説明

ブロモビフェニル類の製造方法

【課題】コスト的に有利に、収率良く、ブロモビフェニル類を製造する方法。
【解決手段】ブロモフェニルボロン酸類と、式(2)


(式中、kは0〜4の整数、mは1〜5の整数を表す。R2はアルキル基等を表し、R3はアルキル基を表す。)で示されるアシルブロモベンゼン類とを、パラジウム化合物の存在下で反応させることにより、式(3)


で示されるブロモビフェニル類を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶材料や医農薬の原料として有用なブロモビフェニル類を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブロモビフェニル類を製造する方法として、例えば、非特許文献1〜3にはブロモフェニルボロン酸類とヨードベンゼン類とをパラジウム化合物の存在下で反応させる方法が、特許文献1にはフェニルボロン酸類とブロモヨードベンゼン類とをパラジウム化合物の存在下で反応させる方法が開示されている。
【0003】
【非特許文献1】オーガニック・レターズ(Organic Letters)、(米国)、2000年、第2巻、p.3201−3204
【非特許文献2】テトラへドロン・レターズ(Tetrahedron Letters)、(米国)、2003年、第44巻、p.3005−3008
【非特許文献3】ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(Journal of Organic Chemistry)、(米国)、2002年、第67巻、p.5279−5283
【特許文献1】米国特許第5254776号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した方法では、原料として高価なヨード体を用いるため、コスト面から必ずしも満足の行くものではなかった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、コスト的に有利に、さらに収率良くブロモビフェニル類を製造しうる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、ブロモフェニルボロン酸類やその無水物、エステルと、アシルブロモベンゼン類とを、パラジウム化合物の存在下で反応させることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、式(1)
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、lは0〜4の整数、nは1〜5の整数を表す。R1はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シアノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基又はアシルオキシ基を表す。lが2〜4の整数を表す場合、R1は互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0010】
で示されるブロモフェニルボロン酸類、その無水物及びそのエステルからなる群れより選ばれる少なくとも1種の化合物と、式(2)
【0011】
【化2】

【0012】
(式中、kは0〜4の整数、mは1〜5の整数を表す。R2はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基又はアシルオキシ基を表し、R3はアルキル基を表す。kが2〜4の整数を表す場合、R2は互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0013】
で示されるアシルブロモベンゼン類とを、パラジウム化合物の存在下で反応させることを特徴とする式(3)
【0014】
【化3】

【0015】
(式中、k、l、m、n、R1、R2及びR3はそれぞれ前記と同じ意味を表す。)
【0016】
で示されるブロモビフェニル類の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の方法によれば、コスト的に有利に、さらに収率良くブロモビフェニル類を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明における原料の1つであるフェニルボロン酸類は、式(1)
【0019】
【化4】

【0020】
(式中、lは0〜4の整数、nは1〜5の整数を表す。R1はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シアノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基又はアシルオキシ基を表す。lが2〜4の整数を表す場合、R1は互いに同一でも異なっていてもよい。)で示される〔以下、フェニルボロン酸類(1)ということがある。〕。
【0021】
式(1)中、R1がアルキル基である場合、その炭素数は通常1〜12程度であり、その具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基等を挙げることができる。
【0022】
1がアルケニル基である場合、その炭素数は通常2〜12程度であり、その具体例としては、ビニル基、アリル基等を挙げることができる。
【0023】
1がアルキニル基である場合、その炭素数は通常2〜12程度であり、その具体例としては、エチニル基、プロパルギル基等を挙げることができる。
【0024】
1がアルコキシ基である場合、その炭素数は通常1〜12程度であり、その具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基等を挙げることができる。
【0025】
1がアルコキシカルボニル基である場合、その炭素数は通常2〜12程度であり、その具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ヘキシルオキシ基等を挙げることができる。
【0026】
1がアリールオキシカルボニル基である場合、その具体例としては、フェノキシカルボニル基等を挙げることができる。
【0027】
1がアシルオキシ基である場合、その炭素数は通常2〜12程度であり、その具体例としては、アセトキシ基、エチルカルボニルオキシ基、プロピルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、ヘキシルカルボニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等を挙げることができる。
【0028】
1が複数ある場合、すなわち、lが2〜4の整数を表す場合、R1は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0029】
ブロモフェニルボロン酸類(1)の具体例としては、2−ブロモフェニルボロン酸、3−ブロモフェニルボロン酸、4−ブロモフェニルボロン酸、2,3−ジブロモフェニルボロン酸、2,4−ジブロモフェニルボロン酸、2,5−ジブロモフェニルボロン酸、2,6−ジブロモフェニルボロン酸、3,4−ジブロモフェニルボロン酸、3,5−ジブロモフェニルボロン酸、2,3,4−トリブロモフェニルボロン酸、2,3,5−トリブロモフェニルボロン酸、2,3,6−トリブロモフェニルボロン酸、3,4,5−トリブロモフェニルボロン酸、2,3,4,5−テトラブロモフェニルボロン酸、2,3,4,5,6−ペンタブロモフェニルボロン酸、4−ブロモ−2−メチルフェニルボロン酸、4−ブロモ−3−メチルフェニルボロン酸、4−ブロモ−2,3−ジメチルフェニルボロン酸、
4−ブロモ−2,5−ジメチルフェニルボロン酸、4−ブロモ−2,6−ジメチルフェニルボロン酸、4−ブロモ−2,3,5−トリメチルフェニルボロン酸、4−ブロモ−2,3,6−トリメチルフェニルボロン酸、4−ブロモ−2,3,5,6−テトラメチルフェニルボロン酸、4−ブロモ−2−エチルフェニルボロン酸、4−ブロモ−3−エチルフェニルボロン酸、4−ブロモ−2−(n−プロピル)フェニルボロン酸、4−ブロモ−3−(n−プロピル)フェニルボロン酸、4−ブロモ−2−(n−ブチル)フェニルボロン酸、4−ブロモ−3−(n−ブチル)フェニルボロン酸、4−ブロモ−2−(n−ヘキシル)フェニルボロン酸、4−ブロモ−3−(n−ヘキシル)フェニルボロン酸、4−ブロモ−2−(2−プロペニル)フェニルボロン酸、4−ブロモ−3−(2−プロペニル)フェニルボロン酸、4−ブロモ−2−(2−プロピニル)フェニルボロン酸、4−ブロモ−3−(2−プロピニル)フェニルボロン酸、4−ブロモ−2−シアノフェニルボロン酸、4−ブロモ−3−シアノフェニルボロン酸、4−ブロモ−2−メトキシフェニルボロン酸、4−ブロモ−3−メトキシフェニルボロン酸、4−ブロモ−2−メトキシカルボニルフェニルボロン酸、4−ブロモ−3−メトキシカルボニルフェニルボロン酸、4−ブロモ−2−フェノキシカルボニルフェニルボロン酸、4−ブロモ−3−フェノキシカルボニルフェニルボロン酸、4−ブロモ−2−アセトキシフェニルボロン酸、4−ブロモ−3−アセトキシフェニルボロン酸等を挙げることができる。中でも、2−ブロモフェニルボロン酸、3−ブロモフェニルボロン酸、4−ブロモフェニルボロン酸が好適に用いられる。
【0030】
本発明においては、ブロモフェニルボロン酸類(1)の無水物や、ブロモフェニルボロン酸類(1)のエステルも原料として用いることができる。
【0031】
ブロモフェニルボロン酸類(1)の無水物とは、複数個のブロモフェニルボロン酸類(1)が、ボロン酸基〔−B(OH)2〕間で脱水縮合した化合物であることができ、例えば、3分子のブロモフェニルボロン酸類(1)が脱水縮合し、(−B−O−B−O−B−O−)の6員環を形成した3量体等を挙げることができる。
【0032】
ブロモフェニルボロン酸類(1)のエステルとは、ボロン酸基〔−B(OH)2〕がエステル化された化合物であることができ、例えば、〔−B(OCH32〕基を有する化合物のようなアルキルエステル、カテコールを縮合させたエステル、ピナコールを縮合させたエステル等を挙げることができる。
【0033】
また、ブロモフェニルボロン酸類(1)、その無水物及びそのエステルのいずれかをそれぞれ単独で用いることもでき、また、それらの混合物を用いることもできる。尚、ブロモフェニルボロン酸類(1)とその無水物は平衡関係にあり、それらの比率は、条件、化合物の構造等により変わるが、通常はブロモフェニルボロン酸類(1)と少量の該無水物との混合物として存在する。
【0034】
本発明におけるもう1つの原料であるアシルブロモベンゼン類は、式(2)
【0035】
【化5】

【0036】
(式中、kは0〜4の整数、mは1〜5の整数を表す。R2はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基又はアシルオキシ基を、R3はアルキル基を表す。kが2〜4の整数を表す場合、R2は互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0037】
で示される〔以下、アシルブロモベンゼン類(2)ということがある。〕。かかるアシルブロモベンゼン類(2)を原料として採用することにより、ブロモフェニルボロン酸類(1)等の所謂自己縮合反応は起こりにくくなり、収率良く、式(3)で示されるブロモビフェニル類を製造することができる。
【0038】
式(2)中、R2がアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基又はアシルオキシ基である場合、それらの例は、先に式(1)におけるR1で例示したものと同様である。また、式(2)中、R3のアルキル基は先に式(1)におけるR1で例示したものと同様である。
【0039】
2が複数ある場合、すなわち、kが2〜4の整数を表す場合、R1は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0040】
アシルブロモベンゼン類(2)の具体例としては、2’−ブロモアセトフェノン、3’−ブロモアセトフェノン、4’−ブロモアセトフェノン、3’−ブロモ−2’−メチルアセトフェノン、4’−ブロモ−3’−メチルアセトフェノン、3’−ブロモ−4’−メチルアセトフェノン、2’−ブロモ−3’−メチルアセトフェノン、1−アセチル−2−ブロモ−3,4−ジメチルベンゼン、1−アセチル−2−ブロモ−3,5−ジメチルベンゼン、1−アセチル−2−ブロモ−3,6−ジメチルベンゼン、1−アセチル−2−ブロモ4,5−ジメチルベンゼン、1−アセチル−2−ブロモ−4,6−ジメチルベンゼン、1−アセチル−2−ブロモ−5,6−ジメチルベンゼン、1−アセチル−2−ブロモ−3,4,5−トリメチルベンゼン、1−アセチル−2−ブロモ−3,4,6−トリメチルベンゼン、1−アセチル−2−ブロモ−3,5,6−トリメチルベンゼン、1−アセチル−2−ブロモ−4,5,6−トリメチルベンゼン、1−アセチル−2−ブロモ−3,4,5,6−テトラメチルベンゼン、1−アセチル−2−ブロモ−5−エチルベンゼン、1−アセチル−2−ブロモ−5−(n−プロピル)ベンゼン、1−アセチル−2−ブロモ−5−(n−ブチル)ベンゼン、1−アセチル−2−ブロモ−5−(n−ヘキシル)ベンゼン、1−アセチル−2−ブロモ−5−(2−プロペニル)ベンゼン、1−アセチル−2−ブロモ−5−(n−プロピニル)ベンゼン、1−アセチル−2−ブロモ−5−メトキシカルボニルベンゼン、1−アセチル−2−ブロモ−5−フェノキシカルボニルベンゼン、1−アセトキシ−3−アセチル−4−ブロモベンゼン、(4−ブロモフェニル)エチルケトン、(4−ブロモフェニル)ブチルケトン等を挙げることができる。中でも、3’−ブロモアセトフェノン、4’−ブロモアセトフェノンが好適に用いられる。
【0041】
アシルブロモベンゼン類(2)の使用量は、通常、ブロモフェニルボロン酸類(1)、その無水物及び/又はそのエステル1モルに対して0.9〜1.5モルであり、好ましくは0.95〜1.1モル、さらに好ましくは0.95〜1.04モルである。アシルブロモベンゼン類(2)の使用量が少なすぎると副生成物の増加を招き、多すぎると未反応のアシルブロモベンゼン類が残存し、目的物の品質が悪化する。
【0042】
本発明においては、ブロモフェニルボロン酸類(1)、その無水物及び/又はそのエステルと、アシルブロモベンゼン類(2)とをパラジウム化合物存在下で反応させる。パラジウム化合物としては、例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)等の0価のパラジウム化合物や、酢酸パラジウム(II)、塩化パラジウム(II)、ビス(アセトニトリル)パラジウム(II)ジクロリド、ビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)ジクロリド、アリルパラジウム(II)クロリド2量体、シクロペンタジエニルアリルパラジウム(II)、水酸化パラジウム等の2価のパラジウム化合物を挙げることができる。また、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。尚、該パラジウム化合物は、反応中、溶解していても、何らかの担体に担持されていてもよい。
【0043】
パラジウム化合物の使用量は、ブロモフェニルボロン酸類(1)、その無水物及び/又はそのエステル1モルに対して、通常0.00001〜0.1モル、好ましくは0.001〜0.05モルである。
【0044】
本発明では、塩基存在下で反応を行うことが好ましい。かかる塩基としては、反応を阻害しないものであればよく、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのようなアルカリ金属水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムのようなアルカリ土類金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムのようなアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムのようなアルカリ金属重炭酸塩、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムのようなアルカリ金属酢酸塩、リン酸ナトリウムのようなアルカリ金属リン酸塩等の無機塩基、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシドのようなアルカリ金属アルコキシド、ピリジン、トリエチルアミン等の有機塩基を挙げることができる。また、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。中でも、アルカリ金属炭酸塩がより好ましく採用される。
【0045】
上記塩基を用いる場合、その使用量は、通常、ブロモフェニルボロン酸類(1)、その無水物及び/又はそのエステル1モルに対して0.5〜5.0モルであればよく、好ましくは1.0〜2.0モルである。
【0046】
また、ホスフィン類やイミン類の存在下で反応を行うことができる。中でも、トリアリールホスフィン類の存在下で行うのが好ましく、さらには、トリフェニルホスフィンの存在下で行うのがより好ましい。
【0047】
上記ホスフィン類やイミン類を用いる場合、その使用量は、通常、パラジウム化合物1モルに対して0.5〜5.0モルであり、好ましくは1.0〜2.2モルである。
【0048】
本発明では、通常、反応に溶媒が用いられる。かかる溶媒としては、反応を阻害するものでなければよく、例えば、メタノール、エタノールのようなアルコール、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサンのようなエーテル、アセトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン、ヘキサン、ヘプタンのような脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素、ジクロロエタンのような塩素化脂肪族炭化水素、モノクロロベンゼンのような塩素化芳香族炭化水素、水等を挙げることができ、また、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。
【0049】
上記溶媒の使用量は、ブロモフェニルボロン酸類(1)、その無水物及び/又はそのエステルに対して、通常0.1重量倍〜50重量倍、好ましくは0.5重量倍〜20重量倍である。
【0050】
ブロモフェニルボロン酸類(1)、その無水物及び/又はそのエステル、アシルブロモベンゼン類(2)、パラジウム化合物並びに上記溶媒の混合処方は、適宜選択することができる。また、上記塩基を用いる場合も、その混合処方については特に制限はない。
【0051】
更に、上記ホスフィン類やイミン類を用いる場合も、その混合処方は適宜選択することができ、例えば、かかるホスフィン類やイミン類を、あらかじめパラジウム化合物と混合した後に、他の化合物と混合してもよいし、パラジウム化合物が存在する反応系中に加えてもよい。
【0052】
反応は、通常、0〜150℃で行われる。また、反応は、常圧下、減圧下及び加圧下のいずれかで行うことができる。
【0053】
反応の経過は、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、核磁気共鳴スペクトル等で追跡することができる。
【0054】
反応の後処理は周知の方法で行うことができる。例えば、反応液に有機溶媒や水を加え、洗浄し、その後油水分離して無機塩や触媒を除去した後に、得られた油層から有機溶媒を留去することで、式(3)
【0055】
【化6】

【0056】
(式中、k、l、m、n、R1、R2及びR3はそれぞれ前記と同じ意味を表す。)
【0057】
で示されるブロモビフェニル類を得ることができる。かかるブロモビフェニル類は、そのまま各種用途に用いることができるが、再結晶、カラムクロマトグラフィー、蒸留等の方法でさらに精製してもよい。
【0058】
かくして得られる式(3)で示されるブロモビフェニル類としては、例えば、2−アセチル−2’−ブロモビフェニル、2−アセチル−3’−ブロモビフェニル、2−アセチル−4’−ブロモビフェニル、3−アセチル−2’−ブロモビフェニル、3−アセチル−3’−ブロモビフェニル、3−アセチル−4’−ブロモビフェニル、4−アセチル−2’−ブロモビフェニル、4−アセチル−3’−ブロモビフェニル、4−アセチル−4’−ブロモビフェニル、2−アセチル−4’−ブロモ−2’−メチルビフェニル、2−アセチル−4’−ブロモ−3’−メチルビフェニル、2−アセチル−4’−ブロモ−2’,3’−ジメチルビフェニル、2−アセチル−4’−ブロモ−2’,5’−ジメチルビフェニル、2−アセチル−4’−ブロモ−2’,6’−ジメチルビフェニル、2−アセチル−4’−ブロモ−3’,5’−ジメチルビフェニル、2−アセチル−4’−ブロモ−3’,6’−ジメチルビフェニル、2−アセチル−4’−ブロモ−2’,3’,5’−トリメチルビフェニル、2−アセチル−4’−ブロモ−2’,3’,6’−トリメチルビフェニル、2−アセチル−4’−ブロモ−2’,3’,5’,6’−テトラメチルビフェニル、2−アセチル−4’−ブロモ−3’−エチルビフェニル、2−アセチル−4’−ブロモ−3’−(n−プロピル)ビフェニル、2−アセチル−4’−ブロモ−3’−(n−ブチル)ビフェニル、2−アセチル−4’−ブロモ−3’−(n−ヘキシル)ビフェニル、2−アセチル−4’−ブロモ−3’−(2−プロペニル)ビフェニル、2−アセチル−4’−ブロモ−3’−(n−プロピニル)ビフェニル、2−アセチル−4’−ブロモ−3’−シアノビフェニル、2−アセチル−4’−ブロモ−3’−メトキシビフェニル、2−アセチル−4’−ブロモ−3’−メトキシカルボニルビフェニル、2−アセチル−4’−ブロモ−3’−フェノキシカルボニルビフェニル、3−アセトキシ−2’−アセチル−4−ブロモビフェニル、2−アセチル−4’−ブロモ−3’−ニトロビフェニル、2−アセチル−4’−ブロモ−3−メチルビフェニル、2−アセチル−4’−ブロモ−4−メチルビフェニル、2−アセチル−4’−ブロモ−5−メチルビフェニル、2−アセチル−4’−ブロモ−6−メチルビフェニル、2−アセチル−4’−ブロモ−3,4−ジメチルビフェニル、2−アセチル−4’−ブロモ−3,5−ジメチルビフェニル、2−アセチル−4’−ブロモ−3,6−ジメチルビフェニル、2−アセチル−4’−ブロモ−4,5−ジメチルビフェニル、2−アセチル−4’−ブロモ−4,6−ジメチルビフェニル、2−アセチル−4’−ブロモ−3,4,5−トリメチルビフェニル、2−アセチル−4’−ブロモ−3,4,6−トリメチルビフェニル、2−アセチル−4’−ブロモ−4,5,6−トリメチルビフェニル、2−アセチル−4’−ブロモ−3,4,5,6−テトラメチルビフェニル、2−アセチル−4’−ブロモ−4−エチルビフェニル、2−アセチル−4’−ブロモ−4−(n−プロピル)ビフェニル、2−アセチル−4’−ブロモ−4−(n−ブチル)ビフェニル、2−アセチル−4’−ブロモ−4−(n−ヘキシル)ビフェニル、2−アセチル−4’−ブロモ−4−(2−プロペニル)ビフェニル、2−アセチル−4’−ブロモ−4−(2−プロピニル)ビフェニル、2−アセチル−4’−ブロモ−4−メトキシカルボニルビフェニル、2−アセチル−4’−ブロモ−4−フェノキシカルボニルビフェニル、4−アセトキシ−2−アセチル−4’−ブロモビフェニル、2−アセチル−4’−ブロモ−4−ニトロビフェニル、4−ブロモ−2’−プロピオニルビフェニル、4−ブロモ−2’−ペンチニルビフェニル、4−ブロモ−4’−プロピオニルビフェニル、4−ブロモ−4’−ペンチニルビフェニル等を挙げることができる。中でも、本発明は3−アセチル−2’−ブロモビフェニル、3−アセチル−3’−ブロモビフェニル、3−アセチル−4’−ブロモビフェニル、4−アセチル−2’−ブロモビフェニル、4−アセチル−3’−ブロモビフェニル、4−アセチル−4’−ブロモビフェニルを得る方法として有利である。
【実施例】
【0059】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらによって限定されるものではない。尚、実施例で使用されている4−ブロモフェニルボロン酸、3−ブロモフェニルボロン酸、2−ブロモフェニルボロン酸には、これらの無水物が少量含まれている。また、ブロモビフェニル類の収率は、ブロモアセトフェノン類基準である。
【0060】
実施例1
窒素気流下、冷却管を備えた30mLフラスコに、4’−ブロモアセトフェノン2.0g、4−ブロモフェニルボロン酸2.1g、炭酸ナトリウム2.1g、塩化パラジウムビスアセトニトリル錯体0.05g、トリフェニルホスフィン0.11g、エタノール14mL、水7mL、トルエン4mLを入れて、80℃で3時間、撹拌しながら保持した。得られた反応混合物にトルエンを加えて混合後、油層と水層とに分離した。油層をガスクロマトグラフィーで分析すると、4−アセチル−4’−ブロモビフェニルが2.1g含まれていた(収率77%)。
【0061】
実施例2
窒素気流下、冷却管を備えた30mLフラスコに、4’−ブロモアセトフェノン2.0g、3−ブロモフェニルボロン酸2.1g、炭酸ナトリウム2.1g、酢酸パラジウム0.05g、トリフェニルホスフィン0.11g、エタノール14mL、水7mL、トルエン4mLを入れて、80℃で3時間、撹拌しながら保持した。得られた反応混合物にトルエンを加えて混合後、油層と水層とに分離した。油層をガスクロマトグラフィーで分析すると、4−アセチル−3’−ブロモビフェニルが2.3g含まれていた(収率84%)。
【0062】
実施例3
窒素気流下、冷却管を備えた30mLフラスコに、3’−ブロモアセトフェノン2.0g、2−ブロモフェニルボロン酸2.1g、炭酸ナトリウム2.1g、酢酸パラジウム0.05g、トリフェニルホスフィン0.11g、エタノール14mL、水7mL、トルエン4mLを入れて、80℃で3時間、撹拌しながら保持した。得られた反応混合物にトルエンを加えて混合後、油層と水層とに分離した。油層をガスクロマトグラフィーで分析すると、3−アセチル−2’−ブロモビフェニルが2.4g含まれていた(収率88%)。
【0063】
比較例1
窒素気流下、冷却管を備えた30mLフラスコに、ブロモベンゼン1.6g、4−ブロモフェニルボロン酸2.1g、炭酸ナトリウム2.1g、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)0.05g、トリフェニルホスフィン0.11g、トルエン15mL、水7mLを入れて、80℃で5時間、撹拌しながら保持した。得られた反応混合物にトルエンを加えて混合し、混合物をろ過してポリマー状の固体を除去したのちに得られた液体を油層と水層とに分離した。油層をガスクロマトグラフィーで分析すると、4−ブロモビフェニルが0.5g含まれていた(収率22%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】

(式中、lは0〜4の整数、nは1〜5の整数を表す。R1はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シアノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基又はアシルオキシ基を表す。lが2〜4の整数を表す場合、R1は互いに同一でも異なっていてもよい。)
で示されるブロモフェニルボロン酸類、その無水物及びそのエステルからなる群れより選ばれる少なくとも1種の化合物と、式(2)
【化2】

(式中、kは0〜4の整数、mは1〜5の整数を表す。R2はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基又はアシルオキシ基を表し、R3はアルキル基を表す。kが2〜4の整数を表す場合、R2は互いに同一でも異なっていてもよい。)
で示されるアシルブロモベンゼン類とを、パラジウム化合物の存在下で反応させることを特徴とする式(3)
【化3】

(式中、k、l、m、n、R1、R2及びR3はそれぞれ前記と同じ意味を表す。)
で示されるブロモビフェニル類の製造方法。
【請求項2】
式(2)で示されるアシルブロモベンゼン類が3’−ブロモアセトフェノン又は4’−ブロモアセトフェノンである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式(1)で示されるブロモフェニルボロン酸類が2−ブロモフェニルボロン酸、3−ブロモフェニルボロン酸又は4−ブロモフェニルボロン酸である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
トリアリールホスフィン類の存在下で反応を行う請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記トリアリールホスフィン類がトリフェニルホスフィンである請求項4に記載の方法。

【公開番号】特開2008−247744(P2008−247744A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−87288(P2007−87288)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】