説明

ブロー成形品における切断方法及びブロー成形品の切断装置

【課題】ブロー成形品を所定位置にて正確に切断することができるようにすること。
【解決手段】ブロー成形品Wを治具11に保持する。この状態で、外周縁に刃先19aが形成された円形刃19を自転機構により自転させながら、公転機構によりブロー成形品Wの周囲を公転させことによって、ブロー成形品Wを切断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、ブロー成形にて円筒状に成形された軟質のブロー成形品の端部の捨袋を除去するために、同ブロー成形品を切断するための切断方法及び切断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のブロー成形品における切断装置としては、例えば特許文献1に開示されるような構成のものが提案されている。この従来装置においては、図4及び図5に示すように、円筒状をなすブロー成形品Wが受けブロック41の上面の凹部41aに載置されて、ワーク押え42により所定位置に位置決め保持される。この状態で、下端に刃先43aを有する板状刃物43がブロー成形品Wに対して上方から下降移動されることにより、ブロー成形品Wの端部が押し切り方式で切断される。この結果、同ブロー成形品Wの端部から不要な捨袋Waが除去されて、そのブロー成形品Wが製品となる。
【特許文献1】特開平5−237793号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、この従来装置においては、前述のように、軟質のブロー成形品Wが板状刃物43により押し切り式で無理矢理に切断される。従って、板状刃物43の刃先を可能な限り鋭利にしたとしても、図5に鎖線で示すように、ブロー成形品Wに対して切断圧力が一方向から作用するため、そのブロー成形品Wは大きく弾性変形する。このため、切断面が歪んだり、斜めになったり、場合によっては蛇行したりして、切断精度を維持することが難しい。よって、高精度なブロー成形品を得ることが困難であった。
【0004】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、ブロー成形品をその所定位置にて正確に切断することができるブロー成形品における切断方法及び切断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、ブロー成形品における切断方法においては、円筒状をなすブロー成形品における切断方法において、外周縁に刃先が形成された円形刃が自転しながら前記ブロー成形品の軸線を中心に公転されることにより、ブロー成形品を切断することを特徴とする。
【0006】
前記の方法において、前記円形刃の自転方向と公転方向とを同一にすることが好ましい。このようにすれば、切断抵抗が緩和される。
また、ブロー成形品における捨袋の切断装置においては、前記ブロー成形品を保持する治具と、外周縁に刃先が形成された円形刃と、その円形刃を自転させる自転機構と、円形刃を公転させる公転機構とを備えている。そして、前記円形刃を自転させながらブロー成形品の周囲を公転させて、そのブロー成形品を切断するようにしたことを特徴とする。
【0007】
前記の構成において、前記円形刃の刃先を連続刃縁で、かつ両側面に刃付面が形成された両刃により形成するとよい。このようにすれば、切断に際して円形刃の刃先に対して、切断に悪影響を与える同円形刃の軸方向への力が作用することを防止できる。なお、ここで、連続刃縁とは、鋸刃のような凹凸刃先が断続して並ぶ刃先とは異なり、凹凸形状ではなく、同一高さで連続する刃先形状を指す。
【0008】
また、前記治具は、ブロー成形品の少なくとも被切断部の両側を保持するようにするとよい。
さらに、前記治具は、ブロー成形品の被切断部の両側に対して凹凸の関係で対応して、その被切断部の両側を拘束する係合部を備え、この係合部とブロー成形品の外周面との間には、被切断部に対する前記回転刃の切り込みに際して、ブロー成形品の逃げを許容するクリアランスを形成するのが好ましい。
【0009】
加えて、前記治具は、ブロー成形品の被切断部に対応する環状溝を有し、前記円形刃が前記環状溝内を公転されるようにするのがよい。
従って、この発明の切断方法及び切断装置においては、円形刃の自転及び公転によってブロー成形品が切断されるため、押し切り方式とは異なり、ブロー成形品に作用する切断圧力が低減される。このため、ブロー成形品が大きく弾性変形することを抑制できる。よって、ブロー成形品をその端部等の所定位置において正確に切断除去することができる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、この発明によれば、ブロー成形品を所定位置にて正確に切断することができて、高精度のブロー製品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、この発明を具体化した一実施形態を、図1〜図3に基づいて説明する。
図1及び図2に示すように、この実施形態における切断対象物としてのエラストマー等の弾性材よりなるブロー成形品Wは、図示しないブロー成形型によりブロー成形されて円筒状に成形されている。このブロー成形品Wは、成形終了段階において製品部Wdの両端部に不要な捨袋Waが一体に形成されている。ブロー成形品Wの両端部には、各一対の円環状の突条Wbが形成されるとともに、それらの突条Wb間には被切断部Wcが形成されている。ブロー成形品Wは、その長さ方向の途中において屈曲されており、このため、一対の被切断部Wcは、図2から明らかなように、一方が他方に対して傾斜している。
【0012】
次に、ブロー成形品の切断装置について説明する。図1〜図3に示すように、前記ブロー成形品Wを保持するための治具11は、下部治具12と、その下部治具12にヒンジ14を介して開閉可能に連結された上部治具13とから構成されている。下部治具12及び上部治具13の対向面には、ブロー成形品Wを収容して、前記被切断部Wc及びその両側を含むブロー成形品W全体を保持するための保持凹部15,16が形成されている。
【0013】
その保持凹部15,16の両端部にはブロー成形品W上の各突条Wbを収容するための係合部としての収容溝15a,16aがそれぞれ形成されている。従って、この収容溝15a,16aとブロー成形品W上の各突条Wbとは凹凸の係合関係をもって対応し、この凹凸の係合関係によって前記被切断部Wcの両側が拘束される。また、収容溝15a,16aと各突条Wbの外周面との間において、被切断部Wcの反対側には、小さなクリアランスSが形成されている。このクリアランスSにより、被切断部Wcに対する後述の円形刃19の切断進入に際して、捨袋Waの部分及び製品部Wdの部分のわずかな逃げが許容される。
【0014】
下部治具12及び上部治具13は、それらの長手方向に沿って3つの分割部分12A〜12C,13A〜13Cに分割して形成されている。そして、上部治具13が下部治具12に対して閉じられた状態で、各分割部分12A〜12C,13A〜13C間に後述する円形刃19の挿入可能な環状の隙間17A,17Bが形成される。
【0015】
図1に示すように、前記治具11には一対の切断機構18A,18Bが同治具11に対して接近離間可能に対向配置されている。各切断機構18A,18Bには外周縁に連続刃縁としての刃先19aを有する円形刃19が装備されている。この円形刃19は、その両側面に同角度の刃付面を形成することにより前記刃先19aが形成された両刃である。この各円形刃19は、前記分割部分12A〜12C,13A〜13C間の隙間17A,17Bを介して、刃先19aによりブロー成形品Wの被切断部Wcを切断可能である。
【0016】
前記切断機構18A,18Bには、円形刃19を自転させるための自転機構20と、円形刃19を自転方向と同方向に公転させるための公転機構21とが設けられている。すなわち、前記自転機構20には自転用モータ22が設けられ、この自転用モータ22により、プーリ23,24及びベルト25を介して円形刃19が自身の軸線を中心に自転される。公転機構21には、円形刃19を含む自転機構20の全体を回動させるための回動軸26及び公転用モータ27が設けられている。そして、この公転用モータ27により、プーリ28,29、ベルト30及び回動軸26を介して円形刃19を含む自転機構20全体がブロー成形品Wの軸線を中心にして、そのブロー成形品Wの周囲を自転方向と同方向に公転される。
【0017】
次に、前記のように構成された切断装置により、ブロー成形品Wを切断して捨袋Waを除去する方法について説明する。
さて、このブロー成形品Wの捨袋Waの切断時には、図1に示すように、両切断機構18A,18Bが治具11に対して離間した位置に移動配置された状態で、上部治具13が下部治具12上から開放される。この状態で、下部治具12の保持凹部15内に、すでに成形が終了して冷却されたブロー成形品Wがセットされて、上部治具13が下部治具12上に閉じられると、図2及び図3に示すように、ブロー成形品Wが上下両治具12,13の保持凹部15,16内に収容保持される。
【0018】
その後、両切断機構18A,18Bにおいて自転機構20により円形刃19が自転されるとともに、両切断機構18A,18Bの全体が治具11に対して接近移動される。そして、図2及び図3に示すように、各切断機構18A,18Bの円形刃19が治具11の分割部分12A〜12C,13A〜13C間の隙間17A,17B内に進入して、ブロー成形品Wの被切断部Wcと対接する切断開始位置P1に移動され、円形刃19の刃先19aがブロー成形品Wの被切断部Wcに切り込まれる。引き続き、この状態から、円形刃19が自転されながら公転機構21によりブロー成形品Wの被切断部Wcの周囲を図3に2点鎖線で示す切断終了位置P2まで公転されて、ブロー成形品Wの被切断部Wcが切断される。このため、捨袋Waが製品部Wdと分離される。
【0019】
その後、円形刃19がブロー成形品Wから離脱し、隙間17A,17Bから抜け出て、原位置に復帰する。なお、円形刃19の軸が治具11,12間のヒンジ14と干渉することを避けるため、円形刃19の公転範囲が360度以下になっているが、円形刃19はブロー成形品W内に充分進入しているため、切り残しは生じない。
【0020】
その後、治具11を開くことにより、製品部Wdを取り出すことができるとともに、捨袋Waを除去することができる。
以上のように、この実施形態の切断方法においては、ブロー成形品Wの捨袋Waの切断除去が円形刃19の自転及び公転によって実行される。このため、その切断時においてブロー成形品Wに作用する切断圧力を低減することができて、ブロー成形品Wの被切断部Wcが大きく弾性変形することを抑制することができる。
【0021】
また、ブロー成形品Wにおける被切断部Wcの両側の突条Wbが治具11側の保持凹部15,16の収容溝15a,16a内において拘束されながら、クリアランスSの範囲内で軸線方向へわずかに移動可能である。このため、被切断部Wcの余分な動きを抑えて、その被切断部Wcを適切に切断できることに加え、円形刃19が被切断部Wcに切り込み進入する際において製品部Wd及び捨袋Waを円形刃19の厚み分だけ逃がすことができる。よって、被切断部Wcを所定位置において正確に切断して、捨袋Waを除去することができる。
【0022】
以上に述べた実施形態においては、以下に列挙する効果がある。
(1) 被切断部Wcを所定位置において正確に切断して、捨袋Waを除去することができ、結果として高精度な製品部Wdを得ることができる。
【0023】
(2) ブロー成形品Wの突条Wbと収容溝15a,16aとの間のわずかなクリアランスSにより、製品部Wd及び捨袋Waの逃げを許容できるため、被切断部Wcの切断を無理なく、スムーズに、かつ正確に行うことができる。
【0024】
(3) 円形刃19の刃先19aが連続刃縁で、さらに両刃に形成されているため、被切断部Wcの切断に際して、その切断面が粗面状になることを防止でき、さらに刃先19aに対して円形刃19の軸方向への力が作用することがないため、切断面が蛇行することもなく、切断面を正確かつ綺麗に仕上げることができる。しかも、切り屑が生じることもないので、切断装置や切断後のブロー成形品の清掃等の余分な手間を省くことができる。これに対し、図4に示すように、円形刃の外周に対して刃付面を一方の側面のみに形成したいわば鉋刃状の刃先の場合には、円形刃の左右の側面に対して異なる力が作用する。従って、その刃先に対して、円形刃の軸方向への力が作用して、結果として切断面が蛇行するおそれがある。
【0025】
・ 円形刃19の自転方向と公転方向とが同一方向であるため、切断抵抗が緩和されて、切断面の蛇行を防止できる。
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
【0026】
・ 前記実施形態においては、一対の切断機構18A,18Bにより、ブロー成形品Wの両端部の捨袋Waが同時に切断されるように構成されているが、治具11を長手方向に移動させて、1つの切断機構によりブロー成形品Wの両端部の捨袋Waを順に切断するように構成してもよい。
【0027】
・ 前記実施形態においては、切断機構18A,18Bが治具11に対して接近離間移動されるように構成されているが、これとは逆に治具11側を切断機構18A,18Bに対して接近離間移動させるように構成してもよい。
【0028】
・ この発明を捨袋Waの切断以外の用途、例えば、複数の製品部Wdが連続して形成されたブロー成形品Wから各製品部Wdを切り分ける場合に使用してもよい。
・ 前記治具11として、隙間17A,17Bを有しない構成、すなわち、分割型12A,12C,13A,13Cを有しない構成とすること。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】一実施形態のブロー成形品の捨袋の切断装置を示す斜視図。
【図2】図1の切断装置における捨袋の切断状態を示す拡大横断面図。
【図3】同じく捨袋の切断状態の拡大縦断面図。
【図4】従来の捨袋の切断装置を示す側断面図。
【図5】図4の切断装置の縦断面図。
【符号の説明】
【0030】
11,12,13…治具、18A,18B…切断機構、19…円形刃、19a…刃先、20…自転機構、21…公転機構、W…ブロー成形品、Wa…捨袋、Wc…被切断部、S…クリアランス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状をなすブロー成形品における切断方法において、
外周縁に刃先が形成された円形刃が自転しながら前記ブロー成形品の軸線を中心に公転されることにより、ブロー成形品を切断することを特徴とするブロー成形品における切断方法。
【請求項2】
前記円形刃の自転方向と公転方向とを同一にすることを特徴とする請求項1に記載のブロー成形品における切断方法。
【請求項3】
円筒状をなすブロー成形品の切断装置において、
前記ブロー成形品を保持する治具と、
外周縁に刃先が形成された円形刃と、
その円形刃を自転させる自転機構と、
前記円形刃を前記ブロー成形品の周囲において公転させる公転機構とを備え、
前記円形刃を自転させながらブロー成形品の周囲を公転させて、そのブロー成形品を切断するようにしたことを特徴とするブロー成形品の切断装置。
【請求項4】
前記円形刃の刃先を連続刃縁で、かつ両側面に刃付面が形成された両刃により形成したことを特徴とする請求項3に記載のブロー成形品の切断装置。
【請求項5】
前記治具は、ブロー成形品の少なくとも被切断部の両側を保持することを特徴とする請求項3または4に記載のブロー成形品の切断装置。
【請求項6】
前記治具は、ブロー成形品の被切断部の両側に対して凹凸の関係で対応して、その被切断部の両側を拘束する係合部を備え、この係合部とブロー成形品の外周面との間には、前記被切断部に対する回転刃の切り込みに際して、ブロー成形品の逃げを許容するクリアランスを形成されるようにしたことを特徴とする請求項3〜5のうちのいずれか一項に記載のブロー成形品の切断装置。
【請求項7】
前記治具は、ブロー成形品の被切断部に対応する環状溝を有し、前記円形刃が前記環状溝内を公転されることを特徴とする請求項3〜6のうちのいずれか一項に記載のブロー成形品の切断装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−173927(P2008−173927A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−11610(P2007−11610)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】