説明

フローティングベスト

【課題】着用した状態で前身頃と後身頃との離間距離を調節できるようにすることでサイズ調節が容易となるフローティングベストを提供する。
【解決手段】前身頃2に接続され後身頃3へ向けて延設された前ベルト体11と、後身頃2に接続され前身頃2へ向けて延設されるとともに先端部121に前ベルト体11を挿通して前ベルト体11を前方へ折り返すための調節具13が設けられた後ベルト体12とを備え、折り返した前ベルト体11を引っ張ることにより前身頃2と後身頃3との離間距離を調節することができるフローティングベスト1において、調節具13は前身頃2の内側に配置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フローティングベストに関し、特に、前身頃と後身頃との離間距離を調節することができるフローティングベストに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のフローティングベストとしては、後身頃に接続され後身頃の左右両側から前方に向けて延設された一本のベルト体とベルト体の長さを調節する調節具とベルト体を折り返す枠体とを備えたものが知られている。これは、ベルト体を枠体に挿通して折り返し、折り返したベルト体の先端部を調節具に接続し、調節具を前後に操作することによってベルト体の長さを調節することによって前身頃と後身頃との離間距離を調節することができるものである。
【0003】
このようなフローティングベストは、ベルト体の長さを短くして締付ける際には、調節具を後方に移動するように操作しなければならない。従って、フローティングベストを着用した状態においては、調節具を着用者の後方に移動するように操作しなければならず、締付け作業をすることはできなかった。従って、釣人等は、一端フローティングベストを脱いだ状態で離間距離を調節し、また、調節を解除する際も同様に、フローティングベストを脱いだ状態で作業していたのが現状である。
【0004】
そこで、出願人は、締付け作業を改善する一案として、下記特許文献1記載のフローティングベストを考え、既に提案している。
【0005】
即ち、該ベストは、前身頃に接続され後方に向けて延設された前ベルト体と、後身頃に接続され前方に向けて延設された後ベルト体とを備え、後ベルト体の先端部には、前ベルト体を挿通して折り返す調節具が設けられているものである。この構成の場合、調節具に挿通して折り返した前ベルト体を前方に引っ張ることによって前身頃と後身頃との離間距離を調節することができる。
【特許文献1】特開2001−20110号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のフローティングベストにおいては、調節具が後身頃の内側に位置しているので、着用した状態で離間距離を調節しようとしても、着用者は、腕を前方から背中付近まで回さなければならず、嵩高のフローティングベストを着用した状態では、実質上離間距離を調節する作業が極めて困難であった。
【0007】
従って、実際は、着用した状態で前身頃と後身頃との離間距離を調節するのではなく、一端フローティングベストを脱いだ状態で離間距離を調節し、また、調節を解除する際も同様に、フローティングベストを脱いだ状態で作業していたのが現状である。
【0008】
そこで、本発明は、上記のような現状に鑑みてなされ、着用した状態で前身頃と後身頃との離間距離を調節できるようにすることでサイズ調節が容易となるフローティングベストを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、本発明に係るフローティングベストは、前身頃に接続され後身頃へ向けて延設された前ベルト体と、後身頃に接続され前身頃へ向けて延設されるとともに先端部に前ベルト体を挿通して前ベルト体を前方へ折り返すための調節具が設けられた後ベルト体とを備え、折り返した前ベルト体を引っ張ることにより前身頃と後身頃との離間距離を調節することができるフローティングベストにおいて、調節具は前身頃の内側に配置されていることを特徴とする。
【0010】
該構成のフローティングベストにあっては、調節具は、着用者自身の前側に位置することとなる。よって、前身頃と後身頃との離間距離を縮める場合には、着用者は、着用者自身の前側(前身頃の内側)において、調節具に前ベルト体を挿通して前方に折り返すことができる。そして、折り返した前ベルト体の先端部を把持して前方へ引っ張ることによって、前後両ベルト体に引張り力が作用して折り返した部分が徐々に長くなる。それに伴って、前身頃と後身頃との離間距離は徐々に縮まって、前後両身頃は着用者に密着して締付けた状態となる。
【0011】
また、前身頃と後身頃との離間距離を広げる場合には、着用者は、着用者自身の前側(前身頃の内側)において、調節具に手指をかけて前ベルト体の折り返した部分が徐々に短くなるように、調節具を操作することができる。そして、前ベルト体の折り返した部分が徐々に短くなると、前後両ベルト体に作用している引張り力が徐々に緩和され、前身頃と後身頃との離間距離は徐々に広がって、前後両身頃の締付け状態が解除される。
【0012】
このように、着用者は、着用者自身の前側において、前身頃と後身頃との離間距離を調節したり締付けを解除したりすることができる。
【0013】
特に、前身頃と後身頃とは、左右両端部が伸縮自在なウェスト部材によって接続され、後ベルト体は、ウェスト部材を通して延設されていることが好ましい。
【0014】
このような構成にすると、延設された後ベルト体はウェスト部材に支持されるので、後ベルト体を撓まず真っ直ぐな状態で維持することができる。また、離間距離が縮む或いは広がる際にはウェスト部材が伸縮するのであるが、後ベルト体がウェスト部材に通っているので、ウェスト部材は後ベルト体に沿って伸縮する。従って、スムーズに離間距離を調節することができる。
【0015】
更に、調節具は前身頃の周方向略中央の位置に配置されていることが好ましく、フローティングベストを着用した状態で前身頃と後身頃との離間距離を縮めていくと、調節具の位置は相対的に前身頃の前側に移動するが、調節具を前身頃の周方向略中央の位置に配置していると、離間距離が縮まって調節具の位置が相対的に前身頃の前側に移動しても、調節具は前身頃の内側に位置することとなる。よって、前身頃と後身頃との離間距離を縮めて締付けた状態にしても、調節具が釣等の邪魔にならない。
【0016】
また更に、後ベルト体には、調節具の後側に、前ベルト体の先端部を保持可能な保持手段が設けられていることが好ましく、前身頃と後身頃との離間距離を縮めて締付けた状態にした後、前ベルト体の折り返した部分を、調節具を覆うように更に折り返し、その先端部を保持手段で保持することにより、調節具を前ベルト体にて覆うことができる。よって、フローティングベスト着用時に、調節具が着用者に直接当たってしまうのを防止することができ、安全に着用できる。また、着用中に調節具が引っ掛かり不用意に解除してしまうことを防止することができる。
【0017】
また、調節具には、指かけ部が形成されていることが好ましく、締付けを解除する際に、着用者は、指かけ部に手指をかけて解除作業をすることができ、解除作業を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
このように、本発明に係るフローティングベストにあっては、調節具が前身頃の内側に配置されているので、締付けるときにも解除するときにも、着用者は、着用した状態で、着用者自身の前側において、調節具を操作して、前身頃と後身頃との離間距離を調節したり締付けを解除したりすることができる。従って、前身頃と後身頃との離間距離を容易に調節することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係るフローティングベストの一実施形態について図面を参酌しつつ説明する。
図1に、本実施形態におけるフローティングベスト1が示されている。該フローティングベスト1は、左右一対の前身頃2と、左右それぞれの前身頃2と連結された後身頃3と、左右それぞれの前身頃2に接続された左右一対の前ベルト体11と、後身頃3に接続された後ベルト体12とを備える。
【0020】
前身頃2及び後身頃3は、例えばナイロン等からなる内布4と外布5とが適宜縫着されることによって形成されており、内布4と外布5とで構成される内部領域に、例えばウレタン発泡材等からなる浮力部材6が収納されている。尚、前身頃2及び後身頃3には、内布4或いは外布5に適宜ポケットXが設けられており、例えば釣糸等の小物を適宜収納することができるようになっている。
【0021】
左右の前身頃2は、着用者Hの前面側(腹部側)の右側或いは左側半分を覆うようにそれぞれ構成されており、前面側の合わせ部21において互いに係脱自在に連結することができるように構成されている。尚、各前身頃2の合わせ部21(前面側の端部)には、前面スライドファスナーS1等の開閉手段が設けられている。また、前身頃2の内側には、浮力部材6を出し入れするための収納口22が形成されている。具体的には、収納口22は、前身頃2の内布に開口部を形成することによって構成され、前面スライドファスナーS1から周方向(側面側)に若干離れた位置に、前面スライドファスナーS1に沿うように前身頃2の下端部から上端部に亘って形成されている。尚、収納口22には、収納スライドファスナーS2が設けられており、開閉自在となっている。
【0022】
また、前身頃2の周方向略中央の位置には、図示しない股ベルトを係合するための係合部材7が取り付けられている。具体的には、係合部材7は、内布4と前身頃2の周方向に伸びる補強体8とによって挟み込まれた状態で縫い付けられている。ここで、補強体8は、前身頃2の側端縁23から収納スライドファスナーS2と内布4との境界24に亘って伸びる帯状体であり、前面スライドファスナーS1の下端より上方側にて内布4に縫い付けられている。
【0023】
後身頃3は、着用者Hの後面側(背部側)全域を覆うように構成されている。後身頃3の周方向略中央の位置には、股ベルトを係合するための係合部材7が取り付けられている。具体的には、係合部材7は、内布4と後ベルト体12とによって挟み込まれた状態で縫い付けられている。
【0024】
前身頃2と後身頃3とは、着用者Hの肩部に対応する部分(上端部25,31)が互いに連結されており、更に、着用者Hの脇腹部に対応する部分(左右両端部26,32)が伸縮自在なウェスト部材9を介して連結されている。つまり、前身頃2と後身頃3とは、左右両端部26,32が離間しており、ウェスト部材9が伸縮することによって、この離間距離を調節することができる。
【0025】
ここで、ウェスト部材9は、図2に示すように、内布91と外布92とで構成されており、内布91の外周部と外布92の外周部とが縫着されることにより袋状となっており、少なくとも周方向に伸縮自在に構成されている。ウェスト部材9は、その左右両側端部に一対の挿通孔93が設けられている。具体的には、内布91の上下端部と外布92の上下端部とは、それぞれ略全域に亘って縫着されている。一方、内布91の左右両側端部と外布92の左右両側端部とは、所定領域を除いた領域がそれぞれ縫着されている。ここで、所定領域とは、ウェスト部材9の内部領域と外部とを連通する開口であり、この開口が挿通孔93となっている。挿通孔93は、ウェスト部材9の上下方向略中央より若干下側に設けられている。本実施形態では、挿通孔93は、その上端が補強体8の上端縁81とほぼ一致するような位置に設けられている。
【0026】
また、ウェスト部材9の内部領域には、上下一対の伸縮体10が収納されている。具体的には、伸縮体10は、例えばゴム等の伸縮性を有するものであり、ウェスト部材9の周方向略全域に亘って伸びる帯状体である。伸縮体10は、挿通孔93の上下両側にそれぞれ配置されており、内布91と外布92との両方に縫着固定されている。
【0027】
前ベルト体11は、左右の前身頃2にそれぞれ一対設けられ、前身頃2に接続されて後身頃3へ向けて延設されている。具体的には、前ベルト体11は、周方向に伸びる帯状体であり、その長さは補強体8の長さよりも若干短くなっている。尚、前ベルト体11の幅は、補強体8の幅よりも広くなっている。また、前ベルト体11の先端部には、折り返されて縫い付けられた先端折り返し部111が形成されており、その縫い付け位置Y1は、先端折り返し部111の略中央の位置である。
【0028】
前ベルト体11は、その基端部112が前身頃2の内布4に縫着されている。具体的には、前ベルト体11は、その基端部112が収納スライドファスナーS2と前身頃2の内布4との境界24に縫着され、そこから周方向(前身頃2の側端部26の方向)に向けて伸びている。前ベルト体11の基端部112は、図4に示すように、収納スライドファスナーS2と前身頃2の内布4との境界24に縫着されており、内布4を前後に挟み込むように前身頃2の内部領域に折り返されて縫着され、折り返した部分に収納スライドファスナーS2が縫着されている。ここで、前ベルト体11の長さは、上述したように、補強体8の長さよりも若干短い長さであるが、換言すると、後述のように、前後ベルト体12を締付けた状態で前面スライドファスナーS1よりも前方に突出し、しかも、前ベルト体11自身の剛性により撓まず真っ直ぐの状態を維持できる程度の長さとなっている。
【0029】
前ベルト体11は、前面スライドファスナーS1の下端よりも上方側に設けられている。本実施形態では、前ベルト体11は、その上端縁113が補強体8の上端縁81と略一致するように設けられている。即ち、前ベルト体11の基端部112の折り返した部分には、前身頃2の内布4だけでなく補強体8の前端部82も挟み込まれており、前ベルト体11の基端部112にて内布4と補強体8の前端部82とを重ねて挟み込んだ状態で縫着位置Y2にて縫着されている。
【0030】
後ベルト体12は、図2に示すように、後身頃3に接続されて前身頃2へ向けて延設されている。具体的には、後ベルト体12は、周方向に伸びる帯状体である。本実施形態では、後ベルト体12の長さは、後身頃3の周方向の長さよりも長くなっている。尚、後ベルト体12の幅は、前ベルト体11の幅と略等しい幅となっている。
【0031】
後ベルト体12は、後身頃3とウェスト部材9との境界33に接続されるとともにウェスト部材9を通して延設されている。具体的には、後ベルト体12は、後身頃3を周方向に横断して、後身頃3とウェスト部材9との境界となる後身頃3の左右両端縁33からそれぞれ突出するように配置されている。そして、後ベルト体12のうち後身頃3の一端縁33から他端縁33に亘る部分が内布4に縫着され、左右両端縁33から突出している部分がそれぞれウェスト部材9の挿通孔93を介してウェスト部材9の内部領域を通過し、先端部121が前身頃2の周方向中央付近にまで伸びている。後ベルト体12の上下方向の設置位置は、前ベルト体11の上下方向の設置位置とほぼ等しく、前面スライドファスナーS1の下端よりも上方側となっている。尚、後ベルト体12のうち後身頃3の一端縁33から他端縁33に亘る部分の周方向略中央の位置には、股ベルトを係合するための係合部材7が設けられている。具体的には、係合部材7は、後ベルト体12と後身頃3の内布4との間に挟み込まれて縫着されている。
【0032】
また、後ベルト体12の両端部121には、前ベルト体11を挿通して前ベルト体11を前方へ折り返すための調節具13が設けられている。この調節具13は、例えば硬質の合成樹脂からなる枠体であり、枠内を仕切る第一仕切り部131と第二仕切り部132とが周方向に離間して設けられている。即ち、調節具13の枠内は、第一仕切り部131及び第二仕切り部132によって、第一枠内133、第二枠内134、及び第三枠内135の3つの枠に分割されている。また、調節具13には、その先端部が隆起した指かけ部136が形成されている。
【0033】
調節具13は、後ベルト体12の後身頃3とウェスト部材9との境界33から突出している部分の先端部121に取り付けられている。具体的には、調節具13は、後ベルト体12の先端部121を、第一枠内133と第二枠内134とを通して折り返した環状部に第一仕切り部131が係止されることによって、後ベルト体12の先端部121に取り付けられている。
【0034】
上述のように、後ベルト体12は、先端部121が前身頃2の周方向中央付近にまで伸びているため、調節具13は、前身頃2の内側、即ち、着用者Hと前身頃2との間に配備され、しかも、前身頃2の周方向略中央の位置に配備される。
【0035】
また、後ベルト体12には、調節具13の後側に、前ベルト体11の先端部111を保持可能な保持手段として、後ベルト体12の幅方向に巻き回したループ14が取り付けられている。具体的には、ループ14は、後ベルト体12の長手方向に挿通可能な環状体であり、帯状体を巻き回して形成され、帯状体の両端部を後ベルト体12に逢着することによって後ベルト体12に取り付けられている。
【0036】
以上の構成からなるフローティングベスト1にあっては、後ベルト体12は、後身頃3の左右端縁23から前身頃2の周方向略中央付近まで伸びているので、その先端部121に取り付けられている調節具13が前身頃2の内側で前身頃2の周方向略中央の位置に配置される。よって、フローティングベスト1を着用すると、図3に示すように、調節具13が着用者Hの前側、具体的には、着用者Hの腹側に配置されることになる。従って、前身頃2と後身頃3との離間距離を縮める場合には、図3及び図4に示すように、着用者Hは、着用者H自身の腹側において、調節具13の第二枠内134及び第三枠内135に前ベルト体11を挿通して、第二仕切り部132を基点に前方に折り返すことができる。この状態において、前ベルト体11は、それ自身の剛性によって調節具13から水平方向に伸びた姿勢となっている。
【0037】
従って、水平姿勢の前ベルト体11の先端折り返し部111に手指をかけるようにして、前ベルト体11を把持して前方へ引っ張ることによって、前後両ベルト体11,12に引張り力が作用して折り返した部分が徐々に長くなる。それに伴って、前身頃2と後身頃3との離間距離は徐々に縮まって、換言すると、ウェスト部材9が周方向に縮んで、前後両身頃2,3は着用者Hに密着して締付け状態となる。
【0038】
また、前身頃2と後身頃3との離間距離を広げる場合には、着用者Hは、着用者H自身の腹側において、調節具13の先端部の指かけ部136に手指をかけて前ベルト体11の折り返した部分が徐々に短くなるように、調節具13を引き起こして操作することができる。
【0039】
そして、前ベルト体11の折り返した部分が徐々に短くなると、前後両ベルト体11,12に作用している引張り力が徐々に緩和され、前身頃2と後身頃3との離間距離は徐々に広がって(ウェスト部材9が徐々に伸びて)、前後両身頃2,3の締付け状態が解除される。
【0040】
このように、着用者Hは、着用者H自身の腹側において、前身頃2と後身頃3との離間距離を調節したり締付け状態を解除したりすることができる。従って、着用した状態で、前身頃2と後身頃3との離間距離を容易に調節することができる。
【0041】
また、後身頃3の左右両端縁33から突出している部分がそれぞれウェスト部材9の挿通孔93を介してウェスト部材9の内部領域を通過して前身頃2の周方向中央付近にまで伸びている。このため、後ベルト体12の左右両端縁33から突出している部分は、ウェスト部材9に支持され、撓まず真っ直ぐな状態に維持される。また、離間距離が縮む或いは広がる際には、ウェスト部材9が後ベルト体12に沿って伸縮する。従って、スムーズに離間距離を調節することができる。
【0042】
更に、前身頃2と後身頃3との離間距離を縮めようと前ベルト体11を前方へ引っ張ると、前ベルト体11の折り返した部分が徐々に長くなると共に、調節具13の位置が前身頃2の前側に移動する。ここで、調節具13は前身頃2の周方向略中央の位置に配置されているので、離間距離が縮まって調節具13の位置が前側に移動しても、調節具13は前面スライドファスナーS1より前側には出ることなく、前身頃2と着用者Hとの間に収まる。よって、前身頃2と後身頃3との離間距離を縮めて締付け状態にしても、調節具13が前面スライドファスナーS1の開閉作業や釣等の邪魔にならない。
【0043】
また更に、前ベルト体11の先端部には、中央位置が縫着された先端折り返し部111が形成されている。よって、前ベルト体11を前方へ引っ張る際に、先端折り返し部111に手指をかけると、縫着位置Y1より後側の部分が起き上がって手指に密着するので、確実に前ベルト体11を前方へ引っ張ることができる。また、不用意に締付け状態が解除したとしても、先端折り返し部111の縫着位置Y1より後側の部分が調節具13に引っ掛かるので、前ベルト体11が第三枠内135から抜けてしまうのを防止することができる。
【0044】
また、前ベルト体11の基端部112は、前身頃2の内布4と補強体8の前端部82とを重ねて挟み込んだ状態となるように折り返されて縫着されている。つまり、前ベルト体11の基端部112は、厚く強固に縫着されている。よって、前ベルト体11に引張り力が作用しても、基端部112の縫着状態は維持され、不用意に前ベルト体11が外れてしまうのを防止することができる。
【0045】
更に、前後のベルト体は、共に前面スライドファスナーS1の下端より上方側に位置している。また、前ベルト体11の長さは、前面スライドファスナーS1よりも前方に突出し、しかも、前ベルト体11自身の剛性により撓まず真っ直ぐの状態を維持できる程度の長さとなっている。よって、前面スライドファスナーS1の下端部を係合した状態で、前面スライドファスナーS1から前方に突出している前ベルト体11を引っ張って、離間距離の調節を行うことができ、より一層正確な調節をすることができる。
【0046】
また更に、後ベルト体12には、ループ14が取り付けられている。よって、図4にニ点鎖線にて示すように、前身頃2と後身頃3との離間距離を縮めて締付け状態にした後、前ベルト体11の折り返した部分を、調節具13を覆うように更に折り返し、ループ14の環状内に通して収納することにより、調節具13を前ベルト体11にて覆うことができる。よって、フローティングベスト1着用時に、調節具13が着用者Hに直接当たってしまうのを防止することができ、安全に着用できる。また、着用中に調節具13が引っ掛かり不用意に締付け状態が解除してしまうことを防止することができる。
【0047】
更に、調節具13には、指かけ部136が形成されており、締付け状態を解除する際に、指かけ部136に手指をかけることによって、一層容易に解除作業をすることができる。
【0048】
尚、本実施形態では、後ベルト体12の長さが後身頃3の周方向の長さより長く、左右繋がった一本の帯状体である場合について説明したが、これに限られず、後身頃3の周方向の長さよりも短い後ベルト体12を左右に一対設けてもよい。
【0049】
また、本実施形態では、後ベルト体12がウェスト部材9の内部領域を通して前身頃2まで伸びている場合について説明したが、これに限られず、ウェスト部材9の外布の外側を通した構成としてもよい。但し、後ベルト体12をウェスト部材9の内部領域を通るように構成することによって、例えば釣針等が後ベルト体12に引っ掛かることを防止することができる。また、後ベルト体12が岩等に擦れたり海水等に濡れたりして磨耗や劣化するのを防止することができる。また、ウェスト部材9を一枚構成として、その外側或いは内側を後ベルト体12が通過する構成であってもよい。その際には、ウェスト部材9の外面或いは内面にベルと通しを設けることが好ましい。
【0050】
更に、本実施形態では、調節具13は、枠内が三分割された枠体である場合について説明したが、これに限られず、分割されていないリング状の枠体を二つ設けて調節具13としてもよい。
【0051】
また更に、本実施形態では、調節具13が前身頃2の周方向略中央の位置に配置されている場合について説明したが、これに限られず、前身頃2と着用者Hとの間の領域であればどこに配置してもよい。但し、前身頃2の周方向略中央の位置に配置すると、離間距離が縮まって調節具13の位置が前身頃2の前側に移動しても、調節具13は前身頃2と着用者Hとの間に位置するので、調節具13が釣等の作業の邪魔にならない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態に係るフローティングベストを示す正面図。
【図2】同フローティングベストの要部拡大図。
【図3】同フローティングベストを着用した状態を示す側面図。
【図4】図3のP−P線断面図。
【符号の説明】
【0053】
1…フローティングベスト、2…前身頃、3…後身頃、6…浮力部材、7…係合部材、8…補強体、9…ウェスト部材、10…伸縮体、11…前ベルト体、12…後ベルト体、13…調節具、14…ループ、93…挿通孔、111…先端折り返し部、136…指かけ部、H…着用者、S1…前面スライドファスナー、S2…収納スライドファスナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前身頃に接続され後身頃へ向けて延設された前ベルト体と、後身頃に接続され前身頃へ向けて延設されるとともに先端部に前ベルト体を挿通して前ベルト体を前方へ折り返すための調節具が設けられた後ベルト体とを備え、折り返した前ベルト体を引っ張ることにより前身頃と後身頃との離間距離を調節することができるフローティングベストにおいて、調節具は前身頃の内側に配置されていることを特徴とするフローティングベスト。
【請求項2】
前身頃と後身頃とは、左右両端部が伸縮自在なウェスト部材によって接続され、後ベルト体は、ウェスト部材を通して延設されていることを特徴とする請求項1に記載のフローティングベスト。
【請求項3】
調節具は前身頃の周方向略中央の位置に配置されていることを特徴とする請求項1又は2の何れかに記載のフローティングベスト。
【請求項4】
後ベルト体には、調節具の後側に、前ベルト体の先端部を保持可能な保持手段が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のフローティングベスト。
【請求項5】
調節具には、指かけ部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のフローティングベスト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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