説明

ブレーカおよび電力モニターシステム

【課題】分岐ブレーカ毎の使用電力を測定し、ユーザに提示することを可能とする。
【解決手段】電力線11を流れる電流が電力測定部12によって測定され、電流の測定値から電力が測定される。電力測定部12の測定値が無線通信部13によって、情報処理装置に送信される。測定値を情報処理装置に送信する場合にIDが付加され、IDに基づいてどの分岐ブレーカが送信した測定値かが判別される。電力測定部12および無線通信部13の動作に必要な電源は、電池14から供給される。電池14は、無接点給電装置15によって生成された電力によって充電される。情報処理装置が受信した測定値を処理することによって、現在の消費電力を各分岐ブレーカ毎に求める。求めた各分岐ブレーカの消費電力が表示されることによって、ユーザに対して提示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば家庭、工場等のエリアに設置されている電子機器の消費電力をモニターすることができるブレーカおよび電力モニターシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
最近では、低炭素社会を目指した開発が活発である。そのために、家庭、工場、オフィス等における使用電力を少なくすることが必要とされている。工場、オフィス等では、使用電力の低減が進んでいるが、一般家庭では、使用電力の低減があまり進んでいない。その原因の一つとして、家庭内での電力使用状況がその家庭に住む者に正しく認識されていいないことである。家庭内の電力使用状況が簡単にモニターすることができれば、無駄な電力消費を少なくすることを動機気付けることが可能となる。すなわち、消費電力の「見える」化によってもたらされる効果である。さらに、電力制御システムやデータベースと組み合わせることによって、電力使用量の最適化を図ることも可能となる。
【0003】
従来、ブレーカ内部において、ブレーカ内部の電流値を非接触で測定し、測定値を外部で読み取るブレーカが提案されている(特許文献1参照)。また、ブレーカ外部の配線に測定用センサーを固定させ、ブレーカに流れる電流値を測定する装置が実用化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−280846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のものは、ブレーカ内部を流れている電流値を単に読み取るものであった。したがって、家庭内の電力需要を常にモニターし、最適化するために利用できない問題があった。さらに、ブレーカ外部で電力線に測定用センサーを固定する装置の場合、測定用センサーを固定するための作業が煩雑であるという問題があった。
【0006】
したがって、この発明の目的は、1または複数の電子機器の使用電流を測定することが可能で、測定値を需要者に対して提示することによって、使用電力の低減に寄与することができるブレーカおよび電力モニターシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、この発明は、内部の電力線に流れる電流を測定する電流測定部と、電流測定部の測定値を無線で情報処理装置に対して伝送する無線通信部と、無線通信部に電源を供給する電源部とを複数の分岐ブレーカがそれぞれ備えるブレーカである。
好ましくは、電源部が電池またはキャパシタである。
好ましくは、電源部が無接点電源装置である。
好ましくは、電流測定部が非接触で電流を測定する。
好ましくは、複数の分岐ブレーカがそれぞれ識別子によって識別される。
この発明は、内部の電力線に流れる電流を測定する電流測定部と、電流測定部の測定値を無線伝送するための第1の無線通信部と、無線通信部に電源を供給する電源部とを複数の分岐ブレーカがそれぞれ備えるブレーカと、
第1の無線通信部と通信を行う第2の無線通信部と、
第2の無線通信部を介して受信した測定値を処理する情報処理装置とからなる電力モニターシステムである。
好ましくは、情報処理装置がインターネットと接続されている。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、分岐ブレーカにそれぞれ接続されている電子機器の電力使用状況をモニターすることができ、測定された電力使用量を需要者に提示することによって、家庭等における消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の第1の実施の形態のブロック図である。
【図2】この発明の第1の実施の形態におけるブレーカの一例のブロック図である。
【図3】この発明の第1の実施の形態の説明に使用する略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態について説明する。なお、説明は、以下の順序で行う。
<1.第1の実施の形態>
<2.変形例>
なお、以下に説明する実施の形態は、この発明の好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、この発明の範囲は、以下の説明において、特にこの発明を限定する旨の記載がない限り、これらの実施の形態に限定されないものとする。
【0011】
<1.第1の実施の形態>
「電力モニターシステム」
図1を参照してこの発明による電力モニターシステムについて説明する。電力供給者の発電所にて発電した電力が図示しない送電網、配電網を介して破線で囲んで示すエリア例えば家庭1のブレーカ(分電盤、サーキットブレーカ等とも呼ばれる)2のリミッタ3に接続される。近くの電力トランスから家庭1に対する引き込み線は、実際には、単相3線式が使用されることが多い。但し、図1では、簡単のため、単相2線式が使用されている。リミッタ3は、サービスブレーカとも呼ばれ、電力事業者との間の契約以上の電流が流れると、自動的に遮断され、電力の供給が停止する。
【0012】
リミッタ3に対して主幹ブレーカ4が接続されている。主幹ブレーカ4は、漏電遮断機能を有する。漏電が発生したり、流れる合計の電流が規定値以上の場合に遮断される。主幹ブレーカ4に対して複数(n個)の分岐ブレーカ51,52,・・・,5nが接続されて
いる。分岐ブレーカ51〜5nは、例えば20Aの許容電流以上の電流が流れたり、ショートによって過電流がながれると、遮断される。
【0013】
リミッタ3、主幹ブレーカ4および分岐ブレーカ51〜5nは、過電流が流れるとバイメタルが熱により湾曲して回路が遮断される。過電流により発生する熱によらず、電磁式によって遮断動作を行うものもある。遮断動作が働いた場合、原因となる電子機器の電源スイッチをオフとし、ブレーカのレバーを操作することによって復旧することができる。
【0014】
分岐ブレーカ51〜5nには、例えば家庭1内のコンセント61,62,・・・6nが接続
され、コンセント61〜6nに対して電子機器71〜7nがそれぞれ接続されている。電子機器71〜7nの例は、エアコンディショナー、冷蔵庫、照明器具、洗濯機、テレビジョン受信機等である。
【0015】
実際には、図1の構成のように、分岐ブレーカ51〜5nに対して、それぞれ1個のコンセントが接続されていることは少なく、部屋等のエリアの複数のコンセントまたは電子機器毎に、分岐ブレーカ51〜5nが設けられている。さらに、電子機器71〜7nの種類に対応して分岐ブレーカ51〜5nが設けられている場合もある。例えばエアコンディショナー、照明器具、コンセント等に対応して分岐ブレーカ51〜5nが設けられている。さらに、電子機器に限らず、住宅用電池、車載電池の充電用端子等がブレーカ2に接続されている場合もある。
【0016】
後述するように、分岐ブレーカ51〜5nは、それぞれ当該分岐ブレーカの電力線を流れる電流を測定し、電流の積算値を求め、検出した電圧値と積算電流値とから使用電力を測定する機能を有している。そして、測定値を無線送信する機能を備えている。なお、分岐ブレーカ51〜5nが電流測定機能を有し、測定した電流の値を送信し、情報処理装置側で電力を演算するようにしても良い。
【0017】
測定値を無線で送信するために、アンテナ81〜8nが分岐ブレーカ51〜5nに設けられている。図示の例では、全ての分岐ブレーカが使用電力の測定機能を持つようにしているが、一部の分岐ブレーカのみが電力測定機能を持つようにしても良い。例えば接続される電子機器の消費電力が小さい分岐ブレーカの場合では、電力測定機能を持たないようにしても良い。
【0018】
家庭1内には、分岐ブレーカ51〜5nと無線通信を行う情報処理装置21が備えられている。情報処理装置21としては、家庭で使用されている通常のマイクロコンピュータを使用することができる。すなわち、情報処理装置21は、演算部、メモリ、表示部、入力装置等を備えている。例えばマイクロコンピュータに対して受信した各分岐ブレーカの電力測定値を処理するアプリケーションプログラムがインストールされる。情報処理装置21が無線通信のためのアンテナ22を備えている。さらに、情報処理装置21は、外部のネットワーク例えばインターネット23上の端末機器、サイト等と通信を行うことが可能とされいてる。
【0019】
分岐ブレーカ51〜5nと、情報処理装置21との間の無線通信の媒体として、例えば電波が使用される。通信方式としては、Bluetooth、ZigBeeを用いることができる。Bluetooth方式は、マルチメディア通信に適用され、一対多接続の通信を行うことができる。ZigBeeは、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers) 802.15.4の物理層を使用するものである。IEEE802.15.4は、PAN(Personal Area Network) またはW(Wireless)PANと呼ばれる短距離無線ネットワーク規格の名称である。さらに、無線LAN(Local Area Network)方式を使用しても良い。
【0020】
情報処理装置21は、各分岐ブレーカを流れる電流の測定値(デジタルデータ)を使用して現在の電流値を分岐ブレーカ51〜5n毎に表示する表示画面を生成したり、所定期間例えば1か月の累積電力量を分岐ブレーカ51〜5n毎に計算したり、電気料金を計算する等の処理を行う。この場合、測定値が数秒程度の適当な間隔でサンプリングされて処理される。或いは、分岐ブレーカ51〜5nがそれぞれ送信する測定値がサンプリングされた値であっても良い。情報処理装置21の処理結果が情報処理装置21が備える表示装置の画面に表示される。処理結果を家庭のテレビジョン受信装置の表示部に表示しても良い。ユーザ(家庭1の住人)は、表示を見て電力の使用状況を知ることができる。
【0021】
情報処理装置21がインターネット23上で、所定のURL(Uniform Resource Locator)を有する。したがって、情報処理装置21の処理結果は、インターネット23を通じてユーザの端末装置から見ることが可能とされている。さらに、分岐ブレーカ51〜5nがショートによる過電流によって遮断されるような異常が発生した場合、情報処理装置21が異常の発生を警告する警報を生成し、インターネット23を通じてユーザの端末に知らせるようになされている。
【0022】
「分岐ブレーカ」
図2を参照して分岐ブレーカ51の一例について説明する。なお、他の分岐ブレーカ52〜5nも分岐ブレーカ51と同様の構成を有する。図2において省略されているが、各分岐
ブレーカは、従来の装置と同様に、過電流が流れると回路が遮断されるように、構成されている。さらに、遮断動作が働いた場合、原因となる電子機器の電源スイッチをオフとし、ブレーカのレバーを操作することによって復旧することができるようになされている。分岐ブレーカ51内の電力線11を流れる電流が電力測定部12によって測定され、電流
の測定値から電力が測定される。無接触方式の構成例えばリング状のコイルの中を電力線11が通り、リング状コイルに電磁誘起される電流から電力線11を流れる電流を測定する。測定された電流の積算値と、電圧値とから電力を測定する構成を使用できる。電圧値としては、規定の値または測定された値が使用される。さらに、電力線11から発生する磁束を検出するセンサを使用して電流を測定するようにしても良い。
【0023】
電力測定部12の測定値が無線通信部13に供給される。無線通信部13は、情報処理装置21と双方向無線通信を行う。無線通信部13の不揮発性メモリには、分岐ブレーカ51の固有の識別子(以下、IDと適宜称する)が記憶されている。測定値を情報処理装
置21に対して送信する場合には、IDが付加される。図3に示すように、分岐ブレーカ51〜5nのそれぞれに対して固有のID1〜IDnが割り当てられている。例えばID1〜
IDnは、無線通信方式において、端末を識別するためのIDを兼ねている。したがって
、情報処理装置21は、受信データ中のIDに基づいてどの分岐ブレーカが送信した測定値かを判別することができる。
【0024】
例えばBluetooth方式では、情報処理装置21がマスタ(親機)となり、情報処理装置21がその周囲10m以内に同時接続可能な最大7台のスレーブ(子機)(分岐ブレーカ51〜5nのそれぞれの無線通信部)と通信を行うことができる。IEEE802.15.4の方式を使用する場合には、情報処理装置21と分岐ブレーカ51〜5nの無線通信部13との間でのペアリングが最初になされる。
【0025】
電力測定部12および無線通信部13の動作に必要な電源は、電池14から供給される。電池14は、例えばリチウムイオン二次電池である。電池14は、無接点(無接触)給電装置15によって生成された電力によって充電される。無接点給電装置15に限らず、再生可能なエネルギーを使用した発電により発生した電力によって電池14を充電しても良い。再生可能エネルギーを利用した発電としては、太陽光発電、風力発電、バイオマス発電等である。
【0026】
無接点給電装置15の一例として電磁誘導を利用したものを使用することができる。すなわち、送電装置に設けられた1次コイルと、受電装置に設けられた2次コイルとを電磁結合させ、トランスを構成する。1次コイルに対して所定周波数の交流電圧を供給する。2次コイルに誘起された交流電圧が整流されることによって、直流電力が生成される。直流電力が制御部16に供給される。
【0027】
制御部16は、無接点給電装置15からの直流電力によって電池14を充電するために必要な制御を行う。例えばリチウムイオン二次電池の場合には、CV(定電圧)/CI(定電流)方式の充電を行う。電池14が使用可能な電圧範囲にある場合には、充電動作がなされない。さらに、無接点給電装置15は、電力線11からの誘起電力を送電電力として使用しても良い。さらに、無接点給電装置に限らず、電力線11を流れる電流を分岐させて電源を形成しても良い。
【0028】
上述したこの発明の第1の実施の形態においては、ブレーカ2の分岐ブレーカ51〜5nがそれぞれ流れる電流を測定することによって、使用電力が分岐ブレーカ毎にリアルタイムに測定される。測定された電力を必要に応じてサンプリングした測定が無線通信によって、情報処理装置21に対して送信される。情報処理装置21が受信した測定値を処理することによって、現在の消費電力が各分岐ブレーカ毎に求められる。
【0029】
求めた各分岐ブレーカの消費電力が情報処理装置21の表示部等に表示されることによって、ユーザに対して提示される。ユーザは、現在の各分岐ブレーカの消費電力を見ることによって、実際の消費電力に関する情報を得ることができる。その結果、節電に努めたり、ブレーカが遮断するおそれを事前に知ってブレーカの遮断を予防するための対策を行うことができる。
【0030】
<2.変形例>
以上、この発明の一実施の形態について具体的に説明したが、この発明、上述した一実
施の形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば外部との接続のためにインターネットに限らず、携帯電話網を使用しても良い。さらに、分岐ブレーカの電源としては、電池に代えて、キャパシタを使用しても良い。さらに、家庭以外にビルのオフィス、工場等の電力モニタ−に対しても適用できる。
【符号の説明】
【0031】
1・・・家庭
2・・・ブレーカ
3・・・リミッタ
4・・・主幹ブレーカ
51〜5n・・・分岐ブレーカ
71〜7n・・・電子機器
11・・・電力線
12・・・電力測定部
13・・・無線通信部
14・・・電池
15・・・無接点給電装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部の電力線に流れる電流を測定する電流測定部と、
上記電流測定部の測定値を無線で情報処理装置に対して伝送する無線通信部と、
上記無線通信部に電源を供給する電源部とを複数の分岐ブレーカがそれぞれ備えるブレーカ。
【請求項2】
上記電源部が電池またはキャパシタである請求項1記載のブレーカ。
【請求項3】
上記電源部が無接点電源装置である請求項1または2記載のブレーカ。
【請求項4】
上記電流測定部が非接触で電流を測定する請求項1、2または3記載のブレーカ。
【請求項5】
上記複数の分岐ブレーカがそれぞれ識別子によって識別される請求項1、2、3または4記載のブレーカ。
【請求項6】
内部の電力線に流れる電流を測定する電流測定部と、
上記電流測定部の測定値を無線伝送するための第1の無線通信部と、
上記無線通信部に電源を供給する電源部とを複数の分岐ブレーカがそれぞれ備えるブレーカと、
上記第1の無線通信部と通信を行う第2の無線通信部と、
上記第2の無線通信部を介して受信した上記測定値を処理する情報処理装置とからなる電力モニターシステム。
【請求項7】
上記情報処理装置がインターネットと接続されている請求項6記載の電力モニターシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−151979(P2011−151979A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11739(P2010−11739)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】