説明

ブローアウト装置

【課題】開放動作した場合に速やかに閉止復旧することのできるブローアウト装置を提供する。
【解決手段】建屋の開口部枠1に蝶番3と前記建屋の内部圧力が所定値以上になったときに破壊される固定装置4によって取り付けられた閉止パネル2と、この閉止パネル2に一端が取り付けられたワイヤ6と、前記建屋の内部圧力を測定する圧力計8と、この圧力計8の測定値を受けてワイヤ6の他端を巻き取るパネル復旧装置7とを備えている構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力施設等の建屋内圧が何らかの事故によって上昇した場合にこれを逃すブローアウト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力施設の建屋内での一次系配管の破断等を想定した場合、破断時に放出される蒸気により建屋内圧が上昇する。このとき、原子炉格納容器に作用する外圧を低減するために、建屋外壁にブローアウト装置が設置されている。ブローアウト装置の開放が必要なのは、格納容器外で配管破断が発生し、建屋内圧が上昇した場合のみであるため、それ以外の強風、地震等の応力では開放しないように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来のブローアウト装置は、図4に示すように、建屋壁面に開けられた開口部枠1に、同一形状の鉄製の閉止パネル2がはめ込まれ、閉止パネル2の周囲と開口部枠部1との間をクリップ等で固定することにより、通常時は閉止されている。高エネルギー配管の破断等により建屋内の圧力が上昇したときには、閉止パネル2に圧力が掛り、固定装置が破断することにより閉止パネル2が開動作し、建屋内の圧力を逃がすことができるようになっている。閉止パネル2の下辺に落下止めがあり、転倒開放するタイプでは、パネル落下防止のため、上辺を鉄製の鎖5等により繋がれている。図5に示す開口部枠1に設置されたガイドレール10上を閉止パネル2がスライドするタイプでは、閉止パネル2が停止位置まで平行移動することにより、開口部に間隙が生じるようになっている。
【特許文献1】特開平05−232283号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の二次格納施設の隔壁を構成するブローアウト装置においては、理由の如何によらず、開放動作した場合、原子炉の運転継続に支障をきたすため、速やかな原子炉停止(原子炉スクラムから冷温停止、燃料取扱の停止)が要求される。ブローアウト装置の開動作後の復旧については、特段の考慮はなされておらず、正常作動時はともかく、内圧上昇以外の理由により誤作動した場合でも、その復旧までには、閉止パネルの再設置・固定、開口部の閉止、漏えい試験の実施と、一連の作業に多大な手間と時間が必要となっている。
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、開放動作した場合に速やかに閉止復旧することのできるブローアウト装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を達成するために本発明のブローアウト装置は、建屋の開口部に蝶番と前記建屋の内部圧力が所定値以上になったときに破壊される固定装置によって取り付けられた閉止パネルと、この閉止パネルに一端が取り付けられたワイヤと、前記建屋の内部圧力を測定する圧力計と、この圧力計の測定値を受けて前記ワイヤの他端を巻き取るパネル復旧装置とを備えている構成とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、開放動作した場合に速やかに閉止復旧することのできるブローアウト装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明に係るブローアウト装置の3つの実施の形態について、図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
まず、図1を用いて本発明の第1の実施の形態を説明する。本実施の形態のブローアウト装置は、閉止パネル2の下辺を建屋開口部枠1に蝶番3で接続し、通常時に他の3辺は開口部枠1に対して作動圧力負荷により破断するように調整された固定装置4により固定されている。
【0008】
建屋内圧上昇時には、固定装置4に設定値以上の応力がかかり、固定装置4が破損することにより、底辺を軸に閉止パネル2が転倒回転し開放される。このとき、閉止パネル1は落下防止のために、建屋開口部枠1の上部と閉止パネル2の上辺を鉄製の鎖5で連結されている。閉止パネル2にはこの鎖5の他に、引き起こし引っ張り用のワイヤ6を接続し、これを建屋内に設置されたパネル復旧装置7により巻き取ることができるようにするとともに、建屋内圧力を検知する圧力計8を設置した構成になっている。
【0009】
建屋内圧力の上昇により閉止パネル2が開放された場合には、開放後、圧力計8により建屋内圧力が、あらかじめ設定された復旧可能圧力よりも低下していることを検知した後に、閉止パネル2の閉止復旧操作を実施する。また、地震時の振動応力により誤開放された場合には、圧力計8により建屋内圧力が、あらかじめ設定された復旧可能圧力以下に維持されていることを検知した後に、閉止パネル2の閉止復旧操作を実施する。
【0010】
本実施の形態のブローアウト装置は、万一閉止パネル1が開放した時においても、圧力計8により建屋内圧力が、あらかじめ設定された復旧可能圧力以下にあることを検知した上で、パネル復旧装置7により速やかに閉止位置に復旧、再設置することが可能であり、建屋漏えい試験の後、運転再開が可能である。このように速やかに閉止復旧することにより、施設の有効利用(運転継続)、周辺への環境負荷(放射性物質の環境放出量)の低減等の効果が得られる。
【0011】
(第2の実施の形態)
図2を用いて第2の実施の形態を説明する。なお第1の実施の形態と同じ構成には同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
本実施の形態のブローアウト装置は、建屋開口部枠1の上下部に敷設されたガイドレール10と、それに沿って水平に移動することができる閉止パネル2が、通常時は建屋開口部枠1に対して、作動圧力負荷により破断するように調整された固定装置4により、固定されている。建屋内圧上昇時には、固定装置4に設定値以上の応力がかかり、固定装置4が破損することにより、閉止パネル2が建屋外側に押し出され開放される。閉止パネル2には、引き戻し用のワイヤ6が接続され、これを建屋内に設置されたパネル復旧装置7により巻き取ることができるようにするとともに、建屋内圧力を検知する圧力計8を設置した構成になっている。
【0012】
本実施の形態のブローアウト装置は、万一閉止パネル2が開放した時は、圧力計8により建屋内圧力が、あらかじめ設定された復旧可能圧力以下にあることを検知した上で、パネル復旧装置7により速やかに現状位置に復旧、再設置することが可能であり、建屋漏えい試験の後、運転再開が可能である。このように速やかに閉止復旧することにより、施設の有効利用(運転継続)、周辺への環境負荷(放射性物質の環境放出量)の低減等の効果が得られる。
【0013】
(第3の実施の形態)
次に、本発明のブローアウト装置の第3の実施の形態を図3を用いて説明する。なお第1、第2の実施の形態と同じ構成には同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
本実施の形態のブローアウト装置は、建屋内圧力を検知する圧力計8からの信号によりパネル復旧装置7に復旧動作を指示する自動制御装置9を設置し、閉止パネル2が開放された後、自動的に閉止パネル2の閉止復旧動作を行う構成である。
【0014】
本実施の形態のブローアウト装置は、建屋内圧力の上昇により閉止パネル2が開放された場合には、開放後、圧力計8により建屋内圧力が、あらかじめ設定された復旧可能圧力よりも低下していることを検知した信号により、自動的に閉止パネル2の閉止復旧を実施することができるので、不必要に開放維持することなく、速やかな閉止復旧が実現できる。また、想定以上の地震動により誤開放された場合には、圧力計8により建屋内圧力が、あらかじめ設定された復旧可能圧力以下に維持されていることを検知した信号により、自動的に閉止パネル2の閉止復旧を実施することができるので、運転員は地震発生後のプラントの復旧操作・復旧活動等のより重要な対応作業に注力することが可能となり、安全性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施の形態のブローアウト装置の構成を示し、(a)は閉時の状態を示す図、(b)は開動作後の状態を示す図、(c)は閉動作中の状態を示す図。
【図2】本発明の第2の実施の形態のブローアウト装置の構成を示し、(a)は閉時の状態を示す図、(b)は開動作後の状態を示す図、(c)は閉動作中の状態を示す図。
【図3】本発明の第3の実施の形態のブローアウト装置の構成を示し、(a)は閉時の状態を示す図、(b)は開動作後の状態を示す図、(c)は閉動作中の状態を示す図。
【図4】従来の第1の例のブローアウト装置の構成を示し、(a)は閉時の状態を示す図、(b)は開動作後の状態を示す図。
【図5】従来の第2の例のブローアウト装置の構成を示し、(a)は閉時の状態を示す図、(b)は開動作後の状態を示す図。
【符号の説明】
【0016】
1… 建屋開口部枠、2…閉止パネル、3…蝶番、4…固定装置、5…鎖、6…ワイヤ、7…パネル復旧装置、8…圧力計、9…自動制御装置、10…ガイドレール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建屋の開口部に蝶番と前記建屋の内部圧力が所定値以上になったときに破壊される固定装置によって取り付けられた閉止パネルと、この閉止パネルに一端が取り付けられたワイヤと、前記建屋の内部圧力を測定する圧力計と、この圧力計の測定値を受けて前記ワイヤの他端を巻き取るパネル復旧装置とを備えていることを特徴とするブローアウト装置。
【請求項2】
前記閉止パネルの開放後、前記圧力計の測定値が所定値以下になったとき前記パネル復旧装置を動作させる自動制御装置を備えていることを特徴とする請求項1記載のブローアウト装置。
【請求項3】
前記蝶番の代りに、前記閉止パネルを前記建屋の内外方向に移動可能とするガイドレールを備えていることを特徴とする請求項1または2記載のブローアウト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−121917(P2009−121917A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−295527(P2007−295527)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】