プラスチック光学材料用プリフォーム及びその製造方法
【課題】 伝送損失が低く、且つ優れた伝送帯域特性を有するプラスチック光ファイバ(POF)を製造する。
【解決手段】 POFの母材となるプリフォーム(図示せず)のコア19を、その中心軸Cの周りに多数に分割した形状のコア素片20を形成する。コア素片20を、屈折率の異なる透光性の第1〜第N樹脂層22(α)[α=1〜N]を屈折率の高いものから順に積層して形成する。形成されたコア素片20を組み合せてコア19を形成する。コア19にクラッドパイプ(図示せず)を装着してプリフォームを形成する。このプリフォームを延伸させることで、伝送損失が低く、且つ優れた伝送帯域特性を有するPOFが得られる。
【解決手段】 POFの母材となるプリフォーム(図示せず)のコア19を、その中心軸Cの周りに多数に分割した形状のコア素片20を形成する。コア素片20を、屈折率の異なる透光性の第1〜第N樹脂層22(α)[α=1〜N]を屈折率の高いものから順に積層して形成する。形成されたコア素片20を組み合せてコア19を形成する。コア19にクラッドパイプ(図示せず)を装着してプリフォームを形成する。このプリフォームを延伸させることで、伝送損失が低く、且つ優れた伝送帯域特性を有するPOFが得られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック光学材料の母材となるプラスチック光学材料用プリフォーム及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ファイバとしてプラスチック光ファイバがよく知られている。プラスチック光ファイバ(以下、単にPOFという)は、石英系光ファイバと比較すると光の伝送損失が大きいため長距離の光伝送には向かないものの、プラスチックの性質により大口径化が容易である。そのため、POFは、周辺部品や機器との接続容易性、端末加工容易性、高精度の調芯が不要になるメリットを有する。また、この他にもPOFには、人体への突き刺し災害等の危険性の低さ、高い柔軟性による易加工性や易敷設性や耐振動性、そして低価格等のメリットがある。これにより、POFは、家庭や、車載用途に注目されているだけでなく、高速データ処理装置の内部配線や、DVI(Digital Video Interface)リンク、その次世代規格のHDMI(High Definition Multimedia Interface)リンク用のケーブルとしても利用が検討されている。
【0003】
近年、POFの一態様として、中心から外側に向かって屈折率が連続的に低くなるコアと、コアよりも低い屈折率を有し、コアの外側面を覆うクラッドとを有するグレートインデックス(GI)型のPOFが急速に普及し始めている。このGI型POFは、コアの特有の屈折率分布により伝送する光信号が歪みにくくなるため、広帯域の光信号の伝送を行えるという利点がある。このようなGI型POFを製造する方法としては、GI型POF原料であるポリマーを溶融押出により繊維状(GI型POF原糸)にしてGI型POFとする方法(溶融押出法)や、GI型POFの母材となる管形状または柱形状のプリフォーム(母材)を形成し、これを長手方向に延伸してGI型POFとする方法が一般的である。
【0004】
GI型POFの溶融押出製造法については種々の提案がされており、例えば特許文献1に記載されているように、ペレット状にしたコア形成用ポリマーとクラッド形成用ポリマーとを溶融押出装置に供する。溶融押出装置では両ポリマーを溶融状態とした後に、装置内の押出ダイによりコア及びクラッドの2層構造を形成する。また、押出ダイの内部では2層構造とされた両ポリマーの液流路の温度調整を行って、コア用ポリマーに添加された屈折率調整剤(ドーパント)を熱拡散させることで、上述のような屈折率分布を有するGI型POF原糸を形成してGI型POFとしている。
【0005】
また、ドーパントを熱拡散させる代わりに、溶融押出装置で共押出し(多層溶融押出し)を行って内側の層ほど屈折率が高くなるようにした多層のコアを形成する方法もよく知られている。この場合には、ドーパントの添加量を変えたコア形成用ポリマーを層数分だけ用意しておく。
【0006】
プリフォームを延伸してGI型POFとする方法では、回転ゲル重合法を利用してプリフォームを形成するのが一般的である。具体的には、特許文献2に記載されているように、溶融押出法等で形成されたクラッドの内部に、ドーパントが添加されたコア形成用モノマーを注入する。次いで、このクラッドを回転重合装置にセットして回転重合させることで、コア形成用モノマーの重合の進行と共にコア中心部のドーパントの濃度が高くなるため、上述のような屈折率分布を有するプリフォームが形成される。そして、このプリフォームを延伸装置にセットして長手方向に延伸させることでGI型POFが得られる。
【0007】
また、回転ゲル重合法を利用してプリフォームを形成する代わりに、特許文献3に記載されているように、一端側から他端側に向かって屈折率が連続的に低くなる長尺フイルムを形成し、このフイルムをその一端側を中心としてロール状に巻き取ることで上述のような屈折率分布を有するプリフォームを形成する方法も知られている。また、屈折の異なる2本以上のパイプを入れ子にした多重パイプをプリフォームとして用いる方法も知られている。
【特許文献1】特開2000−356716号公報(第6〜8頁、第1〜2図参照)
【特許文献2】特許第3332922号公報(第7〜9頁参照)
【特許文献3】特開2005−37910号公報(第9頁、第1図参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前記特許文献1に記載されている方法では、ドーパントを熱拡散させることで屈折率分布を持たせるようにしているが、熱拡散ではドーパントの移動の制御が難しいので高度な屈折率分布制御が行えない。その結果、高伝送帯域を持つGI型POFの製造が難しくなってしまう。また、溶融押出法は、工程数が多くなり、その生産効率も悪いため、GI型POFの製造コストが高くなってしまうという問題もある。
【0009】
多層溶融押出しを行う場合には、層ごとにドーパントの混合量を変えたコア用ポリマーを別途容易する必要があり、大掛かりな重合設備が必要になる。その結果、重合設備の運転コストが高くなるので、GI型POFの製造コストが高くなってしまう。なお、重合設備の数が層数よりも少ない場合には、1つのコア用ポリマーを形成した後に設備を洗浄する必要があるので、同様にGI型POFの製造コストが高くなってしまう。また、コア用ポリマーを形成する重合設備はクリーン化が必要なため、設備の製造コスト及び運転コストが高くなってしまう。さらに、多層溶融押出しを行う際に、層数が5層以上になると各層の界面制御が非常に困難となるので、伝送損失及び伝送帯域が悪化してしまう。また、溶融押出装置も層数が増えた分だけ大型化してしまうので、設置に広いスペースが必要となり、装置の製造コストも高くなってしまう。
【0010】
前記特許文献2に記載されているように、回転ゲル重合法を利用してプリフォームを形成する場合にも、同様にドーパントの移動の制御が難しいので高度な屈折率分布制御が行えないという問題がある。さらに、ドーパントの移動で屈折率分布を形成するため、ドーパント以外の他の素材、例えばコポリマー(共重合体)等を用いて屈折率分布を持たせることが難しい。また、溶融押出法と同様に工程数が多くなり、その生産効率も悪いという問題もある。
【0011】
前記特許文献3に記載されているように、屈折率が連続的に変化する長尺フイルムをロール状に巻き取ってプリフォームを形成する場合には、屈折率を精度よく変化させた長尺フイルムを形成すること自体が困難である。さらに、長尺フイルムをロール状に巻き取った際に、巻き取られたフイルム同士が完全に密着していないと、GI型POFの光学性能が劣化してしまう。
【0012】
多重パイプをプリフォームとして形成する場合には、多層溶融押出しを行う場合と同様に大掛かりな重合設備が必要になってしまう。さらに、このプリフォームを延伸させた際に全てのパイプが先端側から一様につぶれるとは限らず、各層(パイプ)が密着しない部分(欠陥)が発生してしまうおそれがある。
【0013】
本発明は上記課題を解決するためのものであり、伝送損失が低く、且つ優れた伝送帯域特性を有するGI型POFなどのプラスチック光学材料を製造可能なプラスチック光学材料用プリフォーム及び、このプラスチック光学材料用プリフォームを複雑な工程を経ずに安価に製造する製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、光伝送路となるコアと、前記コアよりも低い屈折率を有し、前記コアの外側面を覆う略管状のクラッドとからなるプラスチック光学材料用プリフォームの製造方法において、前記コアをその中心軸周りに複数に分割した形状のコア素片を形成し、前記中心軸となる任意の軸を囲うように前記コア素片を組み合わせて前記コアを形成することを特徴とする。
【0015】
また、前記コア素片は、屈折率の異なるプラスチック層を5層以上積層して形成されていることが好ましい。また、前記樹脂層は、前記コア素片を組み合わせて形成された前記コアの屈折率が前記外側面から前記中心軸に向かうに従い次第に高くなるような順序で積層されることが好ましい。さらに、隣接する前記樹脂層の屈折率の差Δnが、5×10-5≦Δn<5×10-3を満たすことが好ましい。
【0016】
また、前記クラッドを前記中心軸周りに前記コア素片と同数に分割した形状のクラッド素片を前記コア素片と一体に形成し、前記コア素片の組み合せ時に、前記クラッド素片も同時に組み合せて前記クラッドを形成することが好ましい。
【0017】
また、本発明は、光伝送路となるコアと、前記コアよりも低い屈折率を有し、前記コアの外側面を覆う略管状のクラッドとからなるプラスチック光学材料用プリフォームにおいて、前記コアは、前記コアをその中心軸周りに複数に分割した形状のコア素片が前記中心軸となる任意の軸を囲うように組み合わされて形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明のプラスチック光学材料用プリフォームの製造方法は、プリフォームのコアをその中心軸周りに複数に分割した形状のコア素片を形成し、前記コア素片を組み合わせて前記コアを形成するようにしたので、従来のプラスチック光学材料よりも伝送損失が低く、且つ優れた伝送帯域特性を有するプラスチック光学材料の母材となるプリフォームを複雑な工程を経ずに安価に製造することができる。
【0019】
本発明のプラスチック光学材料用プリフォームは、そのコアが前記コアをその中心軸周りに複数に分割した形状のコア素片を組み合わせて形成されるようにしたので、同様にして伝送損失が低く、且つ優れた伝送帯域特性を有するプラスチック光学材料の母材となるプリフォームを安価に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、GI型POFケーブル10の製造工程11の一例を示したフロー図である。製造工程11は、大別してコア素片形成工程13、クラッドパイプ装着工程14、延伸工程15、被覆工程16から構成される。
【0021】
本実施形態では、コア素片形成工程13及びクラッドパイプ装着工程14において、GI型POF(GI型POF素線)17の母材となるプラスチック光ファイバプリフォーム(以下、単にプリフォームという)18を形成する。具体的には後述するが、コア素片形成工程13においては、プリフォーム18のコア19(図2参照)を形成するためのコア素片20を形成し、クラッドパイプ装着工程14においては、コア19にクラッドとなるクラッドパイプ21(図2参照)を装着してプリフォーム18を形成する。延伸工程15では、プリフォーム18を延伸してGI型POF素線17を形成する。そして、被覆工程16では、GI型POF素線17を被覆してGI型POFケーブル10を形成する。
【0022】
図2は、本発明のプリフォーム18の斜視図を示したものである。プリフォーム18は、上述したように光伝送路となる略管状のコア19と、コア19のコア外側面を覆う略管状のクラッドパイプ(クラッド)21とから構成される。コア19は、断面が略8角形状であり、その中心軸Cから外側面に向かって屈折率がほぼ連続的に低くなるような屈折分布(以下、単に屈折率分布という)を有している。クラッドパイプ21は、コア外側面を隙間無く覆って密着しなければならないが、そのために、必ずしもその中空部の断面形状が8角形状に形成されている必要はなく、中空部の断面形状は円形状でもよい。このクラッドパイプ21は、後述する組み合わされたコア素片20(コア19)に装着される。そして、クラッドパイプ21は、延伸時にパイプ21と組み合わされたコア素片20との隙間を減圧吸引させたり、熱収縮させたりする事によって、コア19に密着される。クラッドパイプ21は、コア19よりも低い屈折率を有している。
【0023】
コア19に上述の屈折率分布を持たせるため、本実施形態では、コア19をその中心軸Cの周りに8つに分割した形状のコア素片20を形成する。コア素片20は、詳しくは後述するが、屈折率の異なる透光性の第1〜第N樹脂層22(α)[α=1〜N](図5参照)を屈折率の高いものから順に少なくとも5層以上積層して形成されており、その断面は略台形状である。
【0024】
樹脂層22(α)の屈折率を各層ごとに変えるため、本実施形態では、重合後の屈折率が異なる2種類以上のコア形成用モノマーを異なる配合比で共重合させて樹脂層22(α)を形成する。これにより、各層に屈折率の差を発現させることができる。例えば、重合後の屈折率の低い方のコア形成用モノマーの配合割合を増やすことで屈折率を低くすることができ、屈折率が高い方のコア形成用モノマーの配合割合を増やすことで屈折率を高くすることができる。
【0025】
コア形成用モノマーとしては、下記の(a)〜(e)のものが例示できる。
(a) (メタ)アクリル酸エステル(フッ素含まず)
(b) 含フッ素(メタ)アクリル酸エステル
(c) スチレン系化合物
(d) ビニルエステル類
(e) 含フッ素主鎖環状モノマー類
【0026】
(a)としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−tert−ブチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ジフェニルメチル、アダマンチルメタクリレート、イソボニルメタクリレート、ノルボニルメタクリレート、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−tert−ブチル、アクリル酸フェニルなどが挙げられる。
【0027】
(b)としては、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレートなどが挙げられる。
【0028】
(c)としては、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレンなどが挙げられる。(d)としては、ビニルアセテート、ビニルベンゾエート、ビニルフェニルアセテート、ビニルクロロアセテートなどが挙げられる。(e)としては、ポリパーフルオロブタニルビニルエーテルや特開平8−334634などに例示される主鎖に脂肪環もしくは複素環を有するようなポリマーを形成するモノマーなどが挙げられる。なお、本発明はこれらに限定されるものではなく、モノマーの単独あるいは共重合体からなるポリマーが光学的な透明性を有し、且つポリマーの屈折率がGI型POF素線17を形成したときに所定の性能を発揮するような範囲で調整できるものであれば良い。
【0029】
具体的に、本実施形態ではコア形成用モノマーとして、重合体の屈折率が1.41を示し、水素原子が一部重水素原子とされた(重水素置換された)2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート(以下、3FMd7という)と、重合体の屈折率が1.49を示し、重水素置換されたペンタフルオロフェニルメタクリレート(PFPMAd5)とを用いる。そして、両者の配合比を調整することで、樹脂層(α)の屈折率を各層ごとに変えて、屈折率の高いものから順に積層を行う。
【0030】
この際に、本実施形態では3FMd7、PFPMAd5を共重合させてコポリマーとする際に重合開始剤を使用する。重合開始剤としては下記(a)〜(c)ものが例示される。
(a) 約80℃以上での使用が好ましいもの
(b) 40℃〜80℃程度での使用が好ましいもの
(c) −10℃〜40℃での使用が好ましいのも
これらの中でも、一般的には常温以上で使用することができる重合開始剤を用いることが好ましい。
【0031】
(a)としては、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド等が挙げられる。(b)としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、アゾビスイソブチルニトリル等が挙げられる。(c)としては、過酸化水素−第一鉄塩、過硫酸塩−酸性亜硫酸ナトリウム、クメンヒドロペルオキシド−第一鉄塩、過酸化ベンゾイル−ジメチルアニリン等が挙げられる。そして、これらの中でも過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチルニトリル等を用いることが好ましい。また、過酸化物−有機金属アルキル、酸素−有機金属アルキルなどを組み合せても重合反応を開始させることができる。
【0032】
また、本実施形態では、コポリマーとしたときの機械特性や熱物性などの各種物性値を全体にわたって均一に保つために、重合度の調整を行う。この重合度の調整は連鎖移動剤を用いて行う。連鎖移動剤については、併用するモノマーの種類に応じて、適宜、種類および添加量を選択できる。各モノマーに対する連鎖移動剤の連鎖移動定数は、例えば、ポリマーハンドブック第3版(J.BRANDRUPおよびE.H.IMMERGUT編、JOHN WILEY&SON発行)を参照することができる。また、該連鎖移動定数は大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊を参考にして、実験によっても求めることができる。
【0033】
上述した方法以外に、第1〜第N樹脂層22(α)の屈折率を各層ごとに変える方法として、各層を形成するコア形成用モノマーに屈折率調整剤(ドーパント)を添加し、各層ごとにドーパントの添加量を変えることで各層に屈折率の差を発現させる方法もある。この場合には、ドーパントの添加量を多くすることで、屈折率を高くすることができる。
【0034】
ドーパントとしては、高屈折率で分子体積が大きく、重合に関与しないものを用いることが好ましい。具体的には、ベンジルベンゾエート、ベンジルn−ブチルフタレート、ベンジルサルチレート、ベンジルフェニルエーテル、ベンゾイックアンハイドライド、ジベンジルエーテル、ジフェニルフタレート、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリフェニルフォスフェート、ジフェニル、ジフェニルメタン、ジフェニルエーテル、ジフェニルサルファイド、m−フェノキシトルエン、フェニルベンゾエート、1,2−プロパンジオールジベンゾエート、トリクレジルフォスフェート、ジブチルフタレート、ジフェニルスルフォキシドなどが挙げられる。また、ドーパントの代わりに、またはドーパントに加えて、屈折率が互いに異なる複数のポリマーの混合物や、屈折率が互いに異なる繰り返し単位をもつ共重合物等を用いることもできる。
【0035】
このように、第1〜第N樹脂層22(α)の屈折率を各層ごとに変えて、屈折率の高いものから順に積層して形成したコア素片20を中心軸C周りに8個組み合せることで、上述の屈折率分布を有するコア19を形成することができる。コア素片20は、コア素片形成工程13を構成するコア素片形成装置25により形成される。
【0036】
図3は、コア素片形成装置25の概略図を示したものである。このコア素片形成装置25は、コア素片20を連続生産するためのものであり、トレイ30、重合室31、第1〜第N注入ユニット32(α)[α=1〜N]、トレイ循環ユニット33、取出しユニット34から構成される。トレイ30は、略長方体形状の容器であり、その上面にはコア素片20と同じ形状の断面台形状の型(溝)36が形成されている。
【0037】
重合室31は、その内部が隔壁38により鉛直方向にN個に仕切られており、図中下方から順に第1〜第N乾燥室39(α)[α=1〜N]を有している。各乾燥室39(α)は、本実施形態では1.2気圧、90℃に保たれている。各乾燥室39(α)の一側面には開口40が形成されている。そして、各開口40の近傍には、第1〜第N注入ユニット32(α)がそれぞれ配置されている。
【0038】
第1〜第N注入ユニット32(α)は、各樹脂層22(α)を形成するための第1〜第N混合溶液42(α)[α=1〜N]をトレイ30の型36内に注入する。第1〜第N混合溶液42(α)は、上述の3FMd7、PFPMAd5、重合開始剤、連鎖移動剤を混合したものであり、形成する樹脂層22(α)に応じて3FMd7及びPFPMAd5の配合比が異なっている。なお、図示は省略するが、各注入ユニット32(α)には、それぞれ対応する混合溶液42(α)を供給する液供給ユニットと、供給ユニットから送り出される混合溶液42(α)をろ過するろ過ユニットとか接続されている。液供給ユニットとしては、単に3FMd7、PFPMAd5、重合開始剤、連鎖移動剤を混合したものを供給できればよいので大掛かりな設備は必要ない。また、ろ過ユニットでろ過する際も、第1〜第N混合溶液42(α)は粘度が低いので簡単に高精度ろ過を行うことができる。その結果、品質故障の原因となる異物を除去することができる。
【0039】
トレイ循環ユニット33は、図3及び図4に示すように、一対の無端チェーン44、トレイ保持フレーム45(図4参照)、チェーンスプロケット46,47から構成される。トレイ30は、一対の無端チェーン44間上にトレイ保持フレーム45を介して保持される。なお、図3中では、図面の煩雑化を防ぐために各トレイ30間に広い間隔を設けているが、トレイ30の搬送速度は遅いので実際の間隔は図よりも狭い。
【0040】
トレイ保持フレーム45は、一対の無端チェーン44間に掛け渡される底板45aと、この底板45aの両端部に立設される側板45bとから構成されている。側板45bには軸孔45cが形成されており、この軸孔45cには、トレイ30の両端部から突出した取付軸30aが回動自在に取り付けられる。取付軸30aは、トレイ30の重心位置よりも高い位置に形成されており、トレイ30の自重によって型36の開口が常に上方を向いた状態となる。
【0041】
無端チェーン44は、トレイ30の搬送経路上に複数配置されたチェーンスプロケット46,47に巻き掛けられている。各チェーンスプロケット46,47は、図示しないモータにより回転駆動され、トレイ30の搬送経路を略90°または略U字型に屈曲させつつ、無端チェーン44を駆動してトレイ30を搬送する。
【0042】
チェーンスプロケット46は、隔壁38の開口40側の端部の近傍、第N乾燥室39(N)の開口40と反対側の側面に形成された排出口48の近傍、トレイ30の搬送経路のコーナ等に設けられている。このチェーンスプロケット46は、詳しい図示は省略するが、一対の無端チェーン44をそれぞれ駆動する一対の略円板状のスプロケット部46aと、両スプロケット部46aを接続する取付軸46bとから構成される。
【0043】
チェーンスプロケット47は、第1〜第(N−1)乾燥室39(α)の開口40と反対の奥部に設けられている。このチェーンスプロケット47も一対のスプロケット部47aと、両スプロケット部47aを接続する取付軸47bとから構成される。開口40から第1〜第N−1乾燥室39(α)内に搬送されたトレイ30は、チェーンスプロケット47により折り返されて再び開口40に向けて搬送される。この際に、トレイ30は略U字型の搬送経路の内側を搬送されるので、スプロケット部47aを、取付軸47bによりトレイ30の搬送が妨げられない程度の大きさに形成している。
【0044】
チェーンスプロケット46,47が回転されると、無端チェーン44の搬送が開始され、これに伴いトレイ30の搬送が開始される。トレイ30が第1注入ユニット32(1)と対向する位置まで搬送されたら、第1注入ユニット32(1)はトレイ30の型36内に混合溶液42(1)を注入する。なお、トレイ30が第1注入ユニット32(1)と対向する位置まで搬送されたことを確認する方法として、図示は省略するが光学センサ等をトレイ30の搬送経路上に配置しておけばよい。
【0045】
混合溶液42(1)が注入されたトレイ30は、開口40より第1乾燥室39(1)内に搬送される。トレイ30は、第1乾燥室39(1)内を所定時間をかけて搬送され、その間に混合溶液42(1)中の3FMd7及びPFPMAd5が共重合して第1樹脂層22(1)が形成される。この際に、混合溶液42(α)は粘度が低いため十分な流動性を有しており、さらに、トレイ30はその型36の開口が常に上方を向いた状態になっているので、混合溶液42(1)の界面は重力によりレべリング(平滑化)される。これにより、凹凸のない第1樹脂層22(1)の界面を形成することができる。
【0046】
次いで、第1樹脂層22(1)が形成されたトレイ30は、第2注入ユニット32(2)と対向する位置まで搬送される。第2注入ユニット32(2)は、トレイ30の型36内の第1樹脂層22(1)上に混合溶液42(2)を注入する。このトレイ30は、再び第2乾燥室39(2)内に搬送されて、この搬送中に第2樹脂層22(2)が形成される。以下、同様にして混合溶液42(α)[α=3〜N]の注入と、樹脂層22(α)[α=3〜N]の形成とが繰り返される。そして、図5に示すように、トレイ30の型36内に第1〜N樹脂層22(α)が順次積層してコア素片20が形成される。なお、図中のW1、W2、θは、型36の寸法・形状を表したものであり、詳しくは後述するのでここでは説明を省略する。
【0047】
このように、一つの樹脂層22(α)の上に次の混合溶液42(α+1)を注入して共重合させると、混合溶液42(α+1)中のモノマー(3FMd7及びPFPMAd5)の一部が樹脂層22(α)内に僅かに溶け込む。そのため、樹脂層22(α)と樹脂層22(α+1)とが界面で強固に接着して、光学的な欠陥が発生しにくくなる。
【0048】
また、本実施形態では、隣接する樹脂層22(α)と樹脂層(α+1)との屈折率の差Δnが、5×10-5≦Δn<5×10-3を満たすように、第1〜第N混合溶液42(α)中の3FMd7及びPFPMAd5の配合比を調整している。これにより、各樹脂層22(α)間の界面で曇りを生じさせずに透明性を保つことができるので、GI型POF素線17の光学性能の劣化が防止される。
【0049】
図3に示すように、トレイ30は、第N樹脂層22(N)が形成された後、第N乾燥室39(N)の排出口48より重合室31外に排出される。排出口48より排出されたトレイ30の搬送経路上には、取出しユニット34が設けられている。この取出しユニット34としては、コア素片20を把持して型36内から取り出す把持ユニットや、コア素片20を吸着して型36内から取り出す吸着ユニット等の各種ユニットが用いられる。なお、図示は省略するが、例えばトレイ30内に押出しピンからなる押出機構を設けて、取出し時にコア素片20を型36内から押し出すようにしてもよい。これにより、取出しユニット34がコア素片20を把持または吸着し易くなるので、コア素片20を型36内から容易に取り出すことができる。取出しユニット34により取り出されたコア素片20は、図示しない集積装置に集積される。
【0050】
取出しユニット34によりコア素片20が取り出されたトレイ30は、無端チェーン44の搬送に伴い再び第1注入ユニット32(1)と対向する位置まで搬送される。以下、同様にして各トレイ30の型36内に、第1〜第N樹脂層22(α)が順次積層されてコア素片20が形成され、形成されたコア素片20が取出しユニット34により順次取り出される。
【0051】
図2及び図6に示すように、コア素片形成装置25で形成されたコア素片20を中心軸Cとなる任意の軸周りに8個組み合せることで、上述の屈折率分布を有するコア19が形成される。なお、組み合せ時には各コア素片20が位置ずれしたりしないように、専用の位置決め冶具等を用いて組み合せることが好ましい。
【0052】
コア素片20を組み合せてコア19が形成されたら、クラッドパイプ装着工程14においてコア19の外側面にクラッドパイプ(クラッド)21が装着される(図1及び図2参照)。このクラッドパイプ21は、図示は省略するが、溶融押出製造法などを用いてコア19よりも屈折率の低い材料、例えばフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)等より形成される。このクラッドパイプ21は、コア19の外側面に装着された後、熱収縮されてコア19の外側面に密着される。これにより、プリフォーム18が形成される。なお、クラッドパイプ21は、コア19の保護や、伝送損失の増加の抑制及び曲げ損失の低減などの光学特性の向上の役割も果たす。そのため、コア19の外側面上に径の異なる複数のクラッドパイプ21を装着するようにしてもよい。形成されたプリフォーム18は、延伸工程15を構成する延伸装置50にセットされる。
【0053】
図7に示すように、延伸装置50は保持アーム52、アーム駆動用スクリュウ53、プリフォームホルダ54、減圧ユニット55、延伸ヒータ56、引取りローラ対57、巻取りユニット58から構成される。
【0054】
保持アーム52は、アーム駆動用スクリュウ53に取り付けられている。そして、アーム駆動スクリュウ53が図示しないモータによって回転駆動されると、保持アーム52が図中上下方向に移動される。この保持アーム52には、プリフォーム18の一端を把持するプリフォームホルダ54が設けられている。
【0055】
プリフォームホルダ54には、プリフォーム18の一端に連通した通気孔60が形成されている。そして、この通気孔60の他端側には、チューブ61を介して減圧ユニット55が接続されている。減圧ユニット55としては、例えば真空ポンプなどが用いられる。この減圧ユニット55は、チューブ61、通気孔60を介して空気を吸引する。この際に、予めプリフォーム18の他端(図中下端)を熱溶融したPVDFに浸漬させておき、その他端側に開口したプリフォーム18の中空部18a(図6参照)の開口や、コア19とクラッドパイプ21との間の隙間を封止しておく。これにより、中空部18aや、コア19とクラッドパイプ21との間の隙間が減圧された状態となる。
【0056】
アーム駆動スクリュウ53が回転され、保持アーム52が図中下方向に移動されると、プリフォーム18の先端が略円筒形状の延伸ヒータ56内に挿入される。プリフォームホルダ54と延伸ヒータ56との間は円筒カバー62で覆われており、溶融前のプリフォーム18に塵埃が付着するのが防止される。そして、延伸ヒータ56内に挿入されたプリフォーム18はその先端から少しずつ溶融され、延伸される。この際に、中空部18aや、コア19とクラッドパイプ21との間の隙間は、減圧ユニット55により減圧されているので溶融の際に消失する。これにより、空隙(欠陥)のないGI型POF素線17が得られる。また、プリフォーム18が溶融・延伸される際に、互いに隣接するコア素片20が接合される。各コア素片20の接合面は、光の伝播方向に平行な方向に延び、且つ中心軸C(図2参照)を通る面に対して平行である。従って、このような各コア19の接合面では、接合面が中心軸C(図2参照)に対して直交している場合や、前記特許文献3記載のプリフォームのように接合面が中心軸Cを囲うように形成されている場合などと比較して、接合面の欠陥による伝送損失の上昇などの性能劣化が起こりにくい。
【0057】
GI型POF素線17は、延伸ヒータ56の鉛直下方に配置された引取りローラ対57により所定の引き取り速度で引き取られる。また、この引取り速度に応じて保持アーム52は図中下方に移動される。そして、引取りローラ対57により引き取られたGI型POF素線17は、巻取りユニット58によってコイル状に巻き取られる。
【0058】
巻取りユニット58によりコイル状に巻き取られたPOFコイル59は、被覆工程16(図1参照)を構成する図示しない被覆装置にセットされる。この被覆装置(図示せず)としては、電気ケーブルや石英系光ファイバケーブルの製造ラインに用いられている被覆装置を用いることができる。なお、GI型POF素線17に対して熱ダメージを与えることがないように、被覆装置の前後に水槽を配置してPOFを冷却することが好ましい。
【0059】
図8に示すように、被覆工程16では、POFコイル59から引き出されたGI型POF素線17に第1被覆材60を被覆してGI型POFコード61を形成し、このGI型POFコード61に抗張力繊維63、第2被覆材64を順次被覆してGI型POFケーブル10を形成する。なお、図示は省略するが、GI型POFケーブル10を形成する際に複数本のGI型POFコード61を束ねた状態で張力繊維63、第2被覆材64を被覆するようにしてもよい。
【0060】
第1被覆材60は、GI型POF素線17を保護するとともに、その機械的強度を補う。第1被覆材60を形成する材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)等が挙げられる。中でもPEが好ましく、低密度ポリエチレン(LDPE)またはリニアー低密度ポリエチレン(LLDPE)が特に好ましい。そして、第1被覆材60には、被覆後のGI型POF素線17の性能や商品価値を向上させるために、酸化防止剤、遮光剤、滑剤、無機フィラー、着色剤、ポリテトラフッ化エチレン(PTFE)微粒子等を添加することが好ましい。
【0061】
これらの添加剤としては液体のものと固体のものとの両方があるが、後者の場合には混合が不均一になりやすいために、これを充分微細な粉体にしてから混合添加することが好ましい。これらの微粒子の大きさが充分小さくない場合には、GI型POF素線17が被覆された際に、これら微粒子のうち主に第1被覆材60の内面及び内面付近に存在するものによりGI型POF素線17に局部的な側圧がかかってしまう。その結果、GI型POFコード61に局部的な歪みが与えられて、伝送損失が大きくなることがある。このため、これら添加剤の粒子径は1μm以下であることが望ましい。また、第1被覆材60に、既知の難燃剤(例えば縮合リン系の難燃剤である旭電化工業(株)社製のアデカスタブFP−2000,2100、T−1063Fなど)を添加しても良い。
【0062】
抗張力繊維63は、GI型POFコード61よりも高い弾性率を有する繊維である。この抗張力繊維63を第1被覆材60と第2被覆材64との間に設けることで、GI型POFケーブル10の力学的強度、引っ張り強度などを向上させることができる。さらに、この抗張力繊維63と後述の第2被覆材64とを組み合せることで、GI型POFケーブル10の難燃性を強化することができる。
【0063】
抗張力繊維63としては、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、カーボン繊維などを用いることができ、中でもアラミド繊維が難燃性の向上の点で特に好ましい。GI型POFケーブル10の力学的強度や引張強度等をさらに向上させるために、金属線等の線状体を抗張力繊維とともに用いてもよい。金属線の材料としては、ステンレス、メッキを付した鉄、あるいは、電気配線との複合化を狙って銅などが用いられるが、いずれもこれら材料に限定されるものではない。
【0064】
第2被覆材64を形成する材料としては、被覆によるGI型POF素線17の熱劣化を抑制するために、できるだけ低温での流動性が高いものが好ましいが、固化後の力学的強度も必要であるので、この両者の兼ね合いで選択される。
【0065】
第2被覆材64を形成する材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−ビニルアセテート共重合体、ナイロン(ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11など)、エチレンエチルアクリレート及びその変性ポリマーなどが挙げられる。中でもエチレン−ビニルアセテート共重合体が好ましく、エチレン−ビニルアセテート共重合体の中でもエチレン構造の繰り返し単位が35〜45重量%であるものがより好ましい。なお、本発明は、これらのポリマーの分子量、分子量分布、分岐の程度、架橋の程度に依存するものではなく、また、官能基の種類等を適宜変えてもよい。また、これらのポリマーを必要に応じてブレンドして使用することもできる。
【0066】
また、第2被覆材64に、難燃剤として金属水酸化物などを含有してもよい。さらに、難燃性向上のために、金属水酸化物に加えて、第2被覆材64に難燃助剤を添加してもよい。難燃助剤としては、公知のものを各種用いることができる。例えば、発泡断熱効果のあるポリリン酸アンモニウム等の縮合リン酸エステル化合物が有効であり、窒素系化合物では、過酸化処理した4−ブチルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンと2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン、及びシクロヘキサン、N,N’エタン−1,2−ジイルビス(1,3−プロパンジアミン)との反応生成物などが有効である。これら難燃助剤を加える事により、金属水酸化物の含有量を下げる事ができ、GI型POFケーブル10の柔軟性を向上させることが可能である。
【0067】
また、第2被覆材64に含まれる可燃性物質の割合を減らす、第2被覆材64の内表面及び外表面の面状を改良して滑り性を付与する、等の目的で、タルク、シリカ、カルシウムなどを添加してもよい。
【0068】
また、形成されたGI型POFケーブル10が、難燃性の規格であるUL1581(VW−1)に合格するためには、GI型POFケーブル10を燃焼しながら溶融・滴下(ドリップ)した際に、このケーブル10の下に置かれた脱脂綿に着火しない事が必要条件となる。従って、このドリップ抑制の観点からの難燃性向上のためにも、第2被覆材64のポリマー成分のうち70〜90重量%は、メルトフローレート(MFR)が40〜70g/10分のエチレン−ビニルアセテート共重合体であることが好ましく、このエチレン−ビニルアセテート共重合体においてエチレン部が35重量%以上45重量%以下であることがより好ましい。
【0069】
さらに、ドリップ抑制の点から、第2被覆材64にメラミン樹脂などの熱硬化性樹脂やエポキシ樹脂、ポリテトラフッ化エチレン(PTFE)等の微粒子などを添加することが特に好ましい。なお、ジオクタデシルジメチルアンモニウムで変性したモンモリロナイトやベントナイト、ヘクトライトのようなナノクレーや、アルミニウム、銅、鉄などのナノ金属化合物粒子を第2被覆材64へ微量添加することも、熱硬化性樹脂やエポキシ樹脂等の粒子添加と同じような効果がある。
【0070】
また、第2被覆材64には、酸化チタン、着色のためのカーボン等を添加してもよい。これにより、長期間の使用で第2被覆材64の表面が黄ばんでしまうのを抑制し、白色度を保つあるいは変色を目立たぬようにすることができるので、商品価値が向上する。
【0071】
また、第1被覆材60と同様に、GI型POFケーブル10としての性能や商品価値をさらに向上させるために、酸化防止剤、遮光材、滑材、無機フィラー、着色剤、PTFE微粒子等を添加してもよい。
【0072】
上述のような第1被覆材60、抗張力繊維63、第2被覆材64が順次被覆されて形成されたGI型POFケーブル10は、図示しないケーブル巻取りユニットによりコイル状に巻き取られた後、出荷される。
【0073】
次に本実施形態の作用について説明する。コア素片形成装置25の運転開始操作がなされると、チェーンスプロケット46,47が回転されて、無端チェーン44の搬送が開始され、これに伴いトレイ30の搬送が開始される。トレイ30が第1注入ユニット32(1)と対向する位置まで搬送されたら、第1注入ユニット32(1)により混合溶液42(1)が型36内に注入される。次いで、トレイ30は、開口40より第1乾燥室39(1)内に搬送され、その搬送中に混合溶液42(1)中の3FMd7及びPFPMAd5が共重合して第1樹脂層22(1)が形成される。
【0074】
引き続きトレイ30の搬送が継続して、以下、同様に混合溶液42(α)[α=2〜N]の注入と、樹脂層22(α)[2=3〜N]の形成とが繰り返される。これにより、トレイ30の型36内に第1〜第N樹脂層22(α)が順次積層してコア素片20が形成される(図5参照)。トレイ30は、第N樹脂層22(N)が形成された後、排出口48より重合室31外に排出される。そして、取出しユニット34により形成されたコア素片20がトレイ30の型36から取り出される。取り出されたコア素片20は、図示しない集積装置等に集積される。
【0075】
集積されたコア素片20は、組立作業者等により組み合わせられてコア19となる(図6参照)。コア19が形成されたら、コア19の外側面にクラッドパイプ(クラッド)21(図2参照)が装着される。このクラッドパイプ21は、熱収縮されてコア19の外側面に密着される。これにより、プリフォーム18が形成される。形成されたプリフォーム18は、延伸装置50のプリフォームホルダ54にセットされる(図7参照)。この際に、予めプリフォーム18の他端(図中下端)を熱溶融したPVDFに浸漬させておき、その他端側に開口したプリフォーム18の中空部18aの開口や、コア19とクラッドパイプ21との間の隙間を封止しておく。
【0076】
プリフォーム18がセットされたら、減圧ユニット55を駆動して中空部18aや、コア19とクラッドパイプ21との間の隙間を減圧させる。次いで、保持アーム52を図中下方向に移動させて、プリフォーム18の先端を延伸ヒータ56内に挿入させる。これにより、プリフォーム18はその先端から少しずつ溶融され、延伸されてGI型POF素線17が得られる。GI型POF素線17は、引取りローラ対57により所定の引き取り速度で引き取られる。引取りローラ対57により引き取られたGI型POF素線17は、巻取りユニット58によってコイル状に巻き取られて、POFコイル59となる。
【0077】
POFコイル59は、被覆工程16を構成する図示しない被覆装置にセットされる。そして、POFコイル59から引き出されたGI型POF素線17に第1被覆材60が被覆されてGI型POFコード61が形成される。次いで、このGI型POFコード61に抗張力繊維63、第2被覆材64が順次被覆されてGI型POFケーブル10が形成される。
【0078】
以上のように、本実施形態では樹脂層22(α)を屈折率の高いものから順に積層して形成したコア素片20を組み合せることで、GI型POF素線17の母材となるプリフォーム18を形成するようにしたので、従来のGI型POFよりも伝送損失が低く、且つ優れた伝送帯域特性を有するGI型POF(GI型POFコード61、GI型POFケーブル10)が得られる。また、プリフォーム18を複雑な工程を経ずに安価に製造することができる。
【0079】
このようにして形成されたGI型POFケーブル10は、種々の発光素子、受光素子、他の光ケーブル、光バス、導光板、光カプラ、光信号処理装置、接続用光コネクタ等とともに用いることにより光信号を伝送するシステムを構成することができる。この際、必要に応じて他の光ファイバなどと組合せてもよい。それらに関連する技術としてはいかなる公知の技術も適用することができる。例えば、プラスティックオプティカルファイバの基礎と実際(エヌ・ティー・エス社発行)、日経エレクトロニクス2001.12.3号110頁〜127頁「プリント配線基板に光部品が載る,今度こそ」などを参考にすることができる。
【0080】
また、前記文献に記載の種々の技術と組み合わせることによって、コンピュータや各種デジタル機器内の装置内配線,車両や船舶などの内部配線,光端末とデジタル機器,デジタル機器同士の光リンクや一般家庭や集合住宅・工場・オフィス・病院・学校などの屋内や域内の光LANなどをはじめとする高速大容量のデータ通信や電磁波の影響を受けない制御用途などの短距離に適した光伝送システムに好適に用いることができる。特に本実施形態のGI型POF素線17では、コア19を多数のコア素片20を組み合せて形成するようにしたので、コア19内を螺旋状に回転しながら伝播するスキュー光を各コア素片20の接合面を通過する際に散乱させて減衰させることができる。その結果、伝送損失は若干高くなるが、スキュー光を減衰させることで光信号のひずみ成分を除去できるので、帯域を広くすることができる。そのため、特に筐体内配線などの極短距離の高速通信に適している。
【0081】
さらに、IEICE TRANS. ELECTRON.,VOL.E84−C,No.3,MARCH 2001,p.339−344 「High−Uniformity Star Coupler Using Diffused Light Transmission」,エレクトロニクス実装学会誌 Vol.3,No.6,2000 476頁〜480頁「光シートバス技術によるインタコネクション」の記載されているものや、特開2003−152284号公報に記載の導波路面に対する発光素子の配置;特開平10−123350号、特開2002−90571号、特開2001−290055号などの各公報に記載の光バス;特開2001−74971号、特開2000−329962号、特開2001−74966号、特開2001−74968号、特開2001−318263号、特開2001−311840号などの各公報に記載の光分岐結合装置;特開2000−241655号などの公報に記載の光スターカプラ;特開2002−62457号、特開2002−101044号、特開2001−305395号などの各公報に記載の光信号伝達装置や光データバスシステム;特開2002−23011号などに記載の光信号処理装置;特開2001−86537号などに記載の光信号クロスコネクトシステム;特開2002−26815号などに記載の光伝送システム;特開2001−339554号、特開2001−339555号などの各公報に記載のマルチファンクションシステム;や各種の光導波路、光分岐器、光結合器、光合波器、光分波器などと組み合わせることで、多重化した送受信などを使用したより高度な光伝送システムを構築することができる。なお、以上の光伝送用途以外にも、信号伝達用の導光板などの成形品、導光型の照明器具、エネルギー伝送、イルミネーション、レンズ、センサ分野にも用いることができる。
【0082】
なお、上記実施形態では、トレイ30に形成された型36の断面が略V字形状に形成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。図9に示すように、型36の断面が略V字形状であると混合溶液42(α)の粘度や表面張力により、型36と接する混合溶液42(α)の界面部分68が僅かに上昇することがある。その結果、GI型POF素線17の光学性能が若干低下するおそれがある。そこで、例えば図10及び図11に示すように、断面が逆V字形状の型70を有するトレイ71を用いるようにしてもよい。
【0083】
トレイ71を用いる場合には、トレイ30を用いる場合とは逆に樹脂層22(α)を屈折率の低いものから順に積層してコア素片20を形成すればよい。この際に、トレイ71は、その型70の開口70aの面積が底部70bの面積よりも小さく形成されているので、形成されたコア素片20を取り出すことが困難である。
【0084】
そこで、トレイ71を、例えば支持台72と、コア素片20の短手方向の側面に接する側壁73(図11参照)と、コア素片20の長手方向の側面に接する側壁74とから構成する。側壁73は、支持台72と一体に形成される。側壁74は、その一部が支持台72に形成された嵌合溝75に嵌合することで、支持台72に着脱自在に嵌め込まれている。従って、コア素片20が形成された後、側壁74を支持台72から取り外すことで、コア素片20の取り出しを容易に行うことができる。ここで、側壁74の取り外し、及びコア素片20取り外し後の側壁の取り付けは、作業者が行ってもよいし、または、専用のユニットを用いて行うようにしてもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、コア素片20を組み合せてコア19を形成し、このコア19にクラッドパイプ(クラッド)21を装着してプリフォーム18を形成するようにしているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図12に示すように、樹脂層22(α)を屈折率の高いものから順に積層してコア素片20を形成した後、さらに、このコア素片20の第N樹脂層22(N)上に、PVDF等からなるクラッド素片(クラッド層)76を同様の方法で積層して形成するようにしてもよい。この場合は、コア素片20を組み合わせたときに同時にクラッド素片76も組み合わされて、プリフォーム18が形成される。
【0086】
なお、本実施形態では、1つのトレイ30に型36が1つしか形成されていないが、本発明はこれに限定されるものではなく、1つのトレイ30に複数の型36が形成されていてもよい。また、トレイ30を光透過性の光学材料で作成し、そこにコア形成用モノマーなどの材料を注入して重合させた後、コア素片20をトレイ30から取り出さずに、そのまま光導波路などの信号伝達用部材として使用することも出来る。この場合には、トレイ30やコア素片20は、上記実施形態で例示した形状に限定される事はない。
【0087】
また、上記実施形態では、コア素片20は、コア19をその中心軸Cの周りに8つに分割した形状に形成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、コア19を任意の数に分割した形状に形成されていてもよい。また、コア19は中空部18a(図6参照)を有する略管状に形成されているが、本発明はこれに限定されるものではく、中空部18aを有さない略柱状に形成されていてもよい。
【0088】
なお、上記実施形態では、第1〜第N乾燥室39(α)が鉛直方向に配列された重合室31を有するコア素片形成装置25を例に挙げて説明を行ったが、コア素片形成装置はこれに限定されるものではない。以下、図13を用いて他の実施形態のコア素片形成装置80について説明を行う。ここで、コア素片形成装置25と同一の部材については同一符号を付してその説明は省略する。
【0089】
コア素片形成装置80は、トレイ循環ユニット81及び第1〜第N乾燥室82(α)[α=1〜N]と、上述のトレイ30、トレイ保持フレーム45(図4参照)、第1〜第N注入ユニット32(α)[α=1〜N]、取出しユニット34とから構成される。トレイ循環ユニット81は、所定距離をあけて配置された一対のチェーンスプロケット83,84と、両チェーンスプロケット83,84に掛け渡された一対の無端チェーン44とから構成される。そして、図中上側のトレイ30の搬送経路上に、第1〜第N注入ユニット32(α)と第1〜第N乾燥室82(α)とが交互に配置されている。
【0090】
このコア素片形成装置80でも、トレイ30が搬送される間に混合溶液42(α)の注入と、樹脂層22(α)の形成とが繰り返されて、トレイ30の型36内に第1〜第N樹脂層22(α)[α=1〜N]が順次積層してコア素片20が形成される。このようなコア素片形成装置80は、コア素片形成装置25と比較して広い設置スペースを必要とするが、逆に構造がシンプルになるという利点がある。
【0091】
[実施例]
以下、本発明の効果を明確にするために、上述の方法でGI型POF素線17を製造して、その伝送損失及び伝送帯域を測定した。最初にGI型POF素線17の製造条件についての説明を行う。
【0092】
トレイ30として、型36の開口の短手方向の長さW1が30mm、型36の底面の短手方向の長さW2が2mm、型36の両側面がなすテーパ角度θが45°のものを用いた(図5参照)。そして、上述のコア素片形成装置25を用いて、トレイ30内への混合溶液42(α)の注入と、樹脂層22(α)の形成とを11回繰り返して行い、トレイ30内に第1〜第11樹脂層22(α)[α=1〜11]を順次積層してコア素片20を形成した。各混合溶液42(α)[α=1〜11]中の3FMd7、PFPMAd5の混合比率、及び各層樹脂層22(α)の厚みを下記表1に記載した。なお、表1中の混合比率は、両成分の混合比率を容積比で表したものである。例えば、表中において3FMd7が10、PFPMAd5が7である場合には、3FMd7とPFPMAd5とを容積で10:7の比率で混合している。
【0093】
第1〜第10樹脂層22(α)[α=1〜10]形成時には、1.2気圧、90℃の条件で3時間熱処理して重合させた。また、第11樹脂層22(11)形成時には、1.2気圧、90℃の条件で11時間熱処理して重合させた。このようにして形成されたコア素片20の各層ごとの屈折率を測定して下記表1に記載した。
【0094】
【表1】
【0095】
形成されたコア素片20を8個組み合せてコア19を形成した。そして、このコア19に厚み0.5mmのPVDF製のクラッドパイプ(クラッド)21を装着した。次いで、このクラッドパイプ21を熱収縮させてコア19の外側面に密着させて、プリフォーム18を形成した。このプリフォーム28を上述の延伸装置50にセットして、外径480μmのGI型POF素線17に延伸した。
【0096】
このように形成されたGI型POF素線17の伝送損失と伝送帯域とを測定した。その結果、GI型POF素線17の波長650nmにおける伝送損失は133dB/Kmであり、波長780nmにおける伝送損失は117dB/Kmであり、波長850nmにおける伝送損失は128dB/Kmであった。なお、ドーパントを用いて作成されたGI型POFファイバーとして特開2005−099196号公報を例に挙げると、波長650nmにおける伝送損失は170dB/Kmである。
【0097】
また、このGI型POF素線17の伝送帯域は波長850nmにおいて距離100mで3GHzであった。なお、同様に特開2005−099196号公報を例に挙げると、伝送帯域は波長780nmにおいて距離100mで1.2GHz以下である。
【0098】
以上の結果より、本発明のプリフォーム18を延伸したGI型POF素線17が、上述の溶融押出法や界面ゲル重合法で形成されたGI型POFと同等以上の伝送損失であり、且つ優れた伝送帯域特性を有することが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】GI型POFケーブル製造工程のフロー図である。
【図2】プリフォームの斜視図である。
【図3】コア素片形成装置の概略図である。
【図4】コア素片形成装置に設けられたトレイ及びトレイ保持フレームの斜視図である。
【図5】トレイの断面図であり、コア素片形成後の状態を示したものである。
【図6】コアの断面図である。
【図7】延伸装置の概略図である。
【図8】GI型POFケーブルの断面図である。
【図9】図5を拡大表示した拡大図である。
【図10】他の実施形態のトレイの断面図であり、コア素片形成前の状態を示したものである。
【図11】他の実施形態のトレイの断面図であり、コア素片形成後に側壁を取り外した状態を示したものである。
【図12】トレイの断面図であり、コア素片上にクラッド素片を形成した状態を示したものである。
【図13】コア素片形成装置の他の実施形態を示した概略図である。
【符号の説明】
【0100】
10 GI型プラスチック光ファイバ(POF)ケーブル
17 GI型POF素線
18 プリフォーム
19 コア
20 コア素片
22(α) 第1〜第N樹脂層
25 コア素片形成装置
30 トレイ
32(α) 第1〜第N注入ユニット
39(α) 第1〜第N乾燥室
42(α) 第1〜第N混合溶液
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック光学材料の母材となるプラスチック光学材料用プリフォーム及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ファイバとしてプラスチック光ファイバがよく知られている。プラスチック光ファイバ(以下、単にPOFという)は、石英系光ファイバと比較すると光の伝送損失が大きいため長距離の光伝送には向かないものの、プラスチックの性質により大口径化が容易である。そのため、POFは、周辺部品や機器との接続容易性、端末加工容易性、高精度の調芯が不要になるメリットを有する。また、この他にもPOFには、人体への突き刺し災害等の危険性の低さ、高い柔軟性による易加工性や易敷設性や耐振動性、そして低価格等のメリットがある。これにより、POFは、家庭や、車載用途に注目されているだけでなく、高速データ処理装置の内部配線や、DVI(Digital Video Interface)リンク、その次世代規格のHDMI(High Definition Multimedia Interface)リンク用のケーブルとしても利用が検討されている。
【0003】
近年、POFの一態様として、中心から外側に向かって屈折率が連続的に低くなるコアと、コアよりも低い屈折率を有し、コアの外側面を覆うクラッドとを有するグレートインデックス(GI)型のPOFが急速に普及し始めている。このGI型POFは、コアの特有の屈折率分布により伝送する光信号が歪みにくくなるため、広帯域の光信号の伝送を行えるという利点がある。このようなGI型POFを製造する方法としては、GI型POF原料であるポリマーを溶融押出により繊維状(GI型POF原糸)にしてGI型POFとする方法(溶融押出法)や、GI型POFの母材となる管形状または柱形状のプリフォーム(母材)を形成し、これを長手方向に延伸してGI型POFとする方法が一般的である。
【0004】
GI型POFの溶融押出製造法については種々の提案がされており、例えば特許文献1に記載されているように、ペレット状にしたコア形成用ポリマーとクラッド形成用ポリマーとを溶融押出装置に供する。溶融押出装置では両ポリマーを溶融状態とした後に、装置内の押出ダイによりコア及びクラッドの2層構造を形成する。また、押出ダイの内部では2層構造とされた両ポリマーの液流路の温度調整を行って、コア用ポリマーに添加された屈折率調整剤(ドーパント)を熱拡散させることで、上述のような屈折率分布を有するGI型POF原糸を形成してGI型POFとしている。
【0005】
また、ドーパントを熱拡散させる代わりに、溶融押出装置で共押出し(多層溶融押出し)を行って内側の層ほど屈折率が高くなるようにした多層のコアを形成する方法もよく知られている。この場合には、ドーパントの添加量を変えたコア形成用ポリマーを層数分だけ用意しておく。
【0006】
プリフォームを延伸してGI型POFとする方法では、回転ゲル重合法を利用してプリフォームを形成するのが一般的である。具体的には、特許文献2に記載されているように、溶融押出法等で形成されたクラッドの内部に、ドーパントが添加されたコア形成用モノマーを注入する。次いで、このクラッドを回転重合装置にセットして回転重合させることで、コア形成用モノマーの重合の進行と共にコア中心部のドーパントの濃度が高くなるため、上述のような屈折率分布を有するプリフォームが形成される。そして、このプリフォームを延伸装置にセットして長手方向に延伸させることでGI型POFが得られる。
【0007】
また、回転ゲル重合法を利用してプリフォームを形成する代わりに、特許文献3に記載されているように、一端側から他端側に向かって屈折率が連続的に低くなる長尺フイルムを形成し、このフイルムをその一端側を中心としてロール状に巻き取ることで上述のような屈折率分布を有するプリフォームを形成する方法も知られている。また、屈折の異なる2本以上のパイプを入れ子にした多重パイプをプリフォームとして用いる方法も知られている。
【特許文献1】特開2000−356716号公報(第6〜8頁、第1〜2図参照)
【特許文献2】特許第3332922号公報(第7〜9頁参照)
【特許文献3】特開2005−37910号公報(第9頁、第1図参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前記特許文献1に記載されている方法では、ドーパントを熱拡散させることで屈折率分布を持たせるようにしているが、熱拡散ではドーパントの移動の制御が難しいので高度な屈折率分布制御が行えない。その結果、高伝送帯域を持つGI型POFの製造が難しくなってしまう。また、溶融押出法は、工程数が多くなり、その生産効率も悪いため、GI型POFの製造コストが高くなってしまうという問題もある。
【0009】
多層溶融押出しを行う場合には、層ごとにドーパントの混合量を変えたコア用ポリマーを別途容易する必要があり、大掛かりな重合設備が必要になる。その結果、重合設備の運転コストが高くなるので、GI型POFの製造コストが高くなってしまう。なお、重合設備の数が層数よりも少ない場合には、1つのコア用ポリマーを形成した後に設備を洗浄する必要があるので、同様にGI型POFの製造コストが高くなってしまう。また、コア用ポリマーを形成する重合設備はクリーン化が必要なため、設備の製造コスト及び運転コストが高くなってしまう。さらに、多層溶融押出しを行う際に、層数が5層以上になると各層の界面制御が非常に困難となるので、伝送損失及び伝送帯域が悪化してしまう。また、溶融押出装置も層数が増えた分だけ大型化してしまうので、設置に広いスペースが必要となり、装置の製造コストも高くなってしまう。
【0010】
前記特許文献2に記載されているように、回転ゲル重合法を利用してプリフォームを形成する場合にも、同様にドーパントの移動の制御が難しいので高度な屈折率分布制御が行えないという問題がある。さらに、ドーパントの移動で屈折率分布を形成するため、ドーパント以外の他の素材、例えばコポリマー(共重合体)等を用いて屈折率分布を持たせることが難しい。また、溶融押出法と同様に工程数が多くなり、その生産効率も悪いという問題もある。
【0011】
前記特許文献3に記載されているように、屈折率が連続的に変化する長尺フイルムをロール状に巻き取ってプリフォームを形成する場合には、屈折率を精度よく変化させた長尺フイルムを形成すること自体が困難である。さらに、長尺フイルムをロール状に巻き取った際に、巻き取られたフイルム同士が完全に密着していないと、GI型POFの光学性能が劣化してしまう。
【0012】
多重パイプをプリフォームとして形成する場合には、多層溶融押出しを行う場合と同様に大掛かりな重合設備が必要になってしまう。さらに、このプリフォームを延伸させた際に全てのパイプが先端側から一様につぶれるとは限らず、各層(パイプ)が密着しない部分(欠陥)が発生してしまうおそれがある。
【0013】
本発明は上記課題を解決するためのものであり、伝送損失が低く、且つ優れた伝送帯域特性を有するGI型POFなどのプラスチック光学材料を製造可能なプラスチック光学材料用プリフォーム及び、このプラスチック光学材料用プリフォームを複雑な工程を経ずに安価に製造する製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、光伝送路となるコアと、前記コアよりも低い屈折率を有し、前記コアの外側面を覆う略管状のクラッドとからなるプラスチック光学材料用プリフォームの製造方法において、前記コアをその中心軸周りに複数に分割した形状のコア素片を形成し、前記中心軸となる任意の軸を囲うように前記コア素片を組み合わせて前記コアを形成することを特徴とする。
【0015】
また、前記コア素片は、屈折率の異なるプラスチック層を5層以上積層して形成されていることが好ましい。また、前記樹脂層は、前記コア素片を組み合わせて形成された前記コアの屈折率が前記外側面から前記中心軸に向かうに従い次第に高くなるような順序で積層されることが好ましい。さらに、隣接する前記樹脂層の屈折率の差Δnが、5×10-5≦Δn<5×10-3を満たすことが好ましい。
【0016】
また、前記クラッドを前記中心軸周りに前記コア素片と同数に分割した形状のクラッド素片を前記コア素片と一体に形成し、前記コア素片の組み合せ時に、前記クラッド素片も同時に組み合せて前記クラッドを形成することが好ましい。
【0017】
また、本発明は、光伝送路となるコアと、前記コアよりも低い屈折率を有し、前記コアの外側面を覆う略管状のクラッドとからなるプラスチック光学材料用プリフォームにおいて、前記コアは、前記コアをその中心軸周りに複数に分割した形状のコア素片が前記中心軸となる任意の軸を囲うように組み合わされて形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明のプラスチック光学材料用プリフォームの製造方法は、プリフォームのコアをその中心軸周りに複数に分割した形状のコア素片を形成し、前記コア素片を組み合わせて前記コアを形成するようにしたので、従来のプラスチック光学材料よりも伝送損失が低く、且つ優れた伝送帯域特性を有するプラスチック光学材料の母材となるプリフォームを複雑な工程を経ずに安価に製造することができる。
【0019】
本発明のプラスチック光学材料用プリフォームは、そのコアが前記コアをその中心軸周りに複数に分割した形状のコア素片を組み合わせて形成されるようにしたので、同様にして伝送損失が低く、且つ優れた伝送帯域特性を有するプラスチック光学材料の母材となるプリフォームを安価に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、GI型POFケーブル10の製造工程11の一例を示したフロー図である。製造工程11は、大別してコア素片形成工程13、クラッドパイプ装着工程14、延伸工程15、被覆工程16から構成される。
【0021】
本実施形態では、コア素片形成工程13及びクラッドパイプ装着工程14において、GI型POF(GI型POF素線)17の母材となるプラスチック光ファイバプリフォーム(以下、単にプリフォームという)18を形成する。具体的には後述するが、コア素片形成工程13においては、プリフォーム18のコア19(図2参照)を形成するためのコア素片20を形成し、クラッドパイプ装着工程14においては、コア19にクラッドとなるクラッドパイプ21(図2参照)を装着してプリフォーム18を形成する。延伸工程15では、プリフォーム18を延伸してGI型POF素線17を形成する。そして、被覆工程16では、GI型POF素線17を被覆してGI型POFケーブル10を形成する。
【0022】
図2は、本発明のプリフォーム18の斜視図を示したものである。プリフォーム18は、上述したように光伝送路となる略管状のコア19と、コア19のコア外側面を覆う略管状のクラッドパイプ(クラッド)21とから構成される。コア19は、断面が略8角形状であり、その中心軸Cから外側面に向かって屈折率がほぼ連続的に低くなるような屈折分布(以下、単に屈折率分布という)を有している。クラッドパイプ21は、コア外側面を隙間無く覆って密着しなければならないが、そのために、必ずしもその中空部の断面形状が8角形状に形成されている必要はなく、中空部の断面形状は円形状でもよい。このクラッドパイプ21は、後述する組み合わされたコア素片20(コア19)に装着される。そして、クラッドパイプ21は、延伸時にパイプ21と組み合わされたコア素片20との隙間を減圧吸引させたり、熱収縮させたりする事によって、コア19に密着される。クラッドパイプ21は、コア19よりも低い屈折率を有している。
【0023】
コア19に上述の屈折率分布を持たせるため、本実施形態では、コア19をその中心軸Cの周りに8つに分割した形状のコア素片20を形成する。コア素片20は、詳しくは後述するが、屈折率の異なる透光性の第1〜第N樹脂層22(α)[α=1〜N](図5参照)を屈折率の高いものから順に少なくとも5層以上積層して形成されており、その断面は略台形状である。
【0024】
樹脂層22(α)の屈折率を各層ごとに変えるため、本実施形態では、重合後の屈折率が異なる2種類以上のコア形成用モノマーを異なる配合比で共重合させて樹脂層22(α)を形成する。これにより、各層に屈折率の差を発現させることができる。例えば、重合後の屈折率の低い方のコア形成用モノマーの配合割合を増やすことで屈折率を低くすることができ、屈折率が高い方のコア形成用モノマーの配合割合を増やすことで屈折率を高くすることができる。
【0025】
コア形成用モノマーとしては、下記の(a)〜(e)のものが例示できる。
(a) (メタ)アクリル酸エステル(フッ素含まず)
(b) 含フッ素(メタ)アクリル酸エステル
(c) スチレン系化合物
(d) ビニルエステル類
(e) 含フッ素主鎖環状モノマー類
【0026】
(a)としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−tert−ブチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ジフェニルメチル、アダマンチルメタクリレート、イソボニルメタクリレート、ノルボニルメタクリレート、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−tert−ブチル、アクリル酸フェニルなどが挙げられる。
【0027】
(b)としては、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレートなどが挙げられる。
【0028】
(c)としては、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレンなどが挙げられる。(d)としては、ビニルアセテート、ビニルベンゾエート、ビニルフェニルアセテート、ビニルクロロアセテートなどが挙げられる。(e)としては、ポリパーフルオロブタニルビニルエーテルや特開平8−334634などに例示される主鎖に脂肪環もしくは複素環を有するようなポリマーを形成するモノマーなどが挙げられる。なお、本発明はこれらに限定されるものではなく、モノマーの単独あるいは共重合体からなるポリマーが光学的な透明性を有し、且つポリマーの屈折率がGI型POF素線17を形成したときに所定の性能を発揮するような範囲で調整できるものであれば良い。
【0029】
具体的に、本実施形態ではコア形成用モノマーとして、重合体の屈折率が1.41を示し、水素原子が一部重水素原子とされた(重水素置換された)2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート(以下、3FMd7という)と、重合体の屈折率が1.49を示し、重水素置換されたペンタフルオロフェニルメタクリレート(PFPMAd5)とを用いる。そして、両者の配合比を調整することで、樹脂層(α)の屈折率を各層ごとに変えて、屈折率の高いものから順に積層を行う。
【0030】
この際に、本実施形態では3FMd7、PFPMAd5を共重合させてコポリマーとする際に重合開始剤を使用する。重合開始剤としては下記(a)〜(c)ものが例示される。
(a) 約80℃以上での使用が好ましいもの
(b) 40℃〜80℃程度での使用が好ましいもの
(c) −10℃〜40℃での使用が好ましいのも
これらの中でも、一般的には常温以上で使用することができる重合開始剤を用いることが好ましい。
【0031】
(a)としては、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド等が挙げられる。(b)としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、アゾビスイソブチルニトリル等が挙げられる。(c)としては、過酸化水素−第一鉄塩、過硫酸塩−酸性亜硫酸ナトリウム、クメンヒドロペルオキシド−第一鉄塩、過酸化ベンゾイル−ジメチルアニリン等が挙げられる。そして、これらの中でも過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチルニトリル等を用いることが好ましい。また、過酸化物−有機金属アルキル、酸素−有機金属アルキルなどを組み合せても重合反応を開始させることができる。
【0032】
また、本実施形態では、コポリマーとしたときの機械特性や熱物性などの各種物性値を全体にわたって均一に保つために、重合度の調整を行う。この重合度の調整は連鎖移動剤を用いて行う。連鎖移動剤については、併用するモノマーの種類に応じて、適宜、種類および添加量を選択できる。各モノマーに対する連鎖移動剤の連鎖移動定数は、例えば、ポリマーハンドブック第3版(J.BRANDRUPおよびE.H.IMMERGUT編、JOHN WILEY&SON発行)を参照することができる。また、該連鎖移動定数は大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊を参考にして、実験によっても求めることができる。
【0033】
上述した方法以外に、第1〜第N樹脂層22(α)の屈折率を各層ごとに変える方法として、各層を形成するコア形成用モノマーに屈折率調整剤(ドーパント)を添加し、各層ごとにドーパントの添加量を変えることで各層に屈折率の差を発現させる方法もある。この場合には、ドーパントの添加量を多くすることで、屈折率を高くすることができる。
【0034】
ドーパントとしては、高屈折率で分子体積が大きく、重合に関与しないものを用いることが好ましい。具体的には、ベンジルベンゾエート、ベンジルn−ブチルフタレート、ベンジルサルチレート、ベンジルフェニルエーテル、ベンゾイックアンハイドライド、ジベンジルエーテル、ジフェニルフタレート、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリフェニルフォスフェート、ジフェニル、ジフェニルメタン、ジフェニルエーテル、ジフェニルサルファイド、m−フェノキシトルエン、フェニルベンゾエート、1,2−プロパンジオールジベンゾエート、トリクレジルフォスフェート、ジブチルフタレート、ジフェニルスルフォキシドなどが挙げられる。また、ドーパントの代わりに、またはドーパントに加えて、屈折率が互いに異なる複数のポリマーの混合物や、屈折率が互いに異なる繰り返し単位をもつ共重合物等を用いることもできる。
【0035】
このように、第1〜第N樹脂層22(α)の屈折率を各層ごとに変えて、屈折率の高いものから順に積層して形成したコア素片20を中心軸C周りに8個組み合せることで、上述の屈折率分布を有するコア19を形成することができる。コア素片20は、コア素片形成工程13を構成するコア素片形成装置25により形成される。
【0036】
図3は、コア素片形成装置25の概略図を示したものである。このコア素片形成装置25は、コア素片20を連続生産するためのものであり、トレイ30、重合室31、第1〜第N注入ユニット32(α)[α=1〜N]、トレイ循環ユニット33、取出しユニット34から構成される。トレイ30は、略長方体形状の容器であり、その上面にはコア素片20と同じ形状の断面台形状の型(溝)36が形成されている。
【0037】
重合室31は、その内部が隔壁38により鉛直方向にN個に仕切られており、図中下方から順に第1〜第N乾燥室39(α)[α=1〜N]を有している。各乾燥室39(α)は、本実施形態では1.2気圧、90℃に保たれている。各乾燥室39(α)の一側面には開口40が形成されている。そして、各開口40の近傍には、第1〜第N注入ユニット32(α)がそれぞれ配置されている。
【0038】
第1〜第N注入ユニット32(α)は、各樹脂層22(α)を形成するための第1〜第N混合溶液42(α)[α=1〜N]をトレイ30の型36内に注入する。第1〜第N混合溶液42(α)は、上述の3FMd7、PFPMAd5、重合開始剤、連鎖移動剤を混合したものであり、形成する樹脂層22(α)に応じて3FMd7及びPFPMAd5の配合比が異なっている。なお、図示は省略するが、各注入ユニット32(α)には、それぞれ対応する混合溶液42(α)を供給する液供給ユニットと、供給ユニットから送り出される混合溶液42(α)をろ過するろ過ユニットとか接続されている。液供給ユニットとしては、単に3FMd7、PFPMAd5、重合開始剤、連鎖移動剤を混合したものを供給できればよいので大掛かりな設備は必要ない。また、ろ過ユニットでろ過する際も、第1〜第N混合溶液42(α)は粘度が低いので簡単に高精度ろ過を行うことができる。その結果、品質故障の原因となる異物を除去することができる。
【0039】
トレイ循環ユニット33は、図3及び図4に示すように、一対の無端チェーン44、トレイ保持フレーム45(図4参照)、チェーンスプロケット46,47から構成される。トレイ30は、一対の無端チェーン44間上にトレイ保持フレーム45を介して保持される。なお、図3中では、図面の煩雑化を防ぐために各トレイ30間に広い間隔を設けているが、トレイ30の搬送速度は遅いので実際の間隔は図よりも狭い。
【0040】
トレイ保持フレーム45は、一対の無端チェーン44間に掛け渡される底板45aと、この底板45aの両端部に立設される側板45bとから構成されている。側板45bには軸孔45cが形成されており、この軸孔45cには、トレイ30の両端部から突出した取付軸30aが回動自在に取り付けられる。取付軸30aは、トレイ30の重心位置よりも高い位置に形成されており、トレイ30の自重によって型36の開口が常に上方を向いた状態となる。
【0041】
無端チェーン44は、トレイ30の搬送経路上に複数配置されたチェーンスプロケット46,47に巻き掛けられている。各チェーンスプロケット46,47は、図示しないモータにより回転駆動され、トレイ30の搬送経路を略90°または略U字型に屈曲させつつ、無端チェーン44を駆動してトレイ30を搬送する。
【0042】
チェーンスプロケット46は、隔壁38の開口40側の端部の近傍、第N乾燥室39(N)の開口40と反対側の側面に形成された排出口48の近傍、トレイ30の搬送経路のコーナ等に設けられている。このチェーンスプロケット46は、詳しい図示は省略するが、一対の無端チェーン44をそれぞれ駆動する一対の略円板状のスプロケット部46aと、両スプロケット部46aを接続する取付軸46bとから構成される。
【0043】
チェーンスプロケット47は、第1〜第(N−1)乾燥室39(α)の開口40と反対の奥部に設けられている。このチェーンスプロケット47も一対のスプロケット部47aと、両スプロケット部47aを接続する取付軸47bとから構成される。開口40から第1〜第N−1乾燥室39(α)内に搬送されたトレイ30は、チェーンスプロケット47により折り返されて再び開口40に向けて搬送される。この際に、トレイ30は略U字型の搬送経路の内側を搬送されるので、スプロケット部47aを、取付軸47bによりトレイ30の搬送が妨げられない程度の大きさに形成している。
【0044】
チェーンスプロケット46,47が回転されると、無端チェーン44の搬送が開始され、これに伴いトレイ30の搬送が開始される。トレイ30が第1注入ユニット32(1)と対向する位置まで搬送されたら、第1注入ユニット32(1)はトレイ30の型36内に混合溶液42(1)を注入する。なお、トレイ30が第1注入ユニット32(1)と対向する位置まで搬送されたことを確認する方法として、図示は省略するが光学センサ等をトレイ30の搬送経路上に配置しておけばよい。
【0045】
混合溶液42(1)が注入されたトレイ30は、開口40より第1乾燥室39(1)内に搬送される。トレイ30は、第1乾燥室39(1)内を所定時間をかけて搬送され、その間に混合溶液42(1)中の3FMd7及びPFPMAd5が共重合して第1樹脂層22(1)が形成される。この際に、混合溶液42(α)は粘度が低いため十分な流動性を有しており、さらに、トレイ30はその型36の開口が常に上方を向いた状態になっているので、混合溶液42(1)の界面は重力によりレべリング(平滑化)される。これにより、凹凸のない第1樹脂層22(1)の界面を形成することができる。
【0046】
次いで、第1樹脂層22(1)が形成されたトレイ30は、第2注入ユニット32(2)と対向する位置まで搬送される。第2注入ユニット32(2)は、トレイ30の型36内の第1樹脂層22(1)上に混合溶液42(2)を注入する。このトレイ30は、再び第2乾燥室39(2)内に搬送されて、この搬送中に第2樹脂層22(2)が形成される。以下、同様にして混合溶液42(α)[α=3〜N]の注入と、樹脂層22(α)[α=3〜N]の形成とが繰り返される。そして、図5に示すように、トレイ30の型36内に第1〜N樹脂層22(α)が順次積層してコア素片20が形成される。なお、図中のW1、W2、θは、型36の寸法・形状を表したものであり、詳しくは後述するのでここでは説明を省略する。
【0047】
このように、一つの樹脂層22(α)の上に次の混合溶液42(α+1)を注入して共重合させると、混合溶液42(α+1)中のモノマー(3FMd7及びPFPMAd5)の一部が樹脂層22(α)内に僅かに溶け込む。そのため、樹脂層22(α)と樹脂層22(α+1)とが界面で強固に接着して、光学的な欠陥が発生しにくくなる。
【0048】
また、本実施形態では、隣接する樹脂層22(α)と樹脂層(α+1)との屈折率の差Δnが、5×10-5≦Δn<5×10-3を満たすように、第1〜第N混合溶液42(α)中の3FMd7及びPFPMAd5の配合比を調整している。これにより、各樹脂層22(α)間の界面で曇りを生じさせずに透明性を保つことができるので、GI型POF素線17の光学性能の劣化が防止される。
【0049】
図3に示すように、トレイ30は、第N樹脂層22(N)が形成された後、第N乾燥室39(N)の排出口48より重合室31外に排出される。排出口48より排出されたトレイ30の搬送経路上には、取出しユニット34が設けられている。この取出しユニット34としては、コア素片20を把持して型36内から取り出す把持ユニットや、コア素片20を吸着して型36内から取り出す吸着ユニット等の各種ユニットが用いられる。なお、図示は省略するが、例えばトレイ30内に押出しピンからなる押出機構を設けて、取出し時にコア素片20を型36内から押し出すようにしてもよい。これにより、取出しユニット34がコア素片20を把持または吸着し易くなるので、コア素片20を型36内から容易に取り出すことができる。取出しユニット34により取り出されたコア素片20は、図示しない集積装置に集積される。
【0050】
取出しユニット34によりコア素片20が取り出されたトレイ30は、無端チェーン44の搬送に伴い再び第1注入ユニット32(1)と対向する位置まで搬送される。以下、同様にして各トレイ30の型36内に、第1〜第N樹脂層22(α)が順次積層されてコア素片20が形成され、形成されたコア素片20が取出しユニット34により順次取り出される。
【0051】
図2及び図6に示すように、コア素片形成装置25で形成されたコア素片20を中心軸Cとなる任意の軸周りに8個組み合せることで、上述の屈折率分布を有するコア19が形成される。なお、組み合せ時には各コア素片20が位置ずれしたりしないように、専用の位置決め冶具等を用いて組み合せることが好ましい。
【0052】
コア素片20を組み合せてコア19が形成されたら、クラッドパイプ装着工程14においてコア19の外側面にクラッドパイプ(クラッド)21が装着される(図1及び図2参照)。このクラッドパイプ21は、図示は省略するが、溶融押出製造法などを用いてコア19よりも屈折率の低い材料、例えばフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)等より形成される。このクラッドパイプ21は、コア19の外側面に装着された後、熱収縮されてコア19の外側面に密着される。これにより、プリフォーム18が形成される。なお、クラッドパイプ21は、コア19の保護や、伝送損失の増加の抑制及び曲げ損失の低減などの光学特性の向上の役割も果たす。そのため、コア19の外側面上に径の異なる複数のクラッドパイプ21を装着するようにしてもよい。形成されたプリフォーム18は、延伸工程15を構成する延伸装置50にセットされる。
【0053】
図7に示すように、延伸装置50は保持アーム52、アーム駆動用スクリュウ53、プリフォームホルダ54、減圧ユニット55、延伸ヒータ56、引取りローラ対57、巻取りユニット58から構成される。
【0054】
保持アーム52は、アーム駆動用スクリュウ53に取り付けられている。そして、アーム駆動スクリュウ53が図示しないモータによって回転駆動されると、保持アーム52が図中上下方向に移動される。この保持アーム52には、プリフォーム18の一端を把持するプリフォームホルダ54が設けられている。
【0055】
プリフォームホルダ54には、プリフォーム18の一端に連通した通気孔60が形成されている。そして、この通気孔60の他端側には、チューブ61を介して減圧ユニット55が接続されている。減圧ユニット55としては、例えば真空ポンプなどが用いられる。この減圧ユニット55は、チューブ61、通気孔60を介して空気を吸引する。この際に、予めプリフォーム18の他端(図中下端)を熱溶融したPVDFに浸漬させておき、その他端側に開口したプリフォーム18の中空部18a(図6参照)の開口や、コア19とクラッドパイプ21との間の隙間を封止しておく。これにより、中空部18aや、コア19とクラッドパイプ21との間の隙間が減圧された状態となる。
【0056】
アーム駆動スクリュウ53が回転され、保持アーム52が図中下方向に移動されると、プリフォーム18の先端が略円筒形状の延伸ヒータ56内に挿入される。プリフォームホルダ54と延伸ヒータ56との間は円筒カバー62で覆われており、溶融前のプリフォーム18に塵埃が付着するのが防止される。そして、延伸ヒータ56内に挿入されたプリフォーム18はその先端から少しずつ溶融され、延伸される。この際に、中空部18aや、コア19とクラッドパイプ21との間の隙間は、減圧ユニット55により減圧されているので溶融の際に消失する。これにより、空隙(欠陥)のないGI型POF素線17が得られる。また、プリフォーム18が溶融・延伸される際に、互いに隣接するコア素片20が接合される。各コア素片20の接合面は、光の伝播方向に平行な方向に延び、且つ中心軸C(図2参照)を通る面に対して平行である。従って、このような各コア19の接合面では、接合面が中心軸C(図2参照)に対して直交している場合や、前記特許文献3記載のプリフォームのように接合面が中心軸Cを囲うように形成されている場合などと比較して、接合面の欠陥による伝送損失の上昇などの性能劣化が起こりにくい。
【0057】
GI型POF素線17は、延伸ヒータ56の鉛直下方に配置された引取りローラ対57により所定の引き取り速度で引き取られる。また、この引取り速度に応じて保持アーム52は図中下方に移動される。そして、引取りローラ対57により引き取られたGI型POF素線17は、巻取りユニット58によってコイル状に巻き取られる。
【0058】
巻取りユニット58によりコイル状に巻き取られたPOFコイル59は、被覆工程16(図1参照)を構成する図示しない被覆装置にセットされる。この被覆装置(図示せず)としては、電気ケーブルや石英系光ファイバケーブルの製造ラインに用いられている被覆装置を用いることができる。なお、GI型POF素線17に対して熱ダメージを与えることがないように、被覆装置の前後に水槽を配置してPOFを冷却することが好ましい。
【0059】
図8に示すように、被覆工程16では、POFコイル59から引き出されたGI型POF素線17に第1被覆材60を被覆してGI型POFコード61を形成し、このGI型POFコード61に抗張力繊維63、第2被覆材64を順次被覆してGI型POFケーブル10を形成する。なお、図示は省略するが、GI型POFケーブル10を形成する際に複数本のGI型POFコード61を束ねた状態で張力繊維63、第2被覆材64を被覆するようにしてもよい。
【0060】
第1被覆材60は、GI型POF素線17を保護するとともに、その機械的強度を補う。第1被覆材60を形成する材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)等が挙げられる。中でもPEが好ましく、低密度ポリエチレン(LDPE)またはリニアー低密度ポリエチレン(LLDPE)が特に好ましい。そして、第1被覆材60には、被覆後のGI型POF素線17の性能や商品価値を向上させるために、酸化防止剤、遮光剤、滑剤、無機フィラー、着色剤、ポリテトラフッ化エチレン(PTFE)微粒子等を添加することが好ましい。
【0061】
これらの添加剤としては液体のものと固体のものとの両方があるが、後者の場合には混合が不均一になりやすいために、これを充分微細な粉体にしてから混合添加することが好ましい。これらの微粒子の大きさが充分小さくない場合には、GI型POF素線17が被覆された際に、これら微粒子のうち主に第1被覆材60の内面及び内面付近に存在するものによりGI型POF素線17に局部的な側圧がかかってしまう。その結果、GI型POFコード61に局部的な歪みが与えられて、伝送損失が大きくなることがある。このため、これら添加剤の粒子径は1μm以下であることが望ましい。また、第1被覆材60に、既知の難燃剤(例えば縮合リン系の難燃剤である旭電化工業(株)社製のアデカスタブFP−2000,2100、T−1063Fなど)を添加しても良い。
【0062】
抗張力繊維63は、GI型POFコード61よりも高い弾性率を有する繊維である。この抗張力繊維63を第1被覆材60と第2被覆材64との間に設けることで、GI型POFケーブル10の力学的強度、引っ張り強度などを向上させることができる。さらに、この抗張力繊維63と後述の第2被覆材64とを組み合せることで、GI型POFケーブル10の難燃性を強化することができる。
【0063】
抗張力繊維63としては、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、カーボン繊維などを用いることができ、中でもアラミド繊維が難燃性の向上の点で特に好ましい。GI型POFケーブル10の力学的強度や引張強度等をさらに向上させるために、金属線等の線状体を抗張力繊維とともに用いてもよい。金属線の材料としては、ステンレス、メッキを付した鉄、あるいは、電気配線との複合化を狙って銅などが用いられるが、いずれもこれら材料に限定されるものではない。
【0064】
第2被覆材64を形成する材料としては、被覆によるGI型POF素線17の熱劣化を抑制するために、できるだけ低温での流動性が高いものが好ましいが、固化後の力学的強度も必要であるので、この両者の兼ね合いで選択される。
【0065】
第2被覆材64を形成する材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−ビニルアセテート共重合体、ナイロン(ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11など)、エチレンエチルアクリレート及びその変性ポリマーなどが挙げられる。中でもエチレン−ビニルアセテート共重合体が好ましく、エチレン−ビニルアセテート共重合体の中でもエチレン構造の繰り返し単位が35〜45重量%であるものがより好ましい。なお、本発明は、これらのポリマーの分子量、分子量分布、分岐の程度、架橋の程度に依存するものではなく、また、官能基の種類等を適宜変えてもよい。また、これらのポリマーを必要に応じてブレンドして使用することもできる。
【0066】
また、第2被覆材64に、難燃剤として金属水酸化物などを含有してもよい。さらに、難燃性向上のために、金属水酸化物に加えて、第2被覆材64に難燃助剤を添加してもよい。難燃助剤としては、公知のものを各種用いることができる。例えば、発泡断熱効果のあるポリリン酸アンモニウム等の縮合リン酸エステル化合物が有効であり、窒素系化合物では、過酸化処理した4−ブチルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンと2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン、及びシクロヘキサン、N,N’エタン−1,2−ジイルビス(1,3−プロパンジアミン)との反応生成物などが有効である。これら難燃助剤を加える事により、金属水酸化物の含有量を下げる事ができ、GI型POFケーブル10の柔軟性を向上させることが可能である。
【0067】
また、第2被覆材64に含まれる可燃性物質の割合を減らす、第2被覆材64の内表面及び外表面の面状を改良して滑り性を付与する、等の目的で、タルク、シリカ、カルシウムなどを添加してもよい。
【0068】
また、形成されたGI型POFケーブル10が、難燃性の規格であるUL1581(VW−1)に合格するためには、GI型POFケーブル10を燃焼しながら溶融・滴下(ドリップ)した際に、このケーブル10の下に置かれた脱脂綿に着火しない事が必要条件となる。従って、このドリップ抑制の観点からの難燃性向上のためにも、第2被覆材64のポリマー成分のうち70〜90重量%は、メルトフローレート(MFR)が40〜70g/10分のエチレン−ビニルアセテート共重合体であることが好ましく、このエチレン−ビニルアセテート共重合体においてエチレン部が35重量%以上45重量%以下であることがより好ましい。
【0069】
さらに、ドリップ抑制の点から、第2被覆材64にメラミン樹脂などの熱硬化性樹脂やエポキシ樹脂、ポリテトラフッ化エチレン(PTFE)等の微粒子などを添加することが特に好ましい。なお、ジオクタデシルジメチルアンモニウムで変性したモンモリロナイトやベントナイト、ヘクトライトのようなナノクレーや、アルミニウム、銅、鉄などのナノ金属化合物粒子を第2被覆材64へ微量添加することも、熱硬化性樹脂やエポキシ樹脂等の粒子添加と同じような効果がある。
【0070】
また、第2被覆材64には、酸化チタン、着色のためのカーボン等を添加してもよい。これにより、長期間の使用で第2被覆材64の表面が黄ばんでしまうのを抑制し、白色度を保つあるいは変色を目立たぬようにすることができるので、商品価値が向上する。
【0071】
また、第1被覆材60と同様に、GI型POFケーブル10としての性能や商品価値をさらに向上させるために、酸化防止剤、遮光材、滑材、無機フィラー、着色剤、PTFE微粒子等を添加してもよい。
【0072】
上述のような第1被覆材60、抗張力繊維63、第2被覆材64が順次被覆されて形成されたGI型POFケーブル10は、図示しないケーブル巻取りユニットによりコイル状に巻き取られた後、出荷される。
【0073】
次に本実施形態の作用について説明する。コア素片形成装置25の運転開始操作がなされると、チェーンスプロケット46,47が回転されて、無端チェーン44の搬送が開始され、これに伴いトレイ30の搬送が開始される。トレイ30が第1注入ユニット32(1)と対向する位置まで搬送されたら、第1注入ユニット32(1)により混合溶液42(1)が型36内に注入される。次いで、トレイ30は、開口40より第1乾燥室39(1)内に搬送され、その搬送中に混合溶液42(1)中の3FMd7及びPFPMAd5が共重合して第1樹脂層22(1)が形成される。
【0074】
引き続きトレイ30の搬送が継続して、以下、同様に混合溶液42(α)[α=2〜N]の注入と、樹脂層22(α)[2=3〜N]の形成とが繰り返される。これにより、トレイ30の型36内に第1〜第N樹脂層22(α)が順次積層してコア素片20が形成される(図5参照)。トレイ30は、第N樹脂層22(N)が形成された後、排出口48より重合室31外に排出される。そして、取出しユニット34により形成されたコア素片20がトレイ30の型36から取り出される。取り出されたコア素片20は、図示しない集積装置等に集積される。
【0075】
集積されたコア素片20は、組立作業者等により組み合わせられてコア19となる(図6参照)。コア19が形成されたら、コア19の外側面にクラッドパイプ(クラッド)21(図2参照)が装着される。このクラッドパイプ21は、熱収縮されてコア19の外側面に密着される。これにより、プリフォーム18が形成される。形成されたプリフォーム18は、延伸装置50のプリフォームホルダ54にセットされる(図7参照)。この際に、予めプリフォーム18の他端(図中下端)を熱溶融したPVDFに浸漬させておき、その他端側に開口したプリフォーム18の中空部18aの開口や、コア19とクラッドパイプ21との間の隙間を封止しておく。
【0076】
プリフォーム18がセットされたら、減圧ユニット55を駆動して中空部18aや、コア19とクラッドパイプ21との間の隙間を減圧させる。次いで、保持アーム52を図中下方向に移動させて、プリフォーム18の先端を延伸ヒータ56内に挿入させる。これにより、プリフォーム18はその先端から少しずつ溶融され、延伸されてGI型POF素線17が得られる。GI型POF素線17は、引取りローラ対57により所定の引き取り速度で引き取られる。引取りローラ対57により引き取られたGI型POF素線17は、巻取りユニット58によってコイル状に巻き取られて、POFコイル59となる。
【0077】
POFコイル59は、被覆工程16を構成する図示しない被覆装置にセットされる。そして、POFコイル59から引き出されたGI型POF素線17に第1被覆材60が被覆されてGI型POFコード61が形成される。次いで、このGI型POFコード61に抗張力繊維63、第2被覆材64が順次被覆されてGI型POFケーブル10が形成される。
【0078】
以上のように、本実施形態では樹脂層22(α)を屈折率の高いものから順に積層して形成したコア素片20を組み合せることで、GI型POF素線17の母材となるプリフォーム18を形成するようにしたので、従来のGI型POFよりも伝送損失が低く、且つ優れた伝送帯域特性を有するGI型POF(GI型POFコード61、GI型POFケーブル10)が得られる。また、プリフォーム18を複雑な工程を経ずに安価に製造することができる。
【0079】
このようにして形成されたGI型POFケーブル10は、種々の発光素子、受光素子、他の光ケーブル、光バス、導光板、光カプラ、光信号処理装置、接続用光コネクタ等とともに用いることにより光信号を伝送するシステムを構成することができる。この際、必要に応じて他の光ファイバなどと組合せてもよい。それらに関連する技術としてはいかなる公知の技術も適用することができる。例えば、プラスティックオプティカルファイバの基礎と実際(エヌ・ティー・エス社発行)、日経エレクトロニクス2001.12.3号110頁〜127頁「プリント配線基板に光部品が載る,今度こそ」などを参考にすることができる。
【0080】
また、前記文献に記載の種々の技術と組み合わせることによって、コンピュータや各種デジタル機器内の装置内配線,車両や船舶などの内部配線,光端末とデジタル機器,デジタル機器同士の光リンクや一般家庭や集合住宅・工場・オフィス・病院・学校などの屋内や域内の光LANなどをはじめとする高速大容量のデータ通信や電磁波の影響を受けない制御用途などの短距離に適した光伝送システムに好適に用いることができる。特に本実施形態のGI型POF素線17では、コア19を多数のコア素片20を組み合せて形成するようにしたので、コア19内を螺旋状に回転しながら伝播するスキュー光を各コア素片20の接合面を通過する際に散乱させて減衰させることができる。その結果、伝送損失は若干高くなるが、スキュー光を減衰させることで光信号のひずみ成分を除去できるので、帯域を広くすることができる。そのため、特に筐体内配線などの極短距離の高速通信に適している。
【0081】
さらに、IEICE TRANS. ELECTRON.,VOL.E84−C,No.3,MARCH 2001,p.339−344 「High−Uniformity Star Coupler Using Diffused Light Transmission」,エレクトロニクス実装学会誌 Vol.3,No.6,2000 476頁〜480頁「光シートバス技術によるインタコネクション」の記載されているものや、特開2003−152284号公報に記載の導波路面に対する発光素子の配置;特開平10−123350号、特開2002−90571号、特開2001−290055号などの各公報に記載の光バス;特開2001−74971号、特開2000−329962号、特開2001−74966号、特開2001−74968号、特開2001−318263号、特開2001−311840号などの各公報に記載の光分岐結合装置;特開2000−241655号などの公報に記載の光スターカプラ;特開2002−62457号、特開2002−101044号、特開2001−305395号などの各公報に記載の光信号伝達装置や光データバスシステム;特開2002−23011号などに記載の光信号処理装置;特開2001−86537号などに記載の光信号クロスコネクトシステム;特開2002−26815号などに記載の光伝送システム;特開2001−339554号、特開2001−339555号などの各公報に記載のマルチファンクションシステム;や各種の光導波路、光分岐器、光結合器、光合波器、光分波器などと組み合わせることで、多重化した送受信などを使用したより高度な光伝送システムを構築することができる。なお、以上の光伝送用途以外にも、信号伝達用の導光板などの成形品、導光型の照明器具、エネルギー伝送、イルミネーション、レンズ、センサ分野にも用いることができる。
【0082】
なお、上記実施形態では、トレイ30に形成された型36の断面が略V字形状に形成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。図9に示すように、型36の断面が略V字形状であると混合溶液42(α)の粘度や表面張力により、型36と接する混合溶液42(α)の界面部分68が僅かに上昇することがある。その結果、GI型POF素線17の光学性能が若干低下するおそれがある。そこで、例えば図10及び図11に示すように、断面が逆V字形状の型70を有するトレイ71を用いるようにしてもよい。
【0083】
トレイ71を用いる場合には、トレイ30を用いる場合とは逆に樹脂層22(α)を屈折率の低いものから順に積層してコア素片20を形成すればよい。この際に、トレイ71は、その型70の開口70aの面積が底部70bの面積よりも小さく形成されているので、形成されたコア素片20を取り出すことが困難である。
【0084】
そこで、トレイ71を、例えば支持台72と、コア素片20の短手方向の側面に接する側壁73(図11参照)と、コア素片20の長手方向の側面に接する側壁74とから構成する。側壁73は、支持台72と一体に形成される。側壁74は、その一部が支持台72に形成された嵌合溝75に嵌合することで、支持台72に着脱自在に嵌め込まれている。従って、コア素片20が形成された後、側壁74を支持台72から取り外すことで、コア素片20の取り出しを容易に行うことができる。ここで、側壁74の取り外し、及びコア素片20取り外し後の側壁の取り付けは、作業者が行ってもよいし、または、専用のユニットを用いて行うようにしてもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、コア素片20を組み合せてコア19を形成し、このコア19にクラッドパイプ(クラッド)21を装着してプリフォーム18を形成するようにしているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図12に示すように、樹脂層22(α)を屈折率の高いものから順に積層してコア素片20を形成した後、さらに、このコア素片20の第N樹脂層22(N)上に、PVDF等からなるクラッド素片(クラッド層)76を同様の方法で積層して形成するようにしてもよい。この場合は、コア素片20を組み合わせたときに同時にクラッド素片76も組み合わされて、プリフォーム18が形成される。
【0086】
なお、本実施形態では、1つのトレイ30に型36が1つしか形成されていないが、本発明はこれに限定されるものではなく、1つのトレイ30に複数の型36が形成されていてもよい。また、トレイ30を光透過性の光学材料で作成し、そこにコア形成用モノマーなどの材料を注入して重合させた後、コア素片20をトレイ30から取り出さずに、そのまま光導波路などの信号伝達用部材として使用することも出来る。この場合には、トレイ30やコア素片20は、上記実施形態で例示した形状に限定される事はない。
【0087】
また、上記実施形態では、コア素片20は、コア19をその中心軸Cの周りに8つに分割した形状に形成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、コア19を任意の数に分割した形状に形成されていてもよい。また、コア19は中空部18a(図6参照)を有する略管状に形成されているが、本発明はこれに限定されるものではく、中空部18aを有さない略柱状に形成されていてもよい。
【0088】
なお、上記実施形態では、第1〜第N乾燥室39(α)が鉛直方向に配列された重合室31を有するコア素片形成装置25を例に挙げて説明を行ったが、コア素片形成装置はこれに限定されるものではない。以下、図13を用いて他の実施形態のコア素片形成装置80について説明を行う。ここで、コア素片形成装置25と同一の部材については同一符号を付してその説明は省略する。
【0089】
コア素片形成装置80は、トレイ循環ユニット81及び第1〜第N乾燥室82(α)[α=1〜N]と、上述のトレイ30、トレイ保持フレーム45(図4参照)、第1〜第N注入ユニット32(α)[α=1〜N]、取出しユニット34とから構成される。トレイ循環ユニット81は、所定距離をあけて配置された一対のチェーンスプロケット83,84と、両チェーンスプロケット83,84に掛け渡された一対の無端チェーン44とから構成される。そして、図中上側のトレイ30の搬送経路上に、第1〜第N注入ユニット32(α)と第1〜第N乾燥室82(α)とが交互に配置されている。
【0090】
このコア素片形成装置80でも、トレイ30が搬送される間に混合溶液42(α)の注入と、樹脂層22(α)の形成とが繰り返されて、トレイ30の型36内に第1〜第N樹脂層22(α)[α=1〜N]が順次積層してコア素片20が形成される。このようなコア素片形成装置80は、コア素片形成装置25と比較して広い設置スペースを必要とするが、逆に構造がシンプルになるという利点がある。
【0091】
[実施例]
以下、本発明の効果を明確にするために、上述の方法でGI型POF素線17を製造して、その伝送損失及び伝送帯域を測定した。最初にGI型POF素線17の製造条件についての説明を行う。
【0092】
トレイ30として、型36の開口の短手方向の長さW1が30mm、型36の底面の短手方向の長さW2が2mm、型36の両側面がなすテーパ角度θが45°のものを用いた(図5参照)。そして、上述のコア素片形成装置25を用いて、トレイ30内への混合溶液42(α)の注入と、樹脂層22(α)の形成とを11回繰り返して行い、トレイ30内に第1〜第11樹脂層22(α)[α=1〜11]を順次積層してコア素片20を形成した。各混合溶液42(α)[α=1〜11]中の3FMd7、PFPMAd5の混合比率、及び各層樹脂層22(α)の厚みを下記表1に記載した。なお、表1中の混合比率は、両成分の混合比率を容積比で表したものである。例えば、表中において3FMd7が10、PFPMAd5が7である場合には、3FMd7とPFPMAd5とを容積で10:7の比率で混合している。
【0093】
第1〜第10樹脂層22(α)[α=1〜10]形成時には、1.2気圧、90℃の条件で3時間熱処理して重合させた。また、第11樹脂層22(11)形成時には、1.2気圧、90℃の条件で11時間熱処理して重合させた。このようにして形成されたコア素片20の各層ごとの屈折率を測定して下記表1に記載した。
【0094】
【表1】
【0095】
形成されたコア素片20を8個組み合せてコア19を形成した。そして、このコア19に厚み0.5mmのPVDF製のクラッドパイプ(クラッド)21を装着した。次いで、このクラッドパイプ21を熱収縮させてコア19の外側面に密着させて、プリフォーム18を形成した。このプリフォーム28を上述の延伸装置50にセットして、外径480μmのGI型POF素線17に延伸した。
【0096】
このように形成されたGI型POF素線17の伝送損失と伝送帯域とを測定した。その結果、GI型POF素線17の波長650nmにおける伝送損失は133dB/Kmであり、波長780nmにおける伝送損失は117dB/Kmであり、波長850nmにおける伝送損失は128dB/Kmであった。なお、ドーパントを用いて作成されたGI型POFファイバーとして特開2005−099196号公報を例に挙げると、波長650nmにおける伝送損失は170dB/Kmである。
【0097】
また、このGI型POF素線17の伝送帯域は波長850nmにおいて距離100mで3GHzであった。なお、同様に特開2005−099196号公報を例に挙げると、伝送帯域は波長780nmにおいて距離100mで1.2GHz以下である。
【0098】
以上の結果より、本発明のプリフォーム18を延伸したGI型POF素線17が、上述の溶融押出法や界面ゲル重合法で形成されたGI型POFと同等以上の伝送損失であり、且つ優れた伝送帯域特性を有することが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】GI型POFケーブル製造工程のフロー図である。
【図2】プリフォームの斜視図である。
【図3】コア素片形成装置の概略図である。
【図4】コア素片形成装置に設けられたトレイ及びトレイ保持フレームの斜視図である。
【図5】トレイの断面図であり、コア素片形成後の状態を示したものである。
【図6】コアの断面図である。
【図7】延伸装置の概略図である。
【図8】GI型POFケーブルの断面図である。
【図9】図5を拡大表示した拡大図である。
【図10】他の実施形態のトレイの断面図であり、コア素片形成前の状態を示したものである。
【図11】他の実施形態のトレイの断面図であり、コア素片形成後に側壁を取り外した状態を示したものである。
【図12】トレイの断面図であり、コア素片上にクラッド素片を形成した状態を示したものである。
【図13】コア素片形成装置の他の実施形態を示した概略図である。
【符号の説明】
【0100】
10 GI型プラスチック光ファイバ(POF)ケーブル
17 GI型POF素線
18 プリフォーム
19 コア
20 コア素片
22(α) 第1〜第N樹脂層
25 コア素片形成装置
30 トレイ
32(α) 第1〜第N注入ユニット
39(α) 第1〜第N乾燥室
42(α) 第1〜第N混合溶液
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光伝送路となるコアと、前記コアよりも低い屈折率を有し、前記コアの外側面を覆う略管状のクラッドとからなるプラスチック光学材料用プリフォームの製造方法において、
前記コアをその中心軸周りに複数に分割した形状のコア素片を形成し、前記中心軸となる任意の軸を囲うように前記コア素片を組み合わせて前記コアを形成することを特徴とするプラスチック光学材料用プリフォームの製造方法。
【請求項2】
前記コア素片は、屈折率の異なる透光性の樹脂層を5層以上積層して形成されていることを特徴とする請求項1記載のプラスチック光学材料用プリフォームの製造方法。
【請求項3】
前記樹脂層は、前記コア素片を組み合わせて形成された前記コアの屈折率が前記外側面から前記中心軸に向かうに従い次第に高くなるような順序で積層されることを特徴とする請求項2記載のプラスチック光学材料用プリフォームの製造方法。
【請求項4】
隣接する前記樹脂層の屈折率の差Δnが、5×10-5≦Δn<5×10-3を満たすことを特徴とする請求項3記載のプラスチック光学材料用プリフォームの製造方法。
【請求項5】
前記クラッドを前記中心軸周りに前記コア素片と同数に分割した形状のクラッド素片を前記コア素片と一体に形成し、
前記コア素片の組み合せ時に、前記クラッド素片も同時に組み合せて前記クラッドを形成することを特徴とする請求項1ないし4いずれか1項記載のプラスチック光学材料用プリフォームの製造方法。
【請求項6】
光伝送路となるコアと、前記コアよりも低い屈折率を有し、前記コアの外側面を覆う略管状のクラッドとからなるプラスチック光学材料用プリフォームにおいて、
前記コアは、前記コアをその中心軸周りに複数に分割した形状のコア素片が前記中心軸となる任意の軸を囲うように組み合わされて形成されることを特徴とするプラスチック光学材料用プリフォーム。
【請求項1】
光伝送路となるコアと、前記コアよりも低い屈折率を有し、前記コアの外側面を覆う略管状のクラッドとからなるプラスチック光学材料用プリフォームの製造方法において、
前記コアをその中心軸周りに複数に分割した形状のコア素片を形成し、前記中心軸となる任意の軸を囲うように前記コア素片を組み合わせて前記コアを形成することを特徴とするプラスチック光学材料用プリフォームの製造方法。
【請求項2】
前記コア素片は、屈折率の異なる透光性の樹脂層を5層以上積層して形成されていることを特徴とする請求項1記載のプラスチック光学材料用プリフォームの製造方法。
【請求項3】
前記樹脂層は、前記コア素片を組み合わせて形成された前記コアの屈折率が前記外側面から前記中心軸に向かうに従い次第に高くなるような順序で積層されることを特徴とする請求項2記載のプラスチック光学材料用プリフォームの製造方法。
【請求項4】
隣接する前記樹脂層の屈折率の差Δnが、5×10-5≦Δn<5×10-3を満たすことを特徴とする請求項3記載のプラスチック光学材料用プリフォームの製造方法。
【請求項5】
前記クラッドを前記中心軸周りに前記コア素片と同数に分割した形状のクラッド素片を前記コア素片と一体に形成し、
前記コア素片の組み合せ時に、前記クラッド素片も同時に組み合せて前記クラッドを形成することを特徴とする請求項1ないし4いずれか1項記載のプラスチック光学材料用プリフォームの製造方法。
【請求項6】
光伝送路となるコアと、前記コアよりも低い屈折率を有し、前記コアの外側面を覆う略管状のクラッドとからなるプラスチック光学材料用プリフォームにおいて、
前記コアは、前記コアをその中心軸周りに複数に分割した形状のコア素片が前記中心軸となる任意の軸を囲うように組み合わされて形成されることを特徴とするプラスチック光学材料用プリフォーム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−72295(P2007−72295A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−260929(P2005−260929)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】
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