説明

ブロー成形用ダイスヘッド、ブロー成形用装置、偏肉パリソン形成方法おおよび異形成形品の製造方法

【課題】 異形成形品を簡便に成形し得るブロー成形用ダイスヘッドを提供すること。
【解決手段】 本発明のブロー成形用ダイスヘッドは、ダイスヘッド本体と、該ダイスヘッド本体の端部に位置する環状のダイスと、該ダイスヘッド本体に挿通しているコアとを備え、該ダイスの開口部において、該ダイスと該コアとにより、環状のパリソン吐出用のノズル口が形成され、該ダイスヘッド本体が、該ダイスを該ダイスの内周面において支持するための支持部を有し、該ダイスが、該ダイスヘッド本体のパリソン吐出方向に対して相対的に往復移動可能かつ傾斜可能となるように、該ダイスの内周面において該支持部により支持され、該ダイスを該ダイスヘッド本体のパリソン吐出方向に対して相対的に往復移動させて、該ノズル口の周方向の厚みを調整し得、かつ、該ダイスを該ダイスヘッド本体のパリソン吐出方向に対して傾斜させて、ノズル口の周方向の厚みを不均一に調整し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロー成形用ダイスヘッド、ブロー成形用装置、偏肉パリソン形成方法および異形成形品の製造方法に関する。より詳細には、本発明は、異形成形品を簡便に成形し得るブロー成形用ダイスヘッド、このブロー成形用ダイスヘッドを備えるブロー成形用装置、このブロー成形用ダイスヘッドを用いた偏肉パリソン形成方法および異形成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中空の樹脂成形品を効率良く生産することができる成形方法として、ブロー成形法が知られている。通常、ブロー成形法では、ダイスヘッドから吐出された熱可塑性樹脂の管状溶融体(パリソン)を一対の金型間で挟み込み、パリソン内にエアーを吹込んでパリソンを金型キャビティ形状に成形し、冷却固化して成形品とする方式が採用されている。従来より、このようなブロー成形法により肉厚の均一な成形品を得るための様々な技術が提案されている。一方、ブロー成形法により得られた成形品の用途、2次加工の方法によっては、全体的または部分的に偏肉した成形品が求められることもある。例えば、自動車部品のダクト、パイプ等に用いられ、曲げ加工に供される成形品(1次成形品)は、曲げ加工後の厚み均一性を得るため、曲げ部分の外径に相当する部分を肉厚にすることが求められる。
【0003】
従来、このような偏肉成形品を得るための偏肉調整は、図5の概略断面図に示すように、ダイス20を油圧シリンダ等により水平移動させて、ダイス20とコア30とにより形成されるノズル口4(パリソン吐出部分)の周方向の厚みを不均一にすることにより行われている(例えば、特許文献1)。しかし、ダイス20を水平移動させるための機構は大がかりとなり、また、移動制御も困難であり、装置が高価となる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−92474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、異形成形品(偏肉成形品)を簡便に成形し得るブロー成形用ダイスヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のブロー成形用ダイスヘッドは、ダイスヘッド本体と、該ダイスヘッド本体の端部に位置する環状のダイスと、該ダイスヘッド本体に挿通しているコアとを備え、該ダイスの開口部において、該ダイスと該コアとにより、環状のパリソン吐出用のノズル口が形成され、該ダイスヘッド本体が、該ダイスを該ダイスの内周面において支持するための支持部を有し、該ダイスが、該ダイスヘッド本体のパリソン吐出方向に対して相対的に往復移動可能かつ傾斜可能となるように、該ダイスの内周面において該支持部により支持され、該ダイスを該ダイスヘッド本体のパリソン吐出方向に対して相対的に往復移動させて、該ノズル口の周方向の厚みを調整し得、かつ、該ダイスを該ダイスヘッド本体のパリソン吐出方向に対して傾斜させて、ノズル口の周方向の厚みを不均一に調整し得る。
好ましい実施形態においては、上記ダイスが、パリソン吐出方向と平行に往復移動可能な複数のロッドによりさらに支持され、該ロッドがそれぞれ独立して移動することにより、該ダイスを揺動させ、該ロッドを所定の位置に固定することにより、該ダイスをダイスヘッド本体のパリソン吐出方向に対して傾斜させて固定する。
好ましい実施形態においては、上記支持部が、上記ダイスヘッド本体の外周面に取り付けられた球面軸受けである。
好ましい実施形態においては、上記支持部が、上記ダイスヘッド本体の外周面に取り付けられたゴムリングである。
本発明の別の局面によれば、ブロー成形用装置が提供される。このブロー成形用装置は、上記ブロー成形用ダイスヘッドを備える。
本発明の別の局面によれば、偏肉パリソン形成方法が提供される。この偏肉パリソン形成方法は、ブロー成形用ダイスヘッドを用い、上記ダイスを傾斜させることにより、パリソンの肉厚を制御することを含む。
本発明の別の局面によれば、異形成形品の製造方法が提供される。この異形成形品の製造方法は、ブロー成形用ダイスヘッドを用い、上記ダイスを傾斜させることにより、パリソンの肉厚を制御することを含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、異形成形品(偏肉成形品)を簡便に成形し得るブロー成形用ダイスヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の好ましい実施形態によるブロー成形用ダイスヘッドの概略断面図である。
【図2】本発明におけるブロー成形用ダイスヘッドにおいて、ダイスが傾斜していない状態を説明する概略断面図である。
【図3】本発明におけるブロー成形用ダイスヘッドにおいて、ダイスが傾斜している状態を説明する概略断面図である。
【図4】本発明におけるブロー成形用ダイスヘッドにおいて、ダイスが傾斜している状態を説明する概略断面図である。
【図5】従来のブロー成形用ダイスヘッドの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の好ましい実施形態によるブロー成形用ダイスヘッドの概略断面図である。このブロー成形用ダイスヘッドは、円筒状のダイスヘッド本体10と、ダイスヘッド本体10の端部に位置する環状のダイス20と、ダイスヘッド本体10に挿通し、先端がダイスヘッド本体10から突出しているコア30とを備える。
【0010】
ダイスヘッド本体10の内部には、中空マンドレル40が入れ子状に嵌合され、ダイスヘッド本体10の内周面と中空マンドレル40の外周面との間に環状の樹脂経路1が形成される。好ましくは、樹脂経路1は厚みが均一となるように形成される。
【0011】
ダイスヘッド本体10のセンター(軸芯)およびコア30のセンター(軸芯)は、同一線上に設けられている。コア30は、中空マンドレル40を挿通するコアシャフト41の一方端部に連結され、コアシャフト41の他方端部はダイスヘッド本体10の開口部とは反対側の端部に連結されている。ダイスヘッド本体10の内周面とコア30の外周面との間に環状の樹脂経路2が形成される。好ましくは、樹脂経路2は厚みが均一となるように形成される。樹脂経路2は、樹脂経路1と連通している。
【0012】
ダイス20は、ダイスヘッド本体10の開口端部において、ダイス20の内周面とコア30の外周面との間に環状の樹脂経路3を形成するように位置している。ダイス20の開口部においては、ダイス20とコア30とにより、環状のパリソン吐出用のノズル口4が形成される。樹脂経路3は、樹脂経路2およびノズル口4と連通している。すなわち、本発明のブロー成形用ダイスヘッドにおいては、当該ブロー成形用ダイスヘッドに連結された押出機(図示せず)から投入された樹脂(加熱溶融された樹脂)が、樹脂経路1、樹脂経路2および樹脂経路3をこの順に通り、パリソンがノズル口4から吐出する。
【0013】
ダイスヘッド本体10は、ダイス20をダイス20の内周面において支持するための支持部11を有する。ダイス20は、ダイスヘッド本体10のパリソン吐出方向に対して相対的に往復移動可能かつ傾斜可能となるように、ダイス20の内周面において支持部11により支持されている。
【0014】
ダイス20は、開口部近傍の内周面において、テーパ面21を有する。テーパ面21のテーパ角は、コア30の形状(後述)に応じて、設定され得る。
【0015】
ダイス20をダイスヘッド本体10のパリソン吐出方向に対して相対的に往復移動させて、ダイス20とコア30とにより形成されるノズル口4の周方向の厚みを調整することができる。コア30は、パリソン吐出方向先端の外周面において、テーパ面31を有する。コア30がテーパ面31を有するので、ダイス20をダイスヘッド本体10のパリソン吐出方向に対して相対的に往復移動させて、ノズル口4の周方向の厚みを調整することができる。このようにノズル口4の周方向の厚みを調整することにより、吐出されるパリソンの肉厚を調整することができる。なお、ノズル口4の周方向の厚みの調整は、ダイス20の往復移動によってなされてもよく、コア30の往復移動によってなされてもよく、これらを組み合わせてもよい。コア30のテーパ面31は、図1に示すようにコア30の外周に向けて拡がる形状を形成していてもよく(ダイパージ)、コア30の中心に向けて狭まる形状を形成していてもよい(コンパージ)。コア30の形状は、所望とする成形品のサイズ、形状等に応じて選択し得る。なお、コア30が外周に向けて拡がる形状(ダイパージ)の場合、ダイス20のテーパ面21は、図1に示すように、ダイス20の外周に向けて拡がる開口部を形成する。コア30の中心に向けて狭まる形状(コンパージ)の場合、ダイス20のテーパ面21は、ダイス20の中心に向けて狭まる開口部を形成する。
【0016】
ダイス20は、ダイスヘッド本体10のパリソン吐出方向に対して傾斜し得る。図2はダイス20が傾斜していない状態を示す概略図であり、図3および図4はダイス20が傾斜している状態を示す概略図である。図2に示すように、ダイス20が傾斜してない場合、ダイス20のセンター(軸芯)およびダイスヘッド本体10のセンター(軸芯)は同一線上に設けられ、パリソンは、肉厚が均一となるように吐出される。パリソンの肉厚は、上記のように、ダイス20および/またはコア30の往復移動によって調整することができる。本発明においては、ダイス20を、傾斜していない状態(図2)から、図3および図4に示すように傾斜させることができる。ダイス20を傾斜させると、ノズル口4の周方向の厚みは不均一となり、パリソンが偏肉状態で吐出される。ダイス20を傾斜させた場合も、パリソンの肉厚の平均値は、上記のように、ダイス20および/またはコア30の往復移動によって調整することができる。偏肉調整は、ダイス20の傾斜角度を調整することにより行うことができる。
【0017】
ダイス20は、任意の適切な手段により、傾斜させ得る。一つの実施形態においては、図1、3および4に示すように、支持部11として、ダイスヘッド本体10の外周面に取り付けられた球面軸受けを採用することにより、ダイス20を傾斜させることができる。この場合、ダイス20は、球面軸受けの凸面に内接して揺動することができ、ダイスヘッド本体10のパリソン吐出方向に対して傾斜する。別の実施形態においては、支持部11として、ダイスヘッド本体10の外周面に取り付けられたゴムリングを採用する。この場合、ゴムリングはダイス10の揺動に応じて変形可能であるため、ダイス20を傾斜させることができる。支持部11は、これらに限定されず、ダイス20を支持し、かつ、傾斜させ得るものであれば、任意の適切な支持部を選択し得る。
【0018】
ダイス20は、パリソン吐出方向と平行に往復移動可能な複数のロッド50によりさらに支持され得る。ロッド50を往復移動させることにより、ダイス20をダイスヘッド本体10のパリソン吐出方向に対して相対的に往復移動させることができる。さらに、図3および図4に示すように、ロッド50をそれぞれ独立して移動させることにより、ダイス20を揺動させ、傾斜させることができる。好ましくは、ロッド50は、自在継ぎ手51を介して、ダイス20に連結される。ロッド50の本数は、好ましくは2〜8本、より好ましくは3〜4本である。ロッド50は、等間隔に設けられることが好ましい。ダイス20の傾斜を精度よく制御することができるからである。ロッド50は、例えば、出力変換装置60を介して、サーボアクチェーター70と接続することにより、往復移動が制御され得る。
【0019】
パリソンを吐出する際には、ダイス20は所定の位置で傾斜して固定される。ダイス20を固定する方法は、任意の適切な方法が採用され得る。一つの実施形態においては、図3および図4に示すように、ロッド50を上記のように移動させた後、固定することにより、ダイス20を固定することができる。パリソンを吐出している途中で、ダイス20の傾斜角度および/または方向を変更することも可能である。本発明によれば、ダイス20を傾斜させることにより、パリソンの偏肉調整を簡便に行うことができるので、複雑な形状の異形成形品を安価に製造することができる。
【0020】
本発明のブロー成形用装置は、上記ブロー成形用ダイスヘッドを備える。本発明のブロー成形用装置は、上記ブロー成形用ダイスヘッドの他、ホッパー、押出機、ヒーター、エアー吹き込み装置等の公知の機構、および公知の金型をさらに備え得る。
【0021】
上記ブロー成形用ダイスヘッドを用いれば、偏肉パリソンを形成することができる。具体的には、上記ブロー成形用ダイスヘッドのダイス20を傾斜させて、パリソンの肉厚(偏肉)を制御することにより、偏肉パリソンを形成することができる。偏肉パリソン形成方法において、使用樹脂の選択、押出、加熱等のその他の条件については、公知の条件が採用され得る。一つの実施形態においては、上記ブロー成形用ダイスヘッドを縦置きして、偏肉パリソンを形成する。この場合、パリソンは偏肉状態のまま金型に挟み込まれ、エアーの吹き込み、冷却固化を経て、偏肉状態の異形成形品が成形される。本発明のブロー成形用ダイスヘッドまたはブロー成形用装置によれば、パリソンを吐出している途中で、ダイス20の傾斜角度および/または方向を変更することも容易であるので、任意の位置に厚肉部分を形成して、複雑な形状の異形成形品を製造することができる。例えば、ブロー成形により複数の厚肉部を形成させた1次成形品を得た後、厚肉部を曲げ加工することにより、複数箇所の曲げ部分を有する異形成形品を得ることができる。複数の曲げ部分が、それぞれ異なる方向に曲げられた異形成形品も容易に得ることができる。
【0022】
別の実施形態においては、上記ブロー成形用ダイスヘッドを横置きして、偏肉パリソンを形成する。この場合、吐出直後の偏肉パリソンは、金型に挟み込まれるまでに、重力により、肉厚が変化する。この実施形態においては、上部が厚い偏肉パリソンを形成し、その後、重力により肉厚が均一となった状態で金型に挟み込み、エアーの吹き込み、冷却固化を経て、肉厚の均一な成形品を成形することができる。本発明によれば、偏肉パリソンの偏肉状態を容易に調整し得るので、上記ブロー成形用ダイスヘッドを横置きして、装置を設置する建屋の高さの制約無く、肉厚が均一な長尺成形品を容易に得ることもできる。
【符号の説明】
【0023】
1、2、3 樹脂経路
4 ノズル口
10 ダイスヘッド本体
11 支持部
20 ダイス
21、31 テーパ面
30 コア
40 中空マンドレル
41 コアシャフト
50 ロッド
51 自在継ぎ手
60 出力変換装置
70 サーボアクチェーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイスヘッド本体と、該ダイスヘッド本体の端部に位置する環状のダイスと、該ダイスヘッド本体に挿通しているコアとを備え、該ダイスの開口部において、該ダイスと該コアとにより、環状のパリソン吐出用のノズル口が形成され、
該ダイスヘッド本体が、該ダイスを該ダイスの内周面において支持するための支持部を有し、
該ダイスが、該ダイスヘッド本体のパリソン吐出方向に対して相対的に往復移動可能かつ傾斜可能となるように、該ダイスの内周面において該支持部により支持され、
該ダイスを該ダイスヘッド本体のパリソン吐出方向に対して相対的に往復移動させて、該ノズル口の周方向の厚みを調整し得、かつ、該ダイスを該ダイスヘッド本体のパリソン吐出方向に対して傾斜させて、ノズル口の周方向の厚みを不均一に調整し得る、
ブロー成形用ダイスヘッド。
【請求項2】
前記ダイスが、パリソン吐出方向と平行に往復移動可能な複数のロッドによりさらに支持され、
該ロッドがそれぞれ独立して移動することにより、該ダイスを揺動させ、該ロッドを所定の位置に固定することにより、該ダイスをダイスヘッド本体のパリソン吐出方向に対して傾斜させて固定する、請求項1に記載のブロー成形用ダイスヘッド。
【請求項3】
前記支持部が、前記ダイスヘッド本体の外周面に取り付けられた球面軸受けである、請求項1または2に記載のブロー成形用ダイスヘッド。
【請求項4】
前記支持部が、前記ダイスヘッド本体の外周面に取り付けられたゴムリングである、請求項1または2に記載のブロー成形用ダイスヘッド。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のブロー成形用ダイスヘッドを備える、ブロー成形用装置。
【請求項6】
請求項1から4のいずれかに記載のブロー成形用ダイスヘッドを用い、前記ダイスを傾斜させることにより、パリソンの肉厚を制御することを含む、偏肉パリソン形成方法。
【請求項7】
請求項1から4のいずれかに記載のブロー成形用ダイスヘッドを用い、前記ダイスを傾斜させることにより、パリソンの肉厚を制御することを含む、異形成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−86350(P2013−86350A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228734(P2011−228734)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(511251777)株式会社日本容器 (1)
【Fターム(参考)】