説明

ブロワユニット

【課題】ブロワユニットにおいて、ブロワモータに対して十分量の冷却風を供給すると共に、確実に冷却風導入口への水の浸入を防止する。
【解決手段】冷却風導入口10と開口1dとの間に立設される防水壁13と、冷却風導入口10周りに立設され防水壁13よりも高い囲壁12とを備え、開口1dの上端が囲壁12の上端よりも低い位置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロワユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両には、車両用空気調和装置で用いる空気流を形成するためのブロワユニットを有している。
このようなブロワユニットでは、ブロワモータによってブロワを回転駆動することによって空気を圧送しており、ブロワモータを冷却するために当該空気の一部を取り込んでブロワモータに供給している。
より詳細には、ブロワユニットは、空気が流れる空気流路と、開口を介して当該空気流路と接続された空気取込室とを備えており、空気取込室内に取り込んだ空気を当該空気取込室に設けられた冷却風導入口を介してブロワモータに供給している。
【0003】
ところで、雨や洗車等によってブロワユニットの内部には、水が入り込む場合がある。通常、このような水は、空気の流れに乗って流れ、車両用空気調和装置が備える排水機構を介して外部に排出される。
ただし、空気取込室に設けられた冷却風導入口に水が入り込むと、ブロワモータに対して水が吹き付けられることとなり、ブロワモータの不具合が生じる虞がある。
【0004】
このため、特許文献1や特許文献2に示されるように、空気取込室の内部には、冷却風導入口への水の浸入を抑止するために、冷却風導入口の手前に堤防壁を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭61−144763号公報
【特許文献2】特開2007−1541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、車両用空気調和装置は、車両の限られた空間内に設置する必要がある。このため、レイアウトの関係上、ブロワユニットの高さを十分に確保することが困難な場合もある。
ブロワユニットの高さを十分に確保できない場合には、それに連れて空気取込室の高さが低くなってしまう。空気の流速から水の浸入を防ぐために必要な堤防壁の高さは、空気取込室の高さに関係なく定められる。このため、空気取込室の高さが低くなると、堤防壁と空気取込室の天井との間に形成される隙間が小さくなってしまう。
そして、堤防壁と空気取込室の天井との間に形成される隙間が小さくなると、冷却風導入口へ流れ込む空気量が減少して冷却能力が低下するため、ブロワモータの出力を抑える必要が生じる等の不具合が生じる。
【0007】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、ブロワユニットにおいて、ブロワモータに対して十分量の冷却風を供給すると共に、確実に冷却風導入口への水の浸入を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
第1の発明は、ブロワにより圧送される空気が流れる空気流路と、内部にブロワモータに通じる冷却風導入口が設けられる共に開口を介して上記空気流路と接続される空気取込室とを備えるブロワユニットであって、上記冷却風導入口と上記開口との間に立設される防水壁と、上記冷却風導入口周りに立設され上記防水壁よりも高い囲壁とを備え、上記開口の上端が上記囲壁の上端よりも低い位置であるという構成を採用する。
第2の発明は、上記第1の発明において、上記防水壁として、上記開口から上記空気取込室に流入する空気流の流れ方向に対して壁面を向けると共に上記空気取込室の内壁面との間に隙間を設けて配設される第1壁と、上記第1壁と上記空気取込室の内壁面との間に設けられた隙間から流れ込む空気流の流れ方向に対して壁面を向けて配設される第2壁とを有するという構成を採用する。
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記空気取込室の床面が上記開口に向けて低くなるように傾斜されているという構成を採用する。
第4の発明は、上記第1〜第3いずれかの発明において、上記空気流路を形成するブロワケースの上部に溜まった水を上記空気取込室に導水する導水路を備えるという構成を採用する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、冷却風導入口周りに立設される囲壁と、空気取込室及び空気流路を接続する開口と冷却風導入口との間に立設される防水壁とによって、冷却風導入口への水の浸入が防がれる。つまり、本発明においては、複数の壁によって冷却風導入口への水の浸入を防止すれば良く、各壁(すなわち囲壁及び防水壁)の高さを低く抑えることが可能となる。したがって、ブロワユニットの高さを十分に確保できずに空気取込室の高さが低い場合であっても、各壁(すなわち囲壁及び防水壁)と空気取込室の天井との間の隙間を十分に確保することができる。
また、本発明によれば、囲壁が防水壁よりも高く、かつ、空気流路と空気取込室とを接続する開口の上端が囲壁の上端よりも低い位置とされている。このため、開口から空気取込室に入り込んだ水が囲壁あるいは防水壁に触れることなく直接冷却風導入口に浸入することを防止することができる。
よって、本発明によれば、ブロワユニットにおいて、ブロワモータに対して十分量の冷却風を供給すると共に、確実に冷却風導入口への水の浸入を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態におけるブロワユニットの概略構成を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態におけるブロワユニットが備える空気取込室の平面断面図である。
【図3】本発明の一実施形態におけるブロワユニットの変形例が備える空気取込室の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明に係るブロワユニットの一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0012】
図1は、本実施形態のブロワユニットS1の概略構成を示す断面図である。
ブロワユニットS1は、車両用空気調和装置で生成される調和空気となる空気流を形成するものであり、空気を圧送する。そして、本実施形態のブロワユニットS1は、空気を取り込むためのブロワダクト、ブロワダクトが接続されるブロワケース1、ブロワケース1内に設置されるブロワ2、及び、このブロワ2を駆動するブロワモータ3等を備えている。
なお、ブロワダクトは、ブロワケース1の上方に設置されており、従来と同様の構成であるため、ここでの説明を省略すると共に図1においても図示を省略している。
【0013】
ブロワケース1は、上部から見た形状が略円形に形状設定されており、内部にブロワ2及びブロワモータ3を収容している。
より詳細に説明すると、ブロワケース1は、中央上部にブロワ2を収容するブロワ収容室1aを備え、中央下部にブロワモータ3を収容するブロワモータ収容室1bを備えている。そして、ブロワ収容室1aの上部には、ブロワダクトに接続する開口1a1が形成されている。
また、ブロワケース1は、ブロワ収容室1a及びブロワモータ収容室1bを囲んで配置されるスクロール流路1c(空気流路)を備えている。図1には示されていないが、当該スクロール流路1cは、ブロワ収容室1aと接続されており、ブロワ2によって圧送される空気が流れる空気流路として機能する。そして、スクロール流路1cの吐出側端部(不図示)が車両用空気調和装置のダクトと接続されている。
【0014】
また、ブロワケース1の内部には、開口1dを介してスクロール流路1cと接続される空気取込室1eが設けられている。この空気取込室1eの内部には、ブロワモータ3に通じる冷却風導入口10が設けられている。
この冷却風導入口10は、空気取込室1eとブロワモータ収容室1bとを接続する接続流路11の空気取込室1e側の開口端によって構成されている。つまり、開口1dを介して空気取込室1eに取り込まれた空気が冷却風導入口10からブロワモータ収容室1bに冷却風として導入されるように構成されている。
なお、空気取込室1eの床面1e1が開口1dに向けて低くなるように傾斜されており、冷却風導入口10は、当該床面1e1に形成され、上方に向けて開口されている。
【0015】
図2は、空気取込室1eの平面断面図である。この図に示すように、本実施形態のブロワユニットS1は、冷却風導入口10への水の浸入を防止するための囲壁12と、防水壁13とを有している。
【0016】
囲壁12は、冷却風導入口10周りに立設されており、本実施形態においては冷却風導入口10の全周に亘り、冷却風導入口10を囲って設けられている。この囲壁12の高さは、開口1d側において、開口1dの高さの倍程度に設定されている。
なお、囲壁12は、必ずしも冷却風導入口10の全周を囲う必要はなく、冷却風導入口10周りの一部に立設されていても良い。
【0017】
防水壁13は、冷却風導入口10と開口1dとの間に立設されており、本実施形態においては、第1壁13aと第2壁13bとして2つ設けられている。
第1壁13aは、第2壁13bよりも開口1d寄りに配置されており、開口1dから空気取込室1eに流入する空気流の流れ方向aに対して壁面を向けて配設されている。また、第1壁13aは、その両端が空気取込室1eの内壁面と離間して設けられており、空気流の流れ方向aに向けられた壁面の幅が開口1dの幅よりも大きく設定されている。
なお、図2に示すように、本実施形態において第1壁13aは一部が囲壁12と一体化されているが、これは離間して設けることも可能である。
【0018】
第2壁13bは、第1壁13aと空気取込室1eの内壁面との間に形成された隙間Sから流れ込む空気流の流れ方向bに対して壁面を向けて配設されている。また、この第2壁13bは、図2に示すように、一端が第1壁13aと離間し、他端が空気取込室1eの内壁面と接続されているが、他端を空気取込室1eの内壁面と離間して設けることも可能である。
【0019】
そして、図2に示すように、第1壁13aと第2壁13bとは、開口1d側見て空気取込室1eの奥に向かって拡がるハの字形状に配置され、空気流の流れ方向a,b(水の浸入方向)に対して鋭角に配置されている。これによって本実施形態のブロワユニットS1は、空気取込室1eの奥側(すなわち冷却風導入口10側)に水が浸入し難く、空気取込室1eの奥側に入り込んだ水を開口1d側に排出し易いように構成されている。
なお、第1壁13aと第2壁13bとの高さは、開口1dの高さの半分程度に設定されている。
【0020】
図1に戻り、ブロワ2は、シャフト4を介してブロワモータ3と接続されており、ブロワモータ3によって生成された動力がシャフト4を介して伝達されることによって回転駆動される。そして、ブロワ2が回転駆動されることによって空気が圧送されてスクロール流路1cに空気流が形成される。
【0021】
ブロワモータ3は、外部から入力される指令信号に基づいて動作し、上述のようにブロワ2を回転駆動するための動力を発生する。そして、本実施形態においてブロワモータ3は、冷却風導入口10に入り込んだ空気が冷却風として吹き付けられることによって冷却される。
【0022】
そして、このような構成を有する本実施形態のブロワユニットS1では、ブロワモータ3が動作されてスクロール流路1cに空気流が形成されると、車両用空気調和装置に対して空気を圧送する。
このようにスクロール流路1cに空気流が形成されると、空気の一部が開口1dを介して空気取込室1eに取り込まれ、冷却風導入口10を通じて冷却風としてブロワモータ3に吹き付けられる。
【0023】
スクロール流路1cにはブロワダクト等から入り込んだ水が空気流に乗って流れる場合があり、その水の一部が空気取込室1eに入り込む場合がある。このような空気取込室1eに入り込んだ水が冷却風導入口10に入り込むと、ブロワモータ3に対して吹き付けられることとなり、ブロワモータ3の動作不良を招く虞がある。
これに対して、本実施形態のブロワユニットS1においては、囲壁12及び防水壁13によって空気取込室1eへの水の浸入が防止される。
【0024】
ここで、本実施形態のブロワユニットS1においては、冷却風導入口10周りに立設される囲壁12と、開口1dと冷却風導入口10との間に立設される防水壁13とによって、冷却風導入口10への水の浸入が防がれる。つまり、本実施形態のブロワユニットS1においては、複数の壁によって冷却風導入口10への水の浸入を防止すれば良く、各壁(すなわち囲壁12及び防水壁13)の高さを低く抑えることが可能となる。したがって、レイアウトの関係等によりブロワユニットS1の高さを十分に確保できずに空気取込室1eの高さが低い場合であっても、各壁(すなわち囲壁12及び防水壁13)と空気取込室1eの天井との間の隙間を十分に確保することができる。
また、本実施形態のブロワユニットS1によれば、囲壁12が防水壁13よりも高く、かつ、スクロール流路1cと空気取込室1eとを接続する開口1dの上端が囲壁12の上端よりも低い位置とされている。このため、空気流に乗って、空気取込室1eに開口1dを介して入り込む水は、囲壁12の上端よりも下方から空気取込室1eに入り込むこととなる。したがって、開口1dから空気取込室1eに入り込んだ水が囲壁12あるいは防水壁13に触れることなく直接冷却風導入口10に浸入することを防止することができる。
よって、本実施形態のブロワユニットS1によれば、ブロワモータ3に対して十分量の冷却風を供給すると共に、確実に冷却風導入口10への水の浸入を防止することが可能となる。
【0025】
また、本実施形態のブロワユニットS1においては、防水壁13として、開口1dから空気取込室1eに流入する空気流の流れ方向aに対して壁面を向けて配設される第1壁13aを有する。このため、開口1dから空気取込室1eに流れ込んだ水を第1壁13aの壁面にて受け止め、その移動を停止させることができる。
したがって、本実施形態のブロワユニットS1によれば、第1壁13aよりも冷却風導入口10側への水の浸入を防止し、より確実に冷却風導入口10への水の浸入を防止することが可能となる。
【0026】
また、本実施形態のブロワユニットS1においては、第1壁13aの幅が、開口1dの幅よりも大きく設定されている。このため、開口1dのどの位置から水が空気取込室1eに入り込んだ場合であっても、確実に第1壁13aの壁面で受け止めることが可能となる。
【0027】
また、本実施形態のブロワユニットS1においては、防水壁13として、第1壁13aと空気取込室1eの内壁面との間の隙間Sから流れ込む空気流の流れ方向bに対して壁面を向けて配設される第2壁13bを備えている。このため、水が隙間Sを通過して空気取込室1eの奥側に浸入した場合であっても第2壁13bによって受け止めることが可能となる。
【0028】
また、本実施形態のブロワユニットS1においては、空気取込室1eの床面1e1が開口1dに向けて低くなるように傾斜されている。このため、仮に空気取込室1eの奥側に水が入り込んだ際であっても、その水が床面1e1を伝うことで容易に空気取込室1eの外部に排出することができる。
ブロワユニットのなかには、図3に示すように、ブロワケース1の上面に溜まった水を空気取込室1eに導水する導水路14を備え、上記水を開口1dからスクロール流路1cに排出するものがある。このようなブロワユニットに本発明を適用した場合、床面1e1を上述のように傾斜させ、導水路14の出口部を囲壁12よりも傾斜の下方側、かつ囲壁12よりも低い位置に設ければ、空気取込室1eに導水された水は、床面1e1の傾斜により確実にスクロール流路1cに排出することができ、冷却風導入口10に侵入することはない。
【0029】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0030】
例えば、上記実施形態においては、防水壁13として第1壁13aと第2壁13bとの2つの壁を備える構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、防水壁の姿勢、形状及び個数は変更可能である。
【符号の説明】
【0031】
1……ブロワケース、1c……スクロール流路(空気流路)、1d……開口、1e……空気取込室、1e1……床面、2……ブロワ、3……ブロワモータ、S……隙間、10……冷却風導入口、12……囲壁、13……防水壁、13a……第1壁、13b……第2壁、14……導水路、S1……ブロワユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロワにより圧送される空気が流れる空気流路と、内部にブロワモータに通じる冷却風導入口が設けられる共に開口を介して前記空気流路と接続される空気取込室とを備えるブロワユニットであって、
前記冷却風導入口と前記開口との間に立設される防水壁と、
前記冷却風導入口周りに立設され前記防水壁よりも高い囲壁とを備え、
前記開口の上端が前記囲壁の上端よりも低い位置である
ことを特徴とするブロワユニット。
【請求項2】
前記防水壁として、
前記開口から前記空気取込室に流入する空気流の流れ方向に対して壁面を向けると共に前記空気取込室の内壁面との間に隙間を設けて配設される第1壁と、
前記第1壁と前記空気取込室の内壁面との間に設けられた隙間から流れ込む空気流の流れ方向に対して壁面を向けて配設される第2壁とを有する
ことを特徴とする請求項1記載のブロワユニット。
【請求項3】
前記空気取込室の床面が前記開口に向けて低くなるように傾斜されていることを特徴とする請求項1または2記載のブロワユニット。
【請求項4】
前記空気流路を形成するブロワケースの上部に溜まった水を前記空気取込室に導水する導水路を備えることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のブロワユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−1187(P2012−1187A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140757(P2010−140757)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(000141901)株式会社ケーヒン (1,140)
【Fターム(参考)】