説明

ブロー成形機システム

【課題】ヒータモジュールとブロー成形部の温度を個々に最適に制御して安定してブロー成形できるブロー成形機システムを提供する。
【解決手段】空気調和機12により温湿度制御される成形機械室10内にブロー成形機11を設置し、そのブロー成形機11のヒータモジュール部11aとブロー成形部11bに、それぞれ独立して排気フード30a、30bを設置し、その両排気フード30a、30bの排気ライン31a、31bに、排気ファン33a、33bを接続してヒータモジュール部11aとブロー成形部11bの周囲の空気を成形機械室10外にそれぞれ独立して排気し、かつ、ヒータモジュール部11aの排気温度を一定に制御すると共に必要に応じて空気調和機12に循環させるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペットボトルの容器をブロー成形する際に、その容器を安定してブロー成形できるブロー成形機システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ペットボトルの容器は、ポリエチレンテレフタレート(PET)の樹脂からプリフォームを形成し、このプリフォームを成形型に入れ、プリフォーム内に高圧の空気を吹き込んで膨らませて、成形型に押し付けて所望の形に成形した後、成形型から取りだして製造される。
【0003】
このブロー成形では、プリフォームを加熱・軟化した後に、ブロー成形するために、容器の無菌性が確保できる。
【0004】
ブロー成形機は、プリフォームを加熱・軟化させるヒータモジュールと、ヒータモジュール部で軟化したプリフォームを高圧空気によりブロー成形するブロー成形部とからなっている。
【0005】
このブロー成形機においては、ブロー成形前のプリフォームの温度や成形金型温度が変化すると、容器の肉厚が変化したり、底部が白濁したり、製品の歩留まりが低下するために、これらの温度を厳密に制御することが必要である。
【0006】
【特許文献1】特開2000−202895号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このヒータモジュール部は、380KWの発熱量をもち、赤外線照射によりプリフォームを所定の温度に加熱し、軟化せしめる。またブロー成形部は、成形金型温度を120℃に保持する必要がある。
【0008】
特に、ブロー成形前のプリフォーム温度の制御は、歩留まりへの影響が大きいが、この加熱を厳密に行うためには、赤外線照射量の制御の他に、成形機械室の温湿度制御を一定に保つことと、ヒータモジュール内の空気温度を一定に保つことが重要である。
【0009】
従来、ヒータモジュール内の空気温度は、ヒータ出力の変動の影響を受け上下し、一定に保つことが困難であった。又、ヒータモジュールからの排気は、風量が大きいため、そのまま屋外に放出すると、同量の外気の温湿度を調整する必要が生じ、多大なエネルギを消費するという問題があった。
【0010】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、ヒータモジュール部の空気温度を最適に制御して安定してブロー成形ができ、かつ、エネルギ消費の少ないブロー成形機システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、空気調和機により温湿度制御される成形機械室内にブロー成形機を設置し、そのブロー成形機のヒータモジュール部とブロー成形部に、それぞれ独立して排気フードを設置し、その両排気フードの排気ラインに、排気ファンを接続してヒータモジュール部とブロー成形部の空気を成形機械室外にそれぞれ独立して排気することを特徴とするブロー成形機システムである。
【0012】
請求項2の発明は、ヒータモジュール側の排気ファンをインバータで駆動し、その排気ファンの上流側の排気ラインに温度検出器を設け、その温度検出器の温度が所定の温度となるようにヒータモジュール側の排気ファンの排気量を上記インバータで制御する請求項1記載のブロー成形機システムである。
【0013】
請求項3の発明は、ヒータモジュール側の排気ラインから分岐して、排気空気を上記空気調和機に戻す循環ラインを接続し、その循環ラインと循環ライン下流側の排気ラインに循環量を調節するダンパを接続し、上記空気調和機に外気導入ラインを接続した請求項1または2記載のブロー成形機システムである。
【0014】
請求項4の発明は、空気調和機は、成形機械室から吸込ラインを介して導入される吸気及び外気を除塵するプレフィルタと、プレフィルタで除塵された空気を冷却する冷却器と、空気を加熱する加熱器と、循環ファンと、循環ファンの空調空気を、除塵して給気ラインを介して成形機械室に清浄空気を給気するHEPAフィルタからなる請求項1〜3いずれかに記載のブロー成形機システムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、温湿度制御される成形機械室内にブロー成形機を設置し、その上でブロー成形機のヒータモジュール部とブロー成形部に、それぞれ独立して排気フードを設置し、その排気フードからヒータモジュール部とブロー成形部の雰囲気空気を、それぞれ独立して排気し、ヒータモジュール部の排気温度を制御することにより、ヒータモジュール部内の空気温度を一定に保つことができるため、ブロー成形品の歩留まりを向上できるという優れた効果を発揮するものである。
【0016】
さらに、高温のヒータモジュール部からの排気を、冬期等の暖房が必要な時期において空気調和機に戻すことで省エネルギに寄与することが出来るものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好適な一実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0018】
図1において、10は、ブロー成形機11が設置される成形機械室である。この成形機械室10は、工場内に設置したブロー成形機11の一台或いは複数台(図では2台)を仕切るように区画形成される。なお成形機械室10は、工場の建家全体であってもよい。
【0019】
この成形機械室10には、成形機械室10内を温湿度制御する空気調和機12が接続される。すなわち成形機械室10の排気口13に吸込ライン14が接続され、成形機械室10の給気口15に給気ライン16が接続され、その吸込ライン14と給気ライン16に空気調和機12が接続される。
【0020】
空気調和機12は、成形機械室10から吸込ライン14を介して導入される吸気を除塵するプレフィルタ17と、プレフィルタ17で除塵された空気を設定温度以下に冷却する冷却器18と、その冷却器18で冷却された空気を加熱或いは暖房する加熱器19と、空気を加湿する加湿器20と、循環ファン21と、循環ファン21の空調空気を、除塵して給気ライン16を介して成形機械室10に清浄空気を給気するHEPAフィルタ22とから構成される。
【0021】
この空気調和機12は、制御装置24にて冷却器18の冷却水弁23、加熱器19の加熱弁25、加湿器20の加湿弁26が制御されて成形機械室10の温度及び湿度を所定の値に保つことができるようになっている。
【0022】
ブロー成形機11は、詳細は省略するが、プリフォームを加熱することで軟化させるヒータモジュール部11aと、ヒータモジュール部11aで軟化したプリフォームをブロー成形するブロー成形部11bとからなっている。
【0023】
このヒータモジュール部11aの最大放熱量は、約283KWであり、ブロー成形部11bの放熱量は約70KWであり、これらの放熱を除去するために、ヒータモジュール部11aの上方とブロー成形部11bの上方に排気フード30a、30bがそれぞれ独立して設置され、その排気フード30a、30bにそれぞれ排気ライン31a,31bが接続され、ヒータモジュール部11aとブロー成形部11bの雰囲気空気を成形機械室10外に排気できるようになっている。
【0024】
ヒータモジュール側の排気ライン31aには、インバータ32aで能力可変に駆動される排気ファン33aが接続され、その排気ファン33aの上流側に排気ライン31aの排気空気の温度を検出する温度検出器34aが設けられ、その温度検出器34aの検出値に基づく制御信号がインバータ32aに入力され、排気温度が一定となるように排気ファン33aの排気量が調節される。
【0025】
この排気ライン31aの下流側には、ダンパ35が接続され、そのダンパ35の上流側の排気ライン31aに排気を空調調和機12に戻す循環ライン36が接続され、その循環ライン36にダンパ37が接続される。
【0026】
ブロー成形部側の排気ライン31bは、図示のように2台の場合、各ライン31b、31bが途中で合流し、その合流した排気ライン31bに、排気ファン33bが接続さる。
【0027】
なお、ブロー成形部11bの排気は、ヒータモジュール部11aの排気と同等の構成にすることもできる。
【0028】
空気調和機12には、外気導入ライン40が接続され、そのライン40にライン36が接続され、さらにダンパ41が接続される。また吸込ライン14にもダンパ42が接続される。
【0029】
成形機械室10には、温湿度センサ45が設けられ、その温湿度センサ45の検出値が制御装置24に入力されて空気調和機12が空調負荷に応じて温湿度センサ45の検出値が設定値となるように、冷却器18、加熱器19,加湿器21を制御する。なお、温度センサは、ヒータモジュール部11aの入口部に温度センサ51を設置して、その温度センサ51の検出値で空気調和機12を制御することもできる。
【0030】
この空気調和機12の成形機械室10内の空調制御の他に制御装置24は、各ダンパ35,37,41,42の開度制御も行うようになっている。
【0031】
この場合、成形機械室10内に温湿度センサ45が設けられ、さらに、成形機械室10の内外の差圧を検出する差圧センサ52が設けられ、これらセンサ45,52の検出値が制御装置24に入力され、制御装置24は、成形機械室10の内外の差圧に基づいて成形機械室10が陽圧となるように外気導入ライン40のダンパ41及びライン14のダンパ42を制御すると共に、成形機械室10の温湿度センサ45の検出値に応じて各ダンパ35,37の開度制御を行って循環量を制御するようになっている。
【0032】
以上において、空気調和機12は、温湿度センサ45の検出値が設定温湿度となるように制御装置24で制御されるが、ブロー成形機11、特にヒータモジュール部11aは発熱器であり、またブロー成形部11bも発熱体となる、そこでこのヒータモジュール部11aとブロー成形部11bの上方に設置した排気フード30a、30bより雰囲気空気を排気することで、この部分の空気温度の異常な上昇を判断することが可能となる。
【0033】
この場合、排気フード30aから排気ライン31aを介して排気される空気は、温度センサ34aでその温度が、例えば50〜60℃の範囲中の所定の設定温度となるようにインバータ32aが排気ファン33aを制御することで、ヒータモジュール部11a内の空気温度が一定に保たれる。
【0034】
これにより、ヒータモジュール部11aの雰囲気は一定に保たれるため、プリフォームの厳密な温度制御が可能となり、ブロー成形の歩留まりが向上し、不良品の発生を防止することが可能となる。
【0035】
このブロー成形機11の雰囲気空気の排気は、温度が高いため、成形機械室10に暖房負荷が存在する場合、ヒータモジュール部11aの排気を循環ライン36を介して空気調和機12側に戻すことで、省エネルギになる。
【0036】
この場合、制御装置24は、夏期においては、循環ライン36から排気空気を空気調和機12側に戻すと冷房負荷が増大するため、循環量を少なくするよう、また冬期においては、暖房負荷を低減するために循環量を多くするようにダンパ35,37の開度を調整する。また差圧センサ52の検出値に基づいて、成形機械室10からの室外への排気量に見合ってダンパ41の開度を調整して成形機械室10の圧力を陽圧に制御する。
【0037】
以上本発明においては、ブロー成形機11を温湿度制御される成形機械室10内に設置し、その上でブロー成形機11のヒータモジュール部11aとブロー成形部11bの雰囲気空気を排気フード31a、31bにて排気し、かつ、ヒータモジュール部11aとブロー成形部11bの雰囲気温度を一定にすることができるため、安定したブロー成形が行える。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施の形態を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
10 成形機械室
11 ブロー成形機
11a ヒータモジュール部
11b ブロー成形部
12 空気調和機
30a、30b 排気フード
31a、31b 排気ライン
33a、33b 排気ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気調和機により温湿度制御される成形機械室内にブロー成形機を設置し、そのブロー成形機のヒータモジュール部とブロー成形部に、それぞれ独立して排気フードを設置し、その両排気フードの排気ラインに、排気ファンを接続してヒータモジュール部とブロー成形部の周囲の空気を成形機械室外にそれぞれ独立して排気することを特徴とするブロー成形機システム。
【請求項2】
ヒータモジュール側の排気ファンをインバータで駆動し、その排気ファンの上流側の排気ラインに温度検出器を設け、その温度検出器の温度が所定の温度となるようにヒータモジュール側の排気ファンの排気量を上記インバータで制御する請求項1記載のブロー成形機システム。
【請求項3】
ヒータモジュール側の排気ラインから分岐して、排気空気を上記空気調和機に戻す循環ラインを接続し、その循環ラインと循環ライン下流側の排気ラインに循環量を調節するダンパを接続し、上記空気調和機に外気導入ラインを接続した請求項1または2記載のブロー成形機システム。
【請求項4】
空気調和機は、成形機械室から吸込ラインを介して導入される吸気及び外気を除塵するプレフィルタと、プレフィルタで除塵された空気を冷却する冷却器と、空気を加熱する加熱器と、循環ファンと、循環ファンの空調空気を、除塵して給気ラインを介して成形機械室に清浄空気を給気するHEPAフィルタからなる請求項1〜3いずれかに記載のブロー成形機システム。

【図1】
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【公開番号】特開2008−68494(P2008−68494A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−248304(P2006−248304)
【出願日】平成18年9月13日(2006.9.13)
【出願人】(504238194)株式会社日本キャンパック (8)
【出願人】(390037707)オーエスマシナリー株式会社 (15)
【出願人】(000150567)株式会社朝日工業社 (29)
【Fターム(参考)】