説明

プライミング細胞療法

本発明は、プライミングした結合組織細胞及び薬学的に許容可能なその担体を含む組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイトカインとのインキュベーションによってプライミングした細胞の体細胞療法への使用に関する。
【背景技術】
【0002】
整形外科分野では、変性性関節炎又は骨関節炎が最もよく見られる軟骨損傷に関連する疾患である。膝関節、股関節、肩関節、さらには手関節等といった体内のほとんど全ての関節が罹患する。この疾患の病因は硝子関節軟骨の変性である(非特許文献1)。関節の硝子軟骨は変形し、線維化し(fibrillated)、最終的には陥凹する(excavated)。変性した軟骨をどうにかして再生することができれば、ほとんどの患者が活力を失わせるような痛みを感じることなく生活を享受することができるだろう。
【0003】
薬物を関節へと運ぶための経口投与、静脈内投与又は筋内投与等といった従来の薬物送達経路は非効率的である。関節内に注射された薬物の半減期は短いのが一般的である。薬物の関節内注射の別の欠点は、関節炎等の慢性状態を治療するのに許容可能な薬物レベルを関節腔で得るためには注射を頻繁に繰り返す必要があるということである。これまでの治療薬では選択的に関節を標的とすることができなかったため、持続的な関節内治療用量を達成するためには、哺乳動物宿主を全身的に高い薬物濃度に曝露することが必要であった。このような非標的器官の曝露は、抗関節炎薬が重大な副作用(胃腸障害、並びに哺乳動物宿主の血液系、心臓血管系、肝臓系及び腎臓系における変化等)をもたらす傾向を増幅させていた。
【0004】
整形外科分野では、幾つかのサイトカインが整形外科的疾患の治療の候補として見なされている。骨形態形成タンパク質が骨形成の効果的な刺激因子であると考えられており(非特許文献2、非特許文献3)、TGF−βが骨形成及び軟骨形成の刺激因子として報告されている(非特許文献4)。
【0005】
形質転換成長因子−β(TGF−β)は、多機能サイトカインであると見なされており(非特許文献5)、細胞の成長、分化及び細胞外基質タンパク質合成において調節的な役割を果たしている(非特許文献6)。TGF−βはin vitroで上皮細胞及び破骨細胞様細胞の成長を抑制するが(非特許文献7)、in vivoでは軟骨内骨化、最終的には骨形成を刺激する(非特許文献8、非特許文献9及び非特許文献10)。TGF−β誘導性骨形成は、最終的に軟骨形成細胞へと分化する骨膜下多能性細胞をTGF−βが刺激することによって媒介される(非特許文献4及び非特許文献11)。
【0006】
整形外科におけるTGF−βの生物学的効果が報告されている(非特許文献12、非特許文献13、非特許文献14、非特許文献9、非特許文献10)。マウス胚では、染色によってTGF−βが結合組織、軟骨及び骨等の間充織に由来する組織と密接に関連することが示される。発生学的所見の他にも、TGF−βは骨形成及び軟骨形成の部位に見られる。TGF−βはまた、ウサギ脛骨の骨折治癒を増進し得る。近年、TGF−βの治療的価値が報告されているが(非特許文献8及び非特許文献9)、その短期効果及び高コストのために臨床への広い応用が制限されている。
【0007】
軟骨細胞は反復継代による培養下での増殖の間に、必然的にグリコサミノグリカン(GAG)及びII型コラーゲン(COL2)等の軟骨基質を産生するその能力を失い、I型コラーゲン(COL1)を産生するようになる(脱分化と呼ばれる)。ヒト関節軟骨細胞がin vitroで限られた回数の細胞分裂しか行うことができず、その増殖能が年齢と共に減少することは以前から知られている。
【0008】
出願人らは、ヒト関節軟骨細胞の増加条件が、分化プログラムに再び入る細胞の能力を調節し、in vitroでの成長能を増大させることができることを実証した。
【0009】
特許文献1及び特許文献2は、IRAP(インターロイキン−1受容体アンタゴニストタンパク質)遺伝子のウイルス構築物又はプラスミド構築物を作製すること、滑膜細胞(特許文献1)及び骨髄細胞(特許文献2)に該構築物をトランスフェクトすること、及びトランスフェクト細胞をウサギ関節に注射することを開示しているが、プライミングした軟骨細胞を使用して結合組織を再生することの開示はない。
【0010】
特許文献3及び特許文献4は、TGFβ「スーパーファミリー」に属する骨形態形成タンパク質(BMP)と、切断型(truncated)副甲状腺ホルモン関連ペプチドとを共に含む組成物を注射して、軟骨組織形成の維持及び軟骨組織の誘導をもたらすことを開示している。しかしながら、BMP遺伝子を用いた遺伝子治療法も、プライミングした軟骨細胞の使用も開示されていない。
【0011】
特許文献5は、足場、骨膜/軟骨膜組織及び間質細胞(軟骨細胞を含む)の組み合わせを軟骨欠損部に移植することを開示している。この特許開示では、これらの要素の3つ全てが移植システム中に存在することが必要とされるため、この参照文献は足場又は骨膜/軟骨膜組織の移植を必要としない本発明の簡便な細胞治療法を開示又は示唆していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5,858,355号
【特許文献2】米国特許第5,766,585号
【特許文献3】米国特許第5,846,931号
【特許文献4】米国特許第5,700,774号
【特許文献5】米国特許第5,842,477号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Mankin et al., J Bone Joint Surg, 52A: 460-466, 1982
【非特許文献2】Ozkaynak et al., EMBO J, 9: 2085-2093, 1990
【非特許文献3】Sampath and Rueger, Complications in Ortho, 101-107, 1994
【非特許文献4】Joyce et al., J Cell Biology, 110: 2195-2207, 1990
【非特許文献5】Sporn and Roberts, Nature (London), 332: 217-219, 1988
【非特許文献6】Madri et al., J Cell Biology, 106: 1375-1384, 1988
【非特許文献7】Chenu et al., Proc Natl Acad Sci, 85: 5683-5687, 1988
【非特許文献8】Critchlow et al., Bone, 521-527, 1995
【非特許文献9】Lind et al., A Orthop Scand, 64(5): 553-556, 1993
【非特許文献10】Matsumoto et al., In vivo, 8: 215-220, 1994
【非特許文献11】Miettinen et al., J Cell Biology, 127-6: 2021-2036, 1994
【非特許文献12】Andrew et al., Calcif Tissue In. 52: 74-78, 1993
【非特許文献13】Borque et al., Int J Dev Biol., 37: 573-579, 1993
【非特許文献14】Carrington et al., J Cell Biology, 107: 1969-1975, 1988
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
これらの先行技術開示にもかかわらず、哺乳動物宿主において結合組織を再生する、より効果的かつ強力な治療方法だけでなく、より優れた、より効果的な体細胞遺伝子治療法に対しても極めて現実的で大きな必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は本明細書中で先述した必要性を満たしている。
【0016】
一態様では、本発明は、軟骨基質を産生する能力を失った軟骨細胞の再分化を誘導するサイトカイン又はサイトカインの組み合わせに関する。本発明は、in vitroで初代軟骨細胞の細胞成長を促進することのできるサイトカインに関する。さらに、再分化させた軟骨細胞を使用して、三次元基質を利用することなく軟骨組織を形成することができる。出願人らは、成長及び再分化を促進するサイトカインで細胞を連続処理することで、軟骨組織再生が最大限に高められることも発見した。
【0017】
一態様では、本発明は、プライミングした結合組織細胞及び薬学的に許容可能なその担体を含む組成物に関する。細胞は線維芽細胞、軟骨細胞又は線維芽細胞様軟骨細胞であり得る。細胞はヒト細胞であり得る。細胞は注射可能であり得る。細胞は細胞を約−70℃〜約−196℃の温度で貯蔵する貯蔵容器内に収容され得る。
【0018】
別の態様では、本発明は、哺乳動物において標的部位で軟骨の再生を刺激する方法であって、(i)結合組織細胞をサイトカインを含む組成物と共にインキュベートし、プライミングした細胞を作り出す、インキュベートすること、(ii)任意で該サイトカインと該結合組織細胞とを分離すること、及び(iii)治療的有効量の該プライミングした細胞を、軟骨を生成することが望まれる標的関節部位に注射することを含み、内因的に存在する形態の該結合組織細胞が該標的部位で減少しており、該標的部位での該プライミングした細胞の存在が軟骨の再生を刺激する、方法に関する。結合組織細胞は線維芽細胞、軟骨細胞又は線維芽細胞様軟骨細胞であり得る。軟骨細胞は初代ヒト軟骨細胞であり得る。サイトカインはTGF−βスーパーファミリーに属する成員であり得る。結合組織細胞を約1時間〜約2週間インキュベートして、プライミングした細胞を作り出してもよい。サイトカインはTGF−βであり得る。サイトカインは少なくとも1ng/mlの量で存在し得る。
【0019】
別の態様では、本発明は、プライミングした細胞に加えて発現させようとする遺伝子をトランスフェクト又は形質導入した哺乳動物細胞の第2の集団に関する。
【0020】
さらに別の態様では、本発明は、混合細胞組成物であって、硝子軟骨を生成するのに有効な量で、(a)プライミングした軟骨細胞又は線維芽細胞の第1の集団、(b)TGF−βスーパーファミリーの成員をコードする遺伝子をトランスフェクト又は形質導入した線維芽細胞又は軟骨細胞の第2の集団、及び(c)薬学的に許容可能なその担体を含む、組成物に関する。遺伝子はTGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7又はBMP−9であり得る。この組成物では、TGF−βスーパーファミリーの成員をコードする遺伝子をトランスフェクト又は形質導入した線維芽細胞又は軟骨細胞の該第2の集団に対する、プライミングした細胞の該第1の集団の比率が約1〜20対1、約1〜10対1、又は約1〜3対1であり得る。遺伝子をトランスフェクト又は形質導入した細胞の該第2の集団は、照射を受けたものであり得る。本発明の(inventive)組成物では、細胞の第1の集団及び細胞の第2の集団が、同じ供給源生物又は異なる供給源生物に由来するものであり得る。
【0021】
さらに別の態様では、本発明は、混合細胞組成物を生成する方法であって、(A)(i)結合組織細胞をサイトカインを含む組成物とインキュベートして、プライミングした細胞の第1の集団を作り出す、インキュベートする工程、及び(ii)任意で該サイトカインと該結合組織細胞とを分離する工程を含む、細胞の第1の集団を作り出すこと、(B)(i)プロモーターと操作可能に結合した、治療用タンパク質をコードするDNA配列を含む組み換えベクターを生成する工程、(ii)in vitroで細胞の集団に上記組み換えベクターをトランスフェクト又は形質導入して、細胞の第2の集団を作り出す、トランスフェクト又は形質導入する工程を含む、細胞の第2の集団を作り出すこと、並びに、(C)細胞の該第1及び第2の集団を混合し、該混合細胞組成物を得る、混合することを含む、方法に関する。
【0022】
さらに別の態様では、本発明は、哺乳動物において標的部位で軟骨の再生を刺激する方法であって、(A)(i)結合組織細胞をサイトカインを含む組成物とインキュベートして、プライミングした細胞の第1の集団を作り出す、インキュベートする工程、及び(ii)任意で該サイトカインと該結合組織細胞とを分離する工程を含む、細胞の第1の集団を作り出すこと、(B)(i)プロモーターと操作可能に結合した、治療用タンパク質をコードするDNA配列を含む組み換えベクターを生成する工程、(ii)in vitroで細胞の集団に上記組み換えベクターをトランスフェクト又は形質導入して、細胞の第2の集団を作り出す、トランスフェクト又は形質導入する工程を含む、細胞の第2の集団を作り出すこと、並びに、(C)治療的有効量の細胞の該第1及び第2の集団の混合物を、軟骨を生成することが望まれる標的関節部位に注射することを含み、内因的に存在する形態の該結合組織細胞が該標的部位で減少しており、該標的部位での該細胞混合物の存在が軟骨の再生を刺激する、方法に関する。この方法では、遺伝子はTGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6又はBMP−7であり得る。この方法では、細胞の第1及び第2の集団は宿主レシピエントに関して同系、同種異系又は異種であり得る。組み換えベクターはウイルスベクター又はプラスミドベクターであり得る。任意で細胞を注射の前に凍結保存剤中に貯蔵してもよい。
【0023】
さらに、別の態様では、本発明は、骨関節炎を治療する方法であって、(A)(i)結合組織細胞をサイトカインを含む組成物とインキュベートして、プライミングした細胞の第1の集団を作り出す、インキュベートする工程、及び(ii)任意で該サイトカインと該結合組織細胞とを分離する工程を含む、細胞の第1の集団を作り出すこと、(B)(i)プロモーターと操作可能に結合した、治療用タンパク質をコードするDNA配列を含む組み換えベクターを生成する工程、(ii)in vitroで細胞の集団に上記組み換えベクターをトランスフェクト又は形質導入して、細胞の第2の集団を作り出す、トランスフェクト又は形質導入する工程を含む、細胞の第2の集団を作り出すこと、並びに、(C)治療的有効量の細胞の該第1及び第2の集団の混合物、並びに非生物三次元構造ではない薬学的に許容可能なその担体を、哺乳動物の関節腔の軟骨を生成することが望まれる標的関節部位に注射することを含み、内因的に存在する形態の該結合組織細胞が該標的部位で減少しており、該標的部位での該細胞混合物の存在が軟骨の再生を刺激して、骨関節炎が治療される、方法に関する。
【0024】
さらに別の実施の形態では、本発明は、結合組織細胞の倍加時間を短縮する方法であって、結合組織細胞をサイトカインを含む組成物とインキュベートして、プライミングした細胞を作り出す、インキュベートすることを含む、方法に関する。結合組織細胞は線維芽細胞、軟骨細胞又は線維芽細胞様軟骨細胞であり得る。軟骨細胞は初代ヒト軟骨細胞であり得る。サイトカインはTGF−βスーパーファミリーに属する成員であり得る。細胞をサイトカインと約1時間〜約2週間インキュベートして、プライミングした細胞を作り出してもよい。倍加時間は対照のインキュベートしていない細胞の約半分であり得る。サイトカインはFGFとTGFβ1との組み合わせであり得る。組成物は3,3’,5−トリヨード−L−サイロニンを含み得る。
【0025】
本発明のこれら及び他の目的は、以下の本発明の説明、本明細書に添付した参照図面及び本明細書に添付した特許請求の範囲からさらに十分に理解される。
【0026】
本発明は、本明細書で下記に与えられる詳細な説明、及び例示目的のみで与えられ、したがって本発明を限定するものではない添付の図面からさらに十分に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】線維芽細胞様軟骨細胞をTGFβ1とインキュベートした後の様々な時間(週)での細胞のアルシアンブルー染色の結果を示す図である。1. 10ng/mLのTGFβ1との18時間のインキュベーション;2. 50ng/mLのTGFβ1との18時間のインキュベーション;3. 10ng/mLのTGFβ1との6時間のインキュベーション;4. 50ng/mLのTGFβ1との6時間のインキュベーション;5.1ng/mLのTGFβ1とのインキュベーション;6. サイトカインから分離していない10ng/mLのTGFβ1とのインキュベーション;7. 非処理対照の線維芽細胞様軟骨細胞。
【図2】サイトカイン処理した二次元培養における細胞成長速度を示す図である。各々のサイトカイン処理群から、T−75フラスコ中で培養した細胞をコンフルエンスで採取し、計数して、最初の細胞播種数から細胞成長速度を求めた。図中英語の表題は軟骨細胞の細胞成長、縦軸は倍加時間(日)、横軸は処理条件、Non-coated Flask:非コートフラスコ、Collagen Flask:コラーゲンフラスコ、Nonは非処理を意味する。
【図3】マイクロマス形成を示す図である。マイクロマスをマス20μl(細胞1.5×10個)の量で、培地の存在なしに培養プレートの表面上に直接プレーティングした。細胞を適切な細胞接着が起こるように1.5時間インキュベートし、0.5mL/ウェルの完全成長培地を添加した。細胞を3日目〜4日目に成長培地を1回完全に交換して7日間培養した。7日間のインキュベーション期間の終了時に、マイクロマスを1ウェル当たり1mLのdPBSで2回洗浄し、10%ホルマリン溶液で30分間固定した。固定溶液を除去し、マスを500uL/ウェルの1.0%アルシアンブルー8GXの1N HCl溶液を用いて4℃で一晩染色した。アルシアンブルー染色によって、種々のサイトカイン条件に曝した軟骨細胞のマイクロマス培養物におけるグリコサミノグリカン(GAG)の分布が示される。図中英語のNegative:陰性対照、Insulin:インスリン、Non-coated Plate:非コートプレート、Collagen Plate:コラーゲンプレートを意味する。
【図4】マイクロマスのGAG定量化を示す図である。グリコサミノグリカンの定量化は、アルシアンブルーと結合したプロテオグリカン分子のGAG鎖を沈殿させる塩酸グアニジン(Gu−HCl)の添加によって行うことができる。アルシアンブルー染色したマイクロマスを、250μl/ウェルの4M Gu−HClとインキュベートした。染色剤の大部分がマイクロマスから抽出された時点で溶液を除去し、光学密度を560nmで測定した。図中英語の表題はアルシアンブルー染色によるGAG定量化、縦軸は相対GAG量、横軸は処理条件、Non-coated Flask:非コートフラスコ、Collagen Flask:コラーゲンフラスコ、Nonは非処理を意味する。
【図5】サイトカイン処理した二次元培養における細胞形態を示す図である。軟骨細胞成長のデジタル画像を、細胞がおよそ30%〜50%のコンフルエンスを示す時点(播種の3日後)で撮影した。細胞分布、細胞の大きさ及び形態の観察結果はサイトカイン処理群によって異なる。画像は100×の倍率(magnifcation)で撮影した。図中英語は、Negative:陰性対照、Non-coated Plate:非コートプレート、Collagen Plate:コラーゲンプレート、Insulin:インスリンを意味する。
【図6】サイトカイン処理した二次元培養における細胞形態を示す図である。軟骨細胞成長のデジタル画像を、細胞がおよそ80%〜100%のコンフルエンスを示す時点(播種の8日後)で(RNA調製、タンパク質抽出及びマイクロマス培養のために細胞を採取する直前に)撮影した。画像は100×の倍率で撮影した。図中英語は、Negative:陰性対照、Non-coated Plate:非コートプレート、Collagen Plate:コラーゲンプレート、Insulin:インスリンを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書中で使用される場合、核酸、タンパク質、そのタンパク質断片又は誘導体に関する「生物学的に活性な」という用語は、野生型形態の核酸又はタンパク質によって引き起こされる既知の生物学的機能を模倣する、核酸又はアミノ酸配列の能力として定義される。
【0029】
本明細書中で使用される場合、「結合組織」という用語は、他の組織又は器官を結合し、支持する任意の組織であり、哺乳動物宿主の靱帯、軟骨、腱、骨及び滑膜が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
本明細書中で使用される場合、「結合組織細胞」及び「結合組織の細胞」という用語は、コラーゲン細胞外基質を分泌する線維芽細胞、軟骨細胞(cartilage cells)(軟骨細胞(chondrocytes))及び骨細胞(bone cells)(骨芽細胞/骨細胞(osteocytes))、並びに脂肪細胞(fat cells)(脂肪細胞(adipocytes))及び平滑筋細胞等といった結合組織中に見られる細胞を含む。好ましくは、結合組織細胞は線維芽細胞、軟骨細胞及び骨細胞である。本発明を結合組織細胞の混合培養物、及び単一型の細胞を用いて実施することができることが認識されよう。組織細胞を、細胞が宿主生物内で対象の遺伝子を安定して発現するように、関節腔に注射する前に化合物(chemical compounds)又は放射線で前処理してもよいことも認識される。結合組織細胞は、宿主生物に注射された場合に負の免疫応答を引き起こさないことが好ましい。この点から細胞媒介性遺伝子療法又は体細胞療法に対して同種異系細胞及び自己細胞を使用してもよいことが理解される。
【0031】
本明細書中で使用される場合、「結合組織細胞株」には、共通の親細胞に由来する複数の結合組織細胞が含まれる。
【0032】
本明細書中で使用される場合、細胞の「減少」とは、細胞集団がその部位で通常見られる量と比べて減少していることを指す。これは、その位置にある正常細胞集団と比べて少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%等の細胞集団の減少率を意味し得るか、又はその位置での細胞の損傷若しくは枯渇を意味し得る。
【0033】
本明細書中で使用される場合、ドナー細胞及びレシピエント宿主の「組織適合性」とは、移植が許容され、宿主哺乳動物において機能性を保つのに十分な数の組織適合性因子(agents)をそれらが共有することを指す。特に、ドナーとレシピエントとの組は、HLA A型、B型及びC型(クラスI)及びHLA DR型(クラスII)等のヒト白血球抗原(HLA)について適合していなければならない。
【0034】
本明細書中で使用される場合、「硝子軟骨」とは関節表面を覆う結合組織を指す。硝子軟骨のほんの一例としては、関節軟骨、肋軟骨及び鼻軟骨が挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
特に、硝子軟骨は自己複製し、変化に対応し、摩擦の少ない安定な運動をもたらすということが知られている。同じ関節内に見られる硝子軟骨であっても、複数の関節間に見られる硝子軟骨であっても、厚さ、細胞密度、基質組成及び機械的特性が異なるが、同じ全体構造及び機能を保っている。硝子軟骨の幾つかの機能としては、圧迫に対する驚くべき剛性、弾性、及び荷重を分散させる並外れた能力、軟骨下骨に対するピーク応力を最小限に抑える能力、及び高い耐久性が挙げられる。
【0036】
肉眼的及び組織学的には、硝子軟骨は変形に抵抗する滑らかな硬い表面のように見える。軟骨の細胞外基質は軟骨細胞を含むが、血管、リンパ管又は神経を欠いている。軟骨細胞と基質との相互作用を維持する複雑な高秩序の構造は、低レベルの代謝活性を維持する一方で、硝子軟骨の構造及び機能を維持する働きをする。参照文献のO'Driscoll, J. Bone Joint Surg., 8OA: 1795-1812, 1998(その全体が参照により本明細書中に援用される)は、硝子軟骨の構造及び機能を詳細に記載している。
【0037】
本明細書中で使用される場合、「注射可能な」組成物とは、細胞をそれに接着させ、細胞を二重以上の層状で成長させる任意の材料又は形状からなる様々な三次元の足場構造、骨格構造、メッシュ構造又はフェルト構造(この構造は一般に移植されるが、注射はされない)を除外した組成物を指す。一実施形態では、本発明の注射方法は典型的には注射器によって行われる。しかしながら、対象の組成物を注射する任意の方式を用いることができる。例えば、カテーテル、噴霧器、又は温度依存性ポリマーゲルを使用してもよい。
【0038】
本明細書中で使用される場合、「哺乳動物宿主」という用語は、動物界の成員(ヒトが挙げられるが、これに限定されない)を含む。
【0039】
本明細書中で使用される場合、「混合細胞」又は「細胞の混合物」又は「細胞混合物」とは、発現される対象の遺伝子をトランスフェクト又は形質導入した細胞の集団、及びプライミングした細胞を含む少なくとも1つの他の細胞の集団を含む、複数の細胞の組み合わせを指す。
【0040】
本発明の一実施形態では、混合細胞とは、形質転換成長因子βスーパーファミリーの成員をコードする遺伝子又はDNAをトランスフェクト又は形質導入した細胞、及び形質転換成長因子βスーパーファミリーの成員をコードする遺伝子をトランスフェクト又は形質導入していないプライミングした細胞を含む、複数の結合組織細胞の組み合わせを指す場合がある。典型的には、TGFスーパーファミリー遺伝子をトランスフェクト又は形質導入した細胞に対する、形質転換成長因子βスーパーファミリーの成員をコードする遺伝子をトランスフェクト又は形質導入していないプライミングした細胞の比率は、約3〜20対1の範囲であり得る。この範囲には約3〜10対1が含まれ得る。特に、この範囲は細胞数に関して約10対1であり得る。しかしながら、これらの細胞の比率は、これらの細胞の組み合わせが部分的及び完全に欠損した関節で硝子軟骨を産生する上で効果的である限りにおいて、必ずしも任意の特定の範囲に固定されないことが理解される。
【0041】
本明細書中で使用される場合、「患者」という用語は、動物界の成員(ヒトが挙げられるが、これに限定されない)を含む。
【0042】
本明細書中で使用される場合、「薬学的に許容可能な担体」とは、本発明の組成物の輸送の効率を高め、組成物の有効性を延長することが当該技術分野で知られている任意の担体を指す。
【0043】
本明細書中で使用される場合、「プライミングした」細胞という用語は、或る特定の遺伝子を発現するように活性化又は変化させた細胞を指す。
【0044】
本明細書中で使用される場合、「体細胞」又は一般に「細胞」とは、卵又は精子以外の体の細胞を指す。
【0045】
本明細書中で使用される場合、「貯蔵した」細胞とは、関節腔に投与する前に別個に又は共に貯蔵したプライミングした細胞を含む、混合細胞の集団のプライミングした細胞の組成物を指す。細胞は冷凍装置内に貯蔵してもよい。代替的には、細胞を液体窒素タンク又は同等の貯蔵装置内で約−70℃〜約−196℃で凍結し、細胞を後で関節腔に投与するために保存してもよい。細胞は既知のプロトコルを用いて融解することができる。凍結及び融解の期間は、細胞の生存性及び効力が最適化されている限りにおいて、様々な方法によって行うことができる。
【0046】
本明細書中で使用される場合、「トランスフェクション」及び「形質導入」という用語は、DNAを宿主細胞へと移入する特定の方法、及びそれに続くレシピエント細胞の染色体DNAへの組み込みとして言及される。本発明を実施する際には、外来遺伝子が宿主細胞に導入され、外来遺伝子が宿主細胞中で安定して発現される限りにおいて、外来DNAを宿主細胞に移入する任意の方法(非ウイルス又はウイルス遺伝子移入法を含む)を使用することができる。したがって、本明細書中で使用される場合、「トランスフェクト又は形質導入した」という用語は、リン酸カルシウム沈殿、DEAE−デキストラン、エレクトロポレーション、リポソーム、ウイルス媒介等といった細胞への遺伝子送達の任意の方法を含む。
【0047】
本明細書中で使用される場合、「形質転換成長因子−β(TGF−β)スーパーファミリー」は、胚発生過程で広範な分化プロセスに影響を与える構造的に関連したタンパク質の群を包含する。このファミリーとしては、正常な雄性性分化(male sex development)に必要とされるミュラー管抑制物質(MIS)(Behringer,et al., Nature, 345:167, 1990)、背腹軸形成及び成虫原基の形態形成に必要とされるショウジョウバエデカペンタプレジック(DPP)遺伝子産物(Padgett, et al., Nature, 325:81-84, 1987)、卵の植物極に局在するアフリカツメガエルVg−I遺伝子産物(Weeks, et al., Cell, 51:861-867, 1987)、アフリカツメガエル胚において中胚葉及び前方構造の形成を誘導することのできる(Thomsen, et al., Cell, 63:485, 1990)アクチビン(Mason,et al., Biochem, Biophys. Res. Commun., 135:957-964, 1986)、並びにde novo軟骨形成及び骨形成を誘導することのできる(Sampath, et al., J. Biol. Chem., 265:13198, 1990)骨形態形成タンパク質(BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6及びBMP−7等のBMP、オステオゲニン(osteogenin)、OP−1)が挙げられる。TGF−β遺伝子産物は脂質生成、筋形成、軟骨形成、造血及び上皮細胞分化を含む様々な分化プロセスに影響を及ぼすことができる。概説としては、Massague, Cell 49:437, 1987(その全体が参照により本明細書中に援用される)を参照されたい。
【0048】
TGF−βファミリーのタンパク質は、初めに巨大前駆体タンパク質として合成され、その後C末端からおよそ110〜140アミノ酸の塩基性残基群でタンパク分解的切断を受ける。これらのタンパク質のC末端領域は全て構造的に関連しており、種々のファミリー成員を、それらの相同性の程度に基づいて別個のサブグループへと分類することができる。特定のサブグループ内の相同性は70%〜90%のアミノ酸配列同一性の範囲であるが、サブグループ間の相同性ははるかに低く、一般にわずか20%〜50%の範囲である。いずれの場合にも、活性種はジスルフィド結合したC末端断片の二量体であるようである。研究されているファミリー成員の大部分については、ホモ二量体種が生物学的に活性であることが見出されているが、インヒビン(Ung, et al., Nature, 321:779, 1986)及びTGF−β(Cheifetz,et al., Cell, 48:409, 1987)のような他のファミリー成員に関しては、ヘテロ二量体も検出されており、これらはそれぞれのホモ二量体とは異なる生物学的特性を有するようである。
【0049】
TGF−β遺伝子スーパーファミリーの成員としては、TGF−β3、TGF−β2、TGF−β4(ニワトリ)、TGF−β1、TGF−β5(アフリカツメガエル)、BMP−2、BMP−4、ショウジョウバエDPP、BMP−5、BMP−6、Vgr1、OP−1/BMP−7、ショウジョウバエ60A、GDF−1、アフリカツメガエルVgf、BMP−3、インヒビン−βA、インヒビン−βB、インヒビン−α及びMISが挙げられる。これらの遺伝子は、Massague, Ann. Rev. Biochem. 67:753-791, 1998(その全体が参照により本明細書中に援用される)において論考されている。
【0050】
好ましくは、TGF−β遺伝子スーパーファミリーの成員はTGF−β又はBMPである。より好ましくは、成員はTGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6又はBMP−7である。最も好ましくは、成員はヒト又はブタのTGF−β1又はBMP−2である。
【0051】
プライミング細胞療法
本発明は、プライミングした細胞を、哺乳動物においてそれを必要とする部位に投与して、コラーゲン又は硝子軟骨を産生させる、投与することを包含する。プライミングした細胞は典型的には結合組織細胞であり、軟骨細胞又は線維芽細胞を含む。
【0052】
例としては、初代軟骨細胞の集団を約3回又は4回継代した場合、その形態は典型的には線維芽細胞様軟骨細胞へと変化する。初代軟骨細胞を継代した場合、細胞はその軟骨細胞特性を失い始め、線維芽細胞様軟骨細胞の特性を持つようになる。本発明者らは、これらの線維芽細胞様軟骨細胞を、TGF−βスーパーファミリーのタンパク質等のサイトカインとインキュベートするか、又はそれにより「プライミングした」場合、細胞がその軟骨細胞特性(コラーゲンの産生を含む)を取り戻すことを発見した。
【0053】
このようなプライミングした細胞としては、TGFβ1とインキュベートした結果、II型コラーゲンを産生する軟骨細胞の状態に復帰した線維芽細胞様軟骨細胞が挙げられる。骨関節炎の治療又は軟骨の再生においてプライミングした細胞を使用することの利点は、コラーゲンの産生及びそうでなければ軟骨基質の維持のために、関節、又は脊椎の椎間板等といった軟骨を生成することが望まれる体内の他の部位へ導入するのに使用可能な軟骨細胞を作り出すことが容易であることである。
【0054】
細胞には初代細胞、又は約1回〜20回の継代を行った細胞が含まれ得るが、これらに限定されない。細胞は結合組織細胞であってもよい。細胞には形態変化(morphogenic change)を受けた細胞が含まれ得るが、この場合、プライミングによって元の細胞の特性への復帰がもたらされる。細胞としては、軟骨細胞、線維芽細胞又は線維芽細胞様軟骨細胞を挙げることができるが、これらに限定されない。プライミングは、細胞を少なくとも1時間、好ましくは1時間〜2週間、1日間〜10日間、5日間〜10日間又は5日間〜7日間サイトカインとインキュベートし、その後任意でサイトカインと細胞とを分離し、軟骨、好ましくは硝子軟骨を再生するために、プライミングした細胞を対象の軟骨欠損部位に注射することによって行うことができる。一態様では、サイトカインはTGF−βスーパーファミリーの成員であり得る。特に、サイトカインはTGF−β、特にTGF−β1であり得る。
【0055】
サイトカインは、インキュベーション混合物中に少なくとも約1ng/ml、約1ng/ml〜1000ng/ml、約1ng/ml〜750ng/ml、約1ng/ml〜500ng/ml、約1ng/ml〜400ng/ml、約1ng/ml〜300ng/ml、約1ng/ml〜250ng/ml、約1ng/ml〜200ng/ml、約1ng/ml〜150ng/ml、約1ng/ml〜100ng/ml、約1ng/ml〜75ng/ml、約1ng/ml〜50ng/ml、約10ng/ml〜500ng/ml、約10ng/ml〜400ng/ml、約10ng/ml〜300ng/ml、約10ng/ml〜250ng/ml、約10ng/ml〜200ng/ml、約10ng/ml〜150ng/ml、約10ng/ml〜100ng/ml、約10ng/ml〜75ng/ml、約10ng/ml〜50ng/ml、約15ng/ml〜500ng/ml、約15ng/ml〜400ng/ml、約15ng/ml〜300ng/ml、約15ng/ml〜250ng/ml、約15ng/ml〜200ng/ml、約15ng/ml〜150ng/ml、約15ng/ml〜100ng/ml、約15ng/ml〜75ng/ml、約15ng/ml〜50ng/ml、約20ng/ml〜500ng/ml、約20ng/ml〜400ng/ml、約20ng/ml〜300ng/ml、約20ng/ml〜250ng/ml、約20ng/ml〜200ng/ml、約20ng/ml〜150ng/ml、約20ng/ml〜100ng/ml、約20ng/ml〜75ng/ml、約20ng/ml〜50ng/ml、約25ng/ml〜500ng/ml、約25ng/ml〜400ng/ml、約25ng/ml〜300ng/ml、約25ng/ml〜250ng/ml、約25ng/ml〜200ng/ml、約25ng/ml〜150ng/ml、約25ng/ml〜100ng/ml、約25ng/ml〜75ng/ml、約25ng/ml〜50ng/ml、約30ng/ml〜500ng/ml、約30ng/ml〜400ng/ml、約30ng/ml〜300ng/ml、約30ng/ml〜250ng/ml、約30ng/ml〜200ng/ml、約30ng/ml〜150ng/ml、約30ng/ml〜100ng/ml、約30ng/ml〜75ng/ml、約30ng/ml〜50ng/ml、約35ng/ml〜500ng/ml、約35ng/ml〜400ng/ml、約35ng/ml〜300ng/ml、約35ng/ml〜250ng/ml、約35ng/ml〜200ng/ml、約35ng/ml〜150ng/ml、約35ng/ml〜100ng/ml、約35ng/ml〜75ng/ml、約35ng/ml〜50ng/ml、約40ng/ml〜500ng/ml、約40ng/ml〜400ng/ml、約40ng/ml〜300ng/ml、約40ng/ml〜250ng/ml、約40ng/ml〜200ng/ml、約40ng/ml〜150ng/ml、約40ng/ml〜100ng/ml、約40ng/ml〜75ng/ml又は約40ng/ml〜50ng/mlの量で存在し得る。
【0056】
本発明を実施する一方法は、細胞をサイトカインと或る時間にわたってインキュベートして、プライミングした細胞を作り出す、インキュベートすること、及び任意でサイトカインと細胞とを分離すること、及びプライミングした細胞を対象の結合組織欠損部位に注射することを含み得る。代替的には、細胞を対象のサイトカインとしばらくインキュベートし、その組み合わせを、サイトカインを分離することなく結合組織欠損部位に投与してもよい。
【0057】
本発明のプライミング細胞療法プロトコルにおいて足場又は骨格等の物質と、様々な外来組織とを共に移植することは可能であるが、かかる足場又は組織が本発明の注射システムに含まれないことも可能であることが理解されよう。好ましい実施形態では、本発明の体細胞療法において、本発明はプライミングした結合組織細胞の集団を関節腔に注射する簡便な方法に関する。
【0058】
当業者であれば、ヒト患者を治療するための細胞の供給源は患者自身の結合組織細胞(自己線維芽細胞又は軟骨細胞等)であり得るが、細胞の組織適合性を考慮せずに同種異系細胞及び異種細胞を使用することもできることを理解するだろう。代替的には、本発明の一実施形態では、哺乳動物宿主に適合した組織適合性を有する同種異系細胞を使用することができる。さらに詳細に説明すると、組織適合細胞を哺乳動物宿主に投与するために、ドナーと患者との組織適合性を決定する。
【0059】
意外なことに、サイトカイン処理細胞の倍加時間は非処理細胞と比べて短縮された。図2を参照されたい。同様に処理細胞の寿命が延長された。処理細胞は非処理細胞よりも長期間、より速い倍加時間で生存した。処理細胞はコラーゲンコートフラスコ及び非コートフラスコ内で8回の継代より多くの間増殖したが、非処理細胞の成長は非コラーゲンコートフラスコ内では継代7代目(p7)で停止した。しかし、FGF−TGFβ1で処理した細胞を含有するコラーゲンコートフラスコが最も強い成長を示した。継代8代目以降も細胞がその成長速度を落とす兆候はなかった。
【0060】
細胞をコラーゲンコート又は非コートフラスコから採取した後、これらの細胞をマルチウェルプレートに移してマイクロマスを作製し、これをアルシアンブルー染料で直接染色した。
【0061】
プライミングした細胞の倍加時間は、約0.8倍〜約0.2倍、約0.7倍〜約0.3倍、約0.6倍〜約0.4倍、又は約0.5倍に短縮され得る。0.5倍とは、サイトカインとインキュベートした細胞の倍加時間が、インキュベートしていない対照細胞の2倍速いことを意味する。
【0062】
この点で、TGF−β1単独、TGF−β3単独、BMP2−インスリン、又はBMP2−インスリン−T3の組み合わせ(together)、又はFGF−TGF−β1の組み合わせ等のサイトカインは、プライミングした細胞の倍加時間を有意に短縮する。コラーゲンコートフラスコ及びコラーゲン非コートフラスコはまた、或る特定のサイトカインとのインキュベーションについて有意に異なる結果をもたらす。図2を参照されたい。
【0063】
混合細胞代替療法
本発明は、細胞の混合物を哺乳動物においてそれを必要とする部位に投与して、コラーゲン又は硝子軟骨を産生させる、投与することも包含するが、この場合細胞の第1の集団に、哺乳動物における対象の部位で発現させる対象の遺伝子をトランスフェクト又は形質導入する。体遺伝子療法を試みる場合、本発明は、対象の遺伝子をトランスフェクト又は形質導入していない、対象の創傷部位若しくは病変部位、又はそうでなければ衰弱した部位で内因的に減少した、プライミングした細胞である細胞の第2の集団を加えることを提供する。
【0064】
特に、プライミングした細胞を使用する混合細胞療法アプローチにおいて、本発明は、対象のDNA配列を哺乳動物宿主の結合組織細胞に送達するex vivo技法及びin vivo技法を開示する。ex vivo技法は、in vivoで対象の遺伝子産物の発現を達成するために、標的結合組織細胞を培養すること、in vitroで対象のDNA配列、DNAベクター又は他の送達ビヒクルを結合組織細胞にトランスフェクト又は形質導入すること、続いて改変した結合組織細胞を哺乳動物宿主の標的関節に移植することを含む。
【0065】
本発明の遺伝子療法プロトコルにおいて足場又は骨格等の物質と、様々な外来組織とを共に移植することは可能であるが、かかる足場又は組織が本発明の注射システムに含まれないことも可能であることが理解されよう。好ましい実施形態では、細胞媒介遺伝子療法又は体細胞療法において、本発明は外因性TGFスーパーファミリータンパク質を関節腔において発現させるために、トランスフェクト又は形質導入した結合組織細胞の集団を関節腔に注射する簡便な方法に関する。
【0066】
本明細書全体を通して開示される、プライミングした細胞を使用する混合細胞アプローチを用いて結合組織障害を治療する或るex vivo方法では、初めにタンパク質又は生物学的に活性なその断片をコードするDNA配列を含有する、組み換えウイルスベクター又はプラスミドベクターを生成することを含む。次いで、この組み換えベクターを用いて、in vitroで培養した結合組織細胞の集団に感染又はトランスフェクトさせ、ベクターを含有する結合組織細胞の集団を得る。次いで、これらの結合組織細胞を哺乳動物宿主の標的関節腔にプライミングした結合組織細胞との混合物として移植するか、又は関節腔に別個に移植して関節内で混合物にして、関節腔内でのタンパク質又はタンパク質断片の続く発現を行う。対象のこのDNA配列の発現は、結合組織障害に関連する少なくとも1つの有害な関節病変を実質的に減少させる上で有用である。
【0067】
混合細胞アプローチにおいて、遺伝子をトランスフェクトした細胞の場合、本発明の方法は、その遺伝子として、形質転換成長因子βスーパーファミリーの成員又は生物学的に活性なその誘導体若しくは断片、及び選択可能なマーカー又は生物学的に活性なその誘導体若しくは断片をコードすることが可能な遺伝子を利用することを含む。
【0068】
本発明のさらなる実施形態は、遺伝子として、形質転換成長因子βスーパーファミリーの少なくとも1つの成員又は生物学的に活性なその誘導体若しくは断片をコードすることが可能な遺伝子を利用すること、及びベクターとして、送達時に、利用される送達方法にかかわらず、標的細胞又は組織内で安定に維持することが可能な当業者に既知の任意のDNAプラスミドベクターを利用することを含む。
【0069】
本発明の別の実施形態は、哺乳動物宿主の治療に使用される、産物をコードする少なくとも1つの遺伝子を、結合組織の少なくとも1つの細胞に導入する方法を提供する。この方法は、産物をコードする遺伝子を結合組織細胞に導入するために非ウイルス手段を利用することを含む。より具体的には、この方法はリポソーム封入、リン酸カルシウム共沈、エレクトロポレーション又はDEAE−デキストラン媒介を含み、遺伝子として、形質転換成長因子スーパーファミリーの成員又は生物学的に活性なその誘導体若しくは断片、及び選択可能なマーカー又は生物学的に活性なその誘導体若しくは断片をコードすることが可能な遺伝子を利用することを含む。
【0070】
本発明の別の実施形態は、哺乳動物宿主の治療に使用される、産物をコードする少なくとも1つの遺伝子を、結合組織の少なくとも1つの細胞に導入するさらなる方法を提供する。このさらなる方法は、ウイルスを利用する生物学的手段を利用して、DNAベクター分子を標的細胞又は組織に送達することを含む。好ましくは、ウイルスは偽ウイルスであり、そのゲノムは偽ウイルスが送達され、標的細胞内で安定に維持されることのみが可能であり、標的細胞又は組織内で複製する能力を保持しないように改変されている。改変したウイルスゲノムは、ウイルスゲノムが、標的細胞又は組織内で発現される対象の異種遺伝子を含有するDNAベクター分子として働くように、組み換えDNA技法によりさらに操作される。
【0071】
本発明の別の好ましい方法は、TGF−βスーパーファミリー遺伝子を、プライミングした細胞と共にレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター又は単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターの使用によって哺乳動物宿主の結合組織に直接in vivo送達することを含む。つまり、機能性TGF−β若しくはBMPタンパク質又はタンパク質断片をコードする対象のDNA配列を、それぞれのウイルスベクターにサブクローニングする。次いで、TGF−β又はBMPを含有するこの組み換えウイルスを適切な力価まで成長させて、関節腔に、好ましくは関節内注射によって注入する(directed into)。
【0072】
DNA分子を関節の標的結合組織に提示する(presenting)方法としては、カチオン性リポソームへのDNA分子の封入、レトロウイルスベクター若しくはプラスミドベクターへの対象のDNA配列のサブクローニング、又は関節へのDNA分子自体の直接注射が挙げられるが、これらに限定されない。DNA分子は、膝関節への提示の形態にかかわらず、組み換えウイルスDNAベクター分子又は組み換えDNAプラスミドベクター分子のいずれかであるDNAベクター分子として提示されるのが好ましい。対象の異種遺伝子の発現は、異種遺伝子のコード領域の直接上流に、真核細胞において活性を有するプロモーター断片を挿入することによって確実にもたらされる。当業者は、結合組織へのDNA分子の侵入に続く適切なレベルの発現を確実にもたらすために、ベクター構築の既知の戦略及び技法を利用することができる。
【0073】
好ましい実施形態では、プライミングしていない線維芽細胞及び軟骨細胞を、プライミングした細胞と共に遺伝子療法用の送達システムとしてその後利用するために、in vitroで培養する。出願人らが開示される特定の結合組織の使用に制限されていないことが明らかである。他の組織供給源をin vitro培養技法に利用することが可能であり得る。本発明の遺伝子又はサイトカインを使用する方法は、予防的にも、骨関節炎の治療的治療及び創傷治癒にも利用することができる。本発明が膝関節のみを治療する予防的又は治療的用途に限定されないことも明らかである。本発明を、損傷を受けやすい(susceptible)任意の関節、又は軟骨の断裂若しくは分解によって引き起こされる傷害に起因する任意の損傷において骨関節炎を治療するために、予防的又は治療的に利用することが可能であり得る。
【0074】
本発明のさらなる実施形態では、プライミングした細胞を関節腔に投与する前に貯蔵する。さらに、トランスフェクト又は形質導入した細胞を単独で貯蔵しても、又は混合物を貯蔵してもよい(必ずしも同時とは限らない)。また、貯蔵期間は同じ期間である必要はない。したがって、別個に貯蔵した細胞を注射前に混合してもよい。代替的には、細胞を貯蔵し、別個に注射して、関節腔内で細胞の混合物を形成してもよい。当業者には、これらの細胞を液体窒素中の約10%DMSOの組成物、又は同等の貯蔵媒体等(これらに限定されない)の凍結保存剤中で凍結して貯蔵してもよいことが理解されるだろう。
【0075】
結合組織は治療標的とすることが困難な組織(organ)である。当該技術分野で既知の薬物送達の静脈内経路及び経口経路は、これらの結合組織へのアクセスが不十分であり、哺乳動物宿主の体を治療薬に全身的に曝露するという欠点を有する。より具体的には、関節へのタンパク質の既知の関節内注射は、関節への直接的なアクセスをもたらす。しかしながら、封入タンパク質の形態で注射された薬物の大半は、短い関節内半減期を有する。本発明は、哺乳動物宿主の結合組織にプライミングした細胞(軟骨細胞又は線維芽細胞、及び/又は哺乳動物宿主の治療に使用することのできるタンパク質をコードする遺伝子を含み得る)を導入することによってこれらの問題を解決する。抗関節炎特性を有するタンパク質をコードする遺伝子を使用することができる。
【0076】
プライミングした細胞を、1つ又は複数の関節の軟骨の破壊及び最終的な減少(loss)によって引き起こされる、関節炎の一種である骨関節炎の治療に使用することができる。変性性関節炎又は骨関節炎又は任意の軟骨損傷が、足場又は任意の他の三次元構造等の様々な物理器械を伴わずに、プライミングした細胞を関節に注射するだけで治癒することができるのであれば、患者を大手術を行うことなく、都合よく治療することができる。
【0077】
椎間板
プライミングした細胞は椎間板の再生に使用することもできる。椎間板は脊柱の長さの4分の1を占める。環椎(C1)、軸椎(C2)及び尾骨の間には椎間板はない。椎間板は血管性ではなく、したがって必要な栄養の拡散を終板に依存する。終板の軟骨層は椎間板を決まった部位に固定する。
【0078】
椎間板は椎骨、脳及び他の構造(すなわち神経)を保護する脊椎の緩衝システムとして働く線維軟骨性のクッションである。椎間板は一部の椎骨運動(伸展及び屈曲)を可能にする。個々の椎間板の運動は非常に限られているが、幾つかの椎間板の力が合わさると相当な運動が可能である。
【0079】
椎間板は線維輪及び髄核からなる。線維輪は薄層で構成される強いラジアルタイヤ様構造であり、同心円状のコラーゲン線維のシートが椎骨終板に結合する。シートは様々な角度で配向している。線維輪は髄核を取り囲んでいる。
【0080】
線維輪及び髄核はどちらも水、コラーゲン及びプロテオグリカン(PG)からなるが、流体(水及びPG)の量は髄核で最大である。PG分子は水を引き寄せ、保持するために重要である。髄核は圧迫に抵抗する水和したゲル状物質を含有する。髄核中の水分量は活動に応じて一日中変化する。年齢と共に髄核が脱水し始め、それにより衝撃を吸収するその能力が制限される。線維輪は加齢と共に衰え、断裂し始める。これは人によっては痛みを生じないが、その一方又は両方が慢性痛を生じる場合もある。
【0081】
脱水した髄核が衝撃を吸収することができないことによる痛みは、軸性疼痛又は椎間板腔疼痛(disc space pain)と呼ばれる。髄核の漸進的な脱水は一般に、変性椎間板疾患と称される。線維輪が傷害又は老化プロセスによって断裂すると、髄核が断裂を通って突出し始める可能性がある。これは椎間板ヘルニアと呼ばれる。主要な脊髄神経が、脊椎の全体に沿って、各々の椎間板の後方近くから種々の器官、組織、四肢等に向かって伸びている。脱出した椎間板がこれらの神経を圧迫し(神経圧迫(pinched nerve))、放散痛、しびれ、刺痛並びに運動の強さ及び/又は範囲の減少を引き起こすのはよくあることである。また、炎症性タンパク質を含有する髄核内のゲルが神経と接触することによっても激しい痛みが生じ得る。神経性の痛みは神経根痛と呼ばれる。
【0082】
脱出した椎間板には多くの呼び名があり、これらは医療専門家によって異なる内容を意味し得る。椎間板滑脱(slipped disc)、椎間板破裂(ruptured disc)又は椎間板膨出(bulging disc)は全て同じ病状を意味し得る。近接する椎骨への椎間板の突出はシュモール結節として知られている。
【0083】
以下の実施例は本発明を説明する目的で与えられるが、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0084】
実施例1−プライミングした軟骨細胞の調製
実施例1.1−細胞培養及び処理
この研究に使用した細胞は、in vitroで長期間培養した初代ヒト軟骨細胞に由来するものであった。これらの細胞は、その起源にかかわらず、線維芽細胞の特徴を示す形態及び表現型をとっていた。実験はおよそ継代7代目の培養物を用いて行った。細胞を単層及びマイクロマスという2つの異なる培養フォーマットで播種した。培地は10%ウシ胎仔血清(Lonza)及び1%L−グルタミン(Lonza)を添加した、4.5g/Lのグルコースを含むDMEM(Lonza)からなるものであった。細胞は処理期間中、37℃、5%CO環境下でインキュベートした。細胞を様々な長さのインキュベーション時間中、複数の濃度のTGF−β1(R&D Systems)に、培養プロセスの異なる時点で曝露した。
【0085】
実施例1.2−単層培養
軟骨細胞を6ウェルコラーゲンコートプレート(BioCoat、BD Biosciences)に5×10細胞/ウェルで播種した。細胞を播種前に6時間の間、100ng/mLの濃度のTGF−β1でプライミングするか、又は研究期間中、1ng/mLの濃度のTGF−β1とインキュベートした。これら2つの処理に加えて、TGF−β1産生細胞とヒト軟骨細胞との共培養物を1:3の比率で調製し、5×10細胞/ウェルで播種し、同様に3週間の研究期間で試験した。細胞はRNA調製及び染色のために毎週採取した。
【0086】
より短い1週間の研究も行った。軟骨細胞をコラーゲンコート6ウェルプレートの各々のウェルに3×10細胞/cmで播種した。4つの処理群に24時間、48時間、72時間、及び36時間間隔で2回という異なる時点でTGF−β1の添加を行った後、1週間の研究の終了時に細胞を採取した。
【0087】
実施例1.3−マイクロマス培養
細胞懸濁液を15μLの液滴(droplet)中に細胞3×10個という播種密度で調製した。細胞液滴を24ウェルコラーゲンコートプレート(BioCoat)のウェルの中央に置いた。細胞マスを37℃で1.5時間インキュベートし、マスが定着した時点で1mLの完全媒体を補充した。細胞を6時間又は18時間の間、10ng/mL又は50ng/mLのTGF−β1で処理することによってプライミングした後、マイクロマスを播種した。これら4つの処理群に加えて、2つの軟骨細胞の群を、1ng/mL又は10ng/mLの濃度のTGF−β1に研究期間中曝露した。最終の実験群は、3:1の比率のTGF−β1産生細胞と非処理軟骨細胞とからなるものであった。マスを最大で4週間培養した。
【0088】
実施例1.4−アルシアンブルー染色
アルシアンブルー(AB)(アルシアンブルー8GX、イングレインブルー1及びC.I. 74240とも呼ばれる)は、銅を含有するフタロシアニン色素である。この色素は酸性ムコ多糖類及びグリコサミノグリカンを染色するものであり、それらに対し最も広く使用されるカチオン性色素の1つである。染色部分は青色から青みがかった緑色となる。これはH&E染色法及びワンギーソン染色法と組み合わせることができる。この色素は、負に帯電した高分子と静電気力によって結合する。結合した色素の洗浄に使用される電解質の濃度の漸増によって、中性ムコ多糖類、硫酸ムコ多糖類及びリン酸ムコ多糖類が選択的に同定される。
【0089】
毎週の細胞採取に並行してアルシアンブルー染色を行い、培養中のGAG蓄積レベルを決定した。全培地をウェルから吸引した後、4mLのPBS/ウェル(Cellgro、Mediatech)で2回洗浄した。次いで、培養物を24ウェルプレートについては500ul/ウェル、6ウェルプレートについては800ul/ウェルの10%ホルマリン(Sigma)で15分間固定した。1ml〜2mLの濾過したアルシアンブルー8−GX(Sigma、3%酢酸(pH1.0)中1.0%)を各々のウェルに添加し、室温で一晩染色した。染色期間に続いて、各々のウェルを2mL/ウェル〜4mL/ウェルの3%酢酸で2回すすぎ、2mL/ウェル〜4mL/ウェルのPBSで2回すすいだ(各洗浄の間に完全に吸引した)。細胞を染色度及び細胞形態について観察した。結果を図1に示す。
【0090】
実施例1.5−RT−PCR
TRIzol(Invitrogen)を使用するフェノール−クロロホルム抽出手順を用いて毎週の細胞採取物からRNAを単離した。単離RNAをSuperScript(商標)逆転写酵素(Invitrogen)を用いて逆転写し、各々の細胞試料についてcDNA構築物を得た。IDTによって合成された以下のプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応を行った:
コラーゲンIIα1フォワードプライマー 5’−GACCTCGTGGCAGAGATGGAG-3’(配列番号1)、
コラーゲンIIα1リバースプライマー 5’−AACCTCTGTGACCTTTGACACCAG−3’(配列番号2)、
コラーゲンIα1フォワードプライマー 5’−TGTGGCCCAGAAGAACTGGTACAT−3’(配列番号3)、
コラーゲンIα1リバースプライマー 5’−AAAGGAGCAGAAAGGGCAGCATTG−3’(配列番号4)、
アグレカンフォワードプライマー 5’−TTCAGTGGCCTACCAAGTGGCATA−3’(配列番号5)、
アグレカンリバースプライマー 5’−ACATCACTGGTGGTGGTGGATTCT−3’(配列番号6)、
βカテニンフォワードプライマー 5’−TGGCCATCTTTAAGTCTGGAGGCA−3’(配列番号7)、
βカテニンリバースプライマー 5’−GATTTGCGGGACAAAGGGCAAGAT−3’(配列番号8)。
【0091】
以下の条件をサーモサイクラーでのPCRに使用した:95℃で2分間の初期変性、続いて95℃で45秒間の変性、62.5℃で1分間のアニーリング、及び72℃で1分間の伸長を35サイクル。全てのサイクルの終了時に、72℃で5分間の最終の伸長期間を設定した。最終PCR産物のゲル電気泳動を対照のβ−アクチンに対して行い、TGF−β1処理軟骨細胞に関する表現型遺伝子の比較レベルを決定した。
【0092】
実施例2−プライミングした軟骨細胞のさらなる調製
実施例2.1−単層細胞培養
バイアル2本の継代5代目の(p5)hChonJ軟骨細胞(2×10細胞/バイアル)を融解し、同数のコラーゲンコートT−75フラスコ及び非コートT−75フラスコに、5×10細胞/cmの細胞播種密度で播種した。細胞を初めに、10%FBS(Lonza、カタログ番号14−507F)及び1%L−グルタミン(Lonza、カタログ番号17−605E)を添加したDMEM完全培地(Lonza、カタログ番号)で培養した。
【0093】
実施例2.2−サイトカイン処理
7つの異なるサイトカイン処理群をこの研究に使用した。細胞播種の24時間後、全てのフラスコ中の培地を12mLのサイトカインを添加した培地に置き換えた。サイトカイン処理群(表1)は以下の通りであった:50ng/mLのTGFβ1(eBioscience又はPromogen);200ng/mLのBMP−2(eBioscience)及び15μg/mLのインスリン(Sigma Aldrich);200ng/mLのBMP−2(eBioscience)、15μg/mLのインスリン(Sigma Aldrich)及び100nM 3,3’,5−トリヨード−L−サイロニン(T3)(Sigma Aldrich);10ng/mLのFGF(eBioscience)及びTGFβ1(eBioscience又はPromogen);並びに20ng/mLのTGFβ3(Sigma Aldrich)。コラーゲンコート細胞の2本のT−75フラスコ及び2本の非コートT−75フラスコを陰性処理対照(12mLの完全DMEM)に使用した。各々の処理群の細胞培地は3日〜4日毎に置き換えた。サイトカイン処理した二次元培養における細胞成長速度を同様に図2に示す。各々のサイトカイン処理群から、T−75フラスコ中で培養した細胞をコンフルエンスで採取し、計数して、最初の細胞播種数から細胞成長速度を求めた。
【0094】
比較サイトカイン研究の処理条件
【表1】

表中英語は、Cytokine Groups:サイトカイン群、Abbreviation:略称、Components:成分、Concentration:濃度、Insulin:インスリン、Negative Control:陰性対照を意味する。
【0095】
サイトカイン処理した二次元培養における細胞形態を図5に示す。軟骨細胞成長のデジタル画像を、細胞がおよそ30%〜50%のコンフルエンスを示す時点(播種の3日後)で撮影した。細胞分布、細胞の大きさ及び形態の観察結果はサイトカイン処理群によって異なる。画像は100×の倍率で撮影した。
【0096】
サイトカイン処理した二次元培養における細胞形態を図6に示す。軟骨細胞成長のデジタル画像を、細胞がおよそ80%〜100%のコンフルエンスを示す時点(播種の8日後)で(RNA調製、タンパク質抽出及びマイクロマス培養のために細胞を採取する直前に)撮影した。画像は100×の倍率で撮影した。
【0097】
実施例2.3−二次単層拡大培養のための継代培養
コンフルエンスに達した時点で、実施例2.2から得た細胞の一部を2mL/フラスコの1×トリプシン−ベルセン(EDTA)で、37℃で3分間〜4分間処理した。細胞を完全な剥離を確認するために100×の顕微鏡下で検査した。8mLの完全培地を各々のフラスコに添加して、トリプシンを不活性化した。30μLの細胞を全細胞懸濁液から取り出し、細胞計数のために30μLのトリパンブルーに添加した。細胞濃度を算出した後、2.25×10個の細胞を、二次拡大培養のために最終細胞播種密度3×10細胞/cmで各々のフラスコに添加した。実施例2.2で得られた単層培養物中での結合組織細胞に対するサイトカインの効果を確認するために、継代培養細胞に実施例2.2と同じ細胞のサイトカイン処理を行った(データは示さない)。
【0098】
実施例2.4−マイクロマス培養フォーマットでの細胞の播種
実施例2.2で得られた細胞の一部を、実施例2.2で説明した、先のサイトカイン処理スキームに従って24ウェルコラーゲンコート又は非コート培養プレートに播種した。各々の細胞懸濁液についてマイクロマスの所定数を割り当てるが、10〜24マイクロマスと決定した。1つのマイクロマス当たり1.5×10個の細胞が算出され、この量を細胞懸濁液から取り出し、未使用の遠心分離管に入れた。細胞を1500rpm、10℃で7分間遠心分離した。上清を吸引し、残った細胞ペレットを完全培地中に20μL/マイクロマスの量で再懸濁した。マイクロマスを20μLの量(約1.5×10個の細胞)で、ウェル表面に直に直接ピペットで移し、37℃、5%COでおよそ1時間インキュベートした。1時間のインキュベーション期間の後、500μLのサイトカイン馴化培地又は陰性対照完全培地を各々のウェルに添加した。マイクロマスを7日間培養した後、RNA及びタンパク質の含量測定、並びにアルシアンブルー染色、並びにその後のGAG定量化のために細胞を採取した。
【0099】
マイクロマス形成を図3に示す。マイクロマスをマス20μl(細胞1.5×10個)の量、培地の存在なしに培養プレートの表面上に直接プレーティングした。細胞を適切な細胞接着が起こるように1.5時間インキュベートし、0.5mL/ウェルの完全成長培地を添加した。細胞を3日目〜4日目に成長培地を1回完全に交換して7日間培養した。7日間のインキュベーション期間の終了時に、マイクロマスを1ウェル当たり1mLのdPBSで2回洗浄し、10%ホルマリン溶液で30分間固定した。固定溶液を除去し、マスを500uL/ウェルの1.0%アルシアンブルー8GXの1N HCl溶液を用いて4℃で一晩染色した。アルシアンブルー染色によって、種々のサイトカイン条件に曝した軟骨細胞のマイクロマス培養におけるグリコサミノグリカン(GAG)の分布が示される。
【0100】
実施例2.5−細胞懸濁液のRNA調製及びタンパク質抽出
実施例2.2で得られた細胞の残りの細胞懸濁液量を等分し、その測定量を用いて調製量当たりの細胞数を算出した。細胞調製物懸濁液を1500rpm、10℃で7分間遠心分離した。ペレットを4mLのPBS培地で洗浄し、再度遠心分離した。最終洗液量(wash volume)を吸引し、細胞ペレットをRNA及びタンパク質を抽出する目的に使用した。RNA調製については、標準的なフェノール−クロロホルム抽出技法を利用した。タンパク質抽出については、RIPAバッファー(Sigma Aldrich)を用いて細胞を溶解し、液体窒素中で急速凍結した(snap frozen)。RNA調製並びにタンパク質の抽出及び解析を、実施例2.3で説明した継代培養による細胞を用いて繰り返した。
【0101】
実施例2.6−マイクロマスのRNA調製及びタンパク質抽出
1週間の培養期間の後、マイクロマス培養プレートをインキュベーターから取り出し、RNA、タンパク質及びアルシアンブルー染色について同時に処理した。各々のウェルを1ウェル当たり1mLのdPBSで静かに2回洗浄した。マイクロマスの半分は、標準的なフェノール−クロロホルム抽出を用いたRNA調製から除外した。この残りのマイクロマスをRIPA溶解バッファーを用いたタンパク質抽出に使用し、試料を液体窒素中で急速凍結し、−80℃で長期間貯蔵した。実施例2.3の継代培養細胞を用いたマイクロマス播種も行った。RNA及びタンパク質の抽出及び解析を同様にこれらのマイクロマスを用いて繰り返し、この結果により実施例2.2で得られた単層細胞を播種したマイクロマスを用いて得られた結果を確認した。
【0102】
実施例2.7−アルシアンブルー染色
1.0%アルシアンブルー−8GX染色剤を1N HCL溶液中で調製し、濾過して微粒子残屑を除去した。3つ〜4つのマイクロマスを染色目的のみに取っておいた。マイクロマスを1ウェル当たり1mLのdPBSで静かに2回洗浄した。最終洗液を各々のウェルから完全に除去した。250μL/ウェルの10%ホルマリンを添加して、各々のマイクロマスを固定し、プレートを室温で15分間〜30分間インキュベートした。固定溶液を各々のウェルから完全に吸引し、500uL/ウェルの1%アルシアンブルー−8GX染色剤を添加し、4℃で一晩インキュベートした。インキュベーション期間の後、染色液を除去し、マイクロマスを1ウェル当たり1mLのdPBSで2回洗浄した。マイクロマスのデジタル画像を撮影し、各々のウェルにおける染色の分布(distribuation)を記録した。
【0103】
実施例2.8−GAG定量化
250μL/ウェルの4M グアニジンHCl(Gu−HCl)を添加し、4℃で最低でも1時間〜18時間又は一晩インキュベートし、染色剤の完全抽出を確実に行った。100μLの溶液を各々のウェルから取り出し、560nMで観察するために96ウェルアッセイプレートに移した。100uLの4M Gu−HClをブランクとして使用した。マイクロマスのGAG定量化を図4に示す。グリコサミノグリカンの定量化は、アルシアンブルーと結合したプロテオグリカン分子のGAG鎖を沈殿させる塩酸グアニジン(Gu−HCl)の添加によって行うことができる。アルシアンブルー染色したマイクロマスを、250μl/ウェルの4M Gu−HClとインキュベートした。染色剤の大部分がマイクロマスから抽出された時点で溶液を除去し、光学密度を560nmで測定した。
【0104】
実施例2.9−遺伝子発現解析
相補的DNA(cDNA)を、プライマーとしてオリゴdTを用いるmRNA(RNA濃度に応じて0.5μg〜1μg)の逆転写によって得た。逆転写反応はサーモサイクラー内で20μLの量で行った。幾つかの軟骨型(chondrotypic)遺伝子(表2)の発現レベルを解析した。単層細胞及びマイクロマス細胞の両方、並びに継代培養した単層細胞及び継代培養細胞に由来するマイクロマスについて遺伝子発現解析を行ったところ、結果は相互に確認し合うものである。
【0105】
対象の遺伝子に使用されるプライマー
【表2】

表中英語は、GOI:対象の遺伝子、Product length:産物長、Primer ID:プライマー番号、Sequence:配列、Length:長さ、Actin:アクチン、Aggrecan:アグレカン、Seq ID No:配列番号を意味する。
【0106】
ポリメラーゼ連鎖反応は以下の条件で行った。95℃で2分間の初期変性の後、95℃で45秒間の変性、60℃で1分間のアニーリング、及び72℃で1分5秒間の伸長。これらの工程を35サイクル繰り返した。35サイクルの終了時に、72℃で5分間の最終の伸長を行った。ゲル電気泳動を、各々の反応試料4μLを1μLのゲルローディングバッファーと共に用い、1.5%アガロースゲル上で100Vで30分間泳動することで行った。ゲルを紫外線下で可視化して、陽性バンドの存在を決定する。
【0107】
本明細書中で引用される全ての参照文献は、全体が参照により本明細書中に援用される。
【0108】
本発明の特定の実施形態を説明目的で上記に記載したが、添付の特許請求の範囲に規定される発明から離れることなく、本発明の細部に多数の変更を加えることができることは当業者には明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プライミングした結合組織細胞及び薬学的に許容可能なその担体を含む組成物。
【請求項2】
細胞が線維芽細胞、軟骨細胞又は線維芽細胞様軟骨細胞である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
細胞がヒト細胞である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
注射可能である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の組成物を含む、約−70℃〜約−196℃の温度で細胞を貯蔵する貯蔵容器。
【請求項6】
哺乳動物において標的部位で軟骨の再生を刺激する方法であって、
(i)結合組織細胞をサイトカインを含む組成物とインキュベートし、プライミングした細胞を作り出す、インキュベートすること、
(ii)任意で該サイトカインと該結合組織細胞とを分離すること、及び
(iii)治療的有効量の該プライミングした細胞を、軟骨を生成することが望まれる標的関節部位に注射することを含み、内因的に存在する形態の該結合組織細胞が該標的部位で減少しており、該標的部位での該プライミングした細胞の存在が軟骨の再生を刺激する、方法。
【請求項7】
結合組織細胞が線維芽細胞、軟骨細胞又は線維芽細胞様軟骨細胞である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
軟骨細胞が初代ヒト軟骨細胞である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
サイトカインがTGF−βスーパーファミリーに属する成員である、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
結合組織細胞を約1時間〜約40時間インキュベートする、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
サイトカインがTGF−βである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
サイトカインが少なくとも1ng/mlの量で存在する、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
発現させようとする遺伝子をトランスフェクト又は形質導入した哺乳動物細胞の第2の集団をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
混合細胞組成物であって、硝子軟骨を生成するのに有効な量で、
(a)プライミングした軟骨細胞又は線維芽細胞の第1の集団、
(b)TGF−βスーパーファミリーの成員をコードする遺伝子をトランスフェクト又は形質導入した線維芽細胞又は軟骨細胞の第2の集団、及び
(c)薬学的に許容可能なその担体を含む、組成物。
【請求項15】
前記遺伝子がTGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7又はBMP−9である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
TGF−βスーパーファミリーの成員をコードする遺伝子をトランスフェクト又は形質導入した線維芽細胞又は軟骨細胞の該第2の集団に対する、プライミングした細胞の該第1の集団の比率が約1〜20対1である、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
前記比率が約1〜10対1である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記比率が約1〜3対1である、請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
遺伝子をトランスフェクト又は形質導入した細胞の該第2の集団が、照射を受けたものである、請求項14に記載の組成物。
【請求項20】
細胞の第1の集団及び細胞の第2の集団が、同じ供給源生物に由来するものである、請求項14に記載の組成物。
【請求項21】
細胞の第1の集団及び細胞の第2の集団が、異なる供給源生物に由来するものである、請求項14に記載の組成物。
【請求項22】
混合細胞組成物を生成する方法であって、
(A)
(i)結合組織細胞をサイトカインを含む組成物とインキュベートして、プライミングした細胞の第1の集団を作り出す、インキュベートする工程、及び
(ii)任意で該サイトカインと該結合組織細胞とを分離する工程
を含む、細胞の第1の集団を作り出すこと、
(B)
(i)プロモーターと操作可能に結合した、治療用タンパク質をコードするDNA配列を含む組み換えベクターを生成する工程、
(ii)in vitroで細胞の集団に前記組み換えベクターをトランスフェクト又は形質導入して、細胞の第2の集団を作り出す、トランスフェクト又は形質導入する工程
を含む、細胞の第2の集団を作り出すこと、並びに、
(C)細胞の該第1及び第2の集団を混合し、該混合細胞組成物を得る、混合することを含む、方法。
【請求項23】
哺乳動物において標的部位で軟骨の再生を刺激する方法であって、
(A)
(i)結合組織細胞をサイトカインを含む組成物とインキュベートして、プライミングした細胞の第1の集団を作り出す、インキュベートする工程、及び
(ii)任意で該サイトカインと該結合組織細胞とを分離する工程
を含む、細胞の第1の集団を作り出すこと、
(B)
(i)プロモーターと操作可能に結合した、治療用タンパク質をコードするDNA配列を含む組み換えベクターを生成する工程、
(ii)in vitroで細胞の集団に前記組み換えベクターをトランスフェクト又は形質導入して、細胞の第2の集団を作り出す、トランスフェクト又は形質導入する工程
を含む、細胞の第2の集団を作り出すこと、並びに、
(C)治療的有効量の細胞の該第1及び第2の集団の混合物を、軟骨を生成することが望まれる標的関節部位に注射することを含み、内因的に存在する形態の該結合組織細胞が該標的部位で減少しており、該標的部位での該細胞混合物の存在が軟骨の再生を刺激する、方法。
【請求項24】
前記遺伝子がTGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6又はBMP−7である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
細胞の第1及び第2の集団が宿主レシピエントに関して同系である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
第1及び第2の集団の細胞が宿主レシピエントに関して同種異系である、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
第1及び第2の細胞の集団が宿主レシピエントに関して異種である、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記組み換えベクターがウイルスベクターである、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記組み換えベクターがプラスミドベクターである、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
前記細胞を移植の前に貯蔵する、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
前記細胞を移植の前に凍結保存剤中に貯蔵する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
骨関節炎を治療する方法であって、
(A)
(i)結合組織細胞をサイトカインを含む組成物とインキュベートして、プライミングした細胞の第1の集団を作り出す、インキュベートする工程、及び
(ii)任意で該サイトカインと該結合組織細胞とを分離する工程
を含む、細胞の第1の集団を作り出すこと、
(B)
(i)プロモーターと操作可能に結合した、治療用タンパク質をコードするDNA配列を含む組み換えベクターを生成する工程、
(ii)in vitroで細胞の集団に前記組み換えベクターをトランスフェクト又は形質導入して、細胞の第2の集団を作り出す、トランスフェクト又は形質導入する工程
を含む、細胞の第2の集団を作り出すこと、並びに、
(C)治療的有効量の細胞の該第1及び第2の集団の混合物、並びに非生物三次元構造ではない薬学的に許容可能なその担体を、哺乳動物の関節腔の軟骨を生成することが望まれる標的関節部位に注射することを含み、内因的に存在する形態の該結合組織細胞が該標的部位で減少しており、該標的部位での該細胞混合物の存在が軟骨の再生を刺激して、骨関節炎が治療される、方法。
【請求項33】
請求項14に記載の混合細胞組成物を含む、約−70℃〜約−196℃の温度で細胞を貯蔵する貯蔵容器。
【請求項34】
結合組織細胞の倍加時間を短縮する方法であって、結合組織細胞をサイトカインを含む組成物とインキュベートして、プライミングした細胞を作り出す、インキュベートすることを含む、方法。
【請求項35】
結合組織細胞が線維芽細胞、軟骨細胞又は線維芽細胞様軟骨細胞である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
軟骨細胞が初代ヒト軟骨細胞である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
サイトカインがTGF−βスーパーファミリーに属する成員である、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
細胞を該サイトカインと約1時間〜約40時間インキュベートする、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
倍加時間が対照のインキュベートしていない細胞の約半分である、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
サイトカインがFGFとTGFβ1との組み合わせである、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
組成物が3,3’,5−トリヨード−L−サイロニンをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
被験体が変性性関節炎を患っている、請求項6に記載の方法。
【請求項43】
標的部位が脊髄である、請求項6に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−509942(P2012−509942A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538703(P2011−538703)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【国際出願番号】PCT/US2009/065996
【国際公開番号】WO2010/068510
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(510252324)ティシュージーン,インク. (2)
【Fターム(参考)】