説明

ブタ繁殖及び呼吸障害症候群分離株及びその使用法

新規なまたは特徴付けされていないPRRSウイルス分離株のビルレンスを予測する方法が提供され、ここで該分離株は、ブタに注射され、かつ約3〜15日間に渡る期間、複製される。この期間中、ウイルス生育速度および/またはウイルス血症の強さを測定し、またこのデータを、該新規なまたは特徴付けされていない分離株ビルレンスの尺度としての、既知ビルレンスを持つPRRSウイルス分離株の、対応する生育速度および/またはウイルス血症の強さとを比較する。更に、該予測されたビルレンスに基き、免疫原性組成物に組込むための分離株の選別方法も提供され、同時にビルレンスであるものと予測された、ウイルスの弱毒化された形態のものが配合されている組成物も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、2004年9月21日付で出願された、仮特許出願第60/611,824号に基く利益を求めて、2004年12月23日付で出願された、特許出願第11/022,262号の一部継続出願に係る。これら先願各々の教示並びに内容を、参考としてここに組入れる。
【0002】
本発明は、新規な単離された野生型PRRSウイルス分離株、および対応する改善された弱毒化PRRSウイルス、このような弱毒化ウイルスの、ワクチンおよび免疫原性組成物における使用、並びにこのような分離株、およびウイルスにおける、ウイルス血症の強さ、成長速度、抗体応答並びにこれらの組合せを測定する方法に関するものである。更に詳しくは、本発明は、新規なまたは以前に特徴付けされていないPRRS分離株のビルレンスを予測するための方法およびこのような分離株を、弱毒化しかつこれをワクチンおよび免疫原性組成物において使用する方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
ブタ繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(porcine reproductive and respiratory syndrome virus; PRRSV)は、アルテリビリダエ(Arteriviridae)科に分類される、エンベロープを持つ一本鎖RNAウイルスである(Cavanaugh, 1997)。これは、最初に1987年において、米国で、「不可解なブタの疾患(mystery swine disease)」として記載された、広範に見られたブタの疾患を引起す(Hill, 1990)。この疾患は、あらゆる年齢群のブタにおいて、呼吸器系の疾病として現れ、幾分かの若いブタを死に至らしめ、また繁殖期のメスにおける重篤な生殖性に関する問題をもたらす。
【0004】
PRRSVの動的特性は、該疾患における一定の変化を可能とし、また新規な分離株が出現する十分な機会を与える(Andreyev等, 1997; Murtaugh等, 1998; Meng, 2000)。PRRSVが、このように容易く変化するという事実は、ブタの生産者に係る破壊的な問題を引起す可能性との関連で、これを研究 (Mengeling等, 1998; Pejsak等, 1997)するための、およびワクチン並びに感染作用を減じるための他の方法を開発するための重要な課題となっている。分離株ビルレンスのレベルにおける変動は、肺の病変において、およびブタの死亡において明らかにされた(Halbur等, 1996)が、生物学的および免疫学的な差異と、特異的遺伝的な差異とを関連付ける努力は、全くの不成功に帰した(Albina等, 1998; Key等, 2001; Yuan等, 2001; Murtaugh等, 2002; Grebennikova等, 2004)。PRRSワクチンの安全性および効能を検討する研究はLabarque等(2003)、Mengeling等(2003a)、およびNodelijik等(2001)の研究を包含する。これらの研究は、実験的条件下において、変性された生PRRSウイルスが、ビルレントの攻撃誘発後に、該ウイルスの量、ウイルス血症の持続期間、並びに発熱および肺の病変を減じることを示した。
【0005】
Opriessing等(2002)は、読取り枠5(ORF5)における高いアミノ酸配列の相同性を持つ分離株が、ブタ内部に著しく異なるレベルで肺炎を生じることを示した。PRRSVに対するブタの応答における変動は、宿主の変動によっても影響される(Mengeling等, 2003b)。ビルレンスを、ブタ内部でのPRRSVの複製速度および分布(Haynes等, 1997)、マクロファージ銅クリーニング能力(Thanawongnuwech等, 1998)および該宿主動物の貧血のレベル(Halbur等, 2002)との関連で検討した。しかし、これら方法は、新規なまたは以前に特徴付けされていないPRRS分離株のビルレンスを予測するための、効果的な方法を提供するには不十分であった。
従って、当分野において必要とされるものは、PRRS分離株のビルレンスを予測するための方法である。更に、当分野において必要とされるものは、以前においてPRRSを含まなかったブタに、該分離株を投与または暴露した後に、該ブタにおけるインビボPRRSウイルス成長速度および/またはウイルス血症の強さに基いて、PRRS分離株のビルレンスを予測する方法である。
【発明の開示】
【0006】
本発明は、上に概略的に述べた問題点を克服し、また新たに単離された野生型のPRRSウイルス分離株、このようなウイルスの弱毒化した型、および薬理組成物中に該弱毒化PRRSウイルスを含有する、対応するワクチンを提供するものである。より詳しくは、本発明の該野生型のウイルスは、SDSU 73、17198-6およびMN 184並びにこれらの混合物として命名される。これらウイルス分離株の弱毒化した型、および該弱毒化した分離株を含有する完全なワクチンは、重大なPRRSVの臨床的徴候を発現すること無しに、ブタにおけるPRRSに対する、インビボでの免疫性を付与することができる。
本発明の該弱毒化PRRS分離株のもう一つの特徴は、これらが、野生の弱毒化されてないウイルスにおいて見られるウイルス血症の、実質的な割合を保持していることである。従って、この弱毒化ウイルスは、該野生の弱毒化されてないウイルスの呈するウイルス血症の少なくとも約50%、およびより好ましくは少なくとも約75%を示す。このように、該弱毒化ウイルスは、より迅速かつ完全に、ブタにおけるPRRS免疫性を付与することができる。
【0007】
該野生型のウイルスは、様々な方法、例えば細胞培養での反復的系列的な継体、遺伝子挿入、遺伝子切換え、遺伝子欠失、塩基対置換、および温度-感受性突然変異等の方法によって弱毒化することができる。このような弱毒化ウイルスは、次いで当分野において周知の方法を利用して、ワクチンを包含する様々な免疫学的組成物において使用することができる。幾つかの形状において、これら弱毒化ウイルスは、本発明による免疫組成物中に配合または添加するのに先立って、更に当分野において周知の方法を利用して、殺しあるいは不活性化することも可能である。PRRS感染を予防し、あるいはPRRS感染の臨床上の徴候の重篤度を減じるために有用な、免疫原性組成物の例は、Abst-1またはJA-142を使用して製造したワクチンを包含する。
また、本発明のワクチンは、その望ましい諸特性を減じること無しに、その使用の直前まで、凍結状態で保存することができる。このことは、従来のPRRSワクチンが、凍結保存に対して適当でなかった限りにおいて、当分野において解決されずに残された問題点を処理する。
【0008】
本発明は、更に新規なまたは特徴付けされていないPRRSウイルス分離株のビルレンスの程度を予測するための方法をも提供する。このような方法は、一般的に以下のパラメータの少なくとも1種に関して、PRRSの新規なまたは以前に特徴付けされていない分離株を評価する工程を含む:ウイルスの成長速度;ウイルス血症の強さ;抗体応答;またはこれらの組合せ。次に、このような評価の結果を、該新規なまたは以前に特徴付けされていない分離株のビルレンスの程度を予測するために使用する。これら方法は、一般的に所定量の該新規なまたは特徴付けされていないPRRS分離株を、PRRSを含まないブタに投与または暴露する工程と、約15日まで、より好ましくは約2〜12日間、より一層好ましくは約3〜10日間および更に一層好ましくは約3〜7日間に及ぶ期間に渡り、該ウイルスを複製させる工程とを含む。該投与の形式は、経口、鼻内、筋肉内、リンパ節内、皮内、腹腔内、皮下、およびこれらの組合せを含む、任意の公知の方法を利用して行うことができるが、最も好ましくは鼻内投与を通して達成される。鼻内投与のための投与量は、好ましくは約5mlまで、より好ましくは約0.5ml〜約4mlなる範囲、より一層好ましくは約1ml〜約3mlなる範囲および更に一層好ましくは約2mlである。各用量における該ウイルスの濃度は、約5.0 Log10TCID50/mlまで、より好ましくは約1.0〜約4.0 Log10TCID50/mlなる範囲、より一層好ましくは約2.5〜約3.5 Log10TCID50/mlなる範囲、および最も好ましくは約3.0 Log10TCID50/mlとすべきである。この複製期間中の選択された時点(1またはそれ以上)において、該ブタから生物学的サンプルを採取し、該投与されたウイルスの成長速度、ウイルス血症の強さ、抗体応答、および/またはこれらの組合せに関する測定を行う。次いで、これらの測定により集められたデータを、該新規なまたは未知の分離株の予測されたビルレンスの尺度としての、既知かつ特徴付けされている分離株に関する、成長速度、ウイルス血症の強さ、抗体および/またはこれらの組合せに関する測定値と比較する。
【0009】
本発明の方法を利用して、該PRRSウイルスの成長速度、ウイルス血症の強さ、抗体応答、および/またはこれら特徴の組合せを、8種の異なるPRRSV分離株の一種が投与された、ブタにおいて測定した。これらの分離株各々は、既知レベルのビルレンスを有し、また臨床的な疾患の顕在化を示した。また、これらと同一の特性を、8種全ての分離株が投与された、ブタにおいても測定した。
より具体的には、百(100)匹の健康な2-3週齢のブタを、各群にブタが10頭づつ含まれるように、体重に基いてランダムに10群に分割した。全てのブタは、ハードチェック(HerdChekTM) PRRS ELISA 2XR (ME、ウエストブルックの、IDEXXラボラトリーズ社(IDEXX Laboratories Inc.)製)を用いて、PRRS感染についてテストした。即ち、該8種の分離株の内の一種の投与を受けた8つの群、8種全ての分離株の投与を受けた一つの群、およびコントロールとして機能する、イーグルの最少必須培地(EMEM)の投与を受けた最後の群の10群。各ウイルス接種したサンプルを、力価の確認のために再度力価測定した。好ましくは、該投与されたウイルスの力価は、自然界でのウイルスによる暴露レベルを模倣するように工夫される。血液としての生物学的なサンプルは、この実験全体を通じて、様々な時点において集めた。各サンプルを、ウイルスの単離、定量的な逆転写酵素-ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、ハードチェック(登録商標) PRRS ELISA 2XR、およびPRRSVタンパク質特異的ELISAによって分析した。
【0010】
ウイルスの単離は、血清を連続的に希釈し、かつこれをEMEM、ゲンタマイシン(MO、セントルイスのシグマケミカル社(Sigma Chemical Co.)製)およびファンギゾン(Fungizone)(NY、グランドアイランドのインビトロゲン社(Invitrogen Corp.)製)と組み合わせることによって、CL2621(MA 104細胞系)細胞について行った。次いで、これらの希釈液を、インキュベートし、かつ細胞変性作用(CPE)について検討した。リード-ムエンチ(Reed-Muench)計算を利用して、力価を測定した。
RT-PCRは、QIAampウイルスRNAミニ-キット(QIAamp Viral RNA Mini-KitTM(CA、バレンシアのキアゲン社(Qiagen, Inc.)製)を使用して行い、またPRRSVは、MD、ガイザースバーグのテトラコア社(Tetracore, Inc.)による、シングル-チューブ(single-tube)アッセイを利用して検出した。ウイルスの定量を行うために、標準曲線を作成し、未知サンプルの濃度を、該3'UTR転写生成物の既知濃度に対してプロットされた、該サイクルの閾値の線形外挿法によって決定した。
【0011】
ELISA S/P比を利用した抗体測定は、製造業者の指示に従って、ハードチェック(登録商標) PRRS ELISA 2XRを利用して行った。PRRSVタンパク質特異的ELISAは、組換え分離株VR2332ヌクレオキャプシド(N)およびBL21(DE3)-RP細胞(CA、ラジョラのストラタジーヌ(Stratagene)社製)中で発現された、非-構造性タンパク質4(nsp 4)を用いて行った。
全てのブタについて、この研究の開始時点および終了時点において、体重測定した。更に、この研究中毎日、各ブタを、PRRS疾患に関する臨床的な徴候に関して、獣医師による評価に付し、評点付けした。得られた結果全てを、統計的に分析し、かつ各群毎に比較した。
【0012】
該10群のうちの9群は、その後高いビルレンスを持つウイルス分離株で、二次的にウイルス攻撃に付され、更に同種保護のレベルおよびワクチン対野生型異種保護(生ウイルス暴露概念)の評価を行った。この攻撃に引続き、これらの動物を、ウイルスの単離および免疫組織化学を利用した分析のために評価し、かつ剖検した。
従って、本発明は、また弱毒化PRRSウイルス分離株を含有する、免疫原性組成物をも提供する。好ましい形態においては、この組成物は、薬理的に相溶性の担体および/またはアジュバントをも含むことができる。このような組成物の一例は、Abst-1および/または上記方法によってビルレントであるものと予測されたPRRSウイルスの弱毒体を含むであろう。
【0013】
本発明は、また弱毒化して、免疫原性組成物に配合するための、PRRSウイルス分離株の、改善された選別方法をも提供する。この方法は、一般に以下の諸工程:a) 未知のビルレンスを持つ、PRRS分離株を得る工程;b) 所定量の該PRRSウイルス分離株を、PRRSを含まないブタに投与する工程;c) 該分離株を、約3〜15日間の期間に渡り、該ブタにおいて複製させる工程;d) 該期間中の、該ウイルスの成長速度および/またはウイルス血症の強さを測定する工程;e) 該ウイルスの成長速度および/またはウイルス血症の強さを、既知のビルレンスを持つPRRSウイルス分離株の成長速度および/またはウイルス血症の強さと比較する工程;およびf) 弱毒化し、かつ免疫原性組成物に組込むための分離株を、既知のビルレンスを持つ分離株と比較した、該分離株の成長速度および/またはそのウイルス血症の強さに基いて選別する工程を含む。免疫原性組成物に配合するためには、高度にビルレントであるものと予測された分離株を選別することが好ましいが、アビルレントであるものと予測されたものを包含する、より低いビルレンスを持つものと予測された分離株を使用することも可能である。これは、該高度にビルレントであるものと予測された分離株が、一般的により活発な、防御性の免疫応答を誘発する、より高い成長速度および/またはウイルス血症の強さを持つからである。本発明の方法を利用することによって、免疫原性組成物に組込むために使用すべき分離株の選別が、簡略化され、また該ビルレントなPRRS分離株に対して防御する、有用なワクチンを得る可能性が高まるであろう。
【0014】
本明細書において使用する用語「成長速度」とは、ブタにおいて、所定期間に渡りウイルス複製を測定することを意味する。この測定の好ましい例は、実施例1に与えられている。ここで使用する用語「ウイルス血症の強さ」とは、ブタの血液中を循環する、ウイルスの濃度を意味する。この測定の好ましい例も、実施例1に与えられている。
【実施例】
【0015】
以下の実施例は、本発明による好ましい分離株および手順を示すものである。しかし、これらの実施例は、単に本発明を例示するためのものであり、本発明の全体としての範囲に限定を付すものでは決してない。
実施例1:材料および方法:
百匹の健康な2-3週齢のブタを、PRRS-を含まない市販されている一群から入手し、獣医師による管理の下で、アイオワ州、エイムスのベテリナリーリソースズ社(Veterinary Resources, Inc.)において飼育した。これらの動物には、飼料および水を自由に摂取させた。この研究に関与する全ての動物の世話人および研究所の職員は、様々な動物群に与えられた処置については知らされていなかった。これらブタを、ハードチェック(登録商標) PRRS ELISA 2XR (ME、ウエストブルックの、IDEXXラボラトリーズ社製)を用いてテストし、何れのブタがPRRSVによって感染しているかを決定した。この実施例において用いたブタ全ては、テストした結果、負であることが分かった。次いで、これらのブタを、各群にブタが10頭づつ含まれるように、体重に基いてランダムに10群に分割した。
【0016】
本実施例においては、全体で8種のPRRSV分離株を使用した。これら分離株は、VR-2332、インゲルバック(IngelvacTM) PRRS MLV、JA 142、インゲルバック(IngelvacTM) PRRS ATP、SDSU 73、Abst-1、MN 184、および17198-6と命名されている。これら8種の分離株は、該PRRS疾患の歴史全体に及んでおり、また広範囲のビルレンスレベルを示し、しかも関連する臨床的疾患の顕在化を表す。これらウイルス分離株全ては、ATCC細胞系CL2621細胞(CL2621は、IA、エイムスのNVSLから入手した、専売細胞系である)(MA-104サルの腎臓細胞系)上で容易に生育した。一次フィールド(primary field)分離株の3種、即ちVR-2332、JA 142、およびSDSU 73も、弱毒化された形体のもの(弱毒体)を有し、これらは夫々インゲルバック(登録商標) PRRS MLV (MO、セントジョセフの、ベーリンガーインゲルハイムベトメディカ社(Boehringer Ingelheim Vetmedica Inc.))、インゲルバック(登録商標) PRRS ATP (MO、セントジョセフの、ベーリンガーインゲルハイムベトメディカ社(Boehringer Ingelheim Vetmedica Inc.))、およびAbst-1である。これらの弱毒体は、全て弱毒化のためのインビトロでの継体によって誘導された、低いまたは検出不能なビルレンスを呈する。該PRRSV分離株ATCC VR-2332は、ミネソタにおいて1991年に単離され、また細胞培養継体3において使用された。このウイルスの弱毒体は、インゲルバック(登録商標) PRRS MLVなる商品名の下で、市販品として入手できる。アイオワ州、エイムスのウイリアムメンゲリングナショナルアニマルディジーズセンタ(William Mengeling, National Animal Disease Center)により提供された、該PRRSV分離株JA 142 (ATCC No. PTA-6504)は、アイオワにおいて1997年に、生殖不全の重篤な「急性流産(abortion-storm)」の症例から単離され、また細胞培養継体5において使用された。JA 142の弱毒体は、商品名インゲルバック(登録商標) PRRS ATPの下に市販されており、承認番号ATCC VR-2638が与えられている。PRRSV SDSU 73 (ATCC PTA-6322)は、アイオワにおいて1996年に、重篤な生殖不全の症例から回収され、また細胞培養継体1において使用された。Abst-1(ATCC PTA-6320)と命名されている、SDSU 73の弱毒体は、52継体によって得た。該PRRSV分離株17198-6(ATCC PTA-6321)は、1997年にオクラホマから、重篤な生殖不全を経験した動物群から得られ、また継体レベル4において使用された。該PRRSV MN 184分離株(ATCC PTA-6319)は、2001年に、南部ミネソタにおいて、重篤な生殖不全および重大な雌ブタの死亡率を経験した養豚場から得、またセントポールの、ミネソタ大学(University of Minnesota)の、Kurt Rossowによって提供された。この分離株は、細胞培養継体1において使用した。更に、これら全ての分離株の組合せからなるプールを、製造した。
【0017】
第0日に、これら8種のPRRSV分離株の各々および該PRRSVのプールを、4%のFBS(KS、レネクサ(Lenexa)の、JRHバイオサイエンス(Bioscience)社)を含む、イーグルの(Eagle's)最少必須培地(EMEM)(KS、レネクサの、JRHバイオサイエンス社)中で、約3.0 Log10TCID50/mlにまで希釈し、2ml(外鼻孔当たり1ml)なる用量にて、ブタに、鼻内経路にて投与した。未処置のコントロール群には、2mlの媒体を投与した。これらの接種物は、力価確認用の3日齢のCL2621細胞を含む、96-ウエルプレート上で、リード-ムエンチ(Reed-Muench)法(Reed等, 1938)を利用して、力価測定を行った。投与したブタについて観測された力価を、そのビルレンスレベルおよび単離情報に関する説明と共に、以下の表1に示す。
【0018】
【表1】

*:弱毒化PRRSV分離株。
**: 8種全ての分離株を含む混合物。
***: ローマ(Rome) 2003での、発症する疾患に関するシンポジウム(Symposium on Emerging Diseases)において報告された、肺の病変のまとめ。
【0019】
次いで、これら分離株を比較して、これらの%配列同一性の分析を通して、それらの遺伝的な類似性を決定した。配列同一性は、配列解析のために、ウイルスサンプルを、ミネソタ大学診断研究所(University of Minesota Diagnostic Laboratory)にゆだねることにより決定した。ORF5-6の結果を得、またPRRSウイルスコンセンサス配列と比較した。個々の塩基対の差異に注目し、次に%配列同一性を分離株同士で比較した。当業者は気付くであろう如く、様々なウエブサイトにおいて、ブラスト探索を行うこともできる。例えば、該ミネソタ大学は、1989-2003の期間内の、分離株由来の配列を掲載している、PRRSVデータベース(ccgb.umn.edu/cgi-bin/common/web_blast.cgi)を提供している。もう一つの高頻度で使用されるサイトは、ncbi.nlm.nih.gov/BLASTにおいて見出される、NCBIBLASTリンクである。
【0020】
この%配列同一性および以下の表2におけるデンドログラムによって示されているように、ビルレントフィールド分離株は、遺伝的に全く独特であり、PRRSV分離株の別異の群を表す。対照的に、親およびワクチンPRRSV対は、ほぼ遺伝的に同一である。対間の比較および表2のデンドログラムは、レーザージーヌ(Lasergene)ソフトウエアの一揃いの配列分析手段(WI、マディソンのDNASTAR社)を用いて作成した。
【0021】
【表2】

%多様性
【0022】
49日目に、PRRS MN 184のビルレント分離株2mlを鼻内経路にて第1-9群に投与した。このMN 184分離株は、濃度が、1ml当たりの対数値(log) 3.0+/-0.5となるように、MEM+4%FCS中に希釈した。この希釈した攻撃誘発ウイルスを、テストするための3日齢のCL2621細胞を含む、96-ウエルプレート上で、力価測定した。これらの動物を、14日間に渡り評価し、次いで剖検に掛けた。
ウイルス血症の評価
第0、1、3、7、15、21、28、35、42、および49日に、バキュテーナーによって、各群のブタから血液サンプルを集めた。血清を、6000RPMにて20分間遠心分離処理することにより、血餅形成した全血液から分離した。次いで、血清サンプルを、ウイルス単離、TCID50アッセイ、定量的な逆転写酵素-ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、ハードチェック(登録商標) PRRS ELISA 2XR、およびPRRSVタンパク質-特異的ELISAによって分析するために分割した。本研究におけるこれらの血清サンプルは、採取後即座に処理し、また採取後3時間以内に氷上で冷却した。これらのサンプルは、最大で4℃において24時間、またその後-70℃にて保存した。RT-PCRによってテストした血清は、採取した日に-70℃にて凍結し、かつテストを行うことができるまで保存したが、該テスト実施可能時点において、24時間以内にテストできるサンプル数のみを、解凍し、抽出し、かつテストした。
【0023】
該TCID50アッセイのために、各ブタ由来の血清100μlを、900μlのEMEMm+2%FBS+50μg/mlのゲンタマイシン(MO、セントルイスのシグマケミカル社製)+2.5μg/mlのファンギゾン(NY、グランドアイランドのインビトロゲン社製)を含む希釈チューブに添加した。このチューブを攪拌し、かつその100μlを、900μlのEMEMm+2%FBS+50μg/mlのゲンタマイシン+2.5μg/mlのファンギゾンを含有する、もう一つの希釈チューブに移した。この工程を、最終的な希釈液が、10-6に達するまで繰返した。各希釈液について4つの複製物を、ウエル当たり100μlの該CL2621(MA 104細胞)を含む96-ウエルプレート上で、37℃、4%CO2なる条件の下で、8日間に渡り、平板培養した。次いで、各ウエルを、細胞変性作用(CPE)について検査し、またその力価を、リード-ムエンチ計算法を利用して決定した。ウイルス単離のために、100μlの血清を、MA 104細胞を含む一対のテストウエル各々に添加した。次いで、これらのプレートを、37℃、4%CO2なる条件の下で、1時間インキュベートした。次に、500μlのEMEMm+2%FBS+50μg/mlのゲンタマイシン+2.5μg/mlのファンギゾンを各ウエルに添加した。これらプレートを、37℃、4%CO2なる条件の下で、8日間に渡りインキュベートし、次いで各ウエルを、CPEにつき検査した。
【0024】
定量的RT-PCRの目的で、該血清からウイルスRNAを抽出するために、QIAampウイルスRNAミニ-キット(登録商標)(CA、バレンシアのキアゲン社製)を、該キットの指示に記載のように使用した。実時間PCRのために、市販品として入手できる、U.S.PRRSVの検出用の、実時間、シングル-チューブRT-PCRアッセイが、テトラコア社(MD、ガイザースバーグ)によって提供され、これをPRRSVのRNAを検出するために使用した。小溝結合(MGB) 5'ヌクレアーゼプローブおよびプライマーを、その3'未翻訳領域(UTR) PRRSVゲノム領域から、ゲンバンク分離株との整列により、また該3'UTRプライマーおよびプローブ領域の保存領域に基いて設計した。該PRRSVのRNAは、テトラコアU.S.PRRSVマスターミックス(Tetracore U.S.PRRSV Master Mix)(18.9μlのマスターミックス、2μlの酵素ミックス1、0.1μlの酵素ミックス2)および4μlの抽出されたRNAからなる25μlなる反応体積を用いる、シングル-チューブ内で転写させた。これらの反応チューブは、スマートサイクラーII(Smart Cycler IITM)ブロック(CA、サニーベール(Sunnyvale)のセフェイド(Cepheid)社)に投入し、また蛍光検出のソフトウエア設定を、バックグラウンドの引算と共に、ベースラインを自動計算するように設定した。この熱サイクラーのプログラムは、52℃にて1800秒、95℃にて900秒、および45サイクルに及ぶ94℃にて30秒間、61℃にて60秒間および72℃にて60秒間のサイクルからなっていた。PCR反応は、該サイクルの閾値(Ct)レベルが、≦45サイクルで得られた場合に、正であると考えた。定量のために、既知量の周期的に希釈したインビトロ転写RNA生成物(1×10-1乃至1×108コピー/μl)を使用して、基準曲線を作成した。未知サンプルのコピー数/mlで表した濃度を、該3'UTR転写生成物の既知濃度に対してプロットされた、該Ct値の線形的外挿によって決定した。
【0025】
抗体測定
ELISA S/P比は、製造業者の指示に従って、ハードチェック(登録商標) PRRS ELISA 2XR(MA、ウエストブルックの、INDEXXラボラトリーズ社製)を実施することにより得た。このハードチェック用のPRRSVタンパク質-特異的ELISAを、プラスミドpET 24b由来の、BL21 (DE3)-RP細胞内で発現された、アミノ末端myc-タグ(tag)およびカルボニル末端6xヒスチジンタグを含む、融合タンパク質としての、組換え分離株VR2332ヌクレオキャプシド(N)および非-構造型タンパク質4(nsp4)を用いて行った。変性タンパク質を、0.1M トリス(Tris)-HCl、pH 8.0、6Mグアニジン-HCl、2mM EDTA中で透析し、また濃度を3mg/mlに調節した。DTTを300mMまで添加し、この溶液を0.45μmのメンブランフィルタを介して濾過した。還元されたタンパク質を、再生バッファー(100mM トリス(Tris)-HCl、pH 8.0、0.5MのL-アルギニン、8mMの酸化されたグルタチオン、2mMのEDTA、10μMのペプスタチンA、10μMのロイペプチンおよび1mMのPMSF)中に添加し、濾過し(0.22μm)、一夜攪拌した。この精製したタンパク質を、正接流動濾過(tangential flow filtration)(ペリコンXLウルトラセル(Pellicon XL Ultracel) PLC 5kd、ミリポア(Millipore)社製)によって濃縮し、また20mMのトリス(Tris)-HCl、pH 8.0に対して透析した。タンパク質を、プロテインラブチップ(Protein LabChip)を備えた、アジレント2100バイオアナライザ(Agilent 2100 Bioanalyzer)によって分析した。精製されたタンパク質溶液を、-80℃にて保存した。
【0026】
タンパク質-特異的ELISAを、炭酸塩バッファー(pH 9.6)中の100ngの組換えタンパク質で、あるいは該バッファー単独で、マイクロタイタプレートを被覆することによって行った。プレートを、0.1%ツイーン(Tween) 20含有リン酸緩衝塩水(PBST)中で、2.5%の脱脂乾燥ミルクで遮断した。100μlの1:2000希釈率の血清を、各対のウエルに2時間適用し、その後これらのプレートを、PBSTで洗浄し、抗体結合を、1:5000なる希釈率の西洋ワサビペルオキシダーゼ-結合ヤギ抗-ブタIgG(重鎖+軽鎖(KPL, MDガイザースバーグ)と共に、1時間インキュベートし、引続き洗浄し、100μlのTMB基質(KPL)を用いて発色させた。反応を、1Mリン酸の添加により停止させ、プレートを450nmにて読取った。
【0027】
体重
全てのブタの体重を、第0日(研究の初日)および第49日目(研究の終了日)に測定した。ブタの体重は、ポータブル電子ウエイ-バースケール(weigh-bar scale)装置ウエイ-トロニクス(Weigh-TronixTM)モデル615XL(MN、フェアモントの、ウエイ-トロニクス社(Weigh-Tronix Inc.))で測定した。この秤は、各使用の前後において、公認の錘を使用して、較正した。
臨床上の評点
この研究の各日にちにおいて、各ブタを、獣医師により、呼吸上の徴候、挙動、および咳込みについて、各臨床的徴候に対して、1〜4の評点に基いてスコアを付した。正常な動物にはスコア3が与えられ、最大の臨床的な疾患状態は、スコア9であり、また死亡した動物には、スコア12を与えた。本研究において死亡した全ての動物由来のサンプルは、病理的実験のために、アイオワ州立大学、獣医学診断研究所(Veterinary Diagnostic Laboratory)に提出された。
【0028】
肺の免疫組織学的評価
各ブタ由来の肺のサンプルを、PRRSVと適合する病巣に関して、免疫組織化学および顕微鏡的研究によりテストするために、剖検当日に、ホルマリンで固定した。このテストは、アイオワ州立大学、獣医学診断研究所により行われた。
統計的分析
全てのデータは、データ管理および分析のために、SASバージョン8.02に取入れられた。平均、標準偏差、標準誤差、メジアンおよび頻度分布を含む概略的統計値は、適当と思われる、全ての結果としての変数について得た。体重、RT-PCT、およびLog10TCID50/mlに関するデータは、最小有意差(Least Significant Difference) tテストにより、処置群間の差異に関する、対毎のテストを用いた、該処置群の中の、全体としての差異につき、一方向(one way) ANOVAによって分析した。群間の差異に関する全てのテストは、両側検定として工夫された。差異は、p≦0.05において、統計的に有意であると考えた。
【0029】
これらのデータについて幾分かの変更を行って、相関分析を容易にした。<2.00として掲載されたLog10TCID50/mlの値を、1.0に設定した。負のRT-PCR値を1.0に設定し、また全てのRT-PCR値を、分析前に、10を底とする対数値(log)に変換することによって、規格化した。コントロール群の結果は、この相関分析には含まれなかった。各ブタに関する結果は、トラペゾイドルール(trapezoidal rule)を用いて、曲線下部のおよその面積に変換される。該曲線下部の面積は、第15日目の観察日初日からの全研究期間に渡り、また第15日目乃至最後の観察日まで計算されるが、全研究期間のみが、添付図に示されている。
【0030】
結果
ウイルス単離およびLog10TCID50/mlの量化
感染日における暴露前に、如何なるテストされた動物も、PRRSVに対して正ではなかった。鼻内感染後の第1日目には、テストした5群中の13匹の動物のみが、ウイルスに対して正であった。しかし、感染後の3日目には、分離株17198-6を除き、野外分離株で感染された全ての動物が、ウイルスについて正となり、2.1(SDSU-73)〜3.9(MN 184)なる範囲の、平均のLog10TCID50/ml値を有していた。対照的に、弱毒化分離株を接種した動物は、細胞培養によれば、均一に負であった。これら結果を図1に与える。3.6〜4.6Log10TCID50/mlなる範囲の、ウイルス血症のピークレベルは、5種のビルレント分離株の内の4種について、第7日目に到達した。分離株17198-6は、15日目にピークに達した。全てのビルレントウイルス群において、力価は、21日間に渡り、2 Log10TCID50/mlまたはその近傍に維持されたが、JA 142で感染させたブタでは、力価はこのレベル以下であった。
【0031】
弱毒化PRRSV分離株を接種したブタにおけるウイルス血症のレベルは、ビルレントな野外分離株に感染したブタにおける、ウイルス血症のレベルよりも低かった。該弱毒化分離株を接種した群の平均は、最低のビルレントを持つ分離株を接種した群の力価のピークよりも低い、ある対数領域に渡る、力価においてピークとなった。該Abst-1分離株は、接種後の3日目を除き、決して再度単離されることはなかった。インゲルバック(登録商標) PRRS MLVによるウイルス血症は、7日目〜28日目において、0.5〜1.0 Log10TCID50/mlなる範囲で揺らぎ、またインゲルバック(登録商標) PRRS ATPは、7日目〜28日目において、0.4〜1.2 Log10TCID50/mlなる範囲で変動した。弱毒化分離株ウイルスは、28日後の血清から回収されることはなく、またウイルスは、ビルレントな野外分離株接種群、プール接種群の2種のみにおいて、および35日までのMN 184-感染群(同様に図1に示されている)のブタから回収された。殆ど全ての豚が、42日目および49日目において、ウイルスの単離法によっては、非-ウイルス血症性であった。
【0032】
全体的に、より高いビルレントの分離株は、ブタにおいて、該弱毒化分離株に対して観測されるよりも、迅速に複製され、またより高い力価を有していた。MN 184分離株で感染させたブタは、特にウイルス複製において極めて迅速な増加を示し、複製は3日目以前に開始され、また7日目には4.5 Log10TCID50/mlを越えるピークに達した。ピークに達した後、該MN 184によるウイルス血症は、定常的に減少するが、28日目および35日目において、依然として他の全ての分離株よりも、有意に高い力価(t-テスト、p≦0.05)を維持していた。同様な傾向は、残りの全てのビルレント群、即ちVR2332、JA 142、SDSU 73、およびプール(図1参照)において観測された。17198-6を感染させたブタは、MN 184による感染群に関する記載と同様な、一般的傾向を示したが、厳密には同一ではなかった。
【0033】
弱毒化分離株(インゲルバックPRRS MLV、インゲルバック(登録商標) PRRS ATP、およびAbst-1)を投与したブタの群は、異なる傾向に従った。これらは、ウイルス力価において穏やかな増加を示した。即ち、投与3日後に増加し始め、7日目と15日目との間でピークに達し、そのピークのウイルス力価は、該ビルレント分離株暴露群の何れよりも、対数値1以上低く、また該MN 184による感染群よりも数オーダー低い。従って、これら弱毒化分離株暴露群において観測される力価は、35日目またはそれ以前に、0まで減少した(図1参照)。
二次的な暴露後の群の平均値を比較する場合、該弱毒化分離株暴露群におけるウイルス力価には、極めて急峻な増加が見られ、一方で該ビルレント分離株暴露群は、僅かな増加を示すか、あるいは殆ど増加を示さない。例えば、Abst-1は、該二次的な暴露後の7日目に、対数値3.76なる力価を示し、一方でMN 184は、力価0を示した。その他の弱毒化分離株投与群は、該二次的な暴露後の3日目に、ピーク値を示した。該二次的な暴露後の全てのビルレント分離株投与群において観測された最高の力価は、JA 142において、暴露後3日目に見られた、対数値1.32であった。
【0034】
実時間RT-PCRによるウイルスの量化
実時間RT-PCRによって、ウイルス血症のレベルをも決定した。というのは、CL2621細胞上での成長が、全ての分離株について同一ではあり得ず、またRT-PCRは、ウイルス血症に関して、細胞上での成長よりも、一層高感度の尺度であり得るからである。図2に示したように、ビルレント分離株暴露群は、第1日目の平均濃度において劇的な増加を示し、また全ての群は、7日目と15日目との間にて、8対数値/mlを越えるピーク値を示した。次いで、該ビルレント分離株暴露群の濃度は、次の数週間に渡り、徐々に漸減し、49日目までに、4対数値/ml以下の濃度に達した。
【0035】
該弱毒化分離株暴露群は、1日目近傍において見られる、濃度におけるそれほど急激な増加を示さず、また平均の群の力価は、決して7対数値/mlに達することはなく、あるいはこれを越えることはなかった(図2)。該弱毒化分離株暴露群について観測された濃度は、揺らぎレベルに維持され、該レベルは、該暴露後の数週間において、力価の値の広範囲に及ぶ。これらの揺らぎは、主として単一のブタにおける散発的に高い値によるものであった。該3種の弱毒化分離株暴露群は、全て本研究の異なる日にちにおいてピークに達した。該インゲルバック(登録商標) PRRS MLV暴露群は、28日目に4.31対数値/mlなるピークに達し、該インゲルバック(登録商標) PRRS ATP暴露群は、3日目に6.58対数値/mlなるピークに達し、また該Abst-1暴露群は、35日目に6.85対数値/mlなるピークに達し、これは弱毒化分離株によって達成された最高の力価であった(図2)。付随的に、該ビルレント分離株暴露群に関する平均の濃度は、3日目および15日目における、該弱毒化分離株暴露群に関する平均の濃度よりも有意に高い(p<0.05)ことが観測されたが、49日目には、該ビルレント分離株暴露群に関する平均の濃度は、該弱毒化分離株暴露群に関する該値よりも有意に低かった(p<0.05)。
【0036】
ハードチェック(登録商標) PRRS ELISA 2XR
図3に示したように、ハードチェック(登録商標) PRRS ELISA 2XRのS/P比によって測定されたような、PRRSVに対する体液性免疫応答は、該ビルレント分離株暴露群の平均値が、15日目の正の結果に関する遮断値である0.4以上に上昇することを示した。対照的に、該弱毒化分離株暴露群の平均値は負であり、また3種の群全ては、21日後まで、0.4以下に維持された。該インゲルバック(登録商標) PRRS MLVおよび該インゲルバック(登録商標) PRRS ATP暴露群は、28日目に正の結果を示したが、Abst-1暴露群は、42日目まで、0.4を超える平均のS/P比を示さなかった。
【0037】
ビルレント分離株またはプールで感染させた群の体液性応答を、弱毒化分離株を接種した群と比較すると、該抗体応答の速度および強さは、特に感染後14日目と35日目との間においては、ウイルス血症のレベルと関連していることが明らかとなった。この観測は、更にウイルス血症のレベルと、ハードチェック(登録商標) PRRS ELISA 2XRのS/P比と、ウイルス力価測定値またはRT-PCRの何れかとの、対毎の比較によって決定された体液性抗体応答との間の相関によっても支持されている。図4および5は、この体液性抗体応答が、全研究期間に渡り、ウイルスの負荷量と、ウイルス力価に関して、r=0.858およびRT-PCRに関してr=0.794なる相関係数にて、密接な関連性を持つことを示している。これらの関連性は、極めて有意(各場合に対してp<0.0001)である。その上、弱毒化分離株は、低い抗体応答性およびウイルス負荷量を示し、一方でビルレント分離株は、高い応答性を示す。
【0038】
PRRSVタンパク質-特異的ELISA
更なる、PRRSV接種物および体液性免疫応答における差異間の関連性を見抜くために、該N、主な構造タンパク質、および必須であるが重要性の低い非-構造タンパク質であるnsp4に対する抗体力価を測定した。図6aは、ヌクレオキャプシド抗-N IgG応答の速度論が、ブタの全ての群においてほぼ同一であり、28日目にピーク力価を持ち、これは7-14日目以降の急激な低下を伴い、その後42〜49日目の間で、該力価のレベルは維持されるか、あるいは僅かに上昇した。
各分離株に対する応答の強さは、ハードチェック(登録商標) PRRS ELISA 2XRの結果において見出されたものと類似し、またウイルス血症のレベルと一致している。28日目における最低のピーク力価は、弱毒化分離株を接種した群において観測され、また最大の力価は、高度にビルレントなMN 184で感染させた、ブタにおいて達成された。49日目までに、抗-N力価は、MN 184およびプールを除き、全ての群において等価であったが、このことはMN 184に対する体液性応答が、定量的に異なる可能性のあることを示唆している。更に、僅かに5頭のみのブタが、これら2つの群各々において、49日目まで生存したが、このことは、このMN 184暴露群における49日目の、高い標準誤差において反映されている。
【0039】
図6bに示したように、nsp4に対する該IgG応答は、Nに対する応答と実質上異なっていた。如何なる抗-nsp4抗体も、21日目以前には検出されず、その全体的な応答は、極めて弱く、また有意な応答は、インゲルバック(登録商標) PRRS MLVおよびAbst-1の接種を受けた群においては検出されなかった。更に、該抗-nsp4応答の強さも、ウイルス血症のレベルとの関連性を示さなかった。VR 2332、JA 142、MN 184、およびプールに対する応答は、全て等価であり、28日目にピークを持ち、35日目の低下を伴い、次いで42日目に再度上昇するが、ウイルス血症の強さ、経時変化、その期間は、これら4つの群においてばらばらであった。図7は、反復的測定分析値、Log10TCID50/mlデータと比較したnsp4 ELISAに関するデータを検討すると、ウイルス血症のレベルとnsp4の体液性抗体応答との間には相関性がないこと理解することができる。また、分離株MN 184に関しては、49日目の二次的暴露に伴って、極めて低い二次的応答性があった。
【0040】
体重
本実験の第0日においては、何れの群の平均体重にも、有意な差はなかった(P=0.099)。49日目には、該弱毒化した分離株Abst-1を接種したブタは、該コントロール群を除く、全ての他の群よりも有意に高い、最大の平均体重を有していた(表3)。また、49日目には、該17198-6暴露群を除き、全てのビルレント分離株暴露群に関する平均体重は、該コントロール群よりも有意に低かった(表3)。該弱毒化分離株投与群インゲルバック(登録商標) PRRS MLV、インゲルバック(登録商標) PRRS ATP、および該コントロール群の平均体重は、統計的に等価であった(表3)。





【0041】
【表3】

1:体重は、kg単位で表されている。第0日における平均体重には、有意な差は見られなかった。
*:第49日におけるこれら群の体重の、統計的な等価性を示す。
**:プールは、これら8種の分離株全てを含む混合物であった。
a:該コントロール群を除く全ての群よりも有意に大きい(p≦0.05)。
b:該コントロール群よりも有意に低い。
c:全ての他の群よりも有意に低い。
【0042】
臨床的な評点
平均の臨床的な評点における上昇は、該ビルレント分離株暴露群の4種:JA 142、SDSU 73、MN 184、およびプールのみにおいて観測された。これらの高い評点は、本研究全体を通じて維持されたが、ビルレントおよび弱毒化分離株暴露群両者における残りの群は、本研究の期間中、本質的に正常な臨床的評点を有していた。本研究において観測された、平均の臨床的評点における変化の、唯一の主な原因は、該関連する処置群において、1またはそれ以上の動物が死亡した場合に生じた(表4)。
【0043】
【表4】

弱毒化PRRSV 0/30 = 0%
ビルレントPRRSV 13/60 = 22%
処置群における全ての死は、二次的な細菌感染を伴う、PRRSVによる中程度または重度の非-化膿性の間質性肺炎に起因するものであった。
*:PRRSの関与のない、細菌性肺炎による死亡。
**:プールは、8種全ての分離株を含む混合物であった。
【0044】
該臨床的疾患の重篤度は、ウイルスの負荷量と高い関連性を有していた(p<0.001)。図8に示したように、該臨床的なスコアは、MN 184およびプールによって感染させた群について最大であった。各群におけるブタの50%が死亡し、またウイルス力価測定は、感染のレベルが、全ての他の群のレベルよりも実質的に高いものであった。RT-PCRによって決定された、ウイルス負荷量におけるこれらの差異は、さほど顕著ではなく(データは提示してない)、また臨床的な徴候と、このRT-PCRによるウイルス負荷量との相関は、ウイルス力価測定との相関よりも低い(夫々、r=0.556対r=0.803)。第10群(コントロール)における該臨床的な評点は、2匹のブタが細菌性肺炎で死亡した後に増大した。これら2匹のブタは、肺組織の免疫組織化学的染色、負のウイルス単離および実時間PCR分析、並びにハードチェック(登録商標) PRRS ELISA 2XRまたはタンパク質特異的ELISAによる、セロコンバージョンが全く欠如していることにより、PRRSVに対して負であることが示された。後の発見は、様々な細菌性の病原体が、予想外のことに、本研究中に死亡した動物中に存在することを示しており、これらの死亡も恐らく二次的な細菌感染によるものであるとされた(表5)。
【0045】
【表5】

*:診断上の報告は、特異的な薬物を掲載せずに、「細菌性肺炎」と示されていた。
【0046】
肺の免疫組織学的な評価
個々の群について観察された平均のIHC評点およびPRRSVによる病変は、有意に異なってはいないが、有意な差異は、ビルレンスに従ってIHC評点を比較した場合に見られた。平均のIHCおよびPRRSCによる病変については、図9および表6を参照のこと。
【0047】
【表6】

*:=p≦0.05において有意
【0048】
議論
本例の一つの目的は、既知レベルのビルレンスを持つ、様々なPRRSV分離株を調べて、調節された攻撃誘発実験を行う必要性無しに、PRRSV分離株のビルレンスを予測するために利用できる、インビボでの複製との関連性があるか否かを決定することであった。加えて、分離株のビルレンス、ウイルス血症のレベル、および体液性抗体応答間の関連性を決定することも興味深いことであった。最後に、本発明の方法を利用して、ビルレントであることが分かっている、上記のPRRSV分離株に対するワクチンを開発することも、興味深いことであり得る。他のビルレントな分離株に対する、幾分かの防御をもたらす、このようなワクチンを得ることが最終目標であると考えられるが、このような相互効果(cross-effectiveness)は、全てのPRRSV分離株に対して普遍的なものではなく、更なるテストが必要となるであろう。しかし、本発明が、ワクチン開発のための、第一の候補を同定するための有効な手段を与えることは、明白である。
【0049】
同一の条件下で、PRRSV分離株をテストするために、USDAによって確立された最低免疫化用量以下であり、かつ工業的な用量を代表するものではない、認可されたワクチンの用量を使用する必要がある。また、本研究において使用した、上記MLVワクチンの鼻内経路による投与は、USDAラベルによるものではなく、またより自然な暴露状態を模倣するためにのみ使用された。変性された、生PRRSワクチン(インゲルバックPRRSおよびインゲルバックPRRS ATP)の典型的な工業的用量は、この実験的な試みにおいて使用したものよりもかなり高い。これら実験的に低い容量の、変性された、生PRRSワクチンは、当分野において使用されている実際の製品の用量および形状を表しておらず、また報告された血清学的な応答を容易に説明する。工業的な用量のワクチンを使用した場合、上記IDEXXアッセイによって測定した血清学的な力価は、第14日目までに検出できるであろう。対数値約3の力価を用いるこの試みにおいて、この血清学的な応答は、遅延し、また低下した。このことは予想されたものであるが、群間の力価投与の整合性を担保し、またビルレント分離株と弱毒化分離株間の比較および分析を容易にするために行われた。本実施例においては具体的に扱わなかったが、用量の効果は、恐らく、暴露の3-7日以内にブタの血清中に4対数値/mlを越えるレベルで迅速に分裂し、かつ回収され得る、ビルレントな野外ウイルスに関連する場合よりも、弱毒化された、またはより低レベルのビルレンスを持つウイルスについて、より一層顕著となる。より高い推奨された、筋肉内経路での工業的用量は、ワクチン投与後14日目までに、遮断値0.4を越えるハードチェック(登録商標) PRRS ELISA 2XR S/P比を与えるが、これは本研究において使用した用量について観測された時間の半分に過ぎない(Roof等, 2003)。本研究において用いた、動物当たり2x103 TCID50なる公称用量は、MN 184分離株の投与を受けた群における死亡率50%を生じ、また全ての群において、抗-ヌクレオキャプシド応答を生じた。これ以上の高い用量はテストしなかった。というのは、より高いビルレンスを持つ分離株で攻撃誘発した群における過度に高い死亡率は、この研究の目的にそぐわないからである。更に、以前の研究は、動物当たり102.2、103.2および104.2TCID50なる用量にて、PRRSV分離株VR 2332を接種した若いブタにおいて臨床的な徴候およびウイルス血症における差異をまったく示さなかった。
【0050】
該Log10TCID50/mlおよび実時間RT-PCR両者の結果は、該ウイルス血症のレベルが、PRRSVによる暴露に伴い、群間で大幅に異なることを示した。このことは、ブタにおけるPRRSVの成長速度が、ブタの感染し易さにおける、可能な変動とは無関係に、該ウイルスの表現型の特性であることを示している。更に、CL2621細胞上で生育するように適合させることによって弱毒化したPRRSVは、ブタ身体内での生育能力が低下されるのみならず、ウイルス複製速度も変更され、結果的にピークウイルス血症が、その後の時点において発生した。また、同様な観測が、Chang等(2002)によってなされ、彼らは、該中程度にビルレントのPRRSV分離株であるVR 2332の、限られた期間に渡る細胞培養による継体でさえも、ブタにおけるウイルスの生育性を減じ、かつピークウイルス血症に至る期間を大幅に遅らせることを示した。しかし、ピークウイルス血症に至る期間の遅延時間は、インビトロでの細胞培養による継体または弱毒化に関する徴候ではない。というのは、該高度にビルレントな分離株である17198-6も、ピークウイルス血症に至る遅延時間を示したからである。
【0051】
全体として、ビルレントな分離株は、等価な接種用量において、弱毒化分離株によるウイルス血症レベルよりも、実質的に高いウイルス血症レベルを示した。例えば、該弱毒化分離株で暴露した任意の群における、最高の観測されたウイルス力価は、インゲルバック(登録商標) PRRS ATPが投与されたブタにおいて、15日目に対数値1.22となるが、15日目におけるあらゆるビルレント分離株接種群の内の最低の力価は、該SDSU 73投与群における、対数値2.40であった。3〜7日目における該ウイルス血症のピークおよび検出されたウイルスのレベル(全て>3.5 対数値/ml)は、ビルレントのPRRSV分離株投与群においては一致しているが、MN 184投与群は、その大きさおよびその期間において著しく大きく、28日目および35日目においても依然としてウイルス力価が観測された。このことは、高度にビルレントのPRRSV分離株が、弱毒化分離株またはビルレントの低い分離株の複製と比較して、インビボにおいて実質的に高い力価にまで複製するが、これらは、野生型PRRSVのビルレンスのレベルと、そのインビボでの成長のレベルまたは速度との間の直接的、定量的な関連性を確立するものではない(Haynes等, 1997)、という概念を支持している。これらの群は、MN 184分離株による二次的暴露からの、極めて多様な防御を示した。例えば、両者共に、最初MN 184分離株の投与を受けた、該MN 184またはプール投与群において、何らウイルスは検出されなかった。Abst-1は、MN 184分離株への暴露後に、極めて低い防御性を付与することを理解することができる。これらの観察は、更に同種暴露が、異種暴露の場合よりも、一層高い防御性を付与するという概念を、確固たるものとする。該同種暴露はより防御性が高く、また該異種暴露は、防御性がより低いが、異種の弱毒化分離株による暴露に見られるよりも、依然として防御性が高かった。
【0052】
該実時間RT-PCRの結果は、上記Log10TCID50/mlの結果と統計的に極めて類似しており、このことは、これら両者の方法が、これらの群における、感染性のウイルスの相対的なレベルを、評価するものであることを示している。第7日目の該RT-PCRの結果とLog10TCID50/mlの結果との間のピアソン(Pearson)相関係数は、0.89であり、また平均の実時間RT-PCRの結果とLog10TCID50/mlの結果との間の該相関係数は0.88であった。実時間RT-PCRによって決定された濃度の値は、幾つかの理由から、Log10TCID50/mlの値よりも数オーダー高い可能性があった。該理由は、ターゲットアンプリコンを含むウイルス粒子の頻度とCL2621細胞上で完全に感染性であるウイルス粒子の頻度との間の差異、並びに感染性を低下する可能性のある中和抗体の存在等を包含する(Dianzani等, 2002)。しかし、中和抗体が、この差異を明らかにする可能性はない。というのは、これが、抗-PRRSV抗体応答が発生する時点をも包含するあらゆる時点において観測されたからであった。
【0053】
実時間RT-PCRによって決定された、コピー数/mlの値は、TCID50/mlによって細胞培養において測定された、感染性の力価の値よりも高かった。これは、該ウイルスのゲノムのコピー数に基いて得た標準曲線が、既知の感染性ビリオンではなく、寧ろ該ウイルスのゲノム配列の直接的な増幅を行う、定量的なPCRに対して日常的に利用されていることによるものである。細胞培養等の生物学的なアッセイは、感染性の存在を評価するが、該アッセイは、処方中に存在する全ての感染性のウイルス粒子を数えることはできない。細胞培養条件等の、該感染性の力価に影響を与え得るファクタおよびウイルスを中和することのできるインビボ抗体は、他の研究において観測されており、これは、血清中のTCID50/mlにおいて測定された、感染性ウイルスの量を過小評価している。あるいはまた、幾つかの非-感染性または複製-欠失性のウイルスが、存在する可能性があるが、これは、より高いコピー数に反映されるであろう。
【0054】
一般に、該ELISAによる観察は、体液性の免疫応答の強さが、急性感染中の、ウイルス複製レベルと関連しているという概念を支持している。図4および5に示されている傾向は、この関係を示している。より緩慢な、かつより強度の低い体液性の免疫応答は、細胞培養によって弱毒化したウイルス分離株により開始され、一方でより迅速かつより強力な体液性の免疫応答は、ビルレントな分離株によって開始された。更に、これらの観測は、また少なくとも2つのファクタ、即ち分離株の型および感染性用量が、該ハードチェック(登録商標) PRRS ELISA 2XRにおける相対的なS/P比の値に、強い影響を与えることをも明らかにしている。図3に示された、該ELISAの結果は、明確な正または負の群の応答を示しているが、個々の動物間の変動性に注目することが重要である。弱毒化ウイルス暴露群内の数頭のブタは、21日目以前には正であり、またビルレント分離株暴露群における数頭のブタは、21日目まで負に維持された。
【0055】
Nおよびnsp4に対する特異的抗体応答の分析は、PRRSVに対する免疫応答が、該接種した分離株の強度には無関係に変動することを示している。高度にビルレントな分離株である、MN 184およびJA 142を接種した動物における、Nタンパク質に対する抗体応答は、該分離株全体に関する傾向と同様な傾向を示したが、その強度はより高いものであった。MN 184およびJA 142を接種したブタは、また図1および2に示したように、最大のウイルス力価を有していた。このことは、体液性の免疫応答のレベルが、ウイルス力価によって測定された如き、急性感染におけるウイルス負荷量と、関連している可能性のあることを示している。興味深いことに、応答の経時変化は、たとえピーク力価までの時間が、高度にビルレントな分離株である17198-6および弱毒化分離株については遅れが見られても、全群において同一であった。対照的に、nsp4抗体応答は、弱毒化およびビルレント両者の全ての分離株について、また全ての時点において、低かった。抗-nsp4応答の経時変化は、該抗-N抗体応答について観測されたように、群間で、ピークウイルス負荷量までの時間における差異にも拘らず、該群全体において等価であった。全てのブタは、図7に示したように、低い抗-nsp4応答を有していた。
【0056】
これら観測は、該PRRSVタンパク質の幾分かが、暴露された分離株のビルレンスとは無関係に、宿主免疫系からのより強力な応答を引き出すことを示す。しかし、これらの観察は、またより免疫原性の高いタンパク質に対する免疫応答の強さが、恐らく該暴露された分離株のビルレンス、または該分離株のインビボで複製する能力に関連していることをも示している。また、抗体応答における差異が、抗原としての反応性における差異をもたらす、分離株における単なる遺伝的な差によるものであって、結果として他の分離株のNおよびnsp4に対する抗体は、該ELISAプレートを被覆するのに使用された、分離株VR2332から発現された組換えタンパク質とは反応せず、あるいはこれと僅かに反応するものであることも可能である。しかし、幾つかの証拠は、抗体レベルにおける差が、免疫学的に関連する応答を反映していることを示唆する。分離株MN 184は、ORF 5の比較によって決定されたように、VR2332とは遺伝的に最も大きな差を示し、その上最高の抗-N抗体応答を有する。Kapur等(1996)は、以前に1読取り枠におけるPRRSV分離株の相対的な差が、別の読取り枠においても存在することを示した。更に、個々のタンパク質が、保存および非-保存領域を含み(例えば、Kapur等, 1996)、また広範な免疫原性の反応性が、該保存型のエピトープに対して起り得る(Ostrowski等, 2002)。それにも拘らず、精製されたPRRSVタンパク質との抗体反応に基くELISAの結果は、遺伝的な変化および抗原性の変化によって影響を受ける可能性があり、これらの効果を考慮する必要がある。組換えタンパク質の再生(構造復元)が行われるが、再生されたまたは再生されていないタンパク質で被覆された、ELISAプレート間には、何の差異も観測されなかった。
【0057】
接種の約4〜5週間後に、該Nおよびnsp4両者に対する該抗体応答において、比較的大きな減少が起きることに気付いた。抗体反応における減退に伴う、1〜2週目の同様なピークは、以前にGP5、即ち主なエンベロープ糖タンパク質に関して、Foss等(2002)によって注目された。これら観測を一緒に考察すると、該観測は、個々のウイルスタンパク質に対する応答が、恐らくPRRSVに対するブタの完全な状況を表していないことが示唆される。というのは、ハードチェック(登録商標) PRRS ELISA 2XRにより測定された如き、該体液性の免疫応答が、抗体反応性に関する同様な一時的ピークを示さないからである。
【0058】
低下した成長性および死亡率は、ビルレンスとウイルスのインビボでの成長速度との重要な相関であった。極めて高い可能性で、該ビルレントな分離株で暴露された群において観測されたより低い平均体重は、PRRSV分離株の、インビボにて複製する能力および該ブタ内部により重篤な疾患を誘発する能力の差に反映された。これらの観測は、以前に報告されたデータ、即ちPRRSV感染が、毎日の体重利得における25〜40%の減少を伴う食欲減退を引起す可能性がある(Thacker, 2003)ことと一致する。該ビルレントな分離株に暴露された動物の、臨床上の評点は、該株の接種後の短期間中に、急速な増加を示し、一方で該弱毒化したウイルスに暴露した動物の評点における変化は、殆どなかった。臨床的徴候におけるこの増加は、PRRS分離株、即ち夫々MN 184、SDSU 73、およびJA 142の投与を受けた、該ビルレント株で暴露した群において観測された50%、20%および10%という死亡率に反映された。対照的に、該弱毒化分離株暴露群は、死をこうむることはなかった。同一のウイルス暴露条件下での、迅速なウイルス成長とウイルス病理発生との間の関連性は、MN 184およびAbst-1に暴露した群同士を比較した場合に、最も明白であった。該接種力価は、事実上同一であり、夫々4.10対数値/mlおよび4.18対数値/mlであり、更に図8に示したように、これら2つの分離株がブタに影響を与える方法には顕著な差が見られた。該Abst-1は殆ど不活性であり、これはインビボでは殆ど複製されず、また臨床的な徴候は全く起こさなかった。これに対して、該MN 184分離株は、極めて高い力価にまでインビボで複製され、かつ重篤な臨床的徴候を引起し、暴露された動物の50%に及ぶ死亡をもたらした。同様に注目すべきこととして、全てのウイルス分離株を含むプールに暴露されたブタの群は、MN 184に暴露したブタにおけるのとほぼ同様な、ウイルス学上の、臨床上の、および免疫学的な応答を示した。この発見は、混合感染において最も迅速に複製されるウイルスが、恐らく他の分離株を凌駕し、そのために正味の結果が、本質的に最高の成長能力を持つ単一の分離株によって感染された場合と同一であることを示している。
【0059】
ビルレントおよび弱毒化PRRSV分離株間の、注目すべきインビボでの差異は、分離株のビルレンスと、そのインビボでの成長および複製との間の関連性を明らかにする。ブタに等価な用量で投与した場合、よりビルレントな分離株は、該弱毒化分離株よりも指数関数的に高い、Log10TCID50/ml力価およびRT-PCR濃度を示す。これらのビルレントな分離株は、より迅速かつ強力な体液性の免疫応答を誘発する。これらビルレントな分離株は、体重利得に負の影響を及ぼし、かつ該弱毒化分離株と比較して、より高い死亡率およびより重篤な臨床的徴候を誘発する。
結果として、本特許出願におけるこの実施例およびテストは、弱毒化した、およびビルレントなPRRSV分離株が、著しく異なる臨床上の徴候並びに強度において異なる免疫応答を誘発することを示している。これらの差は、該ウイルスの、インビボでの複製能力、血清サンプルにおいて定量的に測定でき、またPRRSV分離株を予測するために発現させることのできる、表現型特性によるものである。
【0060】
実施例2
本実施例は、PRRS分離株を弱毒化する幾つかの方法並びに該弱毒化分離株の免疫原性組成物への配合法を提供する。
材料および方法:
ワクチン処方物を、PRRSによる感染に対して、ブタを免疫化するために、変性したまたは弱毒化した生きたウイルスを配合することにより処方する。このワクチンを調製するための、該PRRSウイルスは、MA-104連続細胞系、好ましくはATCC No. CL2621内で増殖させる。この細胞系は、10%のウシ胎児血清を添加した、MEMを含むフラスコ中で成育させる。この培地のpHを、約7.2に調節し、約37℃にてインキュベートする。次に、これらの細胞を、約1mlの凍結接種物をこの流体培地に添加することによって、該ウイルスで接種する。このウイルスを、24時間に渡り該細胞に吸収させる。この時点において、該増殖培地を、MEMを含み、これに添加された4%のウシ胎児血清を含む、pH7.6の維持培地に代える。該環境は、好ましくは35-37℃である。このウイルスを、該MA-104細胞シートの50%が、このウイルスによって破壊されるまで生育させる。次いで、このサンプルを凍結し、MA-104細胞を含む他のフラスコで継体するために準備する。この方法は、該細胞系における該ウイルスの25回に及ぶ継体により、継続される。次いで、該ウイルスを、上記同様の方法を用いて、更に12回に渡り、35-37℃ではなく、約31℃にて、増殖させる。該12回目の継体生成物を、少量のアリコートとして凍結し、マスターシードウイルス(Master Seed Virus)と命名した。
【0061】
好ましい方法の詳細を以下に示す:
I. 培地:
a. JRHバイオサイエンスズ(Biosciences)社から得た、イーグルの最少必須培地(MEM)、#200-2041;
b. JRHバイオサイエンスズ社から得た、ウシ胎児血清(FCS);
c. 細胞平板培養用の増殖培地-MEM+10%ウシ胎児血清;
d. 維持培地-MEM+4%ウシ胎児血清;
e. トリプシン-ベルセン(Versene) IX;
f. 5%または飽和重炭酸ナトリウム。
II. 組織培養:
使用した細胞系:MA-104 (20継体レベル(継体58-78)に維持された、アフリカミドリザル(African Green Monkey)腎細胞)。
III. 装置:
75cmの組織培養フラスコ;
35〜37℃に設定された、インキュベータ
3℃に設定されたインキュベータ
遠心分離機。
【0062】
IV. 25-37℃にて生育するPRRSVウイルスを弱毒化するのに用いた方法:
A. 組織培養原液(Tissue Culture Stock)の調製:5〜7日齢のMA-104の75cm2原液ボトルを、以下のように1:4に分割する:
a. 全ての培地を洗い流す(ボトル当たり50ml);
b. 37℃にて5-10分間インキュベーションすることによって、10mlのトリプシン-ベルセンを用いて、該細胞シートを除去する;
c. ボトルから細胞を取出し、かつ270xgにて5-10分間、遠心分離処理する;
d. 上澄をデカンテーション処理し、細胞を、5-10mlの増殖培地(MEM+10%FCS)に再懸濁する;
e. 200mlのMEM+10%FCSに全ての細胞を入れ、次いで1:4分割用の、4つの75cmのボトル(ボトル当たり50ml)に、分配する。これらボトルを、次に必要となるまで(CO2無しで行うこともできる) 35-37℃に維持する;
f. 完全な細胞シートを形成している3または4日齢のボトルは、今や直ぐに利用できる状態にある;
g. 該フラスコ中の培地50mlのpHを7.2に調節し、次いで1mlのウイルスを該培地に添加し、このフラスコを35-37℃に維持する(CO2無しで行うこともできる);
h. 24時間後に、培地を捨て、フラスコに、50mlのMEM+4%FCS(pH7.6)を再度供給し、35-37℃に戻した;
i. この流体入替えの24時間後に、CPEが示されるはずであり、また50-60%の孔が該細胞シートに存在する場合には、凍結される;
j. 該ボトル上で解凍し、この液1mlを採取し、上に記載したような新たな75cmのボトルに入れ、該ウイルスの次の継体培養を行う。
【0063】
上記したこのような手順を、全体で25回実施し、35-37℃にて生育させる。
31℃にて育成されるPRRSVウイルスを弱毒化するのに利用した方法。35-37℃にて25回に渡り継体培養したウイルスを、31℃にて育成されるウイルスに対して、継体1を行うのに使用する。
A. 組織培養原液(Tissue Culture Stock)の調製:5〜7日齢のMA-104の75cm2原液ボトルを、以下のように1:4に分割する:
a. 全ての培地を洗い流す(ボトル当たり50ml);
b. 37℃にて5-10分間インキュベーションすることによって、10mlのトリプシン-ベルセンを用いて、該細胞シートを除去する;
c. ボトルから細胞を取出し、かつ270xgにて5-10分間遠心分離処理する;
d. 上澄をデカンテーション処理し、細胞を、5-10mlの増殖培地(MEM+10%FCS)に再懸濁する;
【0064】
e. 200mlのMEM+10%FCSに全ての細胞を入れ、次いで1:4分割用の、4つの75cmのボトル(ボトル当たり50ml)に分配する。これらボトルを、次に必要となるまで(CO2無しで行うこともできる) 35-37℃に維持する;
f. 完全な細胞シートを形成している3または4日齢のボトルは、今や直ぐに利用できる状態にある;
g. 該フラスコ中の培地50mlのpHを7.2に調節し、次いで1mlのウイルスを該培地に添加し、このフラスコを31℃に維持する(CO2無しで行うこともできる);
h. 24時間後に、培地を捨て、フラスコに、50mlのMEM+4%FCS(pH7.6)を再度供給し、31℃に戻した;
i. この流体入替えの24時間後に、CPEが示されるはずであり、また50-60%の孔が該細胞シートに存在する場合には、凍結する;
j. 該ボトル上で解凍し、この流体1mlを採取し、SIRS VR-2332ウイルスの次の継体培養を行う。
【0065】
上記したような手順を、全体で12回、31℃にて実施する。これらの31℃にて育成されたウイルスの、第12回目の継体生成物は、ワクチン製造用のマスターシードウイルス(Master Seed Virus)と命名される。
遺伝子欠失によるPRRSウイルスの弱毒化
当業者は、遺伝子欠失の従来の方法によって、PRRSVを弱毒化することができる。一般的に、この方法は、このウイルスのビルレントな表現型をコードする遺伝子を欠失させることを含む。このような方法は、Elbers等(米国特許出願第2002/0012670号)またはSchall等(米国特許第6,740,324号)の参考文献から改作することができる。これら文献における教示およびその内容を本発明の参考としてここに組入れる。
【0066】
温度感受性突然変異法によるPRRSウイルスの弱毒化
当業者は、また公知の温度感受性突然変異法によりPRRSウイルスの弱毒化を行うことができる。この方法は、一般的に該ウイルスが活性である温度範囲を限定する、突然変異を発生させる工程を含む。例えば、Skiadopoulos等の「温度感受性、低温適合に寄与する突然変異の同定、および生きた弱毒化低温継体45(cp45)ヒトパラインフルエンザウイルス3候補ワクチンの弱毒表現型(Identification of Mutations Contributing to the Temperature-Sensitive, Cold-Adapted, and Attenuation Phenotypes of the Live-Attenuated Cold-Passage 45 (cp45) Human Parainfluenza Virus 3 Candidate Vaccine)」と題する文献: Journal of Virology, 1999 (Feb.), 73 (No. 2):1374に記載の方法を、PRRSVと共に使用することができる。このSkiadopoulos等の文献の教示およびその内容を本発明の参考としてここに組入れる。
【0067】
感染性クローンの発生による、PRRSウイルスの弱毒化
当業者は、また感染性クローンを発生させる公知の方法により、PRRSウイルスの弱毒化を行うことができる。この方法は、一般的に所定のウイルス遺伝子型の、完全な長さを持つcDNAクローンの生成を含み、該クローンは、またターゲット動物においてビルレントであり得る。例えば、Nielson等の「VR-2332の感染性クローンの発生、ブタの繁殖・呼吸障害症候群ウイルスの、高度にビルレントな北米型分離株(Generation of an Infections Clone of VR-2332, a Highly Virulent North American-Type Isolate of Procine Reproductive and Respiratory Syndrome Virus)」と題する文献: Journal of Virology, 2003 (Mar.), 77:3702に記載の方法を、PRRSVの弱毒化バージョンとして適用することができる。Nielson等の文献の教示およびその内容を本発明の参考としてここに組入れる。
【0068】
遺伝子挿入によるPRRSウイルスの弱毒化
当業者は、また公知の遺伝子挿入法によって、PRRSVを弱毒化することができる。この方法は、一般的に該ウイルスの病原性表現型を阻害する、該ウイルス内への遺伝子の挿入を含む。例えば、Schall等(米国特許第6,740,324号)の方法を、このようなPRRSVの弱毒化バージョンを適合させることができる。このSchall等の文献の教示およびその内容を本発明の参考としてここに組入れる。
【0069】
置換によるPRRSウイルスの弱毒化
当業者は、またコドンおよび塩基対の置換を行う公知の方法によって、PRRSVを弱毒化することもできる。一般的に、コドンまたは塩基対の置換は、該ウイルスが、遺伝子置換後には、該ウイルスの病原性を制限するタンパク質をコードするように、あるコドンまたは塩基対を、異なるコドンまたは塩基対で置換することを含む。例えば、McAuliffe等の「ヒトパラインフルエンザウイルスタイプ1のLポリメラーゼタンパク質における2つの位置のコドン置換突然変異は、インビボでの弱毒化のあるスペクトル領域およびインビトロでの高い表現型の安定性を持つウイルスを生成する(Codon Substitution Mutations at Two Positions in the L Polymerase Protein of Human Parainfluenza Virus Type 1 Yield Viruses with a Spectrum of Attenuation In Vivo and Increased Phenotypic Stability In Vitro)」と題する文献:Journal of Virology, 2004 (Feb.), 78:2029に記載のコドン置換法を、PRRSVの弱毒化のための遺伝子置換法を作り出すように適合させることができる。また、Hurrelbrink & McMinnの「エンベロープタンパク質のヒンジおよび推定的レセプタ-結合領域の、サイト特異的突然変異誘発による、マレー渓谷脳炎ウイルスの弱毒化(Attenuation of Murray Valley Encephalitis Virus by Site-Directed Mutagenesis of the Hinge and Putative Receptor-Binding Regions of the Envelope Protein)」と題する文献:Journal of Virology, 2001 (Aug.), 75:7692およびElbers等(米国特許出願第2002/0012670号)は、弱毒化PRRSV分離株を製造するために適合させることができる塩基対の置換方法を与えている。これらのMcAuliffe等、Hurrelbrink & McMinnおよびElbers等の文献の教示およびその内容を本発明の参考としてここに組入れる。
【0070】
キメラPRRS構築物の使用によるPRRSウイルスの弱毒化
当業者は、またキメラ構築物を使用する公知の方法によって、PRRSVを弱毒化することもできる。一般的に、キメラ構築物は、宿主細胞内に抗原応答を誘発する目的で、異なる種由来の遺伝子を含むものである。例えば、このような構築物は、Harris等(米国特許出願第2004/0157307号)の方法を適合させることにより、PRRS遺伝子を含むキメラ構築物を製造することができる。
【0071】
免疫原性組成物への、弱毒化PRRS分離株の組込み
好ましくは上記方法の一つによって、新規な分離株を弱毒化した後、該弱毒化分離株を、PRRSのビルレントな分離株に対する免疫応答を与えるのに効果的な組成物に配合することができる。好ましい態様では、このような組成物は、該組成物の有効量の投与を受けた動物に、PRRS感染に対する防御免疫性を与える。このような防御免疫性は、ビルレントなPRRS分離株で実質的に暴露された、または該分離株に感染している、予防接種された動物における、PRRS感染の臨床的徴候の重篤度を減じるであろう。好ましくは、このような臨床的徴候は、有効量の該免疫原性組成物またはワクチンの投与によって、阻害されるであろう。幾つかの態様において、該弱毒化PRRS分離株は、改良された生ウイルスワクチンを製造するために使用され、ここで該弱毒化分離株は、その生存状態において、該免疫原性組成物に使用される。他の態様においては、該弱毒化分離株は、免疫原性組成物に配合するに先立って殺されるか、あるいは不活性化されるであろう。
【0072】
参考文献
下記参考文献の内容を全て本明細書に組み入れるものとする。






























【0073】





【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】実施例1のブタに関するテストの、Log10TCID50/mlで表された、平均の血清ウイルス力価対時間のグラフを示すものである。
【図2】実時間RT-PCRによって測定された、実施例1のブタに関するテストにおける、血清中の平均PRRSV濃度を表すグラフである。
【図3】市販のELISAアッセイを利用した、平均S/P比対時間のグラフである。
【図4】該市販のELISAアッセイに関する反復的測定の分析および実施例1のLog10TCID50/mlデータを示すグラフであり、ここでは該ELISA S/P比曲線下部の群平均面積が、該Log10TCID50/ml曲線下部の群平均面積に対してプロットされている。
【図5】該市販のELISAアッセイに関する反復的測定の分析および実施例1のRT-PCR濃度データを示すグラフであり、ここでは該ELISA S/P比曲線下部の群平均面積が、該RT-PCR濃度曲線下部の群平均面積に対してプロットされている。
【図6】図6aは、実施例1に関する吸光度対時間のグラフであり、また図6bは、nsp-4 IgG応答に及ぼすPRRSV分離株の効果を示す、吸光度対時間のグラフであり、ここで該データは、動物が死亡した場合を除き、10頭の動物に関する平均値である。
【図7】nsp-4を用いた反復的測定の分析および実施例1のLog10TCID50/mlデータを示すグラフであり、ここでは該nsp-4曲線下部の群平均面積が、該Log10TCID50/ml曲線下部の群平均面積に対してプロットされている。
【図8】臨床的評点を用いた反復的測定の分析および実施例1のLog10TCID50/mlデータのグラフであり、ここでは該臨床的評点曲線下部の群平均面積が、該Log10TCID50/ml曲線下部の群平均面積に対してプロットされている。
【図9】本件出願における、各分離株に関するIHC評点のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未知のビルレンスを持つPRRSウイルス分離株の、ビルレンスを予測する方法であって、所定量の該PRRSウイルス分離株を、PRRSを含まないブタに投与する工程と、約3〜15日間に及ぶ期間に渡り、該ブタにおいて該ウイルスを複製させる工程と、該期間に渡り、ウイルスの成長速度および/またはウイルス血症の強さを測定する工程と、該ウイルスの成長速度および/またはウイルス血症の強さと、該未知ビルレンスを持つPRRSウイルス分離株のビルレンス予測体としての、既知ビルレンスを持つPRRSウイルス分離株の、成長速度および/またはウイルス血症の強さとを比較する工程を含むことを特徴とする、上記予測法。
【請求項2】
該期間が、約3〜7日間である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
該期間中におけるウイルス血症の強さを測定する工程、および該血症の強さを、該既知PRRSウイルス分離株のウイルス血症の強さとを比較する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
該投与されたウイルスの量が、自然の暴露により動物が受ける量と同様である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
該PRRSウイルスを、経口、鼻内、筋肉内、リンパ節内、皮内、腹腔内、皮下、およびこれらの組合せ投与からなる群から選択される方法によって、投与される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
該ウイルスの成長速度および/またはウイルス血症の強さを、該ブタ由来の生物学的サンプルにおいて測定する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
該ウイルス血症を、Log10TCID50/ml、逆転写酵素-ポリメラーゼ連鎖反応、PRRS特異的ELISA、PRRSタンパク質-特異的ELISA、およびこれらの組合せによって測定する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
更に、該PRRSウイルス分離株の投与後、PRRS感染の臨床学的徴候について、該ブタを観察する工程をも含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
該臨床学的徴候が、呼吸上の徴候、挙動、咳、およびこれらの組合せを含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
更に、該PRRSウイルス分離株の成長速度またはウイルス血症の強さが、高いビルレンスをもつ分離株の成長速度またはウイルス血症の強さと同等である場合に、該PRRSウイルス分離株が、高いビルレンスをもつものであろうことを予測する工程をも含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
更に、該PRRSウイルス分離株の成長速度またはウイルス血症の強さが、低いビルレンスをもつ分離株の成長速度またはウイルス血症の強さと同等である場合に、該PRRSウイルス分離株が、低いビルレンスをもつものであろうことを予測する工程をも含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
該PRRSウイルスの投与量が、5.0Log10TCID50/mlまでのウイルス密度を持つ、接種物約5mlまでである、請求項1記載の方法。
【請求項13】
弱毒化したPRRSウイルス分離株と薬理的に相溶性の担体とを含み、該弱毒化分離株をAbst-1、および請求項1記載の方法によりビルレントであるものと予測された、PRRSウイルスの弱毒体からなる群から選択することを特徴とする、免疫原性組成物。
【請求項14】
該弱毒化分離株がAbst-1である、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
請求項1記載の方法によりビルレントであるものと予測された、該PRRSウイルスの弱毒体が、ATCC VR-2332、ATCC PTA-6504、ATCC PTA-6319、ATCC PTA-6321、およびATCC PTA-6322からなる群から選択される、請求項13記載の組成物。
【請求項16】
弱毒化し、かつ免疫原性組成物に組込むための、PRRSウイルス分離株を選別する方法であって、以下の諸工程:
a) 未知のビルレンスを持つ、PRRS分離株を得る工程;
b) 所定量の該PRRSウイルス分離株を、PRRSを含まないブタに投与する工程;
c) 該分離株を、約3〜15日間の期間に渡り、該ブタにおいて複製させる工程;
d) 該期間中の、該ウイルスの成長速度および/またはウイルス血症の強さを測定する工程;
e) 該ウイルスの成長速度および/またはウイルス血症の強さを、既知のビルレンスを持つPRRSウイルス分離株の成長速度および/またはウイルス血症の強さと比較する工程;および
f) 弱毒化し、かつ免疫原性組成物に組込むための分離株を、既知のビルレンスを持つ分離株と比較した、該分離株の成長速度および/またはそのウイルス血症の強さに基いて選別する工程、
を含むことを特徴とする、上記方法。
【請求項17】
該工程f)が、更に高度にビルレントな分離株と同様な、成長速度および/またはウイルス血症の強さを持つ、分離株を選別する工程をも含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
更に、該選別されたウイルスを弱毒化する工程をも含む、請求項16記載の方法。
【請求項19】
該ウイルスを、細胞培養における反復的系列的な継体、遺伝子挿入、遺伝子切換え、遺伝子欠失、塩基対置換、および温度-感受性突然変異からなる群から選択される方法によって弱毒化する、請求項18記載の方法。
【請求項20】
更に、該選別されたウイルスを、免疫原性組成物に組込む工程をも含む、請求項18記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−513501(P2008−513501A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−532633(P2007−532633)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/033760
【国際公開番号】WO2006/034319
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(503345374)ベーリンガー インゲルハイム フェトメディカ インコーポレイテッド (26)
【Fターム(参考)】