説明

プラスチックハウス

【課題】 作業中に害虫が入り植物に危害を及ぼすことがなく、高設栽培を可能とするコンパクトなプラスチックハウスを得る。
【解決手段】 合成樹脂製の薄膜でチューブ状に形成された植物栽培容器1と、この植物栽培容器1を保持する一対の保持棒3と、この保持棒3を支持する支持台4と、上記植物栽培容器1に設けられ、用土5や植物等の出し入れと、誘引や収穫等の作業を行うための、複数の切れ目2とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物栽培の目的によって、プラスチックハウスの高設栽培、形状変化、温度制御、水中栽培、連作を可能とした、人が出入りしないコンパクトなプラスチックハウスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ハウス内に人が出入りしないコンパクトなプラスチックハウスとして、トンネルハウスがあるが、通常のトンネルハウスでは、弧状にした骨組みの両端を地面に突き刺し、その外側に透明シートを張設し、この透明シートを持ち上げて、植物の出し入れや収穫等の作業を行っている。
【0003】
また、トンネルハウスの設置を簡単にするものとして、軽量金属等で骨組したトンネルハウスを地面に設置し、このトンネルハウスの一端を固定し、一端を持ち上げて、つっかい棒で支持し、植物の出し入れや収穫等の作業を行うものがある。(特許文献1参照)
【特許文献1】 特開2002−065078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した、従来のハウス内に人が出入りしないコンパクトなトンネルハウスでは、透明シートやトンネルハウスの一端を持ち上げて植物の出し入れや収穫等の作業を行うため、作業中に害虫が入り、植物に危害を及ぼすと言う問題点があった。
【0005】
また、従来のトンネルハウスでは、地面に骨組みを突き刺したり、地面に骨組みを設置しているため、高設栽培による作業環境の改善が困難と言う問題点があった。
【0006】
本発明は、上述の問題点を解決するためになされたもので、作業中に害虫が入り植物に危害を及ぼすことがなく、高設栽培を可能とするコンパクトなプラスチックハウスを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のプラスチックハウスは、合成樹脂製の薄膜でチューブ状に形成された植物栽培容器と、この植物栽培容器を保持する一対の保持棒と、この保持棒を支持する支持台と、植物栽培容器に設けられ、用土や植物等の出し入れと、追肥や収穫等の作業を行うための、複数の切れ目とを備えたものである。
【0008】
また、本発明のプラスチックハウスは、複数の切れ目を植物栽培容器の長手方向に対して直角に設け、高設栽培による作業環境の改善を可能とするものである。
【0009】
また、本発明のプラスチックハウスは、支持台に設置した一対の保持棒の間隔を変えることで、植物栽培容器の形状を変化できるものである。
【0010】
本発明のプラスチックハウスは、植物栽培容器を二重構造にし、植物栽培容器間に生じた空間に温度制御した空気や水を流通させるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のプラスチックハウスは、植物栽培容器の上面、長手方向に対して直角に複数の切れ目を設けている。植物の出し入れや収穫等の作業では、作業箇所の切れ目が開口し、その他の切れ目は完全に閉じているので、害虫が切れ目から侵入することが困難となり、植物への危害がなくなる効果を得た。
【0012】
また、本発明では、2本の保持棒で用土が入った植物栽培容器を保持している。用土の重さによって植物栽培容器が切断して落下しない様に、複数の切れ目を植物栽培容器の長手方向に対して直角に設けている。これは、切れ目によって植物栽培容器の強度を低下させないためで、これによって高設栽培が可能となり作業環境の改善が得られた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
実施の形態1
図1は、本発明の実施の形態1を示すプラスチックハウスの斜視図である。図において、100は人が出入りしないコンパクトな高設栽培のプラスチックハウスである。1は植物栽培容器であり、合成樹脂製の薄膜でチューブ状に形成されており、植物栽培容器1の両端部は、融着により密閉している。2は植物栽培容器1の上面に形成された複数の切れ目であり、この切れ目2から用土5や植物等の出し入れと、追肥や収穫等の作業を行うことができる。3は植物栽培容器1を保持する一対の保持棒であり、一端の切り目2aから2本挿入し他端の切り目2aから抜き出している。4は保持棒3を支持する支持台であり、保持棒3を支える支持棒4aと、複数の支柱4bで構成されている。また、一対の保持棒3は矢印A方向に移動させて自由に間隔を変えることができる。保持棒3は直交クランプで固定している。5は植物を栽培する用土である。6は植物栽培容器1の底面に設けた排水口であり、止水できる構造となっている。
【0014】
本発明の合成樹脂製の薄膜チューブの材質は、防湿性、耐水性のよい低密度ポリエチレンで、剛性を高めた三層構成のラミネートチューブである。用土5の量、栽培する植物及び畑の大きさにより、植物栽培容器1は、厚さ0.15mm、幅480mm、長さ20mとした。この植物栽培容器1は、重さ24トンまで耐えることができる。保持棒3の幅を200mmとした場合、高さが280mmとなり、栽培植物容器1に用土5を満杯にした時には用土5の重さは2.7トンとなる。これによって植物栽培容器1は、用土5の重さに十分耐えることができ、高設栽培が可能なことが分かる。また、植物栽培容器1の長さは、数メートルから数十メートルで、百メートル以上の長さも可能である。
【0015】
本発明の保持棒3や支持台4は、直径50mmの単管パイプを使用している。この理由は、強くて豊富な金具を有するからである。単管パイプは非常に強いので用土5や水の重さに十分耐えることができ、台風等の強風下でも大丈夫である。また、組み立て金具が豊富で安価なので、施工が短時間となり低コストに繋がるメリットがある。
【0016】
本発明の最も独創的なことは、植物栽培容器1に切れ目2を設けたことである。この切れ目2を設けることによって、植物栽培容器1の高設栽培が可能となるとともに、農業資材の出し入れや農作業も可能となる。
【0017】
切れ目2は、植物の種類によって長さや幅を適切に変える。通常では、切れ目2は、長さ25cm、幅10cm前後が便利である。また、植物の背丈が高い場合には、切れ目2と切れ目2の間を部分的に切り取って、植物栽培容器1より植物をはみ出して栽培することも可能である。
【0018】
長尺の植物栽培容器1に用土5を入れて高設栽培した場合、植物栽培容器1への応力は、主に断面方向に働くが、断面方向に切り目2を入れた場合には、応力に耐えることができ、植物栽培容器1が切断する危険性が少ない。また、長期使用による植物栽培容器1の強度低下に関しては、ラミネートチューブは肥料用袋として多くの実績があるので問題はない。以上の点から、本発明の植物栽培容器1は、高設栽培にも十分耐えられる。
【0019】
また、植物の種類等によって保持棒3の間隔を変えることができる。例えば、育苗する場合には、用土5の厚さが薄くて良いので、保持棒3の間隔を拡大させて用土5の表面積を増し、生産性の向上に繋げる。逆に、背丈の高い植物では、保持棒3の間隔を狭めて植物が十分育つ広い空間を作る。
【0020】
また、本発明のプラスチックハウスは、雑草や害虫から隔離して野菜等を栽培するので、農薬と化成肥料を使用しない有機野菜の栽培に適している。
【0021】
また、本発明では、プラスチックハウス内の用土5のみで栽培を行うので、PHとECの管理が容易となる。
【0022】
さらに、最近、食料自給率の向上が求められているが、本発明のプラスチックハウスを活用すれば、雑草等で荒れている田や畑を直ちに活用でき、食料自給率の向上に繋がる顕著な効果がある。
【0023】
次に、上述したプラスチックハウスを用いて植物を栽培する手順を説明する。
先ず、用土5は、真砂土に元肥の牛糞堆肥を加え、牡蠣殻石灰、油粕、骨粉、草木灰等でPHとECを調整し、クマザサ、カヤ等の有機物を配合し、さらに、軽量化のために籾殻、ピートモス、バーク堆肥等を配合して、各々の切れ目2から約1トンの用土5を挿入する。この場合、プラスチックハウスの用土5の高さが100mm、空間部の高さが180mmとなる。
次に、切り目2を通じて種を播種し、発芽、生長を経て成熟したら、再び切れ目2を通じて収穫する。夏季は、プラスチックハウスの温度上昇を低減させるため、寒冷紗等を被覆し、冬季は、不織布等を被覆して保温に努める。また、プラスチックハウスの上部に切れ目2を入れているので、雨水がプラスチックハウス内に入り、散水回数を少なくすることができる。
次に、収穫後、用土5はカビの一種であるフザリウム菌等が繁殖して連作が困難なので、排水口6を閉じて、水で用土5を浸し、フザリウム菌等を死滅させる。これによって、連作が可能となる。
【0024】
実施の形態2
図2は、本発明の実施の形態2を示す二段のプラスチックハウスの斜視図である。この図が示すように、図1のプラスチックハウスを二段にすることで、植物の生産性が2倍となる効果がある。
【0025】
また、上段は、日当たりを好むイチゴや観葉植物等の栽培に適し、下段は、日陰で育つミツバやセリ等の栽培に適している。
【0026】
実施の形態3
図3は、本発明の実施の形態3を示す背丈の高いプラスチックハウスの斜視図である。図において300は、背丈の高いプラスチックハウスである。図が示すように、プラスチックハウスの背丈が高いので、作業面から植物栽培容器1の横面に切れ目2を入れている。
【0027】
また、このプラスチックハウスでは、背丈が高くなるトマト、キューリ、ゴーヤ等の栽培に適している。
【0028】
図4は、本発明のプラスチックハウスでカブを栽培している説明図である。この図が示すように、植物栽培容器1に成熟したカブ7aが栽培されている。
【0029】
この場合、カブ7aが成熟する大きさを考慮して、保持棒3の間隔を調節する。
【0030】
図5は、本発明のプラスチックハウスを水に浸しイネを栽培している説明図である。この図が示すように、排水口6を閉じて用土5を水8で浸せば、イネ7bの栽培が可能となる。
【0031】
また、簡単に用土5を水で浸すことが出来るので、従来は困難であった土壌消毒が容易となり、野菜等の連作が可能となる大きなメリットがある。
【0032】
図6は、本発明のプラスチックハウスの形状を変えた説明図である。図が示すように、(A)、(B)ともに、同じサイズの植物栽培容器1で、用土5の量も同じだが、栽培する野菜によって保持棒3の間隔を調節している。(A)は保持棒3を狭めることにより、用土5が高くなり根菜類のニンジン7cの栽培に適し、(B)は逆に保持棒3を広げることによって、用土5が低くなり葉茎類のホウレンソウ7dの栽培に適する。
【0033】
実施の形態7
図7は、本発明の実施の形態7を示す植物栽培容器の断面図である。図において700は二重構造のプラスチックハウスである。また、9は第2の植物栽培容器であり、植物栽培容器1の外側をプラスチックフィルム囲み二重構造としている。
【0034】
植物栽培容器1と第2の植物栽培容器9との空間に温度制御した空気10を流すことで、プラスチックハウスの昇温や冷却が可能となる。実際には、摂氏20度前後に空調することで、真冬や真夏でもカブ7aの栽培が可能となる。
【0035】
また、空気10でなく水の場合には、第2の植物栽培容器の底面に地下水や温水を流して温度制御する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】 本発明の実施の形態1を示すプラスチックハウスの斜視図である。
【図2】 本発明の実施の形態2を示す二段のプラスチックハウスの斜視図である。
【図3】 本発明の実施の形態3を示す背丈の高いプラスチックハウスの斜視図である。
【図4】 本発明のプラスチックハウスでカブを栽培している説明図である。
【図5】 本発明のプラスチックハウスを水に浸しイネを栽培している説明図である。
【図6】 本発明のプラスチックハウスの形状を変えた説明図である。
【図7】 本発明の実施の形態7を示す植物栽培容器の断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 植物栽培容器
2 切れ目
3 保持棒
4 支持台
4a 支持棒
4b 支柱
5 用土
8 水
9 第2の植物栽培容器
10 空気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製の薄膜でチューブ状に形成された植物栽培容器と、この植物栽培容器を保持する一対の保持棒と、この保持棒を支持する支持台と、上記植物栽培容器に設けられ、用土や植物等の出し入れと、追肥や収穫等の作業を行うための、複数の切れ目とを備えたことを特徴とするプラスチックハウス。
【請求項2】
上記複数の切れ目は、植物栽培容器の長手方向に対して直角に設け、高設栽培を可能としたことを特徴とする請求項1記載のプラスチックハウス。
【請求項3】
上記支持台に設置した上記一対の保持棒は、その間隔を変えることで、植物栽培容器の形状を変化できることを特徴とする請求項1又は2記載のプラスチックハウス。
【請求項4】
植物栽培容器を二重構造にし、植物栽培容器間に生じた空間に温度制御した空気や水を流通させることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のプラスチックハウス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−119376(P2010−119376A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−317666(P2008−317666)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(508035838)有限会社オリオン理研 (2)
【Fターム(参考)】