説明

ブロー成形壜体

【課題】 本発明は、デラミボトルタイプのブロー成形壜体において、内容液の残量に拘わらずスムーズな注出操作が可能で、また内容液を略最後まで使いきることができることが可能な周壁構造を創出することを技術的な課題とするものである。
【解決手段】 胴部の中間高さ位置に、胴部の周壁を屈曲して、全周に亘る縦方向への座屈状の反転変形可能に屈曲周壁部を陥没状に周設し、胴部は屈曲周壁部により上部胴部と下部胴部に上下に二分されるものとし、反転変形後、上部胴部の周壁の下端部から下部胴部の周壁の上端部に至る範囲内に位置する周壁により形成される山折状屈曲部で、外層により内層を挟持し、この挟持により内層を周状に固定する構成とし、また、下部胴部から底部にかけての領域に位置する外層部分に、外層と内層の間に外気を導入するための吸気孔を開設する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外殻を形成する外層内に、減容変形自在な内袋を形成する内層を剥離自在に積層形成した、所謂、デラミボトルと称されるブロー成形壜体に関するものである。

【背景技術】
【0002】
特許文献1には、所謂、デラミボトルと称されるブロー成形壜体に係る発明が記載されている。
図8はデラミボトルを利用したスクイズタイプの注出容器の代表的な例を示す半縦断正面図、また図9は胴部104の平断面図である。
この注出容器はブロー成形壜体101の口筒部102に逆止弁を備えた注出キャップ45を取り付けたものである。ブロー成形壜体101(デラミボトル)は外殻を形成する外層121に減容変形自在な内袋を形成する内層122を剥離自在に積層した層構成を有する。
この種のデラミボトルは、相溶性の殆どない外層と内層を共押出して積層パリソンに成形し、この積層パリソンをブロー成形して得ることができる。
【0003】
また、デラミボトルは、口筒部に手動押圧式ポンプを組付け固定したポンプ付き注出容器の容器本体としても利用されているが、上記したスクイズタイプの注出容器にしても、ポンプ付き注出容器にしても内容液を注出した分、内層を萎み状に減容変形させることにより容器内部への外気の侵入を防ぐことができ、内容液の品質の低下を防ぐことができると共に、内容液が残り少なくなった状態でも、その注出操作をスムーズに達成することが可能である。
【0004】
ここで、デラミボトルを使用した注出容器では、内容液の注出に伴う内層の減容変形により、壜体内で剥離した内層同士が密着して内容液の流路が使用の途中段階で狭くなったり、さらには閉塞して注出操作性が損なわれる、あるいは内容液を略最後まで使い切ることができないといった問題がある。
この点、図8、9に示されるブロー成形壜体101では、外層121と内層122を接着層123により縦帯状に接着した接着帯124を、軸対称の位置に一対、配設し(図9参照)、内層122の減容変形の進行態様を図9中の二点鎖線にみられるように制御し、内容液Lを最後まで使い切ることができるような構成としている。
【0005】
図9を参照して、内容液Lの注出の進行に伴う内層122の変形の推移を説明すると、一対の接着帯124で左右に2分された内層変形部122a、122bが、図中二点鎖線で示されるように、矢印の方向に扁平状に減容変形し、左右中央位置で接触し、さらにこの接触が接着帯124の位置する部分に向かって進展しながら減容変形が進行する。
そして、接着帯124の幅を適宜に設定することにより、内層122の変形がかなり進行した状態においても、図9に示されるように、接着帯124の近傍に流動通路Fcが確保される。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−072785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、図8と図9に示すような、縦方向に配設した一対の接着帯124で内層122の減容変形の態様を制御しようとする場合、内容液の注出が進行すると、上記説明したように内層122が主に横方向に収縮し、内層122同士が左右中央部で接触するため、図9にも示されているように内容液Lの流路Fcが狭くなり、スムーズな注出操作が損なわれる。
また、特にスクイズタイプの注出容器では内容液Lが底部105あるいは胴部104の周壁近傍に残留し、内容液Lを残したまま廃棄することになってしまう。
また、底部105のシール部106では、外層121/内層122/内層122/外層121、と云う層構成で、外層121は内層を介して密着しているが、
使用の途中段階で、内容液Lは図8に示されるように、正立状態では底部105近傍に滞留し、そのため次の注出時には胴部の下端部近傍から順次上方に向かって周壁をスクイズするようになり、底部105に外力が作用し、底シール106で底割れが発生するという問題もある。
【0008】
そこで本発明の課題は、デラミボトルタイプのブロー成形壜体において、内層を、主として縦方向すなわち壜体の軸方向に減容変形させ、内容液の残量に拘わらずスムーズな注出操作が可能で、また内容液を最後まで使いきることができることが可能な周壁構造を創出することを技術的な課題とするものである。

【課題を解決するための手段】
【0009】
上記技術的課題を解決する手段の内、本発明の主たる構成は、
筒状の胴部の下端に底部を連接し、外殻を形成する合成樹脂製の外層に、内圧の減少による減容変形が自在に構成された内袋を形成する合成樹脂製の内層を剥離自在に積層したブロー成形壜体において、
胴部の中間高さ位置に、胴部の周壁を屈曲して、全周に亘る縦方向への座屈状の反転変形可能に屈曲周壁部を陥没状に周設し、
胴部は屈曲周壁部により上部胴部と下部胴部に上下に二分されるものとし、
反転変形後、上部胴部の周壁の下端部から下部胴部の周壁の上端部に至る範囲内に位置する周壁により形成される山折状屈曲部で、外層により内層を挟持し、この挟持により内層を周状に固定する構成とし、
また、下部胴部から底部にかけての領域に位置する外層部分に、外層と内層の間に外気を導入するための吸気孔を開設する構成とする、
と云うものである。
【0010】
上記構成のブロー成形壜体は、所謂、デラミボトルと称されるものであるが、
上記構成により、屈曲周壁部の、全周に亘る縦方向への座屈状の反転変形により、この屈曲周壁部を含む上部胴部の周壁の下端部から下部胴部の周壁の上端部に至る範囲で周壁に形成される山折状屈曲部で、外層により内層を挟持し、この挟持により内層を周状に固定することが可能となる。
この内層の周状の固定は、屈曲周壁部の全周に亘る反転変形により達成されるものであり、逆戻りすることなく、強固な固定状態を維持することが可能である。
ここで、本願で、山折状屈曲部は壜体の外側に向かって凸の形状をした屈曲部を指し、逆に壜体の内側に向かって凸の屈曲部は谷折状屈曲部とする。
【0011】
そして、本発明は上記したような山折状屈曲部を利用して内層を周状に固定し、この周状の固定部分(以下、周状固定部と記す。)により、デラミボトルを利用した注出容器において、内容液の注出の進行に伴う内層の減容変形が、主に、壜体の横方向ではなく縦方向に進行するように制御しようとするものである。
【0012】
ここで、外層と内層の間に外気を導入するための吸気孔は、下部胴部から底部にかけての領域に位置する外層部分に開設されているので、内層の減容変形はまず、周状固定部の下方に位置する下部胴部で外層に積層する内層部分で進行する。(以下、下部胴部で外層に積層する内層部分を下部内層部分と記し、また上部胴部で外層に積層する内層部分を上部内層部分と記す。)
そして、さらに減容変形が進行すると周状固定部を基端とし、有底筒状の下部内層部分が胴部の上方に反転変形し、この変形により上部内層部分内にある内容液を注出口方向に集めることができる。
一方、周状固定部で上部内層部分と外層の間への外気の進入が阻まれるので、上部内層部分は外層に積層した状態のままである。
【0013】
そして、上記内層の減容変形の態様によれば、注出口に向かう内容液の流路が閉塞されることは勿論、狭くなることもないので、内容液の残量が少なくなってもスムーズな注出操作性が持続され、また内容液をほとんど最後まで使い切ることが可能となる。
なお、壜体の屈曲周壁部を利用した全周に亘る座屈状の反転変形は、内容液を充填した注出容器製品の最終ユーザーが実施するわけではなく、壜体のブロー成形業者等が二次加工として実施するものであり、適宜のプレス装置や押圧治具を使用することにより外観を損なうこともなく、容易に達成することが可能な工程である。
【0014】
本発明の他の構成は、上記主たる構成において、
屈曲周壁部は、上部胴部の周壁の下端に連結し下方に縮径する上傾斜周壁と、下部胴部の周壁の上端に連結し上方に縮径する下傾斜周壁と、これら上傾斜周壁と下傾斜周壁を連結する接続周壁から形成する構成とする、と云うものである。
【0015】
上記構成は、屈曲周壁部の周壁の構成の具体的な例を示すものであり、この構成によれば、壜体をプレス装置等で軸方向に押圧することにより、上部胴部の周壁の下端部と上傾斜周壁の接続部、および上傾斜周壁と接続周壁の接続部を軸に、上傾斜周壁を下方に反転させて、上部胴部の周壁の下端部と上傾斜周壁とで形成される山折状屈曲部で内層を周状に固定することができる。
【0016】
ここで、上部胴部の周壁の下端部と上傾斜周壁により変形前も山折状屈曲部が形成されているが、反転変形後にはその屈曲角度を180°近くにすること、すなわち山折状屈曲部の屈曲点近傍で、周壁が完全に二つ折り状に重なるようにすることができ、外層により内層を挟持して、強固に保持することが可能となる。
なお、本構成では上記したように、上部胴部の周壁の下端部と上傾斜周壁の接続部、および上傾斜周壁と接続周壁の接続部が反転変形の軸となるので、当該接続部は薄肉状にする、あるいは円弧状に形成する等により反転変形をよりスムーズに進展させることができる。
【0017】
本発明のさらに他の構成は、上記構成において、上部胴部の周壁の下端に下方に拡径する段周壁を連設し、この段周壁を介して上部胴部の周壁の下端と上傾斜周壁を連結する構成とする、と云うものである。
【0018】
上記構成によれば、上傾斜周壁の変転変形後の上部胴部の周壁の下端部と上傾斜周壁による山折状屈曲部で、段周壁を含めてより広い範囲で外層で内層を挟持することができ、内層の固定をより強固に保持することが可能となる。
【0019】
本発明のさらに他の構成は、上記主たる構成において、山折状屈曲部の屈曲点近傍で、周壁が完全に二つ折り状に重なっている構成とする、と云うものである。
【0020】
上記構成により、外層で内層をより確実に挟持して、内層の固定をより強固に保持することが可能となる。
【0021】
本発明のさらに他の構成は、上記主たる構成において、底部の底シール部に吸気孔を開設する、と云うものである。
【0022】
底シール部はブロー成形工程でパリソンを金型のピンチオフ部で偏平状に押潰して、喰切り状に形成される部位で、外層/内層/内層/外層、と云う積層構造を有し、外層と内層は剥離可能に積層しているため、底部に横方向に押圧力を作用させる等により、外層と内層を容易に剥離させることができ、この剥離によって形成される外層と内層の間隙を、吸気孔として利用することができる。
また、本構成によれば吸気孔を底部の底面の中央部に配設することができ、内層の減容変形を、対称的により均一な状態でスムーズに進行させることが可能となる。

【発明の効果】
【0023】
本発明のブロー成形壜体は上記した構成としたので、以下に示す効果を奏する。
すなわち、本発明の主たる構成を有するデラミボトルタイプのブロー成形容器にあっては、屈曲周壁部の全周に亘る縦方向への座屈状の反転変形後の山折状屈曲部で、外層で内層を挟持して内層を周状に固定することにより、内容液の注出の進行に伴う内層の減容変形を、壜体の縦方向に進行するように制御するものであり、注出口に向かう内容液の流路が閉塞されることは勿論、狭くなることもなく、内容液の残量が少なくなってもスムーズな注出操作性が持続され、また内容液をほとんど最後まで使い切ることができる。

【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のブロー成形壜体の一実施例の半縦断正面図である。
【図2】図1の壜体の、周壁を反転変形させた後の半縦断正面図である。
【図3】図1の壜体の屈曲周壁部近傍を拡大して示す縦断面図で、(a)は図1の状態、(b)は図2の状態に相当する。
【図4】図1の壜体の底シール部近傍を拡大して示す縦断面図で、(a)は外層と内層の剥離前、(b)は剥離後である。
【図5】容器本体として図2の壜体を利用したポンプ付き注出容器の一例について部分的に縦断した側面図で、(a)は使用前の状態、(b)は内容液を少量注出した後の状態、(c)は内容液の残量が少なくなった状態である。
【図6】容器本体として図2の壜体を利用したスクイズタイプの注出容器の一例について部分的に縦断した側面図で、(a)は使用前の状態、(b)は倒立姿勢で内容液を少量注出した後の状態、(c)は倒立姿勢で内容液の残量が少なくなった状態である。
【図7】容器本体として図2の壜体を利用したスクイズタイプの注出容器の他の例について部分的に縦断した側面図で、(a)は使用前の状態、(b)は倒立姿勢で内容液を少量注出した後の状態、(c)は倒立姿勢で内容液の残量が少なくなった状態である。
【図8】容器本体として従来のデラミボトルタイプのブロー成形壜体を使用したスクイズタイプの注出容器の例を示す半縦断正面図である。
【図9】図8のA−A線に沿って示す平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を実施例に沿って図面を参照しながら説明する。
図1〜図4は本発明によるブロー成形壜体の一実施例を説明するためのもので、図1は半縦断正面図、図2は周壁を反転変形させた後の半縦断正面図、図3は屈曲周壁部7の近傍を拡大して示す縦断面図、図4は底部5の底シール部6の近傍を拡大して示す縦断面図である。
この壜体1は、口筒部2、テーパー筒状の肩部3、円筒状の胴部4、そして底部5を有する。
また、胴部4の中央高さ位置より少し下位に、胴部4の周壁を屈曲させて、屈曲周壁部7が陥没状に周設されている。
そして、この屈曲周壁部7により胴部4は、上部胴部4aと下部胴部4bに2分されている。
【0026】
また、この壜体1は、低密度ポリエチレン(以下、LDPEと略記する。)樹脂からなる外層21の内側にLDPE樹脂との相溶性が低いナイロン樹脂からなる内層22を積層した層構成を有する。
そして、外層21と内層22は剥離可能に積層しており、外層21は壜体1の外殻を形成し、内層22は、外殻の内側に自在な減容変形性を有する薄肉の内袋を形成している。
【0027】
底部5の底面にはブロー成形工程で、金型のピンチオフ部によるパリソンの喰切り痕に相当する底シール部6が形成されている。この底シール部6は図4(a)に示されるように、外層21/内層22/内層22/外層21、と云う積層構造を有する。
本実施例の壜体1では、底部5に横方向に押圧力を作用させる等により、図4(b)に示されるように外層21と内層22を剥離させて、この剥離によって形成される外層21と内22層の間隙を、外層21と内層22の間に外気を導入するための吸気孔26として利用するようにしている。
【0028】
本実施例の屈曲周壁部7は、図3(a)の拡大図に示されるように、主として、上部胴部4aの周壁の下端に連結し下方に縮径するテーパー筒状の上傾斜周壁8と、下部胴部4bの周壁の上端に連結し上方に縮径するテーパー筒状の下傾斜周壁9と、これら上傾斜周壁8と下傾斜周壁9を連結する円筒状の接続周壁10から構成されている。
さらに、上傾斜周壁8は下方に拡径する段周壁11を介して上部胴部4aの周壁の下端に連結している。
【0029】
また、段周壁11と上傾斜周壁8の連結部12aと、上傾斜周壁8と接続周壁10の接続部12bはそれぞれ、縦断面でみて円弧状の形状としている。また、図3(a)の状態、すなわち図1の状態で、上部胴部4aの周壁と上傾斜周壁8は山折状屈曲部13a1を形成し、上傾斜周壁8と接続周壁10は谷折状屈曲部13b1を形成している。
【0030】
そして、ブロー成形で成形される図1の状態の壜体1を、プレス装置で、肩部3や上部胴部4aを適宜の治具で包持した状態で下方に押圧することにより、屈曲周壁部7を利用して、胴部4の周壁を座屈状に縦方向に変形させて、図2に示す状態の壜体1とすることができ、この図2のように座屈状に変形させた状態の壜体1を注出容器の容器本体として使用する。
【0031】
この座屈状の変形に伴う屈曲周壁部7近傍の周壁の変位、あるいは変形は、変形前の図3(a)と変形後の図3(b)により示されている。
すなわち、図1の状態の壜体1をプレス装置により下方に押圧すると、上傾斜周壁8が、両端部の、連結部12a、12bを軸として、湾曲状に変形しながら、図中、白抜き矢印で示すように下方に変位し、反転変形後、図3(b)に示す状態になるが、この図3(b)に示される周壁の屈曲状態は上傾斜周壁8の反転変形により、後戻りすることなく保持される。
ここで、接続部12a、12bはそれぞれ、縦断面でみて円弧状の形状としているため、これら接続部12a、12bを軸とした上傾斜周壁8の下方への反転変形をスムーズに進行させることができる。
【0032】
また、屈曲部の変化をみると、図3(a)中の山折状屈曲部13a1と谷折状屈曲部13b1は、それぞれ、その屈曲角度が大きくなり図3(b)に示される山折状屈曲部13a2と谷折状屈曲部13b2となっている。
ここで、反転変形後の山折状屈曲部13a2の屈曲点近傍の広い範囲で、その屈曲角度は段周壁11を配設した作用効果も相俟って、180°に達し、周壁が完全に二つ折り状態となっており、折り畳まれた内層22が外層21により強固に挟持された状態にあり、内層22を全周に亘って強固に固定する周状固定部14(図2参照)が形成される。
【0033】
次に、図2に示される反転変形後の壜体1を容器本体として利用する注出容器について、図5〜7を参照しながら説明する。
まず、図5は容器本体として図2の壜体1を利用したポンプ付き注出容器の一例について、部分的に縦断した側面図で、(a)は使用前の状態、(b)は内容液を少量注出した後の状態、(c)は内容液の残量が少なくなった状態である。
この注出容器は図2の反転変形後の壜体1の口筒部2に組付けキャップ42によりポンプ41を組付け固定したものである。
【0034】
図5(a)に示される使用前の状態から、ポンプ41の押下げにより、内容液Lが注出するのに伴って、有底筒状の下部内層部分22bが萎み状に減容変形し、その分、底シール部6を利用して形成された吸気孔26から外気が外層21と内層22の間に進入、図5(b)に示されるような状態となる。
そして、内容液Lの注出がさらに進行するのに伴って、下部内層部分22bの底部が上方に持ち上がるように変位し、さらに内層22の周状固定部14を基端として上方に反転変形し、図5(c)に示した状態となる。
【0035】
ここで、下部内層部分22bでは、横方向には大きく萎むことなく、周状固定部14を基端として反転変形もしながら、縦方向に変位して減容変形が進行するので、使用の途中の段階で、内容液Lの流路が狭くなったり、閉塞すると云うようなことがなく、内容液Lをほとんど使い切るまで、スムーズな注出操作性を保持することができる。
なお、注出の全過程で上部内層部分22aは、変形することなく外層21に積層した状態が保持される。
【0036】
次に、図6は容器本体として図2の壜体1を利用したスクイズタイプの注出容器の一例について部分的に縦断した側面図で、(a)は使用前の状態、(b)は倒立姿勢で内容液を少量注出した後の状態、(c)は倒立姿勢で内容液の残量が少なくなった状態である。
この注出容器は図2の壜体1の口筒部2に逆止弁46を配設した注出キャップ45を組付け固定したものである。
【0037】
図6(a)に示される使用前の状態から、図6(b)に示されるように倒立姿勢にして、図6(b)中、白抜き矢印で示される高さ位置で、すなわち胴部4の上部で押圧すると、逆止弁46が開き、内容液Lが外部に注出され、その分、下部内層部分22bが減容変形する。
胴部4の上部での押圧を止めると、外層21は弾性的な回復力により元の形に復元し始め、内層22内の内圧が外気圧に戻り、逆止弁46が閉じ内容液Lの注出が止まる。
さらに外層21の元の形への復元が進行すると、下部内層部分22bは減容変形した形状を保持したまま、通気孔26を介して外層21と下部内層部分22bとの層間に外気が進入し、図6(b)に示されるような状態となる。
【0038】
内容液Lの注出がさらに進行するのに伴って、下部内層部分22bの底部が胴部4の上方に向うように変位し、さらに周状固定部14を基端として胴部4の上方に反転変形し、内容液Lの残量が少なくなると図6(c)に示したような状態となる。
【0039】
そして、この場合も下部内層部分22bは横方向には大きく萎むことなく、反転変形もしながら、縦方向に変位して減容変形が進行するので、使用の途中の段階で、内容液Lの流路が狭くなったり、閉塞すると云うようなことがなく、内容液Lをほとんど使い切るまで、スムーズな注出操作性を保持することができる。
【0040】
次に、図7は図2の壜体1を利用したスクイズタイプの注出容器の他の例について、部分的に縦断した側面図で、(a)は使用前の状態、(b)は倒立姿勢で内容液を少量注出した後の状態で、(c)は倒立姿勢で内容液の残量が少なくなった状態である。
この注出容器も図6の注出容器と同様に、図2の壜体1の口筒部2に注出キャップ45を組付け固定したものであるが、図7の注出容器に比較すると逆止弁のない注出キャップ45を使用している点が特徴的である。
【0041】
内容液Lの粘度が高い場合には、内容液Lが口筒部2から注出口にかけての領域に滞留するので、当該部分に滞留する内容液Lにより逆止弁の機能が発揮され、逆止弁がなくても外気の進入を止めることができる。
内容液Lの粘度が高い場合、内容液Lが逆止弁に詰まってその動作を損ね、注出操作が困難になるケースがあるが、この例のように逆止弁のない注出キャップを使用することによりこの種の不具合の発生をなくすことができる。
【0042】
以上、実施例に沿って本発明の壜体、およびこの壜体を容器本体として使用した注出容器の構成とその作用効果について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではない。
まず、上記した壜体の実施例では外層21としてLDPE樹脂、内層22としてナイロン樹脂を使用した例を示したが、壜体のブロー成形性、外層21と内層22の剥離性等を考慮して、他の合成樹脂の組み合わせとすることもできる。
また、上記実施例では胴部を円筒状としたが、使用目的に応じて楕円筒状や長円筒状等、他の形状を選択することができる。
【0043】
また、屈曲周壁部の周壁形状についても、上記実施例はその一例であり、本発明の特徴である山折状屈曲部で外層により内層を挟持して内層を周状に固定する、と云う範疇の中で、周状の反転変形性や、外観や、ブロー成形性当を考慮してさまざまなバリエーションンの中から適宜選択できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上説明したように、本発明のデラミボトルタイプのブロー成形容器は、接着層を使用することなく、屈曲周壁部の周状の反転変形後の山折状屈曲部を利用して内層を周状に固定するものであり、注出容器の容器本体として使用すると、内層が壜体の縦方向に減容変形するように制御することができ、内容液の残量が少なくなってもスムーズな注出操作性が持続され、また内容液をほとんど最後まで使い切ることができ、スクイズタイプの注出容器やポンプ付き注出容器の容器本体として幅広い利用が期待される。

【符号の説明】
【0045】
1、101;壜体
2、102:口筒部
3 ;肩部
4、104;胴部
4a;上部胴部
4b;下部胴部
5、105;底部
6、106;底シール部
7 ;屈曲周壁部
8 ;上傾斜周壁
9 ;下傾斜周壁
10;接続周壁
11;段周壁
12a、12b;連結部
13a1、13a2;山折状屈曲部
13b1、13b2;谷折状屈曲部
14;周状固定部
21、121;外層
22、122;内層
22a;上部内層部分
22b;下部内層部分
26;通気孔
41;ポンプ
42;組付けキャップ
45;注出キャップ
46;逆止弁
122a、112b;内層変形部
123;接着層
124;接着帯
Fc;流路
L ;内容液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の胴部(4)の下端に底部(5)を連接し、外殻を形成する合成樹脂製の外層(21)に、内圧の減少による減容変形が自在に構成された内袋を形成する合成樹脂製の内層(22)を剥離自在に積層したブロー成形壜体において、
前記胴部(4)の中間高さ位置に、胴部(4)の周壁を屈曲して、全周に亘る縦方向への座屈状の反転変形可能に屈曲周壁部(7)を陥没状に周設し、
前記胴部(4)は前記屈曲周壁部(7)により上部胴部(4a)と下部胴部(4b)に上下に二分されるものとし、
前記反転変形後、前記上部胴部(4a)の周壁の下端部から下部胴部(4b)の周壁の上端部に至る範囲内に位置する周壁により形成される山折状屈曲部(13a2)で、前記外層(21)により内層(22)を挟持し、該挟持により該内層(22)を周状に固定する構成とし、
また、前記下部胴部(4b)から底部(5)にかけての領域に位置する外層(21)部分に、外層(21)と内層(22)の間に外気を導入するための吸気孔(26)を開設する構成としたブロー成形容器。
【請求項2】
屈曲周壁部(7)は、上部胴部(4a)の周壁の下端に連結し下方に縮径する上傾斜周壁(8)と、下部胴部(4b)の周壁の上端に連結し上方に縮径する下傾斜周壁(9)と、該上傾斜周壁(8)と下傾斜周壁(9)を連結する接続周壁(10)から形成する構成とした請求項1記載のブロー成形容器。
【請求項3】
上部胴部(4a)の周壁の下端に下方に拡径する段周壁(11)を連設し、該段周壁(11)を介して前記上部胴部(4a)の周壁の下端と上傾斜周壁(8)を連結する構成とした請求項2記載のブロー成形容器。
【請求項4】
山折状屈曲部(13a2)の屈曲点近傍で、周壁が完全に二つ折り状に重なっている構成とした請求項1、2または3記載のブロー成形容器。
【請求項5】
底部(5)の底シール部(6)に吸気孔(26)を開設した請求項1、2、3または4記載のブロー成形容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−158347(P2012−158347A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17858(P2011−17858)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】