ブラケットの固定方法
【課題】横に並んだ乗客コンベアのトラス支持材の間に配置された一対のブラケットの固定に関し、限られたスペースで高い強度が得られるブラケットの固定方法の提供。
【解決手段】ブラケットの固定方法は、相互に底壁部51a,52aの大きさの異なる一対のブラケット51,52を用意する。一対のブラケットのうち相対的に大きい方の第1ブラケット51を、乗客コンベアを設ける構造物の支持部15に載置する。第1ブラケットの底壁部の周縁部を、支持部に溶接固定する。第1ブラケットの底壁部の上に、一対のブラケットのうち相対的に小さい方の第2ブラケット52を載置する。第2ブラケットの底壁部の周縁部を、第1ブラケットの底壁部に溶接固定する。
【解決手段】ブラケットの固定方法は、相互に底壁部51a,52aの大きさの異なる一対のブラケット51,52を用意する。一対のブラケットのうち相対的に大きい方の第1ブラケット51を、乗客コンベアを設ける構造物の支持部15に載置する。第1ブラケットの底壁部の周縁部を、支持部に溶接固定する。第1ブラケットの底壁部の上に、一対のブラケットのうち相対的に小さい方の第2ブラケット52を載置する。第2ブラケットの底壁部の周縁部を、第1ブラケットの底壁部に溶接固定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗降口が並んで配置された一対の乗客コンベアのトラス支持材の間に設けられた一対のブラケットの固定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乗客コンベヤは、乗員を載せた搬送部が移動することにより、乗員を目的の場所に搬送するものであり、エスカレータや動く歩道等がある。例えば特許文献1に例示されたように、エスカレータは、エスカレータ自重や積載荷重を支持する構造体として、トラスを備えており、トラス内部には、様々な駆動部品や制御部品が組み入れられている。通常、トラスは、乗降口の近傍で、トラス支持材を介して、建築構造物に支持されている。
【0003】
エスカレータの乗降口は、並んで配置されることがある。例えば、複数の上りエスカレータ同士、複数の下りエスカレータ同士、あるいは、上りエスカレータと下りエスカレータとが横に並んで配置された構成では、エスカレータの乗降口も横に並ぶこととなる。あるいは、上り下りに関する一方向のエスカレータが階数毎に折り返されるようにつながる構成では、相対的に下にあるエスカレータの上部乗降口と、相対的に上にあるエスカレータの下部乗降口とが横に並ぶこととなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭55−8435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように乗降口が横に並んだ構成では、それに応じて、トラス支持材も横に並ぶこことなる。ところで、トラス支持材の近傍には、トラス支持材に対して例えば支持作用を及ぼすブラケットが配置される。このため、トラス支持材が横に並ぶ構成では、隣り合うトラス支持材に挟まれた限られたスペースで、複数のブラケットを如何にして設けるかが問題となる。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、横に並んだ乗客コンベアのトラス支持材の間に配置された一対のブラケットの固定に関し、限られたスペースで高い強度が得られるブラケットの固定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するための本発明は、乗降口が並んで配置された一対の乗客コンベアのトラス支持材の間に設けられた一対のブラケットの固定方法であって、相互に底壁部の大きさの異なる前記一対のブラケットを用意し、前記一対のブラケットのうち相対的に大きい方の第1ブラケットを、乗客コンベアを設ける構造物の支持部に載置し、前記第1ブラケットの底壁部の周縁部を、前記支持部に溶接固定し、前記第1ブラケットの底壁部の上に、前記一対のブラケットのうち相対的に小さい方の第2ブラケットを載置し、前記第2ブラケットの底壁部の周縁部を、前記第1ブラケットの底壁部に溶接固定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、横に並んだ乗客コンベアのトラス支持材の間に配置された一対のブラケットの固定に関し、限られたスペースで高い強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態を適用するエスカレータの側面図である。
【図2】図1のII部の上部乗降口近傍の詳細部である。
【図3】横に並んだ上部乗降口及び下部乗降口を示す斜視図である。
【図4】階数毎に折り返されるようにつながったエスカレータのトラスを側方から示す図である。
【図5】図4の矢印Vからみた一対の横に並んだトラス支持材近傍の平面図である。
【図6】図5の矢印VIからみた正面図である。
【図7】比較例に関する、図5と同態様の図である。
【図8】比較例に関する、図6と同態様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るブラケットの固定方法の実施の形態について添付図面に基づいて説明する。なお、図中、同一符号は同一又は対応部分を示すものとする。
【0011】
本実施の形態は、乗客コンベアの一例としてエスカレータを対象とし、ブラケットの一例としてトラス支持材の移動規制用ブラケットを対象とした態様である。図1は、本実施の形態を適用するエスカレータの側面図である。
【0012】
エスカレータ1は、上下斜めに延びる長手方向に沿ってトラス3を備えており、そのトラス3には、無端状に連結された複数の踏段5が乗員搬送部として設けられている。踏段5は、通常はトラス内に設けられる駆動機(図示せず)の駆動力によって、上部乗降口7及び下部乗降口9の間を循環移動される。
【0013】
踏段5の左右両側には、欄干11が立設されている。欄干11はそれぞれ、トラス3の長手方向に沿って延びており、トラス3の上部に支持されている。また、欄干11のそれぞれには、踏段5の進行と同期して移動される移動手摺13が設けられている。移動手摺13は、無端状をなすベルト状部材であり、欄干11の前後上下の外周において周回移動するように設けられている。
【0014】
図2は、図1のII部の上部乗降口近傍の詳細部である。図2に示されるように、トラス3は、トラス支持材13を介して、エスカレータを設けている構造物の梁等である支持部15に支持されている。より詳細に説明すると、まず、トラス支持材13は、第1部分13a及び第2部分13bを有している。トラス支持材13は、第1部分13aにおいて、トラス3の上部3aに固定されている。また、トラス支持材13の第2部分13bは、構造物の支持部15に向けて延びている。
【0015】
一例として、支持部15の上面には、ベアリングプレート17がスタッドボルト19によって固定されている。さらに、ベアリングプレート17の上面には、一枚以上のシート状のはさみ金21が固定されている。トラス支持材13は、第2部分13bの下面をはさみ金21の上面に当接させるようにして、支持部15上に支持されている。なお、詳細な図示は省略するが、下部乗降口9におけるトラス3の下部3bに関する支持も同様である。
【0016】
エスカレータが設けられた構造物においては、乗降口が横に並んで配置されることがあり、本実施の形態では、図3及び図4に例示する態様をとりあげる。すなわち、図3及び図4に示されるように、上り下りに関する一方向のエスカレータが階数毎に折り返されるようにつながる構成では、相対的に下にあるエスカレータの上部乗降口7と、相対的に上にあるエスカレータの下部乗降口9とが横に並ぶこととなる。このような構成では、上部乗降口7側のトラス支持材13と、下部乗降口9側のトラス支持材13も、横に並ぶこととなる。本実施の形態は、横に並んだ一対のトラス支持材13の間にある後述する一対のブラケットの固定方法として実施される。
【0017】
図5は、図4の矢印Vからみた一対の横に並んだトラス支持材近傍の平面図であり、図6は、図5の矢印VIからみた正面図である。なお、図6では、図の明瞭性を優先し、前述したはさみ金を図示省略している。図5及び図6に示されるように、隣り合う一対のトラス支持材13の間には、第1ブラケット51及び第2ブラケット52が配置されている。また、各トラス支持材13において第1ブラケット51及び第2ブラケット52が設けられている側と逆側には、第3ブラケット53が配置されている。
【0018】
ブラケット51,52,53は、本実施の形態では、側方視、ほぼL字状の部材であり、底壁部51a,52a,53aと、立壁部51b,52b,53bと、リブ部51c,52c,53cとを有している。底壁部51a,52a,53aは、構造物側のベアリングプレート17に沿うようにして延びており、ベアリングプレート17に対して固定されている。また、底壁部51a,52a,53aは、平面視、矩形をなしている。
【0019】
立壁部51b,52b,53bは、底壁部51a,52a,53aの一方の縁辺から垂直に立ち上がっている。リブ部51c,52c,53cは、底壁部51a,52a,53a及び立壁部51b,52b,53bの間にまたがるようにしてそれら壁部の双方に対して垂直に延びている。
【0020】
本実施の形態では、ブラケット51,52,53は、トラス3の所定方向の移動を規制する移動規制用ブラケットである。図示例では、相対的に下にあるエスカレータの上部乗降口7側におけるトラス支持材13の両側には、第1ブラケット51と第3ブラケット53とが配置されている。トラス支持材13の第2部分13bは、第1ブラケット51の立壁部51bと第3ブラケット53の立壁部53bとに挟まれている。これら立壁部51b及び立壁部53bは、トラス支持材13の第2部分13bの側端面と当接するか僅かに離隔している。また、その隣にある相対的に上となるエスカレータの下部乗降口9側も同様に構成されており、トラス支持材13の第2部分13bが、第2ブラケット52の立壁部52bと第3ブラケット53の立壁部53bとに挟まれている。このような構成によって、各トラス支持材13は、平面的にみてトラス長手方向に沿う方向(Y方向)と直交する方向(X方向)への望ましくない移動が規制されるようになっており、つまりは、トラス支持材13と接合されているトラス3自体の当該方向の移動が規制されている。
【0021】
本実施の形態では、一対のトラス支持材13の間に設けられた一対のブラケット51,52は、底壁部51a,52aの大きさが相互に異なっている。図示されるように、第1ブラケット51の底壁部51aのほうが、第2ブラケット52の底壁部52aよりも平面的にみて大きくなっている。第1ブラケット51の底壁部51aの長さL1及び第2ブラケット52の底壁部52aの長さL2はともに、トラス支持材の間隔Dの半分よりも長く延びている。
【0022】
また、第1ブラケット51は、ベアリングプレート17に取り付けられている一方、第2ブラケット52は、ベアリングプレート17に直接取り付けられるわけではなく、ベアリングプレート17に対して固定された第1ブラケット51に載せられて固定されている。また、これに起因し、第1ブラケット51のリブ部51cは、第1ブラケット51の底壁部51a上に第2ブラケット52の底壁部52aが載置できるよう、第1ブラケット51の底壁部51aの(Y方向の)中央から偏倚して設けられている。一方、第2ブラケット52のリブ部52cは、第2ブラケット52の底壁部52aの(Y方向の)中央に設けられている。
【0023】
次に、本実施の形態に係るブラケットの固定方法の手順を説明する。まず、前述したように相互に底壁部51a,52aの大きさの異なる一対のブラケット51,52を用意しておき、それらのうち相対的に大きい方の第1ブラケット51を、エスカレータを設ける構造物のベアリングプレート(支持部)17に載置する。そして、図5及び図6において「×」や「△」で示されるように、第1ブラケット51の底壁部51aの周縁部を、ベアリングプレート17に対して溶接固定し、つまり本実施の形態では、底壁部51aにおける立壁部51bを除く三辺が溶接される。次に、第1ブラケット51の底壁部51aの上に、相対的に小さい方の第2ブラケット52を載置する。そして、同様に「×」や「△」で示されるように、第2ブラケット52の底壁部52aの周縁部を、第1ブラケット51の底壁部51aに溶接固定し、つまり、底壁部52aにおける立壁部52bを除く三辺が溶接される。
【0024】
このような本実施の形態に係るブラケットの固定方法によれば、以下に示す比較例との比較から明らかなように、横に並んだトラス支持材の間という限られたスペース内で、一対のブラケットを固定するに際して、高い固定強度を得ることができる。まず、図7及び図8に示す比較例のように、一対のトラス支持材13の間に一対のブラケットを設けるとした場合、底壁部53aの長さL0がトラス支持材の間隔Dの半分よりも短い第3ブラケット53を使用し、対称的に配置する態様が一般的な自然な考え方である。
【0025】
しかし、かかる比較例では、ブラケットそれぞれをベアリングプレート17に溶接固定する際、各底壁部53aのうち「○」で示される一辺の溶接は、それぞれの底壁部53aの長さL0をギリギリまで長くしたい結果として、底壁部53a同士の突合わせ溶接となってしまい、溶接作業性と溶接強度の両立が容易ではないという問題を有する。また、各底壁部53aのうち「×」で示される二辺の溶接は、一般的なすみ肉溶接であり作業性は良好であるものの、底壁部53aの長さL0はトラス支持材の間隔Dの半分を超えることできず、すなわち、溶接長さW0もまたトラス支持材の間隔Dの半分よりも短く、溶接長さを十分に長くとることが困難である問題も有していた。
【0026】
一方、本実施の形態では、図5及び図6に示されるように、まず、底壁部51a,52aそれぞれにおける「△」で示される一辺の溶接は、底壁部51a,52aが同じ高さ位置で付き合わさる態様ではないので、突合わせ溶接ではなくすみ肉溶接を行うことができる。また、底壁部51a,52aそれぞれにおける「×」で示される二辺の溶接は、底壁部51a,52aの長さL1,L2がトラス支持材の間隔Dの半分を超えており、すなわち、溶接長さW1,W2もまたトラス支持材の間隔Dの半分を超えており、溶接長さを十分に長くとることができる。このようなことから、本実施の形態では、底壁部51a,52aの周縁部の溶接をすみ肉溶接で統一でき且つ溶接長さを十分に長くとることができるので、横に並んだトラス支持材の間に配置された一対のブラケットの固定に関し、限られたスペースで良好な作業性を確保し尚且つ、高い溶接強度も確保することができる。
【0027】
さらに、本実施の形態では、第1ブラケット51のリブ部51cが底壁部51aの中央から偏倚して設けられているので、上述したような溶接作業性と溶接強度の両立を実現する溶接態様を可能としながら、第2ブラケット52を載置する第1ブラケット51に対して、底壁部51aと立壁部51bとの角度が変化するような強い力に対しても強度がより確保しやすくなっている。
【0028】
以上、好ましい実施の形態を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の改変態様を採り得ることは自明である。
【0029】
上記実施の形態のブラケットは、トラスの移動規制用のブラケットであったが、本発明はこれに限定されるものではない。よって、一例として、トラスの完全固定用としてトラス支持材に固着されるようなブラケットの固定に対して実施することもできる。本発明は、この他であっても、一対のトラス支持材の間に一対設けられ、それぞれが対応する乗降口側に対して何らかの所定作用をもたらすブラケットの固定に対して、広く適用することができる。
【0030】
また、本発明を適用するブラケットは、リブ部を有するものに限定されるものではない。また、本発明を適用するブラケットは、溶接が行われる底壁部と、所定の作用を発揮する立壁部とが少なくとも設けられていれば、その形態は特に限定されるものではない。
【0031】
さらに、本発明が適用されるエスカレータの配置は、上記実施の形態には限定されず、乗降口が横に並ぶ態様に広く適用することができる。よって、例えば、複数基の上りエスカレータ同士が横に並んだ構成、複数基の下りエスカレータ同士が横に並んだ構成、あるいは、上りエスカレータと下りエスカレータとが横に並んで配置された構成等で実施することもできる。また、本発明は、乗員を載せた搬送部が移動することにより、乗員を目的の場所に搬送する乗客コンベヤに関して実施されるものであり、エスカレータには限定されない。よって、他の一例をあげると動く歩道に関して実施することも可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 エスカレータ(乗客コンベア)、13 トラス支持材、15 支持部、17 ベアリングプレート(支持部)、51 第1ブラケット、52 第2ブラケット、51a,52a 底壁部、51b,52b 立壁部、51c,52c リブ部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗降口が並んで配置された一対の乗客コンベアのトラス支持材の間に設けられた一対のブラケットの固定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乗客コンベヤは、乗員を載せた搬送部が移動することにより、乗員を目的の場所に搬送するものであり、エスカレータや動く歩道等がある。例えば特許文献1に例示されたように、エスカレータは、エスカレータ自重や積載荷重を支持する構造体として、トラスを備えており、トラス内部には、様々な駆動部品や制御部品が組み入れられている。通常、トラスは、乗降口の近傍で、トラス支持材を介して、建築構造物に支持されている。
【0003】
エスカレータの乗降口は、並んで配置されることがある。例えば、複数の上りエスカレータ同士、複数の下りエスカレータ同士、あるいは、上りエスカレータと下りエスカレータとが横に並んで配置された構成では、エスカレータの乗降口も横に並ぶこととなる。あるいは、上り下りに関する一方向のエスカレータが階数毎に折り返されるようにつながる構成では、相対的に下にあるエスカレータの上部乗降口と、相対的に上にあるエスカレータの下部乗降口とが横に並ぶこととなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭55−8435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように乗降口が横に並んだ構成では、それに応じて、トラス支持材も横に並ぶこことなる。ところで、トラス支持材の近傍には、トラス支持材に対して例えば支持作用を及ぼすブラケットが配置される。このため、トラス支持材が横に並ぶ構成では、隣り合うトラス支持材に挟まれた限られたスペースで、複数のブラケットを如何にして設けるかが問題となる。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、横に並んだ乗客コンベアのトラス支持材の間に配置された一対のブラケットの固定に関し、限られたスペースで高い強度が得られるブラケットの固定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するための本発明は、乗降口が並んで配置された一対の乗客コンベアのトラス支持材の間に設けられた一対のブラケットの固定方法であって、相互に底壁部の大きさの異なる前記一対のブラケットを用意し、前記一対のブラケットのうち相対的に大きい方の第1ブラケットを、乗客コンベアを設ける構造物の支持部に載置し、前記第1ブラケットの底壁部の周縁部を、前記支持部に溶接固定し、前記第1ブラケットの底壁部の上に、前記一対のブラケットのうち相対的に小さい方の第2ブラケットを載置し、前記第2ブラケットの底壁部の周縁部を、前記第1ブラケットの底壁部に溶接固定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、横に並んだ乗客コンベアのトラス支持材の間に配置された一対のブラケットの固定に関し、限られたスペースで高い強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態を適用するエスカレータの側面図である。
【図2】図1のII部の上部乗降口近傍の詳細部である。
【図3】横に並んだ上部乗降口及び下部乗降口を示す斜視図である。
【図4】階数毎に折り返されるようにつながったエスカレータのトラスを側方から示す図である。
【図5】図4の矢印Vからみた一対の横に並んだトラス支持材近傍の平面図である。
【図6】図5の矢印VIからみた正面図である。
【図7】比較例に関する、図5と同態様の図である。
【図8】比較例に関する、図6と同態様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るブラケットの固定方法の実施の形態について添付図面に基づいて説明する。なお、図中、同一符号は同一又は対応部分を示すものとする。
【0011】
本実施の形態は、乗客コンベアの一例としてエスカレータを対象とし、ブラケットの一例としてトラス支持材の移動規制用ブラケットを対象とした態様である。図1は、本実施の形態を適用するエスカレータの側面図である。
【0012】
エスカレータ1は、上下斜めに延びる長手方向に沿ってトラス3を備えており、そのトラス3には、無端状に連結された複数の踏段5が乗員搬送部として設けられている。踏段5は、通常はトラス内に設けられる駆動機(図示せず)の駆動力によって、上部乗降口7及び下部乗降口9の間を循環移動される。
【0013】
踏段5の左右両側には、欄干11が立設されている。欄干11はそれぞれ、トラス3の長手方向に沿って延びており、トラス3の上部に支持されている。また、欄干11のそれぞれには、踏段5の進行と同期して移動される移動手摺13が設けられている。移動手摺13は、無端状をなすベルト状部材であり、欄干11の前後上下の外周において周回移動するように設けられている。
【0014】
図2は、図1のII部の上部乗降口近傍の詳細部である。図2に示されるように、トラス3は、トラス支持材13を介して、エスカレータを設けている構造物の梁等である支持部15に支持されている。より詳細に説明すると、まず、トラス支持材13は、第1部分13a及び第2部分13bを有している。トラス支持材13は、第1部分13aにおいて、トラス3の上部3aに固定されている。また、トラス支持材13の第2部分13bは、構造物の支持部15に向けて延びている。
【0015】
一例として、支持部15の上面には、ベアリングプレート17がスタッドボルト19によって固定されている。さらに、ベアリングプレート17の上面には、一枚以上のシート状のはさみ金21が固定されている。トラス支持材13は、第2部分13bの下面をはさみ金21の上面に当接させるようにして、支持部15上に支持されている。なお、詳細な図示は省略するが、下部乗降口9におけるトラス3の下部3bに関する支持も同様である。
【0016】
エスカレータが設けられた構造物においては、乗降口が横に並んで配置されることがあり、本実施の形態では、図3及び図4に例示する態様をとりあげる。すなわち、図3及び図4に示されるように、上り下りに関する一方向のエスカレータが階数毎に折り返されるようにつながる構成では、相対的に下にあるエスカレータの上部乗降口7と、相対的に上にあるエスカレータの下部乗降口9とが横に並ぶこととなる。このような構成では、上部乗降口7側のトラス支持材13と、下部乗降口9側のトラス支持材13も、横に並ぶこととなる。本実施の形態は、横に並んだ一対のトラス支持材13の間にある後述する一対のブラケットの固定方法として実施される。
【0017】
図5は、図4の矢印Vからみた一対の横に並んだトラス支持材近傍の平面図であり、図6は、図5の矢印VIからみた正面図である。なお、図6では、図の明瞭性を優先し、前述したはさみ金を図示省略している。図5及び図6に示されるように、隣り合う一対のトラス支持材13の間には、第1ブラケット51及び第2ブラケット52が配置されている。また、各トラス支持材13において第1ブラケット51及び第2ブラケット52が設けられている側と逆側には、第3ブラケット53が配置されている。
【0018】
ブラケット51,52,53は、本実施の形態では、側方視、ほぼL字状の部材であり、底壁部51a,52a,53aと、立壁部51b,52b,53bと、リブ部51c,52c,53cとを有している。底壁部51a,52a,53aは、構造物側のベアリングプレート17に沿うようにして延びており、ベアリングプレート17に対して固定されている。また、底壁部51a,52a,53aは、平面視、矩形をなしている。
【0019】
立壁部51b,52b,53bは、底壁部51a,52a,53aの一方の縁辺から垂直に立ち上がっている。リブ部51c,52c,53cは、底壁部51a,52a,53a及び立壁部51b,52b,53bの間にまたがるようにしてそれら壁部の双方に対して垂直に延びている。
【0020】
本実施の形態では、ブラケット51,52,53は、トラス3の所定方向の移動を規制する移動規制用ブラケットである。図示例では、相対的に下にあるエスカレータの上部乗降口7側におけるトラス支持材13の両側には、第1ブラケット51と第3ブラケット53とが配置されている。トラス支持材13の第2部分13bは、第1ブラケット51の立壁部51bと第3ブラケット53の立壁部53bとに挟まれている。これら立壁部51b及び立壁部53bは、トラス支持材13の第2部分13bの側端面と当接するか僅かに離隔している。また、その隣にある相対的に上となるエスカレータの下部乗降口9側も同様に構成されており、トラス支持材13の第2部分13bが、第2ブラケット52の立壁部52bと第3ブラケット53の立壁部53bとに挟まれている。このような構成によって、各トラス支持材13は、平面的にみてトラス長手方向に沿う方向(Y方向)と直交する方向(X方向)への望ましくない移動が規制されるようになっており、つまりは、トラス支持材13と接合されているトラス3自体の当該方向の移動が規制されている。
【0021】
本実施の形態では、一対のトラス支持材13の間に設けられた一対のブラケット51,52は、底壁部51a,52aの大きさが相互に異なっている。図示されるように、第1ブラケット51の底壁部51aのほうが、第2ブラケット52の底壁部52aよりも平面的にみて大きくなっている。第1ブラケット51の底壁部51aの長さL1及び第2ブラケット52の底壁部52aの長さL2はともに、トラス支持材の間隔Dの半分よりも長く延びている。
【0022】
また、第1ブラケット51は、ベアリングプレート17に取り付けられている一方、第2ブラケット52は、ベアリングプレート17に直接取り付けられるわけではなく、ベアリングプレート17に対して固定された第1ブラケット51に載せられて固定されている。また、これに起因し、第1ブラケット51のリブ部51cは、第1ブラケット51の底壁部51a上に第2ブラケット52の底壁部52aが載置できるよう、第1ブラケット51の底壁部51aの(Y方向の)中央から偏倚して設けられている。一方、第2ブラケット52のリブ部52cは、第2ブラケット52の底壁部52aの(Y方向の)中央に設けられている。
【0023】
次に、本実施の形態に係るブラケットの固定方法の手順を説明する。まず、前述したように相互に底壁部51a,52aの大きさの異なる一対のブラケット51,52を用意しておき、それらのうち相対的に大きい方の第1ブラケット51を、エスカレータを設ける構造物のベアリングプレート(支持部)17に載置する。そして、図5及び図6において「×」や「△」で示されるように、第1ブラケット51の底壁部51aの周縁部を、ベアリングプレート17に対して溶接固定し、つまり本実施の形態では、底壁部51aにおける立壁部51bを除く三辺が溶接される。次に、第1ブラケット51の底壁部51aの上に、相対的に小さい方の第2ブラケット52を載置する。そして、同様に「×」や「△」で示されるように、第2ブラケット52の底壁部52aの周縁部を、第1ブラケット51の底壁部51aに溶接固定し、つまり、底壁部52aにおける立壁部52bを除く三辺が溶接される。
【0024】
このような本実施の形態に係るブラケットの固定方法によれば、以下に示す比較例との比較から明らかなように、横に並んだトラス支持材の間という限られたスペース内で、一対のブラケットを固定するに際して、高い固定強度を得ることができる。まず、図7及び図8に示す比較例のように、一対のトラス支持材13の間に一対のブラケットを設けるとした場合、底壁部53aの長さL0がトラス支持材の間隔Dの半分よりも短い第3ブラケット53を使用し、対称的に配置する態様が一般的な自然な考え方である。
【0025】
しかし、かかる比較例では、ブラケットそれぞれをベアリングプレート17に溶接固定する際、各底壁部53aのうち「○」で示される一辺の溶接は、それぞれの底壁部53aの長さL0をギリギリまで長くしたい結果として、底壁部53a同士の突合わせ溶接となってしまい、溶接作業性と溶接強度の両立が容易ではないという問題を有する。また、各底壁部53aのうち「×」で示される二辺の溶接は、一般的なすみ肉溶接であり作業性は良好であるものの、底壁部53aの長さL0はトラス支持材の間隔Dの半分を超えることできず、すなわち、溶接長さW0もまたトラス支持材の間隔Dの半分よりも短く、溶接長さを十分に長くとることが困難である問題も有していた。
【0026】
一方、本実施の形態では、図5及び図6に示されるように、まず、底壁部51a,52aそれぞれにおける「△」で示される一辺の溶接は、底壁部51a,52aが同じ高さ位置で付き合わさる態様ではないので、突合わせ溶接ではなくすみ肉溶接を行うことができる。また、底壁部51a,52aそれぞれにおける「×」で示される二辺の溶接は、底壁部51a,52aの長さL1,L2がトラス支持材の間隔Dの半分を超えており、すなわち、溶接長さW1,W2もまたトラス支持材の間隔Dの半分を超えており、溶接長さを十分に長くとることができる。このようなことから、本実施の形態では、底壁部51a,52aの周縁部の溶接をすみ肉溶接で統一でき且つ溶接長さを十分に長くとることができるので、横に並んだトラス支持材の間に配置された一対のブラケットの固定に関し、限られたスペースで良好な作業性を確保し尚且つ、高い溶接強度も確保することができる。
【0027】
さらに、本実施の形態では、第1ブラケット51のリブ部51cが底壁部51aの中央から偏倚して設けられているので、上述したような溶接作業性と溶接強度の両立を実現する溶接態様を可能としながら、第2ブラケット52を載置する第1ブラケット51に対して、底壁部51aと立壁部51bとの角度が変化するような強い力に対しても強度がより確保しやすくなっている。
【0028】
以上、好ましい実施の形態を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の改変態様を採り得ることは自明である。
【0029】
上記実施の形態のブラケットは、トラスの移動規制用のブラケットであったが、本発明はこれに限定されるものではない。よって、一例として、トラスの完全固定用としてトラス支持材に固着されるようなブラケットの固定に対して実施することもできる。本発明は、この他であっても、一対のトラス支持材の間に一対設けられ、それぞれが対応する乗降口側に対して何らかの所定作用をもたらすブラケットの固定に対して、広く適用することができる。
【0030】
また、本発明を適用するブラケットは、リブ部を有するものに限定されるものではない。また、本発明を適用するブラケットは、溶接が行われる底壁部と、所定の作用を発揮する立壁部とが少なくとも設けられていれば、その形態は特に限定されるものではない。
【0031】
さらに、本発明が適用されるエスカレータの配置は、上記実施の形態には限定されず、乗降口が横に並ぶ態様に広く適用することができる。よって、例えば、複数基の上りエスカレータ同士が横に並んだ構成、複数基の下りエスカレータ同士が横に並んだ構成、あるいは、上りエスカレータと下りエスカレータとが横に並んで配置された構成等で実施することもできる。また、本発明は、乗員を載せた搬送部が移動することにより、乗員を目的の場所に搬送する乗客コンベヤに関して実施されるものであり、エスカレータには限定されない。よって、他の一例をあげると動く歩道に関して実施することも可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 エスカレータ(乗客コンベア)、13 トラス支持材、15 支持部、17 ベアリングプレート(支持部)、51 第1ブラケット、52 第2ブラケット、51a,52a 底壁部、51b,52b 立壁部、51c,52c リブ部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗降口が並んで配置された一対の乗客コンベアのトラス支持材の間に設けられた一対のブラケットの固定方法であって、
相互に底壁部の大きさの異なる前記一対のブラケットを用意し、
前記一対のブラケットのうち相対的に大きい方の第1ブラケットを、乗客コンベアを設ける構造物の支持部に載置し、
前記第1ブラケットの底壁部の周縁部を、前記支持部に溶接固定し、
前記第1ブラケットの底壁部の上に、前記一対のブラケットのうち相対的に小さい方の第2ブラケットを載置し、
前記第2ブラケットの底壁部の周縁部を、前記第1ブラケットの底壁部に溶接固定する
ブラケットの固定方法。
【請求項2】
前記一対のブラケットはそれぞれ、前記底壁部と、該底壁部から立ち上がる立壁部とを有しており、
前記第1ブラケットの底壁部及び前記第2ブラケットの底壁部はともに、トラス支持材の間隔の半分よりも長く延びている
請求項1のブラケットの固定方法。
【請求項3】
前記一対のブラケットはそれぞれ、前記底壁部と、該底壁部から立ち上がる立壁部と、前記底壁部及び前記立壁部の間にまたがるリブ部とを有しており、
前記第1ブラケットの前記リブ部は、該第1ブラケットの底壁部上に前記第2ブラケットの底壁部が載置できるよう、該第1ブラケットの底壁部の中央から偏倚して設けられており、
前記第2ブラケットの前記リブ部は、該第2ブラケットの底壁部の中央に設けられている
請求項1又は2のブラケットの固定方法。
【請求項4】
前記一対のブラケットはそれぞれ、前記底壁部と、該底壁部から立ち上がる立壁部とを有しており、
前記一対のブラケットはそれぞれ、前記立壁部が対応する乗客コンベアのトラス支持材にあてがわれ、対応する乗客コンベアのトラスの移動を規制するものである
請求項1乃至3の何れか一項のブラケットの固定方法。
【請求項5】
前記一対のブラケットの底壁部はそれぞれ、平面視、矩形をなしており、
前記底壁部における前記立壁部を除く三辺が溶接される
請求項2乃至4の何れか一項のブラケットの固定方法。
【請求項1】
乗降口が並んで配置された一対の乗客コンベアのトラス支持材の間に設けられた一対のブラケットの固定方法であって、
相互に底壁部の大きさの異なる前記一対のブラケットを用意し、
前記一対のブラケットのうち相対的に大きい方の第1ブラケットを、乗客コンベアを設ける構造物の支持部に載置し、
前記第1ブラケットの底壁部の周縁部を、前記支持部に溶接固定し、
前記第1ブラケットの底壁部の上に、前記一対のブラケットのうち相対的に小さい方の第2ブラケットを載置し、
前記第2ブラケットの底壁部の周縁部を、前記第1ブラケットの底壁部に溶接固定する
ブラケットの固定方法。
【請求項2】
前記一対のブラケットはそれぞれ、前記底壁部と、該底壁部から立ち上がる立壁部とを有しており、
前記第1ブラケットの底壁部及び前記第2ブラケットの底壁部はともに、トラス支持材の間隔の半分よりも長く延びている
請求項1のブラケットの固定方法。
【請求項3】
前記一対のブラケットはそれぞれ、前記底壁部と、該底壁部から立ち上がる立壁部と、前記底壁部及び前記立壁部の間にまたがるリブ部とを有しており、
前記第1ブラケットの前記リブ部は、該第1ブラケットの底壁部上に前記第2ブラケットの底壁部が載置できるよう、該第1ブラケットの底壁部の中央から偏倚して設けられており、
前記第2ブラケットの前記リブ部は、該第2ブラケットの底壁部の中央に設けられている
請求項1又は2のブラケットの固定方法。
【請求項4】
前記一対のブラケットはそれぞれ、前記底壁部と、該底壁部から立ち上がる立壁部とを有しており、
前記一対のブラケットはそれぞれ、前記立壁部が対応する乗客コンベアのトラス支持材にあてがわれ、対応する乗客コンベアのトラスの移動を規制するものである
請求項1乃至3の何れか一項のブラケットの固定方法。
【請求項5】
前記一対のブラケットの底壁部はそれぞれ、平面視、矩形をなしており、
前記底壁部における前記立壁部を除く三辺が溶接される
請求項2乃至4の何れか一項のブラケットの固定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2011−246228(P2011−246228A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120612(P2010−120612)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】
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