説明

フロントバンパ遮水構造

【課題】 低コスト化を図ることができるフロントバンパ遮水構造を提供する。
【解決手段】 フロントバンパ1とフロントクロスメンバ24との間に遮水部26を設け、跳ね上げを遮断する。フロントバンパ1の下縁フランジ14と遮水部26間にPPヒンジ31を延設する。遮水部26を、取付状態で下縁フランジ14後端に起立した起立壁32と、起立壁32より車両後方Rへ延出する後方延出面33とで構成し、後方延出面33をボルト34でフロントクロスメンバ24に固定する。遮水部26をPPヒンジ31で折り曲げ自在とすることで、フロントバンパ1を成形する金型を型開きする際に金型が移動される移動領域外に遮水部26の起立壁32を配置した折曲前状態51と、起立壁32を移動領域内に配置して下縁フランジ14に対して起立させた折曲後状態52とを形成可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントバンパ下部からの跳ね上げを遮断するフロントバンパ遮水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両前部には、図3に示すように、フロントバンパ101が設けられている。
【0003】
このフロントバンパ101の上縁及び下縁には、図4にも示すように、内側へ向けて延出するフランジ111,111が形成されており、下縁のフランジ111には、遮水板112が固定されている。
【0004】
該遮水板112は、前記フロントバンパ101のフランジ111に固定される固定面121と、該固定面121より上方に起立した起立面122と、該起立面122より車両後方Rに延在する後方延在面123とによってクランク状に形成されている。
【0005】
この遮水板112は、前記固定面121が前記フランジ111上に載置された状態でリベット131で固定されており、車両後方Rへ延出する前記後方延在面123が、車体134を構成するフロントクロスメンバ135の下面にボルト136で固定されている。これにより、前記フロントバンパ101と前記フロントクロスメンバ134との間には、前記遮水板112が架橋されるように構成されており、フロントバンパ101下部から跳ね上げを遮断できるように構成されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようなフロントバンパ遮水構造にあっては、フロントバンパ101と車体134との間に設けられる遮水板112を別途用意しなければならず、部品点数増を招き、低コスト化の阻害要因となっていた。
【0007】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、低コスト化を図ることができるフロントバンパ遮水構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本発明のフロントバンパ遮水構造にあっては、フロントバンパ下縁に形成されたフランジと該フランジより高位置に設定された車体の取付点との間に跳ね上げを遮断する遮水部が設けられ、該遮水部に、前記フランジと前記車体の前記取付点との高低差を解消する起立壁が設定されたフロントバンパ遮水構造において、前記フロントバンパと前記遮水部とを一体形成するとともに、該遮水部と前記フロントバンパとの間に、前記フランジに対して前記遮水部の折り曲げ自在とする薄肉のヒンジ部を車幅方向に延設し、前記フロントバンパを成形する金型を型開きする際に前記金型が移動される移動領域外に前記起立壁を配置した折曲前状態と、前記起立壁を前記移動領域内に配置して前記フランジに対して起立させた折曲後状態とを形成可能に構成した。
【0009】
すなわち、跳ね上げを遮断する遮水部は、フロントバンパに一体形成されている。このため、跳ね上げを防止する遮水板がフロントバンパと別部材で構成された場合と比較して、部品点数が削減される。また、前記遮水部は、前記フロントバンパに一体形成されているため、当該遮水部の前記フロントバンパへの固定作業行程が削減される。
【0010】
ここで、前記遮水部が設けられる前記フロントバンパのフランジは、車体より低位置に設定されており、この遮水部には、前記フランジに対して起立して前記車体への取付点までの高低差を解消する起立壁を設定する必要がある。しかし、フランジより上方であって該フランジの延在方向には、型開きされる金型の移動領域が設定されており、金型成型時には、前記起立壁を前記移動領域内に配置することができない。
【0011】
そこで、前記遮水部と前記フロントバンパとの間にヒンジ部を設け、前記起立壁を前記移動領域外に配置した折曲前状態と、前記移動領域内に配置した折曲後状態とを形成可能に構成した。このため、成型時には、前記折曲前状態とすることによってスライド型等を用いること無く、前記起立壁を備えた前記遮水部をフロントバンパに一体形成することができる。また、取付時には、前記折曲後状態とすることによって、前記遮水部の前記起立壁によって前記フランジから前記取付点までの高低差を解消することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように本発明のフロントバンパ遮水構造にあっては、跳ね上げを遮断する遮水部をフロントバンパに一体形成したため、跳ね上げを遮断する遮水板がフロントバンパと別部材で構成された従来と比較して、部品点数を削減することができ、低コスト化を図ることができる。
【0013】
また、前記遮水部のフロントバンパへの固定作業行程を削減することができるため、取付作業が容易となるとともに、作業時間の短縮化を図ることができる。
【0014】
そして、前記遮水部と前記フロントバンパとの間にヒンジ部を設けることによって、前記フランジに対して起立する起立壁を備えた遮水部を、スライド型等を用いること無く、前記フロントバンパに一体形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態を図に従って説明する。図1は、本実施の形態にかかるフロントバンパ遮水構造を備えたフロントバンパ1を示す図であり、該フロントバンパ1は、車両前部に設けられ衝突時の衝撃を緩衝する装置である。
【0016】
このフロントバンパ1は、合成樹脂によって形成されており、金型によって成形されている。当該フロントバンパ1は、車両前方F側を構成する前面部11と、該前面部11の車幅方向両端より車両後方Rへ延出した後方延出部12,12とによってコ字状に形成されている。このフロントバンパ1の上縁には、内側に延出する上縁フランジ13が一体形成されており、前記フロントバンパ1の下縁にも、内側に延出する下縁フランジ14が一体形成されている。前記前面部11の中央部には、横長の開口部15が形成されており、その開口縁には、図2にも示すように、車両後方Rへ向けて延出する中フランジ16が全周に渡って形成されている。これらのフランジ13,14,16によって、当該フロントバンパ1は補強されており、当該フロントバンパ1を成形する金型は、各フランジ13,14,16が延在する前後方向へ型開きできるように構成されている。
【0017】
このフロントバンパ1より車両後方R側の部位には、ロアメンバ21とアッパメンバ22とによって形成された車体23を構成するフロントクロスメンバ24が設けられており、前記フロントバンパ1の前記下縁フランジ14は、前記フロントクロスメンバ24を構成するロアメンバ21の下面25より低位置に配置されている。このフロントクロスメンバ24と前記フロントバンパ1との間には、板状の遮水部26が設けられており、路面からの跳ね上げられた跳ね上げ物のエンジンルームへの進入を阻止できるように構成されている。
【0018】
すなわち、この遮水部26は、前記フロントバンパ1の前記下縁フランジ14の中央部に一体形成されており、前記遮水部26と前記下縁フランジ14との間には、該下縁フランジ14に対して前記遮水部26の折り曲げ自在とする薄肉のヒンジ部であるPPヒンジ31が車幅方向に延設されている。前記遮水部26は、取付状態において前記下縁フランジ14後端に起立した起立壁32と、該起立壁32より車両後方Rへ延出する後方延出面33とによって構成されており、該後方延出面33には、ボルト34が挿入されるボルト穴35,・・・が開設されている。
【0019】
これにより、前記後方延出面33を前記ロアメンバ21の下面25に面接した状態で、前記ボルト挿入穴35を挿通したボルト34を前記ロアメンバ21の取付点41に設けられたウエルドナット42に螺入することによって、当該遮水部26の後端部を前記フロントクロスメンバ24に固定できるように構成されており、前記起立壁32を前記下縁フランジ14に対して起立させることによって、前記下縁フランジ14と該下縁フランジ14より高位置に設定された前記フロントクロスメンバ24の取付点41との間に生じた高低差を解消できるように構成されている。
【0020】
そして、前記遮水部26は、前記下縁フランジ14との間に形成された前記PPヒンジ31によって折り曲げ自在とされており、図2中実線で示したように、前記フロントバンパ1を成形する金型を型開きする際に前記金型が移動される移動領域外に前記遮水部26の前記起立壁32を配置した折曲前状態51と、図2中破線で示したように、前記起立壁32を前記移動領域内に配置して前記下縁フランジ14に対して起立させた折曲後状態52とを形成できるように構成されている。
【0021】
以上の構成にかかる本実施の形態において、跳ね上げを遮断する遮水部26は、フロントバンパ1に一体形成されている。このため、跳ね上げを防止する遮水板がフロントバンパと別部材で構成された従来と比較して、部品点数を削減することができ、低コスト化を図ることができる。
【0022】
また、前記遮水部26は、前記フロントバンパ1に一体形成されている。このため、当該遮水部26の前記フロントバンパ1への固定作業行程を削減することができる。これにより、取付作業が容易となるとともに作業時間の短縮化を図ることができる。
【0023】
ここで、前記遮水部26が設けられる前記フロントバンパ1の下縁フランジ14は、車体23より低位置に設定されており、この遮水部26には、前記下縁フランジ16に対して起立して前記車体23への取付点41までの高低差を解消する起立壁32を設定する必要がある。しかし、前記下縁フランジ14より上方であって該下縁フランジ14の延在方向には、型開きされる金型の移動領域が設定されており、金型成型時には、前記起立壁32を前記移動領域内に配置することができない。
【0024】
そこで、本実施の形態にあっては、前記遮水部26と前記フロントバンパ1との間にPPヒンジ31を設け、前記起立壁32を前記移動領域外に配置した折曲前状態51と、前記移動領域内に配置した折曲後状態52とを形成可能に構成した。このため、成型時には、前記折曲前状態51とすることで、スライド型等を用いること無く、前記起立壁32を備えた前記遮水部26をフロントバンパ1に一体形成することができる。また、取付時には、前記折曲後状態52とすることによって、前記遮水部26の前記起立壁32で前記下縁フランジ14から前記取付点41までの高低差を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施の形態を示す斜視図である。
【図2】同実施の形態の要部を示す断面図である。
【図3】従来のフロントバンパ遮水構造を示す斜視図である。
【図4】同従来例の要部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 フロントバンパ
14 下縁フランジ
23 車体
24 フロントクロスメンバ
26 遮水部
31 PPヒンジ
32 起立壁
41 取付点
51 折曲前状態
52 折曲後状態

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントバンパ下縁に形成されたフランジと該フランジより高位置に設定された車体の取付点との間に跳ね上げを遮断する遮水部が設けられ、該遮水部に、前記フランジと前記車体の前記取付点との高低差を解消する起立壁が設定されたフロントバンパ遮水構造において、
前記フロントバンパと前記遮水部とを一体形成するとともに、該遮水部と前記フロントバンパとの間に、前記フランジに対して前記遮水部の折り曲げ自在とする薄肉のヒンジ部を車幅方向に延設し、前記フロントバンパを成形する金型を型開きする際に前記金型が移動される移動領域外に前記起立壁を配置した折曲前状態と、前記起立壁を前記移動領域内に配置して前記フランジに対して起立させた折曲後状態とを形成可能に構成したことを特徴とするフロントバンパ遮水構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−82729(P2006−82729A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−270622(P2004−270622)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(000128544)株式会社オーテックジャパン (183)