説明

フローリング用床材

【課題】木質系フローリング材の天然木調の色調や木目模様等の特性を活かしながら、接合部からの水の浸入を防止できるように端部がシーリング処理されたフローリング用床材を提供する。
【解決手段】雄実と雌実とを結合させる実結合によって端部どうしを接合させる床材1であって、該雄実を構成する凸部11の上部垂下面111と上部水平面112および該雌実を構成する凹部12の内部上面122と上部端面121とにそれぞれシーリング剤7をスプレー塗布し、プレコート層が形成されたフローリング用床材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、床材の接合部の端部のシーリング処理に関し、さらに詳しくは、雄実と雌実とからなる実結合部がシーリング処理されたフローリング用床材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、和風住宅においても木質系フローリング材を敷き詰めてフローリングを行い、洋風の住宅空間、例えば、リビングルームを設けることが一般的に行われている。上記木質系フローリング材としては、通常、厚み6〜15mm程度の天然木材のムク板や、厚み6〜15mm程度の積層合板等の木質系基材上に、厚み数百μmないし数mm程度の天然木材の突き板を貼着したもの、あるいはそれらの塗装品が用いられている。
【0003】
上記木質系フローリング材は、リビングルーム以外にも浴室脱衣所や洗面所、キッチンルーム等にも使用される。しかしながら、木質系なるが故に、本質的に耐水性に劣り、床面が水に濡れる機会の多い洗面所、キッチンルーム等に使用されると、水分が突き板層やその下の木質系基材にしみ込み易く、突き板層の膨れや木質系基材からの剥離、床材全体としての反り等が発生し易いという問題がある。
【0004】
特に、木質系フローリング材を敷き詰めたとき、床材どうしの接合部分から水がしみこみ易く、その対策として継ぎ目に合成樹脂等によるシーリング処理を施すことが行われている。しかし、この方法では、床面に多数敷き詰めた床材の相互間のすべての継ぎ目に、施工現場でシーリング処理を施す必要が生じ、非常に手間がかかり、施工コストが上昇し、施工期間が長期化するという問題がある。
【0005】
上記した問題を解決するため、特開2003−49530号公報には、その図2に示されているように、平板状の床材用基材の上面に、熱可塑性樹脂製の化粧シートが積層されてなる床材において、前記化粧シートが、前記床材用基材の上面から、前記床材用基材の全外周における側面の少なくとも上側の一部にかけて、連続して積層されてなることを特徴とする床材およびその製造方法が開示されている。
【特許文献1】特開2003−49530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の床材においては、平板状の床材用基材の上面に化粧シートを真空成形法またはソフトラッピング法により積層されているため、木質感に劣ったものとなり、また、経年劣化により、床材用基材から化粧シートの剥がれや膨れが生じるという問題がある。本願発明は、上記背景技術に鑑みてなしたものであり、その目的とするところは、木質系フローリング材の天然木調の色調や木目模様等の特性を活かしながら、接合部からの水の浸入を防止することができるように端部がシーリング処理されたフローリング用床材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本願請求項1記載の発明に係るフローリング用床材は、雄実と雌実とを結合させる実結合によって端部どうしを接合させる床材であって、該雄実を構成する凸部の上部垂下面と上部水平面および該雌実を構成する凹部の内部上面と上部端面とにそれぞれシーリング剤をスプレー塗布し、プレコート層が形成されたことを特徴としている。
【0008】
本願請求項2記載の発明は、上記請求項1記載のフローリング用床材において、上記スプレー塗布を雄実の上方から下方に向けて行い、上記床材の突き合わせ部上側端面をマスキングするとともに、上記雄実を構成する凸部の上部垂下面と上部水平面以外の部分をマスキングしてスプレーし、上記凸部の上部垂下面と上部水平面とにシーリング剤のプレコート層が形成されたことを特徴としている。
【0009】
本願請求項3記載の発明は、上記請求項1記載のフローリング用床材において、上記スプレー塗布を雌実の下方から上方に向けて行い、上記床材の突き合わせ部上側端面をマスキングするとともに、上記雌実を構成する凹部の内部上面と上部端面以外の部分をマスキングしてスプレーし、上記凹部の内部上面と上部端面とにシーリング剤のプレコート層が形成されたことを特徴としている。
【0010】
本願請求項4記載の発明は、上記請求項1記載のフローリング用床材において、上記スプレー塗布に用いるノズルが菱形の吐出部を有するものであることを特徴としている。
【0011】
本願請求項5記載の発明は、上記請求項1記載のフローリング用床材において、上記シーリング剤がシリコーン樹脂系撥水剤であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本願請求項1記載の発明に係るフローリング用床材においては、床材の端部どうしを実結合させる際、雄実を構成する凸部の上部垂下面と上部水平面、および雌実を構成する凹部の内部上面と上部端面とにそれぞれシーリング剤を塗布し、プレコート層が形成されているため、現場施工の際、床材表面にマスキングテープを貼り付ける等の養生を行ってシリコーン系等、撥水効果のあるシーリング剤を塗布する工程を省くことができる。そして、工場で予め、端部がシーリング処理された床材を用いるため、作業を簡略化することが可能となり、作業性よく、フローリング施工を行うことができる。
【0013】
本願請求項2記載の発明に係るフローリング用床材においては、特に、上記スプレー塗布を雄実の上方から下方に向けて行い、上記床材の突き合わせ部上側端面をマスキングし、かつ、上記雄実を構成する凸部の上部垂下面と上部水平面以外の部分をマスキングしてスプレー塗布するため、雄実の床面側に位置する上記凸部の上部垂下面と上部水平面とにシーリング剤のプレコート層が形成され、フローリングを施工したとき、床面側からの水分の浸入を防ぐことができる。
【0014】
本願請求項3記載の発明に係るフローリング用床材においては、特に、上記スプレー塗布を雌実の下方から上方に向けて行い、上記床材の突き合わせ部上側端面をマスキングし、かつ、上記雌実を構成する凹部の内部上面と上部端面以外の部分をマスキングしてスプレー塗布するため、上記雌実の床面側に位置する凹部の内部上面と上部端面とにシーリング剤のプレコート層が形成され、フローリングを施工したとき、床面側からの水分の浸入を防ぐことができる。
【0015】
本願請求項4記載の発明に係るフローリング用床材においては、特に、上記スプレー塗布に用いるノズルが正面視菱形の吐出部を有するものであるため、シーリング剤を膜状に塗布することが可能となり、厚膜にプレコートすることができる。
【0016】
本願請求項5記載の発明に係るフローリング用床材においては、特に、上記シーリング剤をシリコーン樹脂系撥水剤とすることにより、シーリング機能の優れた端部を有するフローリング用床材をコスト的に有利に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、本願発明に係るフローリング用床材において、床材の一端部である雄実をシーリング処理する方法を説明する分解斜視図である。図2は、上記床材の一端部である雄実をシーリング処理する方法を説明する説明図である。図1に示すように、床材1は一端部に雄実が凸設され、他の端部は雌実とされている。本実施形態においては、雄実を構成する凸部11の上部垂下面111と上部水平面112とにシーリング剤7がスプレーガン4のノズル41から吹き付けられ、それらの表面がプレコートされるとともに、撥水処理される。
【0018】
すなわち、図1、図2に示すように、雄実の凸部11の上方から下方に向けてスプレー塗布を行い、上記凸部11の上部垂下面111と上部水平面112とにシーリング剤7を吹き付ける。ここで上記床材1の突き合わせ部上側端面116はマスキングテープ21でマスキングされ、また、上記雄実11を構成する凸部11の突出面113、下部水平面114および下部垂下面115はそれぞれマスキングテープ22でマスキングされ、これらの部分にシーリング剤7が吹き付けられることを遮蔽する。このようにすることによって、凸部11の上部垂下面111と上部水平面112とにシーリング剤7が吹き付けられ、乾燥後プレコート層が形成される。
【0019】
このとき、スプレーガン4には、シーリング剤7がシーリング剤供給容器5からフレキシブルチューブ6を経由して供給される。そして、スプレーガン4を図1に矢印で示すように、雄実に沿って移動させることにより、上記凸部11の上部垂下面111と上部水平面112とにシーリング剤7がムラなく吹き付けられる。
【0020】
図3は、本願発明に係るフローリング用床材において、図1に雌実として示された凹部12をシーリング処理する方法を説明する説明図である。図3に示すように、雌実の凹部12の下方から上方に向けてスプレー塗布を行い、上記凹部12の上部端面121と内部上面122とにシーリング剤7を吹き付ける。ここで上記床材1の突き合わせ部上側端面126はマスキングテープ31でマスキングされ、また、上記雌実を構成する凹部12の突き当たり面123、内部下面124および下部端面125はそれぞれマスキングテープ32でマスキングされ、これらの部分にシーリング剤7が吹き付けられることを遮蔽する。このようにすることによって、凹部12の上部端面121と内部上面122とにシーリング剤7が吹き付けられ、乾燥後プレコート層が形成される。
【0021】
図4は、本願発明に係るフローリング用床材において、図1に雄実、雌実として示されている端部をシーリング処理する際に用いられるスプレーガン4のノズル41を示す正面図である。図4に示されているように、ノズル41の吐出孔411の形状が菱形とされているため、シーリング剤7を膜状に吐出することも可能であり、周囲へのシーリング剤7の飛散防止、ロスの低減、プレコート層の厚膜化を図ることができる。
【0022】
図5は、上記のようにして、シーリング剤7がプレコートされ、マスキングテープ21、22とマスキングテープ31、32とを除いた後、プレコート層が形成された雄実と雌実とを模式的に示す説明図である。図5に示すように、雄実を構成する凸部11の上部垂下面111と上部水平面112とはシーリング剤7を塗布してプレコートされ、また、雌実を構成する凹部12の内部上面122と凹部12の上部端面121とはシーリング剤7を塗布してプレコートされている。
【0023】
図6は、上記のようにして、シーリング剤7をプレコートされた雄実と雌実とを接着剤8を用いて接着する状態を示す説明図である。図6に模式的に示すように、実用接着剤8を凹部12内に塗布し雄実と雌実とを接着させる。ここで、凸部11の突出面113と下部水平面114および、凹部12の突き当たり面123と内部下面124とはシーリング剤7が付着することのないようにマスキングされていたため、実用接着剤8を均一に塗布することが可能であり、雄実と雌実とをしっかりと接着することができる。
【0024】
以上述べたように、工場で予め雄実と雌実の床面側にシーリング剤7でプレコートした本願発明に係るフローリング用床材を用いることにより、施工現場では、雄実と雌実とを結合した後、実用接着剤8を用いて床材の端部どうしを接合する作業のみを行えばよく、作業の簡略化を図ることができる。さらに施工後の床面は、上記したように、実結合部の床面側が撥水処理されているため、床面に水をこぼしたとき等、床材端部の接合部から水分が床材内部へ浸透することを防ぎ、フローリング用床材の吸水による伸縮、反りの発生等を防ぐことができる。
【0025】
なお、上記した実施形態においては、マスキングするためにマスキングペーパーを用いたが、他の手段、例えば、マスキング用の雄実治具、雌実用治具を用いてもよい。このように、本願発明は設計変更自在であり、特許請求の範囲を逸脱しない限り、本願発明の技術的範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本願発明に係るフローリング用床材において、床材の一端部である雄実をシーリング処理する方法を説明する分解斜視図。
【図2】本願発明に係るフローリング用床材の一端部である雄実をシーリング処理する方法を説明する説明図。
【図3】本願発明に係るフローリング用床材において、図1に雌実として示された凹部をシーリング処理する方法を説明する説明図。
【図4】本願発明に係るフローリング用床材において、端部をシーリング処理する際に用いられるスプレーガンのノズルを示す正面図である。
【図5】本願発明に係るフローリング用床材において、プレコート層が形成された雄実と雌実とを模式的に示す説明図。
【図6】本願発明に係るフローリング用床材において、雄実と雌実とを接着剤を用いて接着する状態を示す説明図。
【符号の説明】
【0027】
1 床材
11 凸部
111 上部垂下面
112 上部水平面
113 突出面
114 下部水平面
115 下部垂下面
116 突き合わせ部上側端面
12 凹部
121 上部端面
122 内部上面
123 突き当たり面
124 内部下面
125 下部端面
126 突き合わせ部上側端面
21 マスキングテープ
22 マスキングテープ
31 マスキングテープ
32 マスキングテープ
4 スプレーガン
41 ノズル
411 吐出孔
5 シーリング剤供給容器
6 フレキシブルチューブ
7 シーリング剤
8 実用接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄実と雌実とを結合させる実結合によって端部どうしを接合させる床材であって、該雄実を構成する凸部の上部垂下面と上部水平面および該雌実を構成する凹部の内部上面と上部端面とにそれぞれシーリング剤をスプレー塗布し、プレコート層が形成されたフローリング用床材。
【請求項2】
上記スプレー塗布を雄実の上方から下方に向けて行い、上記床材の突き合わせ部上側端面をマスキングするとともに、上記雄実を構成する凸部の上部垂下面と上部水平面以外の部分をマスキングしてスプレーし、上記凸部の上部垂下面と上部水平面とにシーリング剤のプレコート層が形成された請求項1に記載のフローリング用床材。
【請求項3】
上記スプレー塗布を雌実の下方から上方に向けて行い、上記床材の突き合わせ部上側端面をマスキングするとともに、上記雌実を構成する凹部の内部上面と上部端面以外の部分をマスキングしてスプレーし、上記凹部の内部上面と上部端面とにシーリング剤のプレコート層が形成された請求項1に記載のフローリング用床材。
【請求項4】
上記スプレー塗布に用いるノズルが正面視菱形の吐出部を有するものである請求項1に記載のフローリング用床材。
【請求項5】
上記シーリング剤がシリコーン樹脂系撥水剤である請求項1に記載のフローリング用床材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−167699(P2009−167699A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−7510(P2008−7510)
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】