説明

プライマー組成物

【課題】基板上に金属酸化物粒子を含有するペースト層を形成し、次いで前記ペースト層を焼成することによって透明導電膜を形成するに際し、透明導電膜の密着性を高める技術を提供する。
【解決手段】基板上に金属酸化物粒子を含有するペースト層を形成し、次いで前記ペースト層を焼成することによって透明導電膜を形成するに際し、前記基板と前記ペースト層との間に介在させるプライマー組成物であって、
前記プライマー組成物は、チタンキレートを必須成分として含有することを特徴とするプライマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に金属酸化物粒子を含有するペースト層を形成し、次いで前記ペースト層を焼成することによって透明導電膜を形成するに際し、前記基板と前記ペースト層との間に介在させるプライマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ等の表示媒体、並びに太陽電池パネルなどに用いられる電極材料は、光の透過性と導電性とを兼ね備えることが要求されている。
【0003】
現在、電極材料としての透明導電膜は、真空蒸着法、スパッタリング法等により作製されている。これらの方法は、真空に排気された容器内に基板を配置し、蒸発源又はターゲットから飛行してくる原子を基板上に堆積することにより透明導電膜を形成する方法である。具体的には、スパッタリング法の場合には、透明導電膜を構成し得る金属原料を含有するスパッタリングターゲット(陰極)を用意し、対向配置した陽極との間に直流電圧を印加することによってターゲットに含まれる金属原料を基板上に堆積させて透明導電膜を形成する。この技術に関連して、例えば、特許文献1には、ITO透明導電膜形成用スパッタリングターゲットが開示されている。
【0004】
透明導電膜の形成法としては、スパッタリング法が主流であるが、この方法には以下の問題がある。即ち、当該スパッタリング法は、高真空・高エネルギーを要するため装置が大掛かりである上、大面積の膜形成が困難である。また、導電回路パターニングに際してウエットエッチング法等の多段工程を要するため、製造コストが高い。
【0005】
他方、透明導電膜形成用材料をペーストとし、ペーストを印刷(スクリーン印刷等)により基板上に塗布し、次いで塗膜を焼成することによって透明導電膜を形成すれば、大面積の膜形成を低コストで容易に行える。また、回路パターニングも容易である。この技術に関連して、例えば、特許文献2には、金属酸化物超微粒子を含有する透明導電膜形成用ペースト組成物が開示されている。
【0006】
しかしながら、ITOのスパッタリング法により形成された透明導電膜は、外的環境、特に湿度により密着性が低下するとともに抵抗値が上昇する。また、金属酸化物粒子を含有するペーストから形成された透明導電膜は、更にその影響が強くなる傾向がある。
【特許文献1】特開平3−199373号公報
【特許文献2】特開2007−193992号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、基板上に金属酸化物粒子を含有するペースト層を形成し、次いで前記ペースト層を焼成することによって透明導電膜を形成するに際し、透明導電膜の密着性を高める技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定組成を有するプライマー組成物が上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は下記のプライマー組成物に関する。
1.基板上に金属酸化物粒子を含有するペースト層を形成し、次いで前記ペースト層を焼成することによって透明導電膜を形成するに際し、前記基板と前記ペースト層との間に介在させるプライマー組成物であって、
前記プライマー組成物は、チタンキレートを必須成分として含有することを特徴とするプライマー組成物。
2.前記プライマー組成物は、チタンキレートを必須成分として含有し、更にテトラアルコキシチタン、テトラアルコキシシラン、テトラアルコキシジルコニウム及びテトラアルコキシアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種を含有する、上記項1に記載のプライマー組成物。
3.前記基板は、ガラス基板である、上記項1又は2に記載のプライマー組成物。
4.前記金属酸化物粒子は、金属成分としてCu、Zn、In、Si、Ge、Sn、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Os、Ir、V、Cr、Mn、Y、Ti、Zr、Nb、Mo、Ca、Ba、Sb、Al、Mg及びBiからなる群から選択される少なくとも1種を含有する、上記項1〜3のいずれかに記載のプライマー組成物。
5.前記金属酸化物粒子は、In及びSnOを含有する複合金属酸化物粒子である、上記項1〜3のいずれかに記載のプライマー組成物。
6.前記金属酸化物粒子は、中心部に金属酸化物を有し、金属酸化物の周囲に有機成分を被覆したものである、上記項1〜3のいずれかに記載のプライマー組成物。
7.前記ペースト層は、1)金属酸化物及び有機成分を含有する微粒子であって、その平均粒子径が1〜100nmである金属酸化物超微粒子、2)有機溶媒、並びに3)熱分解反応が吸熱反応である樹脂を含有する、上記項1〜3及び6のいずれかに記載のプライマー組成物。

以下、本発明について詳細に説明する。
(プライマー組成物)
本発明のプライマー組成物は、基板上に金属酸化物粒子を含有するペースト層を形成し、次いで前記ペースト層を焼成することによって透明導電膜を形成するに際し、前記基板と前記ペースト層との間に介在させるプライマー組成物であって、チタンキレートを必須成分として含有することを特徴とする。
【0010】
上記特徴を有する本発明のプライマー組成物は、特に有機金属化合物のチタンキレートを必須成分として含有するため、透明導電膜の導電性や透明性に影響を与えることなく、高温高湿度の条件下でも、透明導電膜の高い密着性を維持することができる。即ち基板と透明導電膜との間に存在することによって、高温高湿度の条件下でも、透明導電膜の高い密着性を維持する。
【0011】
本発明のプライマー組成物は、有機金属化合物であるチタンキレートを必須成分として含む。このようなプライマー組成物としては、例えば、チタンキレートを有機ビヒクルと混合することによりペースト化したものが使用できる。なお、プライマー組成物中における有機金属化合物の含有量としては、0.1〜50重量%程度が好ましく、0.1〜10重量%程度がより好ましい。
【0012】
チタンキレートとしては、例えば、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン、ジイソプロポキシビス(トリエタノールアミナト)チタン、ジ−n−ブトキシビス(トリエタノールアミナト)チタン、ジ(2−エチルヘキシロキシ)ビス(2−エチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン、イソプロポキシ(2−エチルヘキサンジオラト)チタン、テトラアセチルアセトネートチタン、ヒドロキシビス(ラクタト)チタン等が挙げられる。これらのチタンキレートは、単独又は2種以上を混合して使用できる。
【0013】
有機金属化合物としては、チタンキレートに加えて、テトラアルコキシチタン、テトラアルコキシシラン、テトラアルコキシジルコニウム及びテトラアルコキシアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種を併用してもよい。有機金属化合物として、チタンキレートを含む2種以上を用いる場合には、有機金属化合物におけるチタンキレートの含有量は10重量%以上が好ましく、50重量%以上がより好ましい。
【0014】
テトラアルコキシチタンとしては、例えば、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトライソブトキシチタン、テトラ−sec−ブトキシチタン、テトラ−t−ブトキシチタン、テトラキス−2−エチルヘキシロキシチタン、テトラステアリロキシチタン等が挙げられる。これらのテトラアルコキシチタンは、単独又は2種以上を混合して使用できる。
【0015】
テトラアルコキシシランとしては、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらのテトラアルコキシシランは、単独又は2種以上を混合して使用できる。
【0016】
テトラアルコキシジルコニウムとしては、例えば、ジルコニウムノルマルプロピレート、ジルコニウムノルマルブチレート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムモノアセチルアセトネート、ジルコニウムビスアセチルアセトネート、ジルコニウムモノエチルアセトアセテート、ジルコニウムアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムモノステアレート等が挙げられる。これらのテトラアルコキシジルコニウムは、単独又は2種以上を混合して使用できる。
【0017】
テトラアルコキシアルミニウムとしては、例えば、アルミニウムイソプロピレート、モノsec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムsec−ブチレート、アルミニウムエチレート、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムモノイソプロポキシモノオレオキシエチルアセトアセテート、環状アルミニウムオキサイドイソプロピレート、環状アルミニウムオキサイドオクチレート、環状アルミニウムオキサイドステアレート等が挙げられる。これらのテトラアルコキシアルミニウムは、単独又は2種以上を混合して使用できる。
【0018】
プライマー組成物を調製するための有機ビヒクルとしては、ペースト調製に利用される公知のものが使用でき、例えば、樹脂の溶剤溶液が好ましい。当該樹脂としては、セルロース系樹脂及びアクリル系樹脂が好ましい。セルロース系樹脂としては、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ニトロセルロース等が挙げられる。アクリル系樹脂としては、ポリブチルアクリレート、ポリイソブチルメタクリレート等が挙げられる。これらの樹脂は単独又は2種以上を混合して使用できる。
【0019】
プライマー組成物中における樹脂の含有量は限定されないが、プライマー組成物の粘度等を考慮して0〜30%程度の範囲で配合することが好ましい。
【0020】
溶剤(有機溶剤)としては、通常知られている各種のものでよく、特に限定されない。一般には、樹脂の溶解性に優れ、粘稠性のオイルを形成し得るものが好ましい。例えば、中沸点又は高沸点のエステル系溶剤、エーテル系溶剤、石油系溶剤等が挙げられる。また、セロソルブ系溶剤、プロピレングリコール系溶剤、カルビトール系溶剤、炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤等も使用できる。これらの有機溶剤は、単独又は2種以上を混合して使用できる。
【0021】
プライマー組成物は、上記各成分を混合してペースト化することにより調製でき、必要に応じて公知の添加剤を配合することもできる。
【0022】
ガラス基板等の基板上にプライマー層を形成する方法としては、プライマー組成物を、例えば、ドクターブレード法、ロールコート法、スクリーン印刷法、スピンコーター、テーブルコーター、リバースコーター、スプレー法等により基板上に塗布し、塗膜を成形炉中で約150〜600℃の温度で焼成する方法が挙げられる。本明細書では、印刷により得られる膜も「塗膜」に含める。なお、基板としては、ガラス基板が好ましい。
【0023】
プライマー層の膜厚(乾燥後)としては0.01〜1μm程度が好ましく、この膜厚で透明導電膜の十分な密着性が得られる。
【0024】
また、プライマー層は透明で且つ平滑に形成できる。よって、その上に形成される透明導電膜も平滑に形成し易く、それにより透明導電膜の安定した導電性と導電性の面内均一性を確保し易い。
(透明導電膜)
透明導電膜は、金属酸化物粒子を含有するペースト層を焼成することにより形成する。
【0025】
金属酸化物粒子としては、透明導電膜を形成するために用いる公知の金属酸化物粒子に加えて、金属酸化物と有機成分とを含む複合粒子も含まれる。
【0026】
本発明では、金属酸化物粒子として、金属酸化物と有機成分を含有する微粒子であって、その平均粒子径が1〜100nmである金属酸化物超微粒子が好ましい。以下、この金属酸化物超微粒子を例に挙げて説明する。
【0027】
金属酸化物超微粒子において、金属酸化物及び有機成分の含有態様は限定的ではないが、中心に金属酸化物粒子を有し、金属酸化物の周囲に有機成分を被覆した態様が好ましい。かかる含有態様であれば、ペースト中での金属酸化物超微粒子の凝集や沈降を抑制し易く、ペースト中での金属酸化物の含有量の上限値を、好適な実施態様では、50重量%程度にまで高めることができる。他方、金属酸化物超微粒子の代わりに金属錯体等を用いるとすると、金属酸化物超微粒子を用いる場合に比較してペースト中での凝集や沈降が生じ易い。しかも、金属錯体は金属成分に対して有機配位子の含有量が多いため、分散剤や樹脂を更に添加して調製されるペーストは金属濃度を高め難い。即ち、上記金属酸化物超微粒子を用いる本発明ペーストは、ペーストに求められる流動性を確保しながらペースト中の金属濃度を幅広い範囲で調整可能な点にも優位性がある。
【0028】
金属酸化物に含まれる金属成分は限定的ではないが、例えば、Cu、Zn、In、Si、Ge、Sn、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Os、Ir、V、Cr、Mn、Y、Ti、Zr、Nb、Mo、Ca、Ba、Sb、Al、Mg、Bi等が挙げられる。このような金属成分は、金属酸化物超微粒子の製造原料である金属有機化合物に由来する金属成分が好ましい。
【0029】
金属酸化物としては、例えば、Al、ZnO、In、SnO、Sb等が挙げられる。これらの金属酸化物は、単独又は2種以上を組み合わせて使用できる。2種以上を組み合わせる場合には、これらの金属酸化物の混合物やこれらを組み合わせてなる複合金属酸化物等がある。
【0030】
複合金属酸化物としては、例えば、In及びSnOを含有するものが好ましく、実質的にIn及びSnOからなるものがより好ましい。具体的には、InにSnOがドープされたITO(Indium-Tin-Oxide)が好ましい。SnOのドープ量は限定的ではないが、Sn含有量(金属量)は、In及びSnの合計量(金属量)を100重量%として3〜7重量%程度が好ましい。金属酸化物としてITOを採用し、SnOのドープ量を3〜7重量%の範囲内に制御する場合には、電子のキャリア濃度が高くなりシート抵抗を低下させ易い。
【0031】
金属酸化物超微粒子中の有機成分は限定的ではないが、脂肪酸が好ましい。このような有機成分としては、金属酸化物超微粒子の製造原料である金属有機化合物に由来する有機成分が好ましい。即ち、後述の製造方法に示すように、金属有機化合物を所定の条件下で加熱した場合に残存する有機成分が好適である。
【0032】
金属酸化物超微粒子の平均粒子径は、1〜100nmであればよく、1〜50nmが好ましく、1〜10nmがより好ましい。平均粒子径の小さい金属酸化物超微粒子を用いることにより、透明導電膜の導電特性を高められるとともに、導電回路のパターニング特性も向上する。なお、平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(品番「JEM1200EX」、日本電子社製)により観察し、任意に選んだ100個の粒子の算術平均値である。
【0033】
金属酸化物超微粒子における金属酸化物成分の比率は限定的ではないが、50〜95重量%程度が好ましく、65〜95重量%程度がより好ましく、80〜95重量%程度が最も好ましい。残部は実質的に有機成分(脂肪酸が好ましい)からなることが望ましいが、不可避的に他の成分が混在していてもよい。有機成分は好ましくは脂肪酸であるが、当該脂肪酸は熱分解時に発熱反応を示す。この観点からは有機成分含有量を少なくし、金属酸化物含有量を大きくすることが望ましい。他方、有機成分が金属酸化物超微粒子のペースト中での分散性を高める観点からは、良好な分散性を発揮するために要する有機成分の含有量を確保することが望ましい。このような複数の観点を考慮して、金属酸化物の比率は、前記の通り50〜95重量%程度が好ましい。
【0034】
ペースト組成物中の金属酸化物の含有量も限定的ではないが、1〜50重量%程度が好ましく、1〜30重量%程度がより好ましい。ペースト組成物中の金属酸化物濃度が50重量%を超える場合には、塗膜が厚くなる傾向があり、それ故に塗膜焼成時に十分に有機物が蒸散することができず残存して透明導電膜の透明性を低下させるだけでなく、シート抵抗(表面抵抗)及び比抵抗を増大させるおそれがある。他方、ペースト組成物中の金属酸化物濃度が1重量%未満の場合には、透明導電膜に空隙が生じる傾向があり、それ故にシート抵抗及び比抵抗を増大させるおそれがある。
【0035】
金属酸化物超微粒子の製造方法は限定的ではないが、例えば、金属有機化合物を、酸化性雰囲気下、その金属有機化合物の分解開始温度以上、且つ、完全分解温度未満の温度範囲内で加熱する方法によって好適に製造できる。本発明では、金属酸化物超微粒子として、当該製造方法によって製造されるもの又はその市販品を好適に使用できる。
【0036】
金属有機化合物としては、有機金属化合物、金属アルコキシド等が挙げられる。例えば、ナフテン酸塩、オクチル酸塩、ステアリン酸塩、一般式:C(CHCOOH(nは0〜5の整数が好ましい)で示されるカルボン酸類(安息香酸等)の塩、パラトルイル酸塩、n−デカン酸塩等の脂肪酸金属塩、イソプロポキシド、エトキシド等の金属アルコキシド、上記金属のアセチルアセトン錯塩等が挙げられる。
【0037】
上記の金属有機化合物の中でも、脂肪酸塩(脂肪酸の金属塩)が好ましい。特に飽和脂肪酸の金属塩が望ましい。飽和脂肪酸としては、次の一般的で示される脂肪酸が好ましい。
【0038】
2n+1COOH(ただし、nは整数を示す)
上記式中のn(脂肪酸の炭素数)は限定的ではないが、5〜30程度が好ましく、5〜20程度がより好ましく、6〜18程度が最も好ましい。
【0039】
金属有機化合物の形態は限定的ではなく、粉末状、液状等のいずれであってもよい。金属有機化合物は単独又は2種以上を混合して用いてもよい。例えば、金属酸化物をITOにする場合には、Inを含有する金属有機化合物とSnを含有する金属有機化合物とを混合して使用すればよい。
【0040】
金属有機化合物の種類によっては、昇華性や急激な分解性を有するものもあるため、昇華性を抑制するための高沸点溶剤などを併用することもできる。
【0041】
加熱温度は、金属有機化合物が完全に分解しない限り特に制限されない。即ち、金属有機化合物の分解開始温度以上、且つ、完全分解温度未満の温度範囲内であればよい。分解開始温度は、金属有機化合物の有機質成分が分解し始める温度を指し、完全分解温度は、金属有機化合物の有機質成分が完全に分解してしまう温度を指す。加熱温度は、前記温度範囲内において調整することができる。例えば、分解開始温度が約200℃であり、完全分解温度が約400℃である場合には、加熱温度は200℃〜400℃の温度範囲内に保持すればよい。保持時間は、加熱温度等に応じて適宜調整できる。
【0042】
加熱雰囲気は酸化性雰囲気であればよく、例えば、大気中、酸素ガス雰囲気中等が良い。また、窒素、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを雰囲気に含めてもよい。
【0043】
また、加熱に際し、金属有機化合物に各種アルコール類を添加してもよい。これにより、加熱温度を低くできる。アルコール類としては、前記効果が得られる限り特に制限されず、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ラウリルアルコール等が使用できる。アルコール類の添加量は、アルコールの種類等に応じて調整できるが、金属有機化合物100重量部に対して5〜20重量部程度が好ましく、10〜15重量部程度がより好ましい。
【0044】
更に、上記製造方法では、流動パラフィン、各種石油系高沸点溶媒、油脂等の添加剤を配合することによって作業性等を改善することが可能である。
【0045】
加熱終了後、必要に応じて精製を行う。精製方法は限定的ではなく、例えば、遠心分離、膜精製、溶媒抽出等が挙げられる。
【0046】
有機溶媒は、金属酸化物超微粒子を分散させるとともに後記樹脂を溶解させる。
【0047】
有機溶媒としては、金属酸化物超微粒子の分散性及び後記樹脂の溶解性の観点から適宜選択できる。有機溶媒としては、中沸点及び高沸点のエステル系溶剤、テルペン系溶剤、石油系溶媒が好適である。例えば、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のエステル系溶剤、ブチルカルビトール等のエーテル系溶剤、ターピネオール等のテルペン系溶剤、ナフサ等の石油系溶剤が例示できる。これらの有機溶剤は、単独又は2種以上を混合して使用できる。
【0048】
有機溶媒の使用量は限定されないが、例えば、金属酸化物超微粒子の分散性、ペースト組成物中の金属酸化物の含有量等を考慮して設定すればよい。
【0049】
樹脂としては、熱分解反応が吸熱反応であるものが好ましい。
【0050】
上記樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエチレン系樹脂(ポリエチレンカーボネート樹脂が好ましい)、ポリ乳酸樹脂等が挙げられる。なお、樹脂の熱分解反応が吸熱反応であるか発熱反応であるかは、示差熱分析によって判断できる。
【0051】
参考のために、熱分解反応が発熱反応である樹脂を例示すると、エチルセルロース樹脂、ニトロセルロース樹脂等が挙げられる。これらの発熱反応を示す樹脂を用いる場合には、透明導電膜にクラックが生じ易く、緻密性も不十分となる。
【0052】
上記樹脂(吸熱反応を示す樹脂)を用いることにより、透明導電膜のクラック発生を抑制できるとともに、透明導電膜を緻密化できる。これにより透明導電膜の透明性が向上するとともに、シート抵抗(表面抵抗)及び比抵抗を低下させることができる。また、樹脂の添加によりペースト組成物の流動性(粘度)を調整できるため、塗布方法の違いに応じて流動性を調整することができる。
【0053】
樹脂の含有量は、金属酸化物超微粒子の金属酸化物100重量部に対して0.5重量部以上が好ましく、0.5〜50重量部程度がより好ましく、15〜35重量部程度が最も好ましい。樹脂の含有量が50重量部を超える場合には、シート抵抗及び比抵抗が高まるおそれがある。
【0054】
上記ペースト組成物は、各成分を混合することにより調製できる。例えば、金属酸化物超微粒子、有機溶媒及び樹脂を所定量用意し、樹脂を有機溶媒に溶解後、樹脂溶液に金属酸化物超微粒子を添加し、全体を3本ロール、ビーズミル等の撹拌機を用いて十分に撹拌することによってペースト組成物を調製できる。このようにして得られるペースト組成物は、金属酸化物超微粒子の分散性が高く、前記超微粒子の経時的な凝集又は沈降が抑制されている。
【0055】
透明導電膜は、ガラス基材等の基材上に上記プライマー層を形成後、その上に金属酸化物粒子を含有するペースト層(塗膜)を形成し、塗膜を焼成することにより得られる。
【0056】
塗膜の形成方法は限定されず、例えば、スピンコート、スプレーコート、バーコート、ブレードコート等のコート法、スクリーン印刷、インクジェット印刷等の印刷法によって好適に塗膜形成できる。特に本発明のペースト組成物は、印刷法によって塗膜形成できる観点で好ましく、大面積の塗膜を容易に形成でき、パターニングも容易に行える。また、印刷を用いる場合には、エッチング処理工程無しで精密な導電回路パターニングも容易に行える。
【0057】
塗膜の厚さ(wet)は限定的ではないが、10〜25μm程度が好ましく、15〜20μm程度がより好ましい。塗膜の厚さ(wet)は、透明導電膜の厚さが0.2〜0.8μmとなるように設定することが好ましい。このような範囲に設定することにより、良好な透明性及び導電性が得られ易い。
【0058】
塗膜形成後は、空気中で乾燥させることが好ましい。乾燥温度は室温〜150℃程度とし、乾燥時間は10〜30分間程度が好ましい。
【0059】
乾燥後は、乾燥塗膜を焼成する。焼成条件は限定的ではなく、空気中での焼成で良い。
【0060】
空気中での焼成温度は300〜700℃程度が好ましく、500〜600℃程度がより好ましい。焼成時間は10〜60分間程度が好ましく、10〜30分間程度がより好ましい。焼成条件は有機成分が十分に除去できる観点から設定すればよい。また、空気中での焼成に加えて、窒素中での焼成を更に行ってもよい。この場合には、金属酸化物の酸素原子の欠陥(酸素原子孔)を形成できるため、自由電子を生じさせて導電膜の特性を高めることができる。
【0061】
このようにして作製される本発明の透明導電膜は、好適な実施態様においては、可視域で90%以上の光透過性を有する。また、シート抵抗(表面抵抗)は、好適な実施態様においては、500Ω/□程度と低い。比抵抗は、好ましくは1×10−4〜1×10−2Ω/cm程度である。
【発明の効果】
【0062】
本発明のプライマー組成物は、特に有機金属化合物のチタンキレートを必須成分として含有するため、透明導電膜の導電性や透明性に影響を与えることなく、高温高湿度の条件下でも、透明導電膜の高い密着性を維持することができる。即ち基板と透明導電膜との間に存在することによって、高温高湿度の条件下でも、透明導電膜の高い密着性を維持する。
【0063】
本発明のプライマー組成物は、簡便な印刷法(スクリーン印刷、スピンコーター等)を利用することによって容易にプライマー層を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0064】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0065】
実施例1
≪プライマー組成物の作製≫
溶剤ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート88.2gにエチルセルロース樹脂9.8gを加熱溶解し、有機ビヒクルを得た。その有機ビヒクル98gにチタンキレートであるチタンジイソプロポキシビスアセチルアセトネート2gを添加、混合し、プライマー組成物を得た。
≪プライマー層の形成≫
2mm厚さのソーダライムガラス基板上にスクリーンを配置し、上記プライマー組成物をスクリーン印刷により塗布した。塗布後、空気中150℃で20分間乾燥した。次いで、空気中480℃で30分間焼成することにより、厚さ0.1μmのプライマー層を形成した。
≪金属酸化物を含有するペースト組成物の調製≫
In中にSnOをドープしたITO粒子10gを用意した。ITO粒子中(金属量換算)のSnO含有量「Sn/(Sn+In)」は、金属量換算で4重量%であった。ITO粒子中の金属酸化物濃度は、69重量%であった。ITO粒子は、中心部に金属酸化物を有し、周囲に有機成分(脂肪酸)を被覆したものであり、ITO粒子の平均粒子径は、20nmであった。
【0066】
アクリル樹脂1.4gをターピネオール87.2gに溶解した樹脂溶液を用意した。
【0067】
樹脂溶液にITO粒子を添加し、3本ロールを用いて十分に撹拌することにより、複合粒子を分散させて、透明導電膜形成用ペースト組成物を調製した。
【0068】
樹脂含有量は、金属酸化物100重量部に対して20重量部であった。
【0069】
ペースト組成物中の金属酸化物含有量は、7重量%であった。
【0070】
ペースト組成物は、肉眼観察の結果、ITO粒子の沈降は認められず、また、粘度の経時変化も認められなかった。
≪透明導電膜の作製≫
ガラス基板上に作製したプライマー層の上に、さらに、スクリーンを配置し、上記金属酸化物を含有するペースト組成物をスクリーン印刷により塗布した。
【0071】
塗布後、空気中150℃で20分間乾燥した。次いで、空気中480℃で30分間焼成することにより、ITO透明導電膜を形成した。
【0072】
プライマー層の上にITO透明導電膜を形成した基板を2枚作製し、超加速寿命試験装置(試験条件:温度121℃、相対湿度95%、24時間放置)と恒温恒湿器(試験条件:温度45℃、相対湿度95%、24時間放置)にそれぞれ投入した。
【0073】
その後、テープピール試験を行った結果、超加速寿命試験装置、恒温恒湿器のいずれの場合にも、透明導電膜は剥離しなかった。
【0074】
テープピール試験は、表面を清浄にした試料に、テープ(JISZ1522に規定の幅12mmの透明粘着テープ)の新しい接着面を、長さ50mm以上指圧又はその他の方法によって気泡が残らないように圧着し、約10秒経過後、塗布面に直角方向に素早くテープを引きはがす方法で行った。透明導電膜の剥離の有無は、透明導電膜の浮き上がり、テープ側への透明導電膜の付着、及び拡大鏡観察によって評価した(以下、「テープピール試験」の条件は同じである)。
【0075】
実施例2
≪プライマー組成物の作製≫
溶剤イソプロピルアルコール95gにチタンキレートであるチタンジオクチロキシビスオクチレングリコレート5gを添加、混合し、プライマー組成物を得た。
≪プライマー層の形成≫
2mm厚さのソーダライムガラス基板上にスクリーンを配置し、上記プライマー組成物をスクリーン印刷により塗布した。塗布後、空気中150℃で20分間乾燥した。次いで、空気中480℃で30分間焼成することにより、厚さ0.05μmのプライマー層を形成した。
≪金属酸化物を含有するペースト組成物の調製≫
SnO粒子10gを用意した。SnO粒子中の金属酸化物濃度は、86重量%であった。SnO粒子は、中心部に金属酸化物を有し、周囲に有機成分を被覆したものであり、SnO粒子の平均粒子径は、50nmであった。
【0076】
アクリル樹脂1.6gをターピネオール111.3gに溶解した樹脂溶液を用意した。
【0077】
樹脂溶液にSnO粒子を添加し、3本ロールを用いて十分に撹拌することにより、SnO粒子を分散させて、透明導電膜形成用ペースト組成物を調製した。
【0078】
樹脂含有量は、金属酸化物100重量部に対して19重量部であった。
【0079】
ペースト組成物中の金属酸化物含有量は、7重量%であった。
【0080】
ペースト組成物は、肉眼観察の結果、SnO粒子の沈降は認められず、また、粘度の経時変化も認められなかった。
≪透明導電膜の作製≫
ガラス基板上に作製したプライマー層の上に、さらに、スクリーンを配置し、上記金属酸化物を含有するペースト組成物をスクリーン印刷により塗布した。
【0081】
塗布後、空気中150℃で20分間乾燥した。次いで、空気中480℃で30分間焼成することにより、SnO透明導電膜を形成した。
【0082】
プライマー層の上にSnO透明導電膜を形成した基板を2枚作製し、超加速寿命試験装置(試験条件:温度121℃、相対湿度95%、24時間放置)と恒温恒湿器(試験条件:温度45℃、相対湿度95%、24時間放置)にそれぞれ投入した。
【0083】
その後、テープピール試験を行った結果、超加速寿命試験装置、恒温恒湿器のいずれの場合にも、透明導電膜は剥離しなかった。
【0084】
実施例3
≪プライマー組成物の作製≫
溶剤テルピネオール82.0gにエチルセルロース樹脂9.7gとポリブチルアクリレート樹脂4.8gを加熱溶解し、有機ビヒクルを得た。その有機ビヒクル96.5gにチタンキレートであるチタンジイソプロポキシビスアセチルアセトネート3.5gを添加、混合し、プライマー組成物を得た。
≪プライマー層の形成≫
2mm厚さのソーダライムガラス基板上にスクリーンを配置し、上記プライマー組成物をスクリーン印刷により塗布した。塗布後、空気中150℃で20分間乾燥した。次いで、空気中480℃で30分間焼成することにより、0.1μmの厚みからなるプライマー層を形成した。
≪金属酸化物を含有するペースト組成物の調製≫
In中にSnOをドープしたITO粒子10gを用意した。ITO粒子中(金属量換算)のSnO含有量「Sn/(Sn+In)」は、金属量換算で6重量%であった。ITO粒子中の金属酸化物濃度は、65重量%であった。ITO粒子は、中心部に金属酸化物を有し、周囲に有機成分を被覆したものであり、ITO粒子の平均粒子径は、20nmであった。
【0085】
アクリル樹脂1.3gをターピネオール97gに溶解した樹脂溶液を用意した。
【0086】
樹脂溶液にITO粒子を添加し、3本ロールを用いて十分に撹拌することにより、ITO粒子を分散させて、透明導電膜形成用ペースト組成物を調製した。
【0087】
樹脂含有量は、金属酸化物100重量部に対して20重量部であった。
【0088】
ペースト組成物中の金属酸化物含有量は、6重量%であった。
【0089】
ペースト組成物は、肉眼観察の結果、ITO粒子の沈降は認められず、また、粘度の経時変化も認められなかった。
≪透明導電膜の作製≫
ガラス基板上に作製したプライマー層の上に、さらに、スクリーンを配置し、上記金属酸化物を含有するペースト組成物をスクリーン印刷により塗布した。
【0090】
塗布後、空気中150℃で20分間乾燥した。次いで、空気中480℃で30分間焼成することにより、ITO透明導電膜を形成した。
【0091】
プライマー層の上にITO透明導電膜を形成した基板を2枚作製し、超加速寿命試験装置(試験条件:温度121℃、相対湿度95%、24時間放置)と恒温恒湿器(試験条件:温度45℃、相対湿度95%、24時間放置)にそれぞれ投入した。
【0092】
その後、テープピール試験を行った結果、超加速寿命試験装置、恒温恒湿器のいずれの場合にも、透明導電膜は剥離しなかった。
【0093】
実施例4
≪プライマー組成物の作製≫
溶剤メチルプロピルアセテート93gにチタンキレートであるチタンジイソプロポキシビスアセチルアセトネート2gとテトラアルコキシシランであるテトラエトキシシラン5gを添加、混合し、プライマー組成物を得た。
≪プライマー層の形成≫
2mm厚さのソーダライムガラス基板上にスクリーンを配置し、上記プライマー組成物をスクリーン印刷により塗布した。塗布後、空気中150℃で20分間乾燥した。次いで、空気中480℃で30分間焼成することにより、0.04μmの厚みからなるプライマー層を形成した。
≪金属酸化物を含有するペースト組成物の調製≫
SnO粒子10gを用意した。SnO粒子中の金属酸化物濃度は、86重量%であった。SnO粒子は、中心部に金属酸化物を有し、周囲に有機成分を被覆したものであり、SnO粒子の平均粒子径は、50nmであった。
【0094】
アクリル樹脂1.5gをターピネオール111.4gに溶解した樹脂溶液を用意した。
【0095】
樹脂溶液にSnO粒子を添加し、3本ロールを用いて十分に撹拌することにより、SnO粒子を分散させて、透明導電膜形成用ペースト組成物を調製した。
【0096】
樹脂含有量は、金属酸化物100重量部に対して17重量部であった。
【0097】
ペースト組成物中の金属酸化物含有量は、7重量%であった。
【0098】
ペースト組成物は、肉眼観察の結果、SnO粒子の沈降は認められず、また、粘度の経時変化も認められなかった。
≪透明導電膜の作製≫
ガラス基板上に作製したプライマー層の上に、さらに、スクリーンを配置し、上記金属酸化物を含有するペースト組成物をスクリーン印刷により塗布した。
【0099】
塗布後、空気中150℃で20分間乾燥した。次いで、空気中480℃で30分間焼成することにより、SnO透明導電膜を形成した。
【0100】
プライマー層の上にSnO透明導電膜を形成した基板を2枚作製し、超加速寿命試験装置(試験条件:温度121℃、相対湿度95%、24時間放置)と恒温恒湿器(試験条件:温度45℃、相対湿度95%、24時間放置)にそれぞれ投入した。
【0101】
その後、テープピール試験を行った結果、超加速寿命試験装置、恒温恒湿器のいずれの場合にも、透明導電膜は剥離しなかった。
【0102】
実施例5
≪プライマー組成物の作製≫
溶剤テルピネオール84.0gにエチルセルロース樹脂11.5gを加熱溶解し、有機ビヒクルを得た。その有機ビヒクル95.5gにチタンキレートであるチタンジイソプロポキシビスアセチルアセトネート3gとテトラアルコキシジルコニウムであるジルコニウムテトラアセチルアセトネート1.5gを添加、混合し、プライマー組成物を得た。
≪プライマー層の形成≫
2mm厚さのソーダライムガラス基板上にスクリーンを配置し、上記プライマー組成物をスクリーン印刷により塗布した。塗布後、空気中150℃で20分間乾燥した。次いで、空気中480℃で30分間焼成することにより、0.1μmの厚みからなるプライマー層を形成した。
≪金属酸化物を含有するペースト組成物の調製≫
SnO中にSbをドープしたATO粒子10gを用意した。ATO粒子中(金属量換算)のSb含有量「Sb/(Sb+Sn)」は、金属量換算で5重量%であった。ATO粒子中の金属酸化物濃度は、90重量%であった。ATO粒子は、中心部に金属酸化物を有し、周囲に有機成分を被覆したものであり、ATO粒子の平均粒子径は、40nmであった。
【0103】
ポリ乳酸樹脂1.9gをターピネオール100.6gに溶解した樹脂溶液を用意した。
【0104】
樹脂溶液にATO粒子を添加し、3本ロールを用いて十分に撹拌することにより、複合粒子を分散させて、透明導電膜形成用ペースト組成物を調製した。
【0105】
樹脂含有量は、金属酸化物100重量部に対して37重量部であった。
【0106】
ペースト組成物中の金属酸化物含有量は、9重量%であった。
【0107】
ペースト組成物は、肉眼観察の結果、ATO粒子の沈降は認められず、また、粘度の経時変化も認められなかった。
≪透明導電膜の作製≫
ガラス基板上に作製したプライマー層の上に、さらに、スクリーンを配置し、上記金属酸化物を含有するペースト組成物をスクリーン印刷により塗布した。
【0108】
塗布後、空気中150℃で20分間乾燥した。次いで、空気中480℃で30分間焼成することにより、ATO透明導電膜を形成した。
【0109】
プライマー層の上にATO透明導電膜を形成した基板を、超加速寿命試験装置(試験条件:温度121℃、相対湿度95%、24時間放置)と恒温恒湿器(試験条件:温度45℃、相対湿度95%、24時間放置)に投入した。
【0110】
その後、テープピール試験を行った結果、超加速寿命試験装置、恒温恒湿器のいずれの場合にも、透明導電膜は剥離しなかった。
【0111】
比較例1
≪金属酸化物を含有するペースト組成物の調製≫
In中にSnOをドープしたITO粒子10gを用意した。ITO粒子中(金属量換算)のSnO含有量「Sn/(Sn+In)」は、金属量換算で4重量%であった。ITO粒子中の金属酸化物濃度は、69重量%であった。ITO粒子は、中心部に金属酸化物を有し、周囲に有機成分を被覆したものであり、ITO粒子の平均粒子径は、20nmであった。
【0112】
アクリル樹脂1.4gをターピネオール87.2gに溶解した樹脂溶液を用意した。
【0113】
樹脂溶液にITO粒子を添加し、3本ロールを用いて十分に撹拌することにより、複合粒子を分散させて、透明導電膜形成用ペースト組成物を調製した。
【0114】
樹脂含有量は、金属酸化物100重量部に対して20重量部であった。
【0115】
ペースト組成物中の金属酸化物含有量は、7重量%であった。
【0116】
ペースト組成物は、肉眼観察の結果、ITO粒子の沈降は認められず、また、粘度の経時変化も認められなかった。
≪透明導電膜の作製≫
2mm厚さのソーダライムガラス基板を用意した。
【0117】
ガラス基板上にプライマー層を形成せず、ガラス基板上に直接、スクリーンを配置し、上記金属酸化物を含有するペースト組成物をスクリーン印刷により塗布した。
【0118】
塗布後、空気中150℃で20分間乾燥した。次いで、空気中480℃で30分間焼成することにより、ITO透明導電膜を形成した。
【0119】
プライマー層を形成せず、ITO透明導電膜を形成した基板を2枚作製し、超加速寿命試験装置(試験条件:温度121℃、相対湿度95%、24時間放置)と恒温恒湿器(試験条件:温度45℃、相対湿度95%、24時間放置)にそれぞれ投入した。
【0120】
その後、テープピール試験を行った結果、超加速寿命試験装置、恒温恒湿器のいずれの場合にも、透明導電膜はソーダライムガラス基板との界面で剥離した。
【0121】
比較例2
≪プライマー組成物の作製≫
溶剤ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート88.2gにエチルセルロース樹脂9.8gを加熱溶解し、有機ビヒクルを得る。その有機ビヒクル98gにテトラアルコキシシランであるテトラエトキシシラン2gを添加、混合し、プライマー組成物を得た。
≪プライマー層の形成≫
2mm厚さのソーダライムガラス基板上にスクリーンを配置し、上記プライマー組成物をスクリーン印刷により塗布した。塗布後、空気中150℃で20分間乾燥した。次いで、空気中480℃で30分間焼成することにより、0.1μmの厚みからなるプライマー層を形成した。
≪金属酸化物を含有するペースト組成物の調製≫
In中にSnOをドープしたITO粒子10gを用意した。ITO粒子中(金属量換算)のSnO含有量「Sn/(Sn+In)」は、金属量換算で6重量%であった。ITO粒子中の金属酸化物濃度は、65重量%であった。ITO粒子は、中心部に金属酸化物を有し、周囲に有機成分を被覆したものであり、ITO粒子の平均粒子径は、20nmであった。
【0122】
アクリル樹脂1.3gをターピネオール97gに溶解した樹脂溶液を用意した。
【0123】
樹脂溶液にITO粒子を添加し、3本ロールを用いて十分に撹拌することにより、ITO粒子を分散させて、透明導電膜形成用ペースト組成物を調製した。
【0124】
樹脂含有量は、金属酸化物100重量部に対して20重量部であった。
【0125】
ペースト組成物中の金属酸化物含有量は、6重量%であった。
【0126】
ペースト組成物は、肉眼観察の結果、ITO粒子の沈降は認められず、また、粘度の経時変化も認められなかった。
≪透明導電膜の作製≫
ガラス基板上に作製したプライマー層の上に、さらに、スクリーンを配置し、上記金属酸化物を含有するペースト組成物をスクリーン印刷により塗布した。
【0127】
塗布後、空気中150℃で20分間乾燥した。次いで、空気中480℃で30分間焼成することにより、ITO透明導電膜を形成した。
【0128】
プライマー層の上にITO透明導電膜を形成した基板を2枚作製し、超加速寿命試験装置(試験条件:温度121℃、相対湿度95%、24時間放置)と恒温恒湿器(試験条件:温度45℃、相対湿度95%、24時間放置)にそれぞれ投入した。
【0129】
その後、テープピール試験を行った結果、超加速寿命試験装置、恒温恒湿器のいずれの場合にも、透明導電膜はソーダライムガラス基板との界面で剥離した。
【0130】
比較例3
≪金属酸化物および有機金属化合物を含有するペースト組成物の調製≫
In中にSnOをドープしたITO粒子10gを用意した。ITO粒子中(金属量換算)のSnO含有量「Sn/(Sn+In)」は、金属量換算で4重量%であった。ITO粒子中の金属酸化物濃度は、69重量%であった。ITO粒子は、中心部に金属酸化物を有し、周囲に有機成分を被覆したものであり、ITO粒子の平均粒子径は、20nmであった。
【0131】
アクリル樹脂1.4gをターピネオール87.2gに溶解した樹脂溶液を用意した。
【0132】
樹脂溶液にITO粒子を添加し、3本ロールを用いて十分に撹拌することにより、複合粒子を分散させて、透明導電膜形成用ペースト組成物を調製した。
【0133】
樹脂含有量は、金属酸化物100重量部に対して20重量部であった。
【0134】
ペースト組成物中の金属酸化物含有量は、7重量%であった。
【0135】
ペースト組成物は、肉眼観察の結果、ITO粒子の沈降は認められず、また、粘度の経時変化も認められなかった。
【0136】
金属酸化物を含有するペースト90gに、チタンキレートであるチタンジオクチロキシビスオクチレングリコレート5gと、テトラアルコキシシランであるテトラエトキシシラン5gを添加、混合し、金属酸化物および有機金属化合物を含有する透明導電膜形成用ペーストを得た。
≪透明導電膜の作製≫
2mm厚さのソーダライムガラス基板を用意した。
【0137】
ガラス基板上にプライマー層を形成せず、ガラス基板上に直接、スクリーンを配置し、上記金属酸化物および有機金属化合物を含有するペースト組成物をスクリーン印刷により塗布した。
【0138】
塗布後、空気中150℃で20分間乾燥した。次いで、空気中480℃で30分間焼成することにより、ITO透明導電膜を形成した。
【0139】
プライマー層を形成せず、ITO透明導電膜を形成した基板を2枚作製し、超加速寿命試験装置(試験条件:温度121℃、相対湿度95%、24時間放置)と恒温恒湿器(試験条件:温度45℃、相対湿度95%、24時間放置)にそれぞれ投入した。
【0140】
その後、テープピール試験を行った結果、超加速寿命試験装置、恒温恒湿器のいずれの場合にも、透明導電膜はソーダライムガラス基板との界面で剥離した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に金属酸化物粒子を含有するペースト層を形成し、次いで前記ペースト層を焼成することによって透明導電膜を形成するに際し、前記基板と前記ペースト層との間に介在させるプライマー組成物であって、
前記プライマー組成物は、チタンキレートを必須成分として含有することを特徴とするプライマー組成物。
【請求項2】
前記プライマー組成物は、チタンキレートを必須成分として含有し、更にテトラアルコキシチタン、テトラアルコキシシラン、テトラアルコキシジルコニウム及びテトラアルコキシアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種を含有する、請求項1に記載のプライマー組成物。
【請求項3】
前記基板は、ガラス基板である、請求項1又は2に記載のプライマー組成物。
【請求項4】
前記金属酸化物粒子は、金属成分としてCu、Zn、In、Si、Ge、Sn、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Os、Ir、V、Cr、Mn、Y、Ti、Zr、Nb、Mo、Ca、Ba、Sb、Al、Mg及びBiからなる群から選択される少なくとも1種を含有する、請求項1〜3のいずれかに記載のプライマー組成物。
【請求項5】
前記金属酸化物粒子は、In及びSnOを含有する複合金属酸化物粒子である、請求項1〜3のいずれかに記載のプライマー組成物。
【請求項6】
前記金属酸化物粒子は、中心部に金属酸化物を有し、金属酸化物の周囲に有機成分を被覆したものである、請求項1〜3のいずれかに記載のプライマー組成物。
【請求項7】
前記ペースト層は、1)金属酸化物及び有機成分を含有する微粒子であって、その平均粒子径が1〜100nmである金属酸化物超微粒子、2)有機溶媒、並びに3)熱分解反応が吸熱反応である樹脂を含有する、請求項1〜3及び6のいずれかに記載のプライマー組成物。

【公開番号】特開2009−256423(P2009−256423A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−105024(P2008−105024)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【出願人】(508114454)地方独立行政法人 大阪市立工業研究所 (60)
【出願人】(592001447)株式会社巴製作所 (5)
【出願人】(591021028)奥野製薬工業株式会社 (132)
【Fターム(参考)】