説明

ブラインドリベット及びその締結方法

【課題】スリーブとマンドレルとの剪断強度を増加させ、スリーブ絞り荷重が増加しないブラインドリベットを提供する。
【解決手段】ブラインドリベットは、断面が六角形の筒部11と、フランジ12と、貫通孔を有するスリーブ10と;基部21と、軸方向に延びるスリット25を有する筒部22と、貫通孔を有するリベットボディ20と;細長い軸部と、頭部33を有するマンドレル30とを備える。リベットボディの筒部が、マンドレルの頭部により押されて開き、筒部の開いた部分と、スリーブのフランジとの間に被取付部材41,42を締結する。さらに、スリーブの筒部を絞りながら、マンドレルを引き抜くと、スリーブの筒部の多角形の頂点部分が絞られ、筒部の内周は内径が小さくなり、マンドレルの係止部に係合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラインドリベットに関する。特に、スリーブを絞るタイプのブラインドリベットにおいて、スリーブを絞る荷重は増加させずに、スリーブとマンドレルとの剪断強度が高いブラインドリベット及びその締結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リベット筒部及びそのリベット筒部の一端のフランジからなる中空の金属製リベットと、リベットを貫通してリベット筒部のフランジから軸部が延び出る金属製マンドレルを包含するブラインドリベットは良く知られている。ブラインドリベットは、複数のパネルを一方の側からだけの作業で連結できるという利点がある。
ブラインドリベットには、リベットが、フランジを有するスリーブとリベットボディとの別体の2部品からなり、リベットボディに軸方向にスリットが形成され、リベットボディのスリットで分割された部分をマンドレルで押し広げて締結するものがある。
このようなブラインドリベットは、スリーブの貫通孔と、リベットボディの貫通孔とを整列させて、スリーブとリベットボディの整列させた貫通孔にマンドレルの軸部を挿入し、リベットボディの端部にマンドレルの頭部を隣接配置して、リベットボディとスリーブから、マンドレルの軸部が延び出るようにして、ブラインドリベットとして組付ける。
【0003】
ブラインドリベットで被取付部材を締結するには、組付けたブラインドリベットのマンドレルの軸部を締結機械のノーズピースに、スリーブの筒部がノーズピースに当接するまで挿入し、軸部を把持部材により保持した状態で、マンドレルの頭部を先頭にして、パネル等の被取付部材の取付孔に挿入し、スリーブのフランジを被取付部材の孔の周囲に当接させる。次に、締結機械でマンドレルの軸部を、スリーブの筒部側から強く引き抜くと、リベットボディの筒部は、被取付部材の取付孔の縁部で折れ曲がって開くように変形する。スリーブの筒部は、締結機械で絞られて、スリーブの貫通孔の中にあるマンドレルの係止部と係合する。マンドレルは軸部の細い破断可能部で破断し、スリーブのフランジと、開いたリベットボディの筒部との間にパネル等の被取付部材を締結することができる。
【0004】
ブラインドリベットを締結した後には、絞ったスリーブの筒部と、スリーブの貫通孔内のマンドレルの係止部とが強固に固定され、容易に外れないようにする必要がある。スリーブ付きブラインドリベットにおいて、スリーブを絞ってマンドレルの係止部のネジ山と係合させた部分の剪断強度を高くしようとすると、スリーブの筒部の径を大きくして絞る量を増やすか、又は長さを長くする必要がある。スリーブの筒部の径又は長さを増加させると、ブラインドリベットを締結するとき、スリーブの筒部を絞るのに必要な荷重が増加する。これに伴い、マンドレルの破断可能部の破断荷重を大きくする必要がある。しかし、マンドレルの破断可能部の破断荷重を大きくすると、締結機械の引抜き強度を上げる必要があり、大型の機械が必要となる。また、ブラインドリベットを安定して締結することが難しくなる等の問題がある。
そのため、スリーブとマンドレルとの剪断強度を増加させても、スリーブ絞り荷重が増加しないようにすることが求められていた。
【0005】
特許文献1は、建築物の天井に向かって下方からの施工が容易なブラインドリベットに関する。特許文献1のブラインドリベットは、スリーブ本体の頭部と協働して部材をかしめる可拡張部と、引張杆の拡頭部との間に吊り部材を設置し、この吊り部材は部材の取付孔を弾性変形して通過し、通過すると復元してリベット本体の抜け落ちを防止するようになっている。
【0006】
特許文献2は、締結後に容易に分解できるブラインドリベットに関する。特許文献2のブラインドリベットは、胴とその一端のリベット頭を有するリベット本体と、軸幹テール部と折れやすい部分により接続され螺旋状の溝が形成されプラグ体と、端頭を有する軸幹とを備える。ブラインドリベットを締結すると、リベット頭の材料が螺旋状の溝に入り締結される。リベット頭を回転させると、比較的容易にリベットの締結を解除することができる。
【0007】
特許文献1はブラインドリベットのリベット本体の抜け落ちを防止することを目的とし、特許文献2はブラインドリベットを締結後に容易に分解できることを目的とするものであり、いずれにもブラインドリベットのスリーブを絞る荷重を軽くすることについては、記載されていない。
そのため、スリーブとマンドレルとの剪断強度を増加させても、スリーブ絞り荷重が増加しないブラインドリベットが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−213516号公報
【特許文献2】特開昭63−254212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、スリーブを部分的に深く絞ることにより、スリーブとマンドレルとの剪断強度を増加させ、スリーブ絞り荷重が増加しないブラインドリベットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するため、本発明の1実施形態では、締結前のスリーブの筒部の断面を六角形にする。締結機械のスリーブの筒部を絞る絞り孔は断面が円形で、絞り孔の内径は、スリーブの筒部の断面の六角形の対向する頂点間の距離より短く、六角形の対向する辺の間の距離とほぼ等しいか、わずかに小さくなっている。このような形状のスリーブの筒部と、絞り孔の組み合わせでスリーブの筒部を絞ると、スリーブの筒部の六角形の頂点に近い部分だけが絞られ、六角形の辺の中央部近傍はほとんど絞られない。そのため、絞りに必要なスリーブ絞り荷重が小さくてすむ。そのため、スリーブの絞り量を部分的に増加させても、スリーブ絞り荷重は増加せず、スリーブとマンドレルとの剪断強度を高くすることができる。
【0011】
本発明の第1の態様は、取付孔を有する複数の被取付部材を締結するためのブラインドリベットであって、
筒部と、前記筒部の一端に形成されたフランジを有し、内部を貫通する貫通孔が形成されたスリーブと、
内部を貫通する貫通孔が形成されたリベットボディと、
細長い軸部と、前記スリーブと前記リベットボディとの前記貫通孔の内径より大きい外径の頭部とを有するマンドレルと、を備え、
前記マンドレルの前記頭部が前記リベットボディの端部に隣接して配置され、
前記マンドレルの前記軸部は、前記リベットボディと前記スリーブの前記貫通孔を通って前記スリーブから延び出るように組み合わされ、
前記ブラインドリベットを前記マンドレルの頭部から、前記被取付部材の取付孔に挿入し、前記スリーブのフランジの面を前記被取付部材の前記取付孔の周りに当接し、
前記スリーブの前記筒部の外形とは異なる断面形状を有するノーズピースの絞り孔の入口に、前記スリーブの前記筒部を当接させ、前記マンドレルの前記軸部を引き抜くとき、前記リベットボディが、前記マンドレルの前記頭部により押されて変形し、前記スリーブの前記筒部が絞り孔の中に引き込まれ、前記スリーブの前記筒部の断面が前記絞り孔の形状に絞られ、前記スリーブの前記筒部の前記貫通孔の内周は、内径が小さくなり、前記マンドレルの係止部に係合し、
変形した前記リベットボディと、前記スリーブのフランジとの間に前記被取付部材を締結するブラインドリベットである。
【0012】
スリーブの筒部とは異なる断面形状を有するノーズピースの絞り孔でスリーブを絞ると、全周にわたって同じ厚さを絞る場合と比較して、絞る面積が小さくなり、スリーブ絞り荷重を小さくすることができる。
【0013】
前記リベットボディは、基部と、前記基部の一端に形成され、軸方向に延びるスリットを有する筒部とを有し、
前記スリーブの前記筒部の側から、前記マンドレルの前記軸部を引き抜くとき、前記リベットボディの前記筒部が、前記マンドレルの前記頭部により押されて前記被取付部材の前記取付孔の縁部に当接した位置で開き、前記リベットボディの前記筒部の開いた部分と、前記スリーブのフランジとの間に前記被取付部材を締結するものでもよい。
こうすると、スリットによりリベットボディが開きやすいので、安定して被取付部材を締結することができる。
【0014】
前記被取付部材を締結するとき、前記マンドレルは、前記軸部の小径の破断可能部で破断し、前記破断可能部から前記頭部までの部分は締結部に残留することが好ましい。
【0015】
前記スリーブの前記筒部は断面が六角形であり、前記ノーズピースの前記絞り孔は断面が円形であり、前記スリーブの前記筒部は、断面が円形に絞られてもよい。
前記スリーブの前記筒部は断面が円形であり、前記ノーズピースの前記絞り孔は断面が多角形であり、前記スリーブの前記筒部は、断面が多角形に絞られてもよい。
前記多角形は六角形であってもよい。
前記スリーブの前記筒部は断面が円形であり、前記ノーズピースの前記絞り孔は断面が周方向に等間隔に凸部を有する円形であり、前記スリーブの前記筒部は、断面が周方向に等間隔に凹部を有する円形に絞られてもよい。
【0016】
本発明の第2の態様は、取付孔を有する複数の被取付部材を締結するためのブラインドリベットであって、
断面が多角形の筒部と、前記筒部の一端に形成されたフランジとを有し、内部を貫通する貫通孔が形成されたスリーブと、
内部を貫通する貫通孔が形成されたリベットボディと、
細長い軸部と、前記スリーブと前記リベットボディとの前記貫通孔の内径より大きい外径の頭部とを有するマンドレルと、を備え、
前記マンドレルの前記頭部が、前記リベットボディの端部に隣接して配置され、前記マンドレルの前記軸部は、前記スリーブと前記リベットボディの前記貫通孔を通って前記スリーブの端部から延び出るように組み合わされているブラインドリベットである。
【0017】
このブラインドリベットのスリーブの筒部を、ノーズピースの断面が円形の絞り孔で絞りながら、マンドレルの軸部を引き抜くと、スリーブの筒部は、断面が円形に絞られて、ブラインドリベットが締結される。
【0018】
本発明の第3の態様は、被取付部材をブラインドリベットで締結する方法であって、
断面が多角形の筒部と、前記筒部の一端に形成されたフランジとを有し、内部を貫通する貫通孔が形成されたスリーブと、
基部と、前記基部の一端に形成され、軸方向に延びるスリットを有する筒部とを有し、内部を貫通する貫通孔が形成されたリベットボディと、
細長い軸部と、前記スリーブと前記リベットボディとの前記貫通孔の内径より大きい外径の頭部とを有するマンドレルと、を用意し、
前記マンドレルの前記頭部が、前記リベットボディの前記筒部側端部に隣接して配置され、前記マンドレルの前記軸部は、前記スリーブと前記リベットボディの前記貫通孔を通って前記スリーブの筒部側端部から延び出るように組み合わせて、ブラインドリベットとし、
前記ブラインドリベットを前記マンドレルの頭部から、前記被取付部材の取付孔に挿入し、前記スリーブのフランジ側端部の面を前記被取付部材の前記取付孔の周りに当接させ、
締結機械のノーズピースの断面が円形の絞り孔の入口を前記スリーブの前記筒部の端部に当接させ、
前記スリーブの前記筒部の側から前記マンドレルの前記軸部を引き抜き、
前記リベットボディの前記筒部が、前記マンドレルの前記頭部により押されて前記被取付部材の前記取付孔の縁部に当接した位置で開き、前記リベットボディの前記筒部の開いた部分と、前記スリーブの前記フランジとの間に前記被取付部材を締結し、
前記ノーズピースの前記絞り孔で前記スリーブの前記筒部を絞り、前記筒部の断面の多角形の頂点部分の外径を小さくし、前記筒部の前記貫通孔の内周を前記マンドレルの係止部に係合させ、
前記マンドレルを、前記軸部の小径の破断可能部で破断させる、
段階を備えることを特徴とする方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、スリーブ絞り荷重は増加せず、スリーブとマンドレルとの剪断強度が高いブラインドリベットを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態のブラインドリベットの一部を断面とした正面図である。
【図2】(a)は図1のブラインドリベットのスリーブの一部を断面とした正面図、(b)は右側面図である。
【図3】(a)は図1のブラインドリベットのリベットボディの一部を断面とした正面図、(b)は右側面図である。
【図4】図1のブラインドリベットのマンドレルの正面図である。
【図5】(a)は図4のマンドレルのA部の拡大図、(b)はB部の拡大図である。
【図6】図1のブラインドリベットを被取付部材の孔に挿入した状態を示す一部を断面とした正面図である。
【図7】図1のブラインドリベットにより被取付部材を締結するため締結機械にセットした段階の一部を断面とした正面図である。
【図8】図1ブラインドリベットにより被取付部材を締結した段階の一部を断面とした正面図である。
【図9】図1のブラインドリベットにより被取付部材を締結した状態の一部を断面とした正面図である。
【図10】図9のブラインドリベットにより被取付部材を締結した状態のスリーブの右側面図である。
【図11】本発明の第2の実施形態のブラインドリベットにより被取付部材を締結した状態のスリーブの右側面図である。
【図12】本発明の第3の実施形態のブラインドリベットにより被取付部材を締結した状態のスリーブの右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態によるブラインドリベットについて説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態のブラインドリベットの一部を断面とした正面図である。ブラインドリベットは、スリーブ10と、リベットボディ20と、マンドレル30とを含む。リベットボディ20の貫通孔と、スリーブ10の貫通孔とが整列し、これらの貫通孔にマンドレル30の軸部が挿入され、マンドレル30の頭部33が、リベットボディ20のスリット側端部24に隣接するように配置されている。
【0022】
以下、図2〜4を参照して、ブラインドリベットを構成するスリーブ10と、リベットボディ20と、マンドレル30について説明する。
図2の(a)は、本発明の実施形態のブラインドリベットの一部品であるスリーブ10の一部を断面にした正面図、(b)は右側面図である。スリーブ10は、筒状の筒部11と、筒部11の一端に形成され、筒部11より大径のフランジ12とを含む。筒部11の外形は断面が六角形であり、筒部11の端部は、筒部側端部14である。フランジ12の外形は円筒形でありフランジ12の端部はフランジ側端部15である。フランジの外径は六角形でもよい。
【0023】
スリーブ10の筒部側端部14と、フランジ側端部15との間に断面が円形の貫通孔13が延びる。貫通孔13の内径13dは、マンドレル30の軸部31を挿入できる大きさであるが、マンドレル30の頭部33の外径より小さい。
スリーブ10は、マンドレル30より軟質の材料、例えばアルミニウム、アルミニウム合金等で作られる。又は、マンドレル30と同じスチール等で作ることもできる。
【0024】
図3の(a)は図1のブラインドリベットのリベットボディ20の一部を断面とした正面図、(b)は右側面図である。
リベットボディ20は全体として円筒形であり、円筒形の基部21と、基部21に続く筒部22とからなる。基部21の軸方向端部は基部端部26であり、筒部22の端部は筒部側端部24である。筒部22には円周方向に等間隔に軸方向に筒部側端部24まで延びるスリット25が形成されている。本実施形態では、4本のスリットが形成されている。リベットボディ20の内側には、軸方向に延びる貫通孔23が形成されている。貫通孔23の内径23dは、スリーブ10の貫通孔13の内径13dとほぼ等しく、マンドレル30の軸部31を挿入できる大きさであるが、マンドレル30の頭部33の外径より小さく、頭部33が筒部側端部24に当接して止まるようになっている。
【0025】
図4は、本発明の実施形態のブラインドリベットの一部品であるマンドレル30の正面図である。マンドレル30は、細長い軸部31と、軸部31の一端部の頭部33とを備える。頭部33の外径33dは、スリーブ10の貫通孔13の内径13d、リベットボディ20の貫通孔23の内径23dより大きい。頭部33の外径33dは、被取付部材41,42の取付孔43,44の内径43d,44dより小さく、取付孔43,44を通ることができる。頭部33の軸部31に続く部分は、軸部31の側の外径が小さくなるように斜面となったテーパ部32である。本実施形態では、テーパ部のなす角度αは90度である。
【0026】
軸部31は円柱状で、スリーブ10の貫通孔13内およびリベットボディ20の貫通穴23内に挿入することができる。軸部31の長さは、スリーブ10の貫通孔13の長さとリベットボディ20の貫通孔23の長さを合計した長さより長く、マンドレル30の軸部31をスリーブ10の貫通孔13とリベットボディ20の貫通孔23に挿入し頭部33がリベットボディ20の筒部側端部24に隣接した状態で、軸部31の先端は、スリーブ10の筒部側端部14から突き出す。
【0027】
マンドレル30の軸部31は、頭部33に続くテーパ部32の側から、円柱部34と、係止部38と、破断可能部35と、把持部36と、先端部37とを含む。テーパ部32に隣接して、円柱状の円柱部34がある。
【0028】
円柱部34に隣接して、係止部38がある。図5(b)は、マンドレル30の係止部38(図4のB部)の拡大図である。係止部38には、周上に離間した周溝が形成され、溝の間は係止山となっている。締結機械によりブラインドリベットを締結するとき、スリーブ10の筒部11が、締結機械のノーズピースにより外周より押されて内径が小さくなり、内径が小さくなった貫通孔13の内周に、係止部38の係止山が係合し、マンドレル30の部分がスリーブ10から脱落しないように固定することができるようになっている。係止部38には、ネジ溝が形成されてもよい。
【0029】
係止部38に隣接して、破断可能部35がある。図5(a)は、マンドレルの破断可能部35(図4のA部)の拡大図である。破断可能部35は、係止部38、把持部36より、外径が細く、破断可能部35で破断するようになっている。破断可能部35は、ブラインドリベットを組み立てた状態で、スリーブ10の貫通孔13に収容される部分にある。締結機械でマンドレル30の軸部31を引き抜くとき、ある引抜力を超えると、破断可能部35で破断するようになっている。
破断可能部35に隣接して、破断可能部35より径の大きい把持部36がある。締結機械の締結部材で把持するときスリップしないように、把持部36には、多段の係止溝が形成されている。軸部31の先端は先端部37である。
マンドレル30の材質はスチール等である。
【0030】
図6は、図1のブラインドリベットを被取付部材41,42の孔43,44に挿入した状態を示す一部を断面とした正面図である。図6の左側がブラインド側であり、右側からブラインドリベットを取り付ける作業をする。
被取付部材41と42が、被取付部材41の取付孔43と被取付部材42の取付孔44の位置が合うように重ね合わされる。
スリーブ10とリベットボディ20とマンドレル30とを組み合わせた図1のブラインドリベットを被取付部材41,42の取付孔43,44に図6の右側から挿入し、スリーブ10のフランジ12が被取付部材41の取付孔43の周りの表面に当接している。
【0031】
図7〜9を参照して、本発明の実施形態のブラインドリベットにより、被取付部材41と42を締結する動作について説明する。
図7は、図6のブラインドリベットにより被取付部材41,42を締結するため締結機械にセットした段階の一部を断面とした正面図である。締結機械のノーズピース50は、ブラインドリベット側に端面51を有し、中央部は断面が円形の絞り孔52が形成されている。絞り孔52の内径52dは、スリーブ10の筒部11の六角形の頂部間の距離11d1より少し小さく、筒部11の六角形の面間の距離11d2とほぼ等しくなっている。絞り孔52の端面51に隣接する部分は、斜面の傾斜部53となっている。ノーズピース50の絞り孔52にマンドレル30の軸部31を挿入していくと、ノーズピース50の傾斜部53の内周に、スリーブ10の筒部側端部14が接して、停止する。なお、絞り孔52の内径52dは、絞り荷重を増大させなければスリーブ10の筒部11の六角形の面間の距離11d2より少し短くてもよい。
【0032】
次に、マンドレル30の把持部36を締結機械の把持部材55で把持して引き抜いていく。 マンドレル30の頭部33に隣接するテーパ部32は、リベットボディ20の筒部側端部24に当接している。マンドレル30の把持部36を把持部材55で保持して引き抜くことにより、テーパ部32は、リベットボディ20の筒部22が被取付部材42の取付孔43の縁部に当接した位置で折れ曲がって開くように変形させていく。
その後、締結機械のノーズピース50の絞り孔52によりスリーブ10の筒部11が絞られていく。ノーズピース50は、スリーブ10に対して、図7の左方向へ移動していく。
【0033】
図8は、マンドレル30の把持部36を引き抜き、ブラインドリベットにより被取付部材41,42を締結した状態を示す一部を断面とした正面図である。ノーズピース50の絞り孔52は、フランジ10の筒部11を外周から押しながら、筒部11の六角形の頂点部分を頂点間の距離11d1が小さくなるように変形させていき、頂点間の距離は絞り孔52の内径52dにほぼ等しい11d1'となる。小さくなった頂点間の距離11d1'は、六角形の面間の距離11d2とほぼ等しい。筒部11について、図7と図8を比較すると分かるように、絞り孔52により変形した後の筒部11の外径は六角形の頂点がなくなり、ほぼ円形となる。
このとき、筒部11の外周が絞られることにより、貫通孔13の内周は、締結前の内径13dより径が小さくなるように変形し、マンドレル30の係止部38の係止山に係合する。
ノーズピース50は、その端面51がスリーブ10のフランジ12に当接すると停止する。
【0034】
ブラインドリベットは、リベットボディ20の開いた筒部22'と、スリーブ10のフランジ12との間に被取付部材41,42を挟む。その後、マンドレル30を強く引き抜くと、破断可能部35で破断し、破断可能部35から頭部33の側は締結した部分に残る。スリーブ10のフランジ12の内周が、マンドレル30の係止部38に係合するので、ブラインドリベットに残留したマンドレル30の部分は、ブラインドリベットから脱落しない。残留したマンドレル30の部分は、スリーブ10の筒部11に固く固着するので、高い締結力を得ることができる。この後、ノーズピース50を図8の右方向に後退させて、締結は完了する。
【0035】
図9は、図8のブラインドリベットにより被取付部材を締結した後、締結機械を外した状態の一部を断面とした正面図である。被取付部材41,42は、リベットボディ20の開いた筒部22'と、スリーブ10のフランジ12との間に挟まれて締結されている。
【0036】
図10は、図9のブラインドリベットにより被取付部材を締結した後のスリーブ10の右側面図である。図10では、リベットボディ20、マンドレル30は図示していない。スリーブ10の筒部11は、ノーズピース50の孔52で六角形の頂部が変形し、ほぼ円筒形となっている。ノーズピース50の絞り孔52の出口部分は斜面の斜面部53となっているので、筒部11のフランジ12に隣接する部分は、六角形の頂部が潰されずに六角形のままで残っている。
【0037】
図11は、本発明の第2の実施形態のブラインドリベットにより被取付部材41,42を締結した状態のスリーブ10'の右側面図である。図11では、リベットボディ20、マンドレル30は図示していない。第1の実施形態では、スリーブ10の筒部11の断面は六角形であり、断面が円形の絞り孔で筒部11を絞る。第2の実施形態では、締結前のスリーブ10'の筒部11'の断面は円形であり、締結機械のノーズピース50'の絞り孔52'の断面が六角形となっている。六角形の絞り孔52'で断面が円形の筒部11'を絞り、断面が六角形の筒部11'とする。絞った後の六角形の対向する頂点間の距離11d1'は、絞る前の筒部11'の直径にほぼ等しく、六角形の対向する面間の距離11d2'は、絞る前の筒部11'の直径より小さくなっている。絞った後の六角形の対向する面の部分は絞られているが、六角形の頂点近傍はほとんど絞られていないので、スリーブ絞り荷重は小さくなる。
【0038】
図12は、本発明の第3の実施形態のブラインドリベットにより被取付部材41,42を締結した状態のスリーブ10"の右側面図である。図12では、リベットボディ20、マンドレル30は図示していない。第3の実施形態では、締結前のスリーブ10"の筒部11"の断面は、第2の実施形態と同様に円形である。第3の実施形態では、ノーズピース50'の絞り孔52"の断面は円周上等間隔に六箇所に凸部が形成されている。このような形状の絞り孔52"で断面が円形の筒部11"を絞ると、筒部11"の断面は六箇所に弧状の凹部18"が形成される。凹部18"以外の部分の直径11d1"は絞る前の筒部11'の直径にほぼ等しい。凹部18"以外の部分は、外径がほとんど絞られていないので、スリーブ絞り荷重は小さくなる。
【0039】
本発明の第1〜3の実施形態によれば、スリーブ絞り荷重は増加せず、スリーブとマンドレルとの剪断強度が高いブラインドリベットを得ることができる。
【符号の説明】
【0040】
10 スリーブ
11 筒部
12 フランジ
13 貫通孔
14 筒部側端部
15 フランジ側端部
20 リベットボディ
21 基部
22 筒部
23 貫通孔
24 筒部側端部
25 スリット
26 基部端部
30 マンドレル
31 軸部
32 テーパ部
33 頭部
34 円柱部
35 破断可能部
36 把持部
37 先端部
38 係止部
41 被取付部材
42 被取付部材
43 取付孔
44 取付孔
50 ノーズピース
51 端面
52 絞り孔
53 傾斜部
55 把持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付孔を有する複数の被取付部材を締結するためのブラインドリベットであって、
筒部と、前記筒部の一端に形成されたフランジを有し、内部を貫通する貫通孔が形成されたスリーブと、
内部を貫通する貫通孔が形成されたリベットボディと、
細長い軸部と、前記スリーブと前記リベットボディとの前記貫通孔の内径より大きい外径の頭部とを有するマンドレルと、を備え、
前記マンドレルの前記頭部が前記リベットボディの端部に隣接して配置され、前記マンドレルの前記軸部は、前記リベットボディと前記スリーブの前記貫通孔を通って前記スリーブの端部から延び出るように組み合わされ、
前記ブラインドリベットを前記マンドレルの頭部から、前記被取付部材の取付孔に挿入し、前記スリーブのフランジの面を前記被取付部材の前記取付孔の周りに当接し、
前記スリーブの前記筒部の外形とは異なる断面形状を有するノーズピースの絞り孔の入口に、前記スリーブの前記筒部を当接させ、前記マンドレルの前記軸部を引き抜くとき、前記リベットボディが、前記マンドレルの前記頭部により押されて変形し、前記スリーブの前記筒部が絞り孔の中に引き込まれ、前記スリーブの前記筒部の断面が前記絞り孔の形状に絞られ、前記スリーブの前記筒部の前記貫通孔の内周は、内径が小さくなり、前記マンドレルの係止部に係合し、
変形した前記リベットボディと、前記スリーブのフランジとの間に前記被取付部材を締結するブラインドリベット。
【請求項2】
請求項1に記載のブラインドリベットであって、前記リベットボディは、基部と、前記基部の一端に形成され、軸方向に延びるスリットを有する筒部とを有し、
前記リベットボディの前記筒部が、前記マンドレルの前記頭部により押されて前記被取付部材の前記取付孔の縁部に当接した位置で開き、前記リベットボディの前記筒部の開いた部分と、前記スリーブのフランジとの間に前記被取付部材を締結するブラインドリベット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のブラインドリベットであって、前記被取付部材を締結するとき、前記マンドレルは、前記軸部の小径の破断可能部で破断し、前記破断可能部から前記頭部までの部分は締結部に残留するブラインドリベット。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のブラインドリベットであって、前記スリーブの前記筒部は断面が六角形であり、前記ノーズピースの前記絞り孔は断面が円形であり、前記スリーブの前記筒部は、断面が円形に絞られるブラインドリベット。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のブラインドリベットであって、前記スリーブの前記筒部は断面が円形であり、前記ノーズピースの前記絞り孔は断面が多角形であり、前記スリーブの前記筒部は、断面が多角形に絞られるブラインドリベット。
【請求項6】
請求項5に記載のブラインドリベットであって、前記多角形は六角形であるブラインドリベット。
【請求項7】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のブラインドリベットであって、前記スリーブの前記筒部は断面が円形であり、前記ノーズピースの前記絞り孔は断面が周方向に等間隔に凸部を有する円形であり、前記スリーブの前記筒部は、断面が周方向に等間隔に凹部を有する円形に絞られるブラインドリベット。
【請求項8】
取付孔を有する複数の被取付部材を締結するためのブラインドリベットであって、
断面が多角形の筒部と、前記筒部の一端に形成されたフランジとを有し、内部を貫通する貫通孔が形成されたスリーブと、
内部を貫通する貫通孔が形成されたリベットボディと、
細長い軸部と、前記スリーブと前記リベットボディとの前記貫通孔の内径より大きい外径の頭部とを有するマンドレルと、を備え、
前記マンドレルの前記頭部が、前記リベットボディの端部に隣接して配置され、前記マンドレルの前記軸部は、前記スリーブと前記リベットボディの前記貫通孔を通って前記スリーブの端部から延び出るように組み合わされていることを特徴とするブラインドリベット。
【請求項9】
被取付部材をブラインドリベットで締結する方法であって、
断面が多角形の筒部と、前記筒部の一端に形成されたフランジとを有し、内部を貫通する貫通孔が形成されたスリーブと、
基部と、前記基部の一端に形成され、軸方向に延びるスリットを有する筒部とを有し、内部を貫通する貫通孔が形成されたリベットボディと、
細長い軸部と、前記スリーブと前記リベットボディとの前記貫通孔の内径より大きい外径の頭部とを有するマンドレルと、を用意し、
前記マンドレルの前記頭部が、前記リベットボディの前記筒部側端部に隣接して配置され、前記マンドレルの前記軸部は、前記スリーブと前記リベットボディの前記貫通孔を通って前記スリーブの筒部側端部から延び出るように組み合わせて、ブラインドリベットとし、
前記ブラインドリベットを前記マンドレルの頭部から、前記被取付部材の取付孔に挿入し、前記スリーブのフランジ側端部の面を前記被取付部材の前記取付孔の周りに当接させ、
締結機械のノーズピースの断面が円形の絞り孔の入口を前記スリーブの前記筒部の端部に当接させ、
前記スリーブの前記筒部の側から前記マンドレルの前記軸部を引き抜き、
前記リベットボディの前記筒部が、前記マンドレルの前記頭部により押されて前記被取付部材の前記取付孔の縁部に当接した位置で開き、前記リベットボディの前記筒部の開いた部分と、前記スリーブの前記フランジとの間に前記被取付部材を締結し、
前記ノーズピースの前記絞り孔で前記スリーブの前記筒部を絞り、前記筒部の断面の多角形の頂点部分の外径を小さくし、前記筒部の前記貫通孔の内周を前記マンドレルの係止部に係合させ、
前記マンドレルを、前記軸部の小径の破断可能部で破断させる、
段階を備えることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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