のブロックマッチングにより画素単位の動きベクトルを検出する手法を説明したが、一回のブロックマッチングにより得られるブロック単位の動きベクトルを用いて、補間フレーム内の各画素を通過する動きベクトルを求めてよい。また、ブロックマッチングではなく、勾配法を用いて画素単位の動きベクトルを検出してもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、補間フレーム内のOSD領域以外の画素を、動きベクトルを用いた補間演算により生成する例を説明した。この点、当該OSD領域以外の画素を、当該画素の位置と対応または一致する、第1原フレーム内の画素および第2原フレーム内の画素を合成して生成してもよい。
【0061】
上記実施形態では、標識64をOSD領域62を囲うように設けたが、このような設け方に限定されない。たとえば、OSD領域62を囲う4辺のうちの1辺を標識64とし、情報領域検出部20は、OSD領域62に接する1辺に標識64が付加されているか否かを判定する。このとき、フレーム補間処理を行うため、フレームレート変換回路100は標識64の位置情報とは別にOSD領域62の位置情報を保持する必要がある。
【0062】
また、上記実施形態では、テレビ放送される動画像を倍速変換する例を説明したが、本発明に係るフレームレート変換回路100は、その用途に限定されることなく、様々な動画像のフレームレート変換に適用可能である。とくに、低スペックなカメラで撮影された動画像など、低フレームレートの動画像への適用に有効である。たとえば、15Hz未満の動画像のフレームレート変換にも適用可能である。
【符号の説明】
【0063】
10 補間フレーム生成部、 12 動きベクトル検出部、 14 補間フレーム算出部、 20 情報領域検出部、 30 フレーム記憶部、 100 フレームレート変換回路、 200 アンテナ、 300 画像生成回路、 310 受信部、 320 復号部、 330 重畳部、 340 制御部、 400 表示部、 500 表示装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動画像信号に所定の情報と、前記所定の情報の有無を示す標識と、を重畳して出力する画像生成回路に接続されたフレームレート変換回路であって、
前記動画像信号の複数のフレームから、補間フレームを生成する処理を実行する補間フレーム算出部と、
前記動画像信号に重畳された前記標識の有無を検出する情報領域検出部と、を備え、
前記補間フレーム算出部は、前記情報領域検出部の検出結果に応じて補間フレームの生成処理を変更することを特徴とするフレームレート変換回路。
【請求項2】
前記情報領域検出部は、前記標識が重畳される位置情報を保持し、前記位置情報が示す位置に前記標識があるか否かを検出し、
前記補間フレーム算出部は、前記情報領域検出部が前記標識を検出したとき、前記標識に応じて画定される前記所定の情報を表示する情報領域に対する補間フレームの生成処理を変更することを特徴とする請求項1に記載のフレームレート変換回路。
【請求項3】
前記情報領域検出部は、前記位置情報および前記標識の色情報を保持し、前記位置情報が示す位置に前記色情報があるか否かを検出することを特徴とする請求項2に記載のフレームレート変換回路。
【請求項4】
前記所定の情報はOSD(On Screen Display)の情報であり、
前記標識は前記OSDの情報が表示される領域を囲い、前記色情報の色で表示される枠であり、
前記位置情報は、前記枠の位置を示す情報であることを特徴とする請求項3に記載のフレームレート変換回路。
【請求項5】
前記情報領域検出部が前記標識を検出しないとき、前記補間フレーム算出部は、前記動画像信号に含まれる第1フレームおよび第2フレームを参照して、前記情報領域が存在する場合の位置に対応する領域に対する補間フレームの生成処理を実行し、
前記情報領域検出部が前記標識を検出したとき、前記補間フレーム算出部は、前記動画像信号に含まれる第1フレームおよび第2フレームの一方を参照して、前記情報領域に対する補間フレームの生成処理を実行することを特徴とする請求項3に記載のフレームレート変換回路。
【請求項6】
前記情報領域検出部が前記標識を検出したとき、前記補間フレーム算出部は、前記補間フレーム内の前記情報領域を、前記第1フレーム内または前記第2フレーム内の前記情報領域を複製して生成することを特徴とする請求項5に記載のフレームレート変換回路。
【請求項7】
前記情報領域検出部が前記標識を検出しないとき、前記補間フレーム算出部は、前記情報領域に含まれる色信号を使用して、前記情報領域外に対する補間フレームの生成処理を実行し、
前記情報領域検出部が前記標識を検出したとき、前記補間フレーム算出部は、前記情報領域に含まれる画素の色信号を使用せずに、前記情報領域外に対する補間フレームの生成処理を実行することを特徴とする請求項6に記載のフレームレート変換回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−205519(P2011−205519A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72388(P2010−72388)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(311003743)オンセミコンダクター・トレーディング・リミテッド (166)
【Fターム(参考)】