説明

ブロックドイソシアネートの粉体組成物

【課題】コーティング用途に有用なブロックドイソシアネートの粉体組成物を提供する。
【解決手段】ブロックドポリイソシアネートを粉体の形で含むことを特徴とする粉体組成物であって、前記ブロックドポリイソシアネートは融点、又は、鋭い融点を有しない化合物の場合にはコフラー機械又はキャピラリータイプの方法を用いて測定される見かけの融点が少なくとも30℃であり、ガラス転移温度が少なくとも10℃であるブロックドポリイソシアネートであって、
特定の芳香族誘導体と、特定のポリイソシアネートとの縮合により得ることができ、ジブチルアミンでの検定により測定して5%以下の残存遊離イソシアネート官能基を含み、前記ブロックドイソシアネートは組成中で粒子集合体を構成し、そのd90は200ミクロン以下であることを特徴とする、粉体組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は新規の種類のブロックドイソシアネートに関する。本発明はより詳細にはヒドロキシ芳香族誘導体を使用してブロックしたイソシアネートおよび粉体の手段によるコーティング技術におけるその使用に関する。
【0002】
環境保護および作業における安全に関する理由から、コーティング技術および特に塗料技術において溶剤の使用を排除しようとする研究が益々なされている。
【0003】
この点に関して、粉体を使用するコーティング技術は益々開発されている。
【0004】
ブロックドイソシアネートは使用され始めているが、その使用は粉体の化学的な要求を満たす幾つかの化合物に限定されている。
【0005】
第一の困難な点は、場所によって大きく変化しうる通常の貯蔵条件下で粉体の形を保つようなブロックドイソシアネート若しくはイソシアネート混合物を発見することが困難であることによる。これは、これらの化合物が比較的高い融点および/またはガラス転移温度(Tg)であるということを必要とするであろう。
【0006】
本研究の主題となる誘導体は必ずしも鋭い融点を有せず、そしてこの場合には、それ故、見かけの融点はコフラーブロック、または所謂キャピラリータイプの方法( 例えば、所謂、「Buchi 」融点) を使用することのいずれかにより決定される。ガラス転移温度は熱示差分析(DTA) により測定されることができる。
【0007】
これらの化合物は、また、粉体が使用される条件下で反応しうるように充分に低いガラス転移温度および融点を有するべきである。
【0008】
更に、架橋反応から誘導される化合物は人間および動物の健康および環境のいずれに対しても有害であるべきでない。
【発明の開示】
【0009】
従って、本発明の目的の1 つは、上記の制約を満足する新規のブロックドイソシアネートを提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、ブロックドイソシアネートを含み、且つ、粉体の手段によりコーティングにおいて使用されうる組成物を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は上記の制約を満足するイソシアネートの合成の方法を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、上記の制約を満足する、本発明に係るブロックドイソシアネートを使用する方法を提供することである。
【0013】
本発明により、これらの目的は、純粋なまたは混合物としてのブロックドイソシアネートを使用することにより達成され、これは、環がヒドロキシル化され、且つ、ニトリル基および好ましくはカルボニル基から選ばれる官能基を含む芳香族誘導体とイソシアネートとの縮合により誘導される。
【0014】
この種類の中で、見掛けの融点を決定することができるものが選ばれるべきであり、ここで、この測定は室温(20 ℃) で行われる。この融点は少なくとも30℃(1個の有意な数値) であるべきであり、そして有利には50℃である。
【0015】
製品は塊にならないことが望ましく; この為、粉砕され、そして室温で貯蔵されたときに、24時間後に同様の粒子サイズを有する化合物が選択される。
【0016】
塊になろうとする性質は、一般に、多かれ少なかれガラス転移温度(Tg)に関連し、それ故、好ましい化合物は少なくとも10℃(2個の有意な数値) 、有利には20℃(1個の、好ましくは2 個の有意な数値) 、そして好ましくは30℃(2個の有意な数値) であるガラス転移温度(Tg)を有するものである。
【0017】
アルキルの選択は重要であることができ、特にヒドロキシ安息香酸アルキル、より特にはパラ- ヒドロキシ安息香酸エステルではアルキルの選択は重要でありうる。このように、アルキル部分が直鎖であり、且つ、2 個以上の炭素を含むエステルは、不充分な高さの融点を有するか、または、シロップ状であって、1 週間〜数カ月の長期間の後に始めて結晶化する。そのことは使用を困難にし、そしてそれ故好ましくない。それ故、n-プロピル、n-ブチル、およびより一般的にはn-アルキルエステルは使用が困難である。更に、同様の理由から長鎖、特に炭素数が6 より大きいものも避けられるべきである。
【0018】
エチルは中間の場合であり、そして許容される結果を生じるが( 出発材料のその含分が、総量( 質量) の2%未満、好ましくは1%未満の低いときのみ) 、優秀でない。イソプロピルおよび特にメチルは好ましい。
【0019】
ニトリルおよび好ましくはカルボニル官能基は単結合で、または水素を含むカルコゲン、窒素または燐であることができる鎖構成要素、若しくは置換基または任意に置換されたメチレンを介して環に結合されていることができる。
【0020】
もし、電子吸引性基と環の間に鎖構成要素が介入すると電子吸引性効果が低下し、または消失するのであれば、環上に他に電子吸引性基が存在せず、またはこの基が必然的に電子が欠乏している( 例えば、6 員複素環) のでない限り、環と電子吸引性基の直接結合が好ましい。
【0021】
カルコゲン鎖構成要素若しくは水素のみを含む鎖構成要素、または、より低い程度にメチルは好ましく、周期律表の第二列( 酸素を含む列) の元素を基礎とする鎖構成要素は好ましい。
【0022】
本発明によると、純粋または混合物としてのブロックドイソシアネートはポリイソシアネートから誘導され、即ち、少なくとも2 個のイソシアネート官能基を有するもの、有利には2 個より多くのイソシアネートを有するもの( これらは一般に多かれ少なかれ縮合オリゴマーの混合物であるので、分数であることができる) から誘導され、それは通常、それ自体、単一のジイソシアネートの予備縮合または予備重合から誘導されたものであり、または、基本ジイソシアネート、即ち、他のイソシアネート官能基との縮合( ビウレットの場合) を受けておらず、または重合( ダイマーまたはトライマー、特にイソシアヌル環を表すものの場合) を受けていないイソシアネート官能基を含むものである。基本イソシアネートとして、少なくとも2 個のイソシアネート官能基を含む炭化水素骨格からなるものを挙げることができる。前記骨格はしばしばアリーレン基、アルキレン基( アラルキレンを含む) 、例えば、ポリメチレン( 一般にそして好ましくはヘキサメチレン) 、またはIPDIを形成させるために必要なものである。骨格は特定の末端ではアルキルであり、そして残りがアリールであることができる。これらの基本イソシアネートの平均分子量は有利には大きくても300(1 個の有意な数値) であり、好ましくは大きくても200(1 個の有意な数値) である。
【0023】
一般に、これらのプレポリマーまたはこれらの予備縮合体の平均分子量は2000(1個の有意な数値) 以下であり、より一般的には1000( 1 個の有意な数値、好ましくは2 個の有意な数値) である。
【0024】
このように、本発明に使用されるポリイソシアネートの中で、ビウレットタイプおよび二量体化または三量体化が4-、5-または6 員環を導くものが挙げられる。6 員環の中で、種々のジイソシアネート同士の、他のイソシアネートとの( モノ- 、ジ- 若しくはポリイソシアネート) 、または二酸化炭素とのホモ若しくはヘテロ三量体から誘導されたイソシアヌル環が挙げられ、この場合、イソシアヌル環の窒素は酸素で置換されている。
【0025】
好ましいポリイソシアネートは少なくとも1 個の脂肪族イソシアネート官能基を有するものであり、言い換えれば、本発明によりブロックされた少なくとも1 個のイソシアネート官能基が、有利に水素原子、好ましくは二個の水素原子を有するSP3 タイプの炭素を介して骨格に結合している。
【0026】
イソシアネート基をブロックするように機能する、環がヒドロキシル化された芳香族誘導体は、有利には式(I)
【0027】
Ar(R) n (Y-Z) m (OH)p (I)
( 式中、Arは芳香族残基であり、ここで、それはn 個の置換基R 、ニトリルおよびカルボニル基から選ばれたm 個の極性基Z 、およびp 個のヒドロキシル基と結合している。)
【0028】
n 、m およびp の値は正の整数または0 であり、且つ、n+m+p の総数は置換可能な環の要素の数以下であり、p は有利には2 以下であり、そして好ましくは1 である。
【0029】
m は有利には2 以下であり、そして好ましくは1 である。
【0030】
n は有利には3 以下であり、そして好ましくは0 、1 および2 から選ばれ、そしてより好ましくは0 である。
【0031】
R はブロック反応に関連する材料であり、そして、一般には、炭化水素鎖であり、通常には用語の語源上の意味でのアルキル鎖、即ち、ヒドロキシル官能基が除去されたアルコールである置換基を表す。
【0032】
2 個の隣接する置換基R は一緒に結合して環を形成してよく、それは例えば、芳香族であってよい。
【0033】
Z は、有利には、カルボニル官能性を有する基から選ばれる。これらの官能基の中で、アルコキシカルボニル基( または、言い換えればエステル官能基) 、アミド基、ケトン基が挙げられ、好ましい条件は、カルボニル官能基( エステル、ケトンまたはアミド) に対してα- 位に酸性水素を有せず( 言い換えれば、官能基は有利には水素を含まず、または、含むとしても、このpKa は少なくとも約20であり(1個の、好ましくは2 個の有意な数値) 、そして好ましくは少なくとも約25である);それ故、好ましいアミド( ラクトンまたは尿素までも含む) は有利には置換されており、好ましくはアミド官能基の窒素上に水素がないようにまたは反応性水素がないように充分に置換されており、ここで、Y は2 価の基、有利には-O- 、-S- 、-NR'- 、-CR'R"- から選ばれ、R'およびR"は炭化水素基から選ばれ、それは有利には1 〜6 個の炭素原子のアルキル基、より有利には1 〜4 個の炭素原子のアルキル基であり、好ましくはメチルであり、より好ましくは水素であり、そしてY は好ましくは単結合である。
【0034】
極性基Z(一般にニトリル基および/またはカルボニル基から選ばれる) には、例えば、サリチル酸のように基Z に隣接していないことが好ましい。
【0035】
芳香族残基Arは1 個以上の環からなり、1 個より多くの環は有利には縮合複素環若しくは同素環である。Arには2 個より多くの環を含まないことが好ましく、そして好ましくは1 個より多くの環を含まない。
【0036】
芳香族残基Arは1 個以上の複素環または同素環からなることができ、通常には供給容易性から考えて同素環である。しかし、6 員複素環の利点は、対応する同素環よりも非常に低い開放温度を有することであり、それは強調されるべきである。
【0037】
環がヒドロキシル化された芳香族誘導体の炭素の総数は20以下、好ましくは10個以下(1個の有意な数値) であることが望ましい。
【0038】
この環は有利には6 員環を含み、前記環は炭素または窒素およびこれらの原子の価数に必要な数の置換基からなる。
【0039】
誘導体が最も満足される結果を提供する酸の中で、ベンゼン環に結合した酸が挙げられる。このように、メタ- ヒドロキシ- およびパラ- ヒドロキシ- 安息香酸並びにそのエステルは良好な結果を提供する。
【0040】
既に述べたように、本発明によると、化合物または得られる化合物の混合物は少なくとも30℃、好ましくは50℃である見掛け融点を有することが望ましい。
【0041】
ガラス転移温度は少なくとも20℃、有利には40℃であることも好ましい。
【0042】
250 ℃で30分以内に第一アルコールと完全に反応するような本発明に係る化合物を選ぶことは好ましい。反応は90% 以上に達したならば完全と考えられる。本発明に最も有利なイソシアネートは、窒素原子がSP3 混成の炭素およびより詳細には脂肪族イソシアネートに結合したものであり、特に、ポリメチレンジイソシアネートおよびその種々の縮合誘導体( ビウレット等) およびその二- および三量体化誘導体に結合したものである。
【0043】
本発明によると、残存遊離イソシアネート基の百分率が5%以下、有利には3%以下、好ましくは1%以下であることが好ましく、そして時々必要である。最も高い融点またはガラス転移温度は0.5%未満の百分率のときに得られる。環がヒドロキシル化された芳香族誘導体の含分は有利には低く、即ち、5%以下であり、有利には3%以下であり、好ましくは1%以下である。
【0044】
本発明の説明の最初の部分で述べたように、本発明は本発明に係るブロックドポリイソシアネートまたはブロックドポリイソシアネート混合物を含む粉体組成物にも関する。
【0045】
本説明において、粒子サイズの特徴は、しばしばn が1 〜99の数であるタイプdnの記号として参照される。この記号は多くの技術分野においてよく知られているが、化学の分野ではあまり使用されておらず、そのため、その意味を説明しておくことが有用であろう。この記号は、粒子のn%( 重量基準であるが、重量は材料の量ではなく、力であるから、より正確には質量基準である) は前記サイズ以下である。
【0046】
粉体組成物において、本発明に係るブロックドイソシアネートは、有利には粒子集合体を構成し( それは有利には補助反応体と別個である) 、そのd90 は200 ミクロン以下、有利には100 ミクロン以下、好ましくは50ミクロン以下であり、この粒子集合体は少なくとも1 ミクロン、有利には5 ミクロン、好ましくは10ミクロンであるd10 を有する。
【0047】
粉体組成物は、有利には、少なくとも1 種のポリオール( 少なくともジオール) を含み、特定の場合にはポリアミドを含む。アミン基または- オール( フェノールまたは好ましくはアルコール) から選ばれた少なくとも2 個の官能基を有する多官能性化合物を有することも好ましく、そして上記の化合物は更に他の官能基( 例えば、カルボン酸またはスルホン酸基にような酸官能基) を有することもできるが、これらの官能基は縮合または架橋を阻害しない場合に限る。
【0048】
これらのポリオールまたはポリアミンは、また、それ自体が粉体を形成し、そして上記の記載のような融点およびガラス転移温度の制限を満たす。
【0049】
本発明に係る組成物の融点は少なくとも50℃である融点を有することが好ましく、そして少なくとも50℃の温度で粉体の焼結がないような軟化温度を有することが更に望ましい。
【0050】
そのガラス転移温度が少なくとも40℃であることも好ましい。
【0051】
有利には、粉体組成物は、少なくとも1 種の触媒、一般にそして好ましくは錫または亜鉛を基礎とした触媒をも含む。
【0052】
適切な場合には、それは当該技術分野において一般的な添加剤、例えば、充填剤、顔料(TiO2 等) および物性( 表面張力、老化および光に対する耐性、使用容易性等) を向上させるための添加剤を含む。
【0053】
本発明によると、1 つの合成方法は、溶剤中において、フェノール類タイプの化合物のようなヒドロキシ芳香族化合物と、遊離のまたは部分的に遊離のイソシアネート化合物とを接触させることからなる。
【0054】
本発明に係る化合物およびそのプリカーサーが下記の条件において安定なときには、合成は溶剤なしに、溶融状態で行われうる。その後、最終製品は冷却され、冷却は、例えば、反応混合物を冷壁に注ぐことにより行われる急速冷却により得られうるフレークを製造することにより行われる。得られたフレークは粉砕されることができる。良好な( 即ち、低い) 残存イソシアネート官能基百分率を得るために、化学量論に非常に近い量で環がヒドロキシル化された芳香族誘導体を導入することが重要である。若干化学量論過剰量(0.5〜2%、好ましくは1%以下) は好ましい。
【0055】
オール官能基にイソシアネート縮合用触媒を加えることも好ましく、これらの縮合触媒はしばしば錫または第三級アミンを基礎とする。
【0056】
縮合の最終温度は有利には100 ℃以下(1個の、好ましくは2 個の有意な数値) であり、好ましくは80℃以下であり、そして有利には少なくとも50℃であり、好ましくは少なくとも60℃である。実際、もし過剰に加熱されたならば、遊離イソシアネートの百分率が高すぎるようになる危険がある。
【0057】
溶剤が存在するときには、それは好ましくは、初期のイソシアネートの1 リットル当たり少なくとも50、好ましくは100 、そしてより好ましくは少なくとも200gを溶解するのに充分に極性であるように選ばれる。
【0058】
一度、反応が完了すると、最終製品は標準的な結晶化法により、そして好ましくは、結晶化の必要性なしに沈殿を起こさせるのに充分に無極性の沈殿用化合物の添加により、沈殿されるべきである。
【0059】
沈殿用化合物は明らかに揮発性タイプであり、そして、通常、石油エーテルタイプまたはヘキサン若しくはヘプタンタイプの軽質炭化水素タイプの化合物である。軽質アルコール( 即ち、6 個以下の、好ましくは4 個の炭素原子を含むアルコール) のエーテルを単独または混合物として使用することも可能である。
【0060】
炭素数が20以下で、4 以上であるアルカンまたはアルケンタイプの化合物は一般に使用される。
【0061】
次の制限しない実施例は本発明を例示する。
【0062】
例1
p-ヒドロキシ安息香酸メチルでブロックされたTolonate HDT の合成
次の成分が500ml 反応器中に装填される。
- トロネートHDT (登録商標)の商品名で販売されるヘキサメチレンジイソシアネート三量体-54.2g(NCO当量=22.1%)
- Solvesso 100(登録商標)=25g、
その後、数回の部分に分けて、攪拌しながら、室温において次の成分を加える。
- メチルp-ヒドロキシベンゾエート=47.6g(0.31 モル) 、
反応混合物を60℃に加熱し、そしてNCO 官能基が消失するまでこの温度を維持する。
冷却後、所望の生成物( ブロックドイソシアネート) が沈殿する。それを粉末にし、そしてn-ヘキサンを使用して洗浄する。
- n-ヘキサン=41.2g
反応混合物( 塊) を濾過して、得られた固形分をヘキサン数回分で洗浄し、その後、粉砕して、再び乾燥する。
- 得られた塊=95.7g
-融点=85 ℃
NMR で観測される3 個のピーク:
7.8ppm( カルバメートの窒素により保有された水素)
7.9ppm( カルバミド酸エステル基に対してオルト位の芳香族水素)
7.10ppm(カルボニル基に対してオルト位の芳香族水素)
【0063】
例2
上記製品の艶出し塗料
得られた中間体製品(I) を次のように配合する。
I=6.0g、
Demophen 690( 登録商標)=14.0g(%OH=2%) 、即ち、NCO/OH=1、
この2 種の粉体の混合物は50μm 未満の粒子サイズの完全に均質混合物が得られるまで粉砕される。
この粉体の少量をスチールプレート上に300 μm の厚さの層として適用し、そして30〜60分間、種々の温度で加熱処理する。
【0064】
硬化 30分 60分
試験溶剤 加熱された間の硬度 試験溶剤 加熱された間の硬度
(2) (1) (2) (1)
130 ℃ D M D M
160 ℃ D M D M
190 ℃ D M I VG
200 ℃ I VG I VG
【0065】
得られたフィルムはその硬度およびその耐溶剤性により定性化される。
(1)VG=非常に良好であり、M=中位である。
(2) メチルエチルケトンの液滴の付着性およびフィルム劣化観測、
D=溶剤作用によりフィルムが劣化され、
I=溶剤作用後にフィルムが無傷である。
【0066】
例3
次の製品を反応器中に導入する。
-Tolonate HDT (登録商標):100g(0.529 モルNCO)
それに次の成分を加える。
- p-ヒドロキシ安息香酸メチル:81.3g(0.529モル)
約85℃でブロックされる試薬が溶融するまで、この混合物を加熱し、そして攪拌し、そして約100 ℃で、この媒体は完全に無色透明である。
それを120 ℃に加熱し、そしてこの温度を1 時間保持する。
冷却後、生成物は若干粘着性の硬質ガムの形である。
Tg=8℃
ジブチルアミンで検定して、遊離NCO 基含分は約10% であると決定される。
【0067】
例4
次の製品を反応器中に導入する。
-Tolonate HDT (登録商標):100g(0.529 モルNCO)
それに次の成分を加える。
- p-ヒドロキシ安息香酸メチル:81.3g(0.529モル)
- トリエチルアミン(TEA):0.2g
約85℃でブロックされる試薬が溶融するまで、この混合物を加熱し、そして攪拌し、そして約100 ℃で、この媒体は完全に無色透明である。
それを100 ℃に維持した後、ジブチルアミンで検定する。
100 ℃で1 時間: 遊離NCO=6.2%
100 ℃で2 時間: 遊離NCO=5.6%
100 ℃で5 時間: 遊離NCO=5.6%
【0068】
例5
次の製品を反応器に導入する。
-Tolonate HDT (登録商標):100g(0.529 モルNCO)
それに次の成分を加える。
- メチルp-ヒドロキシ安息香酸:81.3g(0.529モル)
- トリエチルアミン(TEA):0.2g
約85℃でブロックされる試薬が溶融するまで、この混合物を加熱し、そして攪拌し、そして約100 ℃で、この媒体は完全に無色透明である。
反応混合物を徐々に60℃にまで冷却し、この温度を維持する。
遊離NCO 基含分はジブチルアミンにより検定されることにより測定される。
60℃で30分間: 遊離NCO=3.1%
60℃で1 時間: 遊離NCO=2.6%
60℃で4 時間: 遊離NCO=2.6%
【0069】
例6
次の製品を反応器に導入する。
-Tolonate HDT (登録商標):100g(0.529 モルNCO)
それに次の成分を加える。
- p-ヒドロキシ安息香酸メチル:81.3g(0.529モル)
- トリエチルアミン(TEA):0.5g
約85℃でブロックされる試薬が溶融するまで、この混合物を加熱し、そして攪拌し、そして約100 ℃で、この媒体は完全に無色透明である。
反応混合物を徐々に60℃にまで冷却し、この温度を維持する。
遊離NCO 基含分はジブチルアミンにより検定されることにより測定される。
60℃で3 時間: 遊離NCO=1.2%
更に0.5gのTEA を反応媒体中に加え、再び、温度を維持した後、遊離NCO 基を検定する。
60℃で3 時間: 遊離NCO=0.2%
冷却後、生成物は粉砕されうる硬質ガムの形である。
Tg=24 ℃
【0070】
例7
手順は例4 と同一であるがメチルp-ヒドロキシベンゾエートの代わりに次の製品を使用する。
p-ヒドロキシ安息香酸エチル:88.9g(0.529モル)
冷却後、生成物は固体ガムの形である。
Tg=18.8 ℃
【0071】
例8
手順は例4 と同一であるがメチルp-ヒドロキシベンゾエートの代わりに次の製品を使用する。
p-ヒドロキシ安息香酸ブチル:77.8g(0.529モル)
冷却後、生成物は固体ガムの形である。
Tg=5.5℃
【0072】
例9
手順は例4 と同一であるがメチルp-ヒドロキシベンゾエートの代わりに次の製品を使用する。
p-ヒドロキシ安息香酸イソプロピル:73.1g(0.529モル)
冷却後、生成物は固体ガムの形である。
Tg=23 ℃
【0073】
例10
上記製品の艶出し塗料
得られた中間製品(I) メチルp-ヒドロキシベンゾエートブロックされたTolonate HDTを次のように配合した。
-I=38.3g
-Johnson 587(登録商標)=61.7g (% OH=2.8%)
即ち、NCO/OH比=1:1
この2 種の粉体の混合物は、粒子サイズ50μm 未満の完全に均質な混合物が得られるまで粉砕される。
この粉体の少量をスチールプレート上に200 μm の厚さの層として適用し、そして種々の温度で30分間、加熱処理する。
硬化 30 分間
試験溶剤 加熱された間の硬度
(2) (1)
130 ℃ D M
140 ℃ D M
150 ℃ D M
160 ℃ I VG
【0074】
得られたフィルムはその硬度およびその耐溶剤性により定性化される。
(1)VG=非常に良好であり、M=中位である。
(2) メチルエチルケトンの液滴の付着性およびフィルム劣化観測、
D=溶剤作用によりフィルムが劣化され、
I=溶剤作用後にフィルムが無傷である。
【0075】
本発明の態様をあげると以下のとおりである。
(1)環がヒドロキシル化され、且つカルボニル基およびニトリル基から選ばれた官能基を含む芳香族誘導体とイソシアネートとの縮合により得られ、そしてその見掛けの融点が少なくとも30℃であることを特徴とするブロックドイソシアネート。
(2)前記イソシアネートがポリイソシアネートであることを特徴とする(1)記載のブロックドイソシアネート。
(3)前記(ポリ)イソシアネートが少なくとも1種の基本ジイソシアネート、そして好ましくは少なくとも部分的に脂肪族である基本ジイソシアネートから誘導されることを特徴とする(1)または(2)記載のブロックドイソシアネート。
(4)前記イソシアネートが1種以上の基本イソシアネート(その少なくとも1種は有利には脂肪族である。)のビウレットまたはトライマータイプの化合物であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項記載のブロックドイソシアネート。
(5)前記ヒドロキシル化芳香族誘導体が、式(I)
Ar(R) n (Y-Z) m (OH)p (I)
( 式中、Arは芳香族残基であり、
R は炭化水素置換基であり、一般に、アルキル置換基であり、
Z はニトリル基およびカルボニル基から選ばれ、
Y は二価の基から選ばれ、有利には単結合、-O- 、-S- 、-NR'- 、-CR'R"- であり、R'およびR"は炭化水素基から選ばれ、前記炭化水素基は有利には1 〜6 個の、より有利には1 〜4 個の炭素原子のアルキル基であり、好ましくはメチルであり、より好ましくは水素であり、n+m+p はArの置換可能な環構成要素数以下である。)
であることを特徴とするブロックドイソシアネート。
(6)p が1 であり、且つ、m が有利には2 以下であることを特徴とする(5)記載のブロックドイソシアネート。
(7)Z が
- アルコキシカルボニル、
- アミド、および、
カルボニル基に隣接する炭素上に水素がないことを条件とするアルキルカルボニル
からなる群より選ばれることを特徴とする(5)または(6)のいずれか1項に記載のブロックドイソシアネート。
(8)ヒドロキシル基が官能基Z に隣接しないことを特徴とする(1)〜(7)のいずれか1項記載のブロックドイソシアネート。
(9)Arが炭素または窒素をベースとする6 員芳香環から選ばれることを特徴とする(1)〜(8)のいずれか1項記載のブロックドイソシアネート。
(10)前記ヒドロキシル化芳香族誘導体がパラ- またはメタ- ヒドロキシ安息香酸誘導体であることを特徴とする(1)〜(9)のいずれか1項記載のブロックドイソシアネート。
(11)前記ヒドロキシル化芳香族誘導体がパラヒドロキシベンゾニトリル誘導体であることを特徴とする(1)〜(9)のいずれか1項記載のブロックドイソシアネート。
(12)見掛けの融点が少なくとも30℃であることを特徴とする(1)〜(11)のいずれか1項記載のブロックドイソシアネート。
(13)ガラス転移温度が少なくとも10℃であることを特徴とする(1)〜(12)のいずれか1項記載のブロックドイソシアネート。
(14)イソシアネート基のうちの1 個の基の少なくとも1 個の窒素がSP3 - 混成の炭素に結合していることを特徴とする(1)〜(13)のいずれか1項記載のブロックドイソシアネート。
(15)(1)〜(14)のいずれか1項記載のブロックドイソシアネートを粉体の形で含むことを特徴とする粉体組成物であって、特にコーティング用の組成物。
(16)亜鉛または錫を基礎とする触媒を更に含むことを特徴とする(15)記載の組成物。
(17)ポリオール粉体を更に含むことを特徴とする(15)または(16)のいずれか1項記載の組成物。
(18)ポリアミドを粉体の形で更に含むことを特徴とする(15)〜(17)のいずれか1項記載の組成物。
(19)(1)〜(14)のいずれか1項記載の前記ブロックドイソシアネートが独立した粒子の集合体からなることを特徴とする(15)〜(18)のいずれか1項記載の組成物。
(20)(1)〜(14)のいずれか1項記載の前記ブロックドイソシアネートを合成する方法であって、前記ヒドロキシル化芳香族誘導体と前記イソシアネートとを接触させることを含むことを特徴とする方法。
(21)アルカンまたはアルケンタイプの無極性溶剤の添加の手段によるブロックドイソシアネートの沈殿工程を更に含むことを特徴とする(20)記載の方法。
(22)前記沈殿工程の無極性溶剤が約C4 −C20のアルカンであることを特徴とする(20)または(21)のいずれか1項記載の方法。
(23)前記溶剤は、イソシアネートが1 リットル当たり少なくとも50g 、有利には100g、そして好ましくは200gの程度まで可溶性であることを特徴とする(20)〜(22)のいずれか1項記載の方法。
(24)(1)〜(14)のいずれか1項記載の化合物の粉体を導入することを含み、前記粉体が100 ℃〜250 ℃の温度に加熱され、有利には130 ℃〜200 ℃に加熱されることを特徴とし、そして前記組成物がポリオールを含むことを特徴とする粉体を架橋する方法。
(25)(15)〜(19)のいずれか1項記載の粉体組成物を使用して得られたコーティング。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロックドポリイソシアネートを粉体の形で含むことを特徴とする粉体組成物であって、前記ブロックドポリイソシアネートは融点、又は、鋭い融点を有しない化合物の場合にはコフラー機械又はキャピラリータイプの方法を用いて測定される見かけの融点が少なくとも30℃であり、ガラス転移温度が少なくとも10℃であるブロックドポリイソシアネートであって、
0.5〜2%化学量論過剰量の、環がヒドロキシル化され、かつ、カルボニル基及びニトリル基から選ばれる電子吸引性基を含む芳香族誘導体であって、ただし、もし環上にすでに電子吸引性基があるのでなければ前記環と前記カルボニル基及びニトリル基から選ばれる電子吸引性基との直接結合があり、又は、該環は6員複素環であり、そして、カルボニル官能基がエステル官能基である場合には、そのアルキル部分は6個以下の炭素原子を含みそして炭素数が2個を超える場合には枝分かれである、芳香族誘導体と、
ヘキサメチレンジイソシアネートを含む少なくとも1つの基本ジイソシアネートの予備縮合又は予備重合により誘導された2個より多くのイソシアネート官能基を含むポリイソシアネートであって、ビウレットのポリイソシアネートであるか、又は、二量体または三量体化が4-、5-または6員環を形成しているポリイソシアネートである、ポリイソシアネートとの縮合により得ることができ、ジブチルアミンでの検定により測定して5%以下の残存遊離イソシアネート官能基を含み、前記ブロックドポリイソシアネートは組成中で粒子集合体を構成し、そのd90は200ミクロン以下であることを特徴とする、粉体組成物。
【請求項2】
前記ヒドロキシル化芳香族誘導体が、式(I)
Ar(R) n (Y-Z) m (OH)p (I)
( 式中、Arは芳香族残基であり、
R は炭化水素置換基であり、
Z はニトリル基およびカルボニル基から選ばれ、
Y は二価の基から選ばれ、または単結合であり、n+m+p はArの置換可能な環構成要素数以下である。)
であることを特徴とする請求項1記載の粉体組成物。
【請求項3】
p が1 であり、且つ、m が2 以下であることを特徴とする請求項2記載の粉体組成物。
【請求項4】
Z が
- アルコキシカルボニル、
- アミド、および、
- アルキルカルボニルからなる群より選ばれ、ただし、Z が酸性水素を含まない請求項2または3記載の粉体組成物。
【請求項5】
ヒドロキシル基が官能基Z に隣接しないことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項記載の粉体組成物。
【請求項6】
Arが炭素または窒素をベースとする6 員芳香環から選ばれることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項記載の粉体組成物。
【請求項7】
前記ヒドロキシル化芳香族誘導体がパラ- またはメタ- ヒドロキシ安息香酸誘導体であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の粉体組成物。
【請求項8】
前記ヒドロキシル化芳香族誘導体がパラ−またはメタ−ヒドロキシ安息香酸であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の粉体組成物。
【請求項9】
見掛けの融点が少なくとも50℃であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載の粉体組成物。
【請求項10】
亜鉛または錫を基礎とする触媒を更に含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項記載の組成物。
【請求項11】
ポリオール粉体を更に含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項記載の組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項記載の粉末組成物のためのブロックドポリイソシアネートを合成する方法であって、前記ヒドロキシル化芳香族誘導体と前記イソシアネートとを100 ℃以下の温度で接触させることを含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
アルカンまたはアルケンタイプの無極性溶剤の添加の手段によるブロックドイソシアネートの沈殿工程を更に含むことを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記沈殿工程の無極性溶剤がC4 〜C20のアルカンであることを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記溶剤は、イソシアネートが1 リットル当たり少なくとも50g の程度まで可溶性であることを特徴とする請求項13または14記載の方法。

【公開番号】特開2008−121026(P2008−121026A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−29045(P2008−29045)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【分割の表示】特願2004−298060(P2004−298060)の分割
【原出願日】平成7年5月8日(1995.5.8)
【出願人】(390023135)ロディア・シミ (146)
【Fターム(参考)】