説明

プッシュスイッチ

【課題】下部可動接点(1段目)の動作ストロークを確保すると共に、動作音が小さい2段動作のプッシュスイッチを提供する。
【解決手段】下部可動接点40は中央孔41aが設けられた環状部41とその環状部41の外周縁部から延設された複数の脚部42とを有し、環状部41は平板状に形成し、各脚部42には、環状部41の外周縁部の一部からなる付け根部41aと、その付け根部41aから第1曲げ部42bを介して下方に傾斜して延設する上側脚片部42cと、その上側脚片部42cから第2曲げ部42dを介して上側脚片部42cの下方に延設する下側脚片部とをそれぞれ設け、各脚部42は、略U字状の板バネをそれぞれ形成し、環状部41を下部可動接点40の設置面に上下移動可能に支持する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器の入力操作部に使用されるプッシュスイッチに関し、特に可動接点が上下2段に組込まれ、押圧操作により1段目のスイッチがオン状態となり、更に押圧操作すると2段目のスイッチがオン状態となる2段動作のプッシュスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
通常の2段動作のプッシュスイッチでは、上部可動接点に、上方に膨出した円形のドーム状金属板(円形のドーム状板バネ)が使用され、下部可動接点に、上部可動接点より小径で上方に膨出した円形のドーム状金属板(円形のドーム状板バネ)が使用される。上部可動接点の中央部が押し下げられると、そこが反転して対向する下部可動接点の中央部に接触し、1段目のクリック感触を伴って、下部可動接点の外周縁部に常時接触する周辺固定接点と上部可動接点の外周縁部に常時接触する他の周辺固定接点とが、下部可動接点と上部可動接点を介して導通され、1段目のスイッチがオン状態となる。また、上部可動接点の中央部の反転時に1段目の動作音を発生する。そして、更に上部可動接点の中央部が押し下げられると、下部可動接点の中央部が反転して対向する中央固定接点に接触し、2段目のクリック感触を伴って、中央固定接点と周辺固定接点とが、下部可動接点を介して導通され、2段目のスイッチがオン状態となる。また、下部可動接点の中央部の反転時に2段目の動作音を発生する。
【0003】
上記通常の2段動作のプッシュスイッチにおいて、各可動接点の動作ストロークを大きくするためには外径の大きな円形のドーム状金属板を必要とし、それらを収容するボディの凹部を大きくしなければならず、ボディの外形が大型化してしまうという問題があった。
【0004】
上記問題を解決するため特許文献1記載の2段動作のプッシュスイッチは、ボディの4つの角部に対応する凹部の内側壁にそれぞれ溝部を設け、上部可動接点に、外周縁部から斜め下方に傾斜してボディの溝部に位置するように4つの脚部を連続して延設した脚付きのドーム状金属板を使用し、上部可動接点(1段目)の動作ストロークを確保すると共に、ボディ外形の小型化を図っている。なお、下部可動接点には、通常の円形のドーム状金属板が使用される。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1記載の2段動作のプッシュスイッチは、通常の2段動作のプッシュスイッチと同様に、上部可動接点が1段目反転動作、下部可動接点が2段目反転動作となることから、上部可動接点の中央部を下部可動接点の中央部が反転するまで押圧した場合(2段目のスイッチがオン状態となる。)、上部可動接点は相当な応力が負荷される状態まで変形するため寿命が下部可動接点と比べて短くなってしまうという問題があった。
【0006】
他方、特許文献2記載の2段動作のプッシュスイッチは、下部可動接点に、上記脚付きのドーム状金属板に対し、更にその中央部に大きな円形の孔を開けた脚付きで中央孔開きのドーム状金属板を使用し、上部可動接点に、通常の円形のドーム状金属板を使用し、上部可動接点は、下部可動接点の中央孔周辺の環状部上に載置する。
【0007】
上記特許文献2記載の2段動作のプッシュスイッチは、通常の2段動作のプッシュスイッチや特許文献1記載の2段動作のプッシュスイッチとは異なり、上部可動接点の中央部が押し下げられると、下部可動接点の環状部が押し下げられ、そこが反転して対向する複数の周辺固定接点に接触し、1段目のクリック感触を伴って、複数の周辺固定接点同士が、下部可動接点を介して導通され、1段目のスイッチがオン状態となる。また、下部可動接点の環状部の反転時に1段目の動作音を発生する。そして、更に上部可動接点の中央部が押し下げられると、そこが反転して下部可動接点の中央孔を通して対向する中央固定接点に接触し、2段目のクリック感触を伴って、中央固定接点と周辺固定接点とが、下部可動接点と上部可動接点を介して導通され、2段目のスイッチがオン状態となる。また、上部可動接点の中央部の反転時に2段目の動作音を発生する。
【0008】
上記特許文献2記載の2段動作のプッシュスイッチでは、下部可動接点が1段目反転動作、上部可動接点が2段目反転動作となり、1段目で下部可動接点だけが変形し、2段目で上部可動接点だけが変形することから、下部可動接点と上部可動接点とに略同等の寿命を確保することができる。しかし、下部可動接点の中央部(環状部)が、中央孔開きのドーム形状で反転するため、下部可動接点(1段目)の動作ストロークが小さく、動作音が大きいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−7168号公報
【特許文献2】特開2008−41603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明では上記問題点を解決し、下部可動接点(1段目)の動作ストロークを確保すると共に、動作音が小さい2段動作のプッシュスイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため本発明では第1の手段として、上面開口で、内側壁に複数の溝部3が設けられた凹部2を有する絶縁樹脂製の箱型のボディ1と、上記凹部2の内底面中央に配設された中央固定接点10と、その中央固定接点10の外側に配設された複数の周辺固定接点20,30と、上記凹部2に収容され、中央孔41aを設けて複数の上記周辺固定接点20,30の上方に対向して配置された環状部41とその環状部41の外周縁部から延設され複数の上記溝部3に対応して配置された複数の脚部42とを有する金属板からなる下部可動接点40と、上記環状部41上に載置され、外周縁部が上記環状部41に常時接触され反転可能な中央部が上記中央固定接点10の上方に上記中央孔41aを通して対向して配置された上方に膨出したドーム状金属板からなる上部可動接点50とを備え、上記環状部41は、平板状に形成し、上記各脚部42には、上記環状部41の外周縁部から第1曲げ部42bを介して上記溝部3の内奥下部に向かって下方に傾斜して延設する上側脚片部42cと、その上側脚片部42cから上記溝部3の内奥にある上記凹部2の内側壁の手前側に所定の間隔Gをあけて配置する第2曲げ部42dを介して上記上側脚片部42cの下方に延設する下側脚片部42eとをそれぞれ設け、上記各脚部42は、略U字状の板バネをそれぞれ形成し、上記下側脚片42eを上記溝部3にある上記凹部2の内底面に当接し、上記環状部41とその上に載置された上記上部可動接点50とを上下移動可能に支持すると共に、上記環状部41の外周縁には、上記各脚部42の上記第1曲げ部42bの両側縁に連続する複数の切欠き部対41b,41cを設け、上記各脚部42にはまた、上記環状部41における上記各切り欠き部対41b,41cの対内の切り欠き部41b,41cに挟まれた部分からなる付け根部42aをそれぞれ設け、上記各脚部42は、上記付け根部42aと上記第1曲げ部42bと上記上側脚片部42cとで上記第1曲げ部42bを頂部とする座屈可能な折板をそれぞれ形成し、上記上部可動接点50の外周縁部に上記環状部41の外周縁部、及び上記各脚部42の上記第1曲げ部42b又は上記付け根部42aを当接する構成とした。
【0012】
上記第1の手段によれば、下部可動接点40(1段目)は、上部可動接点50の中央部が押し下げられると、中央部が中央孔開きのドーム形状で反転する従来の下部可動接点(1段目)とは異なり、環状部41が平板状で押し下げられると共に、各脚部(略U字状の板バネ)42が一斉に圧縮変形しながら外側に広がり、各脚部42の第2曲げ部42dがボディ1の各溝部3の内奥にある凹部2の内側壁に一斉に突き当たることで、ボディ1の各溝部3の内奥にある凹部2の内側壁と平板状の環状部41との間で各脚部42の折板(付け根部42aと第1曲げ部42bと上側脚片部42c)が一斉に座屈し、平板状の環状部41が対向する複数の周辺固定接点20,30に接触する。すると、複数の周辺固定接点20,30同士が、下部可動接点40を介して導通され、1段目のスイッチがオン状態となる。このように下部可動接点40では、環状部41の反転を伴わない1段目動作となるが、各脚部42の一斉圧縮変形によって動作ストロークを確保することができると共に、各脚部42の折板の一斉座屈によってクリック感触を付与することができる。また、環状部41に比べて小さい各脚部42であって、更にその各脚部42の一部である折板が座屈するだけで1段目の動作音は小さくなる。そして、更に上部可動接点50の中央部が押し下げられると、そこが反転して下部可動接点40の中央孔41aを通して対向する中央固定接点10に接触し、2段目のクリック感触を伴って、中央固定接点10と周辺固定接点20とが、下部可動接点40と上部可動接点50を介して導通され、2段目のスイッチがオン状態となる。こうして、2段動作のプッシュスイッチを得ることができる。
【0013】
また、本発明では第2の手段として、上記第1の手段において、上記各脚部42には更に、上記下側脚片部42eから第3曲げ部42fを介して上方に傾斜して延設し先端側を上記付け根部42aの下方に対向して配置する延長部42gをそれそれ設け、上記各脚部42は、上記延長部42gで片持ち梁状の復帰用補助板バネをそれぞれ形成し、上記折板が座屈した後に上記延長部42gの先端側が上記付け根部42aに当接して押し下げられ、上記延長部42gによって上記付け根部42aを上方に付勢する構成とした。
【0014】
上記第2の手段によれば、1段目のスイッチがオン状態のとき、下部可動接点40は、各脚部42の延長部(復帰用補助板バネ)42gによって環状部41と各脚部42との連設部である各脚部42の付け根部42aが上方へ付勢されるため、上部可動接点50の中央部の押し下げが解除されると、上部可動接点50の中央部が押し下げられる前の無操作時の状態に、より確実に復帰することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、下部可動接点(1段目)40の動作ストロークを確保すると共に、動作音が小さい2段動作のプッシュスイッチを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態によるプッシュスイッチの構成部品を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態によるプッシュスイッチの外観を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態によるプッシュスイッチの内部構造を示す図2Z−Z断面図である。
【図4】本発明の一実施形態によるプッシュスイッチのボディの凹部に対する上部及び下部可動接点の収容状態を示す平面図である。
【図5】本発明の一実施形態によるプッシュスイッチのボディの凹部に対する下部可動接点の収容状態を示す平面図である。
【図6】本発明の一実施形態によるプッシュスイッチのボディを示す平面図である。
【図7】本発明の一実施形態によるプッシュスイッチのボディを示す図6Z1−Z1断面図である。
【図8】本発明の一実施形態によるプッシュスイッチの下部可動接点を示す平面図である。
【図9】本発明の一実施形態によるプッシュスイッチの下部可動接点を示す図8Z2−Z2断面図である。
【図10】本発明の一実施形態によるプッシュスイッチの上部可動接点を示す平面図である。
【図11】本発明の一実施形態によるプッシュスイッチの上部可動接点を示す図10X−X断面図である。
【図12】本発明の一実施形態によるプッシュスイッチの無操作時の状態から押圧操作され1段目のスイッチがオンになる直前の状態を示す図2Z−Z断面図である。
【図13】本発明の一実施形態によるプッシュスイッチの1段目のスイッチオン時の状態を示す図2Z−Z断面図である。
【図14】本発明の一実施形態によるプッシュスイッチの2段目のスイッチオン時の状態を示す図2Z−Z断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態によるプッシュスイッチを上記図面に基づいて説明する。
【0018】
図1〜3に示すように、本実施形態のプッシュスイッチは、ボディ1と、中央固定接点10と、第1及び第2周辺固定接点20,30と、下部及び上部可動接点40,50と、絶縁カバー60と、金属カバー70とで構成される。
【0019】
図6,7に示すように、ボディ1は、絶縁性の合成樹脂で内部に上面が開口した円形状の凹部2を有する外形が方形状の箱型に形成される。
【0020】
ボディ1の4つの角部に対応する凹部2の内側壁の4箇所には、方形状の第1溝部3がそれぞれ設けられる。
【0021】
ボディ1の2組の対向する外側壁のうち、1組の対向する外側壁の長さ方向中央部に対応する凹部2の内側壁の2箇所には、方形状の第2溝部4がそれぞれ設けられ、残り1組の対向する外側壁の長さ方向中央部に対応する凹部2の内側壁の2箇所には、方形状の突部5がそれぞれ設けられる。
【0022】
ボディ1の凹部2の内底面中央には、導電性の金属で円柱形状に形成された中央固定接点10が上方に突出した状態で配設される。
【0023】
ボディ1の2つの第2溝部4に対応する凹部2の内底面外側部の2箇所のうち、1箇所には、導電性の金属で四角柱形状に形成された第1周辺固定接点20が上方に突出した状態で配設され、残り1箇所には、導電性の金属で四角柱形状に形成された第2周辺固定接点30が上方に突出した状態で配設される。
【0024】
第1及び第2周辺固定接点20,30は、ボディ1の凹部2の内底面における中央固定接点10の外側で、中央固定接点10を対称点とする点対称の外側部の2箇所に、外側略半部が第2溝部4内に入り込み、内側略半部がボディ1の2つの突部5と同様に凹部2内に張り出した状態で配設される。
【0025】
ボディ1の2組の対向する外側壁のうち、第1及び第2周辺固定接点20,30が中央固定接点10を挟んで対向する方向とは直角の方向で対向する1組の外側壁の両端部には、機器などの回路基板への接続のため、中央固定接点10と第1及び第2周辺固定接点20,30のそれぞれから導出された導電性の金属薄板からなる接続端子11,21,31が配設される。
【0026】
第1周辺固定接点20とその接続端子21、及び第2周辺固定接点30とその接続端子31のうち、何れか一方、例えば第1周辺固定接点20とその接続端子21は、第1及び第2スイッチのそれぞれの接点端子のコモン、すなわち共通接点と共通接続端子とされる。
【0027】
図7に示すように、ボディ1の凹部2における上下方向の構造について、凹部2の内底面(下部可動接点40の設置面)から高さh1の位置にある凹部2の内底面と平行な一平面内には、中央固定接点10の平坦な上面10aが配設され、それより上方の高さh2(h1<h2)の位置にある一平面内には、ボディ1の2つの突部5の平坦な上面5aがそれぞれ配設され、それより上方の高さh3(h1<h2<h3)の位置にある一平面内には、第1及び第2周辺固定接点20,30の上面20a,30aがそれぞれ配設される。
【0028】
図8,9に示すように、下部可動接点40は、1枚の導電性の金属薄板からなり、ボディ1の2つの突部5の上面5aと第1及び第2周辺固定接点20,30の上面20a,30aの上方に間隔をあけて対向して位置するように、中央に中央固定接点10の外径(直径)より大径な円形状の中央孔41aが設けられた外形がボディ1の凹部2の外径(直径)より小径であって中央孔41aと同心な円形状の環状部41と、ボディ1の4つの第1溝部3内に位置するように、環状部41の外周縁部から連続して4方向に延設されたボディ1の各第1溝部3の幅より小さい幅の4つの脚部42とを有する。
【0029】
環状部41は、平板状に形成される。
【0030】
各脚部42には、環状部41の外周縁部から第1曲げ部42bを介して下方に傾斜して延設された上側脚片部42cと、上側脚片部42cから第2曲げ部(折返し部)42dを介して上側脚片部42cの下方に間隔をあけて延設された下側脚片部42eとがそれぞれ設けられ、各脚部42は、略U字状の板バネをそれぞれ形成する。
【0031】
環状部41の外周縁には、各脚部42の第1曲げ部42bの両側縁に連続する複数の切欠き部対41b,41cが設けられる。
【0032】
各脚部42には、環状部41における各切り欠き部対41b,41cの対内の切り欠き部41b,41cに挟まれた部分からなる付け根部42aがそれぞれ設けられ、各脚部42は、付け根部42aと第1曲げ部42bと上側脚片部42cとで第1曲げ部42bを頂部とする座屈可能な折板をそれぞれ形成する。
【0033】
各脚部(略U字状の板バネ)42は、折板(付け根部42aと第1曲げ部42bと上側脚片部42c)が一斉に座屈する押圧力より小さい押圧力で一斉に圧縮変形し、折板は、上部可動接点50の中央部が反転する押圧力より小さい押圧力で一斉に座屈する。
【0034】
各脚部42には、下側脚片部42eから第3曲げ部42fを介して上方に傾斜して延設され先端側が付け根部42aの下方に間隔をあけて対向して配置された延長部42gがそれそれ設けられ、各脚部42は、延長部42gで片持ち梁状の復帰用補助板バネをそれぞれ形成する。
【0035】
延長部(復帰用補助板バネ)42gは、先端近傍で斜め下方に折り曲げられて全体的にヘ字状に形成され、延長部42gの先端近傍の第4曲げ部(延長部42gの頂部)が押圧部(当接部)42hとして付け根部42aの下方に間隔をあけて対向して配置される。
【0036】
図3,5に示すように、下部可動接点40は、ボディ1の各第1溝部3に対応した各脚部42がそれぞれ第1溝部3内に配置され、各脚部42の上側脚片部42cが付け根部42aから第1曲げ部42cを介して第1溝部3の内奥下部に向かって下方に傾斜して延設され、また、各脚部42の第2曲げ部42dがそれぞれ第1溝部3の内奥にある凹部2の内側壁の手前側に所定の間隔Gをあけて配設され、そして、ボディ1の各第1溝部3にある凹部2の内底面外側部の4箇所に対応した各脚部42の下脚片部42eがそれぞれ凹部2の内底面外側部に当接されて、ボディ1の凹部2内に収容される。その状態で、中央孔41aが設けられた環状部41が、各脚部42によってボディ1の凹部2内でその内底面に対して略平行で上下移動可能に持ち上げ支持され、第1及び第2固定接点20,30の上面20a,30aに対して接離可能に、ボディ1の2つの突部5の上面5aと第1及び第2固定接点20,30の上面20a,30aの上方に間隔をあけて対向して配置される。
【0037】
ボディ1の凹部2の内側壁と下部可動接点40の環状部42の外周縁との間、及びボディ1の各溝部4の奥行き方向の両側にある凹部2の内側壁と下部可動接点40の各脚部42の両側縁との間には、下部可動接点40の円滑な動作に必要な隙間(クリアランス)がそれぞれ設けられる。
【0038】
図10,11に示すように、上部可動接点50は、下部可動接点40の環状部41上に載置し、上部可動接点50の外周縁部が下部可動接点40の環状部41の外周縁部、及び下部可動接点40の各脚部42の第1曲げ部42b又は付け根部42aに当接するように、下部可動接点40の環状部41の外径と略同径の外径を有する上方に膨出した円形状のドーム状金属薄板(円形状のドーム状板バネ)からなる。
【0039】
上部可動接点50には、下部可動接点40の環状部41の外径より小径で環状部41の内径(中央孔41aの直径)より大径であって、上部可動接点50の外形と同心な円形状の変曲部50aが設けられ、変曲部50aより外側の周辺部で上部可動接点50の設置面(下部可動接点40の環状部41の上面)と上部可動接点50とで作られる角度が大きくなっており、上部可動接点50の変曲部50aより内側の中央部が所定以上の押圧力で押し下げられたときに、そこが反転するように形成される。
【0040】
図3,4に示すように、上部可動接点50は、ボディ1の凹部2内に収容された下部可動接点40の環状部41上に載置され、その状態で、上部可動接点50の外周縁部が下部可動接点40の環状部41の外周縁部、及び下部可動接点40の各脚部42の第1曲げ部42bと付け根部42aとの境目又はその付近に当接され、上部可動接点50の反転可能な中央部が中央固定接点10の上面10aの上方に下部可動接点40の中央孔41aを通して間隔をあけて対向して配設される。
【0041】
上部可動接点50の中央部は、ボディ1の凹部2の上面から上方に膨出される。
【0042】
ボディ1の凹部2の内側壁と上部可動接点50の外周縁との間には、上部可動接点50の円滑な上下移動に必要な隙間(クリアランス)が設けられる。
【0043】
図1〜3に示すように、絶縁カバー60は、可撓性を有する絶縁性の合成樹脂製の方形状のシートからなり、ボディ1の凹部2の上面を塞ぐように、ボディ21の上部に配置される。
【0044】
絶縁カバー60は、可撓性を有する絶縁性の合成樹脂製の方形状のシートからなるテープ基材の下面に粘着剤が設けられた粘着テープであってもよい。粘着テープは、粘着テープの中央部がボディ1の凹部2の上面から上方に膨出された上部可動接点50の中央部に貼り付けられた状態で、粘着テープの外側部がボディ1の凹部2の上面の周囲にある平坦な上面(ボディ1の側壁の上端面)に貼り付けられ、ボディ1の上部に固定される。
【0045】
図1〜3に示すように、金属カバー70は、中央に円形状の中央孔71が設けられその中央孔71から絶縁カバー60の中央部(上部可動接点50の中央部を覆って上方に膨出した円形ドーム状になっている)を露出した状態で、ボディ1の上部を覆う方形平板状の金属板である。
【0046】
金属カバー70には、その2組の対向する側縁のうち、両端部に接続端子11,21,31が配設されたボディ1の1組の対向する外側壁に対応する1組の側縁の中央部から下方に延設されそのボディ1の1組の対向する外側壁を挟む1組の第1脚片72と、接続端子11,21,31が配設されていないボディ1の1組の対向する外側壁に対応する残り1組の側縁から下方に延設されそのボディ1の1組の対向する外側壁を挟む1組の第2脚片73とが設けられ、金属カバー70は、2組の第1及び第2脚片72,73でボディ1の上部に位置決めされる。
【0047】
金属カバー70には、各第2脚片73の両側部をL形フック状にそれぞれ形成するように、各第2脚片73の下縁両端部からボディ1の下面に沿って内側に略直角に延設された係止爪74が設けられ、金属カバー70は、それと各係止爪74とでボディ1の上面と下面を挟んだ状態で、ボディ1の上部に固定される。この際、ボディ1の上面と金属カバー70との間に絶縁カバー60が挟まれて固定される。
【0048】
金属カバー70の第1及び第2脚片72,73(4つの脚片)の少なくとも1つは、機器などの回路基板に接続されアース端子として使用される。
【0049】
金属カバー70は、1枚の導電性の金属板からなる。
【0050】
上記のように本実施形態のプッシュスイッチは構成されており、続いて、その動作について、図3及び図12〜14を参照して説明する。
【0051】
[1段目動作]
図3に示した無操作時の状態から、絶縁カバー60を介して上部可動接点50の中央部が押し下げられると、上部可動接点50の外周縁部で下部可動接点40の環状部41の外周縁部、及び下部可動接点40の各脚部42の第1曲げ部42bと付け根部42aとの境目又はその付近が下方に押圧され、図12に示したように、下部可動接点40の環状部41は平板状、また、上部可動接点50は上方に膨出したドーム状のまま、下部可動接点40の環状部41と上部可動接点50とが一体的に押し下げられると共に、下部可動接点40の各脚部(略U字状の板バネ)42が一斉に圧縮変形しながら外側に広がり、各脚部42の第2曲げ部42dがボディ1の各第1溝部3の内奥にある凹部2の内側壁に一斉に突き当たる。
【0052】
続いて、図12に示した状態から、更に絶縁カバー60を介して上部可動接点50の中央部が押し下げられると、図13に示したように、ボディ1の各第1溝部3の内奥にある凹部2の内側壁と下部可動接点40の平板状の環状部41との間で、下部可動接点40の各脚部42の折板(付け根部42aと第1曲げ部42bと上側脚片部42c)が一斉に上膨らみ状から下膨らみ状に反転して飛移り座屈し、下部可動接点40の環状部41は平板状、また、上部可動接点50は上方に膨出したドーム状のまま、更に下部可動接点40の環状部41と上部可動接点50とが一体的に押し下げられ、下部可動接点40の平板状の環状部41が対向する第1及び第2周辺固定接点20,30の上面20a,30aに突き当たって接触する。すると、第1及び第2周辺固定接点20,30同士が、下部可動接点40を介して導通され、1段目のスイッチがオン状態となる。
【0053】
上記のように下部可動接点40では、環状部41の反転を伴わない1段目動作となり、中央部が中央孔開きのドーム形状で反転する従来の下部可動接点(1段目)とは異なり、各脚部42の一斉圧縮変形によって動作ストロークを確保することができると共に、各脚部42の折板の一斉座屈によってクリック感触を付与することができる。また、環状部41に比べて小さい各脚部42であって、更にその各脚部42の一部である折板が座屈するだけで1段目の動作音は小さくなる。
【0054】
また、下部可動接点40では、各脚部42の折板が座屈した後、下部可動接点40の環状部41と上部可動接点50とが一体的に下動する際、延長部(復帰用補助板バネ)42gの先端側の押圧部42hが付け根部42aに当接して押し下げられ、延長部42gによって付け根部42aを上方に付勢する。
【0055】
なお、ボディ1の2つの突部5の上面5aは、下部可動接点40の環状部41が第1及び第2周辺固定接点20,30の上面20a,30aに突き当たって接触した状態(1段目のスイッチがオン状態)で、その環状部41の第1及び第2周辺固定接点20,30の上面20a,30aとの接触箇所から略90回転した2箇所の直下に僅かな隙間をあけて対向しており、ボディ1の2つの突部5は、下部可動接点40の環状部41が傾くのを規制し、下部可動接点40の環状部41と第1及び第2周辺固定接点20,30との接触信頼性、及び後述する上部可動接点50の中央部と中央固定接点10との接触信頼性を確保する役目を担う。
【0056】
[2段目動作]
そして、図13に示した状態から、更に絶縁カバー60を介して上部可動接点50の中央部が押し下げられると、上部可動接点50の設置面(下部可動接点40の環状部41)は第1及び第2周辺固定接点20,30の上面20a,30aに突き当たっており、それ以上押し下げられることはないため、図14に示すように、上部可動接点50の中央部が反転して下部可動接点40の中央孔41aを通して対向する中央固定接点10の上面10aに突き合い接触し、2段目のクリック感触を伴って、中央固定接点10と第1周辺固定接点20とが、下部可動接点40と上部可動接点50を介して導通され、2段目のスイッチがオン状態となる。
【0057】
上記のように本実施形態のプッシュスイッチは、下部可動接点40が1段目動作、上部可動接点50が2段目反転動作となり、2段で動作する。
【0058】
[復帰動作]
図14に示した状態から、上部可動接点50の中央部の押し下げが解除されると、先ず、上部可動接点60の中央部が元の上方に膨出したドーム状に弾性復帰して、中央固定接点10の上面10aから上部可動接点50の中央部が上方に離反し、中央固定接点10と第1周辺固定接点20との導通が断たれ、2段目のスイッチがオフ状態となり(図13に示した状態)、続いて、下部可動接点40の各脚部42の折板が元の上膨らみ状に弾性復帰して、下部可動接点40の環状部41と上部可動接点50とが一体的に押し上げられて、第1及び第2周辺固定接点20,30の上面20a,30aから下部可動接点40の環状部41が上方に離反し、第1及び第2周辺固定接点20,30同士の導通が断たれ、1段目のスイッチがオフ状態となり(図12に示した状態)、最後に、下部可動接点40の各脚部42が元の略U字状に弾性復帰して、更に下部可動接点40の環状部41と上部可動接点50とが一体的に押し上げられ、図3に示した無操作時の状態に復帰する。
【0059】
復帰動作の際、下部可動接点40の環状部41と各脚部42との連設部である各脚部42の付け根部42aには上方への押圧力が働いているため、より確実に復帰することができる。
【0060】
上記のように本実施形態では本発明の好適な一実施形態を説明したが、本発明はそれに限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々変形実施することができる。また、本発明の下部可動接点は、1段動作のプッシュスイッチの1枚の可動接点としても使用することができるものである。
【符号の説明】
【0061】
1 ボディ
2 凹部
3 第1溝部
10 中央固定接点
20 第1周辺固定接点
30 第2周辺固定接点
40 下部可動接点
41 環状部
41a 中央孔
41b,41c 切欠き部対
42 脚部
42a 付け根部
42b 第1曲げ部
42c 上側脚片部
42d 第2曲げ部
42e 下側脚片部
42f 第3曲げ部
42g 延長部
50 上部可動接点
G 間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面開口で、内側壁に複数の溝部が設けられた凹部を有する絶縁樹脂製の箱型のボディと、上記凹部2の内底面中央に配設された中央固定接点と、その中央固定接点の外側に配設された複数の周辺固定接点と、上記凹部に収容され、中央孔を設けて複数の上記周辺固定接点の上方に対向して配置された環状部とその環状部の外周縁部から延設され複数の上記溝部に対応して配置された複数の脚部とを有する金属板からなる下部可動接点と、上記環状部上に載置され、外周縁部が上記環状部に常時接触され反転可能な中央部が上記中央固定接点の上方に上記中央孔を通して対向して配置された上方に膨出したドーム状金属板からなる上部可動接点とを備え、上記環状部は、平板状に形成し、上記各脚部には、上記環状部の外周縁部から第1曲げ部を介して上記溝部の内奥下部に向かって下方に傾斜して延設する上側脚片部と、その上側脚片部から上記溝部の内奥にある上記凹部の内側壁の手前側に所定の間隔をあけて配置する第2曲げ部を介して上記上側脚片部の下方に延設する下側脚片部とをそれぞれ設け、上記各脚部は、略U字状の板バネをそれぞれ形成し、上記下側脚片を上記溝部にある上記凹部の内底面に当接し、上記環状部とその上に載置された上記上部可動接点とを上下移動可能に支持すると共に、上記環状部の外周縁には、上記各脚部の上記第1曲げ部の両側縁に連続する複数の切欠き部対を設け、上記各脚部にはまた、上記環状部における上記各切り欠き部対の対内の切り欠き部に挟まれた部分からなる付け根部をそれぞれ設け、上記各脚部は、上記付け根部と上記第1曲げ部と上記上側脚片部とで上記第1曲げ部を頂部とする座屈可能な折板をそれぞれ形成し、上記上部可動接点の外周縁部に上記環状部の外周縁部、及び上記各脚部の上記第1曲げ部又は上記付け根部を当接することを特徴とするプッシュスイッチ。
【請求項2】
上記各脚部には更に、上記下側脚片部から第3曲げ部を介して上方に傾斜して延設し先端側を上記付け根部の下方に対向して配置する延長部をそれそれ設け、上記各脚部は、上記延長部で片持ち梁状の復帰用補助板バネをそれぞれ形成し、上記折板が座屈した後に上記延長部の先端側が上記付け根部に当接して押し下げられ、上記延長部によって上記付け根部を上方に付勢する請求項1に記載のプッシュスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−146484(P2012−146484A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3667(P2011−3667)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000194918)ホシデン株式会社 (527)
【Fターム(参考)】