フロアパネル
【課題】耐荷重性能を維持しながら、通風量を増やすことができるフロアパネルを提供する。
【解決手段】床下空間の空調された空気を部屋に吹き出すためのフロアパネル１には、平坦面１０Ｓを有するパネル表面に複数の長溝部３０が設けられており、空気を通すための貫通孔３１が平坦面１０Ｓと平坦面１０Ｓに続く長溝部３０の内周側面としての傾斜面３３とにまたがるように連続して形成されていることで、耐荷重性能を維持しながら、貫通孔３１を通る空気の通風量を増やすことができる。
【解決手段】床下空間の空調された空気を部屋に吹き出すためのフロアパネル１には、平坦面１０Ｓを有するパネル表面に複数の長溝部３０が設けられており、空気を通すための貫通孔３１が平坦面１０Ｓと平坦面１０Ｓに続く長溝部３０の内周側面としての傾斜面３３とにまたがるように連続して形成されていることで、耐荷重性能を維持しながら、貫通孔３１を通る空気の通風量を増やすことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、例えば建物の床スラブに配置されて、空調された空気を上方に吹き出すためのフロアパネルに関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、建物の床スラブ等から所定の空間を隔てて設置される床吹き出し空調用のフロアパネルが知られている。このフロアパネルは、床スラブ等との間に流れる空調された空気を、上方に向けて部屋内に吹き出す機能を有し、例えば特許文献１に開示されている。
特許文献１に開示されたフロアパネルの上面には、複数の長溝が設けられており、これらの長溝の底面には複数の貫通孔が形成されている。これにより、このフロアパネルを用いて床吹き出し空調を行った場合には、空気が床下から貫通孔を通じてフロアパネルの上面側へ通過すると共に、貫通孔を通った空気は、長溝に沿って水平方向に拡散するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００３】
【特許文献１】特許第３４５６６０９号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
ところで、上述した構造のフロアパネルでは、床下から床上へ通過させる空調空気の量（つまり通風量）を増やそうとすると、貫通孔を大きくするなどして、パネル全体に対する貫通孔の総開口面積（開口率）を増やす必要がある。
しかし、貫通孔は長溝の底面に形成されているため、貫通孔の形状や数量は長溝の底面形状に自ずと制限されてしまう。このため、貫通孔の開口率を増加させて通風量を増やすことには限界がある。一方、貫通孔の開口率を増加させるためには、長溝の底面を大きくする方法もあるが、それではフロアパネルの耐荷重性能が低下してしまう。
そこで、本発明は、耐荷重性能を維持しながら、通風量を増やすことができるフロアパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００５】
本発明のフロアパネルは、床下空間の空気を床上に通過させるための貫通孔が形成されたフロアパネルであって、平坦面を有するパネル表面には、複数の長溝部が設けられており、前記貫通孔は、前記平坦面と前記平坦面に続く前記長溝部の内周側面とにまたがるように連続して形成されていることを特徴とする。
上記構成によれば、通風量を左右する貫通孔は、平坦面と平坦面に続く長溝部の内周側面とにまたがるように連続して形成されているので、貫通孔を底面に形成するのに比べて、大きな開口部を有する貫通孔を形成できる。換言すれば、本発明の貫通孔であれば、底面に貫通孔を形成した場合と対比して、両者が平面視において同じ形状であれば、大きな開口部を有することになる。
そして、貫通孔は、溝幅を決定する要素となる長溝部の底面には設ける必要がないため、底面に貫通孔を形成した場合に比べて、底面の剛性を向上させると共に、溝幅の狭いリブ機能を有する長溝部を、パネル全面に数多く形成することができ、フロアパネル全体の強度を保持して耐荷重性能を維持できる。
【０００６】
好ましくは、前記長溝部は、幅方向の断面形状が円弧状とされていることを特徴とする。
上記構成によれば、貫通孔を通る空気が長溝部内で滞留しないようにして空気流を上方に向けて吹き出させることができる。
【発明の効果】
【０００７】
以上説明したように、本発明によれば、耐荷重性能を維持しながら、通風量を増やすことができるフロアパネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【０００８】
【図１】本発明の実施形態に係るフロアパネルの分解斜視図と、このフロアパネルの上に配置されるカーペットの斜視図。
【図２】上材の形状例を示す平面図。
【図３】図３（Ａ）は空気吹き出し部の構造を示す斜視図であり、図３（Ｂ）は図３（Ａ）に示す空気吹き出し部を矢印Ｆ方向から見た斜視図。
【図４】図４（Ａ）は空気吹き出し部の構造を示す平面図であり、図４（Ｂ）は図４（Ａ）のＢ−Ｂ線断面図、図４（Ｃ）は図４（Ａ）のＣ−Ｃ線断面図。
【図５】本発明の実施形態の変形例であって、図４（Ａ）のＢ−Ｂ線の位置で切断した場合の断面図。
【図６】図６（Ａ）は図１に示す下材の裏面側の構造例を示す斜視図であり、図６（Ｂ）は図６（Ａ）の下材の裏面の中心部分を拡大して示す斜視図。
【図７】図１に示すフロアパネルの上材と下材の一部分を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【０００９】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【００１０】
〔全体概要〕
図１は、本発明の実施形態に係る二重床やフリーアクセスフロア等とも呼ばれるフロアパネルの分解斜視図と、このフロアパネルの上に配置されるカーペットの斜視図である。
図１では、複数のフロアパネル１が、図示しない支柱を介して、例えば既存の床面や床スラブ等の構造物Ｆとの間に所定の間隔をあけて任意に敷き詰められ、部屋の床面を構成するようになっている。
そして、フロアパネル１と構造物Ｆとの間である床下空間Ｓがダクトの代わりになり、空調された空気ＡＲが、後述する凹部４２に形成された空気孔４３と、空気吹き出し部２１に形成された貫通孔３１を通じて（図１では、図面の簡単化のために、代表して１つの空気吹き出し部２１と凹部４２のみを図示）、床上の部屋内に送られるようになっている。なお、フロアパネル１は、必要に応じて床下空間Ｓに電気配線や通信配線を隠した状態で通すことができる。
フロアパネル１はこのように用いられて、床吹き出し空調用のフロアパネルとされる。
【００１１】
カーペット２は、フロアパネル１の上に敷かれるもので、多数の通気孔により通気性を有する。カーペット２の具体例としては、多数の通気孔が表面から見えないように形成されているものや、多数の通気孔が表面から見えるように形成されているものもある。通気孔の形状としては、丸孔や長孔等がある。図１に示すように、カーペット２の縦方向の寸法Ｌ１と横方向の寸法Ｌ２は、例えばフロアパネル１の縦方向の寸法Ｄ１と横方向の寸法Ｄ２と、それぞれ同じ値に設定されている。
【００１２】
フロアパネル１は、全体が略矩形状に形成され、上材１０と下材１１とを有している。
上材１０は、全体が板状とされ、部屋の床面を構成するもので、上板やトップシート等ともいい、スチールのような金属板を絞り加工することで作られている。
下材１１は、上材１０の剛性ないし耐荷重性を補強する補強部材としての機能を有し、下板やボトムシート等ともいい、好ましくはスチールのような金属をプレスすることにより作られている。本実施形態の場合、下材１１は、全体として箱型の部材であって、略正方形の上部開口部を有し、４つの側面部分１１Ｂと、底面部１１Ｃを有している。
そして、上材１０と下材１１とは、周縁部や一部の領域を除き、互いの間に所定の内側空間を作るように対向して重ねられ、複数か所を溶接等することで固定されている。
【００１３】
〔上材１０について〕
次に、上材１０について、図１、及び上材１０の平面図である図２を参照しながら詳細に説明する。
上材１０は、平面視において、縦方向の寸法Ｄ１と横方向の寸法Ｄ２が同じ略正方形であり、各寸法は例えば約５０ｃｍである。なお、この上材１０は、床下空間の配線を部屋内に引き出すための配線孔が一辺に沿うように形成されており、その配線孔は、使用されない場合、合成樹脂製等の蓋部材１２で隠されている。
このような上材１０は、複数種類の空気吹き出し部２１，２２，２３，２４（以下、「空気吹き出し部２１〜２４」という）を有している。空気吹き出し部２１〜２４は、床下空間の空気を部屋内に供給するための部分であって、出来るだけパネル全面で空調（つまり均等な空調）を行えるように工夫されている。
先ず、空気吹き出し部２１〜２４は、空調空気が水平方向に拡散するように、長溝部と貫通孔とで構成されている（この点については後で詳細に説明する）。
さらに、空気吹き出し部２１〜２４はパネル全面に出来るだけ偏りが少ない状態で配置されている。
【００１４】
具体的には、空気吹き出し部２１〜２４は一方向に長く、その全ての幅Ｗが略同一とされる一方、長さ（後述する図４の長溝部３０の長手方向の寸法Ｌ３）は区々とされることで、その大きさを異にしている。
そして、上材１０は、平面視において、中心ＣＴを通る直線Ｂ１、Ｂ２で区画される４つの略正方形状の領域Ｒ１〜Ｒ４を有し、これら４つの領域Ｒ１〜Ｒ４に、それぞれ複数種類の空気吹き出し部２１〜２４が予め定められたパターンに従って形成されている。
【００１５】
本実施形態の場合、一方向に長い空気吹き出し部２１〜２４は、同じ上記領域内においては、その長さ方向が同じ方向に沿って形成されている。そして、同じ対角線ＯＡ１上にある２つの領域Ｒ１と領域Ｒ３に配置された空気吹き出し部２１〜２４は、その幅が当該対角線ＯＡ１に沿って形成されている。また、同じ対角線ＯＡ２上にある２つの領域Ｒ２と領域Ｒ４に配置された空気吹き出し部２１〜２４は、その幅が当該対角線ＯＡ２に沿って形成されている。
そして、このような空気吹き出し部２１〜２４は、上述のように長さは区々とされる一方で、幅Ｗは互いに略同一に形成され、好ましくは、その幅Ｗを小さくして、空気吹き出し部をパネル全面にまんべんなく形成するようにしている。
なお、本発明は、図２に示す空気吹き出し部２１〜２４の配列の例に限定されず、任意の配列に従って設けることができる。
【００１６】
空気吹き出し部２１〜２４は以上のようにサイズが異なるが、夫々、同様の構造を有している。そこで、図２に示す空気吹き出し部２２の構造を、図３と図４を参照して説明する。
図３（Ａ）は空気吹き出し部２２の構造を示す斜視図であり、図３（Ｂ）は図３（Ａ）に示す空気吹き出し部２２を矢印Ｆ方向から見た斜視図である。図４（Ａ）は空気吹き出し部２２の構造を示す平面図であり、図４（Ｂ）は図４（Ａ）のＢ−Ｂ線断面図、図４（Ｃ）は図４（Ａ）のＣ−Ｃ線断面図である。
【００１７】
図３に示すように、空気吹き出し部２２は、上材１０の上面（部屋側の面）に形成された凹状の長溝部３０と、複数の貫通孔３１を有している。
長溝部３０は、この長溝部３０とカーペット２（図１参照）との間で、貫通孔３１を通過してきた空調空気が、長溝部３０に沿って水平方向に拡がるようにするための部分であり、例えば上材１０を深絞り加工で形成できる。
具体的には、長溝部３０は、平坦な底面３２と内周側面３３とからなり、内周側面３３は底面２２に向って傾斜した例えば平坦な斜面部とされている。
底面３２は、上材１０の平坦面（上材１０の表面であって、敷設されて水平となる）１０Ｓと平行になるように形成され、平面視が概ね長円状であって、長方形部分３２Ａと、この長方形部分３２Ａの両端部に形成された２つの半円形部分３２Ｂを有している。そして、内周側面３３は、この底面３２の長方形部分３２Ａと平坦面１０Ｓとをつなげ、かつ、２つの半円形部分３２Ｂと平坦面１０Ｓとをつなげるように形成されている。
なお、図４（Ｂ）に示すように、上材１０の厚みは例えば１．２ｍｍであり、上材１０の平坦面１０Ｓから底面３２までの寸法は、３．０ｍｍであり、そして上材１０の平坦面１０Ｓから底面３２の裏面までの寸法は、４．２ｍｍである。
【００１８】
貫通孔３１は、床下空間の空気を部屋側に通すための孔であって、図４（Ａ）に示されるように、一つの空気吹き出し部２２に対して、複数の貫通孔３１（図４の場合は６つ）が形成されている。本実施形態の場合、複数の貫通孔３１は、空気吹き出し部２２の長手方向に沿った２つの領域ＡＲ１，ＡＲ２に配置され、一方の領域ＡＲ１の貫通孔３１と他方の領域ＡＲ２の貫通孔３１とは、互いに対向して配置されている。
そして、各貫通孔３１は、上材１０の平坦面１０Ｓと内周側面３３にまたがるようにして連続して形成されている（内周側面３３に形成された貫通孔３１が平坦面１０Ｓまで延伸している）。このため、貫通孔３１は、図４に示すように、平面視が略真円状とされているが、図３に示すように、別の角度から見れば長円状のような形態とされ、実際は大きな開口面積を有している。これにより、底面３２にのみ貫通孔３１を形成した場合に比べて、耐荷重性を落とすことなく、かつ、大きな開口面積を有する貫通孔３１を形成している。すなわち、貫通孔３１の開口面積を大きくしても、底面３２の幅Ｗ１はその貫通孔３１の大きさに拘束されず、自由に設定することができる。そのため、長溝部３０の幅Ｗ２の寸法を小さくして、上材１０に幅の狭い沢山の長溝部３０を形成できる。そして、長溝部３０は強度を向上させるリブとしての役割も果たすため、上材１０の耐荷重性は結果として向上する。
【００１９】
また、貫通孔３１は、その一部が上材１０の平坦面１０Ｓにも形成されているため、空調された暖気などは床下空間から上（部屋内）に通過し易くなっている。しかも、本実施形態の場合、貫通孔３１が形成された内周側面３３は傾斜面とされているため、垂直面に比べて、空調された空気が床下空間から長溝部３０内に入り易く、そして、その長溝部３０内に入った空気は長溝部３０とカーペットとの間で拡散し易くなって、全面空調により適している。
なお、このように内周側面３３は傾斜面であるが、上述のように底面３２の幅Ｗ１は小さく形成できるため（本実施形態の底面３２は幅Ｗ１が６ｍｍ程度）、長溝部３０は上から見た幅Ｗ２が、極端に大きくなるようには設定されていない。当該溝幅Ｗ２は少なくともハイヒールのかかとが挿入しない寸法とされるのがよい。
【００２０】
そして、本実施形態の底面３２は、水平面（表面１０Ｓと平行）とされているが、底面３２は水平面に形成されなくてもよく（つまり底面３２は無くてもよく）、このため、空気吹き出し部２２は、図４（Ｂ）の変形例に係る断面図である図５のような形状であってもよい。
すなわち、図５に示される空気吹き出し部２２Ａは、図３及び図４の長溝部３０及び貫通孔３１と略同様の構造ではあるが、その断面形状のみが異なり、幅方向の断面形状が円弧状とされている。
このように空気吹き出し部２２Ａの長溝部１３０を円弧状（半円形状）の断面とすることで、貫通孔３１を通る空気が長溝部１３０内で滞留しないようにして空気流を上方に向けて吹き出させることができる。
【００２１】
〔下材１１、及びこれと上材１０との関係について〕
次に、下材１１、及び下材１１と上材１０との関係について、図６及び図７を参照して詳細に説明する。
図６（Ａ）は、図１に示す下材１１の裏面４０側の構造例を示す斜視図であり、図６（Ｂ）は、図６（Ａ）の下材１１の裏面４０の中心部分を拡大して示す斜視図である。図７は、図１に示すフロアパネル１の上材１０と下材１１とを接続した後の一部分を示す縦断面図である。
これらの図に示されるように、下材１１は、フロアパネル１の剛性を高めるために、裏面４０に複数の凹部（側面視で見た場合は凸部）４１，４２が形成されている。
【００２２】
凹部４１，４２は、上材１０側に向かって盛り上がるドーム形状、多角形錐台や円錐台等の錐台状、或いは逆さまにしたお椀状とされ、プレス加工等で形成できる。
本実施形態の凹部４１，４２は、大別して２種類であり、中央部の凹部４１が底面視で８角形状、それ以外の凹部４２が底面視で略円形状とされている。また、凹部４２については、さらに様々な形状や配置となっている。
【００２３】
具体的には、上材１０を下から支持するため、図７に示されるように、凹部４１，４２の最も上材１０側に位置する頂部４０Ｐが、上材１０の空気吹き出し部２１〜２４が配置されていない内面１０Ｍに接続するようになっている。この頂部４０Ｐと上材１０とは、溶接等で固定されている。
また、凹部４１，４２は、床下空間の空調された空気ＡＲを取り込んで上材１０側に供給するため、複数の空気孔４３を有し、この空気孔４３は凹部４１，４２の傾斜面の厚み方向に貫通した孔から形成されている。このように、空気孔４３及び上述した貫通孔３１は双方とも傾斜面に形成されているため、パネル内部（内側空間Ｓ１）を通過する空気の流れをより円滑にすることができる。また、図７に示されるように、高さ方向の位置について、貫通孔３１は空気孔４３と同等或いはそれよりも高く配置されている。
なお、本実施形態の場合、図６に示されるように、各凹部４１，４２に設けられた複数の空気孔４３は頂部４０Ｐを囲むように配置され、内部空間Ｓ１に空気を均等に供給している。
【００２４】
本実施形態のフロアパネル１は以上のように構成され、貫通孔３１は、平坦面１０Ｓと平坦面１０Ｓに続く長溝部３０の内周側面３３とにまたがるように連続して形成されている。従って、長溝部３０の底面３２等の平坦な部分に貫通孔を形成する場合に比べて、底面の大きさや形状に制限されないため、開口面積を大きくとることができる。また、貫通孔３１は溝幅を決定する長溝部３０の底面３２に設ける必要がなく、底面３２の剛性を高めると共に、複数のリブの機能を果たす長溝部３０を数多く形成して、フロアパネル全体の耐荷重性能を維持することもできる。
【００２５】
ところで、本発明は上記実施形態に限定されず、様々な修正と変更が可能であり、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変形が可能である。
例えば、フロアパネル１の上材１０と下材１１は、金属材料で作る他に、強度の高い合成樹脂などで作ることも可能である。
また、貫通孔３１は円形状に限らず、長方形や正方形等の他の形状であっても良い。
また、長溝部３０や内周側面３３の幅や長さやその他の寸法は、特に図示例に限定されず、任意に選択できる。
また、図７では、上材１０の長溝部３０の裏面３２Ｍと、下材１１の底面部１１Ｃの内面４０Ｍとは離れているが、当該裏面３２Ｍと内面４０Ｍとを接続してもよい。
【符号の説明】
【００２６】
１・・・フロアパネル、１０・・・上材、１０Ｓ・・・上材の平坦面、１１・・・下材、３０・・・長溝部、３１・・・貫通孔、４３・・・空気孔
【技術分野】
【０００１】
本発明は、例えば建物の床スラブに配置されて、空調された空気を上方に吹き出すためのフロアパネルに関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、建物の床スラブ等から所定の空間を隔てて設置される床吹き出し空調用のフロアパネルが知られている。このフロアパネルは、床スラブ等との間に流れる空調された空気を、上方に向けて部屋内に吹き出す機能を有し、例えば特許文献１に開示されている。
特許文献１に開示されたフロアパネルの上面には、複数の長溝が設けられており、これらの長溝の底面には複数の貫通孔が形成されている。これにより、このフロアパネルを用いて床吹き出し空調を行った場合には、空気が床下から貫通孔を通じてフロアパネルの上面側へ通過すると共に、貫通孔を通った空気は、長溝に沿って水平方向に拡散するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００３】
【特許文献１】特許第３４５６６０９号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
ところで、上述した構造のフロアパネルでは、床下から床上へ通過させる空調空気の量（つまり通風量）を増やそうとすると、貫通孔を大きくするなどして、パネル全体に対する貫通孔の総開口面積（開口率）を増やす必要がある。
しかし、貫通孔は長溝の底面に形成されているため、貫通孔の形状や数量は長溝の底面形状に自ずと制限されてしまう。このため、貫通孔の開口率を増加させて通風量を増やすことには限界がある。一方、貫通孔の開口率を増加させるためには、長溝の底面を大きくする方法もあるが、それではフロアパネルの耐荷重性能が低下してしまう。
そこで、本発明は、耐荷重性能を維持しながら、通風量を増やすことができるフロアパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００５】
本発明のフロアパネルは、床下空間の空気を床上に通過させるための貫通孔が形成されたフロアパネルであって、平坦面を有するパネル表面には、複数の長溝部が設けられており、前記貫通孔は、前記平坦面と前記平坦面に続く前記長溝部の内周側面とにまたがるように連続して形成されていることを特徴とする。
上記構成によれば、通風量を左右する貫通孔は、平坦面と平坦面に続く長溝部の内周側面とにまたがるように連続して形成されているので、貫通孔を底面に形成するのに比べて、大きな開口部を有する貫通孔を形成できる。換言すれば、本発明の貫通孔であれば、底面に貫通孔を形成した場合と対比して、両者が平面視において同じ形状であれば、大きな開口部を有することになる。
そして、貫通孔は、溝幅を決定する要素となる長溝部の底面には設ける必要がないため、底面に貫通孔を形成した場合に比べて、底面の剛性を向上させると共に、溝幅の狭いリブ機能を有する長溝部を、パネル全面に数多く形成することができ、フロアパネル全体の強度を保持して耐荷重性能を維持できる。
【０００６】
好ましくは、前記長溝部は、幅方向の断面形状が円弧状とされていることを特徴とする。
上記構成によれば、貫通孔を通る空気が長溝部内で滞留しないようにして空気流を上方に向けて吹き出させることができる。
【発明の効果】
【０００７】
以上説明したように、本発明によれば、耐荷重性能を維持しながら、通風量を増やすことができるフロアパネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【０００８】
【図１】本発明の実施形態に係るフロアパネルの分解斜視図と、このフロアパネルの上に配置されるカーペットの斜視図。
【図２】上材の形状例を示す平面図。
【図３】図３（Ａ）は空気吹き出し部の構造を示す斜視図であり、図３（Ｂ）は図３（Ａ）に示す空気吹き出し部を矢印Ｆ方向から見た斜視図。
【図４】図４（Ａ）は空気吹き出し部の構造を示す平面図であり、図４（Ｂ）は図４（Ａ）のＢ−Ｂ線断面図、図４（Ｃ）は図４（Ａ）のＣ−Ｃ線断面図。
【図５】本発明の実施形態の変形例であって、図４（Ａ）のＢ−Ｂ線の位置で切断した場合の断面図。
【図６】図６（Ａ）は図１に示す下材の裏面側の構造例を示す斜視図であり、図６（Ｂ）は図６（Ａ）の下材の裏面の中心部分を拡大して示す斜視図。
【図７】図１に示すフロアパネルの上材と下材の一部分を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【０００９】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【００１０】
〔全体概要〕
図１は、本発明の実施形態に係る二重床やフリーアクセスフロア等とも呼ばれるフロアパネルの分解斜視図と、このフロアパネルの上に配置されるカーペットの斜視図である。
図１では、複数のフロアパネル１が、図示しない支柱を介して、例えば既存の床面や床スラブ等の構造物Ｆとの間に所定の間隔をあけて任意に敷き詰められ、部屋の床面を構成するようになっている。
そして、フロアパネル１と構造物Ｆとの間である床下空間Ｓがダクトの代わりになり、空調された空気ＡＲが、後述する凹部４２に形成された空気孔４３と、空気吹き出し部２１に形成された貫通孔３１を通じて（図１では、図面の簡単化のために、代表して１つの空気吹き出し部２１と凹部４２のみを図示）、床上の部屋内に送られるようになっている。なお、フロアパネル１は、必要に応じて床下空間Ｓに電気配線や通信配線を隠した状態で通すことができる。
フロアパネル１はこのように用いられて、床吹き出し空調用のフロアパネルとされる。
【００１１】
カーペット２は、フロアパネル１の上に敷かれるもので、多数の通気孔により通気性を有する。カーペット２の具体例としては、多数の通気孔が表面から見えないように形成されているものや、多数の通気孔が表面から見えるように形成されているものもある。通気孔の形状としては、丸孔や長孔等がある。図１に示すように、カーペット２の縦方向の寸法Ｌ１と横方向の寸法Ｌ２は、例えばフロアパネル１の縦方向の寸法Ｄ１と横方向の寸法Ｄ２と、それぞれ同じ値に設定されている。
【００１２】
フロアパネル１は、全体が略矩形状に形成され、上材１０と下材１１とを有している。
上材１０は、全体が板状とされ、部屋の床面を構成するもので、上板やトップシート等ともいい、スチールのような金属板を絞り加工することで作られている。
下材１１は、上材１０の剛性ないし耐荷重性を補強する補強部材としての機能を有し、下板やボトムシート等ともいい、好ましくはスチールのような金属をプレスすることにより作られている。本実施形態の場合、下材１１は、全体として箱型の部材であって、略正方形の上部開口部を有し、４つの側面部分１１Ｂと、底面部１１Ｃを有している。
そして、上材１０と下材１１とは、周縁部や一部の領域を除き、互いの間に所定の内側空間を作るように対向して重ねられ、複数か所を溶接等することで固定されている。
【００１３】
〔上材１０について〕
次に、上材１０について、図１、及び上材１０の平面図である図２を参照しながら詳細に説明する。
上材１０は、平面視において、縦方向の寸法Ｄ１と横方向の寸法Ｄ２が同じ略正方形であり、各寸法は例えば約５０ｃｍである。なお、この上材１０は、床下空間の配線を部屋内に引き出すための配線孔が一辺に沿うように形成されており、その配線孔は、使用されない場合、合成樹脂製等の蓋部材１２で隠されている。
このような上材１０は、複数種類の空気吹き出し部２１，２２，２３，２４（以下、「空気吹き出し部２１〜２４」という）を有している。空気吹き出し部２１〜２４は、床下空間の空気を部屋内に供給するための部分であって、出来るだけパネル全面で空調（つまり均等な空調）を行えるように工夫されている。
先ず、空気吹き出し部２１〜２４は、空調空気が水平方向に拡散するように、長溝部と貫通孔とで構成されている（この点については後で詳細に説明する）。
さらに、空気吹き出し部２１〜２４はパネル全面に出来るだけ偏りが少ない状態で配置されている。
【００１４】
具体的には、空気吹き出し部２１〜２４は一方向に長く、その全ての幅Ｗが略同一とされる一方、長さ（後述する図４の長溝部３０の長手方向の寸法Ｌ３）は区々とされることで、その大きさを異にしている。
そして、上材１０は、平面視において、中心ＣＴを通る直線Ｂ１、Ｂ２で区画される４つの略正方形状の領域Ｒ１〜Ｒ４を有し、これら４つの領域Ｒ１〜Ｒ４に、それぞれ複数種類の空気吹き出し部２１〜２４が予め定められたパターンに従って形成されている。
【００１５】
本実施形態の場合、一方向に長い空気吹き出し部２１〜２４は、同じ上記領域内においては、その長さ方向が同じ方向に沿って形成されている。そして、同じ対角線ＯＡ１上にある２つの領域Ｒ１と領域Ｒ３に配置された空気吹き出し部２１〜２４は、その幅が当該対角線ＯＡ１に沿って形成されている。また、同じ対角線ＯＡ２上にある２つの領域Ｒ２と領域Ｒ４に配置された空気吹き出し部２１〜２４は、その幅が当該対角線ＯＡ２に沿って形成されている。
そして、このような空気吹き出し部２１〜２４は、上述のように長さは区々とされる一方で、幅Ｗは互いに略同一に形成され、好ましくは、その幅Ｗを小さくして、空気吹き出し部をパネル全面にまんべんなく形成するようにしている。
なお、本発明は、図２に示す空気吹き出し部２１〜２４の配列の例に限定されず、任意の配列に従って設けることができる。
【００１６】
空気吹き出し部２１〜２４は以上のようにサイズが異なるが、夫々、同様の構造を有している。そこで、図２に示す空気吹き出し部２２の構造を、図３と図４を参照して説明する。
図３（Ａ）は空気吹き出し部２２の構造を示す斜視図であり、図３（Ｂ）は図３（Ａ）に示す空気吹き出し部２２を矢印Ｆ方向から見た斜視図である。図４（Ａ）は空気吹き出し部２２の構造を示す平面図であり、図４（Ｂ）は図４（Ａ）のＢ−Ｂ線断面図、図４（Ｃ）は図４（Ａ）のＣ−Ｃ線断面図である。
【００１７】
図３に示すように、空気吹き出し部２２は、上材１０の上面（部屋側の面）に形成された凹状の長溝部３０と、複数の貫通孔３１を有している。
長溝部３０は、この長溝部３０とカーペット２（図１参照）との間で、貫通孔３１を通過してきた空調空気が、長溝部３０に沿って水平方向に拡がるようにするための部分であり、例えば上材１０を深絞り加工で形成できる。
具体的には、長溝部３０は、平坦な底面３２と内周側面３３とからなり、内周側面３３は底面２２に向って傾斜した例えば平坦な斜面部とされている。
底面３２は、上材１０の平坦面（上材１０の表面であって、敷設されて水平となる）１０Ｓと平行になるように形成され、平面視が概ね長円状であって、長方形部分３２Ａと、この長方形部分３２Ａの両端部に形成された２つの半円形部分３２Ｂを有している。そして、内周側面３３は、この底面３２の長方形部分３２Ａと平坦面１０Ｓとをつなげ、かつ、２つの半円形部分３２Ｂと平坦面１０Ｓとをつなげるように形成されている。
なお、図４（Ｂ）に示すように、上材１０の厚みは例えば１．２ｍｍであり、上材１０の平坦面１０Ｓから底面３２までの寸法は、３．０ｍｍであり、そして上材１０の平坦面１０Ｓから底面３２の裏面までの寸法は、４．２ｍｍである。
【００１８】
貫通孔３１は、床下空間の空気を部屋側に通すための孔であって、図４（Ａ）に示されるように、一つの空気吹き出し部２２に対して、複数の貫通孔３１（図４の場合は６つ）が形成されている。本実施形態の場合、複数の貫通孔３１は、空気吹き出し部２２の長手方向に沿った２つの領域ＡＲ１，ＡＲ２に配置され、一方の領域ＡＲ１の貫通孔３１と他方の領域ＡＲ２の貫通孔３１とは、互いに対向して配置されている。
そして、各貫通孔３１は、上材１０の平坦面１０Ｓと内周側面３３にまたがるようにして連続して形成されている（内周側面３３に形成された貫通孔３１が平坦面１０Ｓまで延伸している）。このため、貫通孔３１は、図４に示すように、平面視が略真円状とされているが、図３に示すように、別の角度から見れば長円状のような形態とされ、実際は大きな開口面積を有している。これにより、底面３２にのみ貫通孔３１を形成した場合に比べて、耐荷重性を落とすことなく、かつ、大きな開口面積を有する貫通孔３１を形成している。すなわち、貫通孔３１の開口面積を大きくしても、底面３２の幅Ｗ１はその貫通孔３１の大きさに拘束されず、自由に設定することができる。そのため、長溝部３０の幅Ｗ２の寸法を小さくして、上材１０に幅の狭い沢山の長溝部３０を形成できる。そして、長溝部３０は強度を向上させるリブとしての役割も果たすため、上材１０の耐荷重性は結果として向上する。
【００１９】
また、貫通孔３１は、その一部が上材１０の平坦面１０Ｓにも形成されているため、空調された暖気などは床下空間から上（部屋内）に通過し易くなっている。しかも、本実施形態の場合、貫通孔３１が形成された内周側面３３は傾斜面とされているため、垂直面に比べて、空調された空気が床下空間から長溝部３０内に入り易く、そして、その長溝部３０内に入った空気は長溝部３０とカーペットとの間で拡散し易くなって、全面空調により適している。
なお、このように内周側面３３は傾斜面であるが、上述のように底面３２の幅Ｗ１は小さく形成できるため（本実施形態の底面３２は幅Ｗ１が６ｍｍ程度）、長溝部３０は上から見た幅Ｗ２が、極端に大きくなるようには設定されていない。当該溝幅Ｗ２は少なくともハイヒールのかかとが挿入しない寸法とされるのがよい。
【００２０】
そして、本実施形態の底面３２は、水平面（表面１０Ｓと平行）とされているが、底面３２は水平面に形成されなくてもよく（つまり底面３２は無くてもよく）、このため、空気吹き出し部２２は、図４（Ｂ）の変形例に係る断面図である図５のような形状であってもよい。
すなわち、図５に示される空気吹き出し部２２Ａは、図３及び図４の長溝部３０及び貫通孔３１と略同様の構造ではあるが、その断面形状のみが異なり、幅方向の断面形状が円弧状とされている。
このように空気吹き出し部２２Ａの長溝部１３０を円弧状（半円形状）の断面とすることで、貫通孔３１を通る空気が長溝部１３０内で滞留しないようにして空気流を上方に向けて吹き出させることができる。
【００２１】
〔下材１１、及びこれと上材１０との関係について〕
次に、下材１１、及び下材１１と上材１０との関係について、図６及び図７を参照して詳細に説明する。
図６（Ａ）は、図１に示す下材１１の裏面４０側の構造例を示す斜視図であり、図６（Ｂ）は、図６（Ａ）の下材１１の裏面４０の中心部分を拡大して示す斜視図である。図７は、図１に示すフロアパネル１の上材１０と下材１１とを接続した後の一部分を示す縦断面図である。
これらの図に示されるように、下材１１は、フロアパネル１の剛性を高めるために、裏面４０に複数の凹部（側面視で見た場合は凸部）４１，４２が形成されている。
【００２２】
凹部４１，４２は、上材１０側に向かって盛り上がるドーム形状、多角形錐台や円錐台等の錐台状、或いは逆さまにしたお椀状とされ、プレス加工等で形成できる。
本実施形態の凹部４１，４２は、大別して２種類であり、中央部の凹部４１が底面視で８角形状、それ以外の凹部４２が底面視で略円形状とされている。また、凹部４２については、さらに様々な形状や配置となっている。
【００２３】
具体的には、上材１０を下から支持するため、図７に示されるように、凹部４１，４２の最も上材１０側に位置する頂部４０Ｐが、上材１０の空気吹き出し部２１〜２４が配置されていない内面１０Ｍに接続するようになっている。この頂部４０Ｐと上材１０とは、溶接等で固定されている。
また、凹部４１，４２は、床下空間の空調された空気ＡＲを取り込んで上材１０側に供給するため、複数の空気孔４３を有し、この空気孔４３は凹部４１，４２の傾斜面の厚み方向に貫通した孔から形成されている。このように、空気孔４３及び上述した貫通孔３１は双方とも傾斜面に形成されているため、パネル内部（内側空間Ｓ１）を通過する空気の流れをより円滑にすることができる。また、図７に示されるように、高さ方向の位置について、貫通孔３１は空気孔４３と同等或いはそれよりも高く配置されている。
なお、本実施形態の場合、図６に示されるように、各凹部４１，４２に設けられた複数の空気孔４３は頂部４０Ｐを囲むように配置され、内部空間Ｓ１に空気を均等に供給している。
【００２４】
本実施形態のフロアパネル１は以上のように構成され、貫通孔３１は、平坦面１０Ｓと平坦面１０Ｓに続く長溝部３０の内周側面３３とにまたがるように連続して形成されている。従って、長溝部３０の底面３２等の平坦な部分に貫通孔を形成する場合に比べて、底面の大きさや形状に制限されないため、開口面積を大きくとることができる。また、貫通孔３１は溝幅を決定する長溝部３０の底面３２に設ける必要がなく、底面３２の剛性を高めると共に、複数のリブの機能を果たす長溝部３０を数多く形成して、フロアパネル全体の耐荷重性能を維持することもできる。
【００２５】
ところで、本発明は上記実施形態に限定されず、様々な修正と変更が可能であり、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変形が可能である。
例えば、フロアパネル１の上材１０と下材１１は、金属材料で作る他に、強度の高い合成樹脂などで作ることも可能である。
また、貫通孔３１は円形状に限らず、長方形や正方形等の他の形状であっても良い。
また、長溝部３０や内周側面３３の幅や長さやその他の寸法は、特に図示例に限定されず、任意に選択できる。
また、図７では、上材１０の長溝部３０の裏面３２Ｍと、下材１１の底面部１１Ｃの内面４０Ｍとは離れているが、当該裏面３２Ｍと内面４０Ｍとを接続してもよい。
【符号の説明】
【００２６】
１・・・フロアパネル、１０・・・上材、１０Ｓ・・・上材の平坦面、１１・・・下材、３０・・・長溝部、３１・・・貫通孔、４３・・・空気孔
【特許請求の範囲】
【請求項１】
床下空間の空気を床上に通過させるための貫通孔が形成されたフロアパネルであって、
平坦面を有するパネル表面には、複数の長溝部が設けられており、
前記貫通孔は、前記平坦面と前記平坦面に続く前記長溝部の内周側面とにまたがるように連続して形成されている
ことを特徴とするフロアパネル。
【請求項２】
前記長溝部は、幅方向の断面形状が円弧状とされていることを特徴とする請求項１に記載のフロアパネル。
【請求項１】
床下空間の空気を床上に通過させるための貫通孔が形成されたフロアパネルであって、
平坦面を有するパネル表面には、複数の長溝部が設けられており、
前記貫通孔は、前記平坦面と前記平坦面に続く前記長溝部の内周側面とにまたがるように連続して形成されている
ことを特徴とするフロアパネル。
【請求項２】
前記長溝部は、幅方向の断面形状が円弧状とされていることを特徴とする請求項１に記載のフロアパネル。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図６】
【図７】
【図５】
【図２】
【図３】
【図４】
【図６】
【図７】
【図５】
【公開番号】特開２０１２−２１１４９３（Ｐ２０１２−２１１４９３Ａ）
【公開日】平成２４年１１月１日（２０１２．１１．１）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１１−７８４５３（Ｐ２０１１−７８４５３）
【出願日】平成２３年３月３１日（２０１１．３．３１）
【出願人】（０００２３３２３９）日立機材株式会社 (225)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２４年１１月１日（２０１２．１１．１）
【国際特許分類】
【出願日】平成２３年３月３１日（２０１１．３．３１）
【出願人】（０００２３３２３９）日立機材株式会社 (225)
【Ｆターム（参考）】
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