説明

ブロック共重合体

【課題】本発明の課題は、耐熱分解性に優れ、高温でも良好なゴム弾性を示す耐熱性に優れた熱可塑性エラストマー(ブロック共重合体)を含有する組成物を提供する。また、本発明は、良好な耐油性、耐熱性を有し、かつ柔軟性に富むブロック共重合体を含有する組成物を用いて、特別な添加剤を用いることなく、低硬度で高接着性、耐油性、耐候性、耐熱性および引張特性(機械的物性)に優れ、加工成形性、柔軟性が良好な自動車用熱可塑性エラストマー組成物(自動車用軟質材料)を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂および(a)(メタ)アクリル系重合体ブロックと(b)アクリル系重合体ブロックとからなるブロック共重合体(A)を含有し、これらを動的に処理してなる組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた耐熱分解性、耐油性を有し、高温でも良好な圧縮永久歪みを示すブロック共重合体であって、ゴム、熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂用耐衝撃性改良剤、樹脂とゴムとの中間の弾性率を有するコンパウンド材料の配合剤、塗料、接着剤あるいは粘着剤として利用することができるブロック共重合体に関する。さらに詳しくは、物性のバランス、とくに耐熱分解性と耐油性、高温における圧縮永久歪みに優れたメタアクリル系重合体およびアクリル系重合体を含有するブロック共重合体に関する。
【0002】
さらに、本発明は、低硬度、接着性、耐熱性、耐油性および引張特性(機械物性)に優れ、さらに柔軟性、成形加工性に富む熱可塑性エラストマー組成物を使用する自動車用軟質材料に関するものである。
【背景技術】
【0003】
一般に、熱可塑性エラストマーは、エントロピー弾性を発揮するゴム成分(ソフトセグメント)と、高温では流動するが、常温では塑性変形を防止してゴム成分に補強効果を与える拘束成分(ハードセグメント)からなるアロイ構造を取っている。たとえば、スチレン系エラストマーではスチレンブロックが凝集してハードセグメントとして働き、ブタジエン系ブロックまたはイソプレン系ブロックがマトリクスとなり、ソフトセグメントとして働く。また、オレフィン系エラストマーでは、EPDMなどのゴムがPPなどの樹脂中に分散する構造を取るアロイ構造を取っている。いずれも、ハードセグメントが高温では流動することにより、射出成形など熱可塑性の加工が可能である。熱可塑性エラストマーの種類としては、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー以外にも、塩化ビニル系エラストマー、エステル系エラストマー、アミド系エラストマー、ウレタン系エラストマーなどをあげることができる。
【0004】
しかしながら、従来のスチレン系あるいはオレフィン系熱可塑性エラストマーは、加硫ゴムに比べてゴム弾性、その中でも、とくに高温における圧縮永久歪みが充分でなく、高温でも良好なゴム弾性を示す熱可塑エラストマーが望まれていた。
【0005】
一方、メタアクリル酸メチルなどをハードセグメント、アクリル酸ブチルなどをソフトセグメントに有する(メタ)アクリル系ブロック共重合体は、熱可塑性エラストマーとして使用できることが知られている。(メタ)アクリル系重合体ブロックとアクリル系重合体ブロックを含有するブロック共重合体としては、特許登録第2553134号明細書に開示されたポリメタアクリル酸メチル−b−ポリアクリル酸ブチル−b−ポリメタアクリル酸メチルのブロック共重合体(MMA−b−BA−b−MMA)、ポリメタアクリル酸メチル−b−ポリアクリル酸2エチルヘキシル−b−ポリメタアクリル酸メチルのブロック共重合体(MMA−b−2EHA−b−MMA)などが知られている。(メタ)アクリル系ブロック共重合体は、耐候性、耐久性、耐熱性および耐油性に優れるという特徴を有する。
【0006】
アクリル系ブロック共重合体は、種々のリビング重合により合成が可能である。一例として、シリルケテンアセタール/ルイス酸系のいわゆるグループトランスファー重合(特開昭62−292806号公報)、ポリフィリン・有機アルミニウム錯体によるリビング重合(S.Inoueら、マクロモレキュールズ(Macromolecules)、24巻、824頁、1991年)、有機希土類金属錯体を開始剤とするリビング重合(特開平6−93060号公報)などがあげられる。とくに、有機希土類金属錯体による重合では、(メタ)アクリル系重合体ブロックを立体規則的に重合し、アクリル系重合体を非立体規則的に重合することで、耐熱性と耐衝撃性もしくはエラストマー的性質の優れたブロック共重合体を与えることが報告されている。さらに、ハロゲン系開始剤および銅触媒による原子移動ラジカル重合においては、アクリル酸エステル類の重合ののち、選択的なエステル結合の分解をおこなうことにより、ポリアクリル酸−ポリアクリル酸エステル−ポリアクリル酸からなるブロック重合体を得る方法が紹介されており(特開2001−234147号公報)、高温でも物性変化の小さい粘着剤となりうることが紹介されている。
【0007】
しかしながら、これらの(メタ)アクリル系ブロック共重合体におけるハードセグメントのガラス転移点は、いずれも150℃以下であり、自動車分野などで必要とされる高温におけるゴム特性を示すことは困難であった。また、アクリル酸をハードセグメントに有するアクリル系ブロック重合体では、いずれも破断強度が3MPa未満(日東技報、38巻、No.2、11月、2000年)と、エラストマー材料として使用するには充分な強度を発現しないことも課題であった。
【0008】
さらに、高温においても物性変化が少なく、保持力などの粘着特性のバランスに優れた粘着剤材料の設計に関する発明として、ポリメタアクリル酸ブロックをハードセグメントに有する(メタ)アクリル系ブロック共重合体を用いた粘着剤に関する報告がなされている(特開平10−298248号公報)。しかしながら、該発明における実施例では、ポリメタアクリル酸ポリアクリル酸エステルからなるジブロック体が紹介されているが、エラストマーとして重要な特性である圧縮永久歪みおよび破断強度は、一般的にジブロック構造では発現困難であり、耐熱性に優れる熱可塑性エラストマーの開発が望まれていた。
【0009】
他方、ブロック共重合体は熱可塑性樹脂と組み合わせた組成物として使用しうることが知られている。このようなブロック共重合体として、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、および、これらの水添重合体(それぞれ、スチレン−エチレン−ブチレン共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン共重合体と呼ばれる)が広く使用されている。このようなブロック共重合体を使用すると、一般に、耐衝撃性、剛性、成形流動性のバランスに優れた組成物が得られるものの、組み合わされる熱可塑性樹脂はポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂などの極性の低いものに限定されている。
【0010】
また、近年になって、メタアクリル系重合体およびアクリル系重合体を含有するブロック共重合体が優れた耐衝撃性改質剤として機能し、熱可塑性樹脂と組み合わせることで耐衝撃性に優れた熱可塑性樹脂組成物となることが知られている。この場合の熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などの極性の高い樹脂が有効である。
【0011】
熱可塑性エラストマーは、高温ではハードセグメントが流動するために、射出成形などの熱可塑性の加工が可能であるが、熱可塑性エラストマーの熱分解温度が射出成形温度よりも低い場合には、熱可塑性エラストマーの熱劣化を生じる場合がある。たとえば、先述したようなポリ塩化ビニル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などの極性の高い樹脂は、成形温度、耐熱性ともに高く、熱可塑性エラストマーをこのような樹脂に配合して成形する場合には、熱可塑性エラストマーが熱分解するために使用することができない。とくに、メタアクリル系重合体は、170〜250℃で解重合により単量体へと分解するものが多い(ポリマーハンドブック第3版(Polymer Handbook Third Edition)、ウィリー・インターサイエンス(Wiley−Interscience)、1989年)。そのため、高温熱安定性が必要とされる場合には、エステル系エラストマー、アミド系エラストマーを選択することになるが、これらのエラストマーにおいても、耐油性を含む物性の向上、物性バランスの制御、コストの低減などが求められる場合があり、新規なエラストマーの開発が強く望まれていた。
【0012】
昨今、自動車部品のように良好な触感を必要とする成形物には、軟質仕様のポリウレタン(RIMウレタン)材料やポリ塩化ビニル(軟質PVC)をベースとする材料が用いられている。しかし、これらの材料は省資源および環境保全などの見地、すなわちリサイクル(再生利用)という点で問題がある。RIMウレタン材料は、熱硬化性であるため、また軟質PVCは多量の可塑剤を含むうえ、加熱により塩素ガスが発生することから、それぞれ再生利用が不可能ないし困難である。それゆえ、このような軟質塩ビ樹脂、ポリウレタン樹脂の代替樹脂が望まれている。そのような材料の候補としてゴム的な材料であって加硫工程を必要とせず、熱可塑性樹脂と同等の成形加工性を有する熱可塑性エラストマー樹脂があげられ、近年、自動車部品、家電部品、建材用途などに注目を集めている。
【0013】
しかしながら、従来のオレフィン系熱可塑性エラストマーおよびスチレン系熱可塑性エラストマーは、リサイクル性や機械的特性は優れているが、樹脂や金属に対する接着性が乏しく、また耐油性に乏しいという問題がある。オレフィン系熱可塑性エラストマーは、適度な柔軟性と加工性を有することが知られているが、耐候性、耐油性などが充分に満足すべきものとは言えず、そのまま代替品として使用することは難しい。とくに自動車の防錆ワックスを除去する工程で、灯油と界面活性剤を含む温水の混合液からなるワックスリムーバーを使用することが多いが、オレフィン系熱可塑性エラストマーを外装部材の素材として使用していると、ワックス除去の際、表面の外観などが損なわれるという問題を抱えていた。
【0014】
自動車部品のなかでも中空成形品の代表的なものに、ブーツやホースがある。とくにブーツに関しては、自動車や産業機械のジョイント部位において、封入されているグリースを保持するため、または塵などの混入を防ぐために、蛇腹状のジョイントブーツが装着されている。従来、このようなジョイントブーツは、クロロプレンなどのゴムや、特公昭53−21021号公報などに開示されているように、モノオレフィン共重合体ゴムとポリオレフィン樹脂に架橋助剤として有機過酸化物を用いて部分架橋した組成物などにより作製されていた。
【0015】
近年、リサイクルの観点から、非架橋型の材料である熱可塑性ポリエステルエラストマーが使用されるようになってきた。しかしながら、熱可塑性ポリエステルエラストマーは、機械的性質、耐熱性および耐油性に優れるという特徴を有しているが、硬度が高いために柔軟性に欠け、取り付け作業性を著しく低下させるという問題があった。
【0016】
そこで、これらの問題を解決するために、特開平6−145477号公報および特開平7−97507号公報には、熱可塑性コポリエステルエラストマーにゴム組成物を混合した熱可塑性コポリエステルエラストマー組成物が提案されている。しかしながら、これら熱可塑性コポリエステルエラストマー組成物では、ブーツ・ホースに必要な柔軟性や耐油性が充分であるとは言えず、さらなる検討を要するものであった。
【0017】
また、特開2000−351889号公報には、熱可塑性コポリエステルエラストマーとアクリルゴムからなる熱可塑性エラストマー組成物が開示されている。アクリルゴムを配合することにより耐油性やブーツの組み付け性が改善されているものの、アクリルゴム含量によっては成形流動性が低下するため、成形加工が困難となったり、柔軟性に関しては未だ問題が残っており、さらなる改善が必要となっている。
【0018】
このように、熱可塑性ポリエステルエラストマーは機械的強度には優れるが、硬度、耐油性に劣るという欠点があり、またアクリルゴム配合熱可塑性エラストマーは、耐油性は改善するものの、加工成形性、柔軟性に劣るという欠点が残存するため、自動車中空成形品としての用途拡大が制約されており、耐油性が良好で、柔軟性に富む自動車中空成形品用材料の開発が求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の課題は、耐熱分解性に優れ、高温でも良好なゴム弾性を示す耐熱性に優れた熱可塑性エラストマー(ブロック共重合体)を提供することにある。
【0020】
また、本発明は、良好な耐油性、耐熱性を有し、かつ柔軟性に富むブロック共重合体を用いて、特別な添加剤を用いることなく、低硬度で高接着性、耐油性、耐候性、耐熱性および引張特性(機械的物性)に優れ、加工成形性、柔軟性が良好な自動車用熱可塑性エラストマー組成物(自動車用軟質材料)を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、熱可塑性樹脂および(a)(メタ)アクリル系重合体ブロックと(b)アクリル系重合体ブロックとからなるブロック共重合体(A)を含有し、これらを動的に処理してなる組成物に関する。
【0022】
本発明は、前記組成物を含有する自動車用軟質材料に関する。
【0023】
本発明は前記自動車用軟質材料からなる自動車用内装部材に関する。
【0024】
本発明は前記自動車用軟質材料からなる自動車用外装部材に関する。
【0025】
本発明は前記自動車用軟質材料からなる自動車用内層材に関する。
【0026】
本発明は前記自動車用軟質材料からなる自動車用モールに関する。
【0027】
本発明は前記自動車用軟質材料からなる自動車用中空成形品に関する。
【0028】
本発明は前記自動車用軟質材料からなる自動車用中空成形ブーツまたは自動車用中空成形ホースに関する。
【発明の効果】
【0029】
本発明の組成物によれば、アクリル系ブロック共重合体が本来有する特性を維持しながら、優れた耐熱分解性を有する材料として、好適に使用可能である。
【0030】
また、本発明の組成物によれば、アクリル系ブロック共重合体が本来有する特性を維持しながら、高温における圧縮永久歪みが大幅に改善される。
【0031】
また、本発明の組成物は、耐熱性、耐油性が良好であり、柔軟性に富み、加工性にも優れた材料であり、自動車中空成形品を提供することができる。すなわち、本発明の自動車用軟質材料によれば、耐熱性、耐油性に非常に優れ、柔軟性、成形加工性に富む自動車用中空成形品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
<ブロック共重合体(A)>
本発明のブロック共重合体(A)は、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)からなる。
【0033】
ブロック共重合体(A)は、加熱速度10.0℃/分、流量50.0ml/分のチッ素気流下で測定した熱重量分析における5%重量損失温度が300℃以上であること、または、JIS K6301にしたがって測定した引張強さが3.0MPa以上であり、JIS K6253にしたがって、測定したタイプAデュロメータにおける硬度が50以下であり、かつ70℃、22時間の条件で測定した圧縮永久歪みが45%以下であることが好ましい。
【0034】
5%重量損失温度は、より好ましくは310℃以上、さらに好ましくは320℃以上である。5%重量損失温度が300℃未満では、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などの成型温度、耐熱性の高い熱可塑性樹脂に配合して成型する場合にブロック共重合体(A)が、熱分解するために物性が低下する。
【0035】
引張強さは、好ましくは3.5MPa以上である。引張強さが3MPa未満では、エラストマー材料として使用する場合に限られた用途に限定されることがある。
【0036】
硬度は、好ましくは1〜40であり、さらに好ましくは3〜40である。硬度が1未満ではゴム弾性が低下する傾向がある。硬度が50をこえるとエラストマーとしての柔軟性が低下する傾向がある。
【0037】
圧縮永久歪みは、好ましくは40%以下である。圧縮永久歪みが45%をこえるとゴム弾性が低下する。
【0038】
なお、5%重量損失温度、引張強さの値は、大きければ大きいほどよく、圧縮永久歪みの値は小さければ小さいほどよい。また、硬度は使用する用途に応じて適宜設定すればよい。
【0039】
前述のような性質を有するブロック共重合体(A)を得る方法として、たとえば、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)にガラス転移温度(Tg)の高い官能基(c)を導入する方法があげられる。(メタ)アクリル系重合体ブロックに凝集力の高い官能基を有する単量体を共重合させることにより、アクリル系ブロック共重合体に優れた耐熱分解性を付与することができる。これにより、高温においてもアクリル系ブロック共重合体の本来の特性を何ら損なうことなく、好適に使用することができる。
【0040】
官能基(c)は、凝集力の大きさの点から、カルボキシル基などが好ましい。官能基(c)は単量体由来でもよく、官能基を適当な保護基で保護した形、または、官能基の前駆体となる官能基の形でブロック共重合体(A)に導入し、そののちに公知の化学反応で官能基を生成させることもできる。
【0041】
これら官能基の2種以上を併用することもできる。官能基の2種以上を併用する場合には、反応様式が異なるので、お互いに反応しない官能基を選ぶ場合、お互いに反応する官能基を選ぶ場合、反応様式が同一であり反応性や反応条件の異なる官能基を選ぶ場合などをあげることができ、目的に応じて使い分けることができる。目的により、1種類の官能基のみまたは全部の官能基を、適当な保護基で保護した形または前駆体となる官能基の形でメタアクリル系共重合体ブロックに導入し、そののちに公知の化学反応で官能基を生成させることもできる。
【0042】
官能基(c)の含有数の好ましい範囲は、官能基(c)の凝集力、ブロック共重合体(A)の構造および組成、ブロック共重合体(A)を構成するブロックの数、ならびに、官能基の含有される部位および様式によって変化する。
【0043】
官能基(c)の含有数の好ましい範囲を例示すると、組成物の物性バランスを重視する場合には、好ましくはブロック共重合体(A)1分子当たり0.1以上であり、より好ましくは0.2以上であり、さらに好ましくは0.5以上である。官能基(c)の含有数の上限はなく、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)を構成する単量体の全てに含まれることができる。官能基(c)の含有数は、目的とするブロック共重合体(A)の特性に応じて設定することができる。以下の記述で、官能基の含有数が数値上ブロック共重合体(A)1分子当たり1.0を下回る場合には、官能基をブロック共重合体(A)1分子当たり1.0個以上有するブロック共重合体(A)と、官能基を有しないブロック共重合体(A)の混合物と解釈する。
【0044】
また、官能基(c)の含有量は、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)を構成する単量体のうち、官能基(c)を有する単量体の含量で5重量%以上であることが好ましい。この理由としては、Tgの高いこれら単量体をハードセグメントに導入することで、高温においてもゴム弾性を発現することが可能となるためである。より好ましくは、前記官能基(c)を有する単量体の含量は、5〜99.9重量%である。前記官能基(c)を有する単量体の含量が5重量%未満では、(メタ)アクリル系重合体ブロックの凝集力の向上や耐熱性の向上が不充分であり、高温におけるゴム弾性の発現が低下する傾向にある。99.9重量%をこえると、製造上、困難になる傾向がある。
【0045】
なお、官能基(c)がカルボキシル基の場合は、本発明のブロック共重合体(A)は、少なくとも一つのカルボキシル基を有することが、ブロック共重合体(A)の耐熱性向上の点から好ましい。
【0046】
また、本発明のブロック共重合体(A)が、ヒドロキシル基を有する場合、少なくとも一つのヒドロキシル基を有することが、後述する熱可塑性樹脂中でブロック共重合体(A)を動的に処理(動的架橋)する場合に好ましい。ヒドロキシル基が一つよりも少ない場合は、ブロック共重合体(A)の架橋度が低くなり、耐熱性の向上効果が少なくなる傾向にある。
【0047】
本発明のブロック共重合体(A)の構造としては、線状ブロック共重合体(b1)または分岐状(星状)ブロック共重合体(b2)から選ばれた少なくとも1種のブロック共重合体(A)であることが好ましい。
【0048】
線状ブロック共重合体(b1)は、いずれの構造のものであってもかまわないが、組成物の物性の点から、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体またはそれらの両方を含有することが好ましく、それらのブロック共重合体を主成分とすることがさらに好ましい。ジブロック共重合体、トリブロック共重合体以外のブロック共重合体の構造としては、たとえば、マルチブロック共重合体があげられる。本発明のブロック共重合体(A)の構造の例をあげると、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体、トリブロック共重合体とジブロック共重合体の混合物、トリブロック共重合体とマルチブロック共重合体の混合物、あるいはジブロック共重合体とトリブロック共重合体とマルチブロック共重合体の混合物であることがより好ましく、それらの中でもジブロック共重合体とトリブロック共重合体を主成分とすることがさらに好ましい。
【0049】
これらの場合に、(メタ)アクリル系重合体ブロックをa、アクリル系重合体ブロックをbと表現して、ジブロック共重合体はa−b型であり、トリブロック共重合体はa−b−a型またはb−a−b型であり、マルチブロック共重合体はnを1以上の整数としてa−(b−a)n−b型、a−b−(a−b)n−a型、b−(a−b)n−a−b型である。これらの中でも耐衝撃性の点から、トリブロック共重合体はa−b−a型であることが好ましく、マルチブロック共重合体はa−(b−a)n−b型またはa−b−(a−b)n−a型であることが好ましい。また、成形加工性の点からは、a-b-a型のトリブロック共重合体、マルチブロック共重合体、またはこれらの混合物が好ましく、a-b-a型のトリブロック共重合体がより好ましい。
【0050】
分岐状(星状)ブロック共重合体(b2)は、いずれの構造のものであってもかまわないが、組成物の物性の点から、前記線状ブロック共重合体を基本単位とするブロック共重合体である。
【0051】
このようなブロック共重合体の構造は、用途に応じて使い分けられる。たとえば、自動車用軟質材料として用いる場合には、その成形性や加工特性、機械特性などの必要特性に応じて使い分けられる。
【0052】
また、これらのブロック共重合体に、製造過程で生じるホモポリアクリル酸エステル、ホモポリメタアクリル酸エステルなどが含まれていても、本発明の権利範囲である。
【0053】
官能基(c)の含有される部位は、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)に含まれていること、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体ブロック(b)のあいだに挟まれていること、および、メタアクリル系重合体(a)の分子鎖末端に含まれていることができる。
【0054】
官能基(c)の含有される様式は、とくに限定されないが、単量体由来であること、または分子鎖に直接または適当な有機基を介して結合されていることができる。官能基(c)が単量体由来である場合には、その単量体からなる繰り返し単位の数は、単量体の含まれる重合体ブロック当たり1または2以上であることができ、その数が2以上である場合には、その単量体が重合されている様式はランダム共重合またはブロック共重合であることができる。a−b型のジブロック共重合体を例にとって表わすと、(a/c)−b型、c−a−b型、a−c−b型などのいずれであってもよい。a−b−a型のトリブロック共重合体を例にとって表わすと、(a/c)−b−a型、(a/c)−b−(a/c)型、c−a−b−a型、c−a−b−a−c型などのいずれであってもよい。ここで(a/c)とは、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)に官能基(c)が含有されていることを表わす。官能基(c)の2種以上を併用する場合には、それぞれの含有される部位と含有される様式は、前記の範囲内で自由に設定してよく、目的に応じて使い分けることができる。
【0055】
ブロック共重合体(A)の数平均分子量は、とくに限定されず、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体ブロック(b)にそれぞれ必要とされる分子量から決めればよい。ブロック共重合体(A)の数平均分子量の範囲を例示すると、主に耐衝撃性の改質を目的とする場合は、30000〜500000が好ましく、より好ましくは40000〜400000、さらに好ましくは50000〜300000である。また、主に加工性の改質を目的とする場合は、10000〜1000000が好ましく、より好ましくは20000〜700000、さらに好ましくは30000〜400000である。また、樹脂とエラストマーの中間の弾性率を有するコンパウンド材料を得ることを目的とする場合には、10000〜500000が好ましく、より好ましくは30000〜400000、さらに好ましくは50000〜300000である。これらの場合に、数平均分子量が小さいと物性が低下し、エラストマーとして充分な機械特性を発現出来ず、また、数平均分子量が大きいと粘度が高くなり、加工性が低下する傾向があるため、必要とする物性バランスに応じて設定される。
【0056】
なお、分子量はクロロホルムを移動相とし、ポリスチレンゲルカラムを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によりポリスチレン換算によって測定される。
【0057】
ブロック共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)も、とくに限定はないが、1.8以下であることが好ましく、1.5以下であることがさらに好ましい。Mw/Mnが1.8をこえるとブロック共重合体(A)の均一性が低下する傾向がある。
【0058】
ブロック共重合体(A)を構成する(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体ブロック(b)の組成比は、とくに限定されず、使用する用途において要求される物性、組成物の加工時に要求される成形性、および(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体ブロック(b)にそれぞれ必要とされる分子量から決めればよい。
【0059】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体ブロック(b)の組成比の範囲を例示すると、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)が5〜95重量%、アクリル系重合体ブロック(b)が95〜5重量%であることが好ましい。より好ましくは、5〜50重量%、アクリル系重合体ブロック(b)が95〜50重量%であり、さらに好ましくは、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)が10〜40重量%、アクリル系重合体ブロック(b)が90〜60重量%である。(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)の割合が10重量%より少ないと、高温でのゴム弾性が低下する傾向にあり、40重量%より多い場合には、エラストマーとしての機械特性、とくに破断伸びが低下する傾向にある。
【0060】
主に耐衝撃性の改質を目的とする場合は、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)が5〜90重量%、アクリル系重合体ブロック(b)が95〜10重量%であることが好ましい。より好ましくは、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)が10〜80重量%、アクリル系重合体ブロック(b)が90〜20重量%、さらに好ましくは、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)が20〜50重量%、アクリル系重合体ブロック(b)が80〜50重量%である。(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)の割合が5重量%より少ないと、熱可塑性樹脂との相溶性が低下するために成形体の外観不良やウェルド物性の低下などをもたらす傾向がある。アクリル系重合体ブロック(b)の割合が10重量%より少ないと、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が低下する傾向がある。
【0061】
また、主に加工性の改質を目的とする場合は、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)が5〜95重量%、アクリル系重合体ブロック(b)が95〜5重量%であることが好ましい。より好ましくは、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)が10〜90重量%、アクリル系重合体ブロック(b)が90〜10重量%、さらに好ましくは、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)が20〜80重量%、アクリル系重合体ブロック(b)が80〜20重量%である。加工性の改質を目的とする場合は、一般的に前記の耐衝撃性の改質を目的とする場合に比べて、ブロック共重合体(A)の添加量が少ないために、適用できる組成の範囲は大きい。(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)の割合が5重量%より少ないと、熱可塑性樹脂との相溶性が低下するために成形体の外観不良やウェルド物性の低下などをもたらす傾向がある。アクリル系重合体ブロック(b)の割合が5重量%より少ないと、熱可塑性樹脂組成物の加工性の改質効果が小さくなる傾向がある。
【0062】
また、樹脂とエラストマーの中間の弾性率を有するコンパウンド材料を得ることを目的とする場合には、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)が5〜90重量%、アクリル系重合体ブロック(b)が95〜10重量%であることが好ましい。より好ましくは、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)が10〜80重量%、アクリル系重合体ブロック(b)が90〜20重量%、さらに好ましくは、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)が20〜60重量%、アクリル系重合体ブロック(b)が80〜40重量%である。(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)の割合が5重量%より少ないと、熱可塑性樹脂との相溶性が低下するために成形体の外観不良やウェルド物性の低下などをもたらす傾向がある。アクリル系重合体ブロック(b)の割合が10重量%より少ないと、熱可塑性樹脂組成物の物性バランスが低下する傾向がある。
【0063】
本発明のブロック共重合体(A)を自動車用軟質材料として利用する場合には、ブロック共重合体(A)を構成する(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体ブロック(b)の組成比は、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)が5〜60重量%、アクリル系重合体ブロック(b)が95〜40重量%であることが好ましく、より好ましくは、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)が10〜40重量%、アクリル系重合体ブロック(b)が90〜60重量%であり、さらに好ましくは(a)が20〜40重量%、(b)が80〜60重量%ある。とくに、自動車用軟質材料の硬度、接着性、機械的強度および伸びなどの点で、好ましくは、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)が20〜30重量%、アクリル系重合体ブロック(b)が80〜70重量%ある。(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)の割合が5重量%より少ないと自動車用軟質材料の成形加工性がわるくなる傾向があり、アクリル系重合体ブロック(b)の割合が40重量%より少ないと成形した自動車用軟質材料の引張り時の強度は大きくなるが、接着性の低下、高硬度化および引張り時の伸びが低下する傾向がある。
【0064】
ブロック共重合体(A)を構成する(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体ブロック(b)の組成比は、自動車用軟質材料の成形性や必要とされる機械特性など、所望とされる物性に応じた組成比にすればよい。発明の範囲はそれらに限定されないが、たとえば、本発明の自動車用軟質材料に良好な成形性を持ち、低硬度、接着性、高機械的特性などが必要とされる場合には、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)が10〜40重量%、アクリル系重合体ブロック(b)が90〜60重量%の自動車用軟質材料を用いればよい。
【0065】
また、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)が(メタ)アクリル酸メチルおよび/またはメタアクリル酸からなり、アクリル系重合体ブロック(b)がアクリル酸−n−ブチルまたは、アクリル酸−n−ブチル/アクリル酸エチル/アクリル酸−2−メトキシエチルからなることが、低硬度、柔軟性、接着性、耐油性、耐熱性の点からさらに好ましい。
【0066】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)が(メタ)アクリル酸メチルからなり、アクリル系重合体ブロック(b)がアクリル酸−n−ブチルまたは、アクリル酸−n−ブチル/アクリル酸エチル/アクリル酸−2−メトキシエチルからなることが、低硬度、柔軟性、接着性、耐油性、コストの点から、さらに好ましい。
【0067】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)が(メタ)アクリル酸メチルおよび/または(メタ)アクリル酸50〜100重量%およびこれと共重合可能な他のビニル系単量体0〜50重量%とからなり、アクリル系重合体ブロック(b)がアクリル酸−n−ブチルまたは、アクリル酸−n−ブチル/アクリル酸エチル/アクリル酸−2−メトキシエチル50〜100重量%、ならびに、これと共重合可能な他のビニル系単量体0〜50重量%とからなることが、必要に応じてさらに耐油性を向上させる場合や、熱可塑性樹脂と組み合わせる場合の相溶性を向上させる点から、さらに好ましい。
【0068】
ブロック共重合体(A)を構成する(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体ブロック(b)のガラス転移温度の関係は、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)のガラス転移温度をTgA、アクリル系重合体ブロック(b)のそれをTgBとして、下式の関係を満たすことが好ましい。
TgA>TgB
【0069】
前記重合体(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)のガラス転移温度(Tg)の設定は、概略、下記のFox式に従い、各重合体部分の単量体の重量比率を設定することにより行なうことができる。
1/Tg=(W1/Tg1)+(W2 /Tg2)+…+(Wm/Tgm
1+W2+…+Wm=1
【0070】
式中、Tgは重合体部分のガラス転移温度を表わし、Tg1、Tg2、…、Tgmは各重合単量体のガラス転移温度を表わす。また、W1、W2、…、Wmは各重合単量体の重量比率を表わす。
【0071】
前記Fox式における各重合単量体のガラス転移温度は、たとえば、ポリマーハンドブック第3版(Polymer Handbook Third Edition)、ウィリー・インターサイエンス(Wiley-Interscience)、1989年)記載の値を用いればよい。なお、前記ガラス転移温度は、DSC(示差走査熱量測定)または動的粘弾性のtanδピークにより測定することができるが、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体ブロック(b)の極性が近すぎたり、ブロックの単量体の連鎖数が少なすぎると、それら測定値と、前記Fox式による計算式とがずれる場合がある。
【0072】
<(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)>
(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)を構成する単量体は、所望する物性のブロック共重合体(A)を得やすい点、コストおよび入手しやすさの点から、メタアクリル酸エステル50〜100重量%、および、これと共重合可能な他のビニル系単量体0〜50重量%、好ましくは0〜25重量%からなる。メタアクリル酸エステルの割合が50重量%より少ないと、メタアクリル酸エステルの特徴である耐候性、高いガラス転移点、樹脂との相溶性などが損なわれる傾向が生ずる。官能基(c)が(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)に含まれる場合には、官能基(c)を有する単量体、もしくは官能基(c)の前駆体となる官能基を有する単量体は、メタアクリル酸エステル、またはこれと共重合可能な他のビニル系単量体であることが好ましい。
【0073】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)に必要とされる分子量は、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)に必要とされる凝集力と、その重合に必要な時間などから決めればよい。
【0074】
凝集力は、分子間の相互作用(言い換えれば極性)と絡み合いの度合いに依存するとされており、分子量を増やすほど絡み合い点が増加して凝集力を増加させる。すなわち、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)に必要とされる分子量をMaとし、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)を構成する重合体の絡み合い点間分子量をMcaとしてMaの範囲を例示すると、凝集力が必要な場合には、好ましくはMa>Mcaである。さらに例をあげると、さらなる凝集力が必要とされる場合には、好ましくはMa>2×Mcaであり、逆に、ある程度の凝集力とクリープ性を両立させたいときは、Mca<Ma<2×Mcaが好ましい。絡み合い点間分子量は、Wuらの文献(ポリマーエンジニアリングアンドサイエンス(Polym. Eng. and Sci.)、1990年、30巻、753頁)などを参照すればよい。たとえば、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)がすべてメタアクリル酸メチルから構成されているとして、凝集力が必要とされる場合の(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)の数平均分子量の範囲を例示すると、9200以上であることが好ましい。ただし、数平均分子量が大きいと重合時間が長くなる傾向があるため、必要とする生産性に応じて設定すればよいが、好ましくは200000以下、さらに好ましくは100000以下である。ただし、官能基(c)が(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)に含まれる場合には、官能基(c)による凝集力が付与されるので、分子量はこれより低く設定することができる。
【0075】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)を構成するメタアクリル酸エステルとしては、たとえば、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−プロピル、メタアクリル酸イソプロピル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸t−ブチル、メタアクリル酸n−ペンチル、メタアクリル酸n−ヘキシル、メタアクリル酸n−ヘプチル、メタアクリル酸n−オクチル、メタアクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸ノニル、メタアクリル酸デシル、メタアクリル酸ドデシル、メタアクリル酸ステアリルなどのメタアクリル酸脂肪族炭化水素(たとえばアルキル)エステル;メタアクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸イソボルニルなどのメタアクリル酸脂環式炭化水素エステル;メタアクリル酸ベンジルなどのメタアクリル酸アラルキルエステル;メタアクリル酸フェニル、メタアクリル酸トルイルなどのメタアクリル酸芳香族炭化水素エステル;メタアクリル酸2−メトキシエチル、メタアクリル酸3−メトキシブチルなどのメタアクリル酸とエーテル性酸素を有する官能基含有アルコールとのエステル;メタアクリル酸トリフルオロメチルメチル、メタアクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロエチル、メタアクリル酸パーフルオロメチル、メタアクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、メタアクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、メタアクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどのメタアクリル酸フッ化アルキルエステルなどがあげられる。メタアクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタアクリル酸−4−ヒドロキシブチル、メタアクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタアクリル酸グリシジル、メタアクリル酸2-アミノエチル、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、メタアクリル酸のエチレンオキサイド付加物、これらは単独でまたはこれらの2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、組み合わせる熱可塑性樹脂との相溶性、コストおよび入手しやすさの点で、メタアクリル酸メチルが好ましい。
【0076】
(メタ)アクリル酸重合体ブロック(a)を構成するメタアクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体としては、たとえば、アクリル酸エステル、芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン含有不飽和化合物、ケイ素含有不飽和化合物、不飽和カルボン酸化合物、不飽和ジカルボン酸化合物、ビニルエステル化合物、マレイミド系化合物などをあげることができる。
【0077】
アクリル酸エステルとしては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ペンチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸n−ヘプチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリルなどのアクリル酸脂肪族炭化水素(たとえばアルキル)エステル;アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボルニルなどのアクリル酸脂環式炭化水素エステル;アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイルなどのアクリル酸芳香族炭化水素エステル;アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸アラルキルエステル;アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸3−メトキシブチルなどのアクリル酸とエーテル性酸素を有する官能基含有アルコールとのエステル;アクリル酸トリフルオロメチルメチル、アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチル、アクリル酸パーフルオロメチル、アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどのアクリル酸フッ化アルキルエステル、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸−4−ヒドロキシブチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2-アミノエチル、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、アクリル酸のエチレンオキサイド付加物などをあげることができる。
【0078】
芳香族アルケニル化合物としては、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレンなどをあげることができる。
【0079】
シアン化ビニル化合物としては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどをあげることができる。
【0080】
共役ジエン系化合物としては、たとえば、ブタジエン、イソプレンなどをあげることができる。
【0081】
ハロゲン含有不飽和化合物としては、たとえば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなどをあげることができる。
【0082】
ケイ素含有不飽和化合物としては、たとえば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどをあげることができる。
【0083】
不飽和カルボン酸化合物としては、たとえば、メタアクリル酸、アクリル酸などをあげることができる。
【0084】
不飽和ジカルボン酸化合物としては、たとえば、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステルなどをあげることができる。
【0085】
ビニルエステル化合物としては、たとえば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどをあげることができる。
【0086】
マレイミド系化合物としては、たとえば、マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどをあげることができる。
【0087】
これらは、単独でまたはこれらの2種以上を組み合わせて用いられる。これらのビニル系単量体は、ブロック共重合体(A)を熱可塑性樹脂と組み合わせる場合の相溶性によって好ましいものを選択することができる。本発明のブロック共重合体(A)を自動車用軟質材料として用いる場合には、これらのビニル系単量体は、自動車用軟質材料の成形性や、必要とされる機械特性に応じて、好ましいものを選択することができる。また、メタアクリル酸メチルの重合体は、熱分解によりほぼ定量的に解重合するが、それを抑えるために、アクリル酸エステル、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸2−メトキシエチルもしくはそれらの混合物、または、スチレンなどを共重合することができる。また、さらなる耐油性の向上を目的として、アクリロニトリルを共重合することができる。
【0088】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)のガラス転移温度は、好ましくは25℃以上、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは50℃以上、さらに好ましくは100℃以上、とくに好ましくは105℃以上、最も好ましくは110℃以上である。(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)のガラス転移温度は、ガラス転移温度が25℃より低いと、成形加工性がわるくなる傾向がある。また、ガラス転移温度が100℃未満では、熱可塑性エラストマーとしての耐熱性が不足する、すなわち、高温でのゴム弾性が低下する傾向がある。
【0089】
前記重合体(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)のガラス転移温度(Tg)の設定は、前記のFox式に従い、各重合体部分の単量体の重量比率を設定することにより行なうことができる。ここで、ガラス転移温度とは、各重合単量体のガラス転移温度として、ポリマーハンドブック第3版(Polymer Handbook Third Edition)、ウィリー・インターサイエンス(Wiley-Interscience)、1989年)記載の値を用いて、Fox式に従って計算したものとする。
【0090】
<アクリル系重合体ブロック(b)>
アクリル系重合体ブロック(b)を構成する単量体は、所望する物性の組成物を得やすい点、コストおよび入手しやすさの点から、アクリル酸エステル50〜100重量%および、これと共重合可能なビニル系単量体0〜50重量%、好ましくは0〜25重量%とからなる。アクリル酸エステルの割合が50重量%より少ないと、アクリル酸エステルを用いる場合の特徴である組成物の物性、とくに耐衝撃性および柔軟性が損なわれる傾向が生ずる。
【0091】
アクリル系重合体ブロック(b)に必要とされる分子量は、アクリル系重合体ブロック(b)に必要とされる弾性率とゴム弾性、その重合に必要な時間などから決めればよい。
【0092】
弾性率は、分子鎖の動き易さ(言い換えればガラス転移温度)とその分子量に密接な関連があり、ある一定以上の分子量でないと本来の弾性率を示さない。ゴム弾性についても同様であるが、ゴム弾性の観点からは、分子量が大きい方が望ましい。すなわち、アクリル系重合体ブロック(b)に必要とされる分子量をMbとしてその範囲を例示すると、好ましくはMb>3000、より好ましくはMb>5000、さらに好ましくはMb>10000、とくに好ましくはMb>20000、最も好ましくはMb>40000である。ただし、数平均分子量が大きいと重合時間が長くなる傾向があるため、必要とする生産性に応じて設定すればよいが、好ましくは500000以下であり、さらに好ましくは300000以下である。
【0093】
アクリル系重合体ブロック(b)を構成するアクリル酸エステルとしては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ペンチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸n−ヘプチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリルなどのアクリル酸脂肪族炭化水素(たとえばアルキル)エステル;アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボルニルなどのアクリル酸脂環式炭化水素エステル;アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイルなどのアクリル酸芳香族炭化水素エステル;アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸アラルキルエステル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸3−メトキシブチルなどのアクリル酸とエーテル性酸素を有する官能基含有アルコールとのエステル;アクリル酸トリフルオロメチルメチル、アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチル、アクリル酸パーフルオロメチル、アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどのアクリル酸フッ化アルキルエステル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−4−ヒドロキシブチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2−アミノエチル、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、アクリル酸のエチレンオキサイド付加物などをあげることができる。これらは単独でまたはこれらの2種以上を組み合わせて用いられる。
【0094】
これらの中でも、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、コスト、および入手しやすさの点で、アクリル酸n−ブチルが好ましい。また、組成物に耐油性が必要な場合は、アクリル酸n−エチルが好ましい。また、低温特性が必要な場合はアクリル酸2−エチルヘキシルが好ましい。さらに、耐油性と低温特性を両立させたいときにはアクリル酸n−エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−メトキシエチルの混合物が好ましい。また、本発明のブロック共重合体(A)を自動車用軟質材料として使用する場合には、成形した自動車用軟質材料の柔軟性および耐油性、入手しやすさの点で、アクリル酸-n-ブチルあるいはアクリル酸−n−ブチル/アクリル酸エチル/アクリル酸−2−メトキシエチルが好ましい。
【0095】
アクリル系重合体ブロック(b)を構成するメタアクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体としては、たとえば、メタアクリル酸エステル、芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン含有不飽和化合物、ケイ素含有不飽和化合物、不飽和カルボン酸化合物、不飽和ジカルボン酸化合物、ビニルエステル化合物、マレイミド系化合物などをあげることができる。
【0096】
メタアクリル酸エステルとしては、たとえば、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−プロピル、メタアクリル酸イソプロピル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸t−ブチル、メタアクリル酸n−ペンチル、メタアクリル酸n−ヘキシル、メタアクリル酸n−ヘプチル、メタアクリル酸n−オクチル、メタアクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸ノニル、メタアクリル酸デシル、メタアクリル酸ドデシル、メタアクリル酸ステアリルなどのメタアクリル酸脂肪族炭化水素(たとえばアルキル)エステル;メタアクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸イソボルニルなどのメタアクリル酸脂環式炭化水素エステル;メタアクリル酸ベンジルなどのメタアクリル酸アラルキルエステル;メタアクリル酸フェニル、メタアクリル酸トルイルなどのメタアクリル酸芳香族炭化水素エステル;メタアクリル酸2−メトキシエチル、メタアクリル酸3−メトキシブチルなどのメタアクリル酸とエーテル性酸素を有する官能基含有アルコールとのエステル;メタアクリル酸トリフルオロメチルメチル、メタアクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロエチル、メタアクリル酸パーフルオロメチル、メタアクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、メタアクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、メタアクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどのメタアクリル酸フッ化アルキルエステル、メタアクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタアクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタアクリル酸グリシジル、メタアクリル酸2-アミノエチル、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、メタアクリル酸のエチレンオキサイド付加物などをあげることができる。
【0097】
芳香族アルケニル化合物としては、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレンなどをあげることができる。
【0098】
シアン化ビニル化合物としては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどをあげることができる。
【0099】
共役ジエン系化合物としては、たとえば、ブタジエン、イソプレンなどをあげることができる。
【0100】
ハロゲン含有不飽和化合物としては、たとえば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなどをあげることができる。
【0101】
ケイ素含有不飽和化合物としては、たとえば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどあげることができる。
【0102】
不飽和カルボン酸化合物としては、たとえば、メタアクリル酸、アクリル酸などをあげることができる。
【0103】
不飽和ジカルボン酸化合物としては、たとえば、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステルなどをあげることができる。
【0104】
ビニルエステル化合物としては、たとえば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどをあげることができる。
【0105】
マレイミド系化合物としては、たとえば、マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどをあげることができる。
【0106】
これらは、単独でまたはこれらの2種以上を組み合わせて用いられる。これらのビニル系単量体は、アクリル系重合体ブロック(b)に要求されるガラス転位温度、弾性率、極性、また、組成物に要求される物性などによって好ましいものを選択することができる。たとえば、組成物の耐油性の向上を目的としてアクリロニトリルを共重合することができる。また、耐油性を必要とする場合は、アクリル酸−n−ブチル/アクリル酸エチル/アクリル酸2−メトキシエチルを用いることができる。
【0107】
なお、本発明のブロック共重合体(A)を自動車用軟質材料として用いる場合、アクリル系重合体ブロック(b)のガラス転移温度は、好ましくは25℃以下であり、より好ましくは0℃以下であり、さらに好ましくは−20℃以下である。ガラス転移温度が25℃より高いと、成形した自動車用軟質材料の柔軟性や低温特性が低下する傾向がある。
【0108】
<官能基(c)>
官能基(c)は、カルボキシル基であることが好ましい。これらの官能基は所望に応じて選択することができる。
【0109】
官能基(c)の導入方法については、官能基を有する単量体が重合条件下で触媒を被毒することがない場合は、直接重合により導入することが好ましく、官能基を有する単量体が重合時に触媒を失活する場合には、官能基変換により官能基(c)を導入する方法が好ましい。以下に、その方法について説明する。
【0110】
官能基変換によりに官能基(c)を導入する方法では、官能基(c)を適当な保護基で保護した形、または、官能基(c)の前駆体となる官能基の形でブロック共重合体(A)に導入し、そののちに公知の化学反応で官能基を生成させることができる。この方法により、カルボキシル基を導入することができる。
【0111】
カルボキシル基を有するブロック共重合体(A)の合成方法としては、たとえば、メタアクリル酸t−ブチル、アクリル酸t−ブチル、メタアクリル酸トリメチルシリル、アクリル酸トリメチルシリルなどのように、カルボキシル基の前駆体となる官能基を有する単量体を含むブロック共重合体(A)を合成し、加水分解もしくは酸分解など公知の化学反応によってカルボキシル基を生成させる方法がある。
【0112】
特開平10−298248号公報および特開2001−234146号公報では、官能基変換によってカルボキシル基を有するアクリル系ブロック共重合体を合成しているが、官能基を導入することによるアクリル系ブロック共重合体の耐熱分解性に対する効果については何ら言及されていない。
【0113】
カルボキシル基などの官能基は強い凝集力をもっており、これらの官能基を有する単量体はガラス転移温度(Tg)が高く、ブロック共重合体(A)の耐熱分解性を向上させる効果を有する。ヒドロキシル基などの官能基も水素結合能を有すが、前記の官能基を有する単量体に比較するとTgも低く、耐熱分解性を向上させる効果は小さい。
【0114】
カルボキシル基を有する重合体のガラス転移温度は、たとえば、ポリメタアクリル酸が228℃、ポリアクリル酸が106℃と高く、これらを構成する単量体を導入することでブロック共重合体(A)の耐熱分解性を向上できる。
【0115】
なお、本発明のブロック共重合体(A)の物性は、以下の方法にて測定することが可能である。
【0116】
(耐熱分解性)
加熱速度10.0℃/分、流量50.0ml/分のチッ素雰囲気下で熱重量分析を行なうことによって測定した5%重量損失温度を比較する。5%重量損失温度は、試料を前記の条件において連続的に加熱した場合に、試料の重量(MT)が、以下に示す式を満たす温度とする。ただし、M100は100℃における試料の重量とする。
5.00=(M100−MT)/M100×100
【0117】
(機械強度(引張強さ))
JIS K6301に準拠し、測定することが可能であるが、これに類似する方法でも測定可能であり、たとえば、JIS K7113に記載の方法に準拠して測定することも、本発明においては同様の評価と見なすものとする。
【0118】
(硬度)
JIS K6253に従い、23℃における硬度(直後、JIS A)を測定した。ただし、タイプAデュロメータによる硬さが90をこえたものは、タイプDデュロメータにより測定した(JIS D)。
【0119】
(圧縮永久歪み)
JIS K6301に準拠し、円柱型成形体を圧縮率25%の条件下70℃で22時間保持し、室温で30分放置したのち、成形体の厚さを測定し、歪みの残留度を計算する。すなわち、圧縮永久歪み0%で歪みが全部回復し、圧縮永久歪み100%で歪みが全く回復しないことに相当する。
【0120】
<ブロック共重合体(A)の製法>
ブロック共重合体(A)を製造する方法としては、とくに限定されないが、高分子開始剤を用いた制御重合を用いることが好ましい。制御重合としては、リビングアニオン重合や連鎖移動剤を用いるラジカル重合、近年開発されたリビングラジカル重合があげられる。なかでも、リビングラジカル重合が、ブロック共重合体(A)の分子量および構造の制御の点から好ましい。
【0121】
リビングラジカル重合は、重合末端の活性が失われることなく維持されるラジカル重合である。リビング重合とは狭義においては、末端が常に活性を持ち続ける重合のことを指すが、一般には、末端が不活性化されたものと活性化されたものが平衡状態にある擬リビング重合も含まれる。ここでの定義も後者である。リビングラジカル重合は、近年様々なグループで積極的に研究がなされている。
【0122】
その例としては、ポリスルフィドなどの連鎖移動剤を用いるもの、コバルトポルフィリン錯体(ジャーナルオブアメリカンケミカルソサエティ(J. Am. Chem. Soc.)、1994年、116巻、7943頁)やニトロキシド化合物などのラジカル捕捉剤を用いるもの(マクロモレキュールズ(Macromolecules)、1994年、27巻、7228頁)、有機ハロゲン化物などを開始剤とし遷移金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合(Atom Transfer Radical Polymerization:ATRP)などをあげることができる。本発明において、これらのうちどの方法を使用するかはとくに制約はないが、制御の容易さの点などから原子移動ラジカル重合が好ましい。
【0123】
原子移動ラジカル重合は、有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤とし、周期律表第8族、9族、10族または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として重合される(たとえば、マティジャスツェウスキー(Matyjaszewski)ら、ジャーナルオブアメリカンケミカルソサエティ(J. Am. Chem. Soc.)、1995年、117巻、5614頁、マクロモレキュールズ(Macromolecules)、1995年、28巻、7901頁、サイエンス(Science)、1996年、272巻、866頁、または、澤本(Sawamoto)ら、マクロモレキュールズ(Macromolecules)、1995年、28巻、1721頁参照)。
【0124】
これらの方法によると、一般的に、非常に重合速度が高く、ラジカル同士のカップリングなどの停止反応が起こりやすいラジカル重合でありながら、重合がリビング的に進行し、分子量分布の狭い(Mw/Mn=1.1〜1.5)重合体が得られ、分子量を単量体と開始剤の仕込み比によって自由にコントロールすることができる。
【0125】
原子移動ラジカル重合法において、開始剤として用いられる有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物としては、1官能性、2官能性、または、多官能性の化合物が使用できる。これらは目的に応じて使い分ければよいが、ジブロック共重合体を製造する場合は、開始剤の入手のしやすさの点から1官能性化合物が好ましい。a−b−a型のトリブロック共重合体、b−a−b型のトリブロック共重合体を製造する場合は、反応工程数、時間の短縮の点から2官能性化合物を使用することが好ましく、分岐状ブロック共重合体を製造する場合は、反応工程数、時間の短縮の点から多官能性化合物を使用することが好ましい。
【0126】
また、前記開始剤として高分子開始剤を用いることも可能である。高分子開始剤とは、有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物のうち、分子鎖末端にハロゲン原子の結合した重合体からなる化合物である。このような高分子開始剤は、リビングラジカル重合法以外の制御重合法でも製造することが可能であるため、異なる重合法で得られる重合体を結合したブロック共重合体(A)が得られるという特徴がある。
【0127】
1官能性化合物としては、たとえば、
65−CH2X、
65−C(H)(X)−CH3
65−C(X)(CH32
1−C(H)(X)−COOR2
1−C(CH3)(X)−COOR2
1−C(H)(X)−CO−R2
1−C(CH3)(X)−CO−R2
1−C64−SO2
で示される化合物などがあげられる。
【0128】
式中、C65はフェルニル基、C64はフェニレン基(オルト置換、メタ置換、パラ置換のいずれでもよい)を表す。R1は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、または、炭素数7〜20のアラルキル基を表す。Xは、塩素、臭素またはヨウ素を表す。R2は炭素数1〜20の1価の有機基を表す。
【0129】
1として、炭素数1〜20のアルキル基(脂環式炭化水素基を含む)の具体例としては、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−へプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、イソボルニル基などがあげられる。炭素数6〜20のアリール基の具体例としては、たとえば、フェニル基、トリイル基、ナフチル基などがあげられる。炭素数7〜20のアラルキル基の具体例としては、たとえば、ベンジル基、フェネチル基などがあげられる。
【0130】
1官能性化合物の具体例としては、たとえば、臭化トシル、2−臭化プロピオン酸メチル、2−臭化プロピオン酸エチル、2−臭化プロピオン酸ブチル、2−臭化イソ酪酸メチル、2−臭化イソ酪酸エチル、2−臭化イソ酪酸ブチルなどがあげられる。これらのうちでは、2−臭化プロピオン酸エチル、2−臭化プロピオン酸ブチルが、アクリル酸エステル単量体の構造と類似しているために重合を制御しやすい点から好ましい。
【0131】
2官能性化合物としては、たとえば、
XCH2−C64−CH2−X、
XCH(CH3)−C64−CH(CH3)−X、
XC(CH32−C64−C(CH32−X、
XCH(COOR3)−(CH2n−CH(COOR3)−X、
XC(CH3)(COOR3)−(CH2n−C(CH3)(COOR3)−X、
XCH(COR3)−(CH2n−CH(COR3)−X
XC(CH3)(COR3)−(CH2n−C(CH3)(COR3)−X、
XCH2−CO−CH2−X、
XCH(CH3)−CO−CH(CH3)−X、
XC(CH32−CO−C(CH32−X、
XCH(C65)−CO−CH(C65)−X、
XCH2−COO−(CH2n−OCO−CH2−X、
XCH(CH3)−COO−(CH2n−OCO−CH(CH3)−X、
XC(CH32−COO−(CH2n−OCO−C(CH32−X、
XCH2−CO−CO−CH2−X、
XCH(CH3)−CO−CO−CH(CH3)−X、
XC(CH32−CO−CO−C(CH32−X、
XCH2−COO−C64−OCO−CH2−X、
XCH(CH3)−COO−C64−OCO−CH(CH3)−X、
XC(CH32−COO−C64−OCO−C(CH32−X、
XSO2−C64−SO2−X
で示される化合物などがあげられる。
【0132】
式中、R3は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20アリール基、または、炭素数7〜20アラルキル基を表す。nは0〜20の整数を表す。C65、C64、Xは、前記と同様である。
【0133】
3の炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基の具体例は、R1の炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基の具体例と同じであるため、説明は省略する。
【0134】
2官能性化合物の具体例としては、たとえば、ビス(ブロモメチル)ベンゼン、ビス(1−ブロモエチル)ベンゼン、ビス(1−ブロモイソプロピル)ベンゼン、2,3−ジブロモコハク酸ジメチル、2,3−ジブロモコハク酸ジエチル、2,3−ジブロモコハク酸ジブチル、2,4−ジブロモグルタル酸ジメチル、2,4−ジブロモグルタル酸ジエチル、2,4−ジブロモグルタル酸ジブチル、2,5−ジブロモアジピン酸ジメチル、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル、2,5−ジブロモアジピン酸ジブチル、2,6−ジブロモピメリン酸ジメチル、2,6−ジブロモピメリン酸ジエチル、2,6−ジブロモピメリン酸ジブチル、2,7−ジブロモスベリン酸ジメチル、2,7−ジブロモスベリン酸ジエチル、2,7−ジブロモスベリン酸ジブチルなどがあげられる。これらのうちでは、ビス(ブロモメチル)ベンゼン、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル、2,6−ジブロモピメリン酸ジエチルが、原料の入手性の点から好ましい。
【0135】
多官能性化合物としては、たとえば、
63−(CH2−X)3
63−(CH(CH3)−X)3
63−(C(CH32−X)3
63−(OCO−CH2−X)3
63−(OCO−CH(CH3)−X)3
63−(OCO−C(CH32−X)3
63−(SO2−X)3
で示される化合物などがあげられる。
【0136】
式中、C63は3価のフェニル基(3つの結合手の位置は1位〜6位のいずれにある組み合わせでもよい)、Xは前記と同じである。
【0137】
多官能性化合物の具体例としては、たとえば、トリス(ブロモメチル)ベンゼン、トリス(1−ブロモエチル)ベンゼン、トリス(1−ブロモイソプロピル)ベンゼンなどがあげられる。これらのうちでは、トリス(ブロモメチル)ベンゼンが、原料の入手性の点から好ましい。
【0138】
なお、重合を開始する基以外にも官能基を有する有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物を用いると、容易に末端または分子内に重合を開始する基以外の官能基が導入された重合体が得られる。このような重合を開始する基以外の官能基としては、アルケニル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、シリル基などがあげられる。
【0139】
前記開始剤として用いることができる有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物は、ハロゲン基(ハロゲン原子)が結合している炭素がカルボニル基またはフェニル基などと結合しており、炭素−ハロゲン結合が活性化されて重合が開始する。使用する開始剤の量は、必要とするブロック共重合体(A)の分子量に合わせて、単量体との比から決定すればよい。すなわち、開始剤1分子あたり、何分子の単量体を使用するかによって、ブロック共重合体(A)の分子量を制御することができる。
【0140】
前記原子移動ラジカル重合の触媒として用いられる遷移金属錯体としては、とくに限定はないが、好ましいものとして、1価および0価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄、ならびに、2価のニッケルの錯体があげられる。
【0141】
これらの中でも、コストや反応制御の点から銅の錯体が好ましい。1価の銅化合物としては、たとえば、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅などがあげられる。その中でも塩化第一銅、臭化第一銅が、重合の制御の観点から好ましい。1価の銅化合物を用いる場合、触媒活性を高めるために、2,2′−ビピリジル、その誘導体(たとえば4,4′−ジノリル−2,2′−ビピリジル、4,4′−ジ(5−ノリル)−2,2′−ビピリジルなど)などの2,2′−ビピリジル系化合物;1,10−フェナントロリン、その誘導体(たとえば4,7−ジノリル−1,10−フェナントロリン、5,6−ジノリル−1,10−フェナントロリンなど)などの1,10−フェナントロリン系化合物;テトラメチルジエチレントリアミン(TMEDA)、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチル(2−アミノエチル)アミンなどのポリアミンなどを配位子として添加してもよい。
【0142】
また、2価の塩化ルテニウムのトリストリフェニルホスフィン錯体(RuCl2(PPh33)も触媒として好ましい。ルテニウム化合物を触媒として用いる場合は、活性化剤としてアルミニウムアルコキシド類を添加してもよい。さらに、2価の鉄のビストリフェニルホスフィン錯体(FeCl2(PPh32)、2価のニッケルのビストリフェニルホスフィン錯体(NiCl2(PPh32)、および、2価のニッケルのビストリブチルホスフィン錯体(NiBr2(PBu32)も、触媒として好ましい。
【0143】
使用する触媒、配位子および活性化剤は、とくに限定されないが、使用する開始剤、単量体および溶媒と必要とする反応速度の関係から適宜決定すればよい。たとえば、アクリル酸エステルなどのアクリル系単量体の重合には、高分子鎖の成長末端が炭素−臭素結合を持つことが重合の制御の点から好ましいことから、使用する開始剤が有機臭化物または臭化スルホニル化合物であり、溶媒がアセトニトリルであることが好ましく、臭化銅、好ましくは臭化第一銅に含まれる銅を中心金属とする金属錯体触媒を用い、ペンタメチルジエチレントリアミンなどの配位子を用いることが好ましい。また、メタアクリル酸エステルなどのメタアクリル系単量体の重合には、高分子鎖の成長末端が炭素−塩素結合を持つことが重合の制御の点から好ましいことから、使用する開始剤が有機塩化物または塩化スルホニル化合物であり、溶媒がアセトニトリル、必要に応じてトルエンなどとの混合溶媒であることが好ましく、塩化銅、好ましくは塩化第一銅に含まれる銅を中心金属とする金属錯体触媒を用い、ペンタメチルジエチレントリアミンなどの配位子を用いることが好ましい。
【0144】
使用する触媒、配位子の量は、使用する開始剤、単量体および溶媒の量と必要とする反応速度の関係から決定すればよい。たとえば、分子量の高い重合体を得ようとする場合には、分子量の低い重合体を得ようとする場合よりも、開始剤/単量体の比を小さくしなければならないが、そのような場合に、触媒、配位子を多くして、反応速度を増大させることができる。また、ガラス転移点が室温より高い重合体が生成する場合、系の粘度を下げて攪拌効率を上げるために適当な有機溶媒を添加した場合には、反応速度が低下する傾向があるが、そのような場合には、触媒、配位子を多くして、反応速度を増大させることができる。
【0145】
前記原子移動ラジカル重合は、無溶媒中で(塊状重合)、または、各種の溶媒中で行なうことができる。また、塊状重合、各種の溶媒中で行なう重合において、重合を途中で停止させることもできる。
【0146】
前記溶媒としては、たとえば、炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒、ニトリル系溶媒、エステル系溶媒、カーボネート系溶媒などを用いることができる。
【0147】
炭化水素系溶媒としては、ベンゼン、トルエンなどをあげることができる。エーテル系溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどをあげることができる。ハロゲン化炭化水素系溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルムなどをあげることができる。ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどをあげることができる。アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノールなどをあげることができる。ニトリル系溶媒としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどをあげることができる。エステル系溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチルなどをあげることができる。カーボネート系溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどをあげることができる。
【0148】
これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0149】
溶媒を使用する場合、その使用量は、系全体の粘度と必要とする攪拌効率(すなわち、反応速度)の関係から適宜決定すればよい。また、塊状重合、各種の溶媒中で行なう重合において重合を途中で停止させる場合においても、反応を停止させる点での単量体の転化率は、系全体の粘度と必要とする攪拌効率(すなわち、反応速度)の関係から適宜決定すればよい。
【0150】
前記重合は、室温〜200℃の範囲、好ましくは50〜150℃の範囲で行なうことができる。
【0151】
前記重合により、ブロック共重合体(A)を製造するには、単量体を逐次添加する方法、あらかじめ合成した重合体を高分子開始剤として次のブロックを重合する方法、別々に重合した重合体を反応により結合する方法などがあげられる。これらの方法はいずれによってもよく、目的に応じて使い分ければよい。製造工程の簡便性の点からは、単量体の逐次添加による方法が好ましく、前のブロックの単量体が残存して次のブロックに共重合してしまうことを避けたい場合には、あらかじめ合成した重合体を高分子開始剤として次のブロックを重合する方法が好ましい。
【0152】
以下に、単量体の逐次添加による場合、あらかじめ合成した重合体を高分子開始剤として次のブロックを重合する場合について、詳細に説明するが、本発明のブロック共重合体(A)の製造方法を限定するものでは全くない。
【0153】
単量体の逐次添加による場合、先に重合させるべく仕込んだ単量体の転化率が80〜95%の時点で、つぎに重合させたい単量体を仕込むことが望ましい。転化率が95%をこえるまで(たとえば96〜100%まで)重合を進行させた場合には、高分子鎖の成長反応が確率的におさえられる。また、高分子ラジカル同士が反応しやすくなるために、不均化、カップリング、連鎖移動などの副反応が起こりやすくなる傾向がある。転化率が80%未満の時点(たとえば79%以下の時点)でつぎに重合させたい単量体を仕込んだ場合には、先に重合させるために仕込んだ単量体がつぎに重合させたい単量体と混合して共重合してしまうことが問題となる場合がある。
【0154】
また、この場合、単量体の添加の順序として、まずアクリル系単量体を仕込んで重合させたのちにメタアクリル系単量体を仕込んで重合させる方法(x1)と、まずメタアクリル系単量体を仕込んで重合させたのちにアクリル系単量体を仕込んで重合させる方法(y1)とが考えられるが、まずアクリル系単量体を仕込んで重合させたのちにメタアクリル系単量体を仕込んで重合させる方法(x1)が、重合の制御の観点から好ましい。これは、アクリル系重合体ブロックの末端から(メタ)アクリル系重合体ブロックを成長させることが好ましいからである。
【0155】
あらかじめ合成した重合体を高分子開始剤として次のブロックを重合する方法として、たとえば、1つ目のブロックの重合の所望の時点で、リビング状態で一旦温度を下げ、重合を止めて、1つ目のブロックの単量体を減圧留去などしたのち、2つ目のブロックの単量体を添加する方法があげられる。3つ目以降のブロックを重合させたい場合にも、2つ目のブロックの場合と同様に操作すればよい。この方法では、2つ目以降のブロックの重合時に、残存した前のブロックの単量体が共重合してしまうことを避けることができる。
【0156】
また、この場合、ブロックの重合の順序として、まずアクリル系ブロックを重合させたのちにメタアクリル系ブロックを重合させる方法(x2)と、まずメタアクリル系ブロックを重合させたのちにアクリル系ブロックを重合させる方法(y2)とが考えられるが、まずアクリル系ブロックを重合させたのちにメタアクリル系ブロックを重合させる方法(x2)が重合の制御の観点から好ましい。これは、アクリル系重合体ブロックの末端から(メタ)アクリル系重合体ブロックを成長させることが好ましいからである。
【0157】
ここで、アクリル系単量体、メタアクリル系単量体などの転化率の求め方について説明する。転化率を求めるのには、ガスクロマトグラフ(GC)法、重量法などが適用可能である。GC法は、重合系の反応液を反応開始前および反応途中で随時サンプリングしてGC測定し、単量体と重合系内にあらかじめ添加された内部標準物質との存在比から、単量体の消費率を求める方法である。この方法の利点は、複数の単量体が系内に存在している場合でも、それぞれの転化率を独立して求めることができることである。重量法は、重合系の反応液をサンプリングして、その乾燥前の重量と乾燥後の重量から固形分濃度を求め、単量体の全体しての転化率を求める方法である。この方法の利点は、簡単に転化率を求めることができることである。これらの方法のうち、複数の単量体が系内に存在する場合、たとえば、メタアクリル系単量体の共重合成分としてアクリル系単量体が含まれている場合などには、GC法が好ましい。
【0158】
重合によって得られた反応液は、重合体と金属錯体の混合物を含んでおり、カルボン酸基、もしくは、スルホン酸基を含有する有機酸を添加して金属錯体と金属塩を生成させ、生成した金属錯体を濾過などにより、固形分を除去し、引き続き、塩基性活性アルミナ、塩基性吸着剤、固体無機酸、陰イオン交換樹脂、セルロース陰イオン交換体吸着処理により、溶液中に残存する酸などの不純物を除去することで、アクリル系ブロック共重合体樹脂溶液を得ることができる。
【0159】
このようにして得られた重合体溶液は、引き続き、蒸発操作により重合溶媒および未反応モノマーを除去して、ブロック共重合体(A)を単離する。蒸発方式としては、薄膜蒸発方式、フラッシュ蒸発方式、押出しスクリューを備えた横形蒸発方式などを用いることができる。アクリル系ブロック共重合体(A)は粘着性を有するため、前記蒸発方式の中でも押出しスクリューを備えた横形蒸発方式単独、あるいは他の蒸発方式と組み合わせることにより、効率的な蒸発が可能である。
【0160】
カルボキシル基の前駆体となる官能基を、カルボキシル基に変換する方法としては、とくに限定されるものではないが、カルボキシル基の前駆体となる官能基を有するブロック共重合体(A)を溶剤で希釈し、酸触媒の存在下、加熱する方法が好ましく用いられる。その際、水の存在しない反応系では酸分解反応を、水を添加することで加水分解反応を、それぞれおこなうことができる。これらは、反応の簡便さや副生成物などを考慮して選択することができる。
【0161】
この反応に用いられる溶媒としては、たとえば、炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒、ニトリル系溶媒、エステル系溶媒、カーボネート系溶媒などを用いることができる。炭化水素系溶媒としては、ベンゼン、トルエンなどをあげることができる。
【0162】
エーテル系溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどをあげることができる。ハロゲン化炭化水素系溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルムなどをあげることができる。ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどをあげることができる。アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノールなどをあげることができる。ニトリル系溶媒としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどをあげることができる。エステル系溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチルなどをあげることができる。カーボネート系溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどをあげることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0163】
また、酸触媒としては、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などの有機酸、塩酸や硫酸などの無機酸、およびスルホン酸型などのH+型イオン交換樹脂交換樹脂などを用いることができる。加える酸触媒の量は、ブロック共重合体(A)100重量部あたり、有機酸および無機酸を用いる場合は、0.1〜20重量部が好ましく、1〜5重量部がより好ましい。H+型イオン交換樹脂交換樹脂を用いる場合は、0.1〜20重量部が好ましく、1〜10重量部がより好ましい。
【0164】
酸触媒の存在下での加熱温度は、50℃以上が好ましく、希釈溶剤の還流温度に応じて設定することができるが、あまり高温になるとカルボキシル基の前駆体である部位以外の(メタ)アクリル酸エステル部位が分解するおそれがあるため、160℃以下とするのが好ましく、140℃以下がより好ましく、80〜140℃の範囲がさらに好ましい。
【0165】
本発明で得られるブロック共重合体(A)は、アクリル系ブロック共重合体が本来有する特性を維持しながら、高温における圧縮永久歪みが大幅に改善されており、たとえば、包装材料、建築、土木材料、自動車用材料、家電製品用材料、その他雑貨品用材料などの分野で有用なホース、シート、フィルム、異形押出成形品、各種射出成形品などの製造に好適に使用することができる。このような製品の製造は、射出成形、押出し成形、カレンダー成形などの通常熱可塑性樹脂で用いられる成形法により成形することができる。また、エラストマー材料、樹脂、ゴム、アスファルトなどの改質剤、制振剤、粘着剤のベースポリマー、樹脂改質剤の成分として用いることができる。
【0166】
<熱可塑性樹脂(B)>
本発明のブロック共重合体(A)は、熱可塑性樹脂と組み合わせた組成物として使用することができる。この目的で使用しうる熱可塑性樹脂(B)としては、たとえば、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状オレフィン共重合樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、およびポリアミドイミド樹脂などをあげられる。また、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0167】
<自動車用軟質材料>
本発明の自動車用軟質材料は、ブロック共重合体(A)を必須の成分としてなることを特徴とする。しかし、単一のブロック共重合体(A)だけでは充分な性能が得られず、より優れた機械強度、硬度、耐熱性などの性質を改善したい場合、他の成分を含有してしていてもよい。
【0168】
他の成分が熱可塑性樹脂(B)である場合、たとえば、ポリアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、環状オレフィン共重合樹脂、芳香族アルケニル化合物およびシアン化ビニル化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のビニル系単量体70〜100重量%とこれらのビニル系単量体と共重合可能なたとえばエチレン、プロピレン、酢酸ビニルなどの他のビニル系単量体および/またはブタジエン、イソプレンなどのジエン系単量体など0〜30重量%とを重合して得られる単独重合体または共重合体があげられる。そのほかにも、ポリスチレン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスチレン樹脂とポリフェニレンエーテル樹脂の混合物、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂の混合物、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアミドイミド樹脂およびポリアリレート樹脂などをあげられる。これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0169】
本発明において、熱可塑性樹脂はこれらに限定されることがなく、種々の熱可塑性樹脂を広く用いることができ、スチレン系エラストマーやオレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、アミド系エラストマー、エステル系エラストマーなどの熱可塑性エラストマーを用いてもよい。また、カネエースBシリーズ、カネエースMシリーズ(いずれも、鐘淵化学工業(株)製)のようなメチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS樹脂)や、カネエースFMシリーズ(鐘淵化学工業(株)製)のようなアクリル系グラフト共重合体、メタブレンS−2001(三菱レイヨン(株)製)のようなアクリル−シリコーン複合ゴム系グラフト共重合体などのような、グラフト共重合体や、内層部(コア部)および外層部(シェル部)を含有するコアシェル粒子型グラフト共重合体、中心部および中間層部および外層部を含有する三層コアシェル粒子型グラフト共重合体、サラミ構造を有する重合体を用いてもよい。
【0170】
これら各種熱可塑性樹脂のうち、本発明で使用するブロック共重合体(A)との相溶性、耐衝撃性、機械特性に優れる点では、ポリアクリル酸メチルなどのアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−スチレン共重合体、ポリカーボネート、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリル系グラフト共重合体、ポリエステル系樹脂、およびポリアミド系樹脂からなる群から選ばれる樹脂が好ましく、コストや流動性の点ではポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂が好ましい。
【0171】
なかでも、得られる熱可塑性エラストマーの耐油性、耐熱性や(メタ)アクリル系重合体(A)との相溶性の点でポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂がより好ましい。
【0172】
ポリアミド系樹脂としては、たとえば、PA6(ポリカプロアミド)、PA12(ポリドデカンアミド)などの開環重合系脂肪族ポリアミド;PA66(ポリヘキサメチレンアジパミド)、PA46(ポリテトラメチレンアジパミド)、PA610、PA612、PA11などの重縮合系ポリアミド;MXD6、PA6T、PA9T、PA6T/66、PA6T/6、アモルファスPAなどの半芳香族ポリアミド;ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)、ポリ(m−フェニレンテレフタルアミド)、ポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)などの全芳香族ポリアミドなどがあげられ、ポリエステル系樹脂としては、たとえば、ポリグルコール酸、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレンサクシネートなどの脂肪族ポリエステル;ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、エチレンテレフタレート/シクロヘキサンジメチレンテレフタレート共重合体、サーモトロピック液晶重合体2型などの半芳香族ポリエステル;非晶性ポリアクリレート、サーモトロピック液晶重合体1型、サーモトロピック液晶重合体2型などの全芳香族ポリエステルがあげられる。そのなかでも特に、コストや物性バランスの点でPA6(ポリカプロアミド)、PA12(ポリドデカンアミド)などの開環重合系脂肪族ポリアミド;PA66(ポリヘキサメチレンアジパミド)、PA46(ポリテトラメチレンアジパミド)、PA610、PA612、PA11などの重縮合系ポリアミドや、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの半芳香族ポリエステルが好ましい。
【0173】
熱可塑性樹脂はこれらに限定されるものではなく、単独で用いてもよく、複数を組みあわせて用いてもよい。
【0174】
ブロック共重合体(A)と熱可塑性樹脂(B)の割合は、とくに制限はないが、重量比で10/90〜90/10が好ましい。より好ましくは15/85〜85/15である。ブロック共重合体(A)が少なく、熱可塑性樹脂(B)が多すぎると、得られる組成物の硬度が高くなり、柔軟性が低下する傾向がある。逆に、ブロック共重合体(A)が多く、熱可塑性樹脂(B)が少なすぎると機械強度や耐熱性の改善効果が小さくなる傾向がある。
【0175】
ブロック共重合体(A)と熱可塑性樹脂(B)を含有させる方法は、まずブロック共重合体(A)に熱可塑性樹脂(B)を加え、ブロック共重合体(A)の機械特性、硬度などの物性を改善する方法、また別の方法として、熱可塑性樹脂にブロック共重合体(A)を軟質化剤として添加し、熱可塑性樹脂(B)の機械強度は維持しつつ、硬度を改善させる方法を利用することができる。
【0176】
また、ブロック共重合体(A)および熱可塑性樹脂(B)を単純に混合するだけでなく、とくにブロック共重合体(A)の高温における物性、より良好な圧縮永久歪みの付与を目的とするには、ブロック共重合体(A)および熱可塑性樹脂(B)を混練中に動的に処理(動的架橋)することで組成物を得ることができる。
【0177】
動的架橋とは、ユニロイヤル(Uniroyal)社のW.M.Fischerらや、モンサント(Monsanto)社のA.Y.Coranらにより開発された手法であり、熱可塑性樹脂のマトリックス中にゴムをブレンドし、架橋剤とともに架橋剤が架橋する温度以上で混練しながらゴムを高度に架橋させ、しかもそのゴムを微細に分散させるプロセスのことである。この動的架橋により得られた組成物は、連続相となる熱可塑性樹脂に不連続相となる架橋ゴム相が微細に分散した状態となるため、架橋ゴムと同様の物性を示し、かつ成形加工に際しては熱可塑性樹脂に準じた加工が可能となる。
【0178】
本発明においては、動的架橋の方法については、制限はないが、エステル交換を利用した方法や分子内の不飽和二重結合を利用した方法が適用できる。
【0179】
また、本発明では、ブロック共重合体(A)の分子量、構造が制御されていることから、より好ましい物性が得られる傾向にある。具体的には、本発明のブロック共重合体(A)は、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)を有することで、熱可塑性樹脂との相溶性や、架橋体の補強により機械強度を改善しやすい傾向にある。また、制御重合によって製造する場合には、架橋性官能基の導入位置が制御しやすいことから、得られる組成物の機械強度や伸びに影響をあたえる、架橋点間分子量が制御しやすい傾向にある。たとえば、アクリル系重合体ブロック(b)に架橋性官能基を導入しておいて架橋を形成し、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)により熱可塑性樹脂(B)との相溶性を改善したり、補強性を付与することで機械強度を向上することができる。また、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)で架橋を形成し、一定の架橋点間分子量が確保した上に、熱可塑性樹脂(B)との相溶性を改善することもできる。架橋性官能基の導入位置や、架橋方法は、使用する熱可塑性樹脂の種類や、得られる組成物に必要とされる物性に応じて適宜選択すればよい。
【0180】
本発明においては、動的架橋の方法については、とくに制限はないが、エステル交換反応を利用した方法や、分子内の不飽和二重結合を利用した方法が適用できる。たとえば、本発明では、ブロック共重合体(A)が(メタ)アクリル系重合体であることから、エステル交換反応を利用することにより動的架橋を行なうことができる。
【0181】
特に限定されないが、前記の水酸基を有するブロック共重合体(A)を使用する場合、前記熱可塑性樹脂(B)を配合し、溶融混練しながら、エステル交換触媒を添加することで、エステル交換反応によってアルコール成分が生じ、そのアルコール成分が揮発、または除去することで架橋反応が進行し、動的架橋を行なうことができる。
【0182】
また、水酸基を有さないブロック共重合体(A)を用いる場合は、2価以上のヒドロキシル基含有化合物を架橋剤として用いることで、前記水酸基を有するブロック共重合体(A)を用いる場合と同様に、エステル交換反応によって、動的架橋を行なうことができ、ブロック共重合体(A)が架橋した自動車用軟質材料を得ることができる。
【0183】
ブロック共重合体(A)にヒドロキシル基を導入する方法としては、ヒドロキシル基を有する単量体を直接重合して導入することが好ましく、ヒドロキシル基を有する単量体としては、メタアクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタアクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタアクリル酸−4−ヒドロキシブチル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−4−ヒドロキシブチルを用いることが好ましく、コストや入手性の点で、メタアクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチルを用いることがより好ましい。
【0184】
また、ブロック共重合体(A)を構成する(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、前記(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)を構成するメタアクリル酸エステルを用いることができ、単独でまたはこれらの2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、エステル交換によって生じるアルコール成分を揮発または除去することで架橋反応が進行することから、メタアクリル酸エステルのエステル部位に由来するアルコール成分の沸点が200℃以下である(メタ)アクリル酸エステル単量体を含むものが好ましく、150℃以下である(メタ)アクリル酸エステル単量体を含むものがより好ましい。これらのなかでも組み合わせる熱可塑性樹脂(B)との相溶性、入手のしやすさ、エステル交換反応性などの点で、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸−t−ブチルが好ましい。ブロック共重合体(A)を構成するアクリル酸エステル単量体としては、前記アクリル系重合体ブロック(b)を構成するアクリル酸エステルを用いることができ、単独でまたはこれらの2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、エステル交換によって生じるアルコール成分を揮発または除去することで架橋反応が進行することから、アクリル酸エステルのエステル部位に由来するアルコール成分の沸点が200℃以下であるアクリル酸エステル単量体を含むものが好ましく、150℃以下であるアクリル酸エステル単量体を含むものがより好ましい。これらのなかでも組み合わせる、架橋体のゴム弾性、入手のしやすさ、エステル交換反応性などの点で、アクリル酸エチル、アクリル酸−2−メトキシエチル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−t−ブチルが好ましい。
【0185】
ブロック共重合体(A)を構成する単量体として、エステル交換反応の反応速度の違いを利用することで、すなわち、ブロック共重合体(A)中にエステル交換反応性の高い単量体を部分的に重合することで、選択的位置で架橋を行なうこともできる。
【0186】
動的架橋の場合、前記熱可塑性樹脂の配合量は(メタ)アクリル系重合体(A)100重量部に対して、5〜150重量部が好ましく、10〜100重量部がより好ましい。熱可塑性樹脂の配合量が150重量部より多いと得られる熱可塑性エラストマーの圧縮永久歪みやゴム弾性が低下する傾向にある。熱可塑性樹脂が5重量部より少なくなると得られる熱可塑性エラストマーの成型性や機械強度が低下する傾向にある。また、エステル交換反応を利用し動的架橋を行なう場合は、熱可塑性樹脂がエステル交換触媒の存在下において、ヒドロキシル基を有する化合物とエステル交換反応性を実質的に有さないものを用いることが、圧縮永久歪み、ゴム弾性の点でより好ましい。
【0187】
エステル交換触媒としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、不飽和ポリエステルなどのポリエステルを製造する場合に、当業界で通常用いられる重合触媒やエステル交換触媒を用いることができる。これらの触媒としては、とくに限定されるものではないが、水酸化リチウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物類;水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素テトラメチルアンモニウムなどのホウ素やアルミニウムの水素化物のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第四級アンモニウム塩類;水素化リチウム、水素化カルシウムなどのアルカリ金属およびアルカリ土類金属の水素化合物類;リチウムメトキシド、カルシウムメトキシドなどのアルカリ金属およびアルカリ土類金属のアルコキシド類;リチウムフェノキシド、マグネシウムフェノキシド、NaO−Ar−ONa(Arはアリール基)などのアルカリ金属およびアルカリ土類金属のアリーロキシド類;酢酸カルシウム、安息香酸ナトリウムなどのアルカリ金属およびアルカリ土類金属の有機酸塩類;酸化亜鉛、亜鉛フェノキシドなどの亜鉛化合物類;酸化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリフェニルなどのホウ素の化合物類;酸化ケイ素、ケイ酸ナトリウム、テトラアルキルケイ素、テトラアリールケイ素などのケイ素の化合物類;酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウム、ゲルマニウムエトキシドなどのゲルマニウムの化合物類;酸化スズ、ジアルキルスズオキシド、ジアルキルスズカルボキシレート、エチルスズトリブトキシドなどのアルコキシ基またはアリールオキシ基と結合したスズ化合物、有機スズ化合物などのスズの化合物類;酸化鉛、酢酸鉛、炭酸鉛、塩基性炭酸塩、鉛および有機鉛のアルコキシドまたはアリールオキシドなどの鉛の化合物;第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩、第4級アルソニウム塩などのオニウム化合物類;酸化アンチモンなどのアンチモンの化合物類;酢酸マンガンなどのマンガンの化合物類;酸化チタン、チタンのアルコキシドなどのチタンの化合物類;酢酸ジルコニウム、ジルコニウムのアルコキシド、ジルコニウムアセチルアセトンなどのジルコニウムの化合物類などの触媒をあげることができる。触媒を用いる場合、これらの触媒は単独であるいは2種以上組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、反応性の点から、チタン化合物、スズ化合物、アンチモン化合物、ジルコニウム化合物、亜鉛化合物が好ましく、反応性の制御などの点で、チタン化合物がよりこの好ましい。
【0188】
前記触媒使用量は適宜決めれば良いが、たとえば(メタ)アクリル系重合体(A)に対して0.00001〜0.01部の量が好適に用いられ、0.00005〜0.001部の量がより好適に用いられる。
【0189】
前記2価以上のヒドロキシル基含有化合物としては、とくに限定されないが、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、トリエチレングリコールなどの2価のヒドロキシル基含有化合物、1,2,6−トリヘキサントリオール、グリセリンなどの3価のヒドロキシル基含有化合物、ペンタエリストール、ジグリセリンなどの4価のヒドロキシル基含有化合物、ソルビトール、ポリグリセリン、ポリビニルアルコールなどの多価のヒドロキシル基含有化合物などがあげられる。これらのなかでも、反応時の取り扱いや、入手性の点で、脂肪族系の化合物で沸点が100℃以上のものが好ましく、脂肪族系の化合物で沸点が150℃以上のものがより好ましい。また、エステル交換反応の反応性の点では、二級アルコールが好ましく、一級アルコールがより好ましい。また(メタ)アクリル系重合体(A)との相溶性に優れたものを用いるのが好ましい。これらは、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。用いるヒドロキシル基の価数は、得られる自動車用軟質材料の硬度と機械特性のバランスの観点から、適宜選択すればよい。
【0190】
前記ヒドロキシル基含有化合物は、得られる自動車用軟質材料の硬度と機械特性のバランス、圧縮永久歪みの特性に応じて適宜決めれば良いが、たとえば、(メタ)アクリル系重合体(A)100重量部に対し、0.1〜200重量部が好ましく、1.0〜150重量部がより好ましい。ヒドロキシル基含有化合物の配合量が200重量部より多いと得られる組成物の硬度と機械強度のバランスが悪くなる傾向にある。
【0191】
本発明の自動車用軟質材料の製造においては、エステル交換触媒と併せてリン化合物を用いることが、得られる熱可塑性エラストマー組成物の耐熱性がより向上し、さらにはエステル交換反応に用いた触媒を不活性化し、得られる熱可塑性エラストマー組成物の圧縮永久歪みを良好にするために好ましい。このようなリン化合物としては、とくに限定されないが、たとえば、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、リン酸エステルおよび亜リン酸エステルなどがあげられ、これらは単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。これらのリン系化合物のうち、得られる熱可塑性エラストマー組成物の耐熱性の点で、亜リン酸エステルが好ましい。
【0192】
リン化合物は、エステル交換反応に用いた触媒を不活性にする目的で添加され、任意の段階で添加することができるが、エステル交換反応が実質的に完結した段階か、それより以降の任意の時期に添加することが好ましい。
【0193】
分子内の不飽和二重結合を利用する動的架橋の方法では、分子内に不飽和二重結合を有するブロック共重合体(A)および前記熱可塑性樹脂(B)を配合し、一般的なゴム架橋剤を使用し、動的に処理することでブロック共重合体(A)を架橋することができる。この場合、ブロック共重合体(A)は、主鎖または側鎖に不飽和二重結合を有している必要がある。ブロック共重合体(A)への不飽和二重結合の導入は、とくに限定されないが、重合性のアルケニル基とそれ以外の少なくとも1つのアルケニル基を併せ持つ化合物を、ブロック共重合体(A)を重合する際に共重合することや、ブロック共重合体(A)を、不飽和二重結合を有する化合物により変性することにより行なうことができる。
【0194】
重合性のアルケニル基とそれ以外の少なくとも1つのアルケニル基を併せ持つ化合物としては、とくに制限されないが、たとえば、下記一般式(1)や一般式(2)に示される化合物が例示される。
2C=C(R4)−R5−R6−C(R4)=CH2 (1)
(式中、R4は水素またはメチル基で、互いに同一でも異なっていてもよい。R5は−C(O)O−(エステル基)、またはo−、m−、p−フェニレン基、R6は直接結合または炭素数1〜20の2価の有機基で1個以上のエーテル結合を含んでいてもよい。)
2C=C(R7)−R8−C(R9)=CH2 (2)
(式中、R7およびR9は水素またはメチル基で、互いに同一でも異なっていてもよい。R8は直接結合または炭素数1〜20の2価の有機基で1個以上のエーテル結合を含んでいてもよい。)
【0195】
一般式(1)におけるR6としては、メチレン、エチレン、プロピレンなどのアルキレン基;o−、m−、p−フェニレン基;ベンジル基などのアラルキル基;−CH2CH2−O−CH2−や−O−CH2−などのエーテル結合を含むアルキレン基などが例示される。
【0196】
式(1)や式(2)で表される化合物の中でも、入手や、重合の制御が容易であるという点から、
2C=C(H)C(O)O(CH2n−CH=CH2
2C=C(CH3)C(O)O(CH2n−CH=CH2
(前記の各式において、nは0〜20の整数)
2C=C(H)C(O)O(CH2n−O−(CH2mCH=CH2
2C=C(CH3)C(O)O(CH2n−O−(CH2mCH=CH2
(前記の各式において、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数)
o−、m−、p−ジビニルベンゼン、
o−、m−、p−H2C=CH−C64−CH2CH=CH2
o−、m−、p−H2C=CH−C64−CH2−C(CH3)=CH2
o−、m−、p−H2C=CH−C64−CH2CH2CH=CH2
o−、m−、p−H2C=CH−C64−OCH2CH=CH2
o−、m−、p−H2C=CH−C64−OCH2−C(CH3)=CH2
o−、m−、p−H2C=CH−C64−OCH2CH2CH=CH2
o−,m−,p−H2C=C(CH3)−C64−C(CH3)=CH2
o−、m−、p−H2C=C(CH3)−C64−CH2CH=CH2
o−、m−、p−H2C=C(CH3)−C64−CH2C(CH3)=CH2
o−、m−、p−H2C=C(CH3)−C64−CH2CH2CH=CH2
o−、m−、p−H2C=C(CH3)−C64−OCH2CH=CH2
o−、m−、p−H2C=C(CH3)−C64−OCH2−C(CH3)=CH2
o−、m−、p−H2C=C(CH3)−C64−OCH2CH2CH=CH2
(ただし、前記式中、C24はフェニレン基を示す。)が好ましく、
2C=C(H)C(O)O(CH2n−CH=CH2
2C=C(CH3)C(O)O(CH2n−CH=CH2
(前記の各式において、nは0〜20の整数)がより好ましい。
【0197】
ブロック共重合体(A)を、不飽和二重結合を有する化合物により変性する方法としては、とくに限定されないが、たとえば、アリルアルコールなどの不飽和二重結合とヒドロキシル基を分子内に有する化合物を、ブロック共重合体(A)中の(メタ)アクリル酸エステルとエステル交換反応させることにより導入することができる。
【0198】
不飽和二重結合は(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体ブロック(b)の両方に含まれていてもよいし、どちらか一方の重合体ブロックに含まれていてもよいが、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)またはアクリル系重合体ブロック(b)のどちらか一方に含まれる方が、熱可塑性樹脂(B)との相溶性や、得られる組成物の物性などの点で好ましい。
【0199】
たとえば、アクリル系重合体ブロック(b)に不飽和二重結合を導入しておいて架橋を形成し、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)により熱可塑性樹脂(B)との相溶性を改善したり、補強性を付与することで機械強度を向上することができる。また、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)に不飽和二重結合を導入することで、一定の架橋点間分子量を確保した上に、熱可塑性樹脂(B)との相溶性を改善することもできる。
【0200】
前記架橋剤としては、一般的なゴム架橋剤(架橋剤)を用いることができる。具体的には、イオウ系架橋剤としては、粉末イオウ、沈降性イオウ、高分散性イオウ、表面処理イオウ、不溶性イオウ、ジモルフォリンジサルファイド、アルキルフェノールジサルファイドなどを用いればよい。また、有機過酸化物系の架橋剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジ(パーオキシルベンゾエート)などを用いればよい。
【0201】
有機過酸化物系の架橋剤を使用する場合には、必要に応じて、ジビニルベンゼンのような多官能性ビニルモノマー、またはエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレートのような多官能性メタクリレートモノマーを、架橋助剤として添加してもよい。このような架橋助剤により、均一かつ効率的な架橋反応が期待できる。
【0202】
また、必要に応じて、架橋促進剤を添加してもよい。架橋促進剤としては、アルデヒド・アンモニア系、グアニジン系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系、ジチオ酸塩系、チオウレア系などの一般的な架橋促進剤を用いればよい。また、架橋促進助剤としては、一般的なゴム用助剤を併せて用いることができ、たとえば、亜鉛華、ステアリン酸やオレイン酸およびこれらのZn塩などを用いればよい。
【0203】
本発明において、必要な架橋剤などは、動的な架橋条件(温度、時間)や、製造される熱可塑性エラストマーの物性に応じて適宜選択すればよいが、製造される熱可塑性エラストマーに耐熱性が要求される場合などは、有機過酸化物系の架橋剤を用いることが好ましい。
【0204】
本発明の自動車用軟質材料を構成する重合体組成物は、ブロック共重合体(A)の他に、本発明の効果を損なわない範囲で物性を調整する目的で、必要に応じて1種類以上の添加剤を配合することができる。添加剤としては、熱可塑性樹脂(B)のほかに、他のゴム状重合体(C)、粘着性付与剤(D)、安定剤(E)、柔軟性付与剤(F)、滑剤(G)、難燃剤(H)、顔料(I)、充填剤(J)、離型剤(K)、帯電防止剤(L)、抗菌抗カビ剤(M)などがあげられる。これらの添加剤は、自動車用軟質材料が使用される用途などに応じて、適宜最適なものを選択すればよい。
【0205】
他のゴム状重合体(C)としては、たとえば、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、エチレン−プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、クロロプレンゴム、ブチルゴム(IIR)、ウレタンゴム、シリコーンゴム、多硫化ゴム、水酸化ニトリルゴム、フッ素ゴム、四フッ化エチレン−プロピレンゴム、四フッ化エチレン−プロピレン−フッ化ビニリデンゴム、アクリルゴム(ACM)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エピクロロヒドリンゴム(CO)、エチレン−アクリルゴム、ノルボルネンゴムなどの化合物があげられるが、それらに限定されない。これらは単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0206】
粘着性付与剤(D)としては、たとえば、タッキロール101(田岡化学(株)製)、ヒタノール1501(日立化成(株)製)、フェノール樹脂、変性フェノール樹脂、変性アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、シクロペンタジエン−フェノール樹脂、キシレン樹脂、クマロン樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジンエステル樹脂、ヒタノール5501(日立化成(株)製)などの化合物をあげることができるが、これらに限定されない。これらは単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。
【0207】
安定剤(E)としては、たとえば、トリフェニルホスファイト、ヒンダードフェノール、ジブチル錫マレエートなどの化合物があげられるが、それらに限定されない。これらは単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。
【0208】
柔軟性付与剤(F)としては、たとえば熱可塑性樹脂やゴムに通常配合される可塑剤;プロセスオイルなどの軟化剤;オリゴマー;動物油、植物油などの油分;灯油、軽油、重油、ナフサなどの石油留分などの化合物があげられるが、それらに限定されない。軟化剤としては、プロセスオイルがあげられ、より具体的には、パラフィンオイル;ナフテン系プロセスオイル;芳香族系プロセスオイルなどの石油系プロセスオイルなどがあげられる。可塑剤としては、たとえば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジ−(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸オクチルデシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジシクロヘキシルなどのフタル酸誘導体;ジメチルイソフタレートのようなイソフタル酸誘導体;ジ−(2−エチルヘキシル)テトラヒドロフタル酸のようなテトラヒドロフタル酸誘導体;アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ−n−ヘキシル、アジピン酸ジ−(2−エチルヘキシル)、アジピン酸イソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジブチルジグリコールなどのアジピン酸誘導体;アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシルなどのアゼライン酸誘導体;セバシン酸ジブチルなどのセバシン酸誘導体;ドデカン−2−酸誘導体;マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジ−2−エチルヘキシルなどのマレイン酸誘導体;フマル酸ジブチルなどのフマル酸誘導体;p−オキシ安息香酸2−エチルヘキシルなどのp−オキシ安息香酸誘導体;トリメリト酸トリス−2−エチルヘキシルなどのトリメリト酸誘導体;ピロメリト酸誘導体;クエン酸アセチルトリブチルなどのクエン酸誘導体;イタコン酸誘導体;オレイン酸誘導体;リシノール酸誘導体;ステアリン酸誘導体;その他脂肪酸誘導体;スルホン酸誘導体;リン酸誘導体;グルタル酸誘導体;アジピン酸、アゼライン酸、フタル酸などの二塩基酸とグリコールおよび一価アルコールなどとのポリマーであるポリエステル系可塑剤、グルコール誘導体、グリセリン誘導体、塩素化パラフィンなどのパラフィン誘導体、エポキシ誘導体ポリエステル系重合型可塑剤、ポリエーテル系重合型可塑剤、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート誘導体、N−ブチルベンゼンスルホンアミド、N−エチルトルエンスルホンアミド、N−シクロヘキシルトルエンスルホンアミドなどのスルホンアミド誘導体;アクリル系可塑剤を始めとするビニル系モノマーを種々の方法で重合して得られるビニル系重合体類などがあげられる。本発明において可塑剤はこれらに限定されることがなく、種々の可塑剤を用いることができ、ゴム用または熱可塑性樹脂用可塑剤として広く市販されているものも用いることができる。市販されている可塑剤としては、チオコールTP(モートン社製)、アデカサイザーO−130P、C−79、UL−100、P−200、RS−735(旭電化工業(株)製)、サンソサイザーN−400(新日本理化(株)製)、BM−4(大八化学工業(株)製)、EHPB(上野製薬(株)製)、UP−1000(東亜合成化学(株)製)などがあげられる。植物油としては、たとえばヒマシ油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、パインオイル、トール油などがあげられる。
【0209】
上記において、ブロック共重合体(A)との親和性に優れたものを用いるのが好ましい。特に限定されないが、このなかでも低揮発性で加熱減量の少ない可塑剤であるアジピン酸誘導体、フタル酸誘導体、グルタル酸誘導体、トリメリト酸誘導体、ピロメリト酸誘導体、ポリエステル系可塑剤、グリセリン誘導体、エポキシ誘導体ポリエステル系重合型可塑剤、ポリエーテル系重合型可塑剤、アクリル系可塑剤を始めとするビニル系モノマーを種々の方法で重合して得られるビニル系重合体類などの高分子系可塑剤などが好適に使用される。以上の柔軟性付与剤は単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。
【0210】
可塑剤を用いる場合の使用量は、限定されないが、ブロック共重合体(A)100重量部に対して5〜300重量部、好ましくは10〜200重量部、さらに好ましくは20〜150重量部である。5重量部未満では可塑剤としての効果が発現しなくなり、300重量部を超えると得られる組成物の機械強度が不足する。
【0211】
滑剤(G)としては、たとえば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、モンタン酸系ワックスなどの化合物があげられるが、それらに限定されない。これらは単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。
【0212】
難燃剤(H)としては、たとえば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、デカブロモビフェニル、デカブロモビフェニルエーテル、三酸化アンチモンなどの化合物があげられるが、それらに限定されない。これらは単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。
【0213】
顔料(I)としては、たとえば、酸化チタン、硫化亜鉛、酸化亜鉛などの化合物があげられるが、それらに限定されない。これらは単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。
【0214】
充填剤(J)としては、たとえば、カーボンブラック、ガラス繊維、金属繊維、チタン酸カリウィスカー、アスベスト、ウォラストナイト、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、ガラスフレーク、ミルドファイバー、金属粉末などの化合物があげられるが、それらに限定されない。これらは単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。
【0215】
本発明の自動車用軟質材料を重合体組成物で構成する場合、該重合体組成物を配合し、製造する方法としては、とくに限定されず、バンバリーミキサー、ロールミル、単軸押出機、二軸押出機または各種のニーダーなどの公知の装置を用い、機械的に混合しペレット状に賦形する方法などの既存の方法を用いることができる。混練時の温度は、使用するブロック共重合体(A)の溶融温度などに応じて調整することが好ましく、たとえば、130〜300℃で溶融混練することにより製造できる。
【0216】
前記、動的に処理する場合においても、加熱と混練とを同時に行ない得る種々の装置が使用可能であって、たとえば通常のゴムの加工に用いられるバンバリー、ニーダー、単軸または多軸の押出機などがあげられる。
【0217】
自動車用軟質材料の成形には、前記重合体組成物を、押出し成形、圧縮成形、ブロー成形、カレンダー成形、真空成形、射出成形、発泡成形、パウダースラッシュ成形、インジェクションブローなどの任意の成形加工法によって成形加工することができるが、成形加工の簡便性などの点から射出成形法により自動車用軟質材料を成形することが好ましい。射出成形により均一な厚さの中空成形品を得ることができる。自動車用モールなどの場合は、成形加工の簡便性などの点から異型押出成形法により自動車用外装部材を成形することが好ましい。
【0218】
本発明の自動車用軟質材料は、(スイッチ類表皮、インストルメントパネル表皮、クラッシュパッド表皮、ドアトリム表皮、ダッシュボード表皮、シート表皮、ヘッドレスト表皮、アームレスト表皮、ハンドルカバー、エアーバッグアウターカバーなどの)表皮類、シフトレバーノブ、シートクッション、アームレスト、ヘッドレスト、アシストグリップ、スイッチ類、ドアトリム、天井材、センターピラーカバー、リヤパーテーション、ウェルトボディサイド、ダッシュパネルパッド、サイドプロテクター、サンバイザー材料、フロントシート、バックパネル、バックミラーフレーム、フロアマット、ドア用複合材、シートレール、インストルメントパネル、グローブボックス、コンソールボックス、パッド、防音材、防振材などの自動車内装部材、グラスラン、ウインドモール、サイドモール、トランクシール、ガラスチャンネル、ワイパーブレード、ウエザーストリップ、ウォッシャーホース、ソフトトップ、ウォータープルーフフィルム、スライドレール、ドアシーミングウェルト、エンジンカバー類、オイルシール、Oリング、ガスケット類、防音材、防振材などの自動車外装部材のいずれにも用いることができる。
【0219】
本発明の自動車用軟質材料は、成形性に優れることから、種々の基材に2色射出成形して使用することができる。自動車用軟質材料を2色射出成形する基材としては、従来より知られる各種の熱可塑性樹脂製基材などが使用できる。とくに自動車用内層材の場合は、加工性や価格の観点から、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアセタールが用いられることが多い。また、そのほかに熱硬化性樹脂、鋼板、木材、紙および皮革などの基材でも、高接着性を有することから接着剤を使用して貼り合わせることは可能である。
【0220】
また、本発明の自動車用軟質材料は、柔軟性に富んでいるため、成形時の加工性が優れているうえに、機械的性質の基本物性に優れ、従来の材料であるクロロプレンや単なる熱可塑性ポリエステルエラストマーの欠点を改良した新しい自動車用中空成形品用材料となる。
【0221】
自動車用中空成形品を例示すれば、たとえば、等速ジョイント用ブーツ、ストラットブーツ、ラック&ピニオン用ブーツ、ブレーキブースター用ブーツ、ステアリングボールジョイント用ブーツ、サスペンションボールジョイント用ブーツなどの自動車用中空成形ブーツ、ウォッシャーホース、エアインテークホース、ABSホース、エアーブレーキホース、油圧サスペンションホース、オイルクーラーホース、ATSホース、ブレーキホース、パワーステアリングホース、カーエアコンデショニングホース、バキュームブレーキホースなどの自動車用中空成形ホースがあげられる。
【0222】
つぎに、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0223】
なお、実施例におけるEA、BA、MEA、MMA、TBMA、HEMA、HEAは、それぞれ、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−2−メトキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸−t−ブチル、メタアクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチルを意味する。
【0224】
<試験方法>
(分子量)
ブロック共重合体の分子量は、GPC分析装置(システム:ウォーターズ(Waters)社製のGPCシステム、カラム:昭和電工(株)製のShodex K−804(ポリスチレンゲル))で測定した。クロロホルムを移動相とし、ポリスチレン換算の分子量を求めた。
【0225】
(酸変換分析)
ブロック共重合体のカルボキシル基への分解反応の確認は、赤外スペクトル((株)島津製作所製、FTIR−8100)、および核磁気共鳴(BRUKER社製 AM400)を用いて行なった。核磁気共鳴分析用溶剤として、カルボン酸エステル構造のブロック体は重クロロホルム、カルボキシル基含有型ブロック体は重メタノールを測定溶剤として分析を行なった。
【0226】
(熱重量分析)
ブロック共重合体の耐熱分解性は、(株)島津製作所(SHIMADZU)製の示差熱熱重量同時測定装置(DTG−50)で測定した。測定は流量50.0ml/分のチッ素気流下、加熱速度10.0℃/分の条件でおこなった。5%重量損失温度は、100℃における重量を基準として求めた。
【0227】
(硬度)
JIS K6253に従い、23℃における硬度(直後、JIS A)を測定した。ただし、タイプAデュロメータによる硬さが90をこえたものは、タイプDデュロメータにより測定した(JIS D)。
【0228】
(機械強度)
JIS K7113に記載の方法に準用して、(株)島津製作所製のオートグラフAG−10TB形を用いて測定した。測定はn=3にて行ない、試験片が破断したときの強度(MPa)と伸び(%)の値の平均値を採用した。試験片は2(1/3)号形の形状にて、厚さが約2mm厚のものを用いた。試験は23℃にて500mm/分の試験速度で行なった。試験片は原則として、試験前に温度23±2℃、相対湿度50±5%において48時間以上状態調節したものを用いた。
【0229】
(圧縮永久歪み)
JIS K6301に準拠し、円柱型成形体を圧縮率25%の条件で、70℃で22時間保持し、室温で30分放置したのち、成形体の厚さを測定し、歪みの残留度を計算した。すなわち圧縮永久歪み0%で歪みが全部回復し、圧縮永久歪み100%で歪みが全く回復しないことに相当する。
【0230】
<ブロック共重合体>
実施例1
TBMA−b−BA−b−TBMA型ブロック共重合体(a)の合成および官能基変換反応
TBMA−b−BA−b−TBMA型ブロック共重合体(a)を得るために以下の操作を行なった。2Lのセパラブルフラスコの重合容器内をチッ素置換したのち、臭化銅4.50g(31.3ミリモル)を量り取り、アセトニトリル(チッ素バブリングしたもの)72mlを加えた。30分間70℃で加熱攪拌したのち、開始剤2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル2.26g(6.28ミリモル)およびBA 360ml(2.51モル)を加えた。85℃で加熱攪拌し、配位子ジエチレントリアミン0.66ml(3.14ミリモル)を加えて重合を開始した。
【0231】
重合開始から一定時間ごとに、重合溶液からサンプリング用として重合溶液約0.2mlを抜き取り、サンプリング溶液のガスクロマトグラム分析によりBAの転化率を決定した。トリアミンを随時加えることで重合速度を制御した。BAの転化率が95%の時点で、TBMA 243ml(1.50ミリモル)、塩化銅3.11g(31.3ミリモル)、ジエチレントリアミン0.66ml(3.14ミリモル)およびトルエン(チッ素バブリングしたもの)481mlを加えた。同様にして、TBMAの転化率を決定した。TBMAの転化率が67%、BAの転化率が97%の時点で、トルエン520mlを加え、水浴で反応器を冷却して反応を終了させた。
【0232】
反応溶液をトルエン2.0Lで希釈し、p−トルエンスルホン酸一水和物7.16gを加えて室温で3時間攪拌した。析出した不溶部を桐山漏斗で濾過して除いたのち、ポリマー溶液に吸着剤キョーワード500SH(協和化学(株)製)を4.50g加えて、室温でさらに3時間攪拌した。桐山漏斗で吸着剤を濾過し、無色透明のポリマー溶液を得た。この溶液を乾燥させて溶剤および残存モノマーを除き、目的のブロック共重合体(a)を得た。
【0233】
得られたブロック共重合体(a)のGPC分析を行なったところ、数平均分子量Mnが95500、分子量分布Mw/Mnが1.44であった。
【0234】
得られたブロック共重合体(a)100gをトルエン1.0Lに溶解し、p−トルエンスルホン酸一水和物3.0gを加えて、120℃の油浴で3時間加熱攪拌し、t−ブチルエステルをカルボキシル基に変換した。メタノールで希釈し、キョーワード500SHを2.0g加えて攪拌したのち、これを濾過して除き、80℃で真空乾燥させて目的のカルボキシル基含有ブロック共重合体(b)を得た。t−ブチルエステル部位のカルボキシル基への変換は、IR(赤外線吸収スペクトル)および13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)により確認できた。すなわち、IRでは、変換後には3400〜3000cm-1あたりにカルボキシル基に由来するブロードな吸収スペクトルが見られるようになることから確認できた。13C−NMRでは、変換後にはt−ブチル基のメチン炭素由来の82ppmのシグナルと、メチル炭素由来の28ppmのシグナルが消失することから確認できた。カルボキシル基を有する単量体は得られたブロック共重合体(b)中に、21.8重量%であった。なお、カルボキシル基を有する単量体の含有量は、t−ブチルエステルがカルボキシル基に変換されたことから、メタクリル酸−t−ブチルをメタクリル酸として、仕込みモノマーの組成比とその添加率から計算することで求めた。
【0235】
このカルボキシル基含有ブロック共重合体(b)の熱重量分析行なったところ、5%重量損失温度が313℃であった。
【0236】
実施例2
(MMA−co−TBMA)−b−BA−b−(MMA−co−TBMA)型ブロック共重合体(c)の合成および官能基変換反応
5Lのセパラブルフラスコを用い、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル5.65g(15.7ミリモル)、BA 900ml(6.28モル)の仕込み比で重合を行ない、BAの転化率が95%の時点でTBMA234ml(1.44モル)、MMA 154ml(1.44モル)を添加した。TBMAの転化率が89%、MMAの転化率が84%の時点で反応を終了させた。そのほかは実施例1のブロック共重合体(a)と同様に製造し、目的とするブロック共重合体(c)を得た。
【0237】
得られたブロック共重合体(c)のGPC分析を行なったところ、数平均分子量Mnが113600、分子量分布Mw/Mnが1.44であった。
【0238】
ブロック共重合体(c)を、実施例1と同様の処方により官能基を変換し、カルボキシル基含有ブロック共重合体(d)を合成した。このカルボキシル基含有ブロック共重合体(d)の熱重量分析をおこなったところ、5%重量損失温度が342℃であった。カルボキシル基を有する単量体は得られたブロック共重合体(d)中に、14.7重量%であった。
【0239】
実施例3
(MMA−co−TBMA)−b−(BA−co−EA−co−MEA)−b−(MMA−co−TBMA)型ブロック共重合体(e)の合成および官能基変換反応
5Lのセパラブルフラスコを用い、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル5.89g(16.4ミリモル)、BA 362ml(2.52モル)、EA 344ml(3.17モル)、MEA 195ml(1.51モル)の仕込み比で重合を行ない、BAの転化率が95%、EAの転化率が95%、MEAの転化率が97%の時点でTBMA 158ml(0.97モル)、MMA 418ml(3.91モル)を添加した。TBMAの転化率が64%、MMAの転化率が59%の時点で反応を終了させた。そのほかは、実施例1のブロック共重合体(a)と同様に製造し、目的とするブロック共重合体(e)を得た。
【0240】
得られたブロック共重合体(e)のGPC分析を行なったところ、数平均分子量Mnが111000、分子量分布Mw/Mnが1.47であった。
【0241】
ブロック共重合体(e)を、実施例1と同様の処方により官能基を変換し、カルボキシル基含有ブロック共重合体(f)を合成した。このカルボキシル基含有ブロック共重合体(f)の熱重量分析をおこなったところ、5%重量損失温度が333℃であった。カルボキシル基を有する単量体は得られたブロック共重合体(f)中に、4.93重量%であった。
【0242】
実施例4
TBMA−b−(BA−co−EA−co−MEA)−b−TBMA型ブロック共重合体(g)の合成および官能基変換反応
500mlのセパラブルフラスコの重合容器内をチッ素置換したのち、塩化銅0.71g(7.2ミリモル)を量り取り、アセトニトリル(モレキュラーシーブスで乾燥後、チッ素バブリングしたもの)18mlを加えた。15分間65℃で加熱攪拌したのち、BA 36.2ml(252mmol)、EA 34.4ml(317ミリモル)、MEA 19.5ml(151ミリモル)を加えた。88℃で加熱攪拌し、配位子ジエチレントリアミン0.15ml(0.72ミリモル)を加え、こののち、開始剤2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル0.52g(1.4ミリモル)をアセトニトリル2mlに溶解したものを添加して重合を開始した。
【0243】
重合開始から一定時間ごとに、重合溶液からサンプリング用として重合溶液約0.2mlを抜き取り、サンプリング溶液のガスクロマトグラム分析によりBA、EA、MEAの転化率を決定した。トリアミンを随時加えることで重合速度を制御した。BAの転化率が96%、EAの転化率が96%、MEAの転化率が97%の時点で、トルエン(モレキュラーシーブスで乾燥後チッ素バブリングしたもの)68.2ml、TBMA23.4ml(144ミリモル)、塩化銅0.71g(7.2ミリモル)、およびジエチレントリアミン0.15ml(0.72ミリモル)を加えた。同様にして、MMAの転化率を決定した。BAの転化率が98%、EAの転化率が98%、MEAの転化率が99%、TBMAの転化率が93%の時点で、トルエン150mlを加え、水浴で反応器を冷却して反応を終了させた。反応溶液を活性アルミナで濾過することにより銅錯体を除去した。得られた重合体を60℃で24時間真空乾燥することにより、目的のブロック共重合体(g)を得た。
【0244】
得られたブロック共重合体のGPC分析を行なったところ、数平均分子量Mnが112000、分子量分布Mw/Mnが1.35であった。
【0245】
ブロック共重合体(g)を、実施例1と同様の処方により官能基を変換し、カルボキシル基含有ブロック共重合体(h)を合成した。カルボキシル基を有する単量体は得られたブロック共重合体(h)中に、17.4重量%であった。
【0246】
実施例5
(MMA−co−TBMA)−b−BA−b−(MMA−co−TBMA)型ブロック共重合体(i)の合成および官能基変換反応
5Lのセパラブルフラスコを用い、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル5.65g(15.7ミリモル)、BA 900ml(6.28モル)の仕込み比で重合を行ない、BAの転化率が95%の時点でTBMA 152ml(0.94モル)、MMA 400.9ml(3.75モル)を添加した。TBMAの転化率が71%、MMAの転化率が66%の時点で反応を終了させた。それ以外は実施例1と同様に製造し、目的とするブロック共重合体(i)を得た。得られたブロック共重合体(i)のGPC分析を行なったところ、数平均分子量Mnが122858、分子量分布Mw/Mnが1.46であった。ブロック重合体(i)を、実施例1と同様の処方により官能基を変換し、カルボキシル基含有ブロック共重合体(j)を合成した。このカルボキシル基含有ブロック共重合体(j)の熱重量分析を行なったところ、5%重量損失温度が319℃であった。カルボキシル基を有する単量体は得られたブロック共重合体(j)中に、5.3重量%であった。
【0247】
実施例6
(MMA−co−TBMA)−b−(BA−co−EA−co−MEA)−b−(MMA−co−TBMA)型ブロック共重合体(k)の合成および官能基変換反応
5Lのセパラブルフラスコを用い、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル5.89g(16.4ミリモル)、BA 361ml(2.52モル)、EA 344ml(3.17モル)、MEA 195ml(1.51モル)の仕込み比で重合を行ない、BAの転化率が96%、EAの転化率が96%、MEAの転化率が98%の時点でTBMA 83.2ml(0.51モル)、MMA 494ml(4.62モル)を添加した。TBMAの転化率が66%、MMAの転化率が63%の時点で反応を終了させた。それ以外は実施例1と同様に製造し、目的とするブロック共重合体(k)を得た。得られたブロック共重合体(k)のGPC分析を行なったところ、数平均分子量Mnが119378、分子量分布Mw/Mnが1.49であった。ブロック重合体(k)を、実施例1と同様の処方により官能基を変換し、カルボキシル基含有ブロック共重合体(l)を合成した。このカルボキシル基含有ブロック共重合体(l)の熱重量分析を行なったところ、5%重量損失温度が306℃であった。カルボキシル基を有する単量体は得られたブロック共重合体(l)中に、2.6重量%であった。
【0248】
実施例7
(MMA−co−TBMA)−b−(BA−co−EA−co−MEA)−b−(MMA−co−TBMA)型ブロック共重合体(m)の合成および官能基変換反応
5Lのセパラブルフラスコを用い、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル5.31g(14.8ミリモル)、BA 281ml(1.96モル)、EA 267ml(2.47モル)、MEA 151ml(1.18モル)の仕込み比で重合を行ない、BAの転化率が95%、EAの転化率が95%、MEAの転化率が97%の時点でTBMA 193ml(1.19モル)、MMA 509ml(4.77モル)を添加した。TBMAの転化率が64%、MMAの転化率が61%の時点で反応を終了させた。それ以外は実施例1と同様に製造し、目的とするブロック共重合体(m)を得た。得られたブロック共重合体(m)のGPC分析を行なったところ、数平均分子量Mnが118927、分子量分布Mw/Mnが1.49であった。ブロック重合体(m)を、実施例1と同様の処方により官能基を変換し、カルボキシル基含有ブロック共重合体(n)を合成した。このカルボキシル基含有ブロック共重合体(n)の熱重量分析を行なったところ、5%重量損失温度が313℃であった。カルボキシル基を有する単量体は得られたブロック共重合体(n)中に、6.6重量%であった。
【0249】
比較例1
MMA−b−BA−b−MMA型ブロック共重合体(o)の合成
2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル5.65g(15.7ミリモル)、BA 900ml(6.28モル)の仕込み比で重合を行ない、BAの転化率が95%の時点でMMA 554ml(5.18モル)を逐次添加した。BAの転化率が97%およびMMAの転化率が60%の時点で反応を終了させた。そのほかは実施例1のブロック共重合体(a)と同様にして製造し、目的のブロック共重合体(o)を得た。
【0250】
得られたブロック共重合体(o)のGPC分析を行なったところ、数平均分子量Mnが119200、分子量分布Mw/Mnが1.51であった。凝集力の高い官能基(c)を有さないこのブロック共重合体(o)の熱重量分析を測定したところ、5%重量損失温度は280℃であった。
【0251】
比較例2
MMA−b−(BA−co−EA−co−MEA)−b−MMA型ブロック共重合体(p)の合成
2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル6.18g(17.2ミリモル)、臭化銅12.3g(85.8ミリモル)の仕込み比でBA−co−EA−co−MEAブロックの重合を行ない、BAの転化率が95%、EAの転化率が95%、MEAの転化率が96%の時点で、MMA 575ml(5.41モル)を逐次添加したほかは、実施例3と同様に製造し、MMAの転化率が60%の時点で反応を終了させた。
【0252】
得られたブロック共重合体(p)のGPC分析を行ったところ、数平均分子量Mnが119000、分子量分布Mw/Mnが1.46であった。
【0253】
各実施例および比較例で得られたブロック共重合体の機械強度、硬度、永久圧縮歪み、5%重量損失温度の試験結果を表1に示す。
【0254】
【表1】

【0255】
実施例に示されるように、カルボキシル基を有するブロック体が合成され、実施例1〜7から、カルボキシル基を有するブロック共重合体(A)が合成可能であり、官能基の導入によって、その耐熱分解性が著しく向上する効果が示された。比較例1〜2からは、カルボキシル基などの官能基を有さないブロック共重合体は、実施例1〜7に比べて格段に耐熱分解性に劣ることが示された。さらに実施例1〜5から、カルボキシル基を有するブロック共重合体(A)は、カルボキシル基などの官能基を有さないブロック共重合体に比較して、高温における圧縮永久歪みが良好であり、かつ、成形などに必要な強度を維持していることがわかる。加えて官能基の導入によって、凝集力が向上されているにもかかわらず、硬度はほとんど変化しておらず、低硬度で良好な圧縮永久歪み、機械強度を示すことがわかる。
【0256】
製造例1
MMA−b−BA−b−MMA型ブロック共重合体(組成比MMA/BA=3/7)の合成
50L反応機に臭化第一銅112.56gを仕込み、反応機内をチッ素置換した。アセトニトリル627.44gおよびアクリル酸−n−ブチル1072.8gを予め混合しておいた溶液を、反応機内を減圧にした状態で仕込み、65℃に昇温して30分間攪拌した。そののち、2、5−ジブロモアジピン酸ジエチル56.50gをアクリル酸−n−ブチル6973.2gおよび酢酸ブチル158.76gに溶解させた溶液、ならびにアセトニトリル784.30gを仕込み、85℃に昇温しつつさらに30分間攪拌を行なった。ペンタメチルジエチレントリアミン16mlを加えて、第1ブロックとなるアクリル酸−n−ブチルの重合を開始した。転化率が95%に到達したところで、トルエン14228.8g、塩化第一銅77.68g、メタアクリル酸メチル5182.5gを仕込み、ペンタメチルジエチレントリアミン16mlを加えて、第2ブロックとなるメタアクリル酸メチルの重合を開始した。転化率が56%に到達したところで、トルエン8660gを加えて反応溶液を希釈すると共に反応機を冷却して重合を停止させた。
【0257】
得られたブロック共重合体のGPC分析を行なったところ、数平均分子量Mnが107000、分子量分布Mw/Mnが1.46であった。また、NMRによる組成分析を行なったところ、MMA/BA=29/71(重量%)であった。
【0258】
得られたブロック共重合体溶液にトルエンを加えて重合体濃度を14.6重量%とし、さらにp−トルエンスルホン酸を32g加え、反応機内をチッ素置換し、室温で3時間攪拌した。反応液をサンプリングし、溶液が無色透明になっていることを確認して反応を停止させた。そののち溶液を払い出し、分離板型遠心沈降機を用いて固形分を除去した。このブロック共重合体溶液50Lに対し、キョーワード500SH150gを加え、反応機内をチッ素置換し、室温で3時間攪拌した。反応液をサンプリングし、溶液が中性になっていることを確認して反応を停止させた。そののち溶液を払い出し、固液分離を行なって吸着剤を除去した。
【0259】
前記重合体溶液をベント口付き横形蒸発機に供給し、溶媒および未反応モノマーの蒸発を行なうことで、重合体を単離した。蒸発機の胴部ジャケットおよびスクリューは熱媒で200℃に温度調節し、蒸発機内部は真空ポンプにより約0.01MPa以下の減圧状態を保持した。得られた樹脂を水中カット方式のペレタイザーでペレット化した。押出し機は単軸、スクリュー径50mm、温度160℃、樹脂供給速度12kg/時間とした。ダイス部分は孔径2.4mm×2穴、4枚刃のカッターを使用した。循環冷却水中にステアリル酸アミドを0.3重量%添加し、循環冷却水は流量260L/分、熱交換器出口での設定温度34℃として処理を行なった。この装置により直径3mm程度の球状ペレット(A−1)が得られた。
【0260】
製造例2
MMA−b−(BA−co−EA−co−MEA)−b−MMA型ブロック共重合体(MMA/(BA、EA、MEA)=6/4)の合成
2000mlのセパラブルフラスコの重合容器内をチッ素置換したのち、臭化銅4.60g(32.0mmol)を量り取り、アセトニトリル(モレキュラーシーブスで乾燥後、チッ素バブリングしたもの)40mlを加えた。5分間70℃で加熱攪拌したのち、再び室温に冷却し、開始剤2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル2.31g(6.4ミリモル)、BA80.4ml(561ミリモル)、EA76.4ml(705ミリモル)、MEA43.3ml(336ミリモル)を加えた。80℃で加熱攪拌し、配位子ジエチレントリアミン0.67ml(3.2ミリモル)を加えて重合を開始した。
【0261】
重合開始から一定時間ごとに、重合溶液からサンプリング用として重合溶液約0.2mlを抜き取り、サンプリング溶液のガスクロマトグラム分析によりBA、EA、MEAの転化率を決定した。トリアミンを随時加えることで重合速度を制御した。BAの転化率が96%、EAの転化率が95%、MEAの転化率が85%の時点で、MMA 302ml(2819ミリモル)、塩化銅3.17g(32.0ミリモル)、ジエチレントリアミン0.67ml(3.2ミリモル)、トルエン(モレキュラーシーブスで乾燥後、チッ素バブリングしたもの)603mlを加えた。同様にして、MMAの転化率を決定した。BAの転化率が97%、EAの転化率が96%、MEAの転化率が90%、MMAの転化率が51%の時点で、トルエン300mlを加え、水浴で反応器を冷却して反応を終了させた。
【0262】
反応溶液を活性アルミナで濾過することにより銅錯体を除去した。得られた濾液を多量のメタノールに加えて重合体を沈殿させ、得られた重合体を60℃で24時間真空乾燥することにより、目的のブロック共重合体(A−2)を得た。
【0263】
製造例3
MMA−b−(BA−co−EA−co−MEA)−b−MMA型ブロック共重合体(MMA/(BA、EA、MEA)=3/7)の合成
500mlのセパラブルフラスコの重合容器内をチッ素置換したのち、臭化銅1.37g(9.5mmol)を量り取り、アセトニトリル(モレキュラーシーブスで乾燥後、チッ素バブリングしたもの)20mlを加えた。5分間70℃で加熱攪拌したのち、再び室温に冷却し、開始剤2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル0.69g(1.9mmol)、BA 40.2ml(280mmol)、EA 38.2ml(352mmol)、MEA 21.6ml(168mmol)を加えた。80℃で加熱攪拌し、配位子ジエチレントリアミン0.20ml(1.0mmol)を加えて重合を開始した。
【0264】
重合開始から一定時間ごとに、重合溶液からサンプリング用として重合溶液約0.2mlを抜き取り、サンプリング溶液のガスクロマトグラム分析によりBA、EA、MEAの転化率を決定した。トリアミンを随時加えることで重合速度を制御した。BAの転化率が94%、EAの転化率が93%、MEAの転化率が95%の時点で、MMA 42.8ml(400ミリモル)、塩化銅1.82g(18.5ミリモル)、ジエチレントリアミン0.20ml(1.0ミリモル)、トルエン(モレキュラーシーブスで乾燥後、チッ素バブリングしたもの)128.5mlを加えた。同様にして、MMAの転化率を決定した。BAの転化率が97%、EAの転化率が97%、MEAの転化率が98%、MMAの転化率が82%の時点で、トルエン150mlを加え、水浴で反応器を冷却して反応を終了させた。
【0265】
反応溶液を活性アルミナで濾過することにより銅錯体を除去した。得られた濾液を多量のメタノールに加えて重合体を沈殿させ、得られた重合体を60℃で24時間真空乾燥することにより、目的のブロック共重合体(A−3)を得た。
【0266】
得られたブロック共重合体のGPC分析を行なったところ、数平均分子量Mnが113000、分子量分布Mw/Mnが1.49であった。またNMRによる組成分析を行なったところ、EA/BA/MEA/MMA=24/33/15/28(重量%)であった。
【0267】
製造例4
(MMA−co−TBMA)−b−(BA−co−EA−co−MEA)−b−(MMA−co−TBMA)型ブロック共重合体(A−4)の合成および官能基変換反応
5Lのセパラブルフラスコを用い、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル6.03g(16.8ミリモル)、BA 362ml(2.52モル)、EA 344ml(3.17モル)、MEA 195ml(1.51モル)の仕込み比で重合を行ない、BAの転化率が95%、EAの転化率が95%、MEAの転化率が97%の時点でTBMA 42.5ml(0.26モル)、MMA 534ml(4.99モル)を添加した。TBMAの転化率が64%、MMAの転化率が59%の時点で反応を終了させた。それ以外は実施例1と同様に製造し、目的とするブロック共重合体(A−4)を得た。得られたブロック共重合体(A−4)のGPC分析を行なったところ、数平均分子量Mnが124008、分子量分布Mw/Mnが1.45であった。ブロック重合体(A−4)を、実施例1と同様の処方により官能基を変換し、カルボキシル基含有ブロック共重合体(A−5)を合成した。カルボキシル基を有する単量体は得られたブロック共重合体(A−5)中に、1.29重量%であった。
【0268】
製造例5
(MMA−co−TBMA)−b−(BA−co−EA−co−MEA)−b−(MMA−co−TBMA)型ブロック共重合体(A−6)の合成および官能基変換反応
5Lのセパラブルフラスコを用い、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル4.65g(12.9ミリモル)、BA 201ml(1.40モル)、EA 191ml(1.76モル)、MEA 108ml(0.84モル)の仕込み比で重合を行ない、BAの転化率が95%、EAの転化率が96%、MEAの転化率が98%の時点でTBMA 465ml(2.87モル)、MMA 307ml(2.87モル)を添加した。TBMAの転化率が62%、MMAの転化率が60%の時点で反応を終了させた。それ以外は実施例1と同様に製造し、目的とするブロック共重合体(A−6)を得た。得られたブロック共重合体(A−6)のGPC分析を行なったところ、数平均分子量Mnが107168、分子量分布Mw/Mnが1.31であった。ブロック重合体(A−6)を、実施例1と同様の処方により官能基を変換し、カルボキシル基含有ブロック共重合体(A−7)を合成した。カルボキシル基を有する単量体は得られたブロック共重合体(A−7)中に、19.7重量%であった。
【0269】
製造例6
(MMA−co−HEMA)−b−BA−b−(MMA−co−HEMA)型ブロック共重合体(A−8)の合成
(メタ)アクリル系重合体ブロックにヒドロキシル基を有するブロック共重合体を得るために、以下の操作を行なった。500mlのセパラブルフラスコを用い、開始剤2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル0.57g(1.57ミリモル)およびBA 90ml(628ミリモル)で重合を開始し、BAの転化率が95%の時点で、MMA 35.3ml(330ミリモル)、HEMA 1.9ml(15.7モル)を加えた。MMAの転化率が83%、BAの転化率が97%の時点で反応を終了させた。そのほかは実施例1のブロック共重合体(a)と同様にして製造し、目的のブロック共重合体(A−8)を得た。
【0270】
得られたブロック共重合体(A−8)のGPC分析を行なったところ、数平均分子量Mnが94000、分子量分布Mw/Mnが1.75であった。
【0271】
製造例7
MMA−(BA−co−HEA)−MMA型ブロック共重合体(A−9)の合成
5Lのセパラブルフラスコの重合容器内を窒素置換したのち、臭化銅11.6g(80.7ミリモル)、アセトニトリル(窒素バブリングしたもの)180ml、開始剤2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル5.8g(16.1ミリモル)、BA 832ml(5.8モル)およびHEA 67.5ml(0.65モル)を実施例1と同様に手順で加えたのち、配位子ジエチレントリアミン1.68ml(8.1ミリモル)を加えて重合を開始した。
【0272】
BAの転化率が94%の時点で、MMA 559ml(5.22モル)、塩化銅7.89g(0.081モル)、ジエチレントリアミン1.68ml(8.1ミリモル)およびトルエン(窒素バブリングしたもの)1110mlを加え、MMAの転化率が63%、BAの転化率が97%の時点で、トルエン1600mlを加え、水浴で反応器を冷却して反応を終了させた。その他は実施例1のブロック共重合体(a)と同様にして製造し、目的のブロック共重合体(A−9)を得た。
【0273】
得られたブロック共重合体のGPC分析を行なったところ、数平均分子量Mnが118355、分子量分布Mw/Mnが1.69であった。1H−NMRで測定した組成比は、BA/HEA/MMA=63/7/30(重量%)であった。
【0274】
以下に示す実施例および比較例中の測定、評価は、つぎの条件および方法を用いて行なった。また、実施例および比較例中にて使用した重合体は、実施例3、4、6および製造例1〜7に記載した方法にて製造したものを用いた。これらの成形体について、硬度、引張破断強度、引張破断伸び、耐油性、接着性および耐ワックスリムーバー性を測定した。
【0275】
(硬度)
JIS K6253に従い、23℃における硬度(直後、JIS A)を測定した。ただし、タイプAデュロメータによる硬さが90をこえたものは、タイプDデュロメータにより測定した(JIS D)。
【0276】
(引張破断強度(MPa)および引張破断伸び(%))
JIS K7113に記載の方法に準用して、(株)島津製作所製のオートグラフAG−10TB形を用いて測定した。測定はn=3にて行ない、試験片が破断したときの強度(MPa)と伸び(%)の値の平均値を採用した。試験片は2(1/3)号形の形状にて、厚さが約2mm厚のものを用いた。試験は23℃にて500mm/分の試験速度で行なった。試験片は原則として、試験前に温度23±2℃、相対湿度50±5%において48時間以上状態調節したものを用いた。
【0277】
(耐油性)
ASTMD638に従い、組成物の成形体を150℃に保持したオイル(ATSMオイルNo.3)中に72時間浸し、重量変化率を測定した。
【0278】
耐油性の評価に関しては、以下の基準で判断した。
◎:重量変化率が10%未満
○:重量変化率が10%以上30%未満
×:重量変化率が30%以上
【0279】
形状評価については、試験前後の成形体の形状を観察し、以下の基準で評価した。
○:形状維持
×:変形
【0280】
また、以下の基準で総合評価を行なった。
○:重量および形状評価ともに良好
×:いずれかの評価に劣る。
【0281】
(耐熱性)
耐熱性については、高化式フロー測定による流動開始温度を指標とした。測定は(株)島津製作所製の高化式フローテスターCFT−500C型を用いて5℃/分の昇温速度で加熱された樹脂を荷重60Kgf/cm2のもとで、内径1mm、長さ10mmのノズルから押出したときに、フローテスターの樹脂押出ピストンが明らかに降下し始める温度(本測定器においてはTfbと表示される)を流動開始温度とした。
【0282】
(接着性)
種々の接着剤(S−1:瞬間接着剤/主成分シアノアクリレート セメダイン(株)製 商品名セメダインゼロタイプ、S−2:合成ゴム、金属、皮革、木材用一般工作用接着剤/主成分クロロプレンゴム コニシ(株)製 商品名ボンドG17、S−3:多用途タイプ強力、透明化学反応形接着剤/主成分変性シリコーンポリマー コニシ(株)製 商品名ボンドサイレックスクリアー、S−4:木工用水性系接着剤/主成分酢酸ビニル樹脂 コニシ(株)製ボンド木工用、S−5:塩化ビニル樹脂系・溶剤形接着剤/主成分塩化ビニル コニシ(株)製 商品名ボンドビニル用)を、ステンレス金属板に塗布し、その上からサンプルの一端を圧着して10時間放置したのち、接着されていない側の端を手で剥離する。評価は、接着剤に対し金属界面で剥離した場合を良好(○)、樹脂界面で剥離した場合を不良(×)とした。
【0283】
(耐ワックスリムーバー性)
組成物の成形体を120℃に保持したワックスリムーバーST7(ユシロ化学(株)製)液中に48時間浸し、重量変化率および体積変化率を測定した。
【0284】
実施例8〜10
製造例1〜3で製造したブロック共重合体とIrganox1010(チバガイギー社製)を、表2に示した割合で200℃に設定したラボプラストミル(東洋精機(株)製)を用い、スクリュー回転数100rpmで、約5分間200℃で溶融混練してブロック状サンプルを得た。得られたサンプル、設定温度230℃で熱プレス成形し、厚さ2mmの物性評価用の成形体と、直径30mm、厚さ12mmの円筒状の圧縮永久歪み評価用の成形体を得た。これらの成形体について、硬度、引張破断強度、引張破断伸び、耐油性、接着性および耐ワックスリムーバー性を測定した。
【0285】
比較例3
低硬度のスチレン系熱可塑性エラストマーの代表として商品名セプトン2043((株)クラレ製)とIrganox1010(チバガイギー社製)を、表2に示した割合でラボプラストミル(東洋精機(株)製)を用いて約5分間160℃で溶融混練することにより、ブロック状サンプルを得た。得られたサンプルを、設定温度160℃で熱プレス成形し、厚さ2mmの物性評価用の成形体と、直径30mm、厚さ12mmの円筒状の圧縮永久歪み評価用の成形体を得た。
【0286】
これらの成形体について、硬度、引張破断強度、引張破断伸び、耐油性、接着性を測定し、表2に示した。
【0287】
比較例4
低硬度の動的架橋からなるオレフィン系熱可塑性エラストマーの代表として、商品名サントプレン211-55(アドバンスド エラストマー システムズ(ADVANCED ELASTOMER SYSTEMS, L.P.)製)とIrganox1010(チバガイギー社製)を、表2に示した割合でラボプラストミル(東洋精機(株)製)を用いて、約5分間170℃で溶融混練することにより、ブロック状サンプルを得た。得られたサンプルを、設定温度170℃で熱プレス成形し、厚さ2mmの物性評価用の成形体と、直径30mm、厚さ12mmの円筒状の圧縮永久歪み評価用の成形体を得た。
【0288】
これらの成形体について、硬度、引張破断強度、引張破断伸び、耐油性および耐ワックスリムーバー性を測定した。測定した結果を表2に示した。
【0289】
【表2】

【0290】
表2に示すように、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)/アクリル系重合体ブロック(b)の割合が3/7である実施例8および9のブロック共重合体は、いずれも低硬度で接着性が優れていることがわかる。実施例9のブロック共重合体はさらに耐油性、耐ワックスリムーバ性が優れていた。(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)/アクリル系重合体ブロック(b)の割合が6/4である実施例10のブロック共重合体は、引張破断強度、耐油性、接着性は優れるが、引張破断伸びが低く、高硬度となることがわかる。
【0291】
実施例11
製造例3で製造したブロック共重合体100重量部に、安定剤として0.5重量部のイルガノックス1010を添加し、190℃に設定したラボプラストミル(東洋精機(株)製)を用いて溶融混練した。得られたサンプルを設定温度190℃で熱プレス成形し、直径30mmおよび厚さ12mmの円筒状の成形体を得た。この成形体は金型への剥離もなく、金型から取りだしたのちも良好な形状を維持するものであった。この成形体について、引張破断強度、硬度、耐熱性、耐油性を測定した。結果を表3に示す。
【0292】
実施例12
実施例3で製造したブロック共重合体(f)を用いたほかは、実施例11と同様の方法で、直径30mmおよび厚さ12mmの円筒状の成形体を得た。この成形体は金型への剥離もなく、金型から取りだしたのちも良好な形状を維持するものであった。この成形体について、引張破断強度、硬度、耐熱性、耐油性を測定した。結果を表3に示す。
【0293】
実施例13
実施例4で製造したブロック共重合体(h)を用いたほかは、実施例11と同様の方法で、直径30mmおよび厚さ12mmの円筒状の成形体を得た。この成形体は金型への剥離もなく、金型から取りだしたのちも良好な形状を維持するものであった。この成形体について、引張破断強度、硬度、耐熱性、耐油性を測定した。結果を表3に示す。
【0294】
実施例14
製造例6で製造したブロック共重合体(l)を用いたほかは、実施例11と同様の方法で、直径30mmおよび厚さ12mmの円筒状の成形体を得た。この成形体は金型への剥離もなく、金型から取りだしたのちも良好な形状を維持するものであった。この成形体について、引張破断強度、硬度、耐熱性、耐油性を測定した。結果を表3に示す。
【0295】
実施例15
製造例4で製造したブロック共重合体(A−5)を用いたほかは、実施例11と同様の方法で、直径30mmおよび厚さ12mmの円筒状の成形体を得た。この成形体は金型への剥離もなく、金型から取りだしたのちも良好な形状を維持するものであった。この成形体について、引張破断強度、硬度、耐熱性、耐油性を測定した。結果を表3に示す。
【0296】
実施例16
製造例5で製造したブロック共重合体(A−7)を用いたほかは、実施例11と同様の方法で、直径30mmおよび厚さ12mmの円筒状の成形体を得た。この成形体は金型への剥離もなく、金型から取りだしたのちも良好な形状を維持するものであった。この成形体について、引張破断強度、硬度、耐熱性、耐油性を測定した。結果を表3に示す。
【0297】
実施例17
製造例3で製造したブロック共重合体100重量部に、ポリアミド;PA(UBEナイロン1013B:宇部興産(株)製)20重量部、イルガノックス1010(チバガイギー社製)0.5重量部を添加し、230℃に設定したラボプラストミル(東洋精機(株)製)を用いて溶融混練した。得られたサンプルを設定温度230℃で熱プレス成形し、直径30mmおよび厚さ12mmの円筒状の成形体を得た。この成形体は金型への剥離もなく、金型から取りだした後も良好な形状を維持するものであった。この成形体について、引張破断強度、硬度、耐熱性、耐油性を測定した。結果を表3に示す。
【0298】
比較例5
ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしてあげられるペルプレンP30B(東洋紡績(株)製)100重量部に、安定剤として0.5重量部のイルガノックス1010を添加し、190℃に設定したラボプラストミル(東洋精機(株)製)を用いて溶融混練し、ブロック状サンプルを得た。得られたサンプルを設定温度190℃で熱プレス成形し、直径30mmおよび厚さ12mmの円筒状の圧縮永久歪み評価用の成形体を得た。これらの成形体について、引張破断強度、硬度、耐熱性、耐油性を測定した。結果を表3に示す。
【0299】
【表3】

【0300】
実施例11〜16に示すとおり、本発明で得られたアクリル系ブロック共重合体は、柔軟性にとみ、かつ耐油性に優れることがわかる。これに対し、一般的に耐油性に優れているとされているポリエステル系熱可塑性エラストマー(比較例5)は硬度が高く、また耐油性に劣る。実施例17は、熱可塑性樹脂を含有させることにより、耐油性、機械特性を維持しつつ、高硬度な材料となることを示している。また、アクリル系ブロック共重合体において、カルボキシル基を導入することで、高化式フローの流出温度が高くなることから耐熱性がより優れる材料になることがわかる。
【0301】
実施例18
製造例1で製造したブロック共重合体およびポリアミド;PA(UBEナイロン1013B:宇部興産(株)製)、イルガノックス1010(チバガイギー社製)を表4に示した割合で230℃に設定したラボプラストミル(東洋精機(株)製)を用いて溶融混練した。さらに表4に示した割合で架橋剤:トリエチレングリコール(和光純薬工業(株)製)を添加し溶融混練した。さらに、スクリュー回転数100rpmにて230℃で溶融混練しながら、チタン(IV)テトラブトキシド、モノマー(和光純薬工業(株)製)を添加し反応を進行させた(動的架橋)。その後PEP−36(旭電化工業(株)製)を添加してサンプルを得た。得られたサンプルを設定温度230℃で熱プレス成形し、直径30mmおよび厚さ12mmの円筒状の形成体を得た。これらの成形体について、硬度、圧縮永久歪みを測定した。また、同様に設定温度230℃で熱プレス成形し、厚さ2mmのシート状の成形体を得た。これらのシートにて耐油性および不溶分率を測定した。
【0302】
実施例19
PEP−36を添加するまでは実施例18と同様に操作を行なった。PEP−36を添加したのち、さらに溶融混練しながら、可塑剤:UL−100(旭電化工業(株)製)を添加してサンプルを得た。その他は同様の操作により評価を行なった。
【0303】
実施例20
製造例6で製造したA−8およびポリアミド;PA(UBEナイロン1013B:宇部興産(株)製)、イルガノックス1010(チバガイギー社製)を表4に示した割合で230℃に設定したラボプラストミル(東洋精機(株)製)を用いて溶融混練した。さらに、スクリュー回転数100rpmにて230℃で溶融混練しながら、チタン(IV)テトラブトキシド、モノマー(和光純薬工業(株)製)を添加し反応を進行させた(動的架橋)。その後PEP−36(旭電化工業(株)製)を添加し、プラストミルのトルクが一定し、安定状態になったところでサンプルを得た。得られたサンプルを設定温度230℃で熱プレス成形し、直径30mmおよび厚さ12mmの円筒状の成形体を得た。これらの成形体について、硬度、圧縮永久歪みを測定した。また、同様に設定温度230℃で熱プレス成形し、厚さ2mmのシート状の成形体を得た。これらのシートにて耐油性および不溶分率を測定した。
【0304】
実施例21
製造例7で製造したA−9およびポリアミド;PA(UBESTA3012U(R)、宇部興産(株)製)30部、イルガノックス1010(チバガイギー社製)を表4に示した割合で230℃に設定したラボプラストミル(東洋精機製)を用いて溶融混練した。さらに、スクリュー回転数100rpmにて230℃で溶融混練しながら、チタン(IV)テトラブトキシド、モノマー(和光純薬工業(株)製)を添加し反応を進行させた(動的架橋)。その後PEP−36(旭電化工業(株)製)を添加し、プラストミルのトルクが一定し、安定状態になったところでプラストミルの設定温度を190℃にして、続けて溶融混練しながら、可塑剤;N−400(新日本理化(株)製)を添加してサンプルを得た。得られたサンプルを設定温度230℃で熱プレス成形し、直径30mmおよび厚さ12mmの円筒状の成形体を得た。これらの成形体について、硬度、圧縮永久歪みを測定した。また、同様に設定温度230℃で熱プレス成形し、厚さ2mmのシート状の成形体を得た。これらのシートにて耐油性および不溶分率を測定した。
【0305】
実施例22
製造例7で製造したA−9およびポリアミド;PA(UBESTA3012U(R)、宇部興産(株)製)30部、イルガノックス1010(チバガイギー社製)を表4に示した割合で230℃に設定したラボプラストミル(東洋精機(株)製)を用いて溶融混練した。さらに、スクリュー回転数100rpmにて230℃で溶融混練しながら、チタン(IV)テトラブトキシド、モノマー(和光純薬工業(株)製)を添加し反応を進行させた(動的架橋)。その後、プラストミルのトルクが一定し、安定状態になったところで実施例5のブロック共重合体(j)を添加した。さらにトルクが一定したところで、PEP−36(旭電化工業(株)製)を添加した。その後、プラストミルの設定温度を190℃にして続けて溶融混練しながら、可塑剤;N−400(新日本理化(株)製)を添加してサンプルを得た。得られたサンプルを設定温度230℃で熱プレス成形し、直径30mmおよび厚さ12mmの円筒状の成形体を得た。これらの成形体について、硬度、圧縮永久歪みを測定した。また、同様に設定温度230℃で熱プレス成形し、厚さ2mmのシート状の成形体を得た。これらのシートにて耐油性および不溶分率を測定した。
【0306】
実施例23
可塑剤;N−400(新日本理化(株)製)を可塑剤;N−400とRS735(旭電化(株)製)の混合物に替えた以外は実施例22と同様に行ないサンプルを得た。
【0307】
比較例6
モノオレフィン共重合体ゴムとポリオレフィン樹脂を動的架橋した組成物であるポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしてあげられるサントプレン211−45(アドバンスド エラストマー システムズ製)100重量部に、安定剤として0.5重量部のイルガノックス1010を添加し、190℃に設定したラボプラストミル(東洋精機(株)製)を用いて溶融混練し、ブロック状サンプルを得た。得られたサンプルを設定温度190℃で熱プレス成形し、直径30mmおよび厚さ12mmの円筒状の圧縮永久歪み評価用の成形体を得た。この成形体について、引張破断強度、硬度、耐熱性、耐油性、圧縮永久歪みを測定した。結果を表4に示す。
【0308】
ただし、サントプレンの圧縮永久歪みに関しては、カタログ値(100℃、22時間)を示す。
【0309】
比較例7
ニトリルゴムとポリオレフィン樹脂を動的架橋した組成物であるポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしてあげられるGEOLAST701−70(アドバンスド エラストマー システムズ製)100重量部を用いたほかは、比較例6と同様の方法で、直径30mmおよび厚さ12mmの円筒状の成形体を得た。この成形体について、引張破断強度、硬度、耐熱性、耐油性、圧縮永久歪みを測定した。結果を表4に示す。
【0310】
【表4】

【0311】
表4において不溶分率との記載があるが、本実施例に示す、資料の不溶分率(wt%)は資料1g(Wu)を100メッシュ金網に包み、80℃のトルエン中で24時間浸漬した後、トルエン可溶分を分別し、残留固形分を60℃で真空乾燥し、乾燥後の残留固形分の重量g(Wc)を測定して、資料1g(Wu)に対する残留固形分(Wc)の重量から求めた。不溶分率(wt%)から、(メタ)アクリル系重合体(A)の架橋反応の進行を確認することができる。
【0312】
樹脂A−1の不溶分率を測定したところ0%であった。このことと実施例18〜23の不溶分率からわかるように、ブロック共重合体の架橋反応が進行していることがわかる。
【0313】
実施例18〜23、および比較例6、7に示されるように、動的架橋することによって、機械特性、圧縮永久油歪みに優れ、さらにポリオレフィン系熱可塑性エラストマーに比較して耐油性に優れた熱可塑性エラストマーが得られることがわかった。
【0314】
また、実施例22〜23からわかるように、相溶性改良剤としてカルボキシル基を含有するブロック体を少量添加することで、機械特性、耐油性を維持しながら圧縮永久歪みが向上することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0315】
本発明の組成物によれば、アクリル系ブロック共重合体が本来有する特性を維持しながら、優れた耐熱分解性を有する材料として、好適に使用可能である。また、本発明の組成物によれば、アクリル系ブロック共重合体が本来有する特性を維持しながら、高温における圧縮永久歪みが大幅に改善される。
【0316】
したがって、本発明の組成物は、たとえば包装材料、建築、土木材料、自動車用材料、家電製品用材料、その他雑貨品用材料などの分野で有用なホース、シート、フィルム、異形押出成形品、各種射出成形品などに好適である。
【0317】
本発明の組成物(自動車用軟質材料)は、低硬度で良好な接着性、耐油性、引張特性および耐ワックスリムーバー性を示すことから、自動車用軟質材料、とくに自動車用外装部材として用いることに適している。
【0318】
また、本発明の組成物は、耐熱性、耐油性が良好であり、柔軟性に富み、加工性にも優れた材料であり、自動車中空成形品を提供することができる。すなわち、本発明の自動車用軟質材料によれば、耐熱性、耐油性に非常に優れ、柔軟性、成形加工性に富む自動車用中空成形品を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂および(a)(メタ)アクリル系重合体ブロックと(b)アクリル系重合体ブロックとからなるブロック共重合体(A)を含有し、これらを動的に処理してなる組成物。
【請求項2】
ブロック共重合体(A)がトリブロック共重合体またはジブロック共重合体である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
ブロック共重合体(A)が(a)−(b)−(a)型トリブロック共重合体である請求項2記載の組成物。
【請求項4】
ブロック共重合体(A)の数平均分子量が30,000〜500,000である請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
ブロック共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.8以下である請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
ブロック共重合体(A)が(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)5〜90重量%およびアクリル系重合体ブロック(b)95〜10重量%からなる請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
ブロック共重合体(A)が(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)10〜40重量%およびアクリル系重合体ブロック(b)90〜60重量%からなる請求項6記載の組成物。
【請求項8】
ブロック共重合体(A)が制御ラジカル重合により製造された請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)が、メタアクリル酸メチルおよび/またはメタアクリル酸50〜100重量%およびこれと共重合可能な他のビニル系単量体0〜50重量%とからなり、アクリル系重合体ブロック(b)がアクリル酸−n−ブチル、または、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸エチルおよびアクリル酸−2−メトキシエチル50〜100重量%、ならびに、これと共重合可能な他のビニル系単量体0〜50重量%とからなる請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)がメタアクリル酸メチル50〜100重量%およびこれと共重合可能な他のビニル系単量体0〜50重量%とからなる請求項9記載の組成物。
【請求項11】
ブロック共重合体(A)が少なくとも1つのヒドロキシル基を有する請求項1〜10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
ブロック共重合体(A)が少なくとも1つのカルボキシル基を有する請求項1〜11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の組成物を含有する自動車用軟質材料。
【請求項14】
請求項13記載の自動車用軟質材料からなる自動車内装部材。
【請求項15】
請求項13記載の自動車用軟質材料からなる自動車外装部材。
【請求項16】
請求項13記載の自動車用軟質材料からなる自動車用内層材。
【請求項17】
請求項13記載の自動車用軟質材料からなる自動車用モール。
【請求項18】
請求項13記載の自動車用軟質材料からなる自動車用中空成形品。
【請求項19】
請求項13記載の自動車用軟質材料からなる自動車用中空成形ブーツまたは自動車用中空成形ホース。

【公開番号】特開2006−124724(P2006−124724A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−31556(P2006−31556)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【分割の表示】特願2003−567960(P2003−567960)の分割
【原出願日】平成15年2月12日(2003.2.12)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】