説明

フロアパネル

【課題】耐荷重性能を維持しながら、通風量を増やすことができるフロアパネルを提供する。
【解決手段】床下空間の空気を床上に通過させるための貫通孔31が形成された吹き出すためのフロアパネル1には、平坦面を有するパネル表面に複数の長溝部30が設けられており、貫通孔31が長溝部30の長手方向両端の短辺側面に形成されていることで、耐荷重性能を維持しながら、貫通孔31を通る空気の通風量を増やすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建物の床スラブに配置されて、空調された空気を上方に吹き出すためのフロアパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の床スラブ等から所定の空間を隔てて設置される床吹き出し空調用のフロアパネルが知られている。このフロアパネルは、床スラブ等との間に流れる空調された空気を、上方に向けて部屋内に吹き出す機能を有し、例えば特許文献1に開示されている。
特許文献1に開示されたフロアパネルの上面には、複数の長溝が設けられており、これらの長溝の底面には複数の貫通孔が形成されている。これにより、このフロアパネルを用いて床吹き出し空調を行った場合には、空気が床下から貫通孔を通じてフロアパネルの上面側へ通過すると共に、貫通孔を通った空気は、長溝に沿って水平方向に拡散するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3456609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した構造のフロアパネルでは、床下から床上へ通過させる空調空気の量(つまり通風量)を増やそうとすると、各長溝の底面に形成された貫通孔を大きくするなどして、パネル全体に対する貫通孔の総開口面積(開口率)を増やす必要がある。
しかし、各長溝の底面に形成された貫通孔の開口率を増やすと、フロアパネルの耐荷重性能が低下する。このため、各長溝の底面に形成する貫通孔の開口率には制限が生じ、フロアパネルの通風量を増加させるには限界があった。
そこで、本発明は、耐荷重性能を維持しながら、通風量を増やすことができるフロアパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は、請求項1の発明によれば、床下空間の空気を床上に通過させるための貫通孔が形成されたフロアパネルであって、平坦面を有するパネル表面に複数の長溝部が設けられており、前記貫通孔は、前記長溝部の長手方向両端の短辺側面に形成されていることにより、達成される。
上記構成によれば、通風量を左右する貫通孔は、長溝部の長手方向両端の短辺側面に形成されているため、たとえ溝幅が狭くても、短辺側面に大きな開口面積を有する貫通孔を形成できる。そして、貫通孔は、溝幅を決定する要素となる長溝部の底面には設ける必要がないため、底面に貫通孔を形成した場合に比べて、底面の剛性を向上させると共に、溝幅の狭いリブ機能を有する長溝部を、パネル全面に数多く形成することができ、フロアパネル全体の強度を保持して耐荷重性能を維持できる。
【0006】
また、請求項2によれば、請求項1の構成において、前記貫通孔は、前記短辺側面全体を開口することで形成されていることを特徴とする。
上記構成によれば、短辺側面全体を通風孔とすることができ、より多くの空気を通すことができる。
【0007】
また、請求項3によれば、請求項1の構成において、前記長溝部の短手方向両端の長辺側面に、その厚み方向に貫通した通風孔が形成されていることを特徴とする。
上記構成によれば、短辺側面の貫通孔のみならず、長辺側面にも通風孔が形成されているので、この通風孔からも空気を送って、より多くの通風量を確保できる。なお、このように長辺側面に通風孔を形成した場合であっても、底面の剛性を低下させることはなく、また、溝幅の狭いリブ機能を有する長溝部を、パネル全面に数多く形成することができるため、耐荷重性能の低下を有効に防止できる。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、本発明によれば、耐荷重性能を維持しながら、通風量を増やすことができるフロアパネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係るフロアパネルの分解斜視図と、このフロアパネルの上に配置されるカーペットの斜視図。
【図2】上材の形状例を示す平面図。
【図3】図3(A)は空気吹き出し部の構造を示す斜視図であり、図3(B)は、図3(A)に示す空気吹き出し部を矢印F方向から見た斜視図。
【図4】図4(A)は空気吹き出し部の構造を示す平面図であり、図4(B)は図4(A)のB−B線断面図、図4(C)は図4(A)のC−C線断面図。
【図5】図5(A)は図1に示す下材の裏面側の構造例を示す斜視図であり、図5(B)は図5(A)の下材の裏面の中心部分を拡大して示す斜視図。
【図6】図1に示すフロアパネルの上材と下材の一部分を示す断面図。
【図7】本発明に係るフロントパネルの変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0011】
〔全体概要〕
図1は、本発明の実施形態に係る二重床やフリーアクセスフロア等とも呼ばれるフロアパネルの分解斜視図と、このフロアパネルの上に配置されるカーペットの斜視図である。
図1では、複数のフロアパネル1が、図示しない支柱を介して、例えば既存の床面や床スラブ等の構造物Fとの間に所定の間隔をあけて任意に敷き詰められ、部屋の床面を構成するようになっている。
そして、フロアパネル1と構造物Fとの間である床下空間Sがダクトの代わりになり、空調された空気ARが、後述する凹部42に形成された空気孔43と、空気吹き出し部21に形成された貫通孔31(図3参照)を通じて(図1では、図面の簡単化のために、代表して1つの空気吹き出し部21と凹部42のみを図示)、床上の部屋内に送られるようになっている。なお、フロアパネル1は、必要に応じて床下空間Sに電気配線や通信配線を隠した状態で通すことができる。
フロアパネル1はこのように用いられて、床吹き出し空調用のフロアパネルとされる。
【0012】
カーペット2は、フロアパネル1の上に敷かれるもので、多数の通気孔により通気性を有する。カーペット2の具体例としては、多数の通気孔が表面から見えないように形成されているものや、多数の通気孔が表面から見えるように形成されているものもある。通気孔の形状としては、丸孔や長孔等がある。図1に示すように、カーペット2の縦方向の寸法L1と横方向の寸法L2は、例えばフロアパネル1の縦方向の寸法D1と横方向の寸法D2と、それぞれ同じ値に設定されている。
【0013】
フロアパネル1は、全体が略矩形状に形成され、上材10と下材11とを有している。
上材10は、全体が板状とされ、部屋の床面を構成するもので、上板やトップシート等ともいい、スチールのような金属板を絞り加工することで作られている。
下材11は、上材10の剛性ないし耐荷重性を補強する補強部材としての機能を有し、下板やボトムシート等ともいい、好ましくはスチールのような金属をプレスすることにより作られている。本実施形態の場合、下材11は、全体として箱型の部材であって、略正方形の上部開口部を有し、4つの側面部分11Bと、底面部11Cを有している。
そして、上材10と下材11とは、周縁部や一部の領域を除き、互いの間に所定の内側空間を作るように対向して重ねられ、複数か所を溶接等することで固定されている。
【0014】
〔上材10について〕
次に、上材10について、図1、及び上材10の平面図である図2を参照しながら詳細に説明する。
上材10は、平面視において、縦方向の寸法D1と横方向の寸法D2が同じ略正方形であり、各寸法は例えば約50cmである。なお、この上材10は、床下空間の配線を部屋内に引き出すための配線孔が一辺に沿うように形成されており、その配線孔は、使用されない場合、合成樹脂製等の蓋部材12で隠されている。
このような上材10は、複数種類の空気吹き出し部21,22,23,24(以下、「空気吹き出し部21〜24」という)を有している。空気吹き出し部21〜24は、床下空間の空気を部屋内に供給するための部分であって、出来るだけパネル全面で空調(つまり均等な空調)を行えるように工夫されている。
先ず、空気吹き出し部21〜24は、当該空気が水平方向に拡散するように、長溝部と貫通孔とで構成されている(この点については後で詳細に説明する)。
さらに、空気吹き出し部21〜24はパネル全面に出来るだけ偏りが少ない状態で配置されている。
【0015】
具体的には、空気吹き出し部21〜24は一方向に長く、その全ての幅Wが略同一とされる一方、長さは区々とされることで、その大きさを異にしている。
そして、上材10は、平面視において、中心CTを通る直線B1、B2で区画される4つの略正方形状の領域R1〜R4を有し、これら4つの領域R1〜R4に、それぞれ複数種類の空気吹き出し部21〜24が予め定められたパターンに従って形成されている。
【0016】
本実施形態の場合、一方向に長い空気吹き出し部21〜24は、同じ上記領域内においては、その長さ方向が同じ方向に沿って形成されている。そして、同じ対角線OA1上にある2つの領域R1と領域R3に配置された空気吹き出し部21〜24は、その幅が当該対角線OA1に沿って形成されている。また、同じ対角線OA2上にある2つの領域R2と領域R4に配置された空気吹き出し部21〜24は、その幅が当該対角線OA2に沿って形成されている。
そして、このような空気吹き出し部21〜24は、上述のように長さは区々とされる一方で、幅Wは互いに略同一に形成され、好ましくは、その幅Wを小さくして、空気吹き出し部をパネル全面にまんべんなく形成するようにしている。
なお、本発明は、図2に示す空気吹き出し部21〜24の配列の例に限定されず、任意の配列に従って設けることができる。
【0017】
空気吹き出し部21〜24は以上のようにサイズが異なるが、夫々、同様の構造を有している。そこで、図2に示す空気吹き出し部22の構造を、図3と図4を参照して説明する。
図3(A)は空気吹き出し部22の構造を示す斜視図であり、図3(B)は図3(A)に示す空気吹き出し部22を矢印F方向から見た斜視図である。図4(A)は空気吹き出し部22の構造を示す平面図であり、図4(B)は図4(A)のB−B線断面図、図4(C)は図4(A)のC−C線端面図である。
【0018】
図3に示すように、空気吹き出し部22は、上材10の上面(部屋側の面)に形成された凹状の長溝部30と、複数の貫通孔31を有している。
長溝部30は、この長溝部30とカーペット2(図1参照)との間で、貫通孔31を通過してきた空調空気が、長溝部30に沿って水平方向に拡がるようにするための部分であり、例えば上材10を深絞り加工で形成できる。
この長溝部30は、底部30Aから開口部に向かって除々に拡幅され、図のように幅方向の断面形状が円弧状(換言すれば、底部は水平面ではなく、底面が略存在しない状態)とされるのが好ましい。これにより、貫通孔31を通った後の空気が長溝部30内で滞留することを有効に防止できる。
【0019】
貫通孔31は、床下空間の空気を部屋側に通すための孔であって、図4(C)に示されるように、各長溝部30の長手方向両端の短辺側面に形成されている。したがって、長手方向両端の貫通孔31から空気を長溝部30に沿って吹き出させ易くし、これにより、底面に貫通孔を形成する場合に比べて、空気を水平方向に効果的に拡散することができる。
【0020】
ここで、貫通孔31は長溝部30の短辺側面に形成されているため、後述するようにフロアパネル1の耐荷重性を向上させるために、溝幅Wを決定するための要素である底部30Aの幅を狭くしたとしても、例えば長溝部30を深くしたり、或いは上述のように長溝部断面形状を円弧状としたりすることで、底部30Aに貫通孔を設けるのに比べて、大きな開口面積を有する貫通孔31を形成することができる。
また、本実施形態の貫通孔31は、その開口面積を最大にするため、短辺側面の全体を開口することで形成されている。
【0021】
そして、このように貫通孔31の開口面積を大きくしたとしても、底部30Aの幅はその貫通孔31の大きさにあまり拘束されずに設定できる(換言すれば、貫通孔31は底部の幅だけに拘束されるものではない)。そのため、長溝部30の幅Wの寸法を小さくして、上材10に幅の狭い沢山の長溝部30を形成できる。そして、長溝部30は強度を向上させるリブとしての役割も果たすため、上材10の耐荷重性は結果として向上する。なお、本実施形態の長溝部30の幅方向断面形状は円弧状であるため、底部30Aの幅に比べて開口部側の幅Wは大きくなっているが、上述のように底部30Aの幅を小さく形成しているため(つまり、本発明の場合は水平面を有する底面がなくてもよい)、溝幅Wは極端に大きくなるようには設定されていない。少なくとも、長溝部30の溝幅Wは、ハイヒールのかかとが挿入しない寸法とされるのがよい。
【0022】
〔下材11、及びこれと上材10との関係について〕
次に、下材11、及び下材11と上材10との関係について、図5及び図6を参照して詳細に説明する。
図5(A)は図1に示す下材11の裏面40側の構造例を示す斜視図であり、図5(B)は図5(A)の下材11の裏面40の中心部分を拡大して示す斜視図である。図6は、図1に示すフロアパネル1の上材10と下材11とを接続した後の一部分を示す縦断面図である。
これらの図に示されるように、下材11は、フロアパネル1の剛性を高めるために、裏面40に複数の凹部(側面視で見た場合は凸部)41,42が形成されている。
【0023】
凹部41,42は、上材10側に向かって盛り上がるドーム形状、多角形錐台や円錐台等の錐台状、或いは逆さまにしたお椀状とされ、プレス加工等で形成できる。
本実施形態の凹部41,42は、大別して2種類であり、中央部の凹部41が底面視で8角形状、それ以外の凹部42が底面視で略円形状とされている。また、凹部42については、さらに様々な形状や配置となっている。
【0024】
具体的には、上材10を下から支持するため、図6に示されるように、凹部41,42の最も上材10側に位置する頂部40Pが、上材10の空気吹き出し部21〜24が配置されていない内面10Mに接続するようになっている。この頂部40Pと上材10とは、溶接等で固定されている。
また、凹部41,42は、床下空間の空調された空気ARを取り込んで上材10側に供給するため、斜面にその厚み方向に貫通した複数の空気孔43を有している。なお、本実施形態の空気孔43は、図5に示されるように、頂部40Pを囲むように複数が配置され、内部空間S1に空気を均等に供給するようにしている。
【0025】
本発明の実施形態は以上のように構成され、通風量を左右する貫通孔31は、長溝部30の長手方向両端の短辺側面に形成されているため、たとえ底部30Aが狭くても、短辺側面に大きな開口面積を有する貫通孔31を形成できる。そして、貫通孔31は溝幅Wを決定する要素となる底部30Aには設ける必要がないため、底面に貫通孔を形成した場合に比べて、底部30Aの剛性を向上させると共に、溝幅Wの狭いリブ機能を有する長溝部30を、パネル全面に数多く形成することができ、フロアパネル全体の強度を保持して耐荷重性能を維持できる。
【0026】
図7は本発明の上記実施形態に係るフロアパネルの変形例である。
図7(A)は第1変形例であって、この変形例に係る空気吹き出し部22Aが、図1〜図6の空気吹き出し部22と異なるのは、貫通孔31とは別に、底部にも床下空間の空気を部屋側に供給するための通風孔55が形成されている点である。
この底部の通風孔55は、フロアパネルの耐荷重性を低下させない程度の小さなもので、補助的な空気孔である。具体的に、底部の複数の通風孔55は、少なくともその総開口面積が短辺側面の貫通孔31の開口面積よりも小さく、この変形例の各通風孔55の直径は例えば1mm程度とされている。これにより、さほど耐荷重性を低下させることなく、貫通孔31と通風孔55とでフロアパネルの開口率をさらに上げることができる。
【0027】
図7(B)は第2変形例であって、この変形例に係る空気吹き出し部22Bが、図1〜図6の空気吹き出し部22と異なるのは、貫通孔31とは別に、長辺側面にも床下空間の空気を部屋側に供給するための孔が形成されている点である。
すなわち、長溝部30の短手方向両端の長辺側面には、その厚み方向に貫通した通風孔57が形成されている。これにより、貫通孔31と通風孔57とで、フロアパネルの開口率をさらに上げることができる。
なお、この長辺側面の複数の通風孔57については、耐荷重性を少しでも上げるため、その総開口面積が短辺側面の貫通孔31の開口面積よりも小さくなっているが、図7(A)の底部の通風孔55程小さくは形成されていない。このように長辺側面に通風孔57を形成した場合であっても、長溝底部の剛性を低下させることはなく、また、溝幅の狭いリブ機能を有する長溝部30を、パネル全面に数多く形成することができるため、耐荷重性能の低下を有効に防止できる。
なお、これら図7(A)、図7(B)、及び図1〜図6に係る空気吹き出し部は、図7(C)に示されるような空気吹き出し部22Cであっても構わない。すなわち、図7(C)の空気吹き出し部22Cは、その長溝部130の底面132が平坦面になっており、2つの貫通孔31は例えば台形状になっている。
【0028】
ところで、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明は様々な修正と変更が可能であり、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変形が可能である。
例えば、フロアパネル1の上材10と下材11は、金属材料で作る他に、強度の高い合成樹脂などで作ることも可能である。
また、図6では、上材10の長溝部30の裏面32Mと、下材11の底面部11Cの内面40Mとは離れているが、当該裏面32Mと内面40Mとを接続してもよい。
【符号の説明】
【0029】
1・・・フロアパネル、10・・・上材、11・・・下材、30・・・長溝部、31・・・貫通孔、57・・・通風孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床下空間の空気を床上に通過させるための貫通孔が形成されたフロアパネルであって、
平坦面を有するパネル表面に複数の長溝部が設けられており、
前記貫通孔は、前記長溝部の長手方向両端の短辺側面に形成されている
ことを特徴とするフロアパネル。
【請求項2】
前記貫通孔は、前記短辺側面全体を開口することで形成されていることを特徴とする請求項1に記載のフロアパネル。
【請求項3】
前記長溝部の短手方向両端の長辺側面に、その厚み方向に貫通した通風孔が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のフロアパネル。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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