説明

ブラシの製造方法

【課題】多数の植毛穴が付設されているブラシ柄に、形状又は数の異なる少なくとも2種類のブリッスル束を入り交じった状態で植毛してブラシを製造する場合に、これまでは第1の植毛機を用いて第1のブリッスル束を植毛しておき、次いで第2の植毛機を用いて第2のブリッスル束を植毛することとし、その際、渡り毛を発生させないために第2の植毛機には毛よけ板とともに唯一本の毛分け具を付設することとして来た。そのために能率よく植毛することができなかったので、能率よく植毛できるように改良する。
【解決手段】第2の植毛機に少なくとも2本の毛分け具を付設しておき、各毛分け具を第2のブリッスル束を植毛すべき植毛穴の各列に挿入し、それらの毛分け具を特定の方向に特定の順序に移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ブラシの製造方法に関するものである。とくに、この発明は異なるブラシ毛の束が入り交じって配列された特殊性状のブラシを能率よく製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ブラシはハンドル又はブラシ柄と呼ばれる柄の表面に、撓みにくい真直ぐな毛の束を垂直に固定して作られている。古くは毛として獣の毛が用いられたが、最近はポリエステルやポリアミドのような合成樹脂のモノフィラメントが用いられている。この毛は、一般にブリッスルと呼ばれている。
【0003】
ブラシ柄は、ブリッスル束を固定するために、植毛穴と呼ばれる小孔が多数穿設されている。植毛穴にブリッスル束を固定する作業は一般に植毛と呼ばれている。植毛は植毛機を使って行われる。
【0004】
植毛機は、図1に符号4で示したような打ち込み具を備えている。打ち込み具4は、細いチューブ状を呈し、その中には長手方向に貫通する押し込み針6が設けられており、先端にはノズル5が付設されている。ノズル5の近くには横方向に貫通する孔が穿設されており、その孔内にブリッスル束3が挿入されるようになっている。
【0005】
打ち込み具4は次のようにして植毛を行う。すなわち、打ち込み具4は、まず先端にあるノズル5を植毛穴2に向けて移動し、図2に示したように、押し込み針6を下降させ、針6の先端に楔7を伴なってブリッスル束3を2つ折りにする。次いで、ノズル5を植毛穴2の周りに当接し、折目を植毛穴2内に押し込み、それと同時に楔7を打ち込んでブリッスル束3を植毛穴2内に固定する。その後、打ち込み具4はブラシ柄1から離れ、次の植毛穴2に向かって移動し植毛を行う。こうして植毛機は植毛穴に次々と植毛して行く。
【0006】
ブラシ柄1には植毛穴2が複数の列をなして穿設されている。植毛機はこのような列をなして並ぶ植毛穴に上述のようにして1つの列の植毛穴に植毛し、1つの列の植毛穴に植毛し終ると、次の列の植毛穴に植毛する。こうして隣接する列の植毛穴に植毛して行く。このとき渡り毛を生じないようにすることが必要とされる。渡り毛とは隣接する2個の植毛穴に跨って植毛されているブリッスルのことである。渡り毛を生じたブラシは販売できる商品とならないので、渡り毛の発生は絶対に防止しなければならない。渡り毛はあとで植毛するブリッスル束が、既に植毛されたブリッスル束を巻き込んで植毛されるために生じるものである。
【0007】
渡り毛の発生を防止するために、植毛機には毛よけ板が付設されている。一般に植毛機は、図3に示したように、ノズル5を含む植毛機構と並んで、アーム8に付設された毛よけ板9を備えている。図4に示したように、ノズル5により植毛穴2に植毛しようとするとき、毛よけ板9は、既に植毛されたブリッスル束3の先端部を覆うとともに、その先端部を植毛穴2から遠ざける方向に倒して、ノズル5とブリッスル束3との間を引き離し、新たに植毛するブリッスルに束が既に植毛されたブリッスル束を巻き込まないようにしている。こうして、植毛機は渡り毛の発生を防止している。
【0008】
植毛機は、堆積されたブリッスルの山から一定本数のブリッスルを取り出して束とし、この束を打ち込み具4によって植毛して行く。従って、同形のブリッスルを同数だけ集めた束を次々と植毛して行くときは、同じ植毛機を使用して植毛することができる。ところが、ブリッスルの形が異なり、又はブリッスルの形が同じでも異なる数からなるブリッスルの束を植毛するときは、植毛機を変更しなければならない。1つのブラシ柄に同じ植毛機を使用して植毛を行うときは、能率よく植毛してブラシを作ることができるが、植毛機を変えて植毛しなければならないとき、植毛機を変えるのに手間取り、能率よく植毛することができない。
【0009】
ところが、最近は植毛機を変えて植毛しなければならないようなブラシが要望されるに至った。すなわち、例えば1つのブラシに穴径の異なる植毛穴を設けて、太さや本数の異なるブリッスル束を植毛したブラシや、1つのブラシに同じ穴径の植毛穴を設けてはいるが、植毛穴の位置によって長さの異なるブリッスル束を植毛したブラシが要望されるに至った。このようなブラシは、皮肌に強くあたる部分と、皮肌に柔かくあたる部分とを含んでおり、これらの部分を適当に使い分けることによって、皮肌に微妙な感覚を与えることができるので重宝とされる。
【0010】
その一例を挙げると、図5に示したような植毛面を持った歯ブラシである。図5に示した植毛面では、中の白い植毛穴Pが1.6mmの直径を持つものとされ、中の黒い植毛穴Qが1.0mmの直径を持つものとされ、このような植毛穴PとQとがA〜Eの5列となって配置されている。そのうちのA、C及びEの3列では中の白い植毛穴Pに、太さ0.2mm、高さ10mmのブリッスルが18本集まって作られたブリッスル束が植毛されており、残るB及びDの2列では、中白の植毛穴Pに上記3列と同じブリッスル束が植毛され、中黒の植毛穴Qには直径0.18mm、長さ12mmのブリッスルが8本集まって作られたブリッスル束が植毛されて、歯ブラシが作られている。
【0011】
このようなブリッスル束を植毛するには、列ごとに植毛機を変えて植毛することが考えられる。ところが、植毛機を変えると能率よく植毛できないから、この考えに従ったのでは安価に歯ブラシを提供することができない。それよりも能率がよいのは、まずすべての中白の植毛穴Pに長さ10mmのブリッスル束を植毛し、あとですべての中黒の植毛穴Qに長さ12mmのブリッスルの束を植毛して行く方法である。
【0012】
ところが、このように植毛しようとすると、中黒の植毛穴Qに植毛するとき、両側には植毛穴Pに植毛されたブリッスル群が近接して存在するため、渡り毛を生じ易い。
【0013】
特開2002−262943号公報は、このような場合、渡り毛を生じさせないで植毛する方法を提案している。この提案によれば、既に植毛された両側のブリッスル群の間に毛分け具を挿入し、植毛機に付設されている毛よけ板がブリッスル群を倒す方向と反対方向に毛分け具を移動させて、ブリッスル群の間を広げ、この状態で植毛することとしている。
【0014】
特開2002−262943号公報が提案する方法は、唯1本の毛分け具を使用する場合に限っている。なぜならば、植毛機には、前述のように、通常毛よけ板が付設されているので、毛分け具は隣接するブリッスル群のうちの一方を毛よけ板と反対方向に傾斜させれば足りるからである。ところが、上記公報は図9を掲げ、2本の毛分け具を用いて植毛することができると記載している。しかし、このように1列の植毛穴に沿って2本の毛分け具を挿入したのでは、そのうちの1本は毛よけ板の作動を妨げることになり、却って植毛を妨げることとなる。
【特許文献1】特開2002−262943号公報
【0015】
上記提案とは異なるが、ブリッスル束の長さだけが異なるブラシは、植毛したあとでブリッスルの先を切断することによって作ることができる。そのための装置がヨーロッパ特許第0078569A2公報に記載されている。しかし、この装置によってはブリッスル束の形や数の異なるブラシを製造することができない。
【特許文献2】ヨーロッパ特許第0078569A2公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
1本の毛分け具を使用するという特開2002−262943号公報の教示に従ったのでは、図5に示したような歯ブラシは、これを能率よく製造することができない。なぜならば、図5に示した歯ブラシを作るには、毛分け具をB列のところから、D列のところへ移動させることが必要だからである。ところが、毛分け具の移動は煩瑣であって、移動には時間がかかるので、上記公報の教示によっては能率よく植毛することができない。そこで、図5に示したような歯ブラシをさらに能率よく製造する方法を案出する必要が生じた。
【0017】
上記のように、能率のよい製造方法を案出する必要は図5の場合に限らない。一般に、多数の植毛穴が穿設されているブラシ柄に、数又は形状の異なる少なくとも2種類のブリッスル束を少なくとも2列にわたって植毛する場合には、同じように能率のよいブラシの製造方法を案出することが必要とされる。この発明はこのような必要に応じようとして生れたものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この発明は、上記の課題を解決するために、初めに第1の植毛機を用いて第1のブリッスル束を植毛しておき、次いで第2の植毛機を用いて第2のブリッスル束を植毛することを前提とする。しかも、この発明は第2の植毛機により植毛する際には、第2のブリッスル束を植毛すべき植毛穴が少なくとも2列にわたって存在し、その2列が植毛された第1のブリッスル束の群に隣接して存在していることを前提としている。
【0019】
この発明は、第2のブリッスル束を植毛すべき植毛穴の各列に沿ってそれぞれ1本の毛分け具を挿入し、それらの毛分け具を特定の方向に特定の順序に移動させることによって渡り毛を発生させることなく、第2のブリッスル束を能率よく植毛する方法を提供するものである。
【0020】
第2の植毛機による植毛に際しては、植毛機に付設された毛よけ板が既に植毛されたブリッスル群を倒す方向を基準として、その方向と反対寄りに位置する第1の毛分け具をまず上記方向と反対がわに移動させてブリッスル群を傾斜させ、植毛機に付設されている毛よけ板を作動させてブリッスル群を倒し、これによってブリッスル群の間を広げ、この状態で第1の毛分け具に沿った植毛穴に第2のブリッスル束を植毛することを骨子としている。こうして、第1の毛分け具に沿った植毛穴に第2のブリッスル束を植毛したのち、第1の毛分け具はそのままにして、同様に第2の毛分け具を第1の毛分け具と同じ方向に移動させてブリッスル群を傾斜させるとともに、植毛機に付設された毛よけ板によってブリッスル群を倒し、第2の毛分け具に沿った植毛穴に第2のブリッスル束を植毛することとする。必要ならば、第3の毛分け具について同様な操作を繰り返してさらに第2のブリッスル束を植毛して行く方法である。
【0021】
この発明は、毛よけ板が付設されている植毛機を使用して、多数の植毛穴が穿設されているブラシ柄に、形状又は数の異なる少なくとも2種類のブリッスル束を入り交じった状態で植毛してブラシを製造する方法において、初めに第1の植毛機により従来法に従って第1のブリッスル束を植毛し、次いで第2の植毛機により第2のブリッスル束を少なくとも2列にわたって植毛するに際し、植毛穴の各列に沿ってそれぞれ1本の毛分け具を挿入し、植毛機に付設されている毛よけ板がブリッスルを倒す方向を基準として、上記方向と反対方向から見て最初の植毛穴に沿う第1の毛分け具を、まず上記方向と反対がわに移動させてブリッスル群を傾斜させ、毛よけ板を作動させてブリッスル群を倒し、こうして第1の毛分け具に沿った植毛穴の周囲のブリッスル群の間を広げて植毛穴に第2のブリッスル束を植毛し、その後第2の毛分け具を第1の毛分け具の移動した方向に移動させ、その後同様に第2の毛分け具に沿った植毛穴に第2のブリッスル束を植毛することを特徴とする、ブラシの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0022】
この発明では、多数の植毛穴が穿設されているブラシ柄に、形状又は数の異なる少なくとも2種類のブリッスル束が入り交じって少なくとも2列にわたって植毛されるブラシを製造するにあたり、毛よけ板が付設されている第1の植毛機を使用して、初めに従来法に従って第1のブリッスル束をすべて植毛し、次いで第2の植毛機を使用して第2のブリッスル束を植毛するので、植毛機の交換が少なくて済み、従って能率よくブラシを作ることができる。
【0023】
また第2のブリッスル束を植毛するにあたり、第2のブリッスル束を植毛すべき植毛穴の各列にそれぞれ1本の毛分け具を挿入し、毛よけ板がブリッスル群を倒す方向を基準とし、その方向と反対がわに位置する第1の毛分け具をまず上記方向と反対がわに移動させて、ブリッスル群を傾斜させることとしたので、上記ブリッスル群と向き合うブリッスル群は植毛機に付設された毛よけ板によって倒された状態にすることができ、従ってブリッスル群の間を容易に広げて第2のブリッスル束を植毛することができ、これによって渡り毛の発生を防ぐことができる。
【0024】
その後、第2の毛分け具を第1の毛分け具が移動した方向に移動させるので、第2の毛分け具によって分けられたブリッスル群は、第1の毛分け具がわへ傾斜し、これと向き合うブリッスル群は植毛機に付設された毛よけ板によって倒された状態にすることができ、こうしてブリッスル群の間を広げて、第2の毛分け具に沿った植毛穴に第2のブリッスル束を植毛することができ、これによって渡り毛の発生を防ぐことができる。
【0025】
この場合、2本の毛分け具を用いるので、各毛分け具は毛よけ板がブリッスル群を倒す方向と反対方向へ僅かに移動させるだけでブリッスル群を傾斜させることができ、従って毛分け具を1つの列から他の列へ移動させるのに比べると、遥かに能率よく植毛することができる。
【0026】
この発明はこのような効果をもたらすものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
この発明では多数の植毛穴が穿設されているブラシ柄に、形状又は数の異なる少なくとも2種類のブリッスル束を少なくとも2列にわたって入り交じった状態に植毛してブラシとする場合を前提としている。その中にはブラシ柄に同一の大きさの植毛穴が穿設されていて、それら植毛穴に長さ、太さ等の形状の異なったブリッスル束を植毛する場合と、ブラシ柄には大きさの異なった植毛穴が穿設されていて、そこに同じ形状のブリッスルを数の異なるブリッスル束として植毛する場合など、色々な場合が含まれている。
【0028】
この発明方法により製造して効果のあるブラシは、歯ブラシを例にとると、図5に示したようなブリッスル束の配列のほか、図6の(a)、(b)及び(c)に示したようなブリッスル束の配列のものがある。図6の(a)では、中白の植毛穴Rは直径が1.4mmの大きさとされ、中黒の植毛穴Sは直径が1.8mmの植毛穴とされ、それらの植毛穴に異なる太さのブリッスルが本数の異なる束として植毛されている。また、図6の(b)では、中白の植毛穴も中黒の植毛穴も、何れも直径が1.6mmの大きさとされているが、中白の植毛穴には高さが10mmのブリッスル束が植毛され、中黒の植毛穴には高さが11mmのブリッスル束が植毛されている。また、図6の(c)では、植毛穴の大きさはすべて直径が1.6mmの大きさとされているが、中白の植毛穴には高さが10mmのブリッスル束が植毛され、中黒の植毛穴には高さが11mmのブリッスル束が植毛されている。
【0029】
この発明は、既に植毛された第1のブリッスル束の間に、植毛すべき第2のブリッスル束が少なくとも2列にわたって入り交じって存在した場合に、渡り毛の発生を防ぐために各列に1本ずつ毛分け具を挿入することを必要としている。その各毛分け具は、ブリッスルの打ち込み具から独立して別々に移動できるものとされている。毛分け具は板状であってもよいが、帯状又は棒状であることが好ましい。
【0030】
毛分け具は、既に植毛されたブリッスル群が隣接している間にあって、第2のブリッスル束を植毛すべき植毛穴の列に沿って挿入される。挿入位置は、第2のブリッスル束を植毛すべき植毛穴の真上であることが好ましいが、第2のブリッスル束を植毛すべき植毛穴を避けたところであってもよい。挿入された毛分け具は植毛面に密接していなくて植毛面から僅かに離れており、その離れた距離は既に植毛されているブリッスル群の高さの10分の1から2分の1までの範囲内とすることが好ましい。
【0031】
毛分け具は植毛すべき植毛穴の列に沿って一直線状に延びていることが好ましいが、植毛穴の列が湾曲しているときは、湾曲に応じて湾曲していてもよい。また、毛分け具は植毛穴の列が湾曲していても、一直線状に延びていてもよい。
【0032】
植毛機では、図7に示したように、台10が固定されている。この台10に向かってブラシ柄は送られて来て台10に嵌まり込み、固定具11によって台10に固定される。こうして固定された状態でブラシ柄は植毛される。植毛が終ると、固定具11が外され、植毛されたブラシは別のところへ送られる。従って、第1の毛分け具12と第2の毛分け具13とは、台10の付近に固定されたままで、主として矢印X及びY方向に僅かな距離だけ別々に移動可能とされているだけで足りる。
【0033】
図7は、第1の植毛機によりすべての中白の植毛穴Pに第1のブリッスル束を植毛し終えたブラシ柄1が、第2の植毛機に移されたときの状態を示している。ブラシ柄1はA、C及びEの3列に並ぶ中白の植毛穴にすべて第1のブリッスル束が植毛され、B及びDの2列に並ぶ中黒の植毛穴に、これから第2のブリッスル束が植毛されようとしている。第2の植毛機では、図示していない毛よけ板が矢印Xの方向に第1のブリッスル束を倒すように作動する。
【0034】
第2の植毛機では矢印Xを基準として、まず矢印Xと反対方向に位置する第1の毛分け具12を矢印Yの方向に移動させて、Eの列に並ぶブリッスル群を矢印Yの方向に傾斜させる。次いで、第2の植毛機でDの列に並ぶ中黒の植毛穴に第2のブリッスル束を植毛する。このとき、第2の植毛機に付設された毛よけ板(図示していない)が、C列の中白の丸で示した位置にある第1ブリッスル群を矢印Xの方向に倒すので、C列のブリッスル群とE列のブリッスル群との間が開き、従ってD列に植毛される第2のブリッスル束は第1ブリッスル群を巻き込んで植毛されることがない。こうして第1の毛分け具12の使用により、渡り毛を発生させることなくD列の植毛穴に第2のブリッスル束を植毛することができる。
【0035】
その後、第2の毛分け具の使用により、同様に渡り毛を発生させることなく、B列の植毛穴に第2のブリッスル束を植毛することができる。そのときの操作は次のとおりである。第1の毛分け具12はそのままにして、云いかえるとE列のブリッスル群を傾斜させたままの状態にして、第2の毛分け具13を矢印Yの方向、即ち第1の毛分け具12の移動した方向へ移動させてC列のブリッスル群を矢印Yの方向へ傾斜させる。この状態でB列の植毛穴に第2のブリッスル束を植毛すると、植毛機に付設された毛よけ板がA列のブリッスル群を矢印Xの方向へ倒して植毛するのでC列のブリッスル群とA列のブリッスル群との間の間隔が広げられており、従って渡り毛を生ずることなくB列の植毛穴に第2のブリッスル束を植毛することができる。
【0036】
こうして渡り毛のないブラシを製造することができる。
【0037】
次に実施例を挙げて、この発明方法とそれによって得られたブラシの利点を説明する。
【実施例1】
【0038】
この実施例では、ブリッスル束が図5に示されたように配置された歯ブラシを作った。図5のブラシ柄は、中白の植毛穴が1.6mm、中黒の植毛穴が1.0mmの直径を持つものとされた。
【0039】
第1のブリッスル束としては、太さ0.2mm、長さ10mmのブリッスルを18本集めたものを用い、第2のブリッスル束としては、太さ0.18mm、長さ12mmのブリッスルを8本集めたものを用いた。第1のブリッスル束は、図5において中白の丸で示した位置にある植毛穴に植毛し、第2のブリッスル束は、中黒の丸で示した位置にある植毛穴に植毛しようとした。
【0040】
このような歯ブラシを作るのに、初めB列とD列とにある中黒の植毛穴には植毛しないで、その余のA〜E列にある中白の植毛穴すべてに、第1の植毛機を用いて第1のブリッスル束を植毛した。この植毛は従来の方法により容易に行うことができた。
【0041】
こうして得られたブラシを次に第2の植毛機に送り、図7に示したように、D列の植毛穴のところに第1の毛分け具12を挿入し、B列の植毛穴のところに第2の毛分け具13を挿入した。第1の毛分け具12を矢印Y方向に移動させて、E列のブリッスル群を矢印Yの方向へ傾斜させ、C列のブリッスル群を植毛機に付設された毛よけ板によって矢印Xの方向へ倒して、D列の植毛穴に第2のブリッスル束を植毛した。
【0042】
その後、第1の毛分け具12をそのままにして、第2の毛分け具13を矢印Y方向に移動させてC列のブリッスル群を矢印Y方向に傾斜させ、また植毛機に付設された毛よけ板によりA列のブリッスル群を矢印X方向に倒して、A列のブリッスル群とC列のブリッスル群との間の間隔を広げ、この状態でB列の植毛穴に第2のブリッスル束を植毛した。
【0043】
こうして植毛することにより、渡り毛を全く発生させないで、異なるブリッスル束が入り交じっている歯ブラシを作ることができた。こうして得られた歯ブラシは、中黒の位置にあるブリッスル群が中白の位置にあるブリッスル群よりも僅かに突出しているので、突出したブリッスル群が歯と歯の間の隙間や、歯と歯茎まで届き、口腔内の汚れを効率よく落とすことができる、という利点を持っている。
【実施例2】
【0044】
この実施例では、図6(a)に示したように、ブリッスル束が配置された歯ブラシを作った。図6(a)では中白の植毛穴はすべて直径が1.4mmの大きさとされ、中黒の植毛穴はすべて直径が1.8mmの大きさとされた。
【0045】
第1のブリッスル束としては、太さ0.18mm、長さ10mmのブリッスルを18本集めたものを用い、第2のブリッスル束としては、太さ0.23mm、長さ10mmのブリッスルを19本集めたものを用いた。
【0046】
まず初めに第1の植毛機を使用して図6(a)の中白の植毛穴すべてに第1のブリッスル束を植毛した。この植毛は従来法に従って容易に行うことができた。
【0047】
こうして得られたブラシを次に第2の植毛機に移した。第2の植毛機では図8(a)に示したように、右から2列目と3列目の植毛穴の間に第1の毛分け具12を挿入し、3列目と4列目の植毛穴の間に第2の毛分け具13を挿入した。第1の毛分け具12を矢印Y方向に移動させて、1列目と2列目の第1ブリッスル群を矢印Y方向に傾斜させ、3列目の第1ブリッスル群を植毛機の毛よけ板により矢印X方向に倒して、2列目にある中黒の植毛穴に第2のブリッスル束を植毛した。
【0048】
その後、第1の毛分け具12をそのままにして第2の毛分け具13を矢印Y方向に移動させ、1〜3列目のブリッスル群をすべて矢印Y方向に傾斜させ、毛よけ板によって4列目と5列目のブリッスル群を矢印X方向に倒して、3列目と4列目の中黒の植毛穴に第2のブリッスル束を植毛した。
【0049】
こうして渡り毛を発生させることなく、歯ブラシを製造することができた。こうして得られた歯ブラシは歯ブラシの先端にある大きい植毛穴に太いブリッスルが植毛されているので奥の歯を強く刷掃することができ、従って奥歯を十分に磨くことができる。また、中央部の大きい植毛穴の太いブリッスルと、周り及び中央部の小さい植毛穴の細いブリッスルとが交互に歯茎に当るのでマッサージ効果が向上する。この歯ブラシはこのような利点を持っている。
【実施例3】
【0050】
この実施例では、図6(b)に示したように、ブリッスル束が配置された歯ブラシを作った。図6(b)では、植毛穴がすべて1.6mmの直径を持った同じ大きさのものとされていた。そのうちの中白の植毛穴には太さ0.2mm、長さ10mmのブリッスルが18本集まった第1のブリッスル束が植毛され、中黒の植毛穴には太さ0.2mm、長さ11mmのブリッスルが18本集まった第2のブリッスル束が植毛された。
【0051】
このような歯ブラシを作るのに、初め第1の植毛機を用いて従来法に従い中白の植毛穴にすべて第1のブリッスル束を植毛し、次いで、これを第2の植毛機に送り、中黒の植毛穴に第2のブリッスル束を植毛した。
【0052】
第2の植毛機では、図8(b)に示したように、右から2列目の植毛穴の真上に第1の毛分け具12を挿入し、右から3列目の植毛穴の真上に第2の毛分け具13を挿入し、右から4列目の植毛穴の真上に第3の毛分け具14を挿入した。
【0053】
初めに第1の毛分け具12を矢印Y方向に移動させて、1列目のブリッスル群と2列目の中白のブリッスル群の矢印Y方向側半分を矢印Y方向に傾斜させ、2列目の中白のブリッスル群の矢印X方向側半分と、3列目のブリッスル群を植毛機に付設された毛よけ板によって矢印X方向へ倒して、2列目の中黒の植毛穴に第2のブリッスル束を植毛した。
【0054】
次いで、第1の毛分け具12をそのままにして、第2の毛分け具13を矢印Y方向へ移動させて2列目の第1の毛分け具12で傾斜させられていないブリッスル群と、3列目の中白のブリッスル群の矢印Y方向側半分を矢印Y方向へ傾斜させ、植毛機に付設された毛よけ板によって3列目の中白のブリッスル群の矢印X方向側半分と4列目のブリッスル群を矢印X方向に倒して、3列目の中黒の植毛穴に第2のブリッスル束を植毛した。
【0055】
最後に、第3の毛分け具14を矢印Y方向に移動させて、同様にして4列目の中黒の植毛穴に第2のブリッスル束を植毛した。
【0056】
こうして渡り毛を発生させないで、図8(b)に示したように、ブリッスル束が配列された歯ブラシを得た。この歯ブラシは中黒の位置にある第2のブリッスル束が僅かに突出しているので、第2のブリッスル束により歯茎へのマッサージ効果を高めることができる。
【実施例4】
【0057】
この実施例では、図6(c)に示したようにブリッスル束が植毛されている歯ブラシを作った。図6(c)で用いられたブラシ柄は実施例3で用いたブラシ柄と同じものであった。
【0058】
図6(c)に示した歯ブラシを作るのに、初め第1の植毛機を用いて従来法に従い中白の植毛穴のすべてに第1のブリッスル束を植毛し、次いで第2の植毛機により中黒の植毛穴に第2のブリッスル束を植毛した。
【0059】
第1のブリッスル束としては太さ0.15mm、長さ9mmのブリッスルを32本集めたものを用い、第2のブリッスル束としては太さ0.2mm、長さ10mmのブリッスルを18本集めたものを用いた。
【0060】
第2の植毛機では、図8(c)に示したように、右から2列目の植毛穴に沿って第1の毛分け具12を挿入し、右から3列目の植毛穴に沿って第2の毛分け具13を挿入し、右から4列目の植毛穴に沿って第3の毛分け具14を挿入し、右から5列目の植毛穴の外がわに第4の毛分け具15を付設した。
【0061】
初めに、毛分け具を移動させないで、右から1列目の中黒の植毛穴に第2のブリッスル束を植毛した。次いで、第1の毛分け具12を矢印Y方向に移動させて、1列目のブリッスル群と、2列目の中白のブリッスル群の矢印Y方向側半分を矢印Y方向に傾斜させ、2列目の中白のブリッスル群の矢印X方向側半分と3列目のブリッスル群を植毛機に付設された毛よけ板により矢印X方向に倒して、2列目の中黒の植毛穴に第2のブリッスル束を植毛した。
【0062】
その後は第2の毛分け具13を矢印Y方向に移動させ、同様にして、右から3列目の中黒の植毛穴に第2のブリッスル束を植毛した。次いで、同様にして第3の毛分け具14を矢印Y方向に移動させ、右から4列目の中黒の植毛穴に第2のブリッスル束を植毛した。最後に第4の毛分け具15を矢印Y方向に移動させ、5列目の中黒の植毛穴に第2のブリッスル束を植毛した。こうして渡り毛を生じさせないで、2種類のブリッスル束が混在している歯ブラシを得た。
【0063】
こうして得られた歯ブラシは2種類のブリッスル束が入り交じって混在しているので、それらブリッスルの高さを変えることによって、歯茎へのマッサージ効果を高めることができる。また歯茎と歯との間の隙間や歯と歯との間へ長いブリッスルが入り込み易いので、歯垢除去の効果にすぐれている。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】従来の植毛機の一部断面模型図。
【図2】従来の植毛機の一部断面模型図。
【図3】従来の植毛機の或る段階における一部切欠斜視図。
【図4】従来の植毛機の別の段階における一部切欠斜視図。
【図5】この発明方法を実施する植毛機の一部切欠平面図。
【図6】この発明方法により作られた歯ブラシの一部切欠正面図。
【図7】この発明方法を実施する植毛機の一部切欠平面図。
【図8】この発明方法を示した説明図。
【符号の説明】
【0065】
1 ブラシ柄
2 植毛穴
3 ブリッスル束
4 ブリッスル束の打ち込み具
5 ノズル
6 押し込み針
7 楔
8 植毛機のアーム
9 毛よけ板
10 台
11 固定具
12 第1の毛分け具
13 第2の毛分け具
14 第3の毛分け具
15 第4の毛分け具
A、B、C、D、E 植毛穴の列
P、Q、R、S 植毛穴
X、Y 毛分け具の移動方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛よけ板が付設されている植毛機を使用して、多数の植毛穴が穿設されているブラシ柄に、形状又は数の異なる少なくとも2種類のブリッスル束を入り交じった状態で植毛してブラシを製造する方法において、初めに第1の植毛機により従来法に従って第1のブリッスル束を植毛し、次いで第2の植毛機により第2のブリッスル束を少なくとも2列にわたって植毛するに際し、植毛穴の各列に沿ってそれぞれ1本の毛分け具を挿入し、植毛機に付設されている毛よけ板がブリッスルを倒す方向を基準として、上記方向と反対方向から見て最初の植毛穴に沿う第1の毛分け具を、まず上記方向と反対がわに移動させてブリッスル群を傾斜させ、毛よけ板を作動させてブリッスル群を倒し、こうして第1の毛分け具に沿ったブリッスル群の間を広げて第2のブリッスル束を植毛し、その後第2の毛分け具を第1の毛分け具の移動した方向に移動させ、その後同様に第2の毛分け具に沿った植毛穴に第2のブリッスル束を植毛することを特徴とする、ブラシの製造方法。
【請求項2】
第1の毛分け具に沿った植毛穴に植毛してのち、第1の毛分け具をそのままにして第2の毛分け具を移動させる請求項1に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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