説明

フロアハーネスの配索構造

【課題】 標準のコネクタを用いながらフロアパネルに配置されたコネクタに対する浸水のトラブル発生の可能性を低減できるフロアハーネスの配索構造を提供する。
【解決手段】 連結部31で互いに嵌合接続されるコネクタ21、23は各ワイヤハーネス11、12を構成する複数の電線端末に取り付けられた各端子25、26を収容するための端子収容室23a、23b、24a、24bを複数段備え、各端子25、26は端子収容室23a、23bのうち少なくとも最下段に位置する端子収容室23a、24aを空所として他の段に位置する端子収容室にのみ挿入している。空所とした端子収容室23a、24aがフロアパネルFに面する位置となるようにしてコネクタ21、22をフロアパネルF上に配置することで、フロアパネルF面に浸水が生じた場合でも端子25、26が挿入された端子収容室への浸水発生の可能性を低減できるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロアハーネスの配索構造に関し、詳しくは、ワイヤハーネスの連結部であるコネクタ端子への浸水可能性を低減するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の室内においてフロアに沿って配索するフロアハーネスは図5に示すように、フロアパネルFの左右両側に車長方向に沿って配索するワイヤハーネス1、2をリアシートの搭載部下面のフロアパネルFに車幅方向に沿って配索するワイヤハーネス3で接続した構造とされている。上記一方の車長方向のワイヤハーネス1はインストルメントパネル下部に設置するジャンクションボックスと接続しており、該ワイヤハーネス1を車幅方向に横断するワイヤハーネス3を介して他方の車長方向のワイヤハーネス2に接続する必要があるため、上記配索構造となっている。そして、各ワイヤハーネス1、2、3はコネクタCを介して互いに連結している。このような一般的なフロアハーネスの配索構造としては特許文献1に記載のものが知られている。
【特許文献1】特開平11−263176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
通常フロアハーネスの接続に用いられるコネクタは、使用個所が室内であるため、非防水タイプのものが用いられる。このため、ワイヤハーネスを構成する電線の端末に取り付けた端子は、コネクタハウジングの端子収容室に対し単に挿入係止するのみで、防水タイプのコネクタのようにゴム栓等を用いて端子収容室に水が浸入しない構造とはなっていない。
しかしながら、室内においても雨天時における窓の閉め忘れや、飲料水などをこぼすなどの不測の事態によって、フロアパネルが水で浸される場合も生じることがある。このような状態が生じると、フロアパネル上に沿って配索されたワイヤハーネスの連結部であるコネクタの最下段の端子収容室内に水が浸入して電気的なトラブルが発生するおそれがある。このようなトラブル発生の可能性を低減するには、コネクタをフロアパネルの床面から離間するような台座などの別部品を設けるという対処方法もあるが、この方法では部品コストと作業工数が増加するという問題があった。
【0004】
本発明は上記した問題に鑑みてなされたもので、標準のコネクタを用いながらフロアパネルに配置されたコネクタに対する浸水の可能性を低減できるフロアハーネスの配索構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明では、自動車の室内においてフロアパネルに沿って配索されると共に、該フロアパネル上で分割されたワイヤハーネス同士をコネクタによって接続する連結部を含むフロアハーネスの配索構造であって、
上記連結部で互いに嵌合接続されるコネクタは上記各ワイヤハーネスを構成する複数の電線端末に取り付けられた各端子を収容するための端子収容室を複数段備え、上記各端子は上記端子収容室のうち少なくとも最下段に位置する端子収容室を空所として他の段に位置する端子収容室にのみ挿入し、上記空所とした端子収容室が上記フロアパネルに面する位置となるようにして上記コネクタをフロアパネル上に配置していることを特徴とするフロアハーネスの配索構造を提供している。
【0006】
上記構成によれば、フロアパネル面が多少浸水した状態となっても、フロアパネルに面するコネクタの最下段の端子収容室が空所となっているので、端子が収容された上位段の端子収容室内への水の浸入可能性を効果的に低減することができる。よって、フロアパネルの浸水による電気的なトラブル発生の可能性を低減できる。
なお、フロアパネルに配置するコネクタにおいて端子収容室を空所とする個所は、必要に応じて最下段のみでなく2段目以上に設定してもよい。
【0007】
更に具体的には、上記コネクタは、該コネクタの一つの平面側でレバーを略半周回動することでカム機構を介してコネクタを嵌合操作するレバー式コネクタから構成する一方、上記端子収容室の空所は上記レバーの回動軌道とは反対側の面に設けている。
このようにすれば、フロアパネルへのワイヤハーネスの配索時において、ワイヤハーネス同士をコネクタで連結操作する場合、操作部であるレバーは必ず上面側となるので、空所の端子収容室側をフロアパネル面側に確実に位置させることができる。
【発明の効果】
【0008】
以上の説明より明らかなように、本発明のフロアハーネスの配索構造によれば、台座等の別部品を要することなく、ワイヤハーネスの連結部であるコネクタにおいて端子が収容された端子収容室をフロアパネルの床面から所要間隔離すことができる。よって、フロアパネルの浸水時においてもコネクタに対する電気的トラブル発生の可能性を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1〜図4は、本発明におけるフロアハーネスの配索構造の実施形態を示し、フロアパネルFに沿って室内に配索されたワイヤハーネス11、12をそれぞれの端部に取り付けた雄コネクタ21と雌コネクタ22とからなる連結部31で着脱自在に連結可能とされ、電気的接続が得られるようになっている。
【0010】
雄コネクタ21の雄ハウジング23および雌コネクタ22の雌ハウジング24には、それぞれ横方向に6〜8列、縦方向に4段にわたって端子収容室23a、23b…、24a、24b…を備えている。各端子収容室23a、23b…、24a、24b…には、それぞれワイヤハーネス11、12を構成する電線Wの端末に取り付けられた雄端子25および雌端子26を背面から受け入れてランスによる係止機構(図示せず)によって抜け止め保持できるようになっている。
【0011】
雄ハウジング23および雌ハウジング24は、図2に示すように、ワイヤハーネス11、12のフロアパネルF面への配索時にフロアパネルFと対面する最下段の端子収容室23a、24aが雄端子25および雌端子26を収容しない空所となっている。2段目以上のその他の各端子収容室23b、23c…、24b、24c…には通常通り雄端子25、雌端子26を挿入している。このため、雄ハウジング23および雌ハウジング24は、必要な電線Wの本数に対し、空所となる最下段の端子収容室23a、24aに対応する数だけ端子収容室23a、23b…、24a、24b…が多い設定となっている。
【0012】
雄コネクタ21と雌コネクタ22は、レバー27の回動操作により作用するカム機構によって互いに嵌合されるレバー式コネクタの構造を採用している。雌ハウジング24の両側面には一対のカムピン28を突設し、雄ハウジング23の両側面にはレバー27を回動可能に支持するための一対の支軸29を突設している。レバー27は左右一対のアーム部27aの一端を操作部27bにより連結した略コ字状をなし、雄ハウジング23の両側側を跨いだ状態で支軸29に対し支持孔27cを嵌合させるようにして回動可能に取り付けられている。アーム部27aの内面には、雌ハウジング24のカムピン28が進入するカム溝27dが凹設されている。そして、カム溝27dにカムピン28が進入した状態でレバー27を嵌合すべき雌コネクタ22側に回動操作することによってカムピン28とカム溝27dとからなるカム機構を介して雄ハウジング23が雌ハウジング24内に嵌合されて雄端子25と雌端子26が接続されるようになっている。このレバー27の回動軌道は、雄ハウジング23の上面側において雌ハウジング24側へ略半周回動操作することにより操作を完了する設定とされている。
【0013】
フロアパネルFへのワイヤハーネス11、12の配索時には、雄コネクタ21のレバー27を操作可能とするため、レバー27が上面側となるように配置される。即ち、空所となる最下段の端子収容室23a、24aがフロアパネルFに面する側に配置される設定としている。また、雌ハウジング24の上部背面にはロック受け部28aを形成すると共に、レバー27の操作部27bの中央にはロック受け部28aに係合してレバー27を回動終端で保持可能とするロック部27eを形成している。
【0014】
次にフロアハーネスの配索構造の作用について説明する。
まず、図1に示すように、フロアパネルFに配索すべきワイヤハーネス11、12を所要の経路に配置する。このとき雄コネクタ21のレバー27と雌コネクタ22のロック受け部28aが上面側に向くように配置する。
次いで、図3に示すように、ワイヤハーネス11、12の連結部31において雄コネクタ21と雌コネクタ22とを嵌合し、カムピン28をカム溝27dに受け入れた後、レバー27を回動操作することで雄コネクタ21と雌コネクタ22を完全嵌合する。この状態において、雄コネクタ21と雌コネクタ22は、フロアパネルFに対しレバー27が上面側に位置すると共に、図4に示すように、端子収容室23a、23b…、24a、24b…のうち最下段の空所がフロアパネルFに対面した下面側となっている。これにより、雄端子25および雌端子26が挿入された二段目の端子収容室23b、24bまでの高さ寸法H1は空所の端子収容室23a、24bまでの高さ寸法H2より大きくなる。よって、万一フロアパネルF面に浸水が生じた場合においても、H2の高さ寸法まで浸水しなければ雄端子25、雌端子26に電気的なトラブルが生じることはない。
【0015】
なお、上記実施形態においては、レバー式コネクタを用いてワイヤハーネス同士を連結したものを示したが、レバーなどの梃子機構がなくアーム式のロック機構により嵌合する一般構成のコネクタを用いてもよい。この場合、端子収容室の空所は、ロックアームが備えられた面を上面として反対の下面側の最下段に設定するのが好ましい。また、上記実施形態では、端子収容室の空所を最下段のみに設定した例を示したが、浸水予想の程度、コネクタの高さ方向の許容範囲に応じて2段目以上の部位まで空所となる端子収容室を設定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のフロアハーネスの配索構造を示す斜視図である。
【図2】コネクタの端子収容室への端子の挿入状態を示す概略図である。
【図3】ワイヤハーネスを雄コネクタ、雌コネクタを介して連結した状態の正面図である。
【図4】連結された雄コネクタと雌コネクタの断面図である。
【図5】従来例を示す図である。
【符号の説明】
【0017】
F フロアパネル
W 電線
11、12 ワイヤハーネス
21 雄コネクタ(コネクタ)
23 雄コネクタ(コネクタ)
23a、23b…、24a、24b… 端子収容室
25 雄端子(端子)
26 雌端子(端子)
27 レバー
31 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の室内においてフロアパネルに沿って配索されると共に、該フロアパネル上で分割されたワイヤハーネス同士をコネクタによって接続する連結部を含むフロアハーネスの配索構造であって、
上記連結部で互いに嵌合接続されるコネクタは上記各ワイヤハーネスを構成する複数の電線端末に取り付けられた各端子を収容するための端子収容室を複数段備え、上記各端子は上記端子収容室のうち少なくとも最下段に位置する端子収容室を空所として他の段に位置する端子収容室にのみ挿入し、上記空所とした端子収容室が上記フロアパネルに面する位置となるようにして上記コネクタをフロアパネル上に配置していることを特徴とするフロアハーネスの配索構造。
【請求項2】
上記コネクタは、該コネクタの一つの平面側でレバーを略半周回動することでカム機構を介してコネクタを嵌合操作するレバー式コネクタから構成する一方、上記端子収容室の空所は上記レバーの回動軌道とは反対側の面に設けている請求項1に記載のフロアハーネスの配索構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−1511(P2006−1511A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−182802(P2004−182802)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】