説明

プラスチゾル組成物

【課題】 プラスチゾル製造時の取扱い性に優れ、加工性が良好で、しかも成形物からの
総揮発性有機化合物(TVOC)発生量が少ないプラスチゾル組成物の提供。
【解決手段】 塩化ビニル系樹脂(A)、可塑剤(B)、粘度低減剤(C)および充填剤(D)を含有するプラスチゾル組成物において、粘度低減剤(C)が5容量%留出温度が300℃以上の重質アルキレートであるプラスチゾル組成物。その好ましい組成は、 塩
化ビニル系樹脂(A)100重量部あたり、可塑剤(B)を30重量部以上、110重量部以下、粘度低減剤(C)を0.5重量部以上、25重量部以下、および充填剤(D)を10重量部以上、500重量部以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラスチゾル組成物(以下、単に「プラスチゾル」と記すことがある)に関する。詳しくは総揮発性有機化合物(以下、「TVOC」と略記することがある)発生量が少ない成形品を与えることができる、取扱性に優れたプラスチゾル組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチゾルはペースト形成性の塩化ビニル系樹脂に可塑剤を配合して分散液としたもので、通常はこれに粘度低減剤、充填剤等を配合して用いられる。
プラスチゾルの成形・加工には、種々の方法が用いられるが、例えば、ナイフコーターやリバースロールコーター等の塗工機を用いて、プラスチゾルを基材に塗工することにより、床材や壁紙等の成形品を得ることができる。このような加工に際しては、塗工速度を速くすることが重要であり、プラスチゾルの粘度を低減することが求められる。しかしながら、可塑剤の配合量を増やすことは、プラスチゾルの粘度を下げるだけでなく、得られる成形品の剛性が低下することがあり、そのため、所望の剛性を維持しつつ、プラスチゾルの粘度を低くすることを目的として従来より常温で液状の脂肪族系、芳香族系炭化水素等を粘度低減剤としてプラスチゾルに配合することが行われている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
しかし、これらの炭化水素類は常圧下での沸点が通常260℃未満であって、若干の揮発性を有している。近年、シックハウス問題等に対処すべく、床材、壁紙等の建材からのTVOC発生を抑制することが求められているが、上記のような粘度低減剤を含有する従来のプラスチゾル組成物では、このTVOCを、求められる水準にまで低減することは困難である。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、粘度低減剤(C)として、炭素原子数20以上、40以下のα−オレフィンを用いたプラスチゾル組成物を発明し、特願2004−45221として提案した。
しかしながら、炭素原子数20以上、40以下のα−オレフィンは常温で固体であり、事前に加温する等の処理の必要が生ずる場合があり、取扱い性に関して、更なる改良が求められていた。
【特許文献1】特開平6−25496号公報、特許請求の範囲、段落[0007]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、プラスチゾル製造時の取扱い性に優れ、かつ成形物からのTVOC発生量が少ないプラスチゾル組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記問題を解決することを目的として鋭意検討した結果、5容量%留出温度が300℃以上の重質アルキレートを配合したプラスチゾルが、プラスチゾル製造時の取扱い性が良好で、粘度も低く、かつTVOCの少ない成形物を与えることを見出し、本発明に到達した。
即ち本発明の要旨は、塩化ビニル系樹脂(A)、可塑剤(B)、粘度低減剤(C)および充填剤(D)を含有するプラスチゾル組成物において、粘度低減剤(C)が5容量%留出温度が300℃以上の重質アルキレート(以下「重質アルキレートSH」と略記する)又はその誘導体であることを特徴とするプラスチゾル組成物に存している。
【0006】
本発明の要旨は、塩化ビニル系樹脂(A)100重量部あたり、可塑剤(B)を30重量部以上、110重量部以下、粘度低減剤(C)を0.5重量部以上、25重量部以下、および充填剤(D)を10重量部以上、500重量部以下含有してなる上記のプラスチゾル組成物にも存している。
また、本発明の別の要旨は、可塑剤(B)と粘度低減剤(C)との含有重量比(B/C)が、100/2ないし100/40である上記のプラスチゾル組成物にも存しており、更に粘度低減剤(C)の90容量%留出温度が370℃以下の重質アルキレートSHである上記のプラスチゾル組成物にも存している。
更に、本発明の他の要旨は、粘度低減剤(C)として用いる重質アルキレートSHの誘導体が5容量%留出温度が300℃以上の重質アルキレートを水素添加改質したものであるプラスチゾル組成物、粘度低減剤(C)として重質アルキレートに加えてアルキルベンゼン及び/又は炭素原子数10以上40以下のα−オレフィンを用いるプラスチゾル組成物にも存している。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るプラスチゾル組成物は、プラスチゾル製造時の取扱い性に優れ、かつ粘度が低くて成形時の取扱いが容易であり、TVOC発生量が少ない、優れた成形品を与える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明において用いられる塩化ビニル系樹脂(A)は、塩化ビニル系重合体からなる樹脂、又は塩化ビニル系重合体を主成分とする樹脂である。
上記の塩化ビニル系重合体としては、塩化ビニルの単独重合体や、塩化ビニルを主成分とする共重合体等が挙げられる。この共重合体を構成する塩化ビニル以外の共重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステル類、酢酸ビニル、塩化ビニリデン等があげられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」は、「アクリル又はメタクリル」を意味する。
【0009】
本発明においては、塩化ビニル系樹脂として、ペースト用塩化ビニル系樹脂が用いられるが、その一部を混合用塩化ビニル系樹脂(いわゆるブレンド用樹脂)で置き換えてもよい。
【0010】
このペースト用塩化ビニル系樹脂としては、粒径が0.05〜50μm、特に0.2〜35μmのものが好ましい。粒径が小さすぎると、製造するのが困難となったり、得られるプラスチゾルの粘度が高くなったりする場合があり、逆に、その粒径が大きすぎると、プラスチゾルを基材上に塗工したとき、塗布面にざらつきが生じる場合がある。
このようなペースト用塩化ビニル系樹脂は、乳化重合、微細懸濁重合等によって製造することができる。
【0011】
上記乳化重合は、水又は水を主成分としてこれに水溶性有機溶媒等を混合した水性媒体中に、塩化ビニルを主成分とする単量体や、乳化剤、水溶性重合開始剤等を加えて重合する方法である。
【0012】
上記微細懸濁重合は、同様の水性媒体中に、塩化ビニルを主成分とする単量体や、乳化剤、油溶性重合開始剤等を加えた上で、機械的剪断力を加えて微分散、均質化した後、重合する方法である。
【0013】
また、上記の乳化剤、水溶性重合開始剤、油溶性重合開始剤としては、一般の乳化重合や懸濁重合に使用されているものを、特に制限なく使用することができる。
【0014】
混合用塩化ビニル系樹脂の平均粒子径は、10〜100μmがよく、20〜50μmが好ましい。粒径が小さすぎると、粘度を低下させる効果が小さくなり、大きすぎると、プラスチゾルを基材上に塗工したとき、塗布面にざらつきが生じる場合がある。
このような混合用塩化ビニル系樹脂は、一般に、特殊懸濁重合法によって製造される。具体的には、塩化ビニルをラインミキサーや高速攪拌機等により、水中に細かく分散させ、これにゼラチンやヒドロキシプロピルメチルセルロース等の懸濁剤、及び必要に応じて乳化剤を加え、さらに油溶性のラジカル発生剤を加えて懸濁重合することにより製造される。
【0015】
本発明に用いる可塑剤(B)としては、一般に塩化ビニル系樹脂用可塑剤として用いられているものを、特に制限なく使用することができる。通常はエステル系可塑剤が用いられ、例えば、フタル酸エステル類、アジピン酸エステル類、トリメット酸エステル類等、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0016】
上記フタル酸エステル類の具体例としては、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジイソノニルフタレート等があげられる。また、上記アジピン酸エステル類としては、ジイソノニルアジペート等があげられる。さらに、上記トリメット酸エステル類としては、トリイソノニルトリメリテート等があげられる。
【0017】
本発明のプラスチゾル組成物における、可塑剤(B)の含有量は塩化ビニル系樹脂(A)100重量部に対して、通常30〜110重量部、好ましくは40〜80重量部である。この量が少なすぎると、プラスチゾルを塗工する時の粘度が高くなって、加工性が悪化する傾向がある。逆に、多すぎると、プラスチゾルを成形して得られる製品が過度に軟化することとなる。
【0018】
本発明に用いる粘度低減剤(C)は、5容量%留出温度(JIS K2254による)が300℃以上の重質アルキレート又はその誘導体である。
一般に重質アルキレートは、ジアルキルベンゼン類、ポリアルキルベンゼン類を主成分とする芳香族化合物であり、一般に洗浄剤原料アルキルベンゼンの製造に際してアルキルベンゼンよりも高沸点の副生物として得られる。
又、アルキル化反応原料として用いられるオレフィン中にジオレフィンを含有している場合には重質アルキレート中にジフェニルアルカン類をも含有する。
【0019】
この様な重質アルキレートは、絶縁油、潤滑油、真空ポンプ油、熱媒体油、ゴムの伸展
油、高沸点溶媒、冷凍機油としての使用に適していることが知られている
洗浄剤原料として大量に消費されているアルキルベンゼンとしては、一般にプロピレン等の低級オレフィンオリゴマー、n−パラフィンを脱水素したオレフィン、n−パラフィンを塩素化した後脱塩酸して得られるオレフィンや、ワックスクラッキング、エチレンの低重合によるα−オレフィン等のオレフィンをアルキル化触媒によりベンゼンと反応させることによつて製造されるものが挙げられる。
【0020】
アルキル化反応は弗化水素の存在下ベンゼンとオレフィンのモル比1以上、好ましくは3〜10の範囲、弗化水素対ハイドロカーボンの容積比0.2〜10、好ましくは0.5〜2の範囲、反応温度−20〜95℃、好ましくは15〜70℃の範囲、反応時間5〜60分間、好ましくは10〜30分間の範囲で行なわれるのが通常の方法である。
アルキル化反応後の反応液はハイドロカーボン相と弗化水素触媒相に分離される。相分離は小さい液線速度で、滞留時間が少なくとも90秒以上、好ましくは15分間以上の触媒分離槽内へ反応液を通すことにより行なわれる。洗浄剤原料アルキルベンゼンの品質を更に秀れたものにする為に、触媒相を分離したハイドロカーボン相を再度新しい弗化水素と接触処理させてもよい。
触媒相を分離したハイドロカーボン相は、蒸留に供され、少量溶解している触媒及び過剰に用いたベンゼンが回収される。
【0021】
その後、中間留分として短鎖アルキルベンゼンおよび,またはn−パラフィンが蒸留して分離され、更に蒸留をして塔頂より洗浄剤原料アルキルベンゼンを、塔底より重質アルキレートを得る。中間留分と洗浄剤原料アルキルベンゼンの蒸留は通常減圧下に行なわれる。
弗化水素以外の触媒を用いて行なうアルキルベンゼンの製造方法としては、n−パラフィンを塩素化した塩素化パラフィンを塩化アルミニウムを触媒としてベンゼンと反応させる方法、α−オレフィンを第一の酸性触媒の存在下にて異性化して異性化オレフィンを生成させた後、酸素を含まない芳香族炭化水素を第二の固体酸性触媒の存在下にて異性化オレフィンでアルキル化する方法、等が知られている。
【0022】
本発明では、公知のいかなる製法および原料を用いて製造されたアルキルベンゼンとともに得られる重質アルキレートであっても用いることが出来る。
このようにして得られる重質アルキレートをそのまま、又は必要に応じて蒸留等の留分分離操作を行って、本発明に用いる5容量%留出温度が300℃以上の重質アルキレートSHを得ることができる。重質アルキレートSHの5容量%留出温度としては好ましくは310℃以上、より好ましくは320℃以上である。またその流動点(JIS K2269による)は−20℃以下、好ましくは−30℃以下、より好ましくは−40℃以下を示す。
【0023】
一般的に有機化合物は5容量%留出温度または沸点の上昇と共に流動点または融点も上昇する傾向にあり、高沸点かつ常温で液状、具体的には5容量%留出温度が300℃以上かつ流動点0℃以下を示す化合物は稀有である。粘度低減剤として従来より知られている、グリコールエーテル、α−オレフィン、脂肪酸エステル等、いずれも、高沸点かつ常温で液状を両立するのは困難である。
弗化水素を触媒として用いて得られる重質アルキレートの色相は、用いた原料オレフィンまたはアルキル化条件によって異なるが、一般にハーゼン色数で100〜1000の範囲にある。
【0024】
上述の色相が、プラスチゾル成形品の色相に影響する場合、該重質アルキレートを再度蒸留し、塔頂留分を回収して、塔底高沸点留分を除去することにより、5容量%留出温度を低下させることなく、重質アルキレートの色相を改良することが出来る。
これを本発明で用いる重質アルキレートSHに適用する場合の蒸留方法としては、公知の常圧蒸留、減圧蒸留等の方法を用いることが出来る。高沸点留分の除去量は、目標とする色相に応じて任意に設定することが出来るが、好ましくは40%、より好ましくは60%以上除去することが色相改良に効果的である。高沸点留分の除去に伴い、得られた塔頂留分の90容量%留出温度は、好ましくは370℃以下、より好ましくは360℃以下となる。
【0025】
また、特許第2552712号に示されている方法に従って重質アルキレートSHを水素添加改質して得られる淡色な重質アルキレートSHの誘導体も、本発明の粘度低減剤 (C)として好適に用いることが出来る。
更に、5容量%留出温度が300℃以上かつ流動点0℃以下を満たす範囲内において、重質アルキレートSHに対して、洗浄剤原料アルキルベンゼンを例えば混合物中の35〜70重量%程度添加して、色相を改良することも出来る。
一方、重質アルキレートSHは、従来の粘度低減剤と併用して流動点改良剤として用いることも出来る。たとえば、炭素原子数10以上、40以下、特に炭素数16〜18程度のα−オレフィンは、沸点範囲が比較的高く、従来の低沸点粘度低減剤に比しTVOC低減に有用な化合物と考えられるが、流動点が高く、低温時には凍結の懸念があり、使用しにくいという欠点があった。こうしたα−オレフィンと重質アルキレートSHを併用することにより、粘度低減剤としての性能を損なうことなく、α−オレフィンの流動点を低下することが可能である。重質アルキレートSHの使用量は混合物中の10〜80重量%、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは30〜80重量%である。
【0026】
粘度低減剤(C)のプラスチゾル組成物中の含有量は、塩化ビニル系樹脂(A)100重量部あたり、0.5重量部以上、25重量部以下であるのが好ましく、1重量部以上、20重量部以下がより好ましい。この量が0.5重量部未満では粘度を低下させる効果が不十分となることがあり、一方、25重量部を超えると、逆に粘度が上昇したり、得られる成形品からのブリードが起こったりすることがある。
【0027】
また、粘度低減剤(C)の量は可塑剤(B)との含有重量比(B/C)で、100/2〜100/40の範囲にあるのが好ましく、100/4〜100/30の範囲がより好ましい。この重量比が100/2より大きいと、プラスチゾルの粘度低減効果が乏しくなり、逆に100/40より小さいと粘度低減剤そのものの粘性によりプラスチゾルの粘度低減効果が損なわれることがある。
【0028】
本発明のプラスチゾル組成物に用いる充填剤(D)としては、塩化ビニル樹脂系のプラスチゾルに用いることができる充填剤を特に制限なく使用することができる。その一例としては、炭酸カルシウム、タルク、クレーなどの無機化合物が挙げられる。これらは2種以上併用してもよい。
【0029】
充填剤(D)の量は、塩化ビニル系樹脂(A)100重量部に対して、10重量部以上、500重量部以下であるのが好ましく、30重量部以上、150重量部以下がより好ましい。この量が少なすぎると、得られる成形品が過度に軟かくなったり、べたつき感が生じたりする場合がある。逆に添加量が多すぎると、ゾルの粘度が上昇してしまい、塗工性が悪化する傾向がある。
【0030】
また、本発明のプラスチゾル組成物には、本発明の趣旨・効果を逸脱しない範囲で、上記の必須成分以外にポリ塩化ビニリデンやアクリル樹脂等の熱可塑性樹脂や、安定剤、着色剤、接着性付与剤、発泡剤、難燃剤、離型剤、消泡剤等の添加剤を配合することができる。
【0031】
本発明のプラスチゾル組成物を製造する方法としては、特に限定はされず、公知のプラスチゾル組成物の製造方法が制限なく使用可能である。
【実施例】
【0032】
以下、実施例を用いて本発明の実施態様の一例をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。
<分析方法>
(1)5容量%留出温度、90容量%留出温度
JIS K2254 による
(2)流動点
JIS K2269 による
なお、測定装置の仕様上、流動点測定下限は−40℃であり、それ未満の場合は、測定値としては−40℃未満、とした。
(3)色相
JIS K0071−1 による
(4)プラスチゾル粘度(B型粘度)
得られたプラスチゾル組成物の粘度は、ブルックフィールド型回転粘度計(BL型、(株)東京計器製)を用いて、25℃、6rpmにて測定した。
【0033】
<プラスチゾルの調製>
プラネタリーミキサー(HOBART社製、HOBART MIXER N−50型)内へ、下記の配合組成となるように、塩化ビニル樹脂量として300g相当を計量、投入し、61rpmにて10分間、125rpmにて10分間、攪拌・混合してプラスチゾルを得た。
塩化ビニル系樹脂(A) 100重量部
(ヴイテック(株)製、ビニカペーストPK454)
可塑剤(B)(ジイソノニルフタレート) 50重量部
((株)ジェイプラス製)
粘度低減剤(C) 10重量部
充填剤(D)(炭酸カルシウム) 100重量部
(東洋ファインケミカル(株)製、ホワイトンH)
白色顔料 15重量部
(テイカ(株)製、JR600A(チタン白))
安定剤 3重量部
(昭島化学工業(株)製、LT802S)
発泡剤 4重量部
(大塚化学(株)製、AZH−25(アゾジカルボンアミド))
【0034】
(実施例1)
粘度低減剤(C)として、重質アルキレート(三菱化学(株)製 ABA−SH)を用い、上記の配合・方法にてプラスチゾルを調製した。留出温度、色相、流動点及び粘度の測定結果を表1に示す。
【0035】
(実施例2、3)
減圧単蒸留装置にて、重質アルキレート(三菱化学(株)製 ABA−SH)を分留した。仕込み量の40%相当を塔頂から回収して重質アルキレートSHの蒸留品Aを、仕込み量の20%相当を塔頂から回収して重質アルキレートSHの蒸留品Bを得た。
粘度低減剤(C)として、上記蒸留品A(実施例2)または上記蒸留品B(実施例3)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてプラスチゾルを調製した。結果を表1に示す。
【0036】
(実施例4、5)
実施例1で用いた重質アルキレートSHを特許第2552712号記載の方法で水素添加改質した。反応温度150℃、水素圧力0.9MPa、反応時間3時間で重質アルキレートSHの水素添加改質品Aを、反応温度250℃、水素圧力0.9MPa、反応時間6時間で重質アルキレートSHの水素添加改質品Bを得た。
粘度低減剤(C)として、上記水素添加改質品A(実施例4)または上記水素添加改質品B(実施例5)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてプラスチゾルを調製した。結果を表1に示す。
【0037】
(実施例6)
粘度低減剤(C)として、実施例1で用いた重質アルキレートSHとアルキルベンゼン(三菱化学(株)製SAB−G)との等量(重量比)混合物を用いたこと以外は実施例1と同様にしてプラスチゾルを調製した。結果を表1に示す。
【0038】
(比較例1)
粘度低減剤(C)を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして、プラスチゾルを調製し、粘度測定を行った。結果を表1に示す。
【0039】
(比較例2)
粘度低減剤(C)としてジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル(三菱化学(株)製)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてプラスチゾルを調製した。結果を表1に示す。
【0040】
(比較例3)
粘度低減剤(C)としてステアリン酸2−エチルヘキシル(和光純薬(株)製)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてプラスチゾルを調製した。結果を表1に示す。
【0041】
(比較例4)
粘度低減剤(C)としてアルキルベンゼン(三菱化学(株)製SAB−G)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてプラスチゾルを調製した。結果を表1に示す。
【0042】
(実施例7)
粘度低減剤(C)として、炭素原子数16〜18のα−オレフィン混合物(三菱化学(株)製ダイアレン168)と重質アルキレート(三菱化学(株)製 ABA−SH)との30/70(重量比)混合物を用いたこと以外は実施例1と同様にしてプラスチゾルを調製した。結果を表1に示す。
【0043】
(比較例5)
粘度低減剤(C)として炭素原子数16〜18のα−オレフィン混合物(三菱化学(株)製ダイアレン168)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてプラスチゾルを調製した。結果を表1に示す。
【0044】
(参考例)
粘度低減剤(C)として炭素原子数20〜28のα−オレフィン混合物(三菱化学(株)製ダイアレン208)を加温・溶解して用いたこと以外は実施例1と同様にしてプラスチゾルを調製した。結果を表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
(結果の評価)
(1)実施例1は比較例1と比べ、プラスチゾルの粘度が大きく低下しており、本発明の効果が明らかであるる
(2)実施例2、3、4、5ではプラスチゾルの粘度を大きく変えることなく、粘度低減剤の色相が改善されていて、最終成形物の色調改良が期待できる。なお、粘度低減剤の流動性は確保されている。
(3)実施例6、7は、アルキルベンゼン又はα−オレフィンと混合して用いた例である。色相やα−オレフィンの流動性が改良方向となっている。
(4)比較例2、3は公知の粘度低減剤を用いた例であるが、沸点が低かったり(比較例2)、又は流動点が高かったり(比較例3)して。TVOCの改良とプラスチゾルの取扱性の両立は十分とは言い難い。
(5)比較例4は、粘度低減剤として一般のアルキルベンゼンを用いた例である。粘度・流動性は良好であるが、沸点が低いためTVOCが十分改良できないものと考えられる。
(6)比較例5、参考例は流動性の点で問題がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル系樹脂(A)、可塑剤(B)、粘度低減剤(C)および充填剤(D)を含有するプラスチゾル組成物において、粘度低減剤(C)が5容量%留出温度が300℃以上の重質アルキレート(以下「重質アルキレートSH」と略記する)又はその誘導体であることを特徴とするプラスチゾル組成物。
【請求項2】
塩化ビニル系樹脂(A)100重量部あたり、可塑剤(B)を30重量部以上、110重量部以下、粘度低減剤(C)を0.5重量部以上、25重量部以下、および充填剤(D)を10重量部以上、500重量部以下含有してなる請求項1に記載のプラスチゾル組成物。
【請求項3】
可塑剤(B)と粘度低減剤(C)との重量比(B/C)が、100/2ないし100/40である請求項1または2に記載のプラスチゾル組成物。
【請求項4】
粘度低減剤(C)の90容量%留出温度が370℃以下の重質アルキレートSHである請求項1〜3のいずれか1項に記載のプラスチゾル組成物。
【請求項5】
粘度低減剤(C)として用いる重質アルキレートSHの誘導体が5容量%留出温度が300℃以上の重質アルキレートを水素添加改質したものである請求項1〜4のいずれか1項に記載のプラスチゾル組成物。
【請求項6】
粘度低減剤(C)として重質アルキレートSHに加えて、アルキルベンゼン及び/又は炭素原子数10以上40以下のα−オレフィンを用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のプラスチゾル組成物。

【公開番号】特開2006−249331(P2006−249331A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−69775(P2005−69775)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(500280076)ヴイテック株式会社 (8)
【Fターム(参考)】