説明

ブレーキブースタ装置

【課題】シンプルな機械的な構造により緊急制動が不要な場合にブレーキアシスト機能が動作することを抑制しロック部の摩耗を軽減できるブレーキブースタ装置を提供する。
【解決手段】エアバルブ34の表面に入力ロッド22の軸方向に移動自在な円環200を配置する。円環200はパワーピストン21に対する入力ロッド22の相対変位速度が所定速度以上の場合、エアバルブ34と円環200が一緒に移動し、ロック部材33とスライドバルブ35との係合を外してロック状態を解放する。一方、相対変位速度が所定速度未満の場合、つまり入力ロッド22がゆっくりと動く場合、円環200がロック部材33の受圧面71に接触したときに図中矢印反A方向に退避することを許容してロック状態を維持させる。つまり、必要以上のロック解除を抑制してロック部材33とスライドバルブ35の係合部における摩耗を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制動を補助するブレーキブースタの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ブレーキには、一般に運転者のブレーキ操作力を増大させる機能を有するブレーキブースタが搭載されている。このようなブレーキブースタは、内燃機関の吸気通路内で発生する負圧をブレーキブースタなどに設けた蓄圧機構に蓄え、ブレーキ操作時にはこの蓄圧機構の負圧を利用することでブレーキ操作力の増大を行っている。ブレーキブースタのブレーキアシスト機構は、例えば、ドライバによる緊急制動時において、ブレーキの操作速度は速いものの強く踏めず小さな制動力しか出せないような場合であっても、制動力を確保できるような構造を有する。このようなブレーキアシスト機構においては、入力ロッドの動きによりロック部がはずれることで作動が行われる。このようにブレーキアシスト機構はブレーキペダルの操作速度に反応して作動するが、緊急制動時以外であっても、ドライバが停車時に強くブレーキペダルを踏んだ場合(深く踏み込んだ場合)やブレーキ操作を何度か繰り返した場合等、ある値以上の入力が加わった場合にも作動してしまうことがある。このように緊急制動時以外にブレーキアシスト機構が作動する回数が多くなると、ブレーキアシスト機構の作動を規制しているロック部が摺動により摩耗し、ブレーキアシスト機構が緊急制動時以外の通常の制動時においても作動しやすくなってしまうことがある。これに対して、車両が停止状態であったり、低速走行時など通常の制動制御で十分停止できる場合には、蓄圧機構への大気導入を阻止する遮蔽部材を駆動してブレーキアシスト機能が動作することを抑制するブレーキブースタ制御装置がある(例えば、特許文献1参照)。この場合、緊急制動が不要な場合にブレーキアシスト機能が動作することを抑制できるのでロック部の摩耗も軽減できる。
【特許文献1】特開2007−210570号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したブレーキブースタ制御装置は大気導入を阻止する遮蔽部材を車両の状態に応じて駆動する必要があるので、車両状態を示す情報を取得するセンサや取得した情報を処理する処理回路、また遮蔽部材の駆動機構などが必要になる。そのため装置構成が大掛かりになったり、コスト上昇を招く場合もあった。したがって、シンプルな機械的な構造により緊急制動が不要な場合にブレーキアシスト機能が動作することを抑制しロック部の摩耗を軽減できる構造が求められている。
【0004】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、シンプルな機械的な構造により緊急制動が不要な場合にブレーキアシスト機能が動作することを抑制しロック機構の摩耗を軽減できるブレーキブースタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、車両のブレーキペダルの操作を補助可能なブレーキブースタ装置であって、ハウジング内を負圧導入可能な定圧室と大気導入可能な変圧室とに区画するとともに、前記ハウジング内にて変位可能な隔壁部材と、前記隔壁部材に支持される一方、前記変圧室と前記定圧室との差圧によって前後進可能であり、その前進時に制動装置の出力を高めるパワーピストンと、前記ブレーキペダルの操作に基づいて軸方向に進退すると共に、前記変圧室へ大気の導入が可能となるように大気導入部と前記変圧室とを連通する通路を開放させる弁機構を作動させる入力ロッドと、ロック解放時に前記弁機構が所定の開弁状態になることを許容するロック機構と、前記入力ロッドの軸方向に移動自在に設けられて前記ロック機構を操作する部材であって、前記パワーピストンに対する前記入力ロッドの軸方向の相対変位速度が所定速度以下の場合に前記ロック機構のロック状態を維持させ、前記相対変位速度が所定速度を超えた場合に前記ロック機構のロック状態を解放させる移動部材と、を含むことを特徴とする。
【0006】
移動部材は、入力ロッドの動作状態に応じて移動してロック機構のロック状態とロック解放状態とを切り替えるように動作すればよく、例えば入力ロッド上を摺動するように配置されてもよいし、入力ロッドの動作と連動して動作する部材上、または同等の部材上で入力ロッドと同軸に移動するように配置されてもよい。移動部材は、入力ロッドやそれと同等の部材の軸上を移動する場合、例えば円環形状とすることができる。相対変位速度の所定速度は、ドライバが通常制動を行うためにブレーキペダルを踏み込んだときのパワーピストンに対する入力ロッドの相対変位速度であり予め試験などにより定めておくことができる。そして、相対変位速度が所定速度を超える場合、つまり、通常制動より早いブレーキペダルの操作が行われる緊急制動のときに移動部材がロック機構に作用してロック状態が解放され弁機構が所定開放状態まで開放される。弁機構は所定の開弁状態まで開放されると大気導入部から変圧室に通常時より多くの大気が導入され、パワーピストンの大きな推進力が得られて制動装置の出力を高めるアシスト動作を行う。逆に、相対変位速度が所定速度以下の場合、つまり、通常制動または、それよりゆっくりとブレーキペダルの操作が行われた場合には移動部材はロック機構に作用せずロック状態が維持され弁機構が所定開放状態まで開放されない。つまり、緊急制動以外のときにはロック機構は動作せず、ロック機構の可動部の摩耗を低減できる。なお、この場合、弁機構は閉弁状態かまたは、通常制動に十分な程度の僅かな開弁状態となり負圧による大きなブレーキアシスト動作は行われない。
【0007】
この態様によれば、パワーピストンに対する入力ロッドの相対変位速度に応じて移動部材がロック機構の解放または維持を行うので、相対変位速度がゆっくりとなるブレーキペダルのゆっくりとした操作のときにはロック機構の解放は起こらずロック機構の摩耗軽減をシンプルな機械構造でできる。
【0008】
また、上記態様において、前記ロック機構は、前記移動部材との接触力が所定値以上の場合にロック状態を解放する解放部材を含み、前記移動部材は、前記入力ロッドの前記相対変位速度が前記所定速度を超えた場合に前記入力ロッドの前進に追従し移動して前記解放部材に所定値以上の接触力を与えて解放し、前記相対変位速度が前記所定速度以下の場合に前記入力ロッドの軸方向後方に退避して前記解放部材に所定値以上の接触力が与えられることを回避するようにしてもよい。移動部材は、相対変位速度が所定速度を超える場合には、入力ロッドに追従して移動して解放部材に接触して解放動作を行う。一方、相対変位速度が所定速度以下の場合、つまり入力ロッドの移動がゆっくりの場合、移動部材が入力ロッドに追従して移動して解放部材に接触しても当該移動部材への接触力が小さいので、解放動作を行うことなく反力により押し戻される。この態様によれば、パワーピストンに対する入力ロッドの相対変位速度に応じて移動部材の挙動が決まり、ロック機構の解放か非解放が決まるので、シンプルな機械的構造でロック機構の摩耗軽減ができる。
【0009】
また、上記態様において、前記移動部材は、前記入力ロッドの軸方向に沿って配置されて当該入力ロッドの移動と連動して移動する可撓部材によって支持されてもよい。パワーピストンに対する入力ロッドの相対変位速度が所定速度以上の場合、つまり、入力ロッドが早く動く場合、可撓部材は瞬間的には撓みにくく移動部材をそのまま入力ロッドの移動方向に押す。その結果、移動部材はロック機構に接触力を作用させてロック状態を解放する。一方、パワーピストンに対する入力ロッドの相対変位速度が所定速度未満の場合、つまり、入力ロッドがゆっくりと動く場合、可撓部材は徐々に撓み、移動部材がロック機構に接触したときに移動方向とは逆方向に退避することを許容する。その結果、ロック機構が解放される程の接触力を作用させることなくロック状態を維持する。可撓部材は、例えば、所定の剛性を有するゴムやウレタンなどの樹脂部材を採用することができる。なお、移動部材は少なくとも可撓部材によって支持されればよい。この構成によれば、単純な構造の移動部材と可撓部材の組合せによりロック機構を解放/非解放にする機構を構成することができる。なお、可撓部材の可撓性能は予め試験などにより定めておくことができる。
【0010】
また、上記態様において、前記移動部材は、前記入力ロッドの軸周りを回転しながら前記軸方向に進退する回転機構を含んでもよい。回転機構は、入力ロッドや入力ロッドと連動して動く軸の外周面に例えば螺旋溝を形成して、その螺旋溝に移動部材の少なくとも一部を係合させることで構成することができる。この場合、パワーピストンに対する入力ロッドの相対変位速度が所定速度を超える場合、つまり早い場合、螺旋溝と係合部分との接触摩擦により移動部材の螺旋溝に沿う回転が抑制され入力ロッドの移動に追従して移動部材が移動する。その結果、移動部材は入力ロッドに追従して移動してロック機構に接触してロック機構を解放状態に移行させる。一方、パワーピストンに対する入力ロッドの相対変位速度が所定速度未満の場合、つまりゆっくりの場合、移動部材がロック機構に当接すると螺旋溝に沿って移動部材の係合部分が移動し、入力ロッドの移動方向とは逆方向に移動する。その結果、ロック機構のロック状態を解放する程の接触力を及ぼすことがなくロック状態を維持する。この構成によれば、相対変位速度の大きさにより移動部材の回転動作すなわち進退動作ができるので、単純な構造の回転構造により確実にロック機構の解放/非解放動作を実現できる。なお、回転機構の回転性能は予め試験などにより定めておくことができる。
【0011】
また、上記態様において、前記移動部材は、前記入力ロッドと突起部材を介して係合し、当該突起部材は前記入力ロッドの前記相対変位速度に応じて係合位置と非係合位置との間を移動するようにしてもよい。突起部材は例えば、可撓部材によって支持することが可能である。そして、パワーピストンに対する入力ロッドの相対変位速度が所定速度以上の場合、つまり、入力ロッドが早く動く場合、可撓部材は瞬間的には撓みにくく突起部材を突出状態のまま入力ロッドの移動方向に移動させる。つまり、移動部材を入力ロッドに係合させたまま移動させて、ロック機構に接触してロック機構を解放状態に移行させる。一方、パワーピストンに対する入力ロッドの相対変位速度が所定速度未満の場合、つまり、入力ロッドがゆっくりと動く場合、可撓部材は徐々に撓み、突起部材が退避して移動部材と入力ロッドとの係合を解除する。つまり、移動部材の拘束が解放され、移動部材はロック機構が解放される程の接触力を作用させることなく移動してロック状態を維持する。この構成によれば、相対変位速度の大きさにより突起部材の係合/非係合ができるので、単純な構造の突起部材と移動部材の組合せにより確実にロック機構の解放/非解放動作を実現できる。なお、突起部材の退避動作を実現する可撓部材の可撓性は予め試験などにより定めておくことができる。
【0012】
また、上記態様において、前記移動部材は、前記入力ロッドと摩擦部材を介して接触していてもよい。摩擦部材は例えばゴムなどの樹脂部材で構成することができる。この場合、パワーピストンに対する入力ロッドの相対変位速度が所定速度以上の場合、移動部材は入力ロッド上を摺動することなく入力ロッドと共に移動する。その結果、移動部材はロック機構に接触力を作用させてロック状態を解放する。一方、パワーピストンに対する入力ロッドの相対変位速度が所定速度未満の場合、つまり、入力ロッドがゆっくりと動く場合、移動部材がロック機構に接触したときに摺動して退避する。その結果、移動部材はロック機構が解放される程の接触力を作用させることなくロック状態を維持する。この構成によれば、相対変位速度の大きさにより移動部材の進退動作ができるので、単純な摩擦部材と移動部材の組合せにより確実にロック機構の解放/非解放動作を実現できる。なお、摩擦部材の摩擦係数は予め試験などにより定めておくことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のブレーキブースタ装置によれば、シンプルな機械的な構造により緊急制動が不要な場合にブレーキアシスト機能が動作することを抑制しロック機構の摩耗を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)を、図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係るブレーキブースタ装置の概略を示す全体構成図である。図2は、図1のコントロールバルブ部を示す部分拡大断面図である。
【0016】
図1に示すように、ブレーキブースタ装置1は、エンジンの負圧を利用する真空式のブレーキブースタ2を制御するものである。ブレーキブースタ装置1は、制動装置のマスタシリンダ(図示略)とブレーキペダル3との間に配設されるブレーキブースタ2を含む。
【0017】
ブレーキブースタ2は、圧力室を構成するハウジング10と、ハウジング10内の圧力を調整するコントロールバルブ部20とを備える。ハウジング10は、その内部が隔壁部材としての可撓性のあるダイヤフラム11により定圧室12と変圧室13とに仕切られている。定圧室12はチェック弁14を介して図示しないエンジンの吸気管につながる配管に連通している。このため、エンジンが始動されると、その配管を通じて定圧室12内に負圧が導入される。定圧室12内には、また、ブレーキペダル3の踏み込み前の状態に復帰させるためのスプリング15が配設されている。
【0018】
コントロールバルブ部20は、ダイヤフラム11が固定されたパワーピストン21、ブレーキペダル3に接続された入力ロッド22、およびマスタシリンダのピストンに連結されるプッシュロッド23等を含む。運転者によるブレーキペダル3の踏力は、入力ロッド22、パワーピストン21、プッシュロッド23等を介してマスタシリンダのピストンに伝達され、制動装置の出力が高められる。
【0019】
図2に示すように、パワーピストン21は、段付円筒状の本体を有し、ハウジング10の後端部に気密的かつ前後方向へ移動可能に組み付けられており、上記スプリング15(図1参照)によって後方、つまりブレーキペダル3側(図の矢印反A方向)に付勢されている。パワーピストン21は、その前端部の外周面がダイヤフラム11の中央部に組み付けられている。ハウジング10の後端部内周面にはゴムからなるシール部材25が固定され、このシール部材25によりパワーピストン21が気密かつ摺動可能に支持されている。
【0020】
このパワーピストン21は、その前半部に2重管構造を備えており、その前端部には、上述したプッシュロッド23が取り付けられている。パワーピストン21の内部には、前方からリアクションディスク31、ガイド部材32、ロック部材33、エアバルブ34、スライドバルブ35、弁座形成部材36、ばね受け部材37、フィルタ38等が配設されている。パワーピストン21の前半部の2重管構造の部分には、そのパワーピストン21の内部と定圧室12とを連通させる連通孔55が形成されており、その2重管構造の内側円筒部の後端に第1弁部を構成する弁形成部57が形成されている。また、パワーピストン21の側部の数カ所には、その内部と変圧室13とを連通させるための連通孔56が形成されている。さらに、パワーピストン21には、位置決め部材43が挿通されている。この位置決め部材43は、パワーピストン21が軸線方向に変位するときの限界位置を規制する。位置決め部材43は、ハウジング10の後端部のシール部材25に突き当たって係止されると、その位置でパワーピストン21の後方への変位を規制する。また、入力ロッド22が矢印反A方向に移動したときに円環200に接触して円環200を矢印A方向に押し戻して初期位置に復帰させる。
【0021】
また、ハウジング10の後端には、パワーピストン21の摺動部を外側から覆うようにして保護するベローズ39が設けられている。このベローズ39は、可撓性部材からなり、その前端がハウジング10の後端に装着され、後端が入力ロッド22の外周面の所定位置に嵌合するように装着されている。ベローズ39の後端面の複数箇所には通気孔40が形成されており、パワーピストン21の後端開口部(「大気導入部」に該当する)から内部への大気の導入を可能にしている。
【0022】
リアクションディスク31は、ゴムからなる円板状の部材であり、プッシュロッド23の後端部に設けられた円筒状の収容部に収容された状態でパワーピストン21の前端面に当接している。このリアクションディスク31と入力ロッド22との間には、当接部材41およびエアバルブ34が軸線方向に支持されつつ介装されている。ガイド部材32は、段付円筒状をなし、パワーピストン21の先端開口部とリアクションディスク31との間に挟まれるように配設されている。ガイド部材32は、その後端部にてエアバルブ34の先端部を軸支している。
【0023】
ロック部材33は、ガータスプリング42を介してガイド部材32の外周面に回動可能に取り付けられている。本実施形態において、このロック部材33は、径方向に対向配置された一対の係止部材からなり、それぞれが、ガイド部材32の外周面に突設された回動支点を中心に回動可能となっている。このロック部材33の後端部には、半径方向内向きに突出したフック部61が形成されている。このフック部61は、後述するロック機構を構成する。
【0024】
エアバルブ34は、その後半部が筒状に形成されており、入力ロッド22の先端部が挿通されて加締め接合されている。入力ロッド22に伝達された力は、その球状の先端部を介してエアバルブ34に伝達されてその前方への推進力となり、さらに当接部材41およびリアクションディスク31を介してプッシュロッド23に伝達される。エアバルブ34の後端は、後述する弁座形成部材36の弁座46に着脱可能となっており、変圧室13へ大気を導入又は遮断する弁部を構成する。また、エアバルブ34の前半部には、入力ロッド22の軸方向に移動自在に設けられてロック部材33を含んで構成されるロック機構を操作する円環200が配置されている。この円環200は、パワーピストン21に対する入力ロッド22の軸方向の相対変位速度が所定速度以下の場合にロック機構のロック状態を維持させ、相対変位速度が所定速度を超えた場合にロック機構のロック状態を解放させる機能を有する。円環200の構造および動作の詳細は後述する。
【0025】
スライドバルブ35は、パワーピストン21と入力ロッド22との間に同軸状かつ前後進可能に配設されている。スライドバルブ35の後端部にはシールリング50が嵌着されており、パワーピストン21に対して気密に摺動可能に構成されている。また、スライドバルブ35は、パワーピストン21との間に介装されたスプリング51により後方に付勢されている。スライドバルブ35の後端は、後述する弁座形成部材36の弁座45に着脱可能となっており、弁形成部57よりも後方に変位することで弁座形成部材36を押圧してより後方に変位させることができる。スライドバルブ35の前端部には、半径方向外向きに突出したフック部62が形成されている。このフック部62は、上述したロック部材33のフック部61とともに後述するロック機構を構成する。なお、スライドバルブ35の後方への移動限界も位置決め部材43によって規制されている。
【0026】
弁座形成部材36は、円筒状の本体の前端部に内方に延出したフランジ部65を有し、後端部にリング状の支持部材66が一体的に形成されている。フランジ部65の前面にはゴムからなるリング状の弁座45(第1弁座)が貼着され、支持部材66の前面には同じくゴムからなるリング状の弁座46(第2弁座)が貼着されている。つまり、弁座45、46は、その前後に所定の間隔をあけて配置されており、それぞれ弁形成部57またはスライドバルブ35の後端が着脱する第1弁部、エアバルブ34の後端が着脱する第2弁部を構成する。これら第1弁部および第2弁部により、弁機構が構成されている。
【0027】
ばね受け部材37は、パワーピストン21の後端部近傍の内周に圧入されたリング状の部材からなる。ばね受け部材37と弁座形成部材36との間には、弁座形成部材36を前方に付勢するスプリング52が介装されている。また、ばね受け部材37と弁座形成部材36との間には、前後方向に伸縮可能なゴムからなるシール部材48が配置されており、パワーピストン21の後端から導入された大気が連通孔55を介して定圧室12へ漏洩するのを防止している。
【0028】
フィルタ38は、パワーピストン21の後端開口部に配設されて外部からのゴミ等の流入を防止している。ベローズ39の通気孔40から導入された大気は、このフィルタ38を通ってパワーピストン21の内部に流入する。フィルタ38の中央には入力ロッド22が内挿されており、その前面側には板状のばね座49が配設されている。ばね座49とばね受け部材37との間には、ばね座49を介して入力ロッド22およびフィルタ38を後方に付勢するスプリング53が介装されている。
【0029】
図3は、アシスト機構を構成するロック機構の構成および動作を表す部分拡大断面図である。上述のように、ロック部材33の後端部にはフック部61が形成され、スライドバルブ35の前端部にはフック部62が形成されている。また、ロック部材33の内面には、フック部61と同方向に延出するとともに軸線方向に対して傾斜した受圧面71が形成されている。一方、この受圧面71に対向するエアバルブ34の位置には、軸線方向に対して傾斜した押圧面72が形成された円環200がエアバルブ34、つまり入力ロッド22の軸方向に移動自在に設けられている。スライドバルブ35のフック部62は、ロック部材33のフック部61に対して係合離脱可能であり、円環200の押圧面72は、ロック部材33の受圧面71に係合離脱可能である。
【0030】
ここで、入力ロッド22のパワーピストン21に対する前進量が所定値以下の場合には、押圧面72が受圧面71に係合しないため、図示のように、フック部62がフック部61との係合状態を保持する。その結果、スライドバルブ35が図2に示した所定の前方位置に保持される。一方、入力ロッド22のパワーピストン21に対する前進量が所定値より大きい場合には、図中矢印にて示すように円環200がエアバルブ34と共に図中矢印A方向に移動して、押圧面72が受圧面71の方向に相対変位する可能性がある。本実施形態の場合、円環200がエアバルブ34と共に図中矢印A方向に移動するのは、パワーピストン21に対する入力ロッド22の軸方向の相対変位速度が所定速度を超えた場合であり、この場合、円環200の押圧面72が受圧面71に係合してこれを押圧する。その結果、ロック部材33がガータスプリング42の付勢力に抗してその前端部を支点に回動して外側に開き、フック部62とフック部61との係合状態が解除される。これにより、スライドバルブ35がロック部材33から開放され、スプリング51の付勢力によって後方に変位させられる(図4参照)。その結果、スライドバルブ35が閉弁状態となるとともに、エアバルブ34の開度が拡大される。この詳細については後述する。一方、パワーピストン21に対する入力ロッド22の軸方向の相対変位速度が所定速度以下の場合、円環200はエアバルブ34の表面を図中矢印反A方向に摺動する。この場合、円環200の押圧面72は受圧面71に係合するものの受圧面71によって押し返される。その結果、ロック部材33はスライドバルブ35とのロック状態を維持される。その結果、ロック部材33がガータスプリング42の付勢力により姿勢を維持させられて外側に開きくことはない。そして、スライドバルブ35は図2に示した所定の前方位置に保持される。
【0031】
次に、ブレーキブースタの動作について説明する。図4は、アシスト機構が作動したときのブレーキブースタの作動状態を示す断面図である。なお、既に説明した図2は、アシスト機構が作動していない通常のブレーキ時のブレーキブースタの作動状態を示している。
【0032】
ブレーキ操作が行われていない状態(図示せず)では、定圧室12と変圧室13とは互いに連通した状態で負圧を維持している。この状態で、操作者がブレーキペダル3を踏むと、図2に示すように、ブレーキペダル3に連結された入力ロッド22が矢印A方向(図中左方向)に向かって移動する。
【0033】
通常のブレーキ時においては、図2に示すように、入力ロッド22とパワーピストン21との相対変位、つまりパワーピストン21に対する入力ロッド22の前方への移動量が小さい。このため、エアバルブ34に装着された円環200の押圧面72はロック部材33の受圧面71に係合せず、スライドバルブ35はロック部材33によって軸線方向の動きが規制され、図示の所定位置に保持される。したがって、アシスト機構が作動しない一般的なブレーキ作動が得られる。つまり、弁形成部57が弁座45に着座し、第1弁部が閉弁状態となって定圧室12と変圧室13との連通を遮断する一方、エアバルブ34が開弁状態となるため、変圧室13に大気が導入される。その結果、定圧室12と変圧室13との差圧が発生し、それによりパワーピストン21がブレーキペダル3の踏み込みを補助する方向に動作する。その結果、運転者によるブレーキペダル3の操作がある程度アシストされる。なお、この場合、エアバルブ34を閉弁状態として、完全にブレーキペダル3の操作力(入力ロッド22の推力)のみで制動機構を動作させるようにしてもよい。
【0034】
一方、緊急制動時には、図4に示すように、入力ロッド22とパワーピストン21との相対変位速度が所定速度を超えるとともに、相対変位が大きくなる。つまりパワーピストン21に対する入力ロッド22の前方への移動量が所定値より大きくなる。このときには、エアバルブ34に配置された円環200の押圧面72がロック部材33の受圧面71に係合し、ロック部材33がガータスプリング42の付勢力に抗して半径方向外方に押し広げられる。これにより、スライドバルブ35のフック部62とロック部材33のフック部61との係合状態が解除され、スライドバルブ35がスプリング51の付勢力によって所定量後方に移動させられる。
【0035】
このとき、スライドバルブ35の後端が弁座45に着座して定圧室12と変圧室13との連通を遮断する。また、エアバルブ34が入力ロッド22とともに前方へ移動する一方、スライドバルブ35が弁座形成部材36を後方へ押圧するため、エアバルブ34の後端と弁座46とが急速に離間して大きく開弁する。その結果、通常のブレーキ時より大きな推進力を得ることができ、ブレーキペダル3の操作がさらにアシストされる。
【0036】
この状態からブレーキペダル3が戻されると、エアバルブ34は、位置決め部材43とともに後方に移動する。位置決め部材43がシール部材25に当接すると、スライドバルブ35の後方への移動が規制される。そして、スプリング15(図1参照)の付勢力によりパワーピストン21が所定位置に戻ると、ロック部材33がガータスプリング42の付勢力により内方に押されてロック部材33のフック部61がスライドバルブ35のフック部62に再び係合する。
【0037】
前述したように、緊急制動時には、パワーピストン21に対する入力ロッド22の前方への移動量が所定値より大きくなる。その結果、エアバルブ34の後端と弁座46とが急速に離間して大きく開弁する。一方、ブレーキペダル3がゆっくりと強く(深いストローク)踏み込まれた場合もパワーピストン21に対する入力ロッド22の前方への移動量が所定値より大きくなる。そこで、本実施形態ではエアバルブ34の表面を軸方向に移動可能な円環200を設けている。前述したように、この円環200はパワーピストン21に対する入力ロッド22の軸方向の相対変位速度が所定速度以下の場合、つまり、ブレーキペダル3がゆっくりと強く踏み込まれるような場合には、エアバルブ34の表面を摺動する。そして、ロック部材33に所定値以上の接触力を付与しないようにしてロック機構のロック状態を維持させる。一方、パワーピストン21に対する入力ロッド22の軸方向の相対変位速度が所定速度を超えた場合、つまりブレーキペダル3が素早く強く踏み込まれる緊急制動野場合には、円環200はエアバルブ34の表面に静止したままエアバルブ34と共に移動する。そして、ロック部材33に所定値以上の接触力を付与してロック機構のロック状態を解除する。
【0038】
図5〜図7は、パワーピストン21に対する入力ロッド22の軸方向の相対変位速度に応じて円環200をエアバルブ34上で摺動または静止させるための構造例を説明する説明図である。図5〜図7は、ロック部材33、スライドバルブ35、円環200の周辺の拡大図であり、中心線Bを境に上側がブレーキペダル3を素早く強く踏み込んだ緊急制動時の挙動であり、下側がブレーキペダル3をゆっくりと深く踏み込んだ通常制動時の挙動を示している。
【0039】
図5の例において、円環200はエアバルブ34の軸上に摺動自在に配置されるとともに、ゴムやウレタンなどの樹脂部材からなる可撓部材202によりエアバルブ34の肩部204により支持されている。
【0040】
パワーピストン21に対する入力ロッド22の相対変位速度が所定速度以上の場合、つまり、緊急制動時のように入力ロッド22が早く動く場合、図5の上側に示すように可撓部材202は瞬間的には撓みにくく円環200をそのまま入力ロッド22の移動方向に押す。つまり、エアバルブ34と円環200が一緒に移動する。そして、円環200はロック部材33の受圧面71に接触力を作用させてロック部材33とスライドバルブ35との係合を外してロック状態を解放する。その結果、スライドバルブ35が閉弁状態となるとともに、エアバルブ34の開度が拡大されて大気が変圧室13に大量に導入されてブレーキブースタ2において通常制動時より大きなアシスト力を発生する。
【0041】
一方、パワーピストン21に対する入力ロッド22の相対変位速度が所定速度未満の場合、つまり、通常制動時のように入力ロッド22がゆっくりと動く場合、可撓部材202にはゆっくりと力が加わるので可撓部材202は徐々に撓む。その結果、円環200がロック部材33の受圧面71に接触したときに図中矢印C方向に退避することを許容する。つまり、円環200はロック部材33とスライドバルブ35のロック状態を解放する程の接触力を作用させることなく、そのロック状態を維持させる。
【0042】
このように、可撓部材202によって支持された移動自在な円環200をエアバルブ34に装着するシンプルな機械的構造により、ロック機構を解放/非解放にする機構を構成することができる。つまり、ブレーキペダル3がゆっくりと強く踏み込まれた場合に、必要以上にロック部材33とスライドバルブ35のロックが外れることを抑制できる。その結果、ロック部材33とスライドバルブ35の係合部における摩耗を抑制できて緊急制動が不要な場合にブレーキアシスト機能が動作してしまうことを防止できる。なお、可撓部材202の可撓性能は予め試験などにより定めておくことができる。
【0043】
図6の例において、円環200はエアバルブ34(入力ロッド22と同軸の部材)の軸周りを回転しながら軸方向に進退する回転機構を含んでいる。具体的には、エアバルブ34の外周面に螺旋溝206を形成して、その螺旋溝206に円環200の内周面に形成されたキー208を係合させている。
【0044】
パワーピストン21に対する入力ロッド22の相対変位速度が所定速度以上の場合、つまり、緊急制動時のように入力ロッド22が早く動く場合、図5の上側に示すように螺旋溝206とキー208との接触摩擦により円環200の螺旋溝206に沿う回転が抑制されエアバルブ34の移動に追従して円環200が移動する。その結果、円環200はロック部材33の受圧面71に接触力を作用させてロック部材33とスライドバルブ35との係合を外してロック状態を解放する。そして、スライドバルブ35が閉弁状態となるとともに、エアバルブ34の開度が拡大されて大気が変圧室13に大量に導入されてブレーキブースタ2において通常制動時より大きなアシスト力を発生する。
【0045】
一方、パワーピストン21に対する入力ロッド22の相対変位速度が所定速度未満の場合、つまり、通常制動時のように入力ロッド22がゆっくりと動く場合、円環200がロック部材33の受圧面71に当接すると徐々に押し戻され螺旋溝206に沿って円環200が回転して円環200自身を図中矢印C方向に移動させる。つまり、円環200はロック部材33とスライドバルブ35のロック状態を解放する程の接触力を作用させることなく、そのロック状態を維持させる。
【0046】
このように、パワーピストン21に対する入力ロッド22の相対変位速度の大きさにより円環200の回転動作すなわち進退動作ができるので、単純な構造の回転構造により確実にロック機構の解放/非解放動作を実現できる。その結果、ロック部材33とスライドバルブ35の係合部における摩耗を抑制できて緊急制動が不要な場合にブレーキアシスト機能が動作してしまうことを防止できる。なお、回転機構の回転性能は予め試験などにより定めておくことができる。
【0047】
図7の例において、円環200は、エアバルブ34(入力ロッド22と同軸の部材)と当該エアバルブ34の軸の半径方向に進退自在な突起部材210を介して係合している。突起部材210はパワーピストン21に対する入力ロッド22の相対変位速度に応じてエアバルブ34の軸の半径方向に進退して係合位置と非係合位置との間を移動する。図7の上側は突起部材210が係合位置にある状態を示し、下側が非係合位置にある状態を示している。突起部材210は例えば、ゴムなどの可撓部材212によって支持することが可能である。そして、パワーピストン21に対する入力ロッド22の相対変位速度が所定速度以上の場合、つまり、緊急制動時などに入力ロッド22が早く動く場合、可撓部材212は瞬間的には撓みにくく突起部材210を突出状態のままエアバルブ34と共に入力ロッド22の移動方向に移動させる。つまり、エアバルブ34は円環200を表面に静止させたまま入力ロッド22の移動方向に動く。その結果、円環200はロック部材33の受圧面71に接触力を作用させてロック部材33とスライドバルブ35との係合を外してロック状態を解放する。そして、スライドバルブ35が閉弁状態となるとともに、エアバルブ34の開度が拡大されて大気が変圧室13に大量に導入されてブレーキブースタ2において通常制動時より大きなアシスト力を発生する。
【0048】
一方、パワーピストン21に対する入力ロッド22の相対変位速度が所定速度未満の場合、つまり、入力ロッド22がゆっくりと動く場合、可撓部材212は図7の下側に示すように円環200が受圧面71に当接すると徐々に押し戻され可撓部材212の弾性力に逆らい突起部材210を非係合位置へ回転させていく。その結果、円環200自身は図中矢印C方向に移動することが許容される。つまり、ロック部材33とスライドバルブ35のロック状態を解放する程の接触力を作用させることなく、そのロック状態を維持させる。
【0049】
このように、パワーピストン21に対する入力ロッド22の相対変位速度の大きさにより突起部材210の係合/非係合ができるので、単純な構造の突起部材210と円環200の組合せにより確実にロック機構の解放/非解放動作を実現できる。その結果、ロック部材33とスライドバルブ35の係合部における摩耗を抑制できて緊急制動が不要な場合にブレーキアシスト機能が動作してしまうことを防止できる。なお、突起部材210の退避動作を実現する可撓部材212の可撓性は予め試験などにより定めておくことができる。
【0050】
図8の例において、円環200は、エアバルブ34(入力ロッド22と同軸の部材)と摩擦部材214を介して接触していている。摩擦部材214は例えばゴムなどの樹脂部材で構成することができる。この場合、パワーピストン21に対する入力ロッド22の相対変位速度が所定速度以上の場合、円環200はエアバルブ34の表面と摩擦部材214の間の摩擦力によりエアバルブ34の表面を摺動することなくエアバルブ34と共に移動する。その結果、円環200はロック部材33の受圧面71に接触力を作用させてロック部材33とスライドバルブ35との係合を外してロック状態を解放する。そして、スライドバルブ35が閉弁状態となるとともに、エアバルブ34の開度が拡大されて大気が変圧室13に大量に導入されてブレーキブースタ2において通常制動時より大きなアシスト力を発生する。
【0051】
一方、パワーピストン21に対する入力ロッド22の相対変位速度が所定速度未満の場合、つまり、入力ロッド22がゆっくりと動く場合、円環200は図8の下側に示すように受圧面71に当接すると徐々に押し戻される。その結果、円環200自身は図中矢印C方向に移動することが許容される。つまり、ロック部材33とスライドバルブ35のロック状態を解放する程の接触力を作用させることなく、そのロック状態を維持させる。
【0052】
このように、パワーピストン21に対する入力ロッド22の相対変位速度の大きさにより円環200の進退動作ができるので、単純な摩擦部材214と円環200の組合せにより確実にロック機構の解放/非解放動作を実現できる。その結果、ロック部材33とスライドバルブ35の係合部における摩耗を抑制できて緊急制動が不要な場合にブレーキアシスト機能が動作してしまうことを防止できる。なお、摩擦部材214の摩擦係数は予め試験などにより定めておくことができる。
【0053】
このように、本実施形態では、エアバルブ34の表面に入力ロッド22の軸方向に移動自在な円環200を配置して、パワーピストン21に対する入力ロッド22の相対変位速度の大きさにより円環200を進退動作するように構成する。その結果、センサやアクチュエータを用いることなくブレーキペダル3がゆっくりと強く踏み込まれたときにロック部材33とスライドバルブ35のロックが外れて通常制動時より大きなアシスト力を発生することを抑制する構造を実現できる。それと共にロック部材33とスライドバルブ35のロック部の必要以上の解除が抑制され、接触部分の摩耗を軽減できる。
【0054】
なお、本実施形態では、入力ロッド22とエアバルブ34とが同軸上で接続され、エアバルブ34上に円環200が配置された例を示した。しかし、円環200は入力ロッド22の動作によりロック部材33とスライドバルブ35のロック状態を解除する方向に移動する移動部材であれば、その構成は適宜変更可能である。つまり、パワーピストン21に対する入力ロッド22の軸方向の相対変位速度が所定速度以下の場合にロック状態を維持させ、相対変位速度が所定速度を超えた場合にロック状態を解放させる構造であれば、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0055】
また、本実施形態では、入力ロッド22とエアバルブ34とを別部材として説明したが、両者が一体化され入力ロッド22の先端部に円環200が配置されても本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0056】
また、図5〜図7で説明したようなパワーピストン21に対する入力ロッド22の相対変位速度の大きさにより円環200の進退動作を実現する構造は一例である。つまり、円環200がパワーピストン21と入力ロッド22の相対変位速度の大きさにより移動できる構造であれば、その構造は適宜変更可能であり、本実施形態と同様な効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本実施形態に係るブレーキブースタ装置の概略を示す全体構成図である。
【図2】図1のコントロールバルブ部を示す部分拡大断面図である。
【図3】アシスト機構を構成するロック機構の構成および動作を表す部分拡大断面図である。
【図4】アシスト機構が作動したときのブレーキブースタの作動状態を示す断面図である。
【図5】本実施形態に係るブレーキブースタ装置において可撓部材によって円環が動作する構造を説明する部分拡大断面図である。
【図6】本実施形態に係るブレーキブースタ装置において螺旋溝によって円環が動作する構造を説明する部分拡大断面図である。
【図7】本実施形態に係るブレーキブースタ装置において突起部材によって円環が動作する構造を説明する部分拡大断面図である。
【図8】本実施形態に係るブレーキブースタ装置において摩擦部材によって円環が動作する構造を説明する部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 ブレーキブースタ装置、 2 ブレーキブースタ、 3 ブレーキペダル、 10 ハウジング、 11 ダイヤフラム、 12 定圧室、 13 変圧室、 14 チェック弁、 15 スプリング、 20 コントロールバルブ部、 21 パワーピストン、 22 入力ロッド、 23 プッシュロッド、 33 ロック部材、 34 エアバルブ、 35 スライドバルブ、 36 弁座形成部材、 40 通気孔、 45 弁座、 46 弁座、 71 受圧面、 72 押圧面、 200 円環、 202 可撓部材、 204 肩部、 206 螺旋溝、 208 キー、 210 突起部材、 212 可撓部材、 214 摩擦部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のブレーキペダルの操作を補助可能なブレーキブースタ装置であって、
ハウジング内を負圧導入可能な定圧室と大気導入可能な変圧室とに区画するとともに、前記ハウジング内にて変位可能な隔壁部材と、
前記隔壁部材に支持される一方、前記変圧室と前記定圧室との差圧によって前後進可能であり、その前進時に制動装置の出力を高めるパワーピストンと、
前記ブレーキペダルの操作に基づいて軸方向に進退すると共に、前記変圧室へ大気の導入が可能となるように大気導入部と前記変圧室とを連通する通路を開放させる弁機構を作動させる入力ロッドと、
ロック解放時に前記弁機構が所定の開弁状態になることを許容するロック機構と、
前記入力ロッドの軸方向に移動自在に設けられて前記ロック機構を操作する部材であって、前記パワーピストンに対する前記入力ロッドの軸方向の相対変位速度が所定速度以下の場合に前記ロック機構のロック状態を維持させ、前記相対変位速度が所定速度を超えた場合に前記ロック機構のロック状態を解放させる移動部材と、
を含むことを特徴とするブレーキブースタ装置。
【請求項2】
前記ロック機構は、前記移動部材との接触力が所定値以上の場合にロック状態を解放する解放部材を含み、前記移動部材は、前記入力ロッドの前記相対変位速度が前記所定速度を超えた場合に前記入力ロッドの前進に追従し移動して前記解放部材に所定値以上の接触力を与えて解放し、前記相対変位速度が前記所定速度以下の場合に前記入力ロッドの軸方向後方に退避して前記解放部材に所定値以上の接触力が与えられることを回避することを特徴とする請求項1記載のブレーキブースタ装置。
【請求項3】
前記移動部材は、前記入力ロッドの軸方向に沿って配置されて当該入力ロッドの移動と連動して移動する可撓部材によって支持されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のブレーキブースタ装置。
【請求項4】
前記移動部材は、前記入力ロッドの軸周りを回転しながら前記軸方向に進退する回転機構を含むことを特徴とする請求項1または請求項2記載のブレーキブースタ装置。
【請求項5】
前記移動部材は、前記入力ロッドと突起部材を介して係合し、当該突起部材は前記入力ロッドの前記相対変位速度に応じて係合位置と非係合位置との間を移動することを特徴とする請求項1または請求項2記載のブレーキブースタ装置。
【請求項6】
前記移動部材は、前記入力ロッドと摩擦部材を介して接触していることを特徴とする請求項1または請求項2記載のブレーキブースタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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