説明

フロア搬送装置における搬送物の姿勢を維持しつつ搬送方向を変換する機構

【課題】 搬送物の姿勢を維持しつつ搬送方向を変換させることによって、搬送物の向きを自在に調整できるとともに、省スペース化および省エネルギ化に資する搬送方向変換機構を提供する。
【解決手段】 走行体1は、本体部11の上部に立設された支柱用基軸14を備える。搬送物用支柱2は、支柱用基軸を延長するように、かつ、支柱用基軸の軸回りに回動自在に接続された支柱本体21と、この支柱本体から径方向に突出する位置に配置された二種類のガイドローラ群3,4とを備える。搬送レールLによる搬送経路の向きを変化させる範囲には、搬送レールに平行な状態で設けられ、かつ、上記二種類のガイドローラ群を個別に案内する二種類のガイドレールGL1,GL2を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置における搬送方向変換機構に関し、専ら、フロア搬送装置において、搬送物の姿勢を維持しつつ搬送方向を変換するための機構であって、走行体が搬送レールに沿って走行する途中において、走行体が進行方向を変更する際に、当該走行体に設けられる搬送物用支柱を回転させる機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
搬送装置における搬送方向変換機構としては、搬送レールによって構成される搬送経路を湾曲させることが周知である。そこで、搬送物の姿勢(向き)を変動させないためには、上記方向変換の前後において、搬送物の姿勢(向き)を所望の状態に変化させ、結果的に搬送方向の変換前後における搬送物の姿勢(向き)を同一にすることが必要であった。そのために、搬送物が積載されているトレイを支持している搬送物用支柱を回転させることが想定されるが、支柱回転機構としては、本願の出願人が提案する積載方向変更装置があった(特許文献1参照)。この装置は、支柱から突出する当接部に対し、移動部材の端縁が当接するように設けられ、かつ、移動部材に設けられた係入溝に上記当接部が係入することにより、支柱を回転させる機構であった。なお、搬送レールに沿って走行体を移動させる搬送装置としては、本願の出願人が提案する床上に搬送経路を有するものがあり(特許文献2参照)、走行体に対して駆動チェーンが駆動力を付与し、また、当該駆動チェーンとの掛止・解除を操作することによって、走行体の移動・停止を制御できる機構を備える構成とすることができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実登第3090636号公報
【特許文献2】実登第3086461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示される支柱の回転機構は、支柱(積載物の向き)を瞬時に回転させるために考案されたものであって、移動中の走行体の進行方向に対し、逆向きに移動部材を移動させ、支柱から突出する当接部に対して回転力を付与するものであった。
【0005】
ところが、上記の支柱回転機構は、短時間での回転を要求される搬送装置においては非常に効率よいものであるが、移動部材を移動させることができる直線状搬送経路が必要となり、省スペース化には不向きであることがわかった。また、瞬時に搬送物の向きを変更できることから、作業時間の短縮に非常に効果を発揮するとしても、そのために、搬送用の駆動力と異なる駆動力(移動部材のための駆動力)を個別に必要とし、省エネルギ化に不向きであることもわかった。さらに、搬送物の搬送経路を変更したいが、搬送物の向きを変更したくないような場合には、搬送経路が変更される直前または直後において、搬送物の向きを変更するための機構を余分に備えなければならないという問題点も判明した。
【0006】
さらに、上記特許文献2に開示されるように、駆動チェーンにより走行体を移動・停止させる機構により、複数の搬送物を搬送経路上で停留させる場合は、搬送物が長尺物であれば、搬送方向に対して搬送物を幅方向にすることが効率的である。なぜなら、長尺物の長手方向に整列させつつ停留させる場合は、前後の搬送物との間に長い間隔を必要とするが、幅方向に整列させつつ停留させる場合には、前後の搬送物との間の距離を小さくすることができるからである。
【0007】
本発明は、上記諸点にかんがみてなされたものであって、その目的とするところは、搬送物の姿勢を維持しつつ搬送方向を変換させることによって、搬送物の向きを自在に調整できるとともに、省スペース化および省エネルギ化に資する搬送方向変換機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明は、搬送経路を構成する搬送レールと、この搬送レールに軌道を制限されながら移動する走行体と、搬送物を支持するために上記走行体に立設された搬送物用支柱とを備えた搬送装置において、上記走行体は、走行方向に所定の長さを有する本体部と、この本体部の前後端付近の下部に設けられ、上記搬送レールに沿って転動する走行車輪と、上記本体部の上部に立設された支柱用基軸とを備え、上記搬送物用支柱は、上記支柱用基軸を延長するように、かつ、該支柱用基軸の軸回りに回動自在に接続された支柱本体と、この支柱本体から該支柱本体の径方向に突出する位置に配置された二種類のガイドローラ群とを備え、さらに、上記搬送レールによる搬送経路の向きを変化させる範囲に、該搬送レールに平行な状態で設けられ、かつ、上記二種類のガイドローラ群を個別に案内する二種類のガイドレールを備えることを特徴とするものである。
【0009】
上記構成によれば、搬送経路の向きが変化する搬送レールに沿って走行体が移動するとき、搬送物用支柱から突出する二種類のガイドローラ群が、二種類のガイドレールによって個別に案内されることとなり、走行体の向きとは無関係にガイドローラ群の位置を調整することができる。このガイドローラ群の位置が調整されることにより、走行体の向きとガイドローラ群の突出方向とが、相対的に異なる状態となり、結果的に、搬送物の姿勢(向き)を調整することができる。
【0010】
上記発明における二種類のガイドローラ群は、前記支柱本体の軸線を中心に180°の角度を有しつつ径方向に同じ長さで突出する位置に配置された第一のガイドローラ群と、この第一のガイドローラ群に対し90°の角度を有しつつ径方向に同じ長さで突出する位置で、かつ、上記第一のガイドローラ群とは異なる高さに配置された第二のガイドローラ群とで構成することができる。
【0011】
上記構成によれば、第一のガイドローラ群と第二のガイドローラ群との間には、90°の角度が形成されることから、第一のガイドローラ群を構成する1個のガイドローラを基準として、第二のガイドローラ群を構成する1個のガイドローラの位置が調整された状態から、上記第二のガイドローラ群を構成する1個のガイドローラを基準として、第一のガイドローラ群を構成する他方のガイドローラの位置を調整することにより、90°の角度調整が可能となる。このとき、搬送レールによる搬送経路の向きが90°変化する場合には、走行体の進行方向が90°変化するのに対し、搬送物用支柱を反対方向に90°回転させることも可能となり、このような搬送物用支柱の回転により、走行体の進行方向が変化したにもかかわらず、搬送物の向きを変化させない搬送状態を実現することができる。
【0012】
また、本発明は、上記のような搬送装置における搬送方向変換機構であって、さらに、前記支柱本体には、鍔状に設けられるとともに、周縁を適宜間隔で切り欠いた切欠部を有するインデックスプレートと、このインデックスプレートの切欠部に係入して該インデックスプレートを係止する係止部材とを備えたことを特徴とするものである。
【0013】
上記構成によれば、搬送物用支柱が回転された状態をインデックスプレートおよび係止部材によって保持させることができる。これは、搬送物用支柱の支柱本体が走行体の支柱用基軸に対して軸回りに回動自在であることから、搬送物用支柱を回転させるべき状況でない場合に、当該搬送物用支柱の回動を制限するものであり、結果として、搬送物用支柱によって支持される搬送物を一定の状態に維持させることができる。なお、インデックスプレートとは、搬送物用支柱が軸回りに回転するとき、所定角度であることを見出しやすいように、切欠部を順序よく並べたもの(索引(インデックス))を意味し、特に、所定角度ごとに切欠部が設けられていることから、切欠部に係入部材を係入させることにより搬送物用支柱の回転を一時的に保持させることができるものである。
【0014】
上記発明における係止部材は、前記インデックスプレートの周縁に摺接する係入ローラと、この係入ローラを上記インデックスプレートの周縁に向かって付勢しつつ該係入ローラを支持する支持部材とを備えた構成とすることができる。
【0015】
上記構成によれば、インデックスプレートの切欠部に係止部材の係入ローラが係入している状態から、インデックスプレートを搬送物用支柱の軸回りに回転させるためには、当該係止部材に作用する付勢力に抗することができる回転力が必要となり、強力に搬送物用支柱を回転させる場合を除き、当該搬送物用支柱を容易に回転させないようにすることができる。従って、前記ガイドローラ群がガイドレールによって案内される場合を除き、搬送物用支柱を回転させないようにすることができるのである。
【0016】
また、本発明は、上記構成の搬送装置における搬送方向変換機構であって、前記支持部材は、一端に前記係入ローラが支持される揺動部材によって構成され、該揺動部材の他端には該揺動部材の揺動状態を制御する揺動制御ローラを備え、さらに、上記搬送レールによる搬送経路の向きを変化させる範囲のうちの適宜範囲に、該搬送レールに平行な状態で設けられ、かつ、前記係入ローラの付勢に抗する方向に上記揺動部材を揺動させるように上記揺動制御ローラを案内する揺動案内レールを備えることを特徴とするものである。
【0017】
上記構成によれば、搬送経路の適宜範囲において、揺動部材を揺動させることにより、係止部材の係入ローラをインデックスプレートの切欠部から脱出させることが可能となる。従って、搬送物用支柱を回転させるべき範囲において揺動部材を揺動させる場合には、インデックスプレートに対する係止部材の係止状態が解除されることとなるから、上記搬送物用支柱の回転を容易にすることができる。なお、揺動制御ローラに対する案内が終了した後は、再び係入ローラがインデックスプレートの周縁に付勢されることとなり、そこに切欠部が存在すればインデックスプレートの回動は再び制限されることとなる。
【0018】
上記発明におけるインデックスプレートの切欠部は、前記支柱本体の軸線を中心に90°の角度のピッチで設けられた構成とすることができる。上記構成によれば、搬送物用支柱の回転を90°で行う場合、その回転角度の単位でインデックスプレートを係止することができる。
【0019】
また、上記各発明における走行車輪は、個別に前記走行体の本体部に設けられた前輪部および後輪部によって構成されるとともに、上記前輪部および後輪部は、それぞれ1本の回動軸により回動自在に軸支されているように構成することができる。
【0020】
上記構成によれば、走行体は、前輪部と後輪部とによってカーブを曲がることができることから、搬送経路を変化させる際に、比較的小さい曲率半径の搬送経路であっても走行が可能となる。すなわち、前輪部および後輪部は1本の回動軸によって回動自在に軸支されていることから、この軸支部の軸線を中心として両車輪は回動可能となり、前輪部の角度と後輪部の角度を一致させる必要がなく、曲率半径が小さいカーブにおいても両輪は転動可能な状態となるのである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、搬送経路の変更時に支柱を回転させることによって、搬送物の姿勢を調整することができ、また、他の駆動力および当該駆動により移動する部材を不要にすることができる。従って、駆動機構を設置する場所を省略することにより省スペース化を可能にし、また、回転駆動のための駆動力を付与させる必要がないことから、全体的な消費エネルギを減らすことによって省エネルギ化することができる。
【0022】
特に、走行体の前輪部および後輪部を、それぞれ1本の回動軸によって軸支された構成においては、曲率半径が小さい弧状の搬送経路においても搬送可能となり、省スペース化に資するものとなり得る。
【0023】
なお、走行体の移動方向が90°変更することに対し、搬送物用支柱を反対方向に90°回転させる場合には、走行体による搬送方向が変換されるにもかかわらず、搬送物の向きを一定(姿勢を維持)にすることができ、搬送物の向きが作業の内容に大きな影響を与える場合には作業効率を向上させることとなり、結果的に省エネルギ化にも資することとなる。
【0024】
この点、搬送物が長尺物(例えば、車両用バンパ)である場合、搬送経路上において複数の搬送物を一時的に停止させる際には、搬送経路に対して搬送物を幅方向に整列させることが容易となる。これにより、搬送経路全体の長さを縮小させることも可能となるから、省スペース化に資することとなる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第一の実施形態を示す説明図である。
【図2】ガイドローラ群の状態を示す斜視図である。
【図3】本実施形態の作動態様を示す説明図である。
【図4】本実施形態の作動態様を示す説明図である。
【図5】本発明の第二の実施形態を示す説明図である。
【図6】インデックスプレートと係止部材の形態を示す説明図である。
【図7】係止部材を揺動させるための機構を示す説明図である。
【図8】車輪の構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態の概略を示す斜視図である。この図に示すように、本実施形態の概略は、搬送レールLと、この搬送レールLに軌道を制限されながら移動する走行体1とで構成されている。この走行体の上部には搬送物用支柱2が立設され、その上端に図示せぬ搬送物が積載されるのである。走行体1には、進行方向に向かって長尺な略四角柱状の本体部11と、その前後の下部に車輪12,13を有しており、搬送レールLの内部底面上を車輪12,13が転動することによって移動可能となっている。また、搬送レールLに沿って図示せぬ駆動チェーンが設けられ、駆動チェーンに引っ張られるようにして走行体1が進行するように構成されている。
【0027】
ここで、走行体1の本体部11には、支柱用基軸14が立設されており、この支柱用基軸14に上記搬送物用支柱2が接続されるのである。この搬送物用支柱2は、少なくとも接続端部を含む部分により支柱本体21が形成されている。この支柱本体21は管状に構成されており、その内径が上記支柱用基軸14の外径よりも大きく構成されることにより、支柱用基軸14が搬送物用支柱2の接続端部に挿入して接続することができるものである。また、上記の状態で搬送物用支柱2が接続されることによって、搬送物用支柱2が支柱用基軸14を延長するような状態となり、さらに、当該搬送物用支柱2が支柱用基軸14の軸回りに回動自在な状態となるのである。
【0028】
上記構成の搬送物用支柱2の支柱本体21には、略十字状のローラ支持部22が固着されており、このローラ支持部22の先端には、二種類のガイドローラ3a,3b,4a,4bが設けられている。一方のガイドローラ3a,3b(これを第一のガイドローラといい、これらのガイドローラをまとめて第一のガイドローラ群3という)は、ローラ支持部22の上面側に設けられ、他方のガイドローラ4a,4b(これを第二のガイドローラといい、これらのガイドローラをまとめて第二のガイドローラ群4という)は、ローラ支持部22の下面側に設けられている。このように、第一のガイドローラ群3と第二のガイドローラ群4とが、ローラ支持部22を挟んで上下に分けて支持されることによって、その高さ方向に位置を異ならせているのである。
【0029】
そして、上記二種類のガイドローラ群3,4の軌道を規制すべき位置には、二種類のガイドレールGL1,GL2が搬送レールLの上方に設けられる。このガイドレールGL1,GL2の案内面(案内端縁)は、高さ方向の異なる二種類のガイドローラ群3,4の高さに合致するように、両者の高さが異なるように調整されており、第一のガイドローラ群3を案内するための第一のガイドレールGL1と、第二のガイドローラ群4を案内するための第二のガイドレールGL2とに区別されているのである。
【0030】
ここで、ガイドローラ群3,4の詳細について説明する。図2は、支柱本体21にガイドローラ群3,4が設けられている状態の斜視図である。この図に示すように、各ガイドローラ3a,3b,4a,4bは、ローラ支持部22によって支持されるものであり、それぞれが、支柱本体21の軸線を中心に90°ピッチで当該支柱本体21を一周するように、かつ、二種類を交互にしつつ配置されている。このような構成とするために、ローラ支持部21は、支柱本体21から四方に突出するとともに、その先端が相互に90°の角度を有するような形状に構成されているのであり、その先端によって各ガイドローラ3a,3b,4a,4bが支持されているのである。
【0031】
つまり、第一のガイドローラ3a,3bは、支柱本体21の軸線を中心に180°の角度を有して設けられているのであり、第二のガイドローラ4a,4bも同様である。ただし、第二のガイドローラ4a,4bが第一のガイドローラ3a,3bの中間に(90°の角度を有して)設けられることにより、二種類のガイドローラ3a,3b,4a,4bが90°ピッチで支柱本体を一周するように配置されるのである。なお、上記二種類のガイドローラ群3,4は、上述のように2個ずつを交互に90°ピッチで設ける場合に限定するものではなく、調整すべき搬送物の向きに応じて、それ以外の角度を有して配置させてもよい。
【0032】
ところで、搬送レールLは、走行体1の軌道を制御し、搬送経路を形成するものであるが、この搬送経路は専ら直線状に形成され、搬送経路を変更すべき場合(走行体1の搬送方向を変更する場合)には、当該搬送経路を弧状に形成させるものである。ここで、上記弧状の搬送経路では、走行体1の向きが変化することから、この範囲(搬送レールLによる搬送経路の向きを変化させる範囲)において、上記ガイドローラ群3,4に対して個別に摺接するガイドレールGL1,GL2を設け、走行体1の向きとは無関係に搬送物用支柱2の状態を調整するのである。これにより、搬送物の向き(姿勢)を走行体1の進行方向とは個別に調整することができ、さらに、搬送物の向きを一定に(姿勢を維持)しつつ、走行体1による搬送物の搬送方向を変換させることも可能となるのである。
【0033】
次に、上記本実施形態の作動態様について説明する。図3は、走行体1が弧状の搬送経路に沿って移動するときのガイドローラ群3,4とガイドレールGL1,GL2との関係を示す説明図である。この図は、図3(a)から図3(e)に従って走行体1が移動する状態を示している。この図に示すように、走行体1は、搬送経路に沿って弧状に進行方向を変えることとなるが、搬送物用支柱2(支柱本体21)に固着されるガイドローラ群3,4(ローラ支持部22を含む)は、ガイドレールGL1,GL2によって、その軌道を案内されることとなるため、搬送物用支柱2の向きは走行体1とは異なることとなる。この状態は、ローラ支持部22の向きにより顕著に図示されている。そこで、作動態様の説明においては搬送物用支柱2の向きを、ローラ支持部22の向きによって説明することとする。
【0034】
ここで、走行体1とローラ支持部22の向きの変化について詳述する。走行体1が右方向に湾曲する弧状の搬送経路に進入すると、進行方向左前方に位置するガイドローラ(一方の第一のガイドローラ3aを例示する)が、これと同じ高さに調整されているガイドレール(第一のガイドレールGL1を例示する)に摺接し、左前方のガイドローラ3aの軌道の制限が開始される(図3(a))。
【0035】
さらに走行体1が前進することにより、進行方向左後方に位置するガイドローラ(一方の第二のガイドローラ4aを例示する)が、同じ高さのガイドレール(第二のガイドレールGL2を例示する)に摺接し、左後方のガイドローラ4aの軌道も制限が開始することとなる(図3(b))。このとき、ガイドローラ群3,4のうちの二つのガイドローラ3a,4aについて、軌道が制限されることとなるから、ローラ支持部22の向きは安定することとなる。
【0036】
走行体1がさらに前進すると、他方の第二のガイドローラ4bも同じガイドレールGL2に摺接することとなる(図3(c))。この状態では、同時に3つのガイドローラ3a,4a,4bが軌道を制限することとなるが、第二のガイドレールGL2は第二のガイドローラ群4のうちの1つを案内すればよく、これ以降は後から摺接した他方の第二のガイドローラ4bのみを案内することとなる(図3(d))。なお、後から摺接した第二のガイドローラ4bは、走行体1が当初移動する際の進行方向の右前方に位置するものであったが、走行体1が右に進路を変更することにより、進行方向左前方に位置するように変化することとなる。
【0037】
そして、走行体1が進行方向の変換を終了する時点では、ガイドレールGL1,GL2に摺接するガイドローラは、当初から摺接している第一のガイドローラ3aと、後に摺接した第二のガイドローラ4bとの2つとなり、この状態でローラ支持部22の向きは安定することとなる(図3(e))。
【0038】
ここで、上記第一のガイドレールGL1によるガイドローラ3aの軌道と、第二のガイドレールGL2によるガイドローラ4bの軌道とは異なるものとなっている。すなわち、第一のガイドレールGL1は、左前方に位置していたガイドローラ3aを左後方に位置するように案内するものであるのに対し、第二のガイドレールGL2は、左後方に位置するガイドローラ4aを摺接させた後、途中からは右前方に位置していたガイドローラ4bを摺接させ、このガイドローラ4bを左前方に位置するように案内するものである。従って、両ガイドレールGL1,GL2の摺接面(摺接端縁)は、異なる形状となるように設けられているのである。なお、このガイドレールGL1,GL2の摺接面(摺接端縁)の形状は、これに摺接されるべき各ガイドローラ3a,3b,4a,4bをどのように案内するかによって決定されるものである。
【0039】
上記のように走行体1の進行方向の変換が終了した後さらに走行体1が前進することにより、各ガイドローラ3a,4bはガイドレールGL1,GL2の摺接を脱することとなるが、このときのローラ支持部22の向きは、走行体1の進行方向とは異なる状態となっている。つまり、搬送物用支柱2は走行体1の上部において、走行体1の進行方向とは反対方向に回転したこととなり、これにより、搬送物の向きも走行体1の進行方向に対して回転した状態となっているのである。その結果、搬送物の向き(姿勢)は維持されることとなり、走行体1の進行方向(搬送物の搬送方向)のみを変換させることが可能となるのである。
【0040】
次に、さらに走行体1が進行方向を変更する場合について説明する。図4は、前述の搬送方向変換(これを第1回目の搬送方向変換という)に続き、さらに右方向に搬送方向を変換(これを第2回目の搬送方向変換という)する場合を示している。この図は、図4(a)から図4(e)に従って走行体1が移動する状態を示している。走行体1による第1回目の搬送方向変換を終了した後の状態は、他方の第二のガイドローラ4bが進行方向左前方に位置し、一方の第一のガイドローラ3aが進行方向左後方に位置している。そこで、走行体1が右方向に湾曲する弧状の搬送経路に進入すると、進行方向左前方に位置する他方の第二のガイドローラ4bがまず第二のガイドレールGL2に摺接することとなり(図4(a))、さらに走行体1が前進すれば一方の第一のガイドローラ3aが第一のガイドレールGL1に摺接することとなる(図4(b))。
【0041】
ここで、第2回目の搬送方向変換に使用されるガイドレールGL1,GL2は、その摺接面(摺接端縁)の形状が第1回目の搬送方向変換に使用するものとは逆になっている。すなわち、第二のガイドレールGL2が、左前方のガイドローラ4bを案内し、第一のガイドレールGL1が、左後方のガイドローラ3aを案内しつつ、その後右前方のガイドレール3bを案内するものである。従って、一方の第一のガイドローラ3aが第一のガイドレールGL1に摺接された状態から走行体1が前進すると、今度は、他方の第一のガイドローラ3bが第一のガイドレールGL1に摺接することとなり(図4(c))、その後、一方の第一のガイドローラ3aは、第一のガイドレールGL1から離れることとなり(図4(d))、最終的には、左前方に他方の第一のガイドローラ3bが位置し、左後方に他方の第二のガイドローラ4bが位置する状態となる(図4(e))。そして、走行体1による第2回目の搬送方向変換終了後には、ローラ支持部22を含む搬送物用支柱2がさらに回転している状態となるのである。
【0042】
本実施形態の作動態様は、上記のとおりであるが、これは一態様であって、搬送経路が左方向に湾曲する場合もあり得る。この場合は、ガイドレールGL1,GL2の形状が異なることは無論であるが、さらに、ガイドローラ群3,4のうち、ガイドレールGL1,GL2に摺接するガイドローラが異なることとなる。この場合の態様については、敢えて説明するまでもない。また、搬送物の搬送方向の変換角度は90°を中心に説明したが、他の角度であっても可能であり、180°の方向変換も可能である。
【0043】
以上のとおり、本実施形態は上記のような構成であるから、走行体1が進行方向を変更する際に、搬送物用支柱2(特に支柱本体21)から突出するガイドローラ群3,4の軌道を制限することによって、当該搬送物用支柱2を回転させることが可能となる。この場合、ローラ支持部22の向き(すなわち搬送物用支柱2によって支持される搬送物の向き)は、走行体1の進行方向が変更される前後で異なることはない。
【0044】
そして、上記のように搬送物用支柱2を回転するための駆動装置を備えていないことから、当該駆動装置を設置するためのスペースを設ける必要がなく、しかも、当該駆動装置を駆動させるための動力源も不要となる。
【0045】
さらに、搬送物が長尺物(例えば、車両用バンパ)である場合、搬送経路上において複数の搬送物を一時的に停止させる際には、搬送経路に対して搬送物を幅方向に整列させることが容易となる。これにより、搬送経路全体の長さを縮小させることも可能となるから、省スペース化に資することとなる。
【0046】
次に、本発明の第二の実施形態について説明する。図5は、本実施形態の概略を示す斜視図である。この図に示すように、本実施形態は、前述の実施形態に対し、インデックスプレート5と、このインデックスプレートを係止する係止部材6とをさらに備えた構成である。従って、インデックスプレート5および係止部材6を除く部分は前述の実施形態と同様である。
【0047】
そこで、インデックスプレート5と、係止部材6との関係を詳述する。図6は、両者の状態を示す図である。この図に示すように、インデックスプレート5は、鍔状の円形板状部材の周縁を所定間隔で切り欠いた切欠部51を有するものであり、係止部材6は、揺動可能な本体部(これを揺動部材という)61の片方の先端に係止ローラ62を有する構成である。そして、揺動部材61が揺動しつつ、係止ローラ62がインデックスプレート5の周縁を摺接し、または切欠部51に係入するものである。
【0048】
また、揺動部材61の揺動軸63にはコイルバネ64が設けられ、係止ローラ62をインデックスプレート5の周縁に向かって付勢するようになっている。従って、インデックスプレート5が回転するとき、係止ローラ62はインデックスプレート5の周縁に付勢されつつ摺接することとなり、当該係止ローラ62が切欠部51に到達したときは、上記付勢によって、係止ローラ62が切欠部51に係入するようになっている。そして、切欠部51に係止ローラ62が係入した状態から係止ローラ62を脱出させるためには、上記コイルバネ64による付勢に抗した外力が必要となり、その結果として、一時的に(外力が少ない場合に)インデックスプレート5の回転を停止させることができるものである。
【0049】
本実施形態では、図5において示したように、インデックスプレート5を搬送物用支柱2(具体的には支柱本体21)に対して鍔状に固着しており、係止部材6を走行体1の支柱用基軸14に設けている。なお、図中には明確に示されていないが、係止部材6は支柱用基軸14に固着されたプレート上に装着されるものである。従って、インデックスプレート5は、搬送物用支柱2と一体となって回転するが、係止部材6は、走行体1と一体化することとなる。そして、走行体1に対し、上記搬送物用支柱2が回転する場合に、係止ローラ62がインデックスプレート5の周縁を摺接することとなるのである。さらに、適宜間隔(適宜角度)で設けられる切欠部51に係入するとき、搬送物用支柱2の回転を一時的に停止させることができる。
【0050】
さらに、上記第二の実施形態の変形例としては、図5および図6に図示されているように、揺動部材61の他端に操作ローラ65を有する構成とするものがある。この操作ローラ65は、揺動部材61の揺動状態を強制的に操作するためのものであり、当該操作ローラ65の位置を強制的に変更させることにより、揺動部材61が前記コイルバネ64の付勢に反する方向に揺動することとなるのである。
【0051】
このような形態とする場合には、例えば、図7に示すように、操作ローラ65に摺接可能なガイドレール(揺動案内レール)GL3を設けることにより、走行体1の走行位置に応じて、係止部材(揺動部材)6を揺動させることが可能となる。具体的には次のように揺動させるものである。
【0052】
すなわち、前記のとおり、搬送物用支柱2(搬送物)の向き(姿勢)が走行体1の進行方向とは別に調整されるとき、インデックスプレート5が搬送物用支柱2と一体となって回転することとなる。そこで、そのような状態となる範囲において、ガイドレールGL3によって操作ローラ65を押圧し、係止部材(揺動部材)6を揺動させ、係止ローラ62をインデックスプレート5の周縁から離脱させるのである(図7(a))。なお、搬送物用支柱2の向きが調整されるときとは、搬送レールLによる搬送経路が湾曲し、これに沿って走行体1が移動する際に、ガイドローラ群3,4が規制される状態のときである。そこで、ガイドレール(揺動案内レール)GL3は、上述の搬送物姿勢安定化のためのガイドレールGL1,GL2とともに使用されるものである。
【0053】
また、インデックスプレート5が回転途中である間においても、上記操作ローラ65を押圧し続け(図7(b))、その回転が終了する時点において、操作ローラ65に対する押圧を中止すれば、係止ローラ62は、インデックスプレート5の切欠部51に係入することとなり(図7(c))、インデックスプレート5の回転を一時的に停止させることができるのである。
【0054】
このように、係止部材(揺動部材)6を揺動させることによって、係止ローラ62がインデックスプレート5の切欠部51からの脱出を容易にし、また、インデックスプレート5(および搬送物用支柱2)が回転するときの抵抗力を減少させることができるのである。
【0055】
なお、このような操作ローラ65の位置を案内するガイドレールGL3を設けない場合において、インデックスプレート5を回転させるためには、第二の実施形態と同様に、インデックスプレート5の切欠部51に係入される係止ローラ62に対し、コイルバネ64による付勢力を超える力を作用させればよい。すなわち、インデックスプレート5を強力に回転させれば、係止ローラ62は回転しながら切欠部51の端縁を摺接することとなり、係止ローラ62を切欠部51から脱出させることができる。
【0056】
本発明の実施形態は、上記のとおりであるが、これらの実施形態は本発明の一例を示すものであって、本発明がこれらに限定されるものではない。従って、その他の形態とすることも可能である。
【0057】
例えば、上記実施例の走行体1の車輪(前輪12および後輪13)は、搬送レールLの内部底面を転動するように構成されるものであるが、この車輪は、搬送レールLに沿って移動できる構成であれば、その構成を限定するものではなく、搬送レールLの形状も図示されたものに限定するものではない。
【0058】
そこで、図示のように、コ字形のレール部材La,Lbの端縁を向かい合わせに配置してなる搬送レールLにおいて使用される車輪としては、図8に示すように、走行体1に対して1本の回動軸7により回動自在に軸支する構成とすることができる。この場合、車軸71は、回動軸7により自在に角度を変化させることが可能となり、前輪12と後輪13とが異なる向きで転動している状態においても、それぞれ個別に車軸71を変化させることができる(図8(c)参照)。従って、曲率の小さな弧状に湾曲する搬送経路においても走行体1を移動させることができるのである。なお、図示の車輪12,13は、搬送レールLの内部底面を転動する転動部材72,73のほかに、水平方向に転動可能な部材74,75が設けられているが、この部材74,75は、搬送レールLの対向端縁の間に設置されて(図8(a)参照)、走行体1の姿勢を維持させるためのものである。
【符号の説明】
【0059】
1 走行体
2 搬送物用支柱
3 第一のガイドローラ群
3a,3b 第一のガイドローラ
4 第二のガイドローラ群
4a,4b 第二のガイドローラ
5 インデックスプレート
6 揺動部材
7 回動軸
11 走行体の本体部
12 車輪(前輪)
13 車輪(後輪)
14 支柱用基軸
21 支柱本体
22 ローラ支持部
51 切欠部
61 係止部材の本体(揺動部材)
62 係止ローラ
63 揺動軸
64 コイルバネ
65 操作ローラ
L 搬送レール
GL1,GL2 ガイドレール
GL3 ガイドレール(揺動案内レール)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送経路を構成する搬送レールと、この搬送レールに軌道を制限されながら移動する走行体と、搬送物を支持するために上記走行体に立設された搬送物用支柱とを備えた搬送装置において、
上記走行体は、走行方向に所定の長さを有する本体部と、この本体部の前後端付近の下部に設けられ、上記搬送レールに沿って転動する走行車輪と、上記本体部の上部に立設された支柱用基軸とを備え、
上記搬送物用支柱は、上記支柱用基軸を延長するように、かつ、該支柱用基軸の軸回りに回動自在に接続された支柱本体と、この支柱本体から該支柱本体の径方向に突出する位置に配置された二種類のガイドローラ群とを備え、
さらに、上記搬送レールによる搬送経路の向きを変化させる範囲に、該搬送レールに平行な状態で設けられ、かつ、上記二種類のガイドローラ群を個別に案内する二種類のガイドレールを備えることを特徴とする搬送装置における搬送方向変換機構。
【請求項2】
前記二種類のガイドローラ群は、前記支柱本体の軸線を中心に180°の角度を有しつつ径方向に同じ長さで突出する位置に配置された第一のガイドローラ群と、この第一のガイドローラ群に対し90°の角度を有しつつ径方向に同じ長さで突出する位置で、かつ、上記第一のガイドローラ群とは異なる高さに配置された第二のガイドローラ群とで構成されたことを特徴とする請求項1に記載の搬送装置における搬送方向変換機構。
【請求項3】
請求項1または2に記載の搬送装置における搬送方向変換機構であって、さらに、前記支柱本体には、鍔状に設けられるとともに、周縁を適宜間隔で切り欠いた切欠部を有するインデックスプレートと、このインデックスプレートの切欠部に係入して該インデックスプレートを係止する係止部材とを備えたことを特徴とする搬送装置における搬送方向変換機構。
【請求項4】
前記係止部材は、前記インデックスプレートの周縁に摺接する係入ローラと、この係入ローラを上記インデックスプレートの周縁に向かって付勢しつつ該係入ローラを支持する支持部材とを備えた係止部材であることを特徴とする請求項3に記載の搬送装置における搬送方向変換機構。
【請求項5】
請求項4に記載の搬送装置における搬送方向変換機構であって、前記支持部材は、一端に前記係入ローラが支持される揺動部材によって構成され、該揺動部材の他端には該揺動部材の揺動状態を制御する揺動制御ローラを備え、
さらに、上記搬送レールによる搬送経路の向きを変化させる範囲のうちの適宜範囲に、該搬送レールに平行な状態で設けられ、かつ、前記係入ローラの付勢に抗する方向に上記揺動部材を揺動させるように上記揺動制御ローラを案内する揺動案内レールを備えることを特徴とする搬送装置における搬送方向変換機構。
【請求項6】
前記インデックスプレートの切欠部は、前記支柱本体の軸線を中心に90°の角度のピッチで設けられた切欠部であることを特徴とする請求項3ないし5のいずれかに記載の搬送装置における搬送方向変換機構。
【請求項7】
前記走行車輪は、個別に前記走行体の本体部に設けられた前輪部および後輪部によって構成されるとともに、上記前輪部および後輪部は、それぞれ1本の回動軸により回動自在に軸支されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の搬送装置における搬送方向変換機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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